JP2012037135A - マイクロ波乾燥装置およびそれを用いた無機材料成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機成形体材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる成形体前駆体から、短い乾燥時間で、良好な無機成形体を得ることができる方法の提供。
【解決手段】無機成形体材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる成形体前駆体を用意し、この成形体前駆体にマイクロ波を照射して乾燥させる。ここでマイクロ波を、成形体前駆体の表面温度が上昇後一定値を維持する照射強度にて照射して、成形体前駆体の乾燥を進行させ、その後、マイクロ波の照射を、成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に停止する。
【選択図】図3

Description

マイクロ波乾燥装置およびそれを用いたマイクロ波を利用した成形体の製造方法に関する。
マイクロ波乾燥は、短時間に大量の水を乾燥するのに有効な方法であり、セラミックス成形体の乾燥手段としても採用されており、近年、種々の提案がされている。例えば、セラミックス材料を主原料として形成された未焼成のセラミックス成形体に、誘電乾燥を行った後に、マイクロ波乾燥を行うことが提案されており(特許文献1参照)、かかる技術によれば、乾燥対象であるセラミックス成形体が大型で水分が多いものであっても、クラックや変形を生じさせることなく、短時間で、ムラなく均一に乾燥させて、高品質な乾燥したセラミックス成形体が得られるとされている。また、無機バインダーを含むセラミックファイバー成形体を脱水し、含水率120%以下の含水状態とした後、このセラミックファイバー成形体にマイクロ波又は高周波を照射して乾燥し、その後に熱風乾燥することについての提案もある(特許文献2参照)。かかる技術によれば、有機物を使用せず、かつ、焼成工程を経ることなく、無機バインダーのマイグレーションを防止することができ、表面から内部までほぼ同じ硬さを有し、加熱時に煙や異臭が発生することのない、高品質の無機質繊維成形部材が得られるとされている。
特開2009−226633号公報 特開2008−254952号公報
しかしながら、確かに、マイクロ波乾燥は短時間に大量の水を乾燥するのに有効であるが、本発明者らの検討によれば、セラミックス成形体の乾燥手段に用いた場合には下記のような課題がある。具体的には、マイクロ波を用いて、水分が45〜65%程度の、水およびバインダーが含まれたセラミックス成形体の乾燥を行った場合に、十分に水が蒸発した後にマイクロ波を照射しつづけると、マイクロ波加熱の特徴から、内部の温度が急激に上昇してしまうために、有機バインダーは燃焼し、無機バインダーは変質してしまうという問題があった。そのため、マイクロ波を用いた乾燥では、特許文献2の技術で行っているように、しばしば途中段階までの乾燥をマイクロ波で行い、最後は熱風などで雰囲気温度を制御して乾燥している。その他の方法として、被乾燥物中心部の温度を熱電対等で測定して、成形体内部における急激な温度上昇が生じないようにしている。
また、マイクロ波乾燥に用いられる装置についても、そのエネルギー効率を上げて、効率よく被乾燥物を乾燥させることができる装置への希求が依然として存在している。
従って、本発明は、無機成形体材料をバインダーで固化する際に、その乾燥を短時間で行うことができ、また、マイクロ波による乾燥を利用した場合に起こるバインダーの焦げなどが生じない良好な乾燥を可能とする成形体の製造方法の提供をその目的としている。
また、本発明は、乾燥工程全てをマイクロ波で実施でき、更に、内部の温度を熱電対等で測定することを必要としない、簡易な装置構造で短時間乾燥を可能とすると同時に、熱電対等の使用に起因して必要となるマイクロ波の漏洩対策や、熱電対にマイクロ波が集中することによる製品への悪影響を抑えることができる成形体の製造方法の提供を目的としている。
さらに本発明は、エネルギー効率が高いマイクロ波乾燥装置の提供を目的としており、特に無機成形体材料をバインダーで固化する際に、その乾燥を短時間で行うことができ、また、マイクロ波による乾燥を利用した場合に起こるバインダーの焦げなどが生じない良好な乾燥を可能とするマイクロ波乾燥装置の提供を目的としている。
上記の目的に対し、本発明者らは、今般、エネルギー効率が向上されたマイクロ波乾燥装置を完成させ、さらに成形体の表面温度の変化からマイクロ波の照射強度およびそれを中止する時期を制御することで、短い乾燥時間で、良好な成形体が得られるとの知見を得た。
従って、本発明の第1の態様によれば被乾燥物を乾燥させるマイクロ波乾燥装置が提供され、この装置は、被乾燥物を収納する収容部と、被乾燥物にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、前記収容部の内部の気体および被乾燥物の乾燥に伴い発生した水蒸気を、前記収容部から排出する排気装置と、前記排気装置の排気に伴い陰圧になった前記収容部に、気体を導入する気体導入口と、前記マイクロ波発振器を空冷する冷却器とを備え、前記マイクロ波発振器によって加熱され前記冷却器から排出された加熱された気体と、室温の気体とのいずれかを切り替えて、またはそれらを混合して前記気体導入口に導く、導入気体温度調節手段とを備えてなることを特徴とするものである。
また、本発明の第2の態様によれば被乾燥物を乾燥させるマイクロ波乾燥装置が提供され、この装置は、被乾燥物を収納する収容部と、前記収容部に収納された被乾燥物にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、前記収容部に収納された被乾燥物の表面温度を測定するセンサ部と、前記センサ部から得られた表面温度情報に応じて前記マイクロ波照射部から照射されるマイクロ波の照射強度を制御するマイクロ波制御部とを備え、前記マイクロ波制御部は、前記被乾燥物の表面温度を一定値に維持するようにマイクロ波を所定の照射強度で照射し、前記マイクロ波制御部は、前記被乾燥物に含まれる水分の減少に伴い該被乾燥物の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、その後、該被乾燥物の表面温度が前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に、前記マイクロ波の照射を停止するように制御することを特徴とする。
さらに本発明の好ましい態様によれば、上記本発明の第2の態様において、前記マイクロ波制御部は、前記被乾燥物の表面温度を前記センサ部から受け取る入力部と、前記センサ部によって測定された複数の表面温度情報の差を所定値または単位時間で除算して得られた移動平均差を演算する演算部と、前記移動平均差の大きさに応じて、前記マイクロ波の照射強度を決定する制御信号を出力する出力回路とを備えてなるマイクロ波乾燥装置が提供される。
さらに本発明の別の態様によれば、上記本発明の第2の態様において、前記移動平均差が第1の基準温度差より大きい場合に、前記演算部は、前記被乾燥物の表面温度の上昇を暫定的に示す昇温フローを選択し、前記移動平均差が前記第1の基準温度差よりも小さい第2の基準温度差より低い場合に、前記演算部は、前記被乾燥物の表面温度の低下を暫定的に示す降温フローを選択し、前記移動平均差が前記第1の基準温度差と前記第2の基準温度差との間にある場合に、前記演算部は、前記被乾燥物の表面温度が前記一定値に維持されていることを暫定的に示す定温フローを選択し、前記昇温フローの選択回数と、前記降温フローの選択回数と、前記定温フローの選択回数とを記憶するメモリをさらに備え、前記演算部は、前記昇温フローを選択したときに、前記被乾燥物の表面温度の上昇を示す昇温工程に入ったと判断し、前記演算部は、前記降温フローの選択回数が所定値に達したときに、前記被乾燥物の表面温度の低下を示す降温工程に入ったと判断し、前記演算部は、前記定温フローの選択回数が所定値に達したときに、前記被乾燥物の表面温度が前記一定値に維持されていることを示す定温工程に入ったと判断するマイクロ波乾燥装置が提供される。
さらにまた本発明の別の態様によれば、上記本発明の第2の態様において、前記演算部は、前記昇温工程、前記定温工程、前記降温工程をこの順番に経た後、前記被乾燥物の表面温度が前記一定値の温度まで再上昇した時に、前記マイクロ波の照射を停止するマイクロ波乾燥装置が提供される。
上記本発明によれば、無機成形体材料をバインダーで固化する際に、その乾燥を短時間で行うことができる。また、マイクロ波による乾燥で起こるバインダーの焦げなどが生じない乾燥が可能である。また、乾燥工程全てをマイクロ波で実施するため、装置構造が簡易で短時間乾燥が可能となる。更に、内部の温度を熱電対等で測定しないため、マイクロ波の漏洩対策が必要なく、熱電対にマイクロ波が集中することによる、製品への悪影響を抑えることができる。
本発明によるマイクロ波乾燥装置を示す図である。 本発明によるマイクロ波乾燥装置のマイクロ波制御部の構成図である。 温度プロファイルおよび被乾燥物の乾燥シーケンスを示す図である。 乾燥シーケンスを示すフロー図である。 乾燥シーケンスを示すフロー図である。 乾燥シーケンスを示すフロー図である。 乾燥シーケンスを示すフロー図である。 乾燥シーケンスを示すフロー図である。 実施例1における温度プロファイルである。 実施例2における温度プロファイルである。 実施例3における温度プロファイルである。
次に、発明を実施するための形態を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
マイクロ波の照射による乾燥
本発明による方法は、後述する、無機成形体材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる混合物から所望の形状に成形された成形体前駆体に対し、マイクロ波を照射して、この成形体前駆体から水を蒸発させ乾燥させ、成形体を製造することを基本とする。
そして、本発明にあっては、まず、乾燥にあたり、マイクロ波の照射強度を次のように設定する。すなわち、マイクロ波を、前記成形体前駆体の表面温度が上昇した後、一定値を維持する照射強度にて照射して、成形体前駆体の乾燥を進行させる。より具体的に説明すれば、マイクロ波を成形体前駆体に照射すると、マイクロ波により水が加熱され蒸発が始まり、これにより成形体前駆体の温度は上昇する。その後、所定の照射強度のマイクロ波により、この成形体前駆体中に含まれる水の蒸発潜熱とマイクロ波出力とが均衡して、この成形体前駆体の表面温度が一定値を示すようにして、成形体の乾燥を進行させる。
そして、本発明にあっては、マイクロ波の照射を、成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまで間に停止することを特徴とする。この間にマイクロ波の照射をやめることで、バインダー成分が有機バインダーの場合それが燃焼したり、無機バインダーの場合それが変質したりすることなく、バインダーにより無機成形体材料が良好に結合された、成形体を製造することができる。
以下の理論はあくまで仮定であって、本発明を何ら限定する意図のものではないが、本発明による方法によって、バインダーにより無機材料が良好に結合された成形体が得られる理由は以下の様に考えられる。本発明による方法にあっては、まず、成形体前駆体中に含まれる水分子がマイクロ波により励起加熱されて成形体前駆体の温度を上昇させる。温度上昇により水分は蒸発して、成形体前駆体内部から出て、成形体前駆体の乾燥が進行する。その後大部分の水分が蒸発して成形体前駆体から実質的に水がなくなると、マイクロ波による水分子の励起加熱が生じなくなり、成形体前駆体の温度は一旦低下する。しかし、さらにマイクロ波を照射し続けると、成形体前駆体中に存在する極性分子が励起され、成形体前駆体の温度は再上昇を始める。成形体前駆体の温度の再上昇をそのまま許すと、バインダー成分が有機バインダーの場合それを燃焼させたり、無機バインダーの場合それを変質させたりし、その結果、良好な成形体が得られなくなってしまうと考えられる。本発明にあっては、成形体前駆体から実質的に水がなくなり成形体前駆体の温度が低下を示した時点から、さらに成形体前駆体の温度が再上昇して水が蒸発していた温度に至るまでの間に、マイクロ波の照射を停止する。その結果、バインダー成分の燃焼または変質が有効に防止できるものと考えられる。
本発明の好ましい態様によれば、成形体前駆体の表面温度が10℃の温度変動範囲内にとどまることを、成形体前駆体の表面温度が一定値を維持するとし、より好ましくは6℃の温度変動範囲内にとどまることを、成形体前駆体の表面温度が一定値を維持するとする。
本発明において、このマイクロ波の照射強度は、照射作業のたびに一定温度が得られるように設定されていてもよく、あるいは同一または類似の成形体前駆体に対してマイクロ波を照射して、表面温度が一定値を示すような照射強度を予め試験的に得て、その照射強度によりマイクロ波を照射するいずれであってもよい。後者が、マイクロ波の過剰照射によりバインダー成分を誤って有機バインダーの場合これを燃焼させてしまったり、無機バインダーの場合これを変質させてしまったりすることが防止できるとの観点から好ましいといえる。さらに、成形体前駆体の質量、水分量と、マイクロ波のエネルギーから、マイクロ波の照射強度を計算により得てもよい。
マイクロ波の照射強度は上記の通り適宜決定されてよいが、例えば、水分含有量45乃至65質量%で成形体前駆体の質量が2kg乃至3kgの成形体前駆体の場合、その照射強度は1kW乃至9kW程度とされることが一般的であり、好ましくは3kW乃至6kW程度である。
また、成形体前駆体の表面温度は少なくとも一定値を維持すれば本発明の効果は得られるが、具体的なその温度は、乾燥時間、さらには成形体が含む成分、とりわけバインダーの燃焼または変質防止の観点から設定されてよい。
本発明による方法にあっては、マイクロ波の停止は、成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間になされればよいが、本発明の一つの態様によれば、成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇した時に中止する。この態様は、成形体前駆体中の水をより完全に蒸発させることができる点で好ましい。また、本発明の別の態様によれば、マイクロ波の照射を、成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下した時に停止することも可能である。この態様は、成形体前駆体から実質的に水がなくなり、マイクロ波による水分子の励起加熱が生じなくなる時点を的確に確定できれば、もっともエネルギー効率の点において好ましい態様である。
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロ波の照射中、成形体前駆体から生じた水蒸気をその表面付近から排除するための排気が行われる。成形体前駆体から生じる水蒸気を排除することは、乾燥効率を上げ、さらに成形体前駆体の表面温度をより正確に測定できることから好ましい。なお、本発明において成形体前駆体の表面温度は、好ましくは放射温度計、熱電対、光ファイバー温度計などにより行われる。さらに本発明の好ましい態様によれば、上述の排気に伴い系内に供給される気体が加熱または乾燥されたものであると、より正確な表面温度の測定が可能となり、好ましい。
また、本発明の一つの態様によれば、排気に伴い系に供給される気体は、外気、すなわち空気であってもよく、また窒素のような不活性ガスであってもよい。被乾燥物の酸化を避けたい場合には、不活性ガスを用いることが好ましい。さらに、排気に伴い系に供給される気体の加熱は加熱装置により行われてもよいが、本発明の別の態様によれば、マイクロ波発振器を冷却し、それ自身は加熱または乾燥された気体であることができる。この態様によれば、エネルギー効率が高まり、乾燥を短時間で行うことができるとの利点が得られる。
さらに、以上の説明から明らかなように、無機成形体材料をバインダーで固化して成形体を得る成形体の製造方法が提供され、この方法は、無機成形体材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる混合物を用意し、該混合物を所望の形状に成形して成形体前駆体を得て、該成形体前駆体にマイクロ波を照射して乾燥させることを含んでなり、前記マイクロ波を、前記成形体前駆体の表面温度が上昇後一定値を維持する照射強度にて照射して、前記成形体前駆体の乾燥を進行させ、その後、前記マイクロ波の照射を、前記成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に停止することを特徴とするものである。また、本発明の別の態様によれば、無機成形体材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる被乾燥物の乾燥方法が提供され、この方法は、被乾燥物にマイクロ波を照射して乾燥させることを含んでなり、マイクロ波を、被乾燥物の表面温度が上昇後一定値を維持する照射強度にて照射して、被乾燥物の乾燥を進行させ、その後、マイクロ波の照射を、被乾燥物の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に停止することを特徴とするものである。
成形体前駆体の準備
本発明による方法により製造される成形体は、基本的に無機材料をバインダーで固化して得られるものである。具体的には、無機成形体材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる混合物を用意し、これを所望の形状に成形して成形体前駆体を得て、これを乾燥させて得られるものである。本発明にあっては、乾燥を上記所定の条件にて行う。
本発明において、無機材料とは、バインダーの助けにより固化されて成形体となるものであれば限定されないが、その具体例としては、セラミックファイバー、セラミックス粉末などが挙げられる。また、セラミックファイバーとしては、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、これらのウイスカーなどを用いることができる。
また、バインダーとしては、水の助けによって上記の無機材料と均質な組成物とされ、乾燥、すなわち水が除かれることで無機材料同士を固着させ、成形体を固化させるものであれば限定されないが、その例には無機バインダーおよび有機バインダーがある。
無機バインダーの具体例としては、アルミナゾル(コロイダルアルミナ)やシリカゾル(コロイダルシリカ)、リン酸アルミニウム、リン酸ソーダ、珪酸ソーダなどが挙げられる。
また、有機バインダーの具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレートなどが挙げられる。
無機成形体材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる混合物の所望の形状への成形は、当該技術分野において知られた方法により行われてよく、またその形状も限定されない。
マイクロ波乾燥装置
本発明によるマイクロ波乾燥装置を、図面を用いて説明する。図1は、マイクロ波乾燥装置1を示す図であり、この装置1は、被乾燥物2を収納する収容部3と、この収容部3に収納された被乾燥物2に正対する位置に設けられ、被乾燥物2にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器4と、収容部3の内部の気体および被乾燥物の乾燥に伴い発生した水蒸気を、収容部3から排出する排気装置5と、この排気装置5の排気に伴い陰圧になった収容部3に、気体を導入する気体導入口6を備える。さらにこの装置は、マイクロ波発振器4を空冷する冷却器7を備え、この冷却器7から排出された、加熱された気体は導管8を通り、導入気体温度調節手段9に導かれる。この導入気体温度調節手段9には、室温の気体を導入する、外気導入口10が設けられてなる。そして、導入気体温度調節手段9は、導管8からの加熱気体と、外気導入口10からの空気とのいずれかを切り替えて、またはそれらを混合して気体導入口6に導くよう構成される。この装置にあっては、被乾燥物2は、ローラーなどの搬送手段11上に、好ましくは通気性のある容器12に置かれる。この装置によれば、マイクロ波発振器4が、被乾燥物2に正対する位置に設けられていることから、マイクロ波を被乾燥物2に効率よく吸収させることができ、エネルギー効率を上げることができる。また、この装置にあっては、マイクロ波発振器4を冷却し、それ自身は加熱され温度が上昇した気体を、被乾燥物2を収納した収容部3に気体導入口6から導くことができることから、被乾燥物の乾燥をエネルギー効率よく行うことができる点で有利である。
また、本発明の一つの態様によれば、排気に伴い系に供給される気体は、外気、すなわち空気であってもよく、また窒素のような不活性ガスであってもよい。被乾燥物の酸化を避けたい場合には、不活性ガスを用いることが好ましい。従って、本発明の一つの態様によれば、マイクロ波発振器4を冷却し、それ自身は加熱または乾燥される気体、および外気導入口10から導入される気体の、一方または双方を不活性ガスとすることができる。
本発明の好ましい別の態様によれば、上述の成形体前駆体から水を蒸発させ乾燥させ、成形体を製造する方法に好ましく用いられるために、収容部3に収納された成形体前駆体の表面温度を測定するセンサ部としての放射温度計13と、この温度計から得られた表面温度情報に応じて前記マイクロ波照射部から照射されるマイクロ波の照射強度を制御するマイクロ波制御部(図示せず)とをさらに備えてなり、このマイクロ波制御部が、マイクロ波照射を、前記成形体前駆体の表面温度が上昇後一定値を維持する照射強度にて照射し、前記成形体前駆体の乾燥を進行させ、その後、マイクロ波の照射を、前記成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に停止するよう制御するものとされる。そして、この成形体前駆体の表面温度の一定値が、該成形体前駆体中に含まれる水の蒸発潜熱とマイクロ波出力とが均衡して生じるものとされ、好ましくは、前記成形体前駆体の表面温度が10℃の温度変動範囲内にとどまる照射強度のマイクロ波を照射するよう制御され、より好ましくは6℃の温度変動範囲内にとどまるよう制御される。そして、このマイクロ波制御部は、マイクロ波の照射を、成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇した時に停止するよう制御する。
この本発明による装置によれば、エネルギー効率よく、乾燥を短時間で行うことができ、また、マイクロ波による乾燥を利用した場合に起こるバインダーの焦げなどが生じない良好な乾燥が可能となる。
マイクロ波制御部
以下、本発明のマイクロ波乾燥装置のマイクロ波制御部101の構成および動作を詳細に説明する。マイクロ波制御部101は、図1に示す装置のいずれの箇所に配置してもよい。被乾燥物は、下記実施例と同様に、無機材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる混合物を所望の形状に成形した成形体前駆体でよい。
図2は、本発明の一つの態様によるマイクロ波制御部の構成図である。マイクロ波制御部101は、センサ部としての温度計13から得られた表面温度情報に応じてマイクロ波発振器4から照射されるマイクロ波の照射強度を制御する。マイクロ波制御部101は、例えば、シーケンス制御に用いられるPLC(Programmable Logic Controller)およびプログラムによって実現することができる。
このマイクロ波制御部101は、入力回路110と、演算部120と、出力回路130と、メモリ140とを備えている。
入力回路110は、図1に示す放射温度計13から被乾燥物の表面温度の情報を受け取り、該表面温度の情報を演算部120に転送する。
メモリ140は、入力回路110に入力された被乾燥物の表面温度を一時的に格納する。また、メモリ140は、マイクロ波制御部101を動作させるためのプログラムを格納している。例えば、図4〜図8に示すフローは、PLCまたはその他のCPUのプログラムとして実現され、メモリ140に格納されている。このプログラムは、マイクロ波の制御条件を任意に変更するために書換え可能な状態で格納されていることが好ましい。
演算部120は、メモリ140に格納されたプログラムに従って被乾燥物の表面温度の情報を演算することによって、被乾燥物を乾燥させる処理工程(ルーチン)を変更する。より詳細には、演算部120は、被乾燥物の表面温度の情報を演算することによって、昇温開始、乾燥中、乾燥終了などの処理工程を決定する。
出力回路130は、演算部120によって決定された処理工程に従って、マイクロ波発振器4を制御するためにマイクロ波制御信号を出力する。マイクロ波発振器4は、マイクロ波制御信号を受けてマイクロ波の照射強度を決定する。
図3は、被乾燥物の温度変化のグラフおよび被乾燥物の乾燥シーケンスを示している。乾燥シーケンスは、複数の乾燥処理工程Jn(Jn=0〜4)で構成されている。時間が0minの時点で、乾燥が開始される。マイクロ波の照射が開始されると、マイクロ波制御部101は、被乾燥物の表面温度tnを一定値に維持するようにマイクロ波を所定の照射強度で照射する。
工程Jn=0は、乾燥処理の開始時点から被乾燥物の温度tnが上昇している期間の処理工程を示す。工程Jn=1は、被乾燥物の温度tnが一定値(例えば、77±3℃)となる期間の処理工程を示す。工程Jn=2は、被乾燥物の温度tnが一定値から低下し始めたときの処理工程を示す。工程Jn=3は、被乾燥物の温度tnが低下してから再上昇し、所定値まで戻るまでの処理工程を示す。そして、工程Jn=4は、乾燥シーケンスの終了時点の処理工程を示す。工程Jn=4は、実際には、マイクロ波の照射停止を意味する。
図4〜図8は、本態様による乾燥シーケンスを示すフロー図である。演算部120は、入力回路110から得た被乾燥物の温度情報に基づいて図4〜図8に示すフローを実行し、マイクロ波制御信号を出力回路130から出力させる。これにより、マイクロ波乾燥装置は、被乾燥物の表面温度の変化に応じてマイクロ波発振器4から出力されるマイクロ波の強度を制御することができる。
まず、図4に示すように、マイクロ波制御部101は、マイクロ波発振器4を駆動させ、マイクロ波を被乾燥物に照射する(S10)。マイクロ波の照射を開始すると、マイクロ波制御部101は、被乾燥物の表面温度の情報を温度計13から周期的に受け取る。
マイクロ波の照射開始当初、メモリ140に格納された各カウント値CUn、CDn、Cn、平均温度Mn、固定平均温度MTn、処理工程Jnは、総てゼロにセットされる(S20)。ここで、カウント値CUnは、図4の昇温工程SUにおいて温度測定ごとにカウントされる値である。カウント値CDnは、降温工程SDにおいて温度測定ごとにカウントされる値である。カウント値Cnは、定温工程SCにおいて温度測定ごとにカウントされる値である。平均温度Mnは、或る時点で測定された温度tnとその前に測定された温度tn-1とを用いて算出された平均温度である。固定平均温度MTnは、処理工程Jn=1から処理工程Jn=2に遷移したときの平均温度Mnを示す。即ち、温度が一定値に維持されている状態から低下し始めたときに、演算部120は、平均温度Mnを固定平均温度MTnとして保持する。処理工程Jnは、0〜4までの数値をとることができ、上述の通り、Jn=0は、温度tnが上昇する昇温工程を示し、Jn=1は、温度tnが一定値に維持されている定温工程を示し、Jn=2は、温度tnが一定値から低下する降温工程を示す。さらに、Jn=3は、温度tnが一定値へ向かって再上昇する工程を示し、Jn=4は、マイクロ波の照射停止時点の工程を示す。
各カウント値CUn、CDn、Cn、平均温度Mn、固定平均温度MTn、および処理工程番号Jnは、メモリ140に格納されている。演算部120は、各カウント値CUn、CDn、Cn、平均温度Mn、固定平均温度MTn、または処理工程番号Jnをカウントして、メモリ140に戻す。メモリ140は、更新されたカウント値を保持するように構成されている。
温度tnが計測されると(S30)、演算部120は、移動平均値SMAnを算出する(S40)。移動平均値SMAnは、次の式1で表わされる。
移動平均値SMAnは、例えば、過去10回の連続した温度測定の結果tn-9〜tnの平均を表わす。尚、移動平均値SMAnの演算に用いる温度測定値の数は、10に限定されず、9以下あるいは11以上であってもよい。また、式1の分母は、温度測定の回数に代えて、或る単位時間でもよい。例えば、この単位時間は温度測定の周期であってもよい。
次に、演算部120は、次の式2で表わされる移動平均差Dnを算出する(S50)。
n=SMAn−SMAn-1 (式2)
演算部120は、移動平均差Dnに基づいて昇温フローSU、定温フローSCあるいは降温フローSDのいずれかのフローを選択する(S60)。例えば、フローSU、SC、SDを選択するためのDnの基準温度差を±3℃と仮定すると、Dnが第1の基準温度差+3℃より大きい場合、被乾燥物の表面温度が上昇していることを意味するため、演算部120は、昇温フローSUを選択する。Dnが基準温度差−3℃より小さい場合、被乾燥物の表面温度が下降していることを意味するため、演算部120は、降温フローSDを選択する。さらに、−3℃≦Dn≦3℃である場合、被乾燥物の表面温度はほぼ一定値に維持されていることを意味するため、演算部120は、定温フローSCを選択する。Dnの基準温度差の絶対値は、3℃に限定されず、2℃以下あるいは4℃以上であってもよい。温度tnが頻繁に不規則に変化する場合や温度変動幅が大きい場合には、基準温度差の絶対値は大きくすることが好ましい。一方、温度tnの変化を精度良く検知するためには、基準温度差の絶対値は小さいことが好ましい。
温度tnは突発的に異常な値を示す場合がある。このため、演算部120による昇温フローSU、降温フローSDおよび定温フローSCの選択は、当初、暫定的な選択であり、完全に昇温工程(Jn=0)、降温工程(Jn=2)、定温工程(Jn=1)にエンターすることとは異なる。
尚、ステップS40、S50の式をまとめると、次の式3になる。
n=(tn−tn-10)/10 (式3)
よって、演算部120は、メモリ140に格納された温度tn、tn-10を抜き出して、式3を演算してもよい。このようにDnは、或る時点の温度tn-10とその後の時点の温度tnとの差を所定値で割り算した値となる。温度tnが頻繁に不規則に変化する場合や温度変動幅が大きい場合には、基準温度差の絶対値は大きくすることが好ましい。一方、温度tnの変化を精度良く検知するためには、基準温度差の絶対値は小さいことが好ましい。
正確な移動平均差Dnは、11回の温度測定の結果が得られたときに算出可能となる。つまり、1〜10回の温度測定の結果tn-9〜tnによってSMAnが算出され、2〜11回の温度測定の結果tn-8〜tn+1によってSMAn+1が算出される。これにより、演算部120は、式2の移動平均差Dnを算出することができる。
従って、マイクロ波の照射開始から10回目の温度測定までの期間、演算部120は、正確な移動平均値SMAnおよび正確な移動平均差Dnを演算することはできない。この場合、マイクロ波の照射開始直後、演算部120が昇温フローSUを選択するとは限らない。例えば、n<0のときに、tn=0、SMAn=0であるとすると、1回目の温度測定においてt0が15℃であった場合、移動平均値SMA0は、1.5となり、移動平均差D0は、1.5となる。この場合、演算部120は、定温フローSCを選択することになる。しかし、図3に示すように、マイクロ波の照射を開始すると、温度tnは急速に上昇する。従って、温度測定の周期にもよるが、定温フローSCにおけるカウントCnが10に達する前に(定温工程(Jn=1)に完全に入る前に)、移動平均差Dnは基準温度差3以上となり、演算部120は昇温フローSUを選択する。つまり、Cnはいくつかカウントされ、0〜10の数値を取る場合がある。しかし、後述するように、カウントCnは、その後、昇温フローSUにおいてリセットされるので問題ない。
尚、仮に、マイクロ波の照射を開始した直後の初期段階で温度tnが上昇せず、カウントCnが10を超えた場合、図5に示すように、一旦、処理工程番号Jnが1になる。しかし、その後、温度が上昇し始めて、ステップS60において移動平均差Dnが6回以上続けて基準温度差3℃を超えれば、カウントCUn-1が5を超える(S107のNO)。これにより、ステップS105、S106において、CnおよびJnが0にリセットされ、処理工程番号Jnは元に戻る。従って、初期段階でカウントCnが10を超えても問題はない。
[昇温工程(Jn=0)]
マイクロ波の照射が開始されると、被乾燥物の表面温度tnが上昇する。温度tnの上昇が継続すると、Dnは、基準温度差3℃を超えるので、演算部120は昇温フローSUを選択する。
昇温フローSUでは、まず、演算部120は、昇温工程用のカウントCUnを1だけ増大させる(S102)。
次に、演算部120は、定温工程用のカウントCn-1が10より大きいか否かを判定する(S104)。このとき、上述の通り、Cn-1は、0〜10の値を取り得るが、Cn-1は10未満であるので、演算部120は、カウントCnの値を0にリセットし(S105)、処理工程番号Jnを0にセットする(S106)。
次に、演算部120は、Jn=0であるので、図5に示すフローを実行する。演算部120は、カウントCnが10に等しいか否かを判定する(S110)。この時点で、カウントCnは0であるので(S110のNO)、次に、演算部120は、カウントCnが10より大きいか否かを判定する(S111)。カウントCnは0であるので(S111のNO)、次に、演算部120は、Mnにその前のMn-1を代入する(S112)。このとき、Mnは0のままである。
その後、演算部120は、図4のステップS30〜S60を再度実行する。
移動平均差Dnが基準温度差を超えている限りにおいて、演算部120は、昇温フローSUを選択し続ける。このとき、カウントCUnは増大するが、CnおよびCDnは0を維持する。従って、移動平均差Dnが基準温度差を超えている限りにおいて、演算部120は、ステップS30〜S60、S102、S104、S105、S106、S110、S111およびS112を繰り返し実行する。
尚、ステップS107およびS108は、定温工程(Jn=1)において、偶発的にDnが基準温度差を超えた場合に対処するために設定されている。例えば、温度tnが一時的に異常な高温を示し、それによって、Dnが基準温度差を超えた場合に、演算部120は、ステップS107およびS108を実行する。これについては、後で説明する。
マイクロ波を継続して照射し続けると、マイクロ波により被乾燥物の水分が加熱されるので、温度tnは上昇し続ける。しかし、その後、水分の蒸発潜熱とマイクロ波出力とが均衡して、温度tnはほぼ一定値を示すようになる。
そして、移動平均差Dnが基準温度差3℃以下に低下したとき、演算部120は、定温フローSCを選択する(S60)。
演算部120は、定温工程用のカウントCnをカウントし始める。また、このとき、降温工程用のカウントCDnは0のままであるが、昇温工程用のカウントCUnは、昇温工程(Jn=0)において或る値までカウントされた状態である。そこで、演算部120は、カウントCDnおよびCUnをともに0にリセットする(S202、S204)。
この時点で、処理工程番号Jnは0の状態であるので、演算部120は図5のフローを実行する。カウントCnが10に達するまでは、演算部120は、ステップS110〜S112(S30〜S60、S200、S202、S204、S110〜S112のループ)を実行する。演算部120は、10回以上継続して移動平均差Dnが基準温度差±3℃の範囲内にあることを確認することによって、乾燥処理が定温工程に移行したことを確実に判断することができる。
もし、カウントCnが10に達する前に、ステップS60の移動平均差Dnが基準温度差3℃を超えた場合、演算部120は、昇温工程の処理に戻る。この場合、ステップS102において、昇温工程用のカウントCUnを再度増大させるとともに、定温工程用のカウントCnは、ステップS105において0にリセットされる。そして、Dnが基準温度差3℃以下になるまで、演算部120は、ステップS30〜S60、S102、S104、S105、S106、S110、S111およびS112を繰り返し実行することになる。
一方、定温フローSCを繰り返して、定温工程用のカウントCnが10に達した場合(S110のYES)、演算部120は、平均温度Mnをその時点の温度tnに初期設定する(S113)。
その後、定温工程用のカウントCnが11以上になった場合(S110のNO、S111のYES)、演算部120は、次の式4を演算する(S114)。
n=(Mn-1×Cn-1+tn)/Cn (式4)
ここで、Mn-1は前回測定した温度tn-1に等しい。よって、式4は、Cn-1個分の温度tn-1と、今回の温度tnとの平均値をMnにセットすることを表わしている。
次に、演算部120は、処理工程番号Jnを1にセットする(S115)。これにより、演算部120は、乾燥処理が定温工程に完全にエンターしたと判断する。
昇温工程においてDnが偶然に安定した場合には、演算部120は、一旦、定温フローSCを実行する。しかし、その後、通常、カウントCnが10に達する前にDnがまた3℃を超える。従って、演算部120は、すぐに昇温フローSUの実行に戻ることができる。つまり、カウントCnが10に達するまで、ステップS110〜S112を実行することによって、演算部120は、温度tnの偶発的な安定に対処することができる。
[定温工程(Jn=1)]
被乾燥物内の水分の蒸発潜熱とマイクロ波出力とが均衡すると、被乾燥物の表面温度tnが一定値に安定する。これは、乾燥処理が定温工程に移行したことを意味する。定温工程において、被乾燥物の乾燥が進行する。
定温工程に移行すると、処理工程番号Jnが1であるので、演算部120は、ステップS30〜S60、S200、S202、S204の実行後、図6に示すフローを実行する。
まず、演算部120は、式4を実行する(S210)。ステップS210は、ステップS114と同じ演算を実行するステップである。乾燥処理が完全に定温工程に移行すると(Jnが1になると)、定温工程用のカウントCnの大きさの判定ステップ(S110、S111)は不要となる。従って、定温工程では、ステップS110、S111が省略されている。
次に、演算部120は、降温工程用のカウントCDnが5以上であるか否かを判定する(S211)。ステップS211の判定は、定温工程において、Dnが基準温度差−3℃を偶発的に下回った場合に対処するために設定されている。換言すると、ステップS211の判定は、定温工程(Jn=1)から降温工程(Jn=2)への完全な移行を判定するために実行される。これについては、後で説明する。
図4の定温フローSCを経ている場合、ステップS202においてカウントCDnは0にセットされる。従って、通常、定温工程では、カウントCDnは0である(S211のNO)。
この場合、演算部120は、ステップS30へ戻る。つまり、演算部120は、定温工程(Jn=1)において、ステップS30〜S60、S200、S202、S204、S210、S211のループを実行する。これにより、演算部120は、温度tnの測定をするごとに、カウントCnを増大させ、新たに測定された温度tnと前回演算されたMn-1とを用いて平均温度Mnを演算する。メモリ140は、前回の平均温度Mn-1に代えて新たな平均温度Mnを格納する。即ち、メモリ140は、温度tnの測定ごとに、平均温度Mnを更新する。
定温工程において、偶発的にDnが基準温度差−3℃を下回った場合、演算部120は、図4の降温工程SDを実行する。この場合、演算部120は、降温工程用のカウントCDnをカウントする。しかし、このような偶発的な温度低下は継続しないため、降温工程用のカウントCDnは、5には達しない。従って、演算部120は、乾燥処理を降温工程に完全に移行させることなく(Jnを2に変更することなく)、すぐに定温工程に戻すことができる。
より詳細には、偶発的にDnが基準温度差−3℃を下回った場合、図4の降温フローSDにおいて、まず、演算部120は、降温工程用のカウントCDnを増大させる(S300)。次に、演算部120は、定温工程用のカウントCnが10より大きいか否かを判定する(S302)。それまで、定温フローSCを繰り返し実行してきたので、カウントCnは、通常、10以上である(S302のYES)。よって、次に、演算部120は、降温工程用のカウントCDnが5より小さいか否かを判定する(S304)。それまで、定温フローSCを繰り返し実行してきたので、カウントCDnは、通常、5以下である(S304のYES)。よって、演算部120は、定温工程用のカウントCnを1だけ増大させて、図6のフローを実行する。つまり、この時点では、処理工程番号Jnは1であり、図4の降温フローSDを実行しているものの、降温処理は、降温工程(Jn=2)に完全には移行していない。その後、Dnが基準温度差−3℃以上になると、演算部120は、直ちに、定温フローSCの実行に戻る。
被乾燥物の乾燥処理が進み、被乾燥物内の水分が実質的になくなると、温度tnが下降し始める。Dnが基準温度差−3℃を下回ると、演算部120は、降温フローSDを実行する。この時点では、突発的な温度低下と同様に、図4のステップS300〜S306が実行される。
そして、Dnが継続して5回以上基準温度差−3℃を下回ると(S211のYES)、演算部120は、その時点における平均温度Mn-1を、固定平均温度MTnとして設定する(S212)。
次に、演算部120は、処理工程番号Jnを2に変更する(S213)。これにより、演算部120は、乾燥処理が降温工程に完全にエンターしたと判断する。
[降温工程(Jn=2)]
被乾燥物から実質的に水がなくなると、マイクロ波による水分子の励起加熱が生じなくなり、被乾燥物の温度tnは低下する。温度tnの低下が継続すると、Dnは、基準温度差−3℃を下回るので、演算部120は降温フローSDを選択する。さらに、演算部120が継続して降温フローSDを選択すると(CDn≧5)、上述のように、処理工程番号Jnが2にセットされ、乾燥処理は、完全に降温工程(Jn=2)に移行する。
降温工程用のカウントCDnが5以上であるので、演算部120は、図4のステップS300、S302の実行後、ステップS304のNOへ移行する。演算部120は、定温工程用のカウントCnを0にリセットする(S308)。
処理工程番号Jnが2であるので、その後、演算部120は、図7のフローを実行する。図6のステップS212で設定された固定平均温度MTnが用いられる。尚、MTnは、Mn-1に維持されている。よって、ステップS310では、メモリ140は、MTnとしてMn-1をそのまま保持する。
次に、演算部120は、次の式5を演算する(S311)。
MTn-1−tn>10 (式5)
演算部120は、ステップS311において、温度tnが固定平均温度MTn-1よりも10℃以上低いか否かを判定する。
温度tnと固定平均温度MTn-1との差がまだ10℃を超えない場合(S311のNO)、演算部120は、ステップS30へ戻る。この場合、演算部120は、図4のフローおよびステップS310〜S311のNOからなるループを実行する。
その後、温度tnが固定平均温度MTn-1より10℃以上低くなると(S311のYES)、演算部120は、処理工程番号Jnを3に変更する(S312)。これにより、演算部120は、被乾燥物の温度tnが低下してから再上昇する工程に完全に移行したと判断する。ここで、温度tnはまだ再上昇していないが、温度tnが固定平均温度MTn-1より10℃以上低くなった場合、定温工程から降温工程への移行は確実であり、かつ、温度tnの再上昇が間近であることは予測され得る。従って、演算部120は、処理工程番号Jnを3に変更しても差し支えない。
本態様では、温度tnが固定平均温度MTn-1より10℃以上低くなることを条件としていた。しかし、これはあくまでも具体例であって、温度tnと固定平均温度MTn-1との温度差は、9℃以下を条件としてもよく、11℃以上を条件としてもよい。
また、ステップS311の温度条件に代えて、あるいは、この温度条件に加えて、時間条件を設定してもよい。例えば、演算部120はタイマ機能を備え、処理工程番号Jnが2に変更になった時点で、演算部120は計時を開始する。その後、演算部120は、タイマの時間が所定時間を経過した場合に、温度tnと固定平均温度MTn-1との差に関わらず、処理工程番号Jnを2から3へ移行させてもよい。これにより、温度tnが充分に低下しなかった場合であっても、演算部120は、処理工程を再上昇工程(Jn=3)へ進めることができる。このような時間条件の追加は、被乾燥物のバインダー成分の燃焼または変質を防止するのに有効である。
尚、降温工程(Jn=2)以降の工程では、カウントCn、CDn、CUnの値は演算に用いられない(図7、図8参照)。従って、降温工程以降の工程では、図4の昇温フローSU、定温フローSCおよび降温フローSDのいずれのフローを経ても差し支えない。
[再昇温工程(Jn=3)]
温度tnの低下後、マイクロ波を照射し続けると、被乾燥物中に存在する極性分子が励起され、被乾燥物の温度は再上昇を始める。この再昇温工程では、演算部120は、図8に示すフローを実行する。
演算部120は、固定平均温度MTnにMTn-1をセット(保持)した後(S410)、演算部120は、次の式6を演算する(S411)。
MTn-1−tn<0 (式6)
演算部120は、ステップS411において、温度tnが固定平均温度MTn-1に戻ったか否かを判定する。
温度tnがまだ固定平均温度MTn-1に戻っていない場合(S411のNO)、演算部120は、ステップS30へ戻る。この場合、演算部120は、図4のフローおよびS410〜S411のNOからなるループを実行する。
その後、温度tnが固定平均温度MTn-1に達すると(S411のYES)、演算部120は、処理工程番号Jnを4に変更する(S412)。これにより、演算部120は、被乾燥物の温度tnが低下してから固定平均温度MTn-1に再上昇したと判断する。従って、演算部120は、処理工程番号Jnを4に変更して、乾燥処理を終了する。
本態様において、乾燥処理全体のトータル時間を設定してもよい。例えば、演算部120はタイマ機能を備え、乾燥処理の開始時点で、演算部120は計時を開始する。その後、演算部120は、タイマの時間が所定時間を経過した場合に、乾燥処理を終了させてもよい。このような乾燥処理の時間制限は、被乾燥物のバインダー成分の燃焼または変質を防止するのに有効であるとともに、マイクロ波乾燥装置の保護および消費電力の削減に役立つ。
本態様によるマイクロ波乾燥装置は、被乾燥物の表面温度tnをモニタすることによって、乾燥処理を適切な時点で自動的に停止させることができる。上記説明から明らかなように、乾燥処理の終了、すなわちマイクロ波の停止は、再昇温工程(Jn=3)の任意の時、すなわち成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間になされればよい。その結果、本態様によるマイクロ波乾燥装置は、被乾燥物を適切に乾燥させることができる。さらに、本発明の一つの態様によれば、降温工程(Jn=2)から再上昇工程(Jn=3)に移行した時点をもってマイクロ波を停止し、乾燥処理の終了とすることも可能である。
上記態様における具体的な数値は、あくまでも具体例であって、本発明をこれらの数値に限定するものではない。また、これらの数値は、メモリ140に書換え可能な状態で格納されている。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」とあるのは質量基準である。
<実施例1>
[試料の調製]
セラミックスファイバーを主体とした、有機バインダーを含有したスラリーを成形型にて成形し、脱水後、脱型して十分に含水した300mm×300mm×厚さ50mm、重量3.1kgのセラミックスファイバー成形体前駆体を得、これを被乾燥試料とした。
[乾燥方法]
得られた含水率約60%のセラミックスファイバー成形体前駆体に対して、マイクロ波乾燥装置を使用して、周波数2.45GHz、出力4.2kWのマイクロ波を照射した。マイクロ波の誘電加熱で行い、試料内部から蒸発し放出された水分は、発振器の排熱空気流を利用し装置から排除した。
[評価]
成形体前駆体の温度変化は図9に示されるとおりであった。図9に示したように試料表面温度は一定時間マイクロ波照射後75℃中心に±3℃内で一定値を維持した。39分経過後、試料表面温度は一定値を大きく下回り約20℃低下し、その後再上昇し一定値を上回ったため加熱を停止した。マイクロ波乾燥の後のセラミックスファイバー成形体前駆体の減水率は、初期重量(3.1kg)と乾燥後重量(1.2kg)から約60%であり、初期含水率と比較し乾燥体が得られたと判断した。乾燥を終えたセラミックスファイバー成形体におけるクラックの有無および変質は目視で判断した。結果、クラック無し、バインダーの燃えなど無しという、良好な評価が得られた。なお、同様の組成の試料を用意し、従来の熱風法による乾燥を行ったところ50時間を要した。従って、本発明の方法によれば、処理時間を1/70に短縮できた。
<実施例2>
[試料]
セラミックスファイバーを主体とした有機バインダーを含有したスラリーを成形型にて成形し脱水後、脱型した十分に含水した300mm×300mm×厚さ100mm、重量5.6kgのセラミックスファイバー成形体前駆体を得、これを被乾燥試料とした。
[乾燥方法]
得られたセラミックスファイバー成形体に対して、マイクロ波乾燥装置を使用して、周波数2.45GHz、出力6.0kWのマイクロ波を照射した。試料の加熱は、マイクロ波の誘電加熱で行い、試料内部から蒸発し放出された水分は、発振器の排熱空気流を利用し装置から排除した。
[評価]
成形体前駆体の温度変化は図10に示されるとおりであった。図10に示したように試料表面温度は一定時間マイクロ波照射後78℃中心に±5℃内で一定値を維持した。44分経過後、試料表面温度は一定値を大きく下回り約20℃低下し、その後再上昇し一定値を上回ったため加熱を停止した。マイクロ波乾燥の後のセラミックスファイバー成形体の減水率は、初期重量(5.6kg)と乾燥後重量(2.5kg)から約55%であり、乾燥体が得られたと判断した。
乾燥を終えたセラミックスファイバー成形体におけるクラックの有無および変質は目視で判断した。結果、クラック無し、バインダーの燃えなど無しという、良好な評価が得られた。なお、同様の組成の試料を用意し、従来の熱風法による乾燥を行ったところ100時間を要した。従って、本発明の方法によれば、処理時間を1/140に短縮できた。
<実施例3>
[試料]
セラミックスファイバーを主体とした有機バインダーを含有したスラリーを成形型にて成形し脱水後、脱型した十分に含水した900mm×600mm×厚さ100mm、重量36.4kgのセラミックスファイバー成形体前駆体を得、これを被乾燥試料とした。
[乾燥方法]
得られたセラミックスファイバー成形体前駆体に対して、マイクロ波乾燥装置を使用して、周波数2.45GHz、出力9.0kWのマイクロ波を照射した。試料の加熱は、マイクロ波の誘電加熱で行い、試料内部から蒸発し放出された水分は、発振器の排熱空気流を利用し装置から排除した。
[評価]
成形体前駆体の温度変化は図11に示されるとおりであった。図11に示したように試料表面温度は一定時間マイクロ波照射後73℃中心に±5℃内で一定値を維持した。160分経過後、試料表面温度は一定値を大きく下回り約20℃低下したため加熱を停止した。マイクロ波乾燥の後のセラミックスファイバー成形体の減水率は、初期重量(36.4kg)と乾燥後重量(14.0kg)から約60%であり、乾燥体が得られたと判断した。
乾燥を終えたセラミックスファイバー成形体におけるクラックの有無および変質は目視で判断した。結果、クラック無し、バインダーの燃えなど無しという、良好な評価が得られた。なお、同様の組成の試料を用意し、従来の熱風法による乾燥を行ったところ100時間を要した。従って、本発明の方法によれば、処理時間を1/40に短縮できた。
1 マイクロ波乾燥装置
2 被乾燥物
3 収容部
4 マイクロ波発振器
5 排気装置
6 気体導入口
7 冷却器
8 導管
9 導入気体温度調節手段
10 外気導入口
11 搬送手段
12 容器
13 温度計

Claims (20)

  1. 被乾燥物を乾燥させるマイクロ波乾燥装置であって、
    被乾燥物を収納する収容部と、
    前記収容部に収納された被乾燥物にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、
    前記収容部の内部の気体および被乾燥物の乾燥に伴い発生した水蒸気を、前記収容部から排出する排気装置と、
    前記排気装置の排気に伴い陰圧になった前記収容部に、気体を導入する気体導入口と、
    前記マイクロ波発振器を空冷する冷却器とを備え、
    前記マイクロ波発振器によって加熱され前記冷却器から排出された気体と、室温の気体とのいずれかを切り替えて、またはそれらを混合して前記気体導入口に導く、導入気体温度調節手段とを備えてなることを特徴とする、マイクロ波乾燥装置。
  2. 被乾燥物を乾燥させるマイクロ波乾燥装置であって、
    被乾燥物を収納する収容部と、
    前記収容部に収納された被乾燥物にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、
    前記収容部に収納された被乾燥物の表面温度を測定するセンサ部と、
    前記センサ部から得られた表面温度情報に応じて前記マイクロ波照射部から照射されるマイクロ波の照射強度を制御するマイクロ波制御部とを備え、
    前記マイクロ波制御部は、前記被乾燥物の表面温度を一定値に維持するようにマイクロ波を所定の照射強度で照射し、
    前記マイクロ波制御部は、前記被乾燥物に含まれる水分の減少に伴い該被乾燥物の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、その後、該被乾燥物の表面温度が前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に、前記マイクロ波の照射を停止するように制御することを特徴とするマイクロ波乾燥装置。
  3. 前記被乾燥物が、無機材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる混合物を所望の形状に成形した成形体前駆体であり、
    前記成形体前駆体の表面温度は、該成形体前駆体中に含まれる水の蒸発潜熱とマイクロ波出力とが均衡することによって一定値となる、請求項2に記載のマイクロ波乾燥装置。
  4. 前記マイクロ波制御部が、前記マイクロ波の照射を、前記成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇した時に停止するよう制御する、請求項2乃至3のいずれか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
  5. 前記マイクロ波制御部が、前記マイクロ波の照射を、前記成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下した時に停止するよう制御する、請求項2乃至3のいずれか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
  6. 前記マイクロ波制御部は、
    前記被乾燥物の表面温度を前記センサ部から受け取る入力部と、
    前記センサ部によって測定された複数の表面温度情報の差を所定値または単位時間で除算して得られた移動平均差を演算する演算部と、
    前記移動平均差の大きさに応じて、前記マイクロ波の照射強度を決定する制御信号を出力する出力回路とを備えた、請求項2乃至5のいずれか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
  7. 前記移動平均差が第1の基準温度差より大きい場合に、前記演算部は、
    前記被乾燥物の表面温度の上昇を暫定的に示す昇温フローを選択し、
    前記移動平均差が前記第1の基準温度差よりも小さい第2の基準温度差より低い場合に、前記演算部は、前記被乾燥物の表面温度の低下を暫定的に示す降温フローを選択し、
    前記移動平均差が前記第1の基準温度差と前記第2の基準温度差との間にある場合に、前記演算部は、前記被乾燥物の表面温度が前記一定値に維持されていることを暫定的に示す定温フローを選択し、
    前記昇温フローの選択回数と、前記降温フローの選択回数と、前記定温フローの選択回数とを記憶するメモリをさらに備え、
    前記演算部は、前記昇温フローを選択したときに、前記被乾燥物の表面温度の上昇を示す昇温工程に入ったと判断し、
    前記演算部は、前記降温フローの選択回数が所定値に達したときに、前記被乾燥物の表面温度の低下を示す降温工程に入ったと判断し、
    前記演算部は、前記定温フローの選択回数が所定値に達したときに、前記被乾燥物の表面温度が前記一定値に維持されていることを示す定温工程に入ったと判断する、請求項2乃至6のいずれか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
  8. 前記演算部は、前記昇温工程、前記定温工程、前記降温工程をこの順番に経た後、前記被乾燥物の表面温度が前記一定値の温度まで再上昇した時に、前記マイクロ波の照射を停止する、請求項2乃至7のいずれか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
  9. 無機材料をバインダーで固化して得られる成形体の製造方法であって、
    無機材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる混合物を用意し、
    該混合物を所望の形状に成形して成形体前駆体を得て、
    該成形体前駆体にマイクロ波を照射して乾燥させる工程を有し、
    前記マイクロ波を、前記成形体前駆体の表面温度が上昇後一定値を維持する照射強度にて照射して、前記成形体前駆体の乾燥を進行させ、その後、
    前記マイクロ波の照射を、前記成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に停止することを特徴とする、成形体の製造方法。
  10. 前記成形体前駆体の表面温度の一定値が、該成形体前駆体中に含まれる水の蒸発潜熱とマイクロ波出力とが均衡して生じる、請求項9に記載の成形体の製造方法。
  11. 前記成形体前駆体の表面温度が10℃の温度変動範囲内にとどまることを、前記成形体前駆体の表面温度が一定値を維持するとする、請求項9または10に記載の成形体の製造方法。
  12. 前記成形体前駆体の表面温度が6℃の温度変動範囲内にとどまることを、前記成形体前駆体の表面温度が一定値を維持するとする、請求項9または10に記載の成形体の製造方法。
  13. 前記マイクロ波の照射を、前記成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下し、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇した時に停止する、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  14. 前記マイクロ波の照射を、前記成形体前駆体の表面温度が前記一定値から低下した時に停止するよう制御する、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  15. マイクロ波の照射中、前記成形体前駆体から生じた水蒸気をその表面付近から排除するための排気が行われる、請求項9乃至14のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  16. 前記排気に伴い系内に供給される気体が、マイクロ波を発生させるマイクロ波発振器を冷却することで、それ自体が加熱または乾燥されたものである、請求項9乃至15のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  17. 前記無機材料が、セラミックファイバー、セラミックス粉末から選択されるものである、請求項9乃至16のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  18. 前記バインダーが無機バインダーまたは有機バインダーである、請求項9乃至17のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  19. 請求項9乃至18のいずれか1項に記載の方法により得られた成形体。
  20. 無機材料と、バインダーと、水とを少なくとも含んでなる被乾燥物を用意し、該被乾燥物にマイクロ波を照射して乾燥させる工程を有し、
    前記マイクロ波を、前記被乾燥物の表面温度が上昇後一定値を維持する照射強度にて照射して、前記被乾燥物の乾燥を進行させ、その後、
    前記マイクロ波の照射を、前記被乾燥物の表面温度が前記一定値から低下し始めた時点から、下げ止まりその後前記一定値の温度まで再上昇するまでの間に停止することを特徴とする、乾燥方法。
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