JP2012067337A - 核燃料保管ラック用ステンレス鋼角管およびその製造法並びにラック - Google Patents

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Abstract

【課題】高B含有オーステナイト系ステンレス鋼を用いた核燃料保管ラック用角管において、健全な溶接接合部分を有する信頼性の高いものを提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、Cr:16.00〜25.00%、Ni:7.00〜15.00%、B:0.75〜1.50%、Mo:0.01〜1.00%、N:0.050%以下、残部実質的にFeであり、M値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29Ni−13.7(Cr+5.05B)−18.5Moが60.0以下である鋼板を使用して、溶接ビード最大幅が8.0mm以下である丸管を作り、これを成形して溶接部が平坦面にある角管を得る。
【選択図】図2

Description

本発明は、核燃料保管ラックに用いるための溶接造管構造のステンレス鋼角管、およびその角管の製造方法、並びにその角管を用いた核燃料保管ラックに関する。
原子力発電所で使用された使用済み核燃料は、再処理工場で処理されるまで発電所敷地内のプールに保管される。プール内には、熱中性子遮蔽能力を有するB含有オーステナイト系ステンレス鋼を用いた「核燃料保管ラック」が置かれ、使用済み核燃料はそのラック内に収容される。核燃料保管ラックは、B含有オーステナイト系ステンレス鋼の板状体により格子状に仕切られたセルを有する。貯蔵施設の仕様により、当該ステンレス鋼の板状部材同士を直接溶接接合することによりラックを構成することもあれば、個々のセルとして当該ステンレス鋼からなる角柱状の鋼管(本明細書では「角管」と呼んでいる)を使用し、複数の角管を格子状に適正間隔で配置することによりラックを構成することもある。
近年、限られた敷地内で、できるだけ多くの使用済み核燃料を保管したいとのニーズから、熱中性子遮蔽能力をより高めたB含有オーステナイト系ステンレス鋼を採用したいという要求が高まっている。それに対応するためには、当該ステンレス鋼のB含有量を増大させることが有効である。例えば0.75質量%以上あるいはそれを超えるB含有量のステンレス鋼を採用することが有利となる。ただし、B含有量が増大すると熱間加工性、溶接接合部分での加工性などが低下するので、高品質の角管を歩留り良く製造することは非常に難しくなる。
特許文献1、2には、Bを1.5%以下あるいは2.5%以下の範囲で多量に含有するオーステナイト系ステンレス鋼について熱間加工での割れを抑制するための組成限定および熱間加工条件が開示されている。特許文献3、4には、Bを2.5%以下の範囲で多量に含有するオーステナイト系ステンレス鋼を熱間圧延するに際し、予め鋼片の幅方向両端部にB含有量0.3%以下のプロテクト材を溶接にて接合しておく手法が開示されている。その溶接の際にインサート材(溶加材)を適切に使用すれば熱間圧延時の耳割れが防止されるという。
特許文献5には、B含有オーステナイト系ステンレス鋼の板状部材を直接溶接して核燃料保管ラックを製造するに際し、ラックの組み立て精度を向上させるために適切な溶加材を使用すべきことが教示されている。B含有ステンレス鋼としては、B含有量1.07%のものが例示されている。
特許文献6には、熱間加工性、溶接性、冷間曲げ加工性の観点からB含有量を0.75%以下に抑え、その代わりGdを添加することにより熱中性子吸収能力を改善した角管を核燃料保管ラックに適用する発明が記載されている。
特開平10−219399号公報 特開2002−38218号公報 特開2004−156132号公報 特開2007−118025号公報 特開2010−71868号公報 特開平9−318788号公報
B含有量を高めたオーステナイト系ステンレス鋼は本質的に熱間加工性が悪いが、現在では熱間圧延条件の工夫などにより、耳割れの少ない熱延鋼板を製造することが可能となっている。耳割れが生じた場合でも少量のトリミングによって健全な鋼板素材を得ることができる。
しかしながら、B含有量を増大させると、溶接造管により角管を製造する際に、溶接ビードに沿って割れが生じやすくなるという問題がある。特にB含有量が0.75質量%以上の高B含有ステンレス鋼を使用して溶接造管時の割れを完全に回避することは必ずしも容易ではなく、そのようなオーステナイト系ステンレス鋼を用いて角管を提供するためには、製造歩留りの低下が避けられないのが現状である。一方、特許文献6のように特殊な元素を添加して中性子吸収能を向上させることは素材コストの増大に繋がる。また、溶加材を使用して溶接造管することもコスト増大の要因となる。
本発明は、このような現状に鑑み、B含有量が0.75質量%以上の(あるいは0.75質量%を超える)高B含有オーステナイト系ステンレス鋼を用いた角管において、健全な溶接接合部分(溶接部およびその近傍の母材)を有する信頼性の高いものを提供しようというものである。特に、そのような角管を低コストで安定して製造する技術を開示することを目的とする。また、その角管を用いた核燃料保管ラックを提供することを目的とする。
溶接造管により角管を製造する場合は、鋼帯を円筒状にした状態で鋼帯幅方向端面同士を突合わせ溶接して丸管とし、その後、ロール成形等により丸管を角管に成形する手法が採用される。その際、溶接部が平坦面に位置するように成形されるのが一般的である。丸管から角管への成形(以下、単に「角管成形」ということがある)の際には、溶接部は曲げ加工を受けることになる。一般的なステンレス鋼種では通常、この曲げ加工(曲面を平坦面とするための曲げ変形を伴う加工)によって溶接部やその近傍で割れが生じることはない。しかし、高B含有ステンレス鋼では事情が異なり、溶接部近傍の母材部で非常に割れが生じやすくなるのである。
なお、本明細書において、「溶接部」とは溶接時に溶融した部分(固液共存領域となった部分を含む)を意味し、「母材」とは熱影響部も含めて溶接時に全く溶融しなかった部分をいう。すなわち、溶接造管構造の管は、母材と溶接部で構成される。
発明者は種々検討の結果、鋼組成の適正化と、溶接条件の適正化によって高B含有ステンレス鋼の角管成形時に問題となる溶接部近傍の割れは顕著に抑止できることが明らかとなった。
すなわち本発明では、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、Cr:16.00〜25.00%、Ni:7.00〜15.00%、B:0.75〜1.50%好ましくは0.75超え〜1.50%、Mo:0.01〜1.00%、N:0.050%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるM値が60.0以下である化学組成を有する、溶接造管構造の角柱状の管(「角管」という)であって、溶接部が平坦面にあり、かつ溶接ビード最大幅が8.0mm以下である核燃料保管ラック用ステンレス鋼角管が提供される。
M値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29Ni−13.7(Cr−5.05B)−18.5Mo …(1)
ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。
また本発明では上記角管の製造法として、上記化学組成を有する一定幅の鋼板を円筒状として鋼板幅方向両端部同士を突合わせた状態とし、溶加材を使用せずに前記突合わせ箇所を溶接接合して溶接ビード最大幅が8.0mm以下である円筒状の管(「丸管」という)を得る工程、前記丸管を成形して溶接部が平坦面にある角柱状の管(「角管」という)を得る工程、を有する核燃料保管ラック用ステンレス鋼角管の製造法が提供される。丸管には角管成形前に適宜熱処理を施すことができる。前記鋼板は板厚が例えば4.0〜6.5mmであり、前記角管は対向する平坦面の外表面間隔が例えば150〜240mmである。前記溶接方法としては例えばプラズマアーク溶接が採用される。このようにして得られた角管は、格子状に配置されて核燃料保管ラックを構成する。なお、鋼板には鋼帯が含まれる。
本発明によれば、溶接部およびその近傍に割れがなく信頼性の高いB含有量0.75質量%以上の高B含有ステンレス鋼の角管を安定して提供することが可能となった。溶接造管時には溶加材を使用する必要はなく、またステンレス鋼にGd等の特殊元素を添加する必要もないことから、製造コストも低減される。したがって本発明は、今後増大が予想される使用済み核燃料の保管ニーズに、熱中性子吸収性能の面、信頼性の面およびコスト面において寄与しうるものである。
ステンレス鋼帯を溶接造管して得られた丸管の断面を模式的に示した図。 上記丸管を成形加工して得られた角管(この場合は四角柱状)の断面を模式的に示した図。 高B含有ステンレス鋼板(B含有量約1質量%)にプラズマアーク溶接を施して得られた溶接部およびその近傍についての断面金属組織写真。 高B含有ステンレス鋼板について溶接部およびその近傍の母材における断面硬さを測定した結果を例示したグラフ。 曲げ試験にて割れが生じた試験片の外観を例示した図面代用写真。 溶接後の曲げ試験で大きい引張歪が局所的に生じる箇所(Aと表示)を示した断面図。
図1に、ステンレス鋼帯を溶接造管して得られた丸管の長さ方向に垂直な断面を模式的に示す。以下、本明細書において「断面」というときは特に断らない限り管の長さ方向(すなわち溶接方向)に垂直な断面を意味する。図1(a)は丸管全体の断面である。丸管1は一定幅のステンレス鋼板(鋼帯)をロールフォーミング等により円筒状とし、鋼板幅方向端部同士を付き合わせた状態にて溶接接合することによって得られる。丸管1は溶接部2および母材3により構成されている。
図1(b)は当該丸管1の溶接部2およびその近傍の断面を拡大表示したものである。本発明で対象とするB含有量が0.75質量%以上(あるいは0.75%超え)のステンレス鋼では、溶接部2は、Fe、Cr、Bの化合物であるボライド「(Cr,Fe)2B」を含む凝固組織を呈する。だだし、溶接部2においては、母材3との界面の近くに、固液共存領域由来部分4が存在する。溶接部2の硬さは母材3の硬さに比べかなり高くなっているが、なかでも固液共存領域由来部分4の硬さはとりわけ高くなることがわかった。丸管を角管に成形する際には、溶接部2(特に固液共存領域由来部分4)と母材3の硬さおよび延性の差に起因して、溶接部2の近傍における母材3の部位で割れが生じやすい。
発明者らは種々検討の結果、溶接部の幅を狭くするような溶接条件を採用することが、角管成形時の割れを抑制する上で極めて有効であることを見出した。具体的には、後述する化学組成に限定されたステンレス鋼を対象とするとき、表面に現れている溶接ビードの幅xの鋼管長手方向における最大値(「溶接ビード最大幅」という)を8.0mm以下にコントロールすることによって角管成形時の割れを安定して防止できる。溶接ビード最大幅のコントロールは、狭い領域に集中して精度良く高エネルギーを付与することができる溶接手法(例えばプラズマアーク溶接)を用いて、溶接条件(板厚に応じた溶接入熱、溶接速度など)を適正化することによって実現できる。
溶接部の幅(溶接ビード最大幅)を小さくすると、角管成形時に、溶接部2と母材3の界面近傍における母材3の部位に集中する塑性変形歪が緩和され、それによって割れが発生しにくくなるものと推察される。また、溶接部の幅を小さくすることは溶接時の冷却速度の向上につながり、それによって特に高硬度である固液共存領域の幅を減少させることができることも割れの防止に有利に作用しているものと考えられる。B含有量0.75%以上のラック材の場合、一般的には肉厚4.5〜5.5mm程度のもの適用され、角管のサイズ(対向する平坦面の外表面間隔)は概ね150〜240mm程度である。発明者らの検討によれば、肉厚の範囲を上記よりさらに拡げて4.0〜6.0mmとした実験において、溶接ビード最大幅を8.0mm以下にコントロールした場合に、角管成形時の割れを防止できることが確かめられた。溶接ビード最大幅は7.5mm以下とすることがより好ましい。
図2に、上記丸管を成形加工して得られた角管(この場合は四角柱状)の断面を模式的に示す。図2(a)は角管全体の断面である。角管10は、溶接部2が平坦面に配置されるように成形される。角管のサイズは、対向する平坦面の外表面間隔で表され、図1(a)にはw1、w2で表示してある。核燃料保管ラック用の角管は、六角柱状のものも考えられるが、一般的には成形加工が容易な四角柱状のものが使用される。この場合、「平坦面の外表面間隔が150〜240mmである」とは、w1、w2の両方がこの範囲に入っていることを意味する。
図2(b)は当該角管10の溶接部2およびその近傍の断面を拡大表示したものである。角管における溶接ビード幅xは、成形前の丸管における溶接ビード幅xをほぼ反映したものとなる。したがって、溶接ビード最大幅が8.0mm以下(より好ましくは7.5mm以下)である角管は、溶接部2およびその近傍の母材3は健全な状態を呈するものであり、ラックに組み立てられ、核燃料を入れて長期間使用されるうえで、高い信頼性を有している。
図3には、参考のため、本発明で規定する化学組成を有するステンレス鋼板(B含有量約1質量%)に溶加材を使用せずにプラズマアーク溶接を施した試料について、溶接部およびその近傍の金属組織写真を例示する。黒っぽく見える部分がボライドを含む共晶(以下「ボライド共晶」という)、白っぽく見える部分がオーステナイト相である。左上のデンドライト組織に隣接して、ボライド共晶とオーステナイト相が混在した領域がある。この領域が固液共存領域由来部分である。デンドライト組織の部分と固液共存領域由来部分が溶接部、それ以外の部分が母材に相当する。
図4は、後述の表のNo.25(鋼No.B−2を用いた比較例)について、溶接部およびその近傍の母材における断面硬さを測定した結果を例示する。図4の上段には断面内の硬さ測定位置を模式的に示してある。このグラフからわかるように、溶接部は母材と比べ著しく高硬度である。これは、溶接部には高B含有ステンレス鋼の凝固組織に特有のボライド共晶が多量に存在することによる。また、溶接部における母材に近い領域(固液共存領域由来部分に相当)は特に硬質である。一方、母材について見ると、鋳造後に繰り返される熱処理および加工によってボライド共晶が分解され、ボライドは微細分散している。このため母材は溶接部に比べ低硬度高延性である。
発明者らの検討によれば、高B含有ステンレス鋼板を素材として溶接造管により製造された丸管を角管に成形する際の耐割れ性を評価する手法として、当該鋼板素材に造管を想定した溶接部を形成し、その溶接部を含む試料について曲げ試験を行う方法が極めて有効である。この方法により、角管成形時と同じ部位(溶接部と母材の界面に沿った母材部)での割れが再現できる。すなわち、溶接部を形成した平板試料に曲げ試験を施すことによって、円筒状の丸管を角管に成形する場合の曲げ変形を想定した評価が可能である。具体的には、核燃料保管ラックの板厚に調整された造管用の高B含有ステンレス鋼板を用意し、溶接造管を模擬した条件で突合わせ溶接を行う。溶接後の板から溶接ビード部を中央付近に含む曲げ試験片を採取し、曲げ軸が溶接ビードと平行になるように180°曲げ試験を行う。その際、曲げRは3.0t〜6.0t(tは板厚)の範囲で設定すればよい。例えば板厚4.5〜5.5mmの鋼板を用いて平坦面の外表面間隔が150〜240mmである四角柱状の角管を製造する場合であれば、曲げR=3.5tにて割れが生じなければ、その溶接条件にて健全な角管が安定して製造できると評価される。
図5に、上記の曲げ試験にて割れが生じた試験片の外観を例示する。割れが生じた時点で曲げ試験を中止した。割れは、溶接部と母材の界面に沿った母材部で生じている。角管成形時に問題となる割れもこの部位で生じる。
発明者らは、この部位で割れが生じる原因を調査するために、上記の曲げ試験で割れが生じる材料を用いて、割れ発生に至る前まで曲げた状態のサンプルを用意し、2次元弾塑性応力解析により試験片断面の引張歪分布を求めた。その結果、図6中にAと表示した箇所に顕著な引張歪が局所的に生じていた。この箇所は、曲げ加工時に発生する割れの起点と一致している。
このような特異な歪分布の形成は高B含有ステンレス鋼に特有のものであると考えられる。すなわち、溶接部は多量のボライドの存在によって「高硬度低延性」となっており、それに隣接する母材は「低硬度高延性」である。曲げ加工が付与された際には、この両者の顕著な延性差に起因して、変形しにくい溶接部に隣接する母材が局所的に大きな引張変形を担うことになるものと考えられる。その引張変形が破断限界に達するとその部位を起点にして割れが生じる。
発明者らは種々検討の結果、このような溶接部近傍での局所的な引張歪を緩和するためには、溶接部の体積を減少させることが極めて有効であるとの知見を得た。この知見に基づき、前述のように溶接ビード最大幅が8.0mm以下となる条件で溶接造管することによって角管成形時の割れを防止することが可能になることを見出した。
一方、オーステナイト相自体の延性についても考慮する必要がある。オーステナイト相の延性に関連する指標としては、オーステナイト安定度を表すMd30が知られており、例えば以下の式が提案されている。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29Ni−13.7Cr−18.5Mo …(2)
一般にオーステナイト系ステンレス鋼の延性はMd30依存することが知られており、母材の延性を確保するためにはMd30の指標を基に組成をコントロールが有効となる。ただし、B含有オーステナイト系ステンレス鋼ではFe、Cr、Bの化合物であるボライドが生成し、基地(オーステナイト相)中に存在するCr量が減少してしまうため、上記Md30をそのまま適用することはできない。発明者らはボライドの詳細な分析に基づき、ボライドにおけるCrとBの平均モル比を1.05:1として基地中のCr量を算出することにより、角管成形時の割れ評価に適したオーステナイト安定度の式を導出した。すなわち、Crの原子量52とBの原子量10.8を用いると、
ボライド中のCr量=B含有量×52×1.05/10.8
となる。基地(オーステナイト相)中のCr量は、鋼中のCr含有量からボライド中のCr量を差し引いて、下記(3)式で表される。
基地中のCr量=Cr含有量−B含有量×52×1.05/10.8 …(3)
この(3)式を上記(2)式のCrの部分に代入することにより、角管成形時の割れ評価に適した指標であるM値が下記(1)式として導出される。
M値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29Ni−13.7(Cr−5.05B)−18.5Mo …(1)
発明者らの検討によれば、母材の延性を十分に確保するためにはM値が60以下に調整された鋼を採用する必要がある。M値がそれより大きくなると、溶接ビード最大幅を前述のように適性化した場合であっても、角管成形時の割れを安定して防止することができないことがある。
本発明に適用するオーステナイト系ステンレス鋼の成分元素について、以下に簡単に説明する。
C、Nは、M値の低減に有効な元素であり、例えばCは0.001質量%以上、Nも0.001質量%以上を確保することがより効果的である。ただし、多量の含有は延性低下の要因となるので、C、Nともそれぞれ0.050質量%以下の含有量に制限される。
Si、Mnは脱酸に有効な元素であり、例えばSiは0.10質量%以上、Mnは0.30質量%以上を確保することがより効果的である。ただし、過度の添加は延性低下を招く要因となるので、Si含有量は1.00質量%以下、Mn含有量は1.50質量%以下の範囲に規定される。
Crは、核燃料保管ラックとしての耐食性を確保するうえで16.00質量%以上の含有量を確保する必要がある。ただし、Cr含有量が増大すると延性低下を招く要因となる。種々検討の結果、Cr含有量の上限は25.00質量%に制限される。
Niは、オーステナイト相を安定化し延性向上に寄与する元素であり、本発明の用途では7.00質量%以上のNi含有量を確保する必要がある。ただし、過剰のNi含有はコスト増に繋がるので15.00質量%以下の範囲とする。
Bは、熱中性子遮蔽能力を付与するための元素であり、ここでは0.75質量%以上のBを含有する鋼を対象とする。0.75質量%超えとすることがより好ましい。0.85質量%以上、あるいは0.95質量%以上のB含有量に管理しても構わない。ただし、B含有量が増大すると延性低下を招くので、1.50質量%以下に制限される。
Moは、耐食性向上に有効であり、ここでは0.01質量%以上のMoを含有する鋼が対象となる。ただし、Moの過剰添加はコスト増を招くので、Mo含有量は1.00質量%以下とすればよい。0.70質量%以下、あるいは0.50質量%以下の範囲に管理しても構わない。
表1に示す組成の鋼を溶製し、1200℃抽出による熱間鍛造および1200℃抽出による熱間圧延を経て板厚5mmの熱延鋼板とし、酸洗を施して供試鋼板を得た。各供試鋼板から50mm×200mmの板を複数枚切り出し、同種の供試鋼板から切り出した2枚の板を長辺の端面同士で突合わせた状態として、プラズマ溶接により接合した。溶接条件を変動させることにより、種々の溶接ビード幅にコントロールした。得られた試料を1100℃×在炉3minで熱処理した後、溶接部の曲げ試験に供した。表ビード(プラズマトーチ側の溶接ビード)が曲げの外側となるように、曲げR=17mm、加工速度100mm/minで180°曲げを行った。この試験により割れが生じなかったものを○(良好)、それ以外のものを×(不良)と評価した。○評価のものは十分な角管成形性を有すると判断される。なお、×評価のものにおいては、いずれも図5に例示したように溶接部と母材の界面に沿った母材部で割れが生じていた。結果を表2に示す。
表2からわかるように、本発明で規定する化学組成を有する鋼を適用し、溶接ビード最大幅を8.0mm以下としたものは、曲げ試験で割れが生じておらず、良好な角管成形性を有すると評価される。
1 丸管
2 溶接部
3 母材
4 固液共存領域由来部分
10 角管

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、Cr:16.00〜25.00%、Ni:7.00〜15.00%、B:0.75〜1.50%、Mo:0.01〜1.00%、N:0.050%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるM値が60.0以下である化学組成を有する、溶接造管構造の角柱状の管(「角管」という)であって、溶接部が平坦面にあり、かつ溶接ビード最大幅が8.0mm以下である核燃料保管ラック用ステンレス鋼角管。
    M値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29Ni−13.7(Cr−5.05B)−18.5Mo …(1)
  2. 質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、Cr:16.00〜25.00%、Ni:7.00〜15.00%、B:0.75〜1.50%、Mo:0.01〜1.00%、N:0.050%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるM値が60.0以下である化学組成を有する一定幅の鋼板を円筒状として鋼板幅方向両端部同士を突合わせた状態とし、溶加材を使用せずに前記突合わせ箇所を溶接接合して溶接ビード最大幅が8.0mm以下である円筒状の管(「丸管」という)を得る工程、前記丸管を成形して溶接部が平坦面にある角柱状の管(「角管」という)を得る工程、を有する核燃料保管ラック用ステンレス鋼角管の製造法。
    M値=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29Ni−13.7(Cr−5.05B)−18.5Mo …(1)
  3. 前記鋼板は板厚が4.0〜6.0mmであり、前記角管は対向する平坦面の外表面間隔が150〜240mmである請求項2に記載の核燃料保管ラック用ステンレス鋼角管の製造法。
  4. 前記溶接をプラズマアーク溶接にて行う請求項2または3に記載の核燃料保管ラック用ステンレス鋼角管の製造法。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の製造法によって得られた角管を格子状に配置した核燃料保管ラック。
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