JP7277752B2 - オーステナイト系ステンレス鋼材 - Google Patents
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Description
化学組成が、質量%で
C:0.030%以下、
Si:1.00%以下、
Mn:2.00%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0100%以下、
Cr:15.00~25.00%、
Ni:8.00~18.00%、
Mo:0.10~5.00%、
Cu:2.00超~4.00%、
N:0.06~0.25%、
Nb:0.2~1.0%、
B:0.0010~0.0100%、
Ti:0~0.50%、
Ta:0~0.50%、
V:0~1.00%、
Zr:0~0.10%、
Hf:0~0.10%、
Co:0~1.00%、
W:0~5.00%、
sol.Al:0~0.100%、
Ca:0~0.0200%、
Mg:0~0.0200%、
希土類元素:0~0.100%、
Sn:0~0.010%、
As:0~0.010%、
Zn:0~0.010%、
Pb:0~0.010%、
Sb:0~0.010%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たし、
抽出残渣法により得られた残渣中のNb含有量が質量%で0.052%以上であり、前記残渣中のCr含有量が質量%で0.245%以下である。
0≦B+0.21Mo-1.9C≦0.220 (1)
8.8≦Ni+0.05Cu-0.1×(Mo)2≦13.2 (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、前記化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
0≦B+0.21Mo-1.9C≦0.220 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
8.8≦Ni+0.05Cu-0.1×(Mo)2≦13.2 (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
化学組成が、質量%で、
C:0.030%以下、
Si:1.00%以下、
Mn:2.00%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0100%以下、
Cr:15.00~25.00%、
Ni:8.00~18.00%、
Mo:0.10~5.00%、
Cu:2.00超~4.00%、
N:0.06~0.25%、
Nb:0.2~1.0%、
B:0.0010~0.0100%、
Ti:0~0.50%、
Ta:0~0.50%、
V:0~1.00%、
Zr:0~0.10%、
Hf:0~0.10%、
Co:0~1.00%、
W:0~5.00%、
sol.Al:0~0.100%、
Ca:0~0.0200%、
Mg:0~0.0200%、
希土類元素:0~0.100%、
Sn:0~0.010%、
As:0~0.010%、
Zn:0~0.010%、
Pb:0~0.010%、
Sb:0~0.010%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たし、
抽出残渣法により得られた残渣中のNb含有量が質量%で0.052%以上であり、前記残渣中のCr含有量が質量%で0.245%以下である。
0≦B+0.21Mo-1.9C≦0.220 (1)
8.8≦Ni+0.05Cu-0.1×(Mo)2≦13.2 (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、前記化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
[1]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材であって、
前記化学組成は、第1群~第4群のいずれかの群に属する少なくとも1元素又は2元素以上を含有する。
第1群:
Ti:0.01~0.50%、
Ta:0.01~0.50%、
V:0.01~1.00%、
Zr:0.01~0.10%、及び、
Hf:0.01~0.10%、
第2群:
Co:0.01~1.00%、及び
W:0.01~5.00%、
第3群:
sol.Al:0.001~0.100%、
第4群:
Ca:0.001~0.0200%、
Mg:0.001~0.0200%、及び、
希土類元素:0.001~0.100%。
[1]又は[2]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材であって、
10%蓚酸溶液でのエッチングを実施した500μm×500μmの3視野において、結晶粒界の総長さL10と、結晶粒界上でCr炭化物が生成しているCr炭化物粒界被覆領域の総長さL20とを求めたとき、式(3)で定義されるCr炭化物粒界被覆率RACrが10%以下である。
Cr炭化物粒界被覆率RACr=Cr炭化物粒界被覆領域の総長さL20/結晶両迂回の総長さL10×100 (3)
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は不可避に含有される。つまり、C含有量は0%超である。Cは、粒界にM23C6型のCr炭化物を生成する。この場合、鋼材の耐鋭敏化特性が低下する。C含有量が0.030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Cr炭化物が生成して鋼材の耐鋭敏化特性が顕著に低下する。したがって、C含有量は0.030%以下である。C含有量の好ましい上限は0.026%であり、さらに好ましくは0.024%であり、さらに好ましくは0.022%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.018%である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、C含有量の過剰な低減は製造コストを高くする。したがって、工業生産上、C含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。
シリコン(Si)は不可避に含有される。つまり、Si含有量は0%超である。Siは、製鋼工程において、鋼を脱酸する。Siはさらに、600超~750℃の平均操業温度での鋼材を使用する場合において、鋼材の耐酸化性及び耐水蒸気酸化性を高める。Siが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Si含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、溶接割れ感受性を顕著に高める。さらに、600超~750℃での平均操業温度での長時間使用により、鋼材中にσ相を生成する。σ相は、鋼材の靱性を低下する。したがって、Si含有量は1.00%以下である。Si含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.18%である。Si含有量の好ましい上限は0.70%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.50%である。
マンガン(Mn)は不可避に含有される。つまり、Mn含有量は0%超である。Mnは、鋼材中のSと結合してMnSを形成し、鋼材の熱間加工性を高める。Mnはさらに、溶接時において鋼材の溶接部を脱酸する。Mnが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mn含有量が2.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、600超~750℃での平均操業温度での使用時において、シグマ相(σ相)が生成しやすくなる。σ相は、平均操業温度での使用時における鋼材の靱性及び延性を低下する。したがって、Mn含有量は2.00%以下である。Mn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.60%である。Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、さらに好ましくは1.60%であり、さらに好ましくは1.50%であり、さらに好ましくは1.30%であり、さらに好ましくは1.10%であり、さらに好ましくは0.95%である。
燐(P)は不可避に含有される。つまり、P含有量は0%超である。Pは、大入熱溶接時において、鋼材の粒界に偏析する。その結果、鋼材の耐鋭敏化特性が低下する。Pはさらに、溶接時において、鋼材の耐凝固割れ性を高める。P含有量が0.040%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐鋭敏化特性が低下し、耐凝固割れ性が高まる。したがって、P含有量は0.040%以下である。P含有量の好ましい上限は0.035%であり、さらに好ましくは0.030%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は、鋼材の製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮すれば、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。
硫黄(S)は不可避に含有される。つまり、S含有量は0%超である。Sは、高温環境下での鋼材使用中において、粒界に偏析する。その結果、鋼材の耐鋭敏化特性が低下する。Sはさらに、溶接時において、鋼材の耐凝固割れ性を高める。S含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐鋭敏化特性が低下し、耐凝固割れ性が高まる。したがって、S含有量は0.0100%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の過剰な低減は、鋼材の製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮すれば、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。
クロム(Cr)は、600超~750℃の平均操業温度での鋼材使用時において、鋼材の耐酸化性及び耐食性を高める。Cr含有量が15.00%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が25.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、600超~750℃の平均操業温度での鋼材中のオーステナイトの安定性が低下する。この場合、鋼材のクリープ強度が低下する。したがって、Cr含有量は15.00~25.00%である。Cr含有量の好ましい下限は16.00%であり、さらに好ましくは16.20%であり、さらに好ましくは16.40%である。Cr含有量の好ましい上限は24.00%であり、さらに好ましくは23.00%であり、さらに好ましくは22.00%であり、さらに好ましくは21.00%であり、さらに好ましくは20.00%であり、さらに好ましくは、19.00%である。
ニッケル(Ni)はオーステナイトを安定化して、600超~750℃での平均操業温度での鋼材のクリープ強度を高める。Ni含有量が8.00%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が18.00%を超えれば、上記効果が飽和し、さらに、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は8.00~18.00%である。Ni含有量の好ましい下限は、8.50%であり、さらに好ましくは9.00%であり、さらに好ましくは9.50%であり、さらに好ましくは9.80%であり、さらに好ましくは10.00%である。Ni含有量の好ましい上限は16.00%であり、さらに好ましくは14.00%であり、さらに好ましくは13.50%である。
モリブデン(Mo)は、600超~750℃の平均操業温度での鋼材の使用中において、粒界でのM23C6型のCr炭化物が生成及び成長するのを抑制する。本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材のように、Cu含有量が2.00%超である場合、Cu析出により粒内の強度が高くなる。この場合、粒界にCr炭化物が形成されれば、応力緩和割れが生じやすくなる。Moはさらに、固溶強化元素として、600超~750℃の平均操業温度での鋼材のクリープ強度を高める。Mo含有量が0.10%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が5.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、結晶粒内において、LAVES相等の金属間化合物の生成を顕著に促進する。この場合、結晶粒内の強度が過剰に高くなり、結晶粒内と結晶粒界との強度差が大きくなる。そのため、粒界面で応力集中が発生し、耐応力緩和割れ性が顕著に低下する。したがって、Mo含有量は0.10~5.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.15%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.27%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.60%である。Mo含有量の好ましい上限は4.00%であり、さらに好ましくは3.00%であり、さらに好ましくは2.00%であり、さらに好ましくは1.50%であり、さらに好ましくは1.00%である。
銅(Cu)は、600超~750℃の平均操業温度での鋼材の使用中において、粒内にCu相として析出して、析出強化により鋼材のクリープ強度を高める。Cu含有量が2.00%以下である場合、上記効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が4.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Cu相が過剰に析出する。この場合、600超~750℃での平均操業温度において、クリープ延性が低下し、さらに、耐応力緩和割れ性が低下する。したがって、Cu含有量は2.00超~4.00%である。Cu含有量の好ましい下限は2.20%であり、さらに好ましくは2.40%であり、さらに好ましくは2.60%であり、さらに好ましくは2.80%である。Cu含有量の好ましい上限は3.80%であり、さらに好ましくは3.60%であり、さらに好ましくは3.40%である。
窒素(N)はマトリクス(母相)に固溶してオーステナイトを安定化する。Nはさらに、鋼材中にCrNb窒化物を生成する。CrNb窒化物は、ピンニング効果により結晶粒界の総面積を増大する。そのため、600超~750℃の平均操業温度で長時間操業した場合であっても、Cr炭化物粒界被覆率を低く抑えることができる。その結果、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。結晶粒界の総面積の増大はさらに、クリープ延性を高める。CrNb窒化物はさらに、析出強化により、600超~750℃の平均操業温度での鋼材のクリープ強度を高める。N含有量が0.06%未満であれば、上記効果が十分に得られない。一方、N含有量が0.25%を超えれば、結晶粒界にCr窒化物(Cr2N)が生成する。この場合、鋼材中の固溶Cr量が低減してしまい、その結果、600超~750℃の平均操業温度での長期間操業した場合、鋼材の耐鋭敏化特性が低下する。したがって、N含有量は0.06~0.25%である。N含有量の好ましい下限は0.07%であり、さらに好ましくは0.08%である。N含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.16%であり、さらに好ましくは0.14%である。
ニオブ(Nb)は、Nとともに、オーステナイト結晶粒内にCrNb窒化物を生成する。CrNb窒化物は、ピンニング効果により結晶粒界の総面積を増大する。そのため、600超~750℃の平均操業温度で長時間操業した場合であっても、Cr炭化物粒界被覆率を低く抑えることができる。その結果、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。CrNb窒化物はさらに、析出強化により、600超~750℃の平均操業温度での鋼材のクリープ強度を高める。Nbはさらに、Cと結合してMX型のNb炭化物を生成する。Nb炭化物を生成してCを固定することにより、鋼材中の固溶C量が低減する。これにより、600超~750℃の平均操業温度での鋼材の使用中において、粒界でのCr炭化物の析出が抑制され、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。結晶粒界の総面積の増大はさらに、クリープ延性を高める。Nb炭化物はさらに、析出強化により、600超~750℃の平均操業温度での鋼材クリープ強度を高める。Nb含有量が0.2%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Nb含有量が1.0%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、CrNb窒化物及びNb炭化物が過剰に生成する。この場合、結晶粒内の強度が過剰に高くなり、結晶粒内と結晶粒界との強度差が大きくなる。そのため、粒界面で応力集中が発生し、耐応力緩和割れ性が低下する。したがって、Nb含有量は0.2~1.0%である。Nb含有量の好ましい下限は0.3%である。Nb含有量の好ましい上限は0.8%であり、さらに好ましくは0.6%であり、さらに好ましくは0.5%である。
ボロン(B)は、600超~750℃平均操業温度での鋼材の使用中において、粒界に偏析し、粒界強度を高める。そのため、鋼材の耐応力緩和割れ性を高める。B含有量が0.0010%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、B含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粒界でのCr炭化物の生成を促進する。この場合、鋼材の耐鋭敏化特性が低下する。したがって、B含有量は0.0010~0.0100%である。B含有量の好ましい下限は0.0012%であり、さらに好ましくは0.0014%であり、さらに好ましくは0.0016%であり、さらに好ましくは0.0018%であり、さらに好ましくは0.0020%である。B含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
Sn:0~0.010%、
As:0~0.010%、
Zn:0~0.010%、
Pb:0~0.010%、
Sb:0~0.010%、
すず(Sn)、ヒ素(As)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)及びアンチモン(Sb)はいずれも、不純物である。Sn含有量は0%であってもよい。同様に、As含有量は0%であってもよい。Zn含有量は0%であってもよい。Pb含有量は0%であってもよい。Sb含有量は0%であってもよい。含有される場合、これらの元素はいずれも、粒界に偏析して粒界の融点を下げたり、粒界の結合力を低下したりする。Sn含有量が0.010%を超える場合、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び溶接性が低下する。同様に、As含有量が0.010%を超える場合、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び溶接性が低下する。Zn含有量が0.010%を超える場合、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び溶接性が低下する。Pb含有量が0.010%を超える場合、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び溶接性が低下する。Sb含有量が0.010%を超える場合、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び溶接性が低下する。したがって、Sn含有量は0~0.010%である。As含有量は0~0.010%である。Zn含有量は0~0.010%である。Pb含有量は0~0.010%である。Sb含有量は0~0.010%である。
[第1群任意元素]
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti、Ta、V、Zr及びHfからなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、Cと結合して炭化物を生成し、固溶Cを低減することにより、鋼材の耐鋭敏化特性をさらに高める。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは、鋼材中のCと結合して炭化物を生成する。これにより、Cr炭化物の生成が抑制され、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。Tiが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭化物が結晶粒内に過剰に析出する。この場合、結晶粒内の強度が過剰に高くなり、結晶粒内と結晶粒界との強度差が大きくなる。そのため、粒界面で応力集中が発生し、耐応力緩和割れ性が低下する。したがって、Ti含有量は0~0.50%である。Ti含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Ti含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%である。
タンタル(Ta)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ta含有量は0%であってもよい。含有される場合、Taは、Cと結合して炭化物を生成する。これにより、Cr炭化物の生成が抑制され、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。Taが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ta含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭化物が結晶粒内に過剰に析出する。この場合、結晶粒内の強度が過剰に高くなり、結晶粒内と結晶粒界との強度差が大きくなる。そのため、粒界面で応力集中が発生し、耐応力緩和割れ性が低下する。したがって、Ta含有量は0~0.50%である。Ta含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ta含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、V含有量は0%であってもよい。含有される場合、Vは、Cと結合して炭化物を生成する。これにより、Cr炭化物の生成が抑制され、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。Vが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、V含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭化物が結晶粒内に過剰に析出する。この場合、結晶粒内の強度が過剰に高くなり、結晶粒内と結晶粒界との強度差が大きくなる。そのため、粒界面で応力集中が発生し、耐応力緩和割れ性が低下する。したがって、V含有量は0~1.00%である。V含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは、0.04%であり、さらに好ましくは0.06%である。V含有量の好ましい上限は0.50%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%である。
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Zr含有量は0%であってもよい。含有される場合、Zrは、Cと結合して炭化物を生成する。これにより、Cr炭化物の生成が抑制され、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。Zrが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Zr含有量が0.10%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭化物が結晶粒内に過剰に析出する。この場合、結晶粒内の強度が過剰に高くなり、結晶粒内と結晶粒界との強度差が大きくなる。そのため、粒界面で応力集中が発生し、耐応力緩和割れ性が低下する。したがって、Zr含有量は0~0.10%である。Zr含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Zr含有量の好ましい上限は0.09%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.06である。
ハフニウム(Hf)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Hf含有量は0%であってもよい。含有される場合、Hfは、Cと結合して炭化物を生成する。これにより、Cr炭化物の生成が抑制され、鋼材の耐鋭敏化特性が高まる。Hfが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Hf含有量が0.10%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭化物が結晶粒内に過剰に析出する。この場合、結晶粒内の強度が過剰に高くなり、結晶粒内と結晶粒界との強度差が大きくなる。そのため、粒界面で応力集中が発生し、耐応力緩和割れ性が低下する。したがって、Hf含有量は0~0.10%である。Hf含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Hf含有量の好ましい上限は0.09%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.06%である。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Co及びWからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、600超~750℃の平均操業温度での鋼材のクリープ強度を高める。
コバルト(Co)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Co含有量は0%であってもよい。含有される場合、Coはオーステナイトを安定化して、600超~750℃の平均操業温度での鋼材のクリープ強度を高める。Coが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Co含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、原料コストが高まる。したがって、Co含有量は0~1.00%である。Co含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.04%であり、さらに好ましくは0.10%である。Co含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.60%である。
タングステン(W)は、600超~750℃の平均操業温度での鋼材の使用中において、固溶強化により、鋼材のクリープ強度を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながらW含有量が5.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、オーステナイトの安定性が低下して靱性が低下する。したがって、W含有量は0~5.00%である。W含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.40%である。W含有量の好ましい上限は4.00%であり、さらに好ましくは3.00%であり、さらに好ましくは2.50%であり、さらに好ましくは2.00%であり、さらに好ましくは1.50%である。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Alを含有してもよい。Alは製鋼工程において、鋼を脱酸する。
アルミニウム(Al)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、sol.Al含有量は0%であってもよい。含有される場合、Alは製鋼工程において、鋼を脱酸する。Alが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、sol.Al含有量が0.100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の加工性及び延性が低下する。したがって、sol.Al含有量は0~0.100%である。sol.Al含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.060%であり、さらに好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.035%である。本実施形態においてsol.Al含有量は、酸可溶Al(sol.Al)の含有量を意味する。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg及び希土類元素(REM)からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、鋼材の熱間加工性を高める。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは、O(酸素)及びS(硫黄)を介在物として固定し、鋼材の熱間加工性を高める。Caはさらに、Sを固定して、Sの粒界偏析を抑制する。これにより、溶接時のHAZの脆化割れを低減する。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が0.0200%を超えれば、鋼材の清浄性が低下し、鋼材の熱間加工性がかえって低下する。したがって、Ca含有量は0~0.0200%である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0150%であり、さらに好ましくは0.0100%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mg含有量は0%であってもよい。含有される場合、Mgは、O(酸素)及びS(硫黄)を介在物として固定し、鋼材の熱間加工性を高める。Mgはさらに、Sを固定して、Sの粒界偏析を抑制する。これにより、溶接時のHAZの脆化割れを低減する。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が0.0200%を超えれば、鋼材の清浄性が低下し、鋼材の熱間加工性がかえって低下する。したがって、Mg含有量は0~0.0200%である。Mg含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0150%であり、さらに好ましくは0.0100%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、REM含有量は0%であってもよい。含有される場合、REMは、O(酸素)及びS(硫黄)を介在物として固定し、母材の熱間加工性及びクリープ延性を高める。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、母材の熱間加工性及びクリープ延性が低下する。したがって、REM含有量は0~0.100%である。REM含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。REM含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.060%である。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成はさらに、式(1)を満たす。
0≦B+0.21Mo-1.9C≦0.220 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成はさらに、式(2)を満たす。
8.8≦Ni+0.05Cu-0.1×(Mo)2≦13.2 (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、前記化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
に安定しており、Niが過剰に含有されていることを意味する。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の化学組成は、周知の成分分析法により求めることができる。具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼材が鋼管である場合、直径5mmのドリルを用いて、肉厚中央位置にて穿孔加工して切粉を生成し、その切粉を採取する。オーステナイト系ステンレス鋼材が鋼板である場合、直径5mmのドリルを用いて、板幅中央位置かつ板厚中央位置にて穿孔加工して切粉を生成し、その切粉を採取する。オーステナイト系ステンレス鋼材が棒鋼である場合、直径5mmのドリルを用いてR/2位置にて穿孔加工して切粉を生成し、その切粉を採取する。ここで、R/2位置とは、棒鋼の長手方向に垂直な断面における、半径Rの中央位置を意味する。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材では、さらに、抽出残渣法により得られた残渣において、Nb含有量が質量%で0.052%以上であり、Cr含有量が質量%で0.245%以下である。
残渣中のNb含有量=残渣中のNb質量/母材質量×100
残渣中のCr含有量=残渣中のCr質量/母材質量×100
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材は、化学組成中の各元素含有量が上述の範囲内であり、かつ、式(1)及び式(2)を満たす。さらに、残渣中のNb含有量が質量%で0.052%以上であり、Cr含有量が質量%で0.245%以下である。この場合、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材に対して、10%蓚酸溶液を用いてエッチングを実施して、500μm×500μmの3視野において、結晶粒界の総長さL10と、結晶粒界上でCr炭化物が生成しているCr炭化物粒界被覆領域の総長さL20とを求める。この場合、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材では、式(3)で定義されるCr炭化物粒界被覆率RACrが10%未満である。
Cr炭化物粒界被覆率RACr=Cr炭化物粒界被覆領域の総長さL20/結晶粒界の総長さL10×100 (3)
Cr炭化物粒界被覆率RACr=Cr炭化物粒界被覆領域の総長さL20/結晶粒界の総長さL10×100 (3)
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の形状は特に限定されない。本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材は、鋼管であってもよいし、鋼板であってもよいし、棒鋼であってもよい。また、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材は、鍛造品であってもよいし、鋳造品であってもよい。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材は、600超~750℃の平均操業温度で使用される装置用途に適する。本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材はさらに、大入熱溶接が実施された後、600超~750℃の平均操業温度で長期間使用される装置用途に適する。600超~750℃の平均の操業温度であり、一時的に操業温度が750℃を超える場合があっても、平均の操業温度が600超~750℃であれば、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の使用に適する。これらの装置の最高到達温度は750℃よりも高くてもよい。このような装置はたとえば、石油精製や石油化学に代表される化学プラント設備の装置である。これらの装置はたとえば、加熱炉管、槽、配管等を備える。
以下、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法を説明する。以降に説明するオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法は、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の一例である。したがって、上述の構成を有するオーステナイト系ステンレス鋼材は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。しかしながら、以降に説明する製造方法は、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法の好ましい一例である。
準備工程では、上述の化学組成を有する素材を準備する。素材は第三者から供給されてもよいし、製造してもよい。素材はインゴットであってもよいし、スラブ、ブルーム、ビレットであってもよい。素材を製造する場合、次の方法により、素材を製造する。上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。製造された溶鋼を用いて、造塊法によりインゴットを製造する。製造された溶鋼を用いて、連続鋳造法によりスラブ、ブルーム、ビレット(円柱素材)を製造してもよい。製造されたインゴット、スラブ、ブルームに対して熱間加工を実施して、ビレットを製造してもよい。たとえば、インゴットに対して熱間鍛造を実施して、円柱状のビレットを製造し、このビレットを素材(円柱素材)としてもよい。この場合、熱間鍛造開始直前の素材の温度は特に限定されないが、たとえば、1000~1300℃である。熱間鍛造後の素材の冷却方法は特に限定されない。
熱間加工工程では、準備工程において準備された素材に対して熱間加工を実施して、中間鋼材を製造する。中間鋼材はたとえば鋼管であってもよいし、鋼板であってもよいし、棒鋼であってもよい。
冷間加工工程は必要に応じて実施する。つまり、冷間加工工程は実施しなくてもよい。実施する場合、中間鋼材に対して、酸洗処理を実施した後、冷間加工を実施する。中間鋼材が鋼管又は棒鋼である場合、冷間加工はたとえば、冷間抽伸である。中間鋼材が鋼板である場合、冷間加工はたとえば、冷間圧延である。冷間加工工程を実施することにより、CrNb窒化物生成処理工程前に、中間鋼材に歪を付与する。これにより、CrNb窒化物生成処理工程時において再結晶の発現及び整粒化を行うことができる。冷間加工工程における減面率は特に限定されないが、たとえば、10~90%である。
CrNb窒化物生成処理工程では、熱間加工工程後又は冷間加工工程後の中間鋼材に対して、CrNb窒化物生成処理を実施する。これにより、Cr炭化物及びCrNの生成を抑えつつ、CrNb窒化物を適量析出させる。その結果、製造されたオーステナイト系ステンレス鋼材から抽出残渣法により得られた残渣中のNb含有量を質量%で0.052%以上とし、Cr含有量を質量%で0.245%以下とすることができる。
昇温速度HRは、鋼材温度が常温から1000℃になるまでの平均昇温速度(℃/秒)を意味する。CrNb窒化物は、化学成分によるものの約600~1200℃の温度範囲で生成する。そこで、600~1200℃の温度域での鋼材の滞在時間を長くして、CrNb窒化物の生成を促進する。具体的には、昇温速度HRを10℃/秒以下とする。
CrNb窒化物生成処理での熱処理温度Tが1000℃未満であれば、Cr炭化物やCrNが十分に固溶しない場合がある。この場合、鋼材中の固溶Crが低減し、耐鋭敏化特性が低下する。一方、熱処理温度Tが1350℃を超えれば、CrNb窒化物が固溶してしまい、粒界の総面積が返って低減する。この場合、耐鋭敏化特性が低下するだけでなく、クリープ延性も低下する。
平均冷却速度CR:15℃/秒以上
熱処理温度Tでの保持時間tは特に限定されないが、保持時間tはたとえば、2分以上である。保持時間tの上限は特に限定されないが、たとえば、500分である。熱処理温度Tで保持時間t保持した後、少なくとも、鋼材温度が800~500℃の温度域での平均冷却速度CRを15℃/秒以上で冷却する。平均冷却速度CRが15℃/秒未満である場合、800~500℃の温度範囲を冷却している間に、鋼材中にM23C6型のCr炭化物が生成してしまう。この場合、残渣中のCr含有量が0.800%を超える。この場合、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐応力緩和割れ性及び耐鋭敏化特性が低下する。
表1の化学組成を有する母材用の溶鋼を製造した。
各試験番号のオーステナイト系ステンレス鋼材の長手方向中央位置において、長手方向に垂直に切断した。切断面に対して、10%蓚酸溶液を準備した。上述の切断面を観察面とした。観察面を陽極として、20~50℃の10%蓚酸試験溶液中に浸漬した。エッチング面積1cm2当たりの電流を1Aに調整して、90秒エッチングした。エッチング後、試験片を試験溶液から取り出した。試験片を流水で洗浄し、乾燥した。
Cr炭化物粒界被覆率RACr=Cr炭化物粒界被覆領域の総長さL20/結晶粒界の総長さL10×100 (3)
製造されたオーステナイト系ステンレス鋼材を用いて、次の方法により、大入熱溶接を模擬した大入熱溶接模擬試験片を作製した。
上述の大入熱溶接模擬試験片を加工して、JIS Z2271(2010)に準拠したクリープ破断試験片を作製した。クリープ破断試験片の軸方向に垂直な断面は円形であり、クリープ破断試験片の外径は6mmであり、平行部は30mmであった。
大入熱溶接模擬試験片を用いて、ASTM E328-02に準拠した応力緩和試験を実施した。大入熱溶接模擬試験片から、SR割れ評価試験用の試験片を作製した。試験片は、長さ80mm、GL=30mmのつば付きクリープ試験片とした。たわみ変位負荷用試験ジグを用いて、試験片に対して、初期の冷間歪を10%付与した。冷間歪が付与された試験片が取り付けられた試験ジグを加熱炉に装入して、650℃で1000時間保持した。1000時間経過後の試験片が破断している場合、応力割れ感受性が高いと判断した(表2中の「SR割れ試験」欄で「B」と表記)。また、1000時間経過後の試験片が破断していない場合、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、試験片の長手方向に垂直な断面のミクロ組織観察を実施した。このとき、倍率を2000倍とした。ミクロ組織観察の結果、粒界に割れが発生している場合、又は、クリープボイドが発生している場合、応力割れ感受性が高いと判断した(表2中の「SR割れ試験」欄で「B」で表記)。一方、SEMによるミクロ組織観察において、粒界での割れの発生を確認できず、かつ、クリープボイドの発生も確認できない場合、応力割れ感受性が低いと判断した(表2の「SR割れ試験」欄で「E」と表記)。
再活性化率測定試験を実施する前に、大入熱溶接模擬試験片に対して、次に示す長時間鋭敏化処理を実施した。大入熱溶接模擬試験片を熱処理炉に装入した。熱処理炉において、大入熱溶接模擬試験片を大気中、大気圧にて、550℃で10000時間保持(鋭敏化処理)した。10000時間経過後の大入熱溶接模擬試験片を熱処理炉から抽出して、放冷した。
再活性化率=(復路の最大アノード電流/往路の最大アノード電流)×100
大入熱溶接模擬試験片を用いず、各試験番号の鋼材(鋼板)を用いて、耐凝固割れ性評価試験を次の方法で実施した。各試験番号の2枚の鋼板の長手方向に延びる側面に開先面を有した。開先面は、開先角度は30°であり、ルート厚さが1mmのV開先面であった。
Claims (3)
- オーステナイト系ステンレス鋼材であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.030%以下、
Si:1.00%以下、
Mn:2.00%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0100%以下、
Cr:15.00~25.00%、
Ni:8.00~18.00%、
Mo:0.10~5.00%、
Cu:2.00超~4.00%、
N:0.06~0.25%、
Nb:0.2~1.0%、
B:0.0010~0.0100%、
Ti:0~0.50%、
Ta:0~0.50%、
V:0~1.00%、
Zr:0~0.10%、
Hf:0~0.10%、
Co:0~1.00%、
W:0~5.00%、
sol.Al:0~0.100%、
Ca:0~0.0200%、
Mg:0~0.0200%、
希土類元素:0~0.100%、
Sn:0~0.010%、
As:0~0.010%、
Zn:0~0.010%、
Pb:0~0.010%、
Sb:0~0.010%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たし、
抽出残渣法により得られた残渣中のNb含有量が質量%で0.052%以上であり、前記残渣中のCr含有量が質量%で0.245%以下である、
オーステナイト系ステンレス鋼材。
0≦B+0.21Mo-1.9C≦0.220 (1)
8.8≦Ni+0.05Cu-0.1×(Mo)2≦13.2 (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、前記化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材であって、
前記化学組成は、第1群~第4群のいずれかの群に属する少なくとも1元素又は2元素以上を含有する、
オーステナイト系ステンレス鋼材。
第1群:
Ti:0.01~0.50%、
Ta:0.01~0.50%、
V:0.01~1.00%、
Zr:0.01~0.10%、及び、
Hf:0.01~0.10%、
第2群:
Co:0.01~1.00%、及び
W:0.01~5.00%、
第3群:
sol.Al:0.001~0.100%、
第4群:
Ca:0.001~0.0200%、
Mg:0.001~0.0200%、及び、
希土類元素:0.001~0.100%。 - 請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材であって、
10%蓚酸溶液でのエッチングを実施した500μm×500μmの3視野において、結晶粒界の総長さL10と、結晶粒界上でCr炭化物が生成しているCr炭化物粒界被覆領域の総長さL20とを求めたとき、式(3)で定義されるCr炭化物粒界被覆率RACrが10%以下である、
オーステナイト系ステンレス鋼材。
Cr炭化物粒界被覆率RACr=Cr炭化物粒界被覆領域の総長さL20/結晶粒界の総長さL10×100 (3)
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