以下、本発明に係わる運転評価システム及び車載装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる運転評価システムの第1実施形態を概略的に示すシステム構成図である。同図において、本実施形態の運転評価システム1は、車両のドライバがエコ運転を行っているかどうかを評価するシステムである。運転評価システム1は、車両に搭載された車載装置2と、センターCに設置されたコントローラ3及び無線通信機4とを具備している。
車載装置2は、ナビゲーション5と、ACC(アクセサリ)スイッチ6と、車両情報取得部7とを備えている。車両情報取得部7は、例えばCANバスより車両情報を取得する。車両情報としては、燃料噴射量、走行距離、アクセル開度、車速、加減速度、停車時間等がある。
ナビゲーション5は、タッチディスプレイ等の画面入出力部8と、ナビ情報取得部9と、ECU(Electronic Control Unit)10と、メモリ11と、通信部12とを備えている。
画面入出力部8は、車両の目的地等を設定入力するための画面入力機能と、走行経路案内等の情報を表示するための画面出力機能とを有している。なお、画面入出力部8としては、特にタッチディスプレイ等に限られず、画面入力機能及び画面出力機能が異なる手段で構成されたものでも良い。
ナビ情報取得部9は、車両が目的地までの走行ルートに沿って走行するためのナビゲーション情報(ナビ情報)を取得する。ナビ情報としては、走行ルートのリンクID、GPSに基づく車両の現在位置(緯度及び経度)、曜日、時刻等の情報がある。目的地までの走行ルートは複数の区間(リンクIDに相当)に区切られている。
ECU10は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入出力回路等により構成されている。ECU10は、車両情報取得部7により取得した車両情報とナビ情報取得部9により取得したナビ情報とを入力し、所定の処理を行い、走行データ(後述)をセンターCにアップロードする。このECU10の具体的な処理手順についは、後で詳述する。
メモリ11は、センターCに送るべき走行データ等の情報を記憶する。通信部12は、センターCの無線通信機4との間で無線通信を行う。
センターCのコントローラ3には、地図情報が格納される地図データベース13が接続されている。コントローラ3は、ナビゲーション5から送られてきた走行データを地図データベース13に登録する。このコントローラ3の処理手順については、後で詳述する。
図2は、ナビゲーション5のECU10により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。図2において、まずACCスイッチ6がONされたかどうかを判断し(手順S101)、ACCスイッチ6がONされたときは、車両情報取得部7により取得された車両情報を入力する(手順S102)。そして、ナビ情報取得部9により取得されたナビ情報を入力する(手順S103)。
続いて、車両が1つの区間内の走行を終了したかどうかを判断する(手順S104)。このとき、リンクIDが切り替わるタイミングを区間内の走行終了の判断基準とする。車両が1つの区間内を走行しているときは、手順S102に戻る。つまり、車両が一定区間内を走行する間、所定のサンプリング間隔で車両情報及びナビ情報が入力されることになる。一方、車両が1つの区間内の走行を終了したときは、車両情報の燃料噴射量及び走行距離から、車両が当該区間内を走行したときの燃費を算出する(手順S105)。
続いて、上記と同一の区間(燃費を算出した区間)の基準データがあるかどうかを判断する(手順S106)。基準データは、区間毎に設定される燃費の基準値である。上記と同一の区間の基準データがないときは、手順S105で得られた燃費値をその区間の基準データとして設定する(手順S107)。このとき、基準データは、道路状況を考慮し、同じ区間に対して時間帯別、曜日別に複数設定しても良い。
一方、上記と同一の区間の基準データがあるときは、手順S105で得られた燃費値と基準データとの差分が所定範囲(例えば基準データの±10%の範囲)を超えたかどうか、つまり燃費値と基準データとの差分が上限閾値(例えば基準データの+10%の値)よりも高いか或いは下限閾値(例えば基準データの−10%の値)よりも低いかどうかを判断する(手順S108)。
燃費値と基準データとの差分が所定範囲を超えたときは、当該区間を今回より前にn回(n≧1)走行したときと同じ燃費値が得られたかどうか、つまり同じ燃費値が今回を含めて連続して複数回得られたかどうかを判断する(手順S109)。当該区間を今回より前にn回走行したときと同じ燃費値が得られたときは、その燃費値を今回走行した区間の基準データとして設定する(手順S107)。このときも、基準データは、同じ区間に対して時間帯別、曜日別に複数設定しても良い。
続いて、手順S105で算出された燃費値(エコ運転データ)を含む走行データをメモリ11に記録する(手順S110)。走行データには、燃費値の付属情報として車両の現在位置及び運転操作情報(車両情報としてのアクセル開度、車速、加減速度、停車時間等)が含まれる。手順S109において当該区間を今回より前にn回走行したときと同じ燃費値が得られていないと判断されたときは、手順S107を省略して手順S110を実行する。
手順S110が実行された後、または手順S108において燃費値と基準データとの差分が所定範囲を超えていないと判断されたときは、ACCスイッチ6がOFFされたかどうかを判断する(手順S111)。ACCスイッチ6がOFFされていないときは、手順S102に戻る。ACCスイッチ6がOFFされたときは、メモリ11に記録されている走行ルートの各区間の走行データを通信部12を介してセンターCに送信する(手順S112)。
図3は、センターCのコントローラ3により実行される処理手順を示すフローチャートである。図3において、まずナビゲーション5から送信された走行ルートの各区間の走行データを無線通信機4を介して受信したかどうか判断し(手順S121)、走行ルートの各区間の走行データを受信したときは、その走行データを地図DB13に格納する(手順S122)。
以上において、車両情報取得部7、ナビゲーション5のナビ情報取得部9及びECU10の上記手順S102〜S105は、区間毎にドライバの運転データを取得する運転データ取得手段を構成する。ECU10の上記手順S108は、運転データ取得手段により取得された運転データが区間毎に設定された評価条件を満たすかどうかを判断する判断手段を構成する。ECU10の上記手順S110,S112及び通信部12は、判断手段により運転データが評価条件を満たすと判断されたときに、運転データをセンターCにアップロードするアップロード手段を構成する。
ECU10の上記手順S106,S107は、運転データを評価するための区間毎の基準データを設定する基準データ設定手段を構成する。ECU10の上記手順S109,S107は、基準データを変更する基準データ変更手段を構成する。
次に、図4を用いて本実施形態の動作について説明する。図4では、車両の走行ルートが区間A〜Eに細分化されている。
車両が走行ルートを1回目に走行するときは、未だ基準データが存在しないため、区間A〜Eでの燃費値が全て基準データとして設定され、これらの燃費値を含む走行データが全てセンターCに送信される。
車両が走行ルートを2回目に走行するときは、区間A〜Eでの燃費値が1回目の走行時に設定された基準データと比較される。このとき、区間A,D,Eにおける基準データと燃費値との差分は所定範囲(基準データの±10%の範囲)内にあるため、区間A,D,Eでの燃費値はセンターCに送信されない。区間B,Cにおける基準データと燃費値との差分は所定範囲を超えるため、区間B,Cでの燃費値はセンターCに送信される。
車両が走行ルートを3回目に走行するときも、区間A〜Eでの燃費値が1回目の走行時に設定された基準データと比較される。このとき、区間A,B,D,Eにおける基準データと燃費値との差分は所定範囲内にあるため、区間A,B,D,Eでの燃費値はセンターCに送信されない。区間Cにおける基準データと燃費値との差分は所定範囲を超えるため、区間Cでの燃費値はセンターCに送信される。
その後、車両が走行ルートをn回目に走行するときも、区間A〜Eでの燃費値が1回目の走行時に設定された基準データと比較される。このとき、区間Cにおける基準データと燃費値との差分のみが所定範囲を超える。そして、区間Cでの燃費値は、2回目及び3回目の走行時と同じ値である。このため、最初に設定された区間Cでの基準データがドライバの運転や道路状況に合わないと推定され、区間Cでの燃費値が新たな基準データとして置き換えられる。
以上のように本実施形態にあっては、走行ルートの各区間での燃費値を基準データと比較し、基準データと燃費値との差分が所定範囲を超えたときは、その燃費値を含む走行データをセンターCにアップロードし、基準データと燃費値との差分が所定範囲を超えないときは、その燃費値を含む走行データをセンターCにアップロードしないようにする。このようにセンターCへの走行データのアップロードを間引くようにしたので、1トリップ(ACCスイッチ6のONからOFFまでの間)において全ての走行データをセンターCに送信する場合に比べて、センターCに対する通信データ量を低減することができる。これにより、通信料を下げることが可能となる。また、センターCにおいて走行データを統計データとして取り扱う場合に、処理の負荷を低減し、システムコストを抑えることが可能となる。
また、同じ区間を何度も走行したときに、初期設定された基準データとは異なる燃費値が複数回連続して得られたときは、基準データを当該燃費値に変更するので、ドライバの運転や道路状況に合った適切な基準データが設定されることになる。これにより、センターCに対する通信データ量を更に低減することができる。
さらに、車両の現在位置を走行データに含めるようにしたので、センターCにおいて走行ルート上のどの区間でエコ運転に注力すれば良いかを判断することができる。また、運転操作情報を走行データに含めるようにしたので、センターCにおいて基準データと燃費値との差分が所定範囲を超えたときの要因が特定しやすくなる。
図5は、本発明に係わる運転評価システムの第2実施形態を概略的に示すシステム構成図である。図中、第1実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
同図において、車載装置2のナビゲーション5は、上記のECU10に代えて、ECU20を備えている。このECU20の処理手順については、後で詳述する。センターCは、上記のコントローラ3に代えて、コントローラ21を備えている。コントローラ21は、燃費平均値算出部22と、基準データ配信部23と、データ処理部24とを有している。
燃費平均値算出部22は、多数のドライバの走行データを集約し、同一車種の車両を運転する各ドライバの区間毎の燃費の平均値を算出する。基準データ配信部23は、燃費平均値算出部22により算出された区間毎の燃費の平均値に基づいて、走行ルートの各区間の基準データを生成し、その基準データを該当する車両の車載装置2に配信する。燃費平均値算出部22及び基準データ配信部23の処理手順については、後で詳述する。
データ処理部24は、車載装置2から送られてきた走行データを地図データベース13に登録する処理を行う。この処理は、前述の図3に示す手順に従って実行される。
図6は、ナビゲーション5のECU20により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。図6において、手順S101でACCスイッチ6がONされたときは、画面入出力部8により目的地が設定されたかどうかを判断する(手順S131)。目的地が設定されたときは、目的地までの走行ルートの各区間の基準データがメモリ11に登録されていないかどうかを判断する(手順S132)。
走行ルートの各区間の基準データがメモリ11に登録されているときは、上記の手順S102に移る。走行ルートの各区間の基準データがメモリ11に登録されていないときは、その走行ルートの情報を通信部12を介してセンターCに送信する(手順S133)。
その後、センターCから配信された走行ルートの各区間の基準データを受信したかどうかを判断し(手順S134)、走行ルートの各区間の基準データを受信したときは、その基準データをメモリ11に登録し(手順S135)、上記の手順S102に移る。手順S102〜S105の処理については、図2に示すフローチャートと同様である。
手順S108において燃費値と基準データとの差分が所定範囲を超えたと判断されたときは、手順S105で得られた燃費値(エコ運転データ)を含む走行データをメモリ11に記録し(手順S110)、上記手順S111に移り、燃費値と基準データとの差分が所定範囲を超えていないと判断されたときは、手順S110を省略して手順S111に移る。そして、上記手順S112を実行する。
図7は、燃費平均値算出部22により実行される処理手順を示すフローチャートである。図7において、まず複数の車両から送信された複数のドライバ(ユーザ)の走行データを受信したかどうかを判断する(手順S141)。
複数のドライバの走行データを受信したときは、同一車種の車両を運転する各ドライバの燃費の平均値を区間単位で算出する(手順S142)。このとき、各ドライバの燃費の平均値を時間帯別、曜日別に集約して算出しても良い。
そして、その各ドライバの燃費の平均値を地図データベース13に登録する(手順S143)。なお、新しい施設がオープンしたために交通流が変化する等といった道路状況の変化に対応するため、地図データベース13に登録された各ドライバの燃費の平均値を定期的に更新しても良い。
図8は、基準データ配信部23により実行される処理手順を示すフローチャートである。図8において、まず車載装置2から送信された走行ルートの情報を無線通信機4を介して受信したかどうかを判断する(手順S151)。
走行ルートの情報を受信したときは、その走行ルートの各区間において、車載装置2を搭載した車両と同一車種の車両を運転する各ドライバの燃費の平均値を地図データベース13から取り出し、走行ルートに対する基準データを生成する(手順S152)。このとき、時間帯別、曜日別に基準データを生成しても良い。そして、その走行ルートに対する基準データを無線通信機4を介して車載装置2に配信する(手順S153)。
以上において、車両情報取得部7、ナビゲーション5のナビ情報取得部9及びECU20の上記手順S102〜S105は、区間毎にドライバの運転データを取得する運転データ取得手段を構成する。ECU20の上記手順S108は、運転データ取得手段により取得された運転データが区間毎に設定された評価条件を満たすかどうかを判断する判断手段を構成する。ECU20の上記手順S110,S112及び通信部12は、判断手段により運転データが評価条件を満たすと判断されたときに、運転データをセンターCにアップロードするアップロード手段を構成する。
コントローラ21の燃費平均値算出部22及び基準データ配信部23と無線通信機4とは、運転データを評価するための区間毎の基準データを設定する基準データ設定手段を構成する。
次に、図9を用いて本実施形態の動作について説明する。図9でも、車両の走行ルートが区間A〜Eに細分化されている。
まず車両のドライバは、ナビゲーション5の画面入出力部8により目的地を設定する。このとき、目的地までの走行ルートの各区間の基準データがメモリ11に登録されていない場合は、その走行ルートの情報がセンターCに送信される。走行ルートの情報がセンターCのコントローラ21で受信されると、走行ルートに対する基準データが生成され、その基準データがコントローラ21から車載装置2に配信される。走行ルートに対する基準データがナビゲーション5のECU20で受信されると、その基準データがメモリ11に登録される。従って、図9に示すように、車載装置2が区間A〜Eでの基準データを有することとなる。
そして、車両が走行ルートを1回目に走行するときは、区間A〜Eでの燃費値が基準データと比較される。このとき、区間A,C,Dにおける基準データと燃費値との差分は所定範囲(基準データの±10%の範囲)内にあるため、区間A,C,Dでの燃費値はセンターCに送信されない。区間B,Eにおける基準データと燃費値との差分は所定範囲を超えるため、区間B,Eでの燃費値はセンターCに送信される。
以上のように本実施形態においては、目的地を設定したときに、走行ルートの各区間の基準データが無い場合には、センターCから車載装置2に走行ルートに対する基準データを配信するようにしたので、車両が初めて走行する走行ルートに対しても、燃費値を基準データと比較し、基準データと燃費値との差分が所定範囲を超えたときのみ走行データをセンターCにアップロードすることが可能となる。これにより、車両が初めての走行ルートを走行する場合でも、センターCに対する通信データ量を低減することができる。
なお、本実施形態では、同一車種の車両を運転する各ドライバの燃費の平均値をとって基準データを生成したが、用途等に応じて基準データを設定しても良い。
以上、本発明に係わる運転評価システム及び車載装置の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えばセンターCのコントローラ3において、車載装置2から送られてきた走行データに基づいてエコ運転の評価を行っても良い。図10は、図3に示すフローチャートの変形例として、エコ運転評価機能を有するコントローラ3により実行される処理手順を示すフローチャートである。
図10において、上記の手順S122を実行した後、エコ運転できているかどうかを判定する(手順S123)。例えば、燃費値が基準データよりも高いときは、エコ運転できていると判定し、ドライバに対する運転アドバイスを不要とする。燃費値が基準データよりも低いときは、エコ運転できていないと判定し、ドライバに対する運転アドバイスを必要とする。
続いて、手順S123で判定された結果を無線通信機4を介して車載装置2に送信する(手順S124)。車載装置2に送信された情報は、ナビゲーション5の画面入出力部8に画面表示される。これにより、エコ運転の評価結果をドライバが直ちに知ることができる。
具体的には、エコ運転できていると判定されたときは、その旨を車載装置2に送信する。また、燃費値があるレベルに達したときは、レベルアップした旨を車載装置2に送信し、ドライバに対してエコ運転の継続を促したり、モチベーションのアップにつなげても良い。エコ運転できていないと判定されたときは、エコ運転できていない区間を明示して具体的な運転アドバイスを実施するためのデータを車載装置2に送信する。このとき、アクセル開度等を他人のデータと比較することにより、適切な運転アドバイスを行うことができる。また、燃費値があるレベルに低下したときは、レベルダウンした旨を車載装置2に送信し、ドライバに対してエコ運転の改善を促したり、モチベーションのアップにつなげても良い。
さらに、エコ運転できているドライバの走行データをセンターCに蓄積することで、他のドライバの模範データとしても良い。この場合、例えば図11に示すように、ドライバの燃費値の平均値を、同一区間を走行した他の模範ドライバの燃費値と比較し、その比較結果を車載装置2に送信して、ナビゲーション5の画面入出力部8に画面表示させても良い。
また、上記第2実施形態では、目的地までの走行ルートの基準データが車載装置2に無いときに、走行ルートの情報をセンターCに送信し、センターCから車載装置2に当該走行ルートの基準データを配信するようにしたが、特にその手法には限られず、ナビゲーション5の出荷時に、センターCに蓄積されている全ての車両の走行データに基づいて多くの走行ルートの基準データを生成し、その基準データをナビゲーション5が搭載された車載装置2に配信しても良い。この場合には、サービス開始時からセンターCに対する通信データ量を低減することができる。
さらに、上記実施形態では、基準データと燃費値との差分が所定範囲を超えたときに、その燃費値を含む走行データをセンターCにアップロードするようにしたが、特にその手法には限られず、例えば燃費値が下限閾値よりも低いときのみ、その燃費値を含む走行データをセンターCにアップロードしても良い。