JP2005330595A - シート状物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】天然皮革調の風合いを有し、機械的性能に優れ、更に柔軟特性及び審美性に優れ、更に製造時に環境負荷の少ない、人工皮革シートが得られる人工皮革用基体の製造方法を提供することにある。
【解決手段】少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーよりなる極細繊維発生型繊維からなる織編物と、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーよりなる極細繊維発生型繊維からなる繊維ウェブを積層して、ニードルパンチ処理を行うに際し、
I.ニードルパンチ処理前に、織編物および繊維ウェブが共に少なくともシリコーン系化合物の含有率70%以上かつ水分含有率5%以下の油剤で処理されていること
II.ニードルパンチ処理後のシート状物の層間剥離強力が6kg/2.5cm以上であることを満足することを特徴とするシート状物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーよりなる極細繊維発生型繊維からなるシート状物の製造方法に関し、さらに詳しくは、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーからなる極細繊維発生型繊維からなる織編物および繊維ウェブの積層体にニードルパンチ処理のための特定性状を有する油剤を付与し、次いでニードルパンチ処理によって絡合せしめるシート状物の製造方法であり、好ましくは人工皮革用シート状物の製造方法に関するものである。
人工皮革は、例えば以下の工程を組み合わせることにより得られることが知られている。すなわち、海島構造繊維を製造する工程、該繊維からなる絡合不織布を製造する工程、必要に応じて不織布を仮固定する工程、該絡合不織布に弾性重合体液を含浸し、凝固させて緻密な発泡体を形成する工程、該繊維から海成分を構成するポリマーを除去して極細繊維束に変性する工程、染色する工程、表面加工する工程等を必要に応じて組み合せることにより得ることができる。
海島構造繊維は、人工皮革を構成する繊維成分である熱可塑性ポリマーに対して相溶性が小さい熱可塑性ポリマーを海成分として複合または混合紡糸することにより得られる。海成分は、人工皮革を構成する繊維成分である熱可塑性ポリマーとは溶剤・分解剤に対する溶解性・分解性を異にして、人工皮革を構成する繊維成分である熱可塑性ポリマー、いわゆる島成分よりも溶解性・分解性が大きいものでなければならない。
従来、このような海成分としては例えばポリエチレン、ポリスチレン、共重合ポリエチレン、変性ポリエステル等のポリマーから選ばれた少なくとも1種のポリマーが用いられている。例えばポリスチレンはパークレンにより、またポリエチレンはトルエンにより容易に抽出可能であり、またスルホイソフタル酸ソーダ共重合ポリエチレンテレフタレート等の変性ポリエステルはアルカリにより除去可能である。そしてこの海島構造繊維から海成分ポリマーを抽出又は分解除去することにより極細繊維束にすることができる。
しかしながら、海成分を除去するときに有機溶剤やアルカリに浸漬して溶解または分解除去するために、抽出後に得られる熱可塑性ポリマーからなる繊維シートの強伸度等の機械的特性あるいは風合等の触感が悪くなるという問題が有った。
また有機溶剤やアルカリを用いて抽出するために、製造時の作業環境が悪くなりやすく、また得られた人工皮革に有機溶剤やアルカリ等が残らないように何度も洗浄する工程が必要であった。
また従来から人工皮革の製造に際しては、天然皮革に類似した柔軟性と機械的性能を得るのに有利な極細繊維と高分子弾性体とが主として用いられ、その具体的製造法についても種々の方法が提案されてきている。しかしながら、その特性上柔軟性を強調しょうとすれば型崩れが起こりやすく、また強力の大きなものは、硬くゴムライクな風合になりやすい。ソフト性、ドレープ性をある程度保ちながら強力を向上する方法として、シート状物の中に織編布類を挿入したものが提案されている。しかし不織布ウェブの間、あるいは片面に織編物を積層しニードルパンチする方法では、織編物糸がニードル針のバーブに糸が引っかかり、織編物の破損が大きいため、強度補強効果が小さく十分な期待効果が得られない。この対策として、織編物を強撚糸にしてニードル処理時の破損を少なくする方法(例えば、特許文献1参照。)、ニードル針のスロートデプスを織編物の糸直径の1/2以下にして、ニードルパンチの際、針のバーブに糸がひっかかり織編物の切断端が表面に露出して外観の品位を低下させないようにする方法(例えば、特許文献2参照。)、また織編物を構成する繊維を0.5デニール以下の極細繊維にして、絡合時に破断した織編物の切断端が表面に露出しても、外観の品位を低下させない方法(例えば、特許文献3参照。)が報告されている。しかしまだ環境負荷が少なく、天然皮革のような風合と機械的性能の両者を満足させるものがまだ実現されていないのが現状である。
特公平04−1113号公報 特公平07−13344号公報 特許第3133159号公報
本発明は、上記問題を解決し、天然皮革調の風合いを有し、機械的性能に優れ、更に柔軟特性及び審美性に優れ、更に製造時に環境負荷の少ない、シート状物を提供する。さらには人工皮革用基体の製造方法を提供することにある。
上記課題を達成すべく本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち本発明は、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーよりなる極細繊維発生型繊維からなる織編物と、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーよりなる極細繊維発生型繊維からなる繊維ウェブを積層して、ニードルパンチ処理を行うに際し、下記I.およびII.を満足することを特徴とするシート状物の製造方法である。
I. ニードルパンチ処理前に、織編物および繊維ウェブが共に少なくともシリコーン系化合物の含有率70%以上かつ水分含有率5%以下の油剤で処理されていること。
II. ニードルパンチ処理後のシート状物の層間剥離強力が6kg/2.5cm以上であること。
そして該織編物への油剤付与量が0.3〜1.2質量%であることが好ましく、また、熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーが粘度平均重合度200〜500、ケン化度90〜99.99モル%、融点160℃〜230℃であることが好ましい。
そして、上記の方法によって得られたシート状物の内部に高分子弾性を含浸する工程、極細繊維発生型繊維を極細繊維化する工程を含む人工皮革基体の製造方法である。
本発明によれば、極細繊維ウェブと極細編織物とが強固に絡合された高密度の不離一体構造となり、従来全く得られなかった高強力、充実感及び柔軟を有する高品位の人工皮革が得られる。
本発明は環境負荷の少ない製造条件で天然皮革ライクな風合いを有し、かつ機械的強度と両立する方法として、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマー(以後、PVAと略することもある。)である極細繊維発生型繊維を積層し、種々の用途に応じた製造条件の選択肢の多いニードルパンチ方法で絡合したシート状物を用いるのが有効である。さらに詳しくは少なくとも1成分がPVAである極細繊維発生型繊維の積層体に、ニードルパンチ処理のための特定性状の油剤を使用し、特定構造の絡合度合いに構成されたシート状物の製造方法により本発明に到達した。
ここで言う少なくとも1成分がPVAである極細繊維発生型繊維の積層体とは、例えば、極細繊維発生型繊維が海島構造型繊維の場合、海成分がPVA、島成分が熱水非溶解性熱可塑性成分からなる織編物と海成分がPVA、島成分が熱水非溶解性熱可塑性成分からなる繊維ウェブの積層体をいう。そして繊維ウェブとしては、短繊維ウェブ、スパンボンド法による長繊維ウェブ、またはそれらの混成集積体、または短繊維ウェブ、長繊維ウェブ単独の集積体であっても、本発明の条件を満たすものであれば特に限定するものではない。そして、環境負荷が少なく、天然皮革ライクな面感、機械的性能を満足させるためには、少なくとも1成分がPVAである極細繊維発生型繊維同士の織編物と短繊維ウェブの積層体が好ましい。
従来品の構造物は織編物に使用されている繊維の単繊維繊度が0.6〜3デシテックスと太いため、柔軟性に限界があった。確かに耐アラビ性(シート状物を伸張した場合に表面における凹凸模様の発生が少ない)や強力は向上するが、また単繊維繊度が太いとそれと絡合されている極細繊維とは染料の吸着が異なり、染色後の色が異なり、薄物商品では色彩に違和感を生じ、摩耗した部分が著しく目立つ等の問題があった。
これらを解消するには、少なくとも極細繊維化後の単繊維繊度が0.0003〜0.4デシテックスの極細繊維を形成することが可能な、少なくとも1成分がPVAよりなる極細繊維発生型繊維からなる繊維ウェブを形成し、このウェブと単糸繊度が8デシテックス以下、極細繊維化後の単繊維繊度が0.003から0.4デシテックスとなる、少なくとも1成分がPVAからなる極細繊維化可能な繊維から構成され、撚数が10〜650T/mであるマルチフィラメント糸から構成された織編物(織物または編物のこと)を重ねてニードルパンチ絡合処理して繊維ウェブ自体の絡合のみならず該繊維ウェブと該織編物との絡合を十分に高めて一体構造を形成せしめシート状物とすることが好ましい。そして、該シート状物の内部に高分子弾性を含浸する工程、極細繊維発生型繊維を極細繊維化する工程を用いた人工皮革基体を製造する方法であることが好ましく、さらに一体構造を形成せしめた該シート状物に必要に応じて、乾熱処理により収縮を発現させる工程を用いることが好ましい。
本発明で得られるシート状物とは、繊維ウェブを構成する極細繊維発生型繊維の繊維同士がその形態を維持しながら絡み合っているばかりでなく、織編物を構成する極細繊維発生型繊維の一部と絡合して、繊維ウェブおよび織編物が絡合一体化しており、その時点の繊維ウェブと織編物の層間剥離強力が6kg/2.5cm以上あることが重要であり、好ましくは8〜14kg/2.5cmである。一般に両者の層間剥離強力が6kg/2,5cmに満たない場合は両者の一体感がなく、このようなシート状物から人工皮革を製造しても、一体感のないペーパーライクな風合いになり、また、繊維ウェブと織編物の絡合工程以降の工程中での形態変化の差によるシワの発生を招き、さらに人工皮革としたときに実用上十分な剥離強力を示すことが出来ない。
本発明のシート状物を得るためには、ニードルパンチ処理工程での絡合方法が重要であり、その絡合状態は繊維に付与する油剤に大きく左右される。本発明で使用する少なくとも一成分がPVAよりなる極細繊維発生型繊維からなる繊維ウェブにおいては、PVAの可塑剤となる水分の影響が大きく、付与する油剤中の水分量の管理が重要となる。付与する油剤中の水分含有率が5%を越えた場合、繊維同士の膠着が起こり、繊維の開繊不良、ニードル時の絡合不良、シート状物の目付斑、絡合時の針折れ等が発生し、製造工程および品質上の問題となる。好ましくは0〜3%、より好ましくは0〜1%、特に好ましくは0%ある。
本発明の極細繊維発生型繊維に使用するPVAは、上記の如く水分による影響が大きく、水分の影響を少なくするには本発明の範囲内の水分含有率からなるシリコーン系化合物で繊維表面を覆うことが必要である。シリコーン系化合物は本発明のPVAと親和性(塗れ性)が良好であるため、繊維表面をシリコーン系化合物で均一に覆うことによって水分の影響を遮断することができる。
付与する油剤の成分中に本発明以下の水分含有率であることは勿論であるが、その成分中の70%以上がシリコーン系化合物であることが必要である。70%未満の場合、シリコーン系化合物が繊維表面を均一に覆うことができず、繊維表面に斑状態で付与されるため、カード通過性およびニードルパンチ処理時の均一性に欠け、カードでのネップの発生、ニードルパンチ処理での絡合が不足しやすい。
繊維表面のシリコーン系化合物は、ニードルパンチ処理時にニードルのバーブにより繊維集合体を構成する繊維をニードルの進行方向への持ち込み程度に影響、すなわち絡合し易さに影響を及ぼし、また油剤中に含まれる水分および、繊維表面に露出したPVAの部分は空気中の水分の影響を受け、繊維同士の摩擦抵抗が高くなり、ニードルパンチ処理によってニードル針による繊維集合体に打ち込まれる繊維の持込難さに影響を及ぼす。
本発明で使用する少なくとも一成分がPVAよりなる極細繊維発生型繊維からなる織編物に付与する油剤も繊維ウェブに付与する油剤と同一のものが好ましく、織編物の構成する糸間の空隙に、ニードル針のバーブによる繊維ウェブの持ち込み時に抵抗がかからずスムーズに絡合するので好ましい。また付与する油剤量は固型分比率で織編物を構成する極細繊維発生型繊維に対し0.3〜1.2質量%であることが好ましく、0.5〜0.8質量%であることがより好ましい。0.3%以上であれば該繊維表面を均一に油剤で覆いやすく、ニードル針のバーブによる繊維の持ち込み時に繊維同士の抵抗が抑制され、十分に交絡しやすい点、あるいは該バーブによる繊維の切断が抑制されることで充分な強度が得られやすい。また1.2質量%以下では繊維同士の過度なすべりが抑制されやすく、ニードル針の打ち込み時と同時に針を抜く時にスムーズな交絡が可能となる点で、充分なシート状物の剥離強力が得られやすい。
シリコーン系化合物としてその好適な具体例としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーンまたはシリコーンポリエーテル共重合体等が挙げられるが、本発明で使用するシリコーン系化合物はそれ自体の種類を何ら限定するものではない。このうち好ましいのは、使用粘度範囲の広いジメチルシリコーンである。付与時の油剤の粘度は付与工程個所により異なり、通常5〜50mm/sが付与しやすいが、粘度が高すぎる場合は使用時に油剤を温水等にて加温し、適正な粘度にして付与すると良い。また油剤の付与処理の順序は特に限定はなく、ニードルパンチング処理前までに均一に付与できる方法であれば、任意であるが、紡糸時の巻き取り前に付与するのが、繊維表面に均一に付与しやすい点で好ましい。
本発明に用いる油剤は発明の範囲内で、本発明の効果を損なわない範囲であれば、帯電防止剤、界面活性剤、希釈剤として鉱物油等を添加してもなんらさしつかえない。
ニードルパンチ条件としては、特に限定は無く公知の方法を用いることができるが、織編物を構成する繊維が繊維ウェブからなる層の表面に貫通してくるような条件が好ましく、繊維ウェブの表面に織編物を構成する繊維が後述するような表面露出度となるように露出するようなニードルパンチ条件がより好ましい。従来の人工皮革においては補強用織編物構成繊維が不織布面に露出しないようなニードルパンチ条件が採用されていたが、本発明では、積極的に露出させるべくニードルパンチを行っても良い点で従来技術と異なる。そして該繊維ウェブの、該織編物と接する面と反対側の面において、該織編物を構成する単繊維の表面露出度が0.3〜20%となるようなニードルパンチ条件が特に好ましい。これにより、機械的特性に優れ、かつ後に行う収縮処理においても、何ら問題を生じることがない。具体的なニードルパンチ条件としては、ニードル針のバーブが繊維ウェブ表面まで貫通するような条件でかつニードルパンチ数が400〜5000パンチ/cmの条件が好ましく、より好ましくは1000〜2000パンチ/cmの条件である。そして、ニードルパンチは、繊維ウェブと織編物を重ね合わせた積層物の両面から行うのが天然皮革様の外観を得る点で好ましい。すなわち、繊維ウェブの表面側に織編物を構成する繊維を露出させるとともに織編物の表面側にも繊維ウェブを構成する繊維を露出させるのが好ましい。つまり少なくとも1成分がPVAよりなる極細繊維発生型繊維よりなる織編物および繊維ウェブが本発明の範囲内の油剤を付与した後にニードル絡合処理することで、織編物と繊維ウェブを本発明の目的効果を十分有するように絡合させることを骨格とするものである。
なおここでいう表面露出度とは、以下に示す式で算出されたものである。そして、表面露出度算出に必要な各面積は、以下の方法を以下の手順により求めた。
1)極細繊維化して得られた極細繊維と織編物の絡合一体化物を減圧パラフィン包埋(約80℃ アスピレーター減圧)する。もちろん高分子弾性体が付与されていても良い。
2)ミクロトームで表層より約100μ程度、切削する。
3)光学顕微鏡で100倍に拡大し、さらにそれを2倍に拡大して写真を撮影
4)パソコンにて画像解析を実施し、繊維ウェブ側の面に存在する織編物構成繊維の面積(P)を計測する。(1cm×1cm)
表面露出度=100×P/(繊維ウェブを構成する繊維を極細繊維化した繊維+織編物を構成する繊維を極細繊維化した繊維)面積
(P:織編物を構成する繊維を極細繊維化した繊維の面積)
分母の(繊維ウェブを構成する繊維を極細繊維化した繊維+織編物を構成する繊維を極細繊維化した繊維)面積の求め方としては、繊維ウェブを構成する繊維を極細繊維化した繊維からなる不織布の見かけ密度と繊維ウェブを構成する繊維の比重から構成繊維の占有割合を計算により求め、計算により求められた値を(繊維ウェブを構成する繊維を極細繊維化した繊維+織編物を構成する繊維を極細繊維化した繊維)面積とする。なお、写真に織編物構成繊維が繊維断面としてではなく横方向に寝た状態で写っている場合には、その繊維は除外して面積を求める。
本発明の繊維ウェブおよび織編物を形成する極細繊維発生型繊維から得られる極細繊維を構成する重合体としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、芳香族ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、アクリロニトリル系などの繊維形成能を有する重合体が好適である。この中でもPET、PBT、ナイロン6、ナイロン66等は加工した製品の風合及び実用性能の点から特に望ましい。そして、これら重合体は融点が160℃以上であることが好ましく、160℃未満の場合には、形態安定性が劣り、実用性の点から好ましくない。
なお、融点は、示差走査熱量計(以下、DSCと称する。)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合の重合体の融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
また、繊維ウェブおよび織編物を構成する極細繊維発生型繊維として、海島型繊維のように複合繊維を構成する一部の重合体を除去することによって極細繊維化されるものを用いる場合には、除去成分として、例えばポリスチレン及びその共重合体、ポリエチレン、PVA、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等の溶剤除去可能なポリマーの1種または2種以上を用いることができるが、本発明においては、少なくともその1成分としてPVAを用いることが重要である。除去成分としてPVAを用いることで溶解除去時にテンションがかかりにくく形態変化が少ないウインスおよび液流染色機等で代表されるリラックス装置で、温水による柔軟効果を付与させると同時に、極細繊維化処理が可能となる点で、人工皮革とした場合に天然皮革調の風合いが得られやすく、更に人工皮革の製造時に環境負荷を少なくすることができる。
また、PVAを溶解除去して極細繊維化する際にシート状物に収縮が生じ、人工皮革の高密度化が達成され、人工皮革のドレープ性や風合い等が天然皮革に酷似したものとなる。PVA溶解除去前の極細繊維発生型繊維中に占めるPVAの質量比率としては5〜70質量%が上記の点で好ましい。より好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは15〜50質量%である。
次に本発明の繊維ウェブ及び織編物を構成する極細繊維発生型繊維に用いられるPVAについて詳述する。本発明の繊維ウェブおよび織編物を構成する繊維に用いられるPVAとしては、粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)が200〜500のものが好ましく、中でも230〜470の範囲が好ましく、250〜450が特に好ましい。重合度が200未満の場合には溶融粘度が低すぎて、安定な複合繊維が得られにくい。重合度が500を越えると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルからポリマーを吐出することが困難となる。重合度500以下のいわゆる低重合度PVAを用いることにより、熱水で溶解するときに溶解速度が速くなるという利点が有る。
ここで言うPVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再鹸化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められるものである。
P=([η]10/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に達せられる。
本発明のPVAの鹸化度は90〜99.99モル%である。93〜99.98モル%が好ましく、94〜99.97モル%がより好ましく、96〜99.96モル%が特に好ましい。鹸化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸を行うことができないのみならず、生分解性が低下し、更に後述する共重合モノマーの種類によってはPVAの水溶性が低下し、本発明の複合繊維を得ることができない場合がある。一方、鹸化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することができにくい。
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。PVAを溶解した後のPVA含有廃液の処理には活性汚泥法が好ましい。該PVA水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月の間で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
本発明に用いられるPVAの融点(T/m)は160〜230℃が好ましく、170〜227℃がより好ましく、175〜224℃が特に好ましく、180〜220℃がとりわけ好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し繊維強度が低くなると同時に、PVAの熱安定性が悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を越えると溶融紡糸温度が高くなり紡糸温度とPVAの分解温度が近づくためにPVA繊維を安定に製造することができない。
PVAの融点は、DSCを用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
PVAは、ビニルエステル単位を主体として有するポリマーをケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
本発明で使用されるPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に1〜20モル%存在していることが好ましく、さらに4〜15モル%が好ましく、6〜13モル%が特に好ましい。さらに、α−オレフィンがエチレンである場合には、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用する場合である。
本発明で使用されるPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、a、a’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’ーアゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
本発明において、繊維ウェブおよび織編物を製造するのに好適に用いられる極細繊維発生型繊維は、チップブレンド方式や複合紡糸方式で代表される公知の紡糸方法を用いて得ることができる。そして、少なくとも一成分がPVAで、相溶性の異なる異種ポリマーとからなる海島型構造繊維または多層積層型繊維等からPVAを除去することにより極細繊維または極細繊維束が得られるような繊維を言う。極細繊維発生型繊維の繊度としては、8デシテックス以下が好ましく、1〜6デシテックスがウェブ工程安定性の点でより好ましい。
また、繊維ウェブを構成する極細繊維発生型繊維は、効果的な絡合が可能な点で繊維長が20mm以上であることが好ましい。長繊維等を用いることが可能であり、上限値については、特に制限されないが、単繊維ウェブの場合には製造し易さから110mm以下であることが好ましい。ただし、その後の布帛のスライスやバフィングなどの後加工を経ることにより、最終製品中には切断されてしまって20mm未満になった繊維が含まれていることがあるが、これは効果的絡合が達成された後に発生した短い繊維であるので、製品の人工皮革用基体中に存在していたとしても特別に不都合はない。
極細処理後の繊維ウェブの目付けとしては200〜500g/mの範囲が人工皮革としての物性、風合及び外観品位の点で好ましい。
本発明の人工皮革用基体を構成する繊維ウェブの極細繊維の太さ(極細繊維化後の太さ)としては、人工皮革としての性能、すなわち柔軟性、触感、外観品位、強力特性などを高めるために0.0003〜0.4デシテックスが採用される。好ましくは0.003〜0.2デシテックス、更に好ましくは0.007〜0.1デシテックスの範囲である。
織編物を構成する極細繊維発生型繊維の単繊維繊度は収縮処理前で8デシテックス以下であることが好ましく。より好ましくは5デシテックス以下、特に好ましくは、収縮後かつPVA溶解除去後において、繊維ウェブを構成する極細繊維の繊度と同等レベルの0.0003〜0.4デシテックスの範囲である。繊維ウェブを構成する極細繊維の繊度と同等レベルにすることにより人工皮革としての外観、一体感等の充実感および風合は飛躍的に向上する。
織編物を構成する極細繊維発生型繊維はフィラメント(長繊維)の形態を有しているのが織編物を構成する糸、さらには織編物とするそれぞれの工程での工程安定性の点で好ましく、織編物を構成している糸としてはマルチフィラメント糸がより好ましい。マルチフィラメント糸の太さとしては50〜150デシテックスの範囲が好ましい。
また、撚り数としては2500T/m以下が好ましく、1000T/m以下がより好ましく、10〜650T/mが特に好ましい。上記範囲を採ることによってニードル絡合処理工程で織編物を構成する繊維の一部を繊維ウェブ層へ移動させ絡合を容易にすることができる。
編織物の目付は、目的に応じて適宜設定可能であるが、極細処理後において20〜200g/m の範囲であることが望ましく、最も好適には30〜150g/m の範囲である。目付が20g/m 未満になると編織物としての形態が極めてルーズになり、目ずれ等布帛の安定性に欠ける。また、目付が200g/mを越えると編織物組織が密になり、繊維ウェブ層中の貫通が不充分となり高絡合化が進まず不離一体化した構造物を作るのが困難になりやすい。編織物の種類については、経編、トリコット編で代表される緯編、レース編及びそれらの編み方を基本とした各種の編物、あるいは平織、綾織、朱子織及びそれらの織り方を基本とした各種の織物などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
このようにして繊維ウェブと織編物がニードルパンチ処理によって一体化されたシート状物に、次に収縮処理、好ましくは乾熱収縮処理を行う。この収縮処理により布帛の面積を収縮前の40〜90%にすることが好ましい。この範囲で収縮処理を行うにより緻密構造が得られる。収縮の程度が、収縮前の面積の90%以上となるような低い収縮では緻密感が得られ難く、風合いが低下する傾向が有り、逆に収縮前の面積の40%未満となるような大きな収縮の場合には風合いが硬化しやすくなる。
収縮処理は、上記シート状物を160〜190℃の雰囲気に0.5〜3分放置することにより好適に行なわれる。
収縮させたシート状物に、次に高分子弾性体を付与する。本発明で使用される高分子弾性体としては、ポリウレタン、SBR、NBR、ポリアミノ酸、アクリル系の接着剤、等のゴム状弾性を有する重合体ならば何でも使用可能である。好ましくはポリウレタンである。付与方法としては、高分子弾性体の溶液やエマルジョン等を含浸した後湿式凝固する方法、あるいはそれらの溶液やエマルジョンなどを含浸して乾燥固着させる方法等種々の方法が使用できる。必要により、高分子弾性体を布帛に付与する際あるいはその後に、表面に塗布して銀面調の層を形成してもよい。付与する高分子弾性体の量としては、得られる人工皮革用基体の質量の5〜45質量%の範囲が好ましい。
また、繊維ウェブに対する編織物の質量割合は50%以下であることが好ましく、より好ましくは10〜50%である。繊維ウェブに対する編織物類の質量割合が50%を越えると、外観、風合が低下する傾向にある。逆に10%未満の場合には引裂き強度で代表される機械的物性が低下する傾向にある。
次に、繊維ウェブまたは織編物を構成する極細繊維発生型繊維の極細繊維化処理を行う。極細繊維発生型繊維は、繊維を構成する少なくとも1成分である熱溶融性で熱水溶解性のPVAを熱水中に浸漬したのち絞液を行う操作を複数回繰り返すことにより極細繊維化が行なわれるが、液流染色機等のテンションのかからない揉み効果のある設備で処理するのが柔軟性の点で好ましい。具体的な熱水の温度としては70〜120℃である。なお、本発明においては、繊維の極細繊維化は高分子弾性体の付与前に行ってもよい。しかしながら、製品の柔軟性の点からは、高分子弾性体を付与した後に極細繊維化を行うのが好ましい。また熱水によるPVA除去作業中に繊維ウェブや織編物の更なる収縮が生じる。それにより、一層の緻密化が可能となる。この点も、本発明の人工皮革用基体に天然皮革に酷似した引裂強度や風合いや充実感をもたらす上で極めて重要である。
本発明の人工皮革用基体の繊維ウェブ側表面をサンドペーパー等によりバフィングすることによりスエード調またはヌバック調の人工皮革が得られる。かかる人工皮革の場合、ニードルパンチによる繊維ウェブと編織物との強固な絡合のため耐摩耗性も極めて強く立毛繊維の脱落も殆どみられない。
また、本発明の人工皮革用基体の表面に、各種樹脂を塗布したり、更に表面を溶融加熱や溶剤で溶解して平滑化することにより銀面調(半銀調を含む)人工皮革とすることができる。もちろん、染色処理や着色処理を行うことができ、また表面をエンボス処理して表面に目的に適した表面凹凸を付与することが可能であり、もみ処理を行うことにより柔軟化を行うことも可能である。
このものは、従来技術の一つとしてあった高圧水流によって、編織物構成糸中の単繊維間間隙に繊維ウェブ構成極細短繊維を絡めて得られるものと比較しても、非常に柔軟でかつ高品位、また不離一体構造も十分な極めて商品価値の大なるものである。
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
[シート状物の層間剥離強力測定法]
シート状物をたて方向(シート長さ方向)に23cm、横方向(シート長さ方向と直交する方向)に巾2.5cm切り取りサンプルとする。該サンプルの厚さのほぼ中央部分までカミソリ刃等で巾方向に切れ目を入れ、長さ約10cmを手で剥離させる。剥離部分の両端をチャックで挟み、引張試験機で引張速度100mm/分で剥離強力を測定する。得られたSS曲線から剥離強力の平坦な部分の平均値を求める。そしてサンプル3個の平均値で表す。
[水溶性熱可塑生ポリビニルアルコールの製造]
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kg/cmとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cmに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。
反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニルの酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加して鹸化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置して鹸化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVAを得た。
得られたエチレン変性PVAの鹸化度は98.4モル%であった。また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対して0.03質量部であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをd6−DMSOに溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は10モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ330であった。該精製PVAの1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を5000MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から前述のとおり求めたところ、それぞれ1.50モル%および83%であった。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ206℃であった。
[原綿の製造]
上記PVAを海成分に用い、固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等質量混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸10モル%含有したポリエチレンテレフタレ−ト(融点234℃)チップを島成分とし、島成分が64島となるような溶融複合紡糸用口金(0.25φ、550ホール)を用い、250℃で口金より吐出し、油剤としてジメチールシリコーン/オクチルホスフェート塩=93/7の混合溶液(水分含有率0%)を付与しながら紡糸した。(海島比=3/7質量比)。付与量は0.7質量%であった。
該紡糸繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸した。紡糸性、連続ランニング性、延伸性は良好で全く問題がなかった。この海島型複合繊維を、捲縮機で捲縮を付与し51mmにカットしてステープル化し、繊度5デシテックス、強度2.8cN/dtex、伸度37%の海島型複合繊維ステープルを得た。このステープルからクロスラップ法で目付250g/mのウェブを作製した。カード通過性はネップの発生も無く良好であつた。
[織編物の製造]
上記PVAを海成分に用い、固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸10モル%含有したポリエチレンテレフタレ−ト(融点234℃)チップを島成分とし、島成分が37島となるような溶融複合紡糸用口金(0.25φ、24ホール)を用い、250℃で口金より吐出し、油剤としてジメチールシリコーン/オクチルホスフェート塩=97/3の混合溶液(水分含有率0%)を付与しながら紡糸した(海島比=4:6(質量比)。付与量は0.7質量%であった。
該紡糸繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸し、84デシテックス−24フィラメントの海島型複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸性、連続ランニング性、延伸性は良好で全く問題がなかった。この海島型複合繊維を撚り数550T/mにし、平織物(織密度105×84本/inch、目付125g/m)を作製した。
スクリムの上面に上記ウェブを積層し、次いで#40の1バーブニードル針で上面下面交互に合計2000パンチ/cmの条件でニードルパンチ処理を行った。ニードル時の絡合収縮により目付は365g/mとなっていた。また繊維ウェブと織編物との層間剥離強力は12kg/2.5cmと充分に絡合一体化しており、充実感のあるシート状物を得た。
このシート状物を190℃の乾熱処理を行い、シート状物を面積換算で30%収縮させ(収縮処理後の面積は収縮処理前面積比で70%)その後170℃のクリアランス金属ロールで処理し、比重0.65、目付520g/mの表面の平滑なシート状物を得た。このシート状物に、ポリエーテル系ポリウレタンの固形分35%のエマルジョン水溶液を含浸後150℃で20分間乾燥後に、熱水(90℃)中で海成分及のPVAポリマーを溶出除去し、人工皮革用基体を得た。得られた人工皮革用基体の繊維ウェブ側表面をサンドペーパーでバフィング後、分散染料SumikaronULBlueGF8%/owf130℃で染色することにより表面に微細な立毛を有するスエード調の人工皮革とした。シートにおける弾性重合体の質量割合は21%で、シートの厚みは0.8mm、目付480g/m、比重0.6、強力タテ50×ヨコ41kg/2.5cmと機械的物性も高く、一体感のある天然皮革ライクな充実した風合いを有するであった。また表面露出度は約2%であった。
紡糸時に付与する油剤の組成および織編物の製造において付与する油剤の組成を、ジメチールシリコーン/脂肪酸エステル/オクチルホスフェート塩=83/15/2に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。
紡糸性、延伸性は全く問題なく、またカード通過性もネップの発生も無く、ニードル時の針折れも無く良好で、得られたの繊維ウェブと織物の層間剥離強力は15kg/2.5cmと充分に絡合一体化しており、充実感のあるシート状物であった。また実施例1と同様に一体感のある天皮ライクの充実した風合いを有するスエードを得た。
紡糸時に付与する油剤の組成および織編物の製造において付与する油剤の組成を、ジメチールシリコーン/脂肪酸エステル/オクチルホスフェート塩/水=80/15/2/3に変更した以外は実施例1と同様の方法で作製した。
紡糸性、延伸性は全く問題なく、またカード通過性もネップの発生も無く、ニードル時の針折れも無く良好、得られたの繊維ウェブと織物の層間剥離強力は15kg/2.5cmと充分に絡合一体化しており、充実感のあるシート状物であった。また実施例1と同様に一体感のある天皮ライクの充実した風合いを有するスエードを得た。
比較例1
紡糸時に付与する油剤の組成および織編物の製造において付与する油剤の組成を、ジメチールシリコーン/脂肪酸エステル/オクチルホスフェート塩/水=80/10/2/8に変更した以外は実施例1と同様の方法でシート状物化を作製した。
紡糸性は全く問題なかったが、紡糸時の油剤付与後に単繊維同士の接着が発生した。得られた原綿はカード通過時に多量のネップが発生し、またニードル工程においても多量の針折れが発生した。したがって人工皮革としての評価はできなかった。
比較例2
シート状物の製造において、実施例1のニードルパンチング条件を650パンチ/cmに変更する以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたシート状物の層間剥離強力は2kg/2.5cmと低く、繊維ウェブと織物が分離した感触で得られ製品も上層と下層の一体感がなく、折れシワの多い、品位のないスエードとなった。
比較例3
紡糸時に付与する油剤の組成および織編物の製造において付与する油剤の組成を、ジメチールシリコーン/鉱物油/オクチルホスフェート塩=50/48/2に変更した以外は実施例1と同様の方法でシート状物化をした。
紡糸性、延伸には全く問題なかった。油剤の付与量は0.8質量%であった。紡糸時の油剤付与後の繊維走行中の手触りの感触では繊維のすべり斑が感じられ、繊維に対して油剤が均一に付与されていなかった。得られた原綿はカード通過時に小量のネップが発生し、またニードル絡合処理時の音が大きくなっていた。この繊維ウェブと織物の層間剥離強力は4kg/2.5cmと充分に一体化されておらず、繊維ウェブと織物が分離した感触で、得られ製品も上層と下層の一体感のない、折れシワの多い、外観品位の低いスエードとなった。
比較例4
織編物繊維の製造において紡糸時に油剤の付与をしない以外は実施例1と同様の方法でシート状物を作製した。
ニードルパンチ処理工程において、ウエッブが織物糸の空間を貫通する時の抵抗が大きく、ニードルパンチ処理時の音が大きく、また多量の針折が発生した。したがって人工皮革としての評価はできなかった。
参考例1
実施例1で得られた人工皮革用基体の繊維ウェブ側表面にポリウレタンの溶液を塗布した後、乾燥させ、更に表面に天然皮革調のシボ模様をエンボスにより付与し、更に柔軟化処理及び染色処理を行ったところ、いずれも銀付きの天然皮革に極めて類似したものであった。
本発明の人工皮革は、靴、鞄、手袋、野球用グローブ、ベルト、小物入れ等の雑貨の他、ソファーの上張り材等のインテリア用品、自動車や船舶、飛行機等の座席や内張り材、さらにブレザー、コート、スカート、ベスト等で代表される衣料等の用途に用いることができる。

Claims (4)

  1. 少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーよりなる極細繊維発生型繊維からなる織編物と、少なくとも1成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーよりなる極細繊維発生型繊維からなる繊維ウェブを積層して、ニードルパンチ処理を行うに際し、下記I.およびII.を満足することを特徴とするシート状物の製造方法。
    I.ニードルパンチ処理前に、織編物および繊維ウェブが共に少なくともシリコーン系化合物の含有率70%以上かつ水分含有率5%以下の油剤で処理されていること。
    II.ニードルパンチ処理後のシート状物の層間剥離強力が6kg/2.5cm以上であること。
  2. 織編物への油剤付与量が0.3〜1.2質量%である請求項1に記載のシート状物の製造方法。
  3. 熱可塑性ポリビニルアルコール系ポリマーが粘度平均重合度200〜500、ケン化度90〜99.99モル%、融点160℃〜230℃である請求項1または2に記載のシート状物の製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれかの方法によって得られたシート状物の内部に高分子弾性を含浸する工程、極細繊維発生型繊維を極細繊維化する工程を含む人工皮革基体の製造方法。
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