JP2012069393A - 電極材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】自動車の内燃機関の点火プラグの電極に利用される電極材料であって、質量%で、Al:0.005%〜0.2%,Si:0.3%〜0.5%,Cr:0.6%〜1.2%,Ti:0.05%〜0.5%,Y:0.3%〜1.0%含有し、残部がNi及び不可避不純物から構成される。この電極材料は、Yの含有による高温下での粒成長の抑制、Al,Siの低減による酸化物層の膨張・亀裂・剥離の抑制、かつTiの含有による内部酸化の抑制などにより、耐高温酸化性に優れる。また、Al,Si,Crの含有により、化合物粒の形成が抑えられ、Al,Siが比較的少ないことで、比抵抗を低く抑えられる。
【選択図】図1
Description
(1) Tiは、酸化抑制効果(特に、内部酸化の抑制効果)が高い。
(2) Tiを特定の範囲で含有することで、Tiの含有による比抵抗の増加が抑えられ、かつAl及びSiの含有量を低減できる。
(3) Tiは、Alの窒化を抑制することができる。
(4) Yは、特に、高温下での結晶粒の成長を効果的に抑制して、結晶粒が微細な状態を維持し易いことで、酸化抑制に効果がある。
(5) Siは、酸化抑制の効果がAlよりも高い傾向にある上に、化合物粒の生成を抑制することができる。
(6) Crは、酸化抑制効果、及び化合物粒の生成抑制に効果がある。
[電極材料]
(組成)
本発明電極材料は、Al,Si,Cr,Y及びTiを添加元素とし、残部がNi及び不可避不純物のニッケル合金から構成される。Niを主成分(97質量%以上(より好ましくは98質量%以上))とすることで、塑性加工性に優れる上に、比抵抗が小さく(導電率が高く)、点火プラグの電極に用いられた場合に火花による消耗を低減できる。
Al及びSiは酸化抑制の効果が高い元素であり、両元素を含有することで、電極材料の表面にAlやSiの酸化物を形成して、電極材料の内部に酸素が侵入することを低減し、酸化、特に内部酸化を抑制することができる。また、AlやSiを後述するCrやMnと同時に含有することで、上述した化合物粒の発生を抑制する効果がある。AlやSiが多いほど、電極材料の表面に酸化物が形成され易く、内部酸化の抑制や化合物粒の発生・成長の抑制を図れるが、多過ぎると、電極材料の表面に形成された酸化物層が膨張して亀裂(クラック)が入ったり破裂したり、剥離したりする。酸化物層の亀裂や剥離により、経時的に酸化が進行する。また、AlやSiが多いほど、比抵抗が大きくなり易く、耐火花消耗性の低下を招く。そこで、本発明電極材料では、Al及びSiの双方を含有すると共に、その含有量を比較的少なくし、代わって内部酸化の抑制効果が高い元素として、Tiを含有する。具体的な含有量はAl:0.005%以上0.2%以下、Si:0.3%以上0.5%以下とする。Alの含有量は、0.05%以上0.2%以下がより好ましい。また、Siは、Alよりも酸化抑制効果が高い傾向にあることから、本発明電極材料では、上記のようにSiをAlよりも多めに含有する。
Yは、主として、母相のNiと金属間化合物を形成して、金属間化合物として存在し、極一部は、Niに固溶して存在する。この金属間化合物の所謂ピン止め効果により、本発明電極材料は、900℃以上、更には1000℃以上といった非常に高温環境でも結晶粒の粒成長を効果的に抑制できる。そのため、本発明電極材料からなる本発明電極は、上述のような非常に高温の環境で使用されても、結晶粒が微細な状態を維持でき、酸素の侵入を低減できることから、内部酸化を効果的に抑制できる。このように優れた耐酸化性、特に耐高温酸化性を有するには、Yを0.3%以上含有することが好ましく、Yが多いほど、結晶粒を微細に維持でき、耐高温酸化性に優れる傾向にある。また、Yの含有量を1.0%以下とすることで、比抵抗の増大による電極の熱劣化を抑制して耐火花消耗性に優れる上に、塑性加工性の低下を抑制して所定の形状の電極に加工し易く、電極の製造性に優れる。更に、Yは、他の希土類元素と比較して水素を吸蔵し難いことから、製造工程で水素を含有する雰囲気で熱処理を行った場合でも、本発明電極材料は、水素脆化が生じ難い。Yのより好ましい含有量は、0.3%以上0.75%以下である。
上述のようにAlやSiと共にCr、適宜Mnを含有することで、上述した化合物粒が生じ難い。この理由は、AlやSiと共にCrやMnがガソリンやエンジンオイル中に含まれるPなどといった雰囲気中の元素と反応することで、母相のNiとPなどとの反応を抑制し、NiとPなどとの化合物が電極材料に付着することを低減できるため、と考えられる。特に、Crは、Mnよりも化合物粒の発生を抑制する効果が高い傾向にある。また、CrやMnも内部酸化の抑制に効果がある上に、Crは、AlやSiよりも比抵抗を増大させ難い。そこで、本発明電極材料では、上述のようにAlやSiを少なめにしてCrを含有する。また、本発明電極材料は、適宜Mnを含有する。CrやMnの含有量が多いほど、上記化合物粒の発生・成長や内部酸化を抑制し易いが、多過ぎると、比抵抗が大きくなり過ぎる。従って、Crの含有量は、0.6%以上1.2%以下とする。特に、Crの含有量は1.0%以下が好ましい。Mnを含有する場合、Mnの含有量は、0.05%以上0.2%以下が好ましい。
本発明電極材料は、Tiを含有することを最大の特徴とする。Tiは、上述のように内部酸化を効果的に抑制でき、この効果は、Tiの含有量が多いほど顕著であるが、多過ぎると、比抵抗の増大を招く。また、Tiは、上述のようにAlの窒化物(AlN)の生成を抑制し、Alの窒化物の形成による熱膨張によって酸化物層に亀裂が生じるなどして酸化が進行することを効果的に抑制できる。上記効果を十分に得るために、Tiの含有量を0.05%以上0.5%以下とする。特に、Tiの含有量は、0.1%以上0.3%以下がより好ましい。
Bを0.05%以下の範囲、好ましくは0.001%以上0.02%以下含有することで、熱間加工性に優れ、本発明電極材料や本発明電極の生産性を高められる。
本発明電極材料は、900℃以上、更に1000℃以上といった高温環境下に長時間曝した場合であっても、耐高温酸化性に優れており、例えば、結晶粒が微細な組織を維持することができる。具体的には、上記電極材料を1000℃×72時間加熱した場合に、この加熱後の電極材料の平均結晶粒径が300μm以下を満たすことができる。「1000℃×72時間」との条件は、従来の一般的な自動車のガソリンエンジンにおける使用時の最高到達温度と同等程度或いはそれ以上の温度条件であり、かつ加熱時間が長いため、非常に厳しい条件を模したものである。このような厳しい条件の加熱を行った場合でも、電極材料を構成する結晶粒が小さいほど、上述のように電極材料の内部への酸素の侵入を抑制でき、耐高温酸化性に優れる、と評価することができる。そこで、本発明では、耐酸化性の評価の指標として、「1000℃×72時間加熱後の平均結晶粒径」を採用する。この平均結晶粒径は、上記添加元素の含有量により変化させることができ、例えば、200μm以下、更に150μm以下、特に100μm以下を満たす電極材料とすることができる。上述のように平均粒径が小さいほど、結晶粒界が長くなることで、電極材料内部への酸素の侵入を防止し易く、下限は特に設けない。「1000℃×72時間加熱後の平均結晶粒径」は、特にYの含有量が多いほど小さくなる傾向にある。
本発明電極材料は、比抵抗が小さく、例えば、常温(代表的には20℃程度)での比抵抗が20μΩ・cm以下を満たすことができる。比抵抗は、主として添加元素の含有量により変化し、添加元素の含有量が少ないほど、比抵抗が小さくなる傾向にある。比抵抗は小さいほど好ましく、特に下限を設けない。
本発明電極材料は、代表的には、伸線加工により形成された線材が挙げられる。断面形状は、矩形状、円形状など、種々の形状とすることができる。
本発明電極材料は、代表的には、溶解→鋳造→熱間圧延→冷間伸線及び熱処理という工程により得られる。また、Yを含有する金属間化合物を電極材料中に十分に存在させるには、例えば、溶解時や鋳造時の雰囲気を酸素濃度が低くなるように制御することが挙げられる。Yは酸化物を形成し易いため、低酸素雰囲気で鋳造などを行うことで、Yの酸化物の形成を抑制して、金属間化合物を形成し易い。
本発明電極材料は、点火プラグに具える中心電極及び接地電極のいずれの構成材料にも好適に利用することができる。上記接地電極は、中心電極と比較して、自動車のエンジンなどの内燃機関において、燃焼室の中心に近い位置に配置されることが多い。本発明電極材料は、上述のように高温での特性に優れることから、特に、上記接地電極の構成材料に好適に利用することができる。本発明電極は、上記電極材料を適宜な長さに切断したり、更に所定の形状に成形したりすることで製造することができる。
本発明電極は、自動車のエンジンといった内燃機関において、点火に利用する点火プラグの構成部材として好適に利用することができる。本発明点火プラグは、代表的には、絶縁碍子と、この絶縁碍子を保持する主体金具と、上記絶縁碍子内に保持され、当該絶縁碍子の先端から一部が突出された中心電極と、上記主体金具の先端側の面に一端を溶接され、他端が中心電極の端面に対向するように設けられた接地電極と、上記絶縁碍子の後端に設けられた端子金具とを具えるものが挙げられる。公知の点火プラグの電極に代えて、本発明電極を利用することができる。
一般的な自動車のガソリンエンジンの点火に利用される点火プラグ用電極の材料として、ニッケル合金からなる線材(電極材料)を複数作製し、その特性を評価した。
作製した各試料(軟材)の比抵抗を測定した。その結果を表2に示す。比抵抗(常温)は、電気抵抗測定装置を用いて、直流四端子法により測定した(評点間距離GL=100mm)。
作製した各試料(軟材)について、耐高温酸化性を評価した。その結果を表2に示す。耐高温酸化性は、上述した1.5mm×2.8mmの平角の軟材により作製した接地電極と、線径4.2mmφの軟材により作製した中心電極とを1000℃に昇温した大気炉に挿入し、1時間加熱した後、当該炉の外に取り出して30分間空冷し、再度1時間加熱するという操作を加熱時間が合計72時間となるまで繰り返す高温酸化試験を行った。
上記高温酸化試験後の各試料について、接地電極の断面を光学顕微鏡(倍率:50〜200倍)で観察し、この顕微鏡観察像(写真)に対して、交線法(ライン法)を利用して平均結晶粒径を算出した。その結果を表2に示す。また、測定した平均結晶粒径が300μm以下のものを○、300μm超のものを×と評価した。
耐火花消耗性は、電極材料の比抵抗と相関がある。そこで、作製した上記各試料について、常温での比抵抗が20μΩ・cm超のものを耐火花消耗性が劣るとして×、20μΩ・cm以下のものを耐火花消耗性が優れるとして○とした。その結果を表2に示す。
作製した上記各試料について、以下のようにして化合物粒の発生状態を調べた。その結果を表2に示す。上述した1.5mm×2.8mmの平角の軟材にエンジンオイルを塗布し、当該軟材を雰囲気制御が行える環状の加熱炉にセットする。ここでは、一般的な自動車のガソリンエンジンにおける燃焼温度(900℃〜1000℃程度)よりも100℃程度燃焼温度が高くなるように加熱炉を1100℃まで加熱し、試験用のガソリンエンジン(排気量2000cc、6気筒)から排出される排ガスを当該炉内に流しながらエンジン内を模擬した雰囲気で試料を合計60時間保持する。この加熱試験後の各試料の表面状態を拡大鏡で観察した。
Claims (8)
- 点火プラグの電極に用いられる電極材料であって、
質量%で、
Alを0.005%以上0.2%以下、
Siを0.3%以上0.5%以下、
Crを0.6%以上1.2%以下、
Tiを0.05%以上0.5%以下、
Yを0.3%以上1.0%以下含有し、残部がNi及び不可避不純物からなることを特徴とする電極材料。 - 更に、Mnを0.05質量%以上0.2質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の電極材料。
- Alの含有量が0.05質量%以上0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極材料。
- Bを0.05質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料。
- 前記電極材料の常温での比抵抗が20μΩ・cm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極材料。
- 前記電極材料を1000℃×72時間加熱したとき、この加熱後の電極材料の平均結晶粒径が300μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極材料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極材料から構成されたことを特徴とする点火プラグ用電極。
- 請求項7に記載の点火プラグ用電極を具えることを特徴とする点火プラグ。
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