JP2012117167A - スエード調人工皮革の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル系極細繊維不織布と水系エマルジョンバインダー樹脂からなる基体の片面または両面にポリエステル系極細繊維の立毛を有するスエード調人工皮革の製造方法であって、
(a)分散染料でスエード調人工皮革を染色する工程、
(b)少なくとも基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂に付着した分散染料を還元剤で還元分解し脱色した後、スエード調人工皮革の表面温度が110℃以下となる温度で乾燥する工程、
および
(c)水系エマルジョンバインダー樹脂を表面または表面近傍のポリエステル系極細繊維と同色化させる工程
を順次行うことを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法。
【選択図】なし
Description
表面にポリエステル系極細繊維の立毛繊維を有するスエード調人工皮革は一般的に以下の製造方法により得られる。すなわち、ポリエステル系極細繊維発生型多成分系繊維をカード法、抄紙法あるいはスパンボンド法等よりウェブ化した後、ニードルパンチ等によりポリエステル系極細繊維発生型多成分系繊維を互いに絡ませて絡合不織布化する工程、次いで、ポリウレタンで代表される高分子弾性重合体の溶液若しくはエマルジョン液を付与して凝固させた後に、該極細繊維発生型多成分系繊維より該極細繊維を発生させる方法、あるいは該極細繊維発生型多成分系繊維より該極細繊維を発生させた後に、高分子弾性重合体の溶液若しくはエマルジョン液を付与し凝固する方法により人工皮革の基体を製造する工程、その後、該基体の任意の片面あるいは両面をサンドペーパー等によりバフィングし起毛した後、染色、必要に応じて各種仕上げ剤の付与および表面の整毛を行う仕上げ工程を順次行うものである。
家具や自動車のシート表皮材として使用する場合、実用上、スエード表面の磨耗による立毛の脱落やピリングに対する高い抵抗力を要求される。そのため、ニードルパンチの条件等により該絡合不織布の絡合度を向上させるとともに、該極細繊維発生型多成分系繊維不織布中の高分子弾性重合体の付与量を多くすること、特にスエード表面あるいは表面直下に付与される高分子弾性重合体の量が多いほど立毛の脱落やピリングに対する高い抵抗力が得られる。
近年、原反に残存するVOCの低減や、製造工程における作業環境への配慮から、上記製造工程中で従来使用されていた有機溶剤をなるべく排除する動きがあり、その一つとして、上記絡合不織布に付与する高分子弾性重合体として水系エマルジョンタイプの弾性樹脂が使用され始めている。
(1)ポリエステル系極細繊維不織布と水系エマルジョンバインダーからなる基体の片面または両面にポリエステル極細繊維の立毛を有するスエード調人工皮革の製造方法であって、
(a)分散染料でスエード調人工皮革を染色する工程、
(b)少なくとも基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂に付着した分散染料を還元剤で還元分解し脱色した後、スエード調人工皮革の表面温度が110℃以下となる温度で加熱し乾燥する工程、および
(c)水系エマルジョンバインダー樹脂を表面または表面近傍のポリエステル系極細繊維と同色化させる工程
を順次行うことを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法である。
(2)少なくとも表面または表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂における分散染料の含有量が、水系エマルジョンバインダー樹脂1gあたり30mg以下になる条件化で工程(b)の脱色を行う(1)のスエード調人工皮革の製造方法。
(3)工程(c)の同色化させる工程が、スエード調人工皮革の表面の温度を111〜150℃に加熱して、表面または表面近傍のポリエステル系極細繊維に染着している分散染料を基体の表面または表面近傍に存在する水系エマルジョンバインダー樹脂に昇華移行させる工程である前記(1)または(2)のスエード調人工皮革の製造方法。
(4)工程(c)の同色化させる工程が、含金染料で水系エマルジョンバインダー樹脂を染色する工程である前記(1)または(2)のスエード調人工皮革の製造方法。
(5)水系エマルジョンバインダー樹脂のガラス転移温度が−20℃以下である前記(1)〜(4)のいずれか1つの製造方法であるスエード調人工皮革の製造方法である。
また、本発明は、
(6)前記(1)〜(5)のいずれかの方法により得られたスエード調人工皮革である。
(7)ポリエステル系極細繊維の平均立毛長が10〜500μmである前記(6)のスエード調人工皮革である。
本発明で用いるスエード調人工皮革は、ポリエステル系繊維不織布と水系エマルジョンバインダー樹脂からなる基体の片面または両面にポリエステル系極細繊維の立毛を有する。本発明で用いるスエード調人工皮革では、立毛部はポリエステル系極細繊維からなることが必要であり、また、基体を構成するポリエステル系繊維不織布はポリエステル系極細繊維が絡み合った絡合不織布であることが好ましい。立毛部、および基布を構成するポリエステル系繊維不織布の両方をポリエステル系極細繊維から形成することにより、高級なスエード調の品位ある外観を有し、且つ、表面タッチがソフトなものにすることができる。立毛部およびポリエステル系極細繊維不織布を構成するポリエステル系極細繊維の単繊維繊度は1デシテックス以下であることが好ましく、特に立毛を構成するポリエステル系極細繊維の単繊維繊度は0.5デシテックス以下であることが好ましく、0.001〜0.3デシテックスであることがより好ましく、0.01〜0.2デシテックスであることが更に好ましい。ポリエステル系極細繊維の太さ、特に立毛部を形成するポリエステル系極細繊維の太さが0.5デシテックスを超えると、高級なスエード調の品位のある外観およびソフトな表面タッチが得られにくくなり、一方、ポリエステル系極細繊維の太さが0.001デシテックス未満であると、染着性が低下して、色調が劣ったものになり易い。
水系エマルジョンバインダー樹脂のガラス転移温度が−20℃以下であることが、染料が同色化の為の加熱時に移行し易いことと柔軟性を兼ね備えることから、後述する水系エマルジョンバインダー樹脂を表面または表面近傍のポリエステル系極細繊維と同色化させる工程において同色化し易く、またスエード調人工皮革の柔軟な風合いを兼ね備える点で好ましい。
(i)ポリエステルおよびポリエステルと相溶しない他のポリマーを用いて混合紡糸法、海島型複合紡糸法、分割型複合紡糸法などによってポリエステル極細繊維発生型(多成分系)繊維を製造し、次いで該ポリエステル極細繊維発生型繊維を用いて不織布を製造し、それに水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸して凝固した後に、ポリエステル極細繊維発生型繊維中のほかのポリマーを溶解、分解などにより除去してポリエステル極細繊維を形成するか、またはポリエステル極細繊維発生型繊維を分割してポリエステル極細繊維を形成させ、次いで起毛処理する方法。
(ii)前記ポリエステル極細繊維発生型繊維を用いて不織布を製造した後、該ポリエステル極細繊維発生型繊維中の他のポリマー成分を溶解除去するか又は該ポリエステル極細繊維発生型繊維を分割してポリエステル極細繊維とした後、それに水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸・凝固し、次いで起毛処理する方法。
一方、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)は水溶性のポリマーであって、その基本骨格と分子構造、形態、各種変性により水溶性の程度を変えることができ、更に溶融紡糸性を付与することが可能であるため、本発明のポリエステル極細繊維発生型繊維においても、有機溶剤を使用せずに水で溶解除去または分解除去されるポリマーとして使用することができる。また、PVAは生分解性であることも確認されている。これらのことから、地球環境的には溶解除去するポリマーとしてこのような基本性能を有するPVAを使用することが好ましい。
また、上記(i)または(ii)の方法で用いるポリエステル極細繊維は、極細繊維化後のポリエステル極細繊維の単繊維繊度を上記のごとく0.5デシテックス以下、特に0.2デシテックス以下とするために、貼り合わせ型(分割型)繊維であるよりは、ポリエスエルを島成分として他のポリマーを海成分とする海島型の繊維(海島型複合紡糸繊維または海島型混合紡糸繊維)であることが工程上有利である。
P=([η]103/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に達せられる。
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。PVAを溶解した後のPVA含有廃液の処理には活性汚泥法が好ましい。該PVA水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月の間で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
本発明に用いられるPVAの融点(Tm)は、160〜230℃が好ましく、170〜227℃がより好ましく、175〜224℃が特に好ましく、180〜220℃がとりわけ好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し繊維強度が低くなると同時に、PVAの熱安定性が悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を超えると、溶融紡糸温度が高くなり紡糸温度とPVAの分解温度が近づくためにPVA繊維を安定に製造することができない。
本発明に用いられるPVAは、ビニルエステル単位を主体として有する樹脂をケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
本発明で使用されるPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中にPVA構成単位の1〜20モル%存在していることが好ましく、さらに4〜15モル%が好ましく、6〜13モル%が特に好ましい。さらに、α−オレフィンがエチレンである場合には、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用する場合である。
以上の方法により得られた長繊維緻密化絡合不織布に、人工皮革用基材の表面平滑性を向上するために、必要に応じてカレンダーロールによる面平滑化を施し、そして、内部に前述の水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸、凝固する工程、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を熱水で抽出除去することにより極細繊維発生型多成分系繊維を極細化する工程を経て人工皮革用基材を製造することができる。ここで、含浸する水系エマルジョンバインダー樹脂溶液には感熱ゲル化処理または増粘処理を施すことにより凝固、乾燥時のマイグレーションを抑制することが人工皮革の風合いの点から好ましい。
このようにして得られた人工皮革用基材は、必要に応じて厚み方向に複数枚に切断(スライス)したり、バフィングして所望の厚みにした後、さらに必要に応じて弾性重合体の溶液あるいは分散液を該基材表面に付与して立毛長を調整し、その後に片方または両方の面をサンドペーパーなどによるバフィング、針起毛などにより起毛し、さらに必要に応じて整毛して、スエード調人工皮革の染色前生地を形成させる。
本発明では、立毛繊維の平均立毛長が10〜500μmの立毛長が短いスエードやヌバック調の人工皮革に特に顕著な効果を有する。より好ましくは、20〜200μm、更に好ましくは、30〜170μmである。
なお、本発明の立毛長は、オスミニウム染色処理したスエード調人工皮革の断面を、走査型電子顕微鏡「S−2100日立走査型電子顕微鏡」(倍率200倍)で10ケ所以上観察し、高分子弾性体層より上部の表面繊維の立毛長を測定し、その平均を算出した。
分散染料によるスエード調人工皮革の染色は、高温高圧染色機を用いて高温下で行うことが望ましく、一般に115〜150℃、特に120〜140℃の染色温度が好ましく採用される。また染色時間は一般に30〜120分間が好ましい。染色温度が115℃未満であったり、染色時間が短すぎると、ポリエステル繊維中に分散染料が十分に拡散せず染色が不十分になり易い。一方、染色温度が150℃を超えたり、染色時間が長すぎると、基体の強度低下、立毛の脱落、ピリングの発生などが生じ易くなる。スエード調人工皮革の染色は、分散染料を水系媒体中に分散させた染色浴中にスエード調人工皮革を浸漬して行うことが好ましい。その際に、分散染料を染色浴中に安定に分散させて均一な染色が行われるように、染色浴中に分散剤を存在させておくことが好ましい。分散剤としては、例えば、芳香族スルホン酸塩などのアニオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤の少なくとも1種が好ましく用いられる。また、染色浴中には、必要に応じてpH調整剤、金属イオン封鎖剤などを含有させておいてもよい。染色時の浴比は、スエード調人工皮革の質量に対して10〜40倍が適当である。また、染色浴における分散染料の濃度は、1〜35%owfが好ましい。分散染料の濃度が1%未満であると、染色物の色調が薄くなって本発明の効果が現れにくくなり、一方、35%owfを超えると染色物の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などが低くなり、実用性が低下し易い。
その後、スエード調人工皮革の水系エマルジョンバインダー樹脂を表面または表面近傍のポリエステル極細繊維と同色化させる工程を行う。同色化する工程は、スエード調人工皮革の表面のポリエステル極細立毛繊維と水系エマルジョンバインダー樹脂の色調を均一化させ、かつ、家具用やカーシート用表皮に使用した場合に、実用上必要な洗濯、摩擦および光等に対する染色堅牢度を確保するため、同色化させる手段を特定の方法にする必要がある。以下に本発明を達成する手段を示す。
該加熱処理における必要な処理時間は、処理温度により異なる。処理温度が低い場合、例えばスエード調人工皮革表面の温度が111℃の場合は2分〜5分、処理温度が高い場合、例えばスエード調人工皮革表面の温度が150℃の場合は30秒〜3分の範囲で行うことが好ましい。処理時間が上記範囲より短い場合、ポリエステル系極細繊維に染着している染料が表面に露出または表面近傍に存在する水系エマルジョンバインダー樹脂への十分な移行が行われにくく、基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂とポリエステル系極細繊維の立毛との色調が不均一なままとなり低品位の外観となる。処理時間が上記範囲より長い場合、ポリエステル極細繊維立毛中の染料が必要以上に昇華し、スエード調人工皮革の色調が目的のものから離れてしまう。
また、上記の加熱処理は、染料移行を目的としてそれ自体を独立して行っても良いが、染色後あるいは何らかの薬剤処理後の濡れた状態から、一旦表面を乾燥させた状態とすることで、上記加熱処理を連続して行うことも可能である。
水系エマルジョンバインダー樹脂のガラス転移温度が−20℃以下であることが染色のし易さとスエード調人工皮革の柔軟な風合いを兼ね備える点で好ましい。
最後に、上記同色化工程後、必要に応じて、撥水処理、揉み処理、整毛処理などの仕上げ処理を行い、目的のポリエステル系極細繊維からなる立毛と表面に露出または表面近傍に存在する水系エマルジョンバインダー樹脂がほぼ同色に均一に染色されていて、全体の色調が均一で、良好な外観を有する本発明のスエード調人工皮革を得ることができる。
樹脂のガラス転移温度は、DSC(TA3000、メトラー社製)測定器を用いて、求めた。
以下の例において、洗濯堅牢度、摩擦堅牢度および耐光堅牢度は、それぞれJIS L0844(A法)、JIS L0849及びJIS L0842に規定されている測定法に準じて評価した。
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の製造]
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kg/cm2となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、AMVと略すこともある。)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cmに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニルの酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してケン化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置してケン化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVAを得た。
上記PVAを海成分に用い、イソフタル酸変性度6モル%のポリエチレンテレフタレ−トを島成分とし、極細繊維発生型(多成分系)繊維1本あたりの島数が25島となるような溶融複合紡糸用口金を用い、海成分/島成分の質量比30/70となるように260℃で口金より吐出した。紡速が3500m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度2.0デシテックスの長繊維をネットで捕集し、36g/m2の長繊維ウェブを得た。
上記長繊維ウェブをクロスラッピングにより重ね合わせ、ニードルパンチングをおこない、長繊維ウェブを絡合せしめ、幅200cm、目付771g/m2の長繊維不織布を得た。
上記の長繊維絡合不織布を相対湿度95%、70℃の雰囲気下で、3分間熱処理して収縮を生じさせ、次いで表面温度120℃の乾熱ロールプレスを行い、目付1200g/m2、厚み2.3mmの緻密化絡合不織布を得た。
染料:
・「Disperse Blue 73」(染料)(北陸カラー株式会社製)4.32%o.w.f.
・「Disperse Red 167.1」(染料)(北陸カラー株式会社製)4.08%o.w.f.
・「Disperse Yellow 163」(染料)(北陸カラー株式会社製)6.48%o.w.f.
・「AL」(均染剤)(日本化薬株式会社製)2.0g/dm3
・「ニューバッファーK」(pH調節剤)(ミテジマ化学株式会社製)1.8g/dm3
・「H867」(金属イオン封鎖剤)(一方社油脂工業株式会社製)0.5g/dm3
染色温度 120℃
染色時間 40分
浴比 1:15
高圧液流染色機から還元処理液を排出し、代わりに該染色機に過酸化水素含有量3g/dm3およびソーダ灰含有量3g/dm3である温度70℃の熱水を入れ、そこに上記で得られた還元処理したスエード調人工皮革を入れて(浴比=1:15)、液流下で20分間酸化処理を行った。その後、酸化処理液を排出して、代わりに常温の水を入れ、5分間液流下で洗浄を行った。
上記で得られたスエード調人工皮革を加工長18m有するテンター乾燥機を使用して、処理速度15m/分、出口の生地の表面温度が105℃になる温度設定で加熱し乾燥処理を行った。乾燥後のスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は濃茶色を呈し、一方基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂は脱色され、薄い灰色を呈しており、全体として色斑のある品位の劣った外観を有していた。
上記で得られたスエード調人工皮革に対し、加工長18mを有するテンター乾燥機を使用して、処理速度10m/分、出口の生地の表面温度が120℃になる温度設定で、加熱処理を行った。加熱処理後のスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は加熱処理前と同様の濃茶色を呈し、基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂はポリエステル極細繊維立毛部にほぼ近い色調に染色されており、全体として色斑の無い良好な表面品位を有していた。得られたスエード調人工皮革の洗濯堅牢度、摩擦堅牢度および耐光堅牢度は以下の表1に示す通りであり、実用価値の高いものであった。
実施例1において得られた酸化洗浄処理後、加工長18mを有するテンター乾燥機を使用して、処理速度15m/分、出口の生地の表面温度が105℃になる温度設定で乾燥処理を行った。乾燥後のスエード調人工皮革を、ウインス染色機に投入し以下に示す条件で染色を行った。得られたスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は濃茶色を呈し、基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂はポリエステル極細繊維立毛部にほぼ近い色調に染色されており、全体として色斑の無い良好な表面品位を有していた。得られたスエード調人工皮革の洗濯堅牢度、摩擦堅牢度および耐光堅牢度は以下に示す通りであり、実用価値の高いものであった。
染料:
・「Lanacron Brown」(染料)(ハンツマン・ジャパン株式会社製)1.0%o.w.f.
・「Lanyl Red S-GG」(染料)(田岡化学工業株式会社製)0.4%o.w.f.
・「DAM」(均染剤) 2.0g/dm3
染色温度 90℃
染色時間 30分
浴比 1:20
実施例1と同様の方法で、染後のスエード調人工皮革を得た後、従来から一般的に行われていた方法で、加工長18mを有するテンター乾燥機を使用して、処理速度10m/分、出口の生地の表面温度が120℃になる温度設定で乾燥処理を行った。乾燥後のスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は場所によらずどこも濃茶色を呈していたが、基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂は、場所により、脱色され薄い灰色を呈しているところと、ポリエステル極細繊維立毛部と同様の色目をしているところが混在しており、全体として色斑のある品位の劣った外観を有していた。
実施例1と同様の方法で、染色後のスエード調人工皮革を得た後、加工長18mを有するテンター乾燥機を使用して、処理速度15m/分、出口の生地の表面温度が105℃になる温度設定で乾燥処理を行った。乾燥後のスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は濃茶色を呈し、一方基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂は脱色され、薄い灰色を呈しており、全体として色斑のある品位の劣った外観を有していた。
得られたスエード調人工皮革に対し、加工長18mを有するテンター乾燥機を使用して、処理速度15m/分、出口の生地の表面温度が105℃になる温度設定で、再度熱処理を行った。熱処理後のスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は熱処理前と同様の濃茶色を呈していたが、基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂は再熱処理前と同様、薄い灰色を呈しており、全体として色斑のある品位の劣った外観を有していた。
実施例1と同様の方法で、染色後のスエード調人工皮革を得た後、加工長18mを有するテンター乾燥機を使用して、処理速度15m/分、出口の生地の表面温度が105℃になる温度設定で乾燥処理を行った。乾燥後のスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は濃茶色を呈し、一方基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂は脱色され、薄い灰色を呈しており、全体として色斑のある品位の劣った外観を有していた。
得られたスエード調人工皮革に対し、加工長18mを有するテンター乾燥機を使用して、処理速度8m/分、出口の生地の表面温度が160℃になる温度設定で、再度熱処理を行った。熱処理後のスエード調人工皮革は、ポリエステル極細繊維の立毛部は熱処理前より濃度の高い濃茶色を呈しており、基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂および表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂はポリエステル極細繊維立毛部にほぼ近い色調に染色されており、全体として色斑の無い表面品位を有していたが、目標色の色目を再現していなかった。また、洗濯堅牢度と耐光堅牢度も実用で使用できないレベルのものであった。
本発明により得られるスエード調人工皮革は、家具、乗物用座席、衣料、手袋で代表される皮革製品に適用できる。
Claims (7)
- ポリエステル系極細繊維不織布と水系エマルジョンバインダー樹脂からなる基体の片面または両面にポリエステル極細繊維の立毛を有するスエード調人工皮革の製造方法であって、
(a)分散染料でスエード調人工皮革を染色する工程、
(b)少なくとも基体の表面に露出している水系エマルジョンバインダー樹脂に付着した分散染料を還元剤で還元分解し脱色した後、スエード調人工皮革の表面温度が110℃以下となる温度で加熱し乾燥する工程、および
(c)水系エマルジョンバインダー樹脂を表面または表面近傍のポリエステル極細繊維と同色化させる工程
を順次行うことを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法。 - 少なくとも表面または表面近傍の水系エマルジョンバインダー樹脂における分散染料の含有量が、水系エマルジョンバインダー樹脂1gあたり30mg以下になる条件化で工程(b)の脱色を行う請求項1記載のスエード調人工皮革の製造方法。
- 工程(c)の同色化させる工程が、スエード調人工皮革の表面温度を111〜150℃に加熱して、表面または表面近傍のポリエステル系極細繊維に染着している分散染料を、基体の表面に露出または表面近傍に存在する水系エマルジョンバインダー樹脂に昇華移行させる工程である請求項1または2に記載のスエード調人工皮革の製造方法。
- 工程(c)の同色化させる工程が、含金染料で水系エマルジョンバインダー樹脂を染色する工程である請求項1または2に記載のスエード調人工皮革の製造方法。
- 水系エマルジョンバインダー樹脂のガラス転移温度が−20℃以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革の製造方法。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革の製造方法により得られたスエード調人工皮革。
- ポリエステル系極細繊維の平均立毛長が10〜500μmである請求項6に記載のスエード調人工皮革。
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