JP2012051375A - 導電性構造体およびその製造方法ならびに燃料電池用セパレータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結晶性熱可塑性樹脂と導電性充填材を少なくとも含有する結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなる導電性構造体の製造において、導電性構造体のモールド成形後、導電性構造体を金型から取り出した後に、当該複合材料の結晶融解温度(Tm)以下で、かつ(Tm−20)℃以上で熱処理することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
更には、このセパレータには、熱伝導性、耐久性、強度等に優れていることが要求される。
特許文献3には、低融点金属、金属粉末、熱可塑性プラスチック、及び熱可塑性エラストマーの混合物からなる樹脂組成物が開示されている。
結晶性熱可塑性樹脂と導電性充填材を少なくとも含有する結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなる導電性構造体の製造において、導電性構造体のモールド成形後、導電性構造体を金型から取り出した後に、当該複合材料の結晶融解温度(Tm)以下で、かつ(Tm−20)℃以上で熱処理することを特徴とする導電性構造体の製造方法。
[2]
導電性構造体を金型で加圧した状態、または導電性構造体の変形を防止する矯正板に導電性構造体を挟んで加圧した状態で、導電性構造体を熱処理することを特徴とする[1]に記載の導電性構造体の製造方法。
[3]
導電性構造体のモールド成形が、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング成形の中から選ばれるいずれかの成形方法であることを特徴とする[1]または[2]に記載の導電性構造体の製造方法。
[4]
結晶性熱可塑性樹脂複合材料がさらにエラストマーを含むことを特徴とする[1]から[3]のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[5]
結晶性熱可塑性樹脂、エラストマーおよびその他の高分子化合物をポリマー成分としたときに、該ポリマー成分と導電性充填材との合計を基準(100質量%)として、該ポリマー成分が40〜2質量%、導電性充填材が60〜98質量%であることを特徴とする[1]から[4]のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[6]
前記結晶性熱可塑性樹脂に含まれる少なくとも1成分がポリオレフィンであることを特徴とする[1]から[5]のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[7]
結晶性熱可塑性樹脂、エラストマーおよびその他の高分子化合物をあわせたポリマー成分が、水添スチレンブタジエンラバー、スチレン・エチレンブチレン・スチレン ブロックコポリマー、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン ブロックコポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックコポリマー、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックコポリマー、スチレン・イソプレン・スチレン ブロックコポリマー及びスチレン・ブタジエン・スチレン ブロックコポリマーのいずれか1種または2種以上と、ポリオレフィンを少なくとも含有することを特徴とする[1]から[6]のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[8]
結晶性熱可塑性樹脂、エラストマーおよびその他の高分子化合物をあわせたポリマー成分がポリ弗化ビニリデンと軟質アクリル樹脂とを少なくとも含むことを特徴とする[1]から7のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[9]
前記導電性充填材が金属材料、炭素質材料、導電性高分子、金属被覆フィラーまたは金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]から8のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[10]
前記導電性充填材が、0.05〜5質量%のホウ素を含む炭素質材料であることを特徴とする[1]から[9]のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[11]
前記導電性充填材が、気相法炭素繊維および/またはカーボンナノチューブを0.1〜50質量%(これらを含む導電性充填材全体が基準)含むことを特徴とする[1]から[10]のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
[12]
気相法炭素繊維またはカーボンナノチューブが、0.05〜5質量%のホウ素を含むことを特徴とする請求項[11]に記載の導電性構造体の製造方法。
[13]
[7]、[8]または[10]のいずれか1項に記載の製造方法で製造された導電性構造体。
[14]
[1]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法により製造され、かつ、X≧0.8×Y(式1)で表される関係を満たすことを特徴とする導電性構造体。
(但し、式1中、Xは導電性構造体の一部を試料とし、示差走査熱量計を用いて20℃/分の昇温速度で25℃から熱可塑性樹脂複合材料の結晶融解温度:Tmよりも60℃以上高い温度まで昇温した時に観測される結晶の融解熱を、試料の質量で割った値を表し、単位はJ/gである。また、Yは結晶性熱可塑性樹脂複合材料を試料とし、示差走査熱量計を用いて、Tmよりも60℃以上高い温度で10分間保持した後、5℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し25℃で10分間保持した後、さらに20℃/分の昇温速度でTmよりも60℃以上高い温度まで昇温した時に観測される結晶の融解熱を、試料の質量で割った値を表し、単位はJ/gである。)
[15]
[13]または[14]のいずれか1項に記載の導電性構造体を使用してなる燃料電池用セパレータ。
本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料は、結晶性熱可塑性樹脂(A成分)と、導電性充填材(B成分)を少なくとも含む複合材料である。
本発明の導電性構造体とは当該結晶性熱可塑性樹脂複合材料が射出成形などにより一定の形状に賦形されたものをいう。もとの結晶性熱可塑性樹脂複合材料と組成的にはまったく同一であるが、成形時の熱履歴により、結晶化度などが異なる。
本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料には結晶性熱可塑性樹脂(A成分)以外に、エラストマー成分(C成分)や、非晶性熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などその他の高分子化合物を含んでいても良い。A成分、C成分、その他の高分子化合物をあわせてポリマー成分と呼ぶ。
(結晶性熱可塑性樹脂:A成分)
本発明の結晶性熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデンや四フッ化ポリエチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホン等の中から選ばれた1〜2種類以上の組み合わせが使用可能である。これらの中で、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマーが好ましい。また、大きな曲げ歪が得られ、耐加水分解性が高いという理由で、ポリプロピレンが特に好ましい。
また、本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料には、エラストマー成分が含まれていても良い。エラストマーは、常温付近でゴム状弾性を有する高分子である。エラストマー成分としては特に限定されないが、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合ゴム、エチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエーテル系特殊ゴム、四フッ化エチレン・プロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ノルボルネンゴム、ブチルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、軟質アクリル樹脂等の中から選ばれた1〜2種類以上の組み合わが使用可能である。
さらに、この発明の効果が大きく現れ、高い曲げ歪と曲げ強度が同時に得られるという理由で、0.01〜30質量%が特に好ましい。
ブロックコポリマー、スチレン・ブタジエン・スチレン ブロックコポリマー等が挙げられる。中でも、結晶性熱可塑性樹脂中の分散性が良いという理由で、水添スチレンブタジエンラバー、スチレン・エチレンブチレン・スチレン ブロックコポリマー、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン ブロックコポリマーが好ましい。
また、本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料には、本発明の効果が失われない範囲で非晶性熱可塑性樹脂が含まれていても良い。そのような非晶性熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等の中から選ばれた1〜2種類以上の組み合わが使用可能である。
この他ポリマー成分中には、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、熱硬化性樹脂、モノマー、可塑剤、硬化剤、硬化開始剤、硬化助剤、溶剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、消泡剤、レベリング剤、離型剤、滑剤、撥水剤、増粘剤、低収縮剤、難燃剤、または親水性付与剤等から選ばれる成分を添加することができる。
本発明のA成分の製造方法は特に制限されないが、例えば、溶液法、エマルション法、溶融法等の物理的方法、あるいはグラフト重合法、ブロック重合法、IPN(相互入高分子網目)法等の化学的方法による製造法が挙げられる。
本発明において、上記したA成分とともに結晶性熱可塑性樹脂複合材料を構成するB成分は、導電性充填材である限り特に制限されない。導電性の点からは、このB成分は、金属材料、炭素質材料、導電性高分子、金属被覆フィラー、または金属酸化物の中から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせが好ましい。より好ましくは、炭素質材料、および/または金属材料である。
金属材料としては、導電性の点からは、Ni、Fe、Co、B、Pb、Cr、Cu、Al、Ti、Bi、Sn、W、P、Mo、Ag、Pt、Au、TiC、NbC、TiCN、TiN、CrN、TiB2、ZrB2、Fe2Bのいずれか1種類または2種類以上の複合材料であることが好ましい。更に、これらの金属材料を粉末状、あるいは繊維状に加工して使用することができる。
炭素質材料としては、導電性の点からは、カーボンブラック、炭素繊維、アモルファスカーボン、膨張黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレンの中から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせが挙げられる。
ホウ素を含有させる方法としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ等の単品、あるいはそれらの1種以上の混合物にホウ素源として、B単体、B4C、BN、B203、H3B03等を添加し、よく混合して約2300〜3200℃で黒鉛化処理することによって、炭素質材料中にホウ素を含有させる方法を用いることができる。ホウ素化合物の混合が不均一な場合には、黒鉛粉末が不均一になるだけでなく、黒鉛化時に焼結する可能性が高くなる傾向がある。ホウ素化合物を均一に混合させるために、これらのホウ素源は50μm以下、好ましくは20μm以下程度の粒径を有する粉末にして、コークス等の粉末に混合することが好ましい。
上述した炭素質材料の一例であるカーボンブラックとしては、天然ガス等の不完全燃焼、アセチレンの熱分解により得られるケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭化水素油や天然ガスの不完全燃焼により得られるファーネスカーボン、天然ガスの熱分解により得られるサーマルカーボン等が挙げられる。
上記した炭素繊維としては、重質油、副生油、コールタール等から作られるピッチ系と、ポリアクリロニトリルから作られるPAN系が挙げられる。
上記したアモルファスカーボンを得るためには、フェノール樹脂を硬化させて焼成処理し粉砕して粉末とする方法、または、フェノール樹脂を球状、不定形状の粉末の状態で硬化させて焼成処理する方法等がある。導電性の高いアモルファスカーボンを得るためには2000℃以上に加熱処理することが適する。
上記した膨張黒鉛粉末は、例えば、天然黒鉛、熱分解黒鉛等高度に結晶構造が発達した黒鉛を、濃硫酸と硝酸との混液、濃硫酸と過酸化水素水との混液の強酸化性の溶液に浸漬処理して黒鉛層間化合物を生成させ、水洗してから急速加熱して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理することによって得られた粉末や、それを一度シート状に圧延したものを粉砕した粉末である。
上記した人造黒鉛を得るためには、通常は先ずコークスを製造する。コークスの原料は石油系ピッチ、石炭系のピッチ等が用いられる。これらの原料を炭化してコークスとする。コークスから黒鉛化粉末にするには一般的にコークスを粉砕後黒鉛化処理する方法、コークス自体を黒鉛化した後粉砕する方法、あるいはコークスにバインダーを加え成形、焼成した焼成品(コークスおよびこの焼成品を合わせてコークス等という)を黒鉛化処理後粉砕して粉末とする方法等がある。原料のコークス等はできるだけ、結晶が発達していない方が良いため、2000℃以下、好ましくは1200℃以下で加熱処理したものが適する。
本発明のB成分中には、気相法炭素繊維、および/またはカーボンナノチューブを0.1〜50質量%含むことが好ましい。より好ましくは、0.1〜45質量%であり、更に好ましくは、0.2〜40質量%である。0.1質量%未満では、導電性の向上に効果がない。また、50質量%を超えると成形性が悪くなる傾向にある。
本発明における、ポリマー成分とB成分の組成は、(ポリマー成分+B成分)を基準(100質量%として)ポリマー成分が40〜2質量%、B成分が60〜98質量%であることが好ましい。より好ましくは、ポリマー成分が30〜5質量%、B成分が70〜95質量%である。更に好ましくは、ポリマー成分が25〜5質量%、B成分が75〜95質量%である。ポリマー成分が2質量%未満では、成形性が悪くなる傾向がある。他方、ポリマー成分が40質量%超えると、体積固有抵抗が1Ωcm以上になり易い傾向が生ずる。
更に本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料には、必要に応じて、硬度、強度、導電性、成形性、耐久性、耐候性、耐水性等を改良する目的で、更にガラスファイバー、ウィスカー、金属酸化物、有機繊維、紫外線安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、撥水剤、増粘剤、低収縮剤、親水性付与剤等の添加剤を添加することができる。
本発明における結晶性熱可塑性樹脂複合材料の製造方法は特に制限されないが、例えば、上記した各成分をロール、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー(登録商標)、プラネタリーミキサー等の樹脂分野で一般的に用いられている混合機、混練機を使用し、なるべく均一に混合させるのが好ましい。
本発明における導電性構造体の製造方法の詳細を以下に示す。
上記の結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなる導電性構造体のモールド成形で、金型内で溶融した該複合材料の賦形が完了するまでは、金型キャビティー表面温度をTm以上に保ち、賦形された後、(TC−20)℃以上で、かつ(TC+20)℃以下の金型キャビティー表面温度で、該複合材料が固化させ、金型から取り出す。なお、Tmは結晶融解温度、TCは結晶化温度であり、その測定方法は後述する。ここで、モールド成形とは、金型あるいは金枠を用いて成形品を成形する方法の総称であるが、例えば、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング成形などが挙げられる。これらの中で、寸法精度が高い導電性構造体が得られるという理由では、圧縮成形法、スタンピング成形が好ましい。また、成形サイクルタイムが短いという理由で、射出成形、射出圧縮成形が好ましい。さらに、射出成形では避けられない成形品表面のスキン層による導電性の低下が起こらないという理由で、射出圧縮成形が特に好ましい。成形加工時に構造体中のボイドを取り除く為に、金型内あるいは金型全体を真空状態にして成形することもできる。
上記の結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなる導電性構造体のモールド成形で、金型内で溶融した該複合材料が賦形された後、(TC+20)℃から(TC−20)℃以下までの温度範囲を、30℃/分以下の冷却速度で該複合材料を冷却し、固化させた後に、導電性構造体を金型から取り出す。金型内で該複合材料が賦形される条件としては、前記製造方法1と同じである。成形後の冷却時に、該温度範囲を、30℃/分以下、このましくは20℃/分の冷却速度で冷却する。これにより、該複合材料の結晶化が大きく促進され、導電性構造体の体積固有抵抗や貫通抵抗が大きく低下する。さらに、本発明の効果が大きいという理由で、該温度範囲を10℃/分の冷却速度で冷却するのが特に好ましい。
上記の結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなる導電性構造体の製造において、導電性構造体のモールド成形後、金型から取出した後に、Tm以下で、かつその(Tm−30)℃以上で熱処理(アニール)することにより、優れた導電性を有する導電性構造体を製造する。この製造方法3では、モールド成形後に熱処理をする限りにおいて導電性構造体のモールド成形について何ら制限はない。ただし、モールド成形中に結晶化を大きく促進してしまうと、モールド成形後の熱処理による結晶化促進効果が大きく現れない。従って、モールド成形後の熱処理効果を大きくするには、モールド成形時に結晶化を促進しない方が好ましい。熱処理する温度としてはTm以下で、かつその(Tm−30)以上で、好ましくはTm以下で、かつ(Tm−20)℃以上である。これにより、該複合材料の結晶化が大きく促進され、導電性構造体の体積固有抵抗や貫通抵抗が大きく低下する。さらに、本発明の効果が大きいという理由で、Tm以下で、かつ(Tm−20)℃以上で熱処理するのが特に好ましい。
上記製造方法1及び2において該複合材料を固化・冷却する時、及び/又は、上記製造方法3において該導電性構造体を熱処理する時の変形を防止するために、導電性構造体を金型で加圧したり、または導電性構造体の変形を防止する矯正板に導電性構造体を挟んで加圧するのが好ましい。なぜなら、冷却や熱処理により該複合材料の結晶化が大きく促進されるので、該導電性構造体が変形してしまう可能性が大きいからである。
本発明における導電性構造体の圧縮成形法の例を以下に示す。圧縮成形の金型には金型キャビティー表面温度を緻密に自由に変動できるような温度プロファイル装置を取り付ける。金型温度(成形温度)は、本発明における結晶性熱可塑性樹脂複合材料が溶融する温度で、かつ該複合材料が熱分解しない温度であれば特に限定されないが、(Tm+50)℃以上であることが特に好ましい。温度設定の後、該複合材料の粉末、あるいは塊を金型キャビティー上に配置する。この時、厚み精度の良い導電性構造体を得るためには、押出機、ロール、カレンダー等を用いて予め成形された所定の厚み、大きさを有する予備成形体を、金型キャビティー上に配置しても良い。より厚み精度が高い導電性構造体を成形するためには、押出機で予備成形体を成形後、ロールやカレンダーで圧延することが好ましい。予備成形体中のボイドやエアーをなくすためには、真空状態で押出成形することが好ましい。その後、金型を閉じて該複合材料が溶融するのに十分な時間、予熱を行い、加圧し圧縮成形を行う。この時、複数の金型キャビティーを持つ金型や多段圧縮成形機で複数の金型を用いて1度に複数個の導電性構造体を成形しても良い。欠陥が実質的に無い良品を得るためには、キャビティー内を真空にすることが好ましい。溶融成形後は、成形温度から(TC−20)℃まで10℃/分の冷却速度でキャビティー表面を冷却し、金型から導電性構造体を取り出す事により本発明の導電性構造体が得られる。
本発明における導電性構造体の射出圧縮成形法の例を以下に示す。可塑化シリンダーの設定温度は、本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料が溶融し、かつ該複合材料が熱分解を起さない温度であれば特に限定はしないが、Tmよりも30℃から60℃程度高い温度が好ましい。また、金型には金型キャビティー表面温度を緻密に自由に変動できるような温度プロファイル装置を取り付け、金型キャビティー温度及び金型表面温度を(Tm+5)℃に設定する。シリンダー温度と金型温度が一定になったことを確認して、本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなるペレットを、射出圧縮成形機のホッパーに投入する。計量、射出速度、射出圧、2次圧、型締め力、冷却時間等の射出圧縮成形条件については特に制限はなく、導電性構造体が好適に得られる条件を設定する。溶融した該複合材料を金型キャビティー内に射出・充填し、圧縮する。その後、金型キャビティー表面温度を(TC+10)℃まで、20℃/分の冷却速度で冷却し該複合材料を固化させた後に、導電性構造体を金型から取り出す。導電性構造体を取出した後は、さらに冷却するために、該構造体の変形を防止する為の矯正板に該構造体を挟んで加圧して冷却しても良い。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなる導電性構造体は、X≧0.8×Y(式1)で表される関係を満たすことが好ましい。
式1において、Xは導電性構造体の一部の約10mgを試料とし、示差走査熱量計を用いて20℃/分の昇温速度で25℃からTmよりも60℃以上高い温度まで昇温した時に観測される結晶の融解熱を、試料の質量で割った値を表し、単位はJ/gである。また、Yは結晶性熱可塑性樹脂複合材料の約10mgを試料とし、示差走査熱量計を用いて、Tmよりも60℃以上高い温度で10分間保持した後、5℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し25℃で10分間保持した後、さらに20℃/分の昇温速度でTmよりも60℃以上高い温度まで昇温した時に観測される結晶の融解熱を、試料の質量で割った値を表し、単位はJ/gである。なお、Tmの値はあらかじめ、結晶性熱可塑性樹脂複合材料をDSC測定して求めておく。
本発明の結晶性熱可塑性樹脂複合材料を用いて、燃料電池用セパレータを製造する方法は特に制限されない。この製造方法の具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられるが、これに限定するわけではない。より好ましくは、成形加工時に金型内あるいは金型全体を真空状態にして成形する。
本発明において成形の際に使用すべき金型については前記の温度制御が可能であれば特に制限されない。例えば、材料の固化が速く、流動性が悪い場合は、キャビティー内に断熱層を仕込んだ断熱金型を用いることが好ましい。また、金型温度を成形時に上下できる温度プロファイルシステムを導入した金型がより好ましい。温度プロファイルのやり方としは、誘導加熱と冷媒(空気、水、オイル等)の切換えによるシステム、熱媒(熱水、加熱オイル等)と冷媒の切換えによるシステム等が挙げられるが、制限されるものではない。
本発明の導電性構造体は、導電性に優れ、高い曲げ強度、曲げ弾性率を有するので燃料電池用セパレータのように高導電性と高機械特性を要求される構造体として最適である。
更に、本発明の導電性構造体は黒鉛の導電性を限りなく再現でき、成形精度等に優れる点で極めて高性能なものが得られる。従って、エレクトロニクス分野、電機、機械、車輌等の各種部品等の各用途に有用であり、特に、コンデンサー用または各種電池用集電体、電磁波遮蔽材、電極、放熱板、放熱部品、エレクトロニクス部品、半導体部品、軸受、PTC素子、ブラシ及び燃料電池用セパレータに好適な材料として挙げられる。
K7194に準拠し、四探針法により測定した。
Rt=(R1−R2)×S/t ・・・・(2)
Rt:貫通抵抗(Ωcm)、 S:接触面積(cm2)
R1:測定1により算出した抵抗(Ω)
R2:測定2により算出した抵抗(Ω)
t :試験片2枚分の厚さ(cm)
ポリマー成分:表1記載のものを用いた。
ポリプロピレン:サンアロマー(株)製のサンアロマーPW201Nスチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトンポリマージャパン(株)製のクレイトンG1652水添スチレンブタジエンラバー(H−SBR):JSR(株)製のダイナロン1320Pを用いた。
ポリ弗化ビニリデン(PVDF):ダイキン工業(株)製のネオフロンVW−410軟質アクリル樹脂:クラレ(株)製のパラペットSA−FW001
非針状コークスであるエム・シー・カーボン(株)製MCコークスをパルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)で2mm〜3mm以下の大きさに粗粉砕した。この粗粉砕品をジェットミル(IDS2UR、日本ニューマチック(株)製)で微粉砕した。その後、分級により所望の粒径に調整した。5μm以下の粒子除去は、ターボクラシファイアー(TC15N、日清エンジニアリング(株)製)を用い、気流分級を行った。この調整した微粉砕品の一部14.4kgに炭化ホウ素(B4C)0.6kgを加え、ヘンシェルミキサー(登録商標)にて800rpmで5分間混合した。これを内径40cm、容積40リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れてアルゴンガス雰囲気下2900℃の温度で黒鉛化した。これを放冷後、粉末を取り出し、14kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉は、平均粒径20.5μm、B含有量1.9質量%であった。
上記の表1、表2に示した組成の原材料をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製、モデル100C100)を用いて温度200℃、45rpmで7分間混練し、結晶性熱可塑性樹脂複合材料を得た。その複合材料を100mm×100mmの平板(厚さは物性試験項目ごとに異なる)ができる金型に投入し、50t圧縮成形機A(NIPPO ENGINEERING社製 E−3013)を用いて温度230℃、予熱3分後、圧力15MPaで3分間加圧加熱した。その後、圧縮成形機Aから金型を熱いまま取出して即座に、表3に示す熱処理温度に設定した50t圧縮成形機B(NIPPO ENGINEERING社製 E−3013)を用いてその金型を圧力15MPaで10分間加圧した。その後、冷却プレスを用いて温度25℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させて導電性構造体を得た。
上記の表1、表2に示した組成の結晶性熱可塑性樹脂複合材料は、上記参考例1〜5と同様の手順で得た。その混練物を100mm×100mmの平板(厚さは物性試験項目ごとに異なる)ができる金型に投入し、50t圧縮成形機Aを用いて温度230℃、予熱3分後、圧力15MPaで3分間加圧加熱した。その後、冷却プレスを用いて温度25℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させて導電性構造体を得た。上記の各参考例により得られた結果を、下記の表3に纏めて示す。
複合材料5を用いた以外は上記の参考例1〜参考例5と同様の手順で導電性構造体を得た。上記の各参考例により得られた結果を、下記の表4に纏めて示す。
複合材料5を用い、熱処理温度を変更した以外は上記の比較例1〜比較例5と同様の手順で導電性構造体を得た。上記の各参考例・比較例により得られた結果を、下記の表4に纏めて示す。
複合材料5を100mm×100mmの平板(厚さは物性試験項目ごとに異なる)ができる金型に投入し、50t圧縮成形機Aを用いて温度230℃、予熱3分後、圧力15MPaで3分間加圧加熱し、その後、冷却プレスを用いて温度25℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させて導電性構造体を得た。その導電性構造体をさらに金型に挿入し、155℃に設定した50t圧縮成形機Bを用いてその金型を圧力15MPaで120分間加熱加圧した。その後、冷却プレスを用いて温度25℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させて導電性構造体を得た。実施例10により得られた結果を、下記の表5に纏めて示す。
50t圧縮成形機Bの熱板にはオイルを循環させることが出来る。オイル温調機から緻密に温度制御されたオイルを熱板に循環させることにより、熱板の温度を精密に制御することが出来る。複合材料5を100mm×100mmの平板(厚さは物性試験項目ごとに異なる)ができる金型に投入し、50t圧縮成形機Bを用いて温度230℃、予熱3分後、圧力15MPaで3分間加圧加熱し、その後、金型を圧力15MPaで加圧した状態で5℃/分の冷却速度で熱板の温度が100℃になるまで冷却する。その後、冷却プレスを用いて温度25℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させて導電性構造体を得た。参考例11により得られた結果を、下記の表5に纏めて示す。
複合材料1を用いて、貫通孔6ヶ、280×200×1.5mmのサイズで溝幅1mmピッチ、溝深さ0.5mmの溝が両面に形成された平板を成形できる金型を350t射出圧縮成形機に取り付けて、導電性構造体を射出圧縮成形した。シリンダー温度は280℃、金型温度140℃に設定した。成形開始直前にキャビティー表面を、外部からヒーターで表6に記載のキャビティー表面温度にまで加熱して、射出圧100MPa、圧縮力50t、冷却時間150秒で射出圧縮成形し、燃料電池用セパレータ状の平板を得た。その平板の体積固有抵抗と平板中央の厚みを測定し、その結果を表6に示した。
Claims (15)
- 結晶性熱可塑性樹脂と導電性充填材を少なくとも含有する結晶性熱可塑性樹脂複合材料からなる導電性構造体の製造において、導電性構造体のモールド成形後、導電性構造体を金型から取り出した後に、当該複合材料の結晶融解温度(Tm)以下で、かつ(Tm−20)℃以上で熱処理することを特徴とする導電性構造体の製造方法。
- 導電性構造体を金型で加圧した状態、または導電性構造体の変形を防止する矯正板に導電性構造体を挟んで加圧した状態で、導電性構造体を熱処理することを特徴とする請求項1に記載の導電性構造体の製造方法。
- 導電性構造体のモールド成形が、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、スタンピング成形の中から選ばれるいずれかの成形方法であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 結晶性熱可塑性樹脂複合材料がさらにエラストマーを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 結晶性熱可塑性樹脂、エラストマーおよびその他の高分子化合物をポリマー成分としたときに、該ポリマー成分と導電性充填材との合計を基準(100質量%)として、該ポリマー成分が40〜2質量%、導電性充填材が60〜98質量%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 前記結晶性熱可塑性樹脂に含まれる少なくとも1成分がポリオレフィンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 結晶性熱可塑性樹脂、エラストマーおよびその他の高分子化合物をあわせたポリマー成分が、水添スチレンブタジエンラバー、スチレン・エチレンブチレン・スチレン ブロックコポリマー、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン ブロックコポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックコポリマー、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶 ブロックコポリマー、スチレン・イソプレン・スチレン ブロックコポリマー及びスチレン・ブタジエン・スチレン ブロックコポリマーのいずれか1種または2種以上と、ポリオレフィンを少なくとも含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 結晶性熱可塑性樹脂、エラストマーおよびその他の高分子化合物をあわせたポリマー成分がポリ弗化ビニリデンと軟質アクリル樹脂とを少なくとも含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 前記導電性充填材が金属材料、炭素質材料、導電性高分子、金属被覆フィラーまたは金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 前記導電性充填材が、0.05〜5質量%のホウ素を含む炭素質材料であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 前記導電性充填材が、気相法炭素繊維および/またはカーボンナノチューブを0.1〜50質量%(これらを含む導電性充填材全体が基準)含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の導電性構造体の製造方法。
- 気相法炭素繊維またはカーボンナノチューブが、0.05〜5質量%のホウ素を含むことを特徴とする請求項11に記載の導電性構造体の製造方法。
- 請求項7、8または10のいずれか1項に記載の製造方法で製造された導電性構造体。
- 請求項1から12のいずれか1項に記載の製造方法により製造され、かつ、X≧0.8×Y(式1)で表される関係を満たすことを特徴とする導電性構造体。
(但し、式1中、Xは導電性構造体の一部を試料とし、示差走査熱量計を用いて20℃/分の昇温速度で25℃から熱可塑性樹脂複合材料の結晶融解温度:Tmよりも60℃以上高い温度まで昇温した時に観測される結晶の融解熱を、試料の質量で割った値を表し、単位はJ/gである。また、Yは結晶性熱可塑性樹脂複合材料を試料とし、示差走査熱量計を用いて、Tmよりも60℃以上高い温度で10分間保持した後、5℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し25℃で10分間保持した後、さらに20℃/分の昇温速度でTmよりも60℃以上高い温度まで昇温した時に観測される結晶の融解熱を、試料の質量で割った値を表し、単位はJ/gである。) - 請求項13または14のいずれか1項に記載の導電性構造体を使用してなる燃料電池用セパレータ。
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