JP4937529B2 - 燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物および燃料電池セパレータ - Google Patents
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Description
燃料電池は、水素と酸素を利用して電気分解の逆反応で発電し、水以外の排出物がないクリーンな発電装置である。この燃料電池の分野においても、導電性樹脂組成物が大きな役割を担うことができる。燃料電池は、その電解質の種類に応じて数種類に分類されるが、これらの中でも、固体高分子型燃料電池は比較的低温で作動するため、自動車や民生用として最も有望である。このような燃料電池は、例えば、高分子固体電解質、ガス拡散電極、触媒、セパレータから構成された単セルを積層することによって、高出力の発電が達成できる。
更には、このセパレータには、熱伝導性、耐久性、強度等に優れていることが要求される。
例えば、特許文献1には、導電性を有するフィラーを該フィラーと親和性の高いポリマー中に偏在させた導電性プラスチックが開示されている。また特許文献2には、炭素質粉末に結合材を加えて加熱混合後CIP成形(Cold Isostatic Pressing;冷間等方圧加工法)し、次いで焼成、黒鉛化して得られた等方性黒鉛材に熱硬化性樹脂を含浸、硬化処理した後に、溝を切削加工によって彫るという煩雑な工程が開示されている。
特許文献4には、低融点金属、金属粉末、熱可塑性プラスチック、及び熱可塑性エラストマーの混合物からなる樹脂組成物が開示されている。また、特許文献5には熱可塑性樹脂と黒鉛粒子との混合組成物から成形された燃料電池セパレータが開示されている。また、特許文献6にはメソカーボン小球体の黒鉛化物粗粒粉末と熱可塑性樹脂を含有する燃料電池セパレータが開示されている。また、特許文献7には、黒鉛粒子と非炭素質熱可塑性樹脂とで構成された燃料電池セパレータが開示されている。
(1) メルトフローレートが0.01以上10以下の範囲であるポリプロピレン樹脂からなるA成分と、導電性充填材からなるB成分とが少なくとも含有されてなり、前記A成分と前記B成分との合計を100質量%としたときに、前記A成分の含有率が2質量%以上30質量%以下の範囲であり、前記B成分の含有率が70質量%以上98質量%以下の範囲であることを特徴とする燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(2) メルトフローレートが0.01以上10以下の範囲であるポリプロピレン樹脂からなるA成分と、導電性充填材からなるB成分とが少なくとも含有され、さらに、C成分としてエラストマーが含有されてなり、前記A成分と前記B成分と前記C成分との合計を100質量%としたときに、前記A成分および前記C成分の含有率の合計が2質量%以上30質量%以下の範囲であり、前記B成分の含有率が70質量%以上98質量%以下であることを特徴とする燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(3) 前記A成分のポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.1以上2以下の範囲であることを特徴とする前項1または前項2に記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(4) 前記C成分のエラストマーが、水添スチレンブタジエンラバー、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロックコポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックコポリマー、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックコポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー及びスチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマーのいずれか1種または2種以上であることを特徴とする前項2に記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(5) 前記B成分が金属材料、炭素質材料、導電性高分子、金属被覆フィラーまたは金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前項1ないし前項4のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(6) 前記B成分が、0.05〜5質量%のホウ素が含有された炭素質材料であることを特徴とする前項1ないし前項4のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(7) 前記B成分中に、気相法炭素繊維またはカーボンナノチューブのうちのいずれか一方または両方が、0.1質量%以上50質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする前項1ないし前項5および前項6のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(8) 前記気相法炭素繊維中または前記カーボンナノチューブ中のいずれか一方または両方に、0.05質量%以上5質量%以下のホウ素が含有されていることを特徴とする前項7に記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(9) 溶融時の見掛け粘度が7×102Pa・s以上1×103Pa・s以下の範囲であることを特徴とする前項1ないし前項8のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
(10) 前項1ないし前項9のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物から成形されてなることを特徴とする燃料電池セパレータ。
本発明の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物(以下、単に導電性樹脂組成物ということがある。)は、MFRが0.01以上10以下の範囲のポリプロピレン樹脂(A成分)と、導電性充填材(B成分)とが少なくとも含有されてなる導電性樹脂組成物である。
また、本発明の導電性樹脂組成物には、エラストマー(C成分)やその他の熱可塑性樹脂を含有させることができる。A成分、C成分およびその他の熱可塑性樹脂をあわせて樹脂成分という。以下、樹脂成分の詳細について説明する。
A成分は、MFRが0.01以上10以下の範囲のポリプロピレン樹脂であれば、その他の物性等については特に限定されない。このようなポリプロピレン樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のホモポリマータイプのポリプロピレン樹脂や、ランダムやブロック等のコポリマータイプのポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらの中で、分子構造の面では、ホモポリマーのポリプロピレン樹脂が好ましく、曲げ弾性率と曲げ歪のバランスに優れるという理由で、アイソタクチックポリプロピレンが特に好ましい。
さらに、優れた曲げ特性が発現されるという理由で、MFRが0.05以上、5以下のポリプロピレン樹脂がより好ましい。さらに好ましいのはMFRが0.1以上、2以下のポリプロピレン樹脂である。なお、本発明のポリプロピレン樹脂のMFRはJIS K7210 M法(試験温度230℃、試験荷重21.18N(2.16kg))で測定した値である。
本発明の導電性樹脂組成物には、エラストマー(C成分)が含まれていても良い。このエラストマーは、常温付近でゴム状弾性を有する高分子である。エラストマー成分としては特に限定されないが、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合ゴム、エチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエーテル系特殊ゴム、四フッ化エチレン・プロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ノルボルネンゴム、ブチルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、軟質アクリル樹脂等の中から選ばれた1種または2種類以上の組み合わせが使用可能である。これらの中で、スチレン系熱可塑性エラストマーが高い導電性と優れた曲げ特性を両立できるという理由で好ましい。
本発明の導電性樹脂組成物には、本発明の効果が失われない範囲でポリプロピレン以外のその他の熱可塑性樹脂が含まれていても良い。そのような熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデンや四フッ化ポリエチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等の中から選ばれた1〜2種類以上の組み合わせが使用可能である。
本発明のA成分、あるいはA成分とC成分など樹脂成分の混合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、溶液法、エマルション法、溶融法等の物理的方法、あるいはグラフト重合法、ブロック重合法、IPN(相互入高分子網目)法等の化学的方法による製造法が挙げられる。
本発明において、上記した樹脂成分とともに導電性樹脂組成物を構成するB成分は、導電性充填材である限り特に制限されない。導電性の点からは、このB成分は、金属材料、炭素質材料、導電性高分子、金属被覆フィラー、または金属酸化物の中から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせが好ましい。より好ましくは、炭素質材料、金属材料のいずれか一方または両方である。以下、B成分について更に詳細に説明する。
金属材料としては、導電性の点からは、Ni、Fe、Co、B、Pb、Cr、Cu、Al、Ti、Bi、Sn、W、P、Mo、Ag、Pt、Au、TiC、NbC、TiCN、TiN、CrN、TiB2、ZrB2、Fe2Bのいずれか1種類または2種類以上の複合材料であることが好ましい。更に、これらの金属材料を粉末状、あるいは繊維状に加工して使用することができる。
炭素質材料としては、導電性の点からは、カーボンブラック、炭素繊維、アモルファスカーボン、膨張黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレンの中から選ばれた1ないし2種類以上の組み合わせが挙げられる。
炭素質材料に含まれるホウ素の量の測定方法は特に制限はなく、どのような測定方法でも測定できる。本発明では誘導型プラズマ発光分光分析法(以下、「ICP」と略す。)又は誘導型プラズマ発光分光質量分析法(以下、「ICP−MS」と略す。)により測定した値を用いる。具体的には試料に硫酸および硝酸を加え、マイクロ波加熱(230℃)して分解(ダイジェスター法)し、更に過塩素酸(HClO4)を加えて分解したものを水で希釈し、これをICP発光分析装置にかけて、ホウ素量を測定する。
炭素質材料中にホウ素を含有させる方法としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ等の単品、あるいはそれらの1種以上の混合物にホウ素源として、B単体、B4C、BN、B2O3、H3BO3等を添加し、よく混合して約2300℃〜3200℃で黒鉛化処理することによって、炭素質材料中にホウ素を含有させる方法が挙げられる。ホウ素化合物の混合が不均一な場合には、黒鉛粉末が不均一になるだけでなく、黒鉛化時に焼結する可能性が高くなる傾向がある。ホウ素化合物を均一に混合させるために、これらのホウ素源は50μm以下、好ましくは20μm以下程度の粒径を有する粉末にして、コークス等の粉末に混合することが好ましい。
上述した炭素質材料の一例であるカーボンブラックとしては、天然ガス等の不完全燃焼、アセチレンの熱分解により得られるケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭化水素油や天然ガスの不完全燃焼により得られるファーネスカーボン、天然ガスの熱分解により得られるサーマルカーボン等が挙げられる。
上記した炭素繊維としては、重質油、副生油、コールタール等から作られるピッチ系と、ポリアクリロニトリルから作られるPAN系が挙げられる。
上記したアモルファスカーボンを得るためには、フェノール樹脂を硬化させて焼成処理し、粉砕して粉末とする方法、または、フェノール樹脂を球状、不定形状の粉末の状態で硬化させて焼成処理する方法等がある。導電性の高いアモルファスカーボンを得るためには2000℃以上に加熱処理することが適する。
上記した膨張黒鉛粉末は、例えば、天然黒鉛、熱分解黒鉛等高度に結晶構造が発達した黒鉛を、濃硫酸と硝酸との混液、濃硫酸と過酸化水素水との混液の強酸化性の溶液に浸漬処理して黒鉛層間化合物を生成させ、水洗してから急速加熱して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理することによって得られた粉末や、それを一度シート状に圧延したものを粉砕した粉末である。
上記した人造黒鉛を得るためには、通常は先ずコークスを製造する。コークスの原料は石油系ピッチ、石炭系のピッチ等が用いられる。これらの原料を炭化してコークスとする。コークスから黒鉛化粉末を得るにはコークスを粉砕後黒鉛化処理する方法、コークス自体を黒鉛化した後粉砕する方法、あるいはコークスにバインダーを加え成形、焼成した焼成品(コークスおよびこの焼成品を合わせてコークス等という)を黒鉛化処理後粉砕して粉末とする方法等がある。原料のコークス等はできるだけ、結晶が発達していない方が良いため、2000℃以下、好ましくは1200℃以下で加熱処理したものが適する。
本発明のB成分には、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブのいずれか一方または両方が、0.1質量%以上50質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上45質量%以下の範囲であり、更に好ましくは、0.2質量%以上40質量%以下の範囲である。B成分中におけるこれらの含有率が0.1質量%未満では導電性の向上に効果がない。また、50質量%を超えると成形性が悪くなる傾向になる。
本発明における、樹脂成分とB成分の組成は、(樹脂成分+B成分)を基準(100質量%として)、樹脂成分が2質量%以上30質量%以下の範囲、B成分が70質量%以上98質量%以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは、樹脂成分が5質量%以上20質量%以下、B成分が80質量%以上95質量%以下である。更に好ましくは、樹脂成分が5質量%以上15質量%以下の範囲、B成分が85質量%以上95質量%以下の範囲である。樹脂成分が2質量%未満では、成形性が悪くなる傾向がある。他方、樹脂成分が30質量%を超えると、体積固有抵抗が1Ωcm以上になり易い傾向が生ずる。
更に本発明の導電性樹脂組成物には、必要に応じて、硬度、強度、導電性、成形性、耐久性、耐候性、耐水性等を改良する目的で、更にガラスファイバー、ウィスカー、金属酸化物、有機繊維、紫外線安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、撥水剤、増粘剤、低収縮剤、親水性付与剤等の添加剤を添加することができる。
本発明の導電性樹脂組成物の溶融時の見掛けの粘度は、温度280℃において、7×102Pa・s以上1×103Pa・s以下の範囲であることが好ましい。溶融時の見掛けの粘度が上記数値範囲内である場合、成形性が良好となる。溶融時の見掛けの粘度の測定方法は特に制限されず、公知のものを採用できる。例えば、東洋精機(株)製のキャピログラフを用いて、温度280℃、せん断速度1000秒−1で、直径1mm、長さ10mmのキャピラリーを用いて測定する方法が挙げられる。
本発明における導電性樹脂組成物の製造方法は特に制限されない。上記した各成分をロール、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー(登録商標)、ヘンシェルミキサー(登録商標)、プラネタリーミキサー等の樹脂分野で一般的に用いられている混合機、混練機を使用し、なるべく均一に混合させるのが好ましい。
本発明の導電性樹脂組成物を用いて、燃料電池セパレータを製造する方法は特に制限されない。この製造方法の具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、注型法、射出圧縮成形法が挙げられるが、これに限定するわけではない。より好ましくは、成形加工時に金型内あるいは金型全体を真空状態にして成形する。
本発明において成形の際に使用すべき金型については特に制限されないが、例えば、材料の固化が速く、流動性が悪い場合は、キャビティ内に断熱層を仕込んだ断熱金型を用いることが好ましい。また、金型温度を成形時に上下できる温度プロファイルシステムを導入した金型がより好ましい。温度プロファイルのやり方としは、誘導加熱と冷媒(空気、水、オイル等)の切換えによるシステム、熱媒(熱水、加熱オイル等)と冷媒の切換えによるシステム等が挙げられるが、制限されるものではない。
図1に本発明に係るセパレータの一例を示す。
本発明の燃料電池セパレータは、導電性に優れ、高い曲げ強度、曲げ歪を有するので燃料電池セパレータとして最適である。
(樹脂成分)
樹脂成分として、A成分とC成分からなる表1に記載の樹脂1ないし樹脂10を調製した。
A成分としてのポリプロピレン樹脂には、サンアロマー(株)製のサンアロマーPX900N(MFR=30)、PX600N(MFR=7)、PX400A(MFR=2)、PW201N(MFR=0.4)を用いた。なお、ポリプロピレン樹脂のMFR値は、JIS K7210に準拠して測定した。具体的には、試験温度230℃、試験荷重21.18N(2.16kg)で測定した。
C成分としてのエラストマーには、水添スチレンブタジエンラバー(H−SBR)としてJSR(株)製のダイナロン1320Pを、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)としてクレイトンポリマージャパン(株)製のクレイトンG1652を用いた。
非針状コークスであるエム・シー・カーボン(株)製MCコークスをパルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)で2mm〜3mm以下の大きさに粗粉砕した。この粗粉砕品をジェットミル(IDS2UR、日本ニューマチック(株)製)で微粉砕した。その後、分級により所望の粒径に調整した。5μm以下の粒子除去は、ターボクラシファイアー(TC15N、日清エンジニアリング(株)製)を用い、気流分級を行った。この調整した微粉砕品の一部14.4kgに炭化ホウ素(B4C)0.6kgを加え、ヘンシェルミキサー(登録商標)にて800rpmで5分間混合した。これを内径40cm、容積40リットルの蓋付き黒鉛ルツボに封入し、黒鉛ヒーターを用いた黒鉛化炉に入れてアルゴンガス雰囲気下2900℃の温度で黒鉛化した。これを放冷後、粉末を取り出し、14kgの粉末を得た。得られた黒鉛微粉は、平均粒径20.5μm、B含有量が1.9質量%であった。このようにしてホウ素含有黒鉛微紛(B1)を得た。
気相法炭素繊維として、昭和電工株式会社製のVGCF−G(登録商標)を5質量%と、上記のホウ素含有黒鉛微紛(B1)を95質量%とを、ヘンシェルミキサー(登録商標)にて混合した。得られた炭素材料混合物の平均粒径は12.4μm、B含有量1.3質量%であった。このようにしてB2の混合物を得た。なお、上記の「VGCF−G」は、繊維径が0.1〜0.3μmであり、繊維長が10〜50μmであるものを用いた。
B1成分95質量%とCNT5質量%をヘンシェルミキサー(登録商標)にて混合した。得られた炭素材料混合物の平均粒径は9.2μm、B含有量1.2質量%であった。このようにしてB3の混合物を得た。
なお、カーボンナノチューブは以下の方法で得た。
表1に示す樹脂成分材料ならびに(B1)ないし(B3)のB成分材料を、ラボプラストミル(登録商標)((株)東洋精機製作所製、モデル50C150)に投入し、温度200℃、回転速度45rpmで7分間混練して導電性樹脂組成物を得た。この組成物を縦100mm×横100mmの平板(厚さは物性試験項目ごとに異なる)成形用の金型に投入し、50t圧縮成形機(NIPPO ENGINEERING社製 E−3013)を用いて温度230℃、予熱3分後、圧力15MPaで3分間加圧加熱し、その後、冷却プレスを用いて温度25℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させることにより、実施例1ないし9および比較例1ないし3の組成物の成形体を得た。表2および表3に、各成形体の組成を示す。
また、表2および3に、各成形体の体積固有抵抗、曲げ強度、曲げ弾性率および曲げ歪みならびに見掛けの粘度の測定結果を示す。
また、曲げ強度、曲げ弾性率および曲げ歪みは、島津製作所(株)製のオートグラフ(AG−10kNI)を用いて測定を行った。具体的には、JIS K6911法で、試験片(80mm×10mm×4mm)をスパン間隔64mm、曲げ速度1mm/minの条件で3点式曲げ強度測定法により測定した。
溶融時の見掛けの粘度は、東洋精機(株)製のキャピログラフを用いて、温度280℃、せん断速度1000秒−1で、直径1mm、長さ10mmのキャピラリーを用いて測定したものである。
上記の実施例6の組成物を、貫通孔6ヶ、100×200×1.5mmのサイズで溝幅1mmピッチ、溝深さ0.5mmの溝が両面に形成された平板を成形できる金型に投入し、50t圧縮成形機を用いて温度230℃、予熱3分、圧力15MPaで3分間加圧加熱し、その後、冷却プレスを用いて温度25℃、圧力15MPaの条件で2分間冷却させることにより、燃料電池セパレータを製造した。この燃料電池セパレータの体積固有抵抗は6.5mΩcmであり、セパレータ中央の厚みは1.51mmであり、非常に良好な燃料電池セパレータを得ることが出来た。
Claims (10)
- メルトフローレートが0.01以上10以下の範囲であるポリプロピレン樹脂からなるA成分と、導電性充填材からなるB成分とが少なくとも含有されてなり、前記A成分と前記B成分との合計を100質量%としたときに、前記A成分の含有率が2質量%以上30質量%以下の範囲であり、前記B成分の含有率が70質量%以上98質量%以下の範囲であることを特徴とする燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- メルトフローレートが0.01以上10以下の範囲であるポリプロピレン樹脂からなるA成分と、導電性充填材からなるB成分とが少なくとも含有され、さらに、C成分としてエラストマーが含有されてなり、前記A成分と前記B成分と前記C成分との合計を100質量%としたときに、前記A成分および前記C成分の含有率の合計が2質量%以上30質量%以下の範囲であり、前記B成分の含有率が70質量%以上98質量%以下であることを特徴とする燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 前記A成分のポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが0.1以上2以下の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 前記C成分のエラストマーが、水添スチレンブタジエンラバー、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマー、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロックコポリマー、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックコポリマー、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックコポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー及びスチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマーのいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 前記B成分が金属材料、炭素質材料、導電性高分子、金属被覆フィラーまたは金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 前記B成分が、0.05〜5質量%のホウ素が含有された炭素質材料であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 前記B成分中に、気相法炭素繊維またはカーボンナノチューブのうちのいずれか一方または両方が、0.1質量%以上50質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項5および請求項6のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 前記気相法炭素繊維中または前記カーボンナノチューブ中のいずれか一方または両方に、0.05質量%以上5質量%以下のホウ素が含有されていることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 溶融時の見掛け粘度が7×102Pa・s以上1×103Pa・s以下の範囲であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の燃料電池セパレータ用導電性樹脂組成物から成形されてなることを特徴とする燃料電池セパレータ。
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