JP2012041239A5 - - Google Patents
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特許文献3及び非特許文献1に記載の背景技術においては、イットリア(Y 2 O 3 )等を含有する化合物の溶液を未焼成面に塗布することによってジルコニア焼結体の表面近傍に立方晶を形成している。このとき、立方晶は、焼成面から深さ200μm以上の領域まで形成される。また、焼成面の粒子は、粒径が約0.3μmから約2.5μmへと粒成長してしまっている。このため、曲げ強度及び破壊靭性が高いジルコニア焼結体は得ることができない。さらに、特許文献3及び非特許文献1に記載の方法では、立方晶を形成しようとするたびに、原料粉末に含有された安定化剤の他に、表面に塗布する安定化剤を使用する必要がある。希土類元素を使用する安定化剤は高価であると共に、特に塗布作業が煩雑であるので、製造コストが高くついてしまう。
本発明のジルコニア焼結体について説明する。本発明のジルコニア焼結体は、部分安定化ジルコニア結晶粒子が主として焼結された焼結体であり、部分安定化ジルコニアをマトリックス相として有する。部分安定化ジルコニア結晶粒子における安定化剤としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化セリウム等の酸化物が挙げられる。安定化剤は、ジルコニア粒子が部分安定化できるような量を添加すると好ましい。例えば、安定化剤として酸化イットリウムを使用する場合、酸化イットリウムの含有率は、ジルコニア焼結体全体において、部分安定化酸化ジルコニウムに対して好ましくは2mol%〜5mol%(約3質量%〜9質量%)とすることができる。ジルコニア焼結体中の安定化剤の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によって測定することができる。
本発明のジルコニア焼結体の焼成面についてX線回折パターンを測定し、正方晶由来のピークの高さと立方晶由来のピークの高さとを比較した場合に、2θが35.3°付近の正方晶由来の[200]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さに対する、2θが35.2°付近の立方晶由来の[200]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さの比(すなわち、「2θが35.2°付近の立方晶由来の[200]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さ」/「2θが35.3°付近の正方晶由来の[200]ピークが生ずる位置付近に存在するピークの高さ」である;以下「立方晶のピーク比」という)は、0.35以上であると好ましく、0.5以上であるとより好ましく、1以上であるとより好ましい。
本発明のジルコニア焼結体は、ホウ素(B)を含有すると好ましい。ジルコニア焼結体中におけるホウ素(元素)の含有率は、ジルコニア焼結体の質量に対して、3×10−4質量%以上であると好ましく、3×10−2質量%以上であるとより好ましい。また、ホウ素(元素)の含有率は、ジルコニア焼結体の合計質量に対して、0.3質量%以下であると好ましい。ホウ素を含有させることにより、焼結温度を低下させながらも、相転移の進行を抑制することができる。
本発明のジルコニア焼結体は、リン(P)元素を含有する。本発明のジルコニア焼結体におけるリンの含有率は、相転移抑制効果の観点から、ジルコニア焼結体の質量に対して、0.001質量%以上であると好ましく、0.05質量%以上であるとより好ましく、0.1質量%以上であるとさらに好ましい。また、本発明のジルコニア焼結体におけるリンの含有率は、ジルコニア焼結体の質量に対して、1質量%以下であると好ましく、0.6質量%以下であるとより好ましく、0.5質量%以下であるとさらに好ましい。
部分安定化ジルコニア結晶粒子における安定化剤としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化セリウム等の酸化物が挙げられる。安定化剤は、ジルコニア粒子が部分安定化できるような量を添加すると好ましい。例えば、安定化剤として酸化イットリウムを使用する場合、酸化イットリウムの含有率は、部分安定化酸化ジルコニウムに対して好ましくは2mol%〜5mol%(約3質量%〜9質量%)とすることができる。ジルコニア結晶粒子中の安定化剤の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によって測定することができる。
本発明の焼結用組成物は、さらに二酸化ケイ素を含有すると好ましい。二酸化ケイ素は、ジルコニア結晶粒子中に含有されていてもよいし、ジルコニア結晶粒子間に存在していてもよい。リン元素と二酸化ケイ素とを焼結用組成物に含有させると、リン元素のみを含有させるときより、ジルコニア焼結体の低温劣化に対する相転移抑制効果をさらに高めることができる。本発明の焼結用組成物における二酸化ケイ素の含有率は、相転移抑制効果の観点から、酸化ジルコニウム1molに対して、7×10−4mol以上であると好ましく、1×10−3mol以上であるとより好ましく、2×10−3mol以上であるとさらに好ましい。本発明の焼結用組成物における二酸化ケイ素の含有率は、相転移抑制効果の観点から、酸化ジルコニウム1molに対して、7×10−2mol以下であると好ましく、3×10−2mol以下であるとより好ましく、2×10−2mol以下であるとさらに好ましい。
[実施例41及び参考例42]
[焼成面及び内部のX線回折パターン測定]
本発明のジルコニア焼結体の結晶構造を確認するため、焼成面(焼結後の露出面)のX線回折パターン(XRD)を測定すると共に、内部(当該焼成面を研削して露出した面)のXRDを測定した。測定試料の焼結用組成物における成分添加率を表15に示す。実施例41に係る試料はリン及びホウ素を含有し、参考例42に係る試料は、ホウ素を含有するがリンを含有していない。また、比較例3としてリン及びホウ素を含有していない試料についてもXRDを測定した。いずれの試料も1450℃1.5時間焼成した焼結体である。焼成面の研削は、#400のダイヤモンド砥石で研削した後、さらに#2000のダイヤモンドペーストで研磨して、焼成面から少なくとも100μm以上行った(なお、数値はJIS規格上のものである)。X線回折パターンは、Cu−target、50kV、50mAでRINT−TTRIII(株式会社リガク製)を用いて測定した。図18に、実施例41における本発明のジルコニア焼結体の焼成面のX線回折パターンを示す。図19に、実施例41における本発明のジルコニア焼結体の内部(研削面)のX線回折パターンを示す。図20に、参考例42における本発明のジルコニア焼結体の焼成面のX線回折パターンを示す。図21に、参考例42における本発明のジルコニア焼結体の内部(研削面)のX線回折パターンを示す。図22に、比較例3におけるジルコニア焼結体の焼成面のX線回折パターンを示す。図23に、比較例3におけるジルコニア焼結体の内部(研削面)のX線回折パターンを示す。
[焼成面及び内部のX線回折パターン測定]
本発明のジルコニア焼結体の結晶構造を確認するため、焼成面(焼結後の露出面)のX線回折パターン(XRD)を測定すると共に、内部(当該焼成面を研削して露出した面)のXRDを測定した。測定試料の焼結用組成物における成分添加率を表15に示す。実施例41に係る試料はリン及びホウ素を含有し、参考例42に係る試料は、ホウ素を含有するがリンを含有していない。また、比較例3としてリン及びホウ素を含有していない試料についてもXRDを測定した。いずれの試料も1450℃1.5時間焼成した焼結体である。焼成面の研削は、#400のダイヤモンド砥石で研削した後、さらに#2000のダイヤモンドペーストで研磨して、焼成面から少なくとも100μm以上行った(なお、数値はJIS規格上のものである)。X線回折パターンは、Cu−target、50kV、50mAでRINT−TTRIII(株式会社リガク製)を用いて測定した。図18に、実施例41における本発明のジルコニア焼結体の焼成面のX線回折パターンを示す。図19に、実施例41における本発明のジルコニア焼結体の内部(研削面)のX線回折パターンを示す。図20に、参考例42における本発明のジルコニア焼結体の焼成面のX線回折パターンを示す。図21に、参考例42における本発明のジルコニア焼結体の内部(研削面)のX線回折パターンを示す。図22に、比較例3におけるジルコニア焼結体の焼成面のX線回折パターンを示す。図23に、比較例3におけるジルコニア焼結体の内部(研削面)のX線回折パターンを示す。
[実施例48〜49]
[XPSによる焼成面及び内部の組成分析]
焼成面と内部との組成の違いを明らかにするため、X線光電子分光法(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて、焼成面と内部の組成を測定した。測定試料の焼結用組成物の成分添加率を表19に示す。焼結は1450℃1.5時間で実施した。測定は、QuanteraSXM(PHI社製)を用いて、試料最表面からの光電子取出角90°(検出深さ約8nm)で行った。測定結果を表20に示す。表20において「内部」とは、焼成面を#400のダイヤモンド砥石で研削した後、さらに#2000のダイヤモンドペーストで研磨して、深さ約500μm研削して露出した面を意味する。上段の数値は元素として検出した含有率であり、下段の括弧内の数値は上段の数値を元に酸化物に換算した含有率である。上段の数値には表に挙げた元素以外の数値は省略してある。また、比較例5として、リン、ホウ素及び二酸化ケイ素を添加していない焼結体についても組成分析を行った。なお、イットリア及び二酸化ケイ素は焼結用成形体において全体的に均一になるように混合しており、表層が高濃度になるようには成形していない。
[XPSによる焼成面及び内部の組成分析]
焼成面と内部との組成の違いを明らかにするため、X線光電子分光法(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて、焼成面と内部の組成を測定した。測定試料の焼結用組成物の成分添加率を表19に示す。焼結は1450℃1.5時間で実施した。測定は、QuanteraSXM(PHI社製)を用いて、試料最表面からの光電子取出角90°(検出深さ約8nm)で行った。測定結果を表20に示す。表20において「内部」とは、焼成面を#400のダイヤモンド砥石で研削した後、さらに#2000のダイヤモンドペーストで研磨して、深さ約500μm研削して露出した面を意味する。上段の数値は元素として検出した含有率であり、下段の括弧内の数値は上段の数値を元に酸化物に換算した含有率である。上段の数値には表に挙げた元素以外の数値は省略してある。また、比較例5として、リン、ホウ素及び二酸化ケイ素を添加していない焼結体についても組成分析を行った。なお、イットリア及び二酸化ケイ素は焼結用成形体において全体的に均一になるように混合しており、表層が高濃度になるようには成形していない。
[実施例55〜56]
[再焼成面のX線回折パターン測定]
実施例41、参考例42及び比較例3において焼成面を研削して内部を露出させたジルコニア焼結体を再焼成して、その再焼成面におけるX線回折パターンを測定した。研削した焼結体の再焼成は、1450℃1.5時間で行った。なお、再焼成時に、研削した焼結体の表面に安定化剤を塗布するような処理等は施していない。X線回折パターンは、Cu−target、50kV、50mAでRINT−TTRIII(株式会社リガク製)を用いて測定した。図31に、実施例55として、実施例41において研削した本発明のジルコニア焼結体の再焼成面のX線回折パターンを示す。図32に、実施例56として、参考例42において研削した本発明のジルコニア焼結体の再焼成面のX線回折パターンを示す。図33に、比較例7として、比較例3において研削したジルコニア焼結体の再焼成面のX線回折パターンを示す。
[再焼成面のX線回折パターン測定]
実施例41、参考例42及び比較例3において焼成面を研削して内部を露出させたジルコニア焼結体を再焼成して、その再焼成面におけるX線回折パターンを測定した。研削した焼結体の再焼成は、1450℃1.5時間で行った。なお、再焼成時に、研削した焼結体の表面に安定化剤を塗布するような処理等は施していない。X線回折パターンは、Cu−target、50kV、50mAでRINT−TTRIII(株式会社リガク製)を用いて測定した。図31に、実施例55として、実施例41において研削した本発明のジルコニア焼結体の再焼成面のX線回折パターンを示す。図32に、実施例56として、参考例42において研削した本発明のジルコニア焼結体の再焼成面のX線回折パターンを示す。図33に、比較例7として、比較例3において研削したジルコニア焼結体の再焼成面のX線回折パターンを示す。
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