JP7316827B2 - ジルコニア強化剤、強化方法及び歯冠修復物 - Google Patents
ジルコニア強化剤、強化方法及び歯冠修復物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7316827B2 JP7316827B2 JP2019076473A JP2019076473A JP7316827B2 JP 7316827 B2 JP7316827 B2 JP 7316827B2 JP 2019076473 A JP2019076473 A JP 2019076473A JP 2019076473 A JP2019076473 A JP 2019076473A JP 7316827 B2 JP7316827 B2 JP 7316827B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- zirconia
- sintered body
- reinforcing agent
- monoclinic
- semi
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Description
〔1〕単斜晶ジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤。
〔2〕所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて得られるジルコニア焼結体の表面に塗工して熱処理することで、前記ジルコニア焼結体の機械的強度を向上させる、〔1〕に記載のジルコニア強化剤。
〔3〕所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて得られるジルコニア焼結体の機械的強度を向上させるジルコニア焼結体の強化方法であって、前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程を有するジルコニア焼結体の強化方法。
〔4〕前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程が、前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア粒子、又は単斜晶ジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤を塗工する工程と、前記塗工材を塗工したジルコニア焼結体を熱処理する工程と、を有する、〔3〕に記載のジルコニア焼結体の強化方法。
〔5〕所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて得られるジルコニア焼結体の機械的強度を向上させるジルコニア焼結体の強化方法であって、焼結前の前記正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は前記部分安定化ジルコニア半焼結体の表面に単斜晶ジルコニア粒子、又は単斜晶ジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤を塗工する工程と、前記正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は前記部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させてジルコニア焼結体を得る工程と、を有する、ジルコニア焼結体の強化方法。
〔6〕表面の少なくとも一部に単斜晶ジルコニア相を有するジルコニア焼結体。
〔7〕所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて成る歯冠修復物において、前記歯冠修復物の表面に単斜晶ジルコニア相を有する歯冠修復物。
〔8〕平均一次粒子径が30nm以下であるジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤。
〔9〕さらに水又はアルコールを含有する、〔8〕に記載のジルコニア強化剤。
〔10〕〔8〕又は〔9〕に記載のジルコニア強化剤を、ジルコニア焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程と、前記ジルコニア強化剤が塗工されたジルコニア焼結体を熱処理する工程を有する、ジルコニア焼結体の強化方法。
〔11〕二軸曲げ強さを5%以上向上させる、〔10〕に記載のジルコニア焼結体の強化方法。
〔12〕△L*(W-B)の変化率が5%以下である、〔10〕又は〔11〕に記載のジルコニア焼結体の強化方法。
〔13〕前記熱処理の温度が、900℃を下限とし前記ジルコニア焼結体を作製した際の焼結温度を上限とする範囲である、〔10〕~〔12〕のいずれかに記載のジルコニア焼結体の強化方法。
〔14〕〔1〕又は〔2〕に記載のジルコニア強化剤を、ジルコニア焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程と、前記ジルコニア強化剤が塗工されたジルコニア焼結体を熱処理する工程を有する、強化ジルコニア焼結体の製造方法。
〔15〕〔1〕又は〔2〕に記載のジルコニア強化剤を、所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程と、前記ジルコニア強化剤が塗工された前記正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は前記部分安定化ジルコニア半焼結体を熱処理する工程を有する、強化ジルコニア焼結体の製造方法。
〔16〕〔8〕又は〔9〕に記載のジルコニア強化剤を、ジルコニア焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程と、前記ジルコニア強化剤が塗工されたジルコニア焼結体を熱処理する工程を有する、強化ジルコニア焼結体の製造方法。
本発明の第一実施態様としては、単斜晶ジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤が挙げられる。本実施態様のジルコニア焼結体の強化方法、ジルコニア焼結体及び歯冠修復物では、所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体(以下、これらを総称して単に「ジルコニア半焼結体」と称することがある。)を焼結させて得られるジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成することで機械的強度を向上させている。また、本発明のジルコニア焼結体の強化方法では、正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体の焼結とともにジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成してもよい。
次に、本発明の第二実施態様としては、平均一次粒子径が30nm以下であるジルコニア粒子(以下、第一実施態様と区別して「ナノジルコニア粒子」と称することがある。)を含有するジルコニア強化剤が挙げられる。該ジルコニア強化剤を用いることにより、ジルコニア焼結体の透光性を損ねることなく機械的強度を向上させることができる。好適には、該ジルコニア強化剤をジルコニア焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程と、前記ジルコニア強化剤が塗工されたジルコニア焼結体を熱処理する工程を有する、ジルコニア焼結体の強化方法が挙げられる。このようなジルコニア焼結体の強化方法を用いることで、ジルコニア焼結体の透光性を損ねることなく機械的強度を向上させることができる。以下に、該実施態様について詳細を説明する。
本実施態様のナノジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤の形態としては、第一実施態様の塗工材と同様のものが挙げられ、スラリー、分散液が好ましい。ナノジルコニア粒子の結晶相は単斜晶、正方晶、立方晶のいずれでもよく、これらの混合物でも構わないが、好ましくは単斜晶である。ナノジルコニア粒子は安定化剤を含むものであってもよく、含まないものであっても何ら制限なく用いることができる。ナノジルコニア粒子が安定化剤を含む場合、公知の安定化剤を用いることができるが、その中でもイットリアが好ましい。ナノジルコニア粒子に含まれるイットリアの含有量としては9.0モル%以下が好ましい。ナノジルコニア粒子に含まれるイットリアの含有量が9.0モル%を超えるジルコニア強化剤を塗工した場合、ジルコニア強化剤とジルコニア焼結体の焼結温度が高くなり過ぎてしまい、ジルコニア焼結体の結晶粒子が粗大化し、機械的強度の低下を引き起こす可能性がある。ナノジルコニア粒子に含まれるイットリアの含有量としては7.0モル%以下がより好ましく、5.0モル%以下がさらに好ましい。なお、ナノジルコニア粒子に含まれるイットリアの含有量は、ジルコニアとイットリアの合計モル数に対するイットリアのモル数の割合(モル%)を意味する。
第二実施態様のジルコニア焼結体の強化方法としては、前記ナノジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤を用いることが重要であり、該ジルコニア強化剤を、ジルコニア焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程(塗工工程)と、前記ジルコニア強化剤が塗工されたジルコニア焼結体を熱処理する工程(熱処理工程)を有することが好ましい。ジルコニア強化剤が分散媒を含む場合、塗工工程と熱処理工程の間に、塗工したジルコニア強化剤から分散媒を留去する工程を有していてもよい。
fc = 100 × Ic/(Im+It+Ic)
ここで、fcは強化前ジルコニア焼結体における立方晶の割合(%)を表し、Imは2θ=28度付近のピーク(単斜晶の(11-1)面に基づくピーク)の高さを表し、Itは2θ=30度付近のピーク(正方晶の(111)面に基づくピーク)の高さを表し、Icは2θ=30度付近のピーク(立方晶の(111)面に基づくピーク)の高さを表す。なお、2θ=30度付近のピークが、正方晶の(111)面及び立方晶の(111)面の混相に基づくピークとして現れ、正方晶の(111)面に基づくピークと立方晶の(111)面に基づくピークとの分離が困難な場合には、リートベルト法を採用するなどして正方晶と立方晶の比を求めた上で、これを当該混相に基づくピークの高さ(It+c)に乗じることにより、It及びIcを求めることができる。
本発明のナノジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤を用いたジルコニア焼結体の強化方法により得られる強化ジルコニア焼結体の用途に特に制限はなく、透光性及び機械的強度が共に優れることから、歯冠修復物等の歯科材料などとして特に好適である。本発明の強化ジルコニア焼結体は、特に臼歯部に使用される歯冠修復物や破折が起きやすいと思われる切縁部に使用することが好ましい。
<単斜晶ジルコニア粒子の調製>
本発明で用いた単斜晶ジルコニア粒子は以下のようにして作製した。
すなわち、4モル/LのZrOCl2水溶液を200℃にて3日間水熱処理し、単斜晶ジルコニア粒子を析出させ、遠心洗浄することで得られた。この単斜晶ジルコニア粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、平均粒子径は約13nmであった。また、この単斜晶ジルコニア粒子の粉末X線回折試験(Rigaku製RINT2500HF)の結果を図1に示す。図1に示すように、単斜晶ジルコニアであることを確認した。以下において、この単斜晶ジルコニア粒子を用いた。
<正方晶安定化ジルコニア半焼結体を焼結させたジルコニア焼結体の場合>
歯科用の正方晶安定化ジルコニア半焼結体(Lava(登録商標)Plus;3M Japan)を直径17mm、厚さ1.5mmに切削し、室温から800℃までは、20℃/分の速度で昇温し、800℃から1500℃までは、10℃/分の速度で昇温した後、1500℃にて2時間保持した。その後、800℃までは最高15℃/分の速度で降温させ、250℃までは最高25℃/分の速度で降温させ、自然冷却にて室温まで高温させることでジルコニア焼結体とした。このジルコニア焼結体の直径は14mm、厚さは1.2mmであった。
XM={(-111)M+(111)M}/{(-111)M+(111)M+(101)T}
ここで、(-111)Mはジルコニア単斜晶(-111)面(2e=28°)のピーク強度を表し、(111)Mはジルコニア単斜晶(111)面(2e=31.2°)のピーク強度を表し、(101)Tはジルコニア立方晶(101)面(2e=30°)のピーク強度を表す。
dは試験片厚さ
uはポアッソン比(0.25)
r1は支持円の半径
r2は圧子半径
r3は試験片半径
として、最大の曲げ荷重Pから次の式に従って二軸曲げ強さSを算出した。
<部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させたジルコニアの場合(1)>
歯科用の部分安定化ジルコニア半焼結体(「ノリタケ カタナ(登録商標)ジルコニア」UTML;クラレノリタケデンタル株式会社製)を直径17mm、厚さ1.5mmに切削し、室温から1550℃まで10℃/分の速度で昇温した後、1550℃にて2時間保持した。その後、室温まで最高10℃/分の速度で降温させることで焼結体とした。ジルコニア焼結体の直径は、14mm、厚さ1.2mmであった。
<部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させたジルコニアの場合(2)>
歯科用の部分安定化ジルコニア半焼結体(「ノリタケ カタナ(登録商標)ジルコニア」UTML;クラレノリタケデンタル株式会社製)を直径17mm、厚さ1.5mmに切削した。
ジルコニア粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて写真撮影し、得られた画像上で任意の粒子100個について各粒子の粒子径(最大径)を測定し、それらの平均値をジルコニア粒子の平均一次粒子径とした。
ジルコニア焼結体の二軸曲げ強さは、ISO 6872:2015に準拠して測定した。
ジルコニア焼結体の透光性をΔL*(W-B)の測定により評価した。ジルコニア焼結体の厚さ1.2mmにおけるΔL*(W-B)は、以下の方法により測定した。直径15mm×厚さ1.2mmの円盤形状のジルコニア焼結体を試料として用い、分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製、「CM-3610A」、幾何条件c(di:8°、de:8°)、拡散照明:8°受光、測定モードSCI、測定径/照明径=φ8mm/φ11mm)を用いて測定し(n=5)、コニカミノルタ株式会社製色彩管理ソフトウェア「SpectraMagic NX ver.2.5」を使用して平均値を算出した。当該測定において、光源はF11を用い、反射光を測定した。
強化前のジルコニア焼結体における立方晶の割合は結晶相の解析によって求めた。具体的には、強化前ジルコニア焼結体の表面を鏡面加工した部分について、X線回折(XRD;X-Ray Diffraction)測定を行い、以下の式から求めた。
fc = 100 × Ic/(Im+It+Ic)
ここで、fcは強化前ジルコニア焼結体における立方晶の割合(%)を表し、Imは2θ=28度付近のピーク(単斜晶の(11-1)面に基づくピーク)の高さを表し、Itは2θ=30度付近のピーク(正方晶の(111)面に基づくピーク)の高さを表し、Icは2θ=30度付近のピーク(立方晶の(111)面に基づくピーク)の高さを表す。
ジルコニア焼結体の外観(色)は目視にて評価した。
ジルコニア焼結体の蛍光性はUV光下における蛍光の有無を目視にて評価した。
0.62モル/Lのオキシ塩化ジルコニウムを含む水溶液1.0Lと、1.9モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.5Lを準備した。
沈殿槽内に純水1.0Lを注ぎ、さらに水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムを沈殿させてスラリーを得た。これを濾過及び洗浄した後、酢酸22.2gを当該スラリーに加え、200℃で3時間水熱処理した。得られたスラリーを100nmの孔径を有するメンブレンフィルターで遠心濾過し、固形分濃度(ジルコニアの濃度)が5.0質量%となるように純水を加え、粗大粒子を取り除いたジルコニアスラリーを作製し、該スラリーをジルコニア強化剤とした。このジルコニアスラリーに含まれるジルコニア粒子の平均一次粒子径は17nmであった。
0.62モル/Lのオキシ塩化ジルコニウム及び0.038モル/Lの塩化イットリウムを含む混合水溶液1.0Lと、1.9モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.5Lをそれぞれ準備した。
沈殿槽内に純水1.0Lを注ぎ、さらに上記混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを共沈させてスラリーを得た。これを濾過及び洗浄した後、酢酸22.2gを当該スラリーに加え、200℃で3時間水熱処理した。得られたスラリーを100nmの孔径を有するメンブレンフィルターで遠心濾過し、固形分濃度(ジルコニアとイットリアの濃度)が5.0質量%となるように純水を加え、粗大粒子を取り除いたジルコニアスラリーを作製し、該スラリーをジルコニア強化剤とした。このジルコニアスラリーに含まれるジルコニア粒子の平均一次粒子径は18nmであった。
0.62モル/Lのオキシ塩化ジルコニウム及び0.065モル/Lの塩化イットリウムを含む混合水溶液1.0Lと、1.9モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.5Lをそれぞれ準備した。
沈殿槽内に純水1.0Lを注ぎ、さらに上記混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを共沈させてスラリーを得た。これを濾過及び洗浄した後、酢酸22.2gを当該スラリーに加え、200℃で3時間水熱処理した。得られたスラリーを100nmの孔径を有するメンブレンフィルターで遠心濾過し、固形分濃度(ジルコニアとイットリアの濃度)が5.0質量%となるように純水を加え、粗大粒子を取り除いたジルコニアスラリーを作製し、該スラリーをジルコニア強化剤とした。このジルコニアスラリーに含まれるジルコニア粒子の平均一次粒子径は16nmであった。
0.62モル/Lのオキシ塩化ジルコニウム及び0.108モル/Lの塩化イットリウムを含む混合水溶液1.0Lと、1.9モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.5Lをそれぞれ準備した。
沈殿槽内に純水1.0Lを注ぎ、さらに上記混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを共沈させてスラリーを得た。これを濾過及び洗浄した後、酢酸22.2gを当該スラリーに加え、200℃で3時間水熱処理した。得られたスラリーを100nmの孔径を有するメンブレンフィルターで遠心濾過し、固形分濃度(ジルコニアとイットリアの濃度)が5.0質量%となるように純水を加え、粗大粒子を取り除いたジルコニアスラリーを作製し、該スラリーをジルコニア強化剤とした。このジルコニアスラリーに含まれるジルコニア粒子の平均一次粒子径は18nmであった。
ジルコニア粒子の粉末「TZ-3Y」「TZ-6YS」「TZ-8YS」(東ソー株式会社製)を一軸プレスにて直径20mm×厚さ2.0mmの円盤状にそれぞれ成形し、これらを冷間等方圧加圧(CIP)処理(圧力170MPa)して密度を上げてジルコニア成形体を得た。これらのジルコニア成形体を常圧下、500℃で2時間仮焼してジルコニア半焼結体を得た。さらに、これらのジルコニア半焼結体を常圧下、1450℃で2時間焼結してジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体は白色であった。得られたジルコニアの立方晶の割合を測定したところ、TZ-3Yは32%、TZ-6YS及びTZ-8YSは100%であった。得られたジルコニア焼結体を厚さ1.2mmとなるように#600耐水性研磨紙にて両面研磨した。
ポリエチレングリコール200(東京化成工業株式会社製)を水に溶解して、ポリエチレングリコール200を30質量%含む、バインダーを含む前処理剤溶液を調製した。
次に、実施例2-5で作製したTZ-6YSを焼結させたジルコニア焼結体に上記バインダーを含む前処理剤溶液を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、十分に水洗した後、エアーブローにて水分を留去した。その後、実施例2-5と同様にして、実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、その後、エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。その後、1450℃で2時間加熱して、強化ジルコニア焼結体を得た。得られた強化ジルコニア焼結体は白色で蛍光性を示さなかった。各測定結果を表2に示した。
実施例2-5で作製したTZ-6YSを焼結させたジルコニア焼結体に、実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、その後、エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。以下、ジルコニア強化剤による処理を4回繰り返し、計5層積層した。その後、1450℃で2時間加熱して、強化ジルコニア焼結体を得た。得られた強化ジルコニア焼結体は白色で蛍光性を示さなかった。各測定結果を表2に示した。
ポリアクリル酸(平均分子量約25,000、富士フイルム和光純薬株式会社製)を水に溶解して、ポリアクリル酸を30質量%含む、バインダーを含む前処理剤溶液を調製した。
次に、実施例2-5で作製したTZ-6YSを焼結させたジルコニア焼結体に上記バインダーを含む前処理剤溶液を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、十分に水洗した後、エアーブローにて水分を留去した。その後、実施例2-5と同様にして、実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、その後、エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。以下、バインダーを含む前処理剤溶液による処理とジルコニア強化剤による処理を各4回ずつ繰り返し、計5層ずつ積層した。その後、1450℃で2時間加熱して、強化ジルコニア焼結体を得た。得られた強化ジルコニア焼結体は白色で蛍光性を示さなかった。各測定結果を表2に示した。
実施例2-5で作製したTZ-6YSを焼結させたジルコニア焼結体に、実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、その後、エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。その後、1100℃で2時間加熱して、強化ジルコニア焼結体を得た。得られた強化ジルコニア焼結体は白色で蛍光性を示さなかった。各測定結果を表2に示した。
「ノリタケ カタナ(登録商標) ジルコニアディスク」HT13(クラレノリタケデンタル株式会社製)をミリング装置(「ノリタケ カタナ(登録商標)H-18」、クラレノリタケデンタル株式会社製)を用いて直径20mm×厚さ2.0mmの円盤状、上顎中切歯単冠形状及び下顎第一大臼歯単冠形状に加工し、該加工物を1500℃で2時間焼成してジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体はやや赤みがかっており、蛍光性を示さなかった。
得られた円盤状ジルコニア焼結体に、実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、その後、エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。上顎中切歯単冠形状及び下顎第一大臼歯単冠形状のジルコニア焼結体については、各歯冠形状の外表面部分に筆を用いて実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を塗工し、その後エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。その後、各サンプルを1500℃で2時間加熱して、強化ジルコニア焼結体を得た(実施例2-13)。得られた強化ジルコニア焼結体はやや赤みがかっており、蛍光性を示さなかった。上顎中切歯単冠形状及び下顎第一大臼歯単冠形状のジルコニア焼結体については、強化処理の前後において目視上変化は認められなかった。また、強化処理を施さなかったジルコニア焼結体を比較例2-2とした。各測定結果を表2に示した。
Lava(登録商標)Esthetic Zirconia Bleach(3M Deutschland GmbH製)をミリング装置(「ノリタケ カタナH-18」、クラレノリタケデンタル株式会社製)を用いて直径20mm×厚さ2.0mmの円盤状、上顎中切歯単冠形状及び下顎第一大臼歯単冠形状に加工し、該加工物を1500℃で2時間焼成してジルコニア焼結体を得た。得られたジルコニア焼結体は白色で蛍光性を示した。
得られた円盤状ジルコニア焼結体に、実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を、スポイトを用いてジルコニア焼結体の片面が全て覆われるように滴下し、その後、エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。上顎中切歯単冠形状及び下顎第一大臼歯単冠形状のジルコニア焼結体については、各歯冠形状の外表面部分に筆を用いて実施例2-1で作製したジルコニア強化剤を塗工し、その後エアーブローにてジルコニア強化剤に含まれる分散媒を留去した。その後、各サンプルを1500℃で2時間加熱して、強化ジルコニア焼結体を得た(実施例2-14)。得られた強化ジルコニア焼結体は白色で蛍光性を示した。上顎中切歯単冠形状及び下顎第一大臼歯単冠形状のジルコニア焼結体については、強化処理の前後において目視上変化は認められなかった。また、強化処理を施さなかったジルコニア焼結体を比較例2-3とした。各測定結果を表2に示した。
Claims (13)
- 単斜晶ジルコニア粒子を含有し、所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて得られるジルコニア焼結体の表面に塗工して熱処理することで、前記ジルコニア焼結体の機械的強度を向上させる、ジルコニア強化剤。
- 前記単斜晶ジルコニア粒子の平均一次粒子径が1nm~500nmである、請求項1に記載のジルコニア強化剤。
- さらに水又はアルコールを含有する、請求項1又は2に記載のジルコニア強化剤。
- 所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて得られるジルコニア焼結体の機械的強度を向上させるジルコニア焼結体の強化方法であって、
前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程を有するジルコニア焼結体の強化方法。 - 前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程が、前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア粒子、又は単斜晶ジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤を塗工する工程と、
前記ジルコニア強化剤を塗工したジルコニア焼結体を熱処理する工程と、を有する、請求項4に記載のジルコニア焼結体の強化方法。 - 所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて得られるジルコニア焼結体の機械的強度を向上させるジルコニア焼結体の強化方法であって、
焼結前の前記正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は前記部分安定化ジルコニア半焼結体の表面に単斜晶ジルコニア粒子、又は単斜晶ジルコニア粒子を含有するジルコニア強化剤を塗工する工程と、
前記正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は前記部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させてジルコニア焼結体を得る工程と、を有する、ジルコニア焼結体の強化方法。 - 二軸曲げ強さを5%以上向上させる、請求項4~6のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の強化方法。
- △L*(W-B)の変化率が5%以下である、請求項4~7のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の強化方法。
- 前記熱処理の温度が、900℃を下限とし前記ジルコニア焼結体を作製した際の焼結温度を上限とする範囲である、請求項4~8のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の強化方法。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニア強化剤を塗工されてなる、表面の少なくとも一部に単斜晶ジルコニア相を有するジルコニア焼結体。
- 所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体を焼結させて成る歯冠修復物において、
前記歯冠修復物の表面に、請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニア強化剤を塗工されてなる、単斜晶ジルコニア相を有する歯冠修復物。 - ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程を有し、
前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程が、請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニア強化剤を、ジルコニア焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程と、前記ジルコニア強化剤が塗工されたジルコニア焼結体を熱処理する工程を有し、得られる強化ジルコニア焼結体が表面の少なくとも一部に単斜晶ジルコニア相を有する、強化ジルコニア焼結体の製造方法。 - ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程を有し、
前記ジルコニア焼結体の表面に単斜晶ジルコニア相を形成する工程が、請求項1~3のいずれか一項に記載のジルコニア強化剤を、所定形状とした正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は部分安定化ジルコニア半焼結体の表面の少なくとも一部に塗工する工程と、前記ジルコニア強化剤が塗工された前記正方晶安定化ジルコニア半焼結体又は前記部分安定化ジルコニア半焼結体を熱処理する工程を有し、得られる強化ジルコニア焼結体が表面の少なくとも一部に単斜晶ジルコニア相を有する、強化ジルコニア焼結体の製造方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018077971 | 2018-04-13 | ||
JP2018077971 | 2018-04-13 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019181210A JP2019181210A (ja) | 2019-10-24 |
JP7316827B2 true JP7316827B2 (ja) | 2023-07-28 |
Family
ID=68338618
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019076473A Active JP7316827B2 (ja) | 2018-04-13 | 2019-04-12 | ジルコニア強化剤、強化方法及び歯冠修復物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7316827B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113461051B (zh) * | 2021-08-17 | 2023-02-03 | 焦作市维纳科技有限公司 | 一种纳米氧化锆粉体的制备方法 |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003530970A (ja) | 2000-04-27 | 2003-10-21 | サン−ゴバン・セラミツク・アバンセ・デマルケ | イットリウム添加ジルコニアから成る生体内医療部品 |
CN1943538A (zh) | 2006-11-02 | 2007-04-11 | 北京宁宇博美生物技术有限公司 | 新型牙科氧化锆修复体及其制备工艺 |
JP2009538211A (ja) | 2006-05-24 | 2009-11-05 | ジマー デンタル, インコーポレイテッド | 審美的表面を有するポリマーコア人工歯科補装具 |
JP2014524904A (ja) | 2011-06-24 | 2014-09-25 | ストラウマン ホールディング アーゲー | セラミック材料から作られた本体 |
DE102015204109A1 (de) | 2015-03-06 | 2016-09-08 | Gebr. Brasseler Gmbh & Co. Kg | Sprühbare Verblendkeramik-Zusammensetzung, Verfahren zur Beschichtung von dentalen Restaurationen aus Zirkoniumdioxid und dentale Restauration aus Zirkoniumdioxid |
WO2018033800A1 (en) | 2016-08-18 | 2018-02-22 | Ivoclar Vivadent Ag | Metal oxide ceramic nanomaterials and methods of making and using same |
WO2018056330A1 (ja) | 2016-09-20 | 2018-03-29 | クラレノリタケデンタル株式会社 | ジルコニア組成物、仮焼体及び焼結体、並びにそれらの製造方法 |
-
2019
- 2019-04-12 JP JP2019076473A patent/JP7316827B2/ja active Active
Patent Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003530970A (ja) | 2000-04-27 | 2003-10-21 | サン−ゴバン・セラミツク・アバンセ・デマルケ | イットリウム添加ジルコニアから成る生体内医療部品 |
JP2009538211A (ja) | 2006-05-24 | 2009-11-05 | ジマー デンタル, インコーポレイテッド | 審美的表面を有するポリマーコア人工歯科補装具 |
CN1943538A (zh) | 2006-11-02 | 2007-04-11 | 北京宁宇博美生物技术有限公司 | 新型牙科氧化锆修复体及其制备工艺 |
JP2014524904A (ja) | 2011-06-24 | 2014-09-25 | ストラウマン ホールディング アーゲー | セラミック材料から作られた本体 |
DE102015204109A1 (de) | 2015-03-06 | 2016-09-08 | Gebr. Brasseler Gmbh & Co. Kg | Sprühbare Verblendkeramik-Zusammensetzung, Verfahren zur Beschichtung von dentalen Restaurationen aus Zirkoniumdioxid und dentale Restauration aus Zirkoniumdioxid |
WO2018033800A1 (en) | 2016-08-18 | 2018-02-22 | Ivoclar Vivadent Ag | Metal oxide ceramic nanomaterials and methods of making and using same |
WO2018056330A1 (ja) | 2016-09-20 | 2018-03-29 | クラレノリタケデンタル株式会社 | ジルコニア組成物、仮焼体及び焼結体、並びにそれらの製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2019181210A (ja) | 2019-10-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP7138107B2 (ja) | 蛍光剤を含むジルコニア焼結体 | |
JP7175273B2 (ja) | ジルコニア粒子を含む粉末の製造方法 | |
US9403721B2 (en) | Composite ceramic material comprising zirconia | |
JP7336507B2 (ja) | 短時間で焼成可能なジルコニア成形体および仮焼体 | |
JP7125402B2 (ja) | ジルコニア粒子および蛍光剤を含む粉末の製造方法 | |
JP2020001973A (ja) | ジルコニア成形体の製造方法 | |
JP2023040099A (ja) | 高い直線光透過率を有するジルコニア焼結体 | |
JP7316827B2 (ja) | ジルコニア強化剤、強化方法及び歯冠修復物 | |
WO2022220301A1 (ja) | ジルコニア成形体、ジルコニア仮焼体及びジルコニア焼結体並びにこれらの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20211019 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20221118 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20221129 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20230120 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20230328 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20230620 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20230718 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7316827 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |