JP2012031849A - スクロール式流体機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】高回転・高負荷の圧縮機運転においてもオイルシールと軸受の信頼性を確保したスクロール式流体機械を提供することを目的とする。
【解決手段】固定スクロールと、前記固定スクロールに対向して設けられ、前記固定スクロールと対向する面と反対側の面にボス部を有する旋回スクロールと、前記ボス部に先端側が取り付けられた駆動軸と、前記駆動軸を前記旋回スクロールに対して支持する旋回軸受と、前記ボス部と前記駆動軸との間に設けられ、前記旋回軸受に供給される潤滑剤を封止するシール部材とを備え、前記シール部材は、前記駆動軸の回転によって潤滑剤を前記旋回軸受に向けて移動させる作用を生じるオイルリップ部を有し、前記旋回軸受と前記シール部材との間に形成される空間と前記ボス部の外部に形成される空間とを連通させる連通路を前記オイルリップ部に設けることを特徴とするスクロール式流体機械を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明はスクロール流体機械,特に旋回軸受をグリース潤滑するスクロール式流体機械に関するものである。
特許文献1によれば,スクロール圧縮機の旋回軸受部オイルシールは,オイルシールに断面L字状にかつ環状に形成された遮蔽部材を設け,遮蔽部材に呼吸孔を設けて旋回軸受ハウジング内を外気に連通させる構造が開示されている。
さらに特許文献2によれば,ウォータポンプ用軸受密封構造において,水側と潤滑油側を仕切る部分に複数のシールリップ(リップシール部)を持ったオイルシールを配置し,シールリップに水または潤滑剤の漏洩を防止する溝または突起を設ける構造が開示されている。
さらに特許文献3によれば、リップ部の環状の摺動面に、軸線方向に対して一様に傾斜する複数の第1突起と、第1突起と軸線方向に対して反対側に傾斜した複数の第2突起を配列し、突起のポンプ作用によりリップの摺動面に流れ込む油を軸受側に排出し、大気側からリップ部の摺動面に流れ込むダストを大気側に排出するオイルシールが開示されている。
特開2004−340255 特開平8−254213 実開昭62−096166
特許文献1においては、呼吸孔が潤滑剤により詰まった場合,旋回軸受ハウジング内の圧力が上昇し,リップシール部から潤滑剤が漏れる可能性がある。
特許文献2においては,軸受の密封装置の両側に設けられたオイルシールのシールリップより,密閉空間が形成される。そのため、ウォータポンプの運転時に,軸受等の温度上昇から軸受の密封装置内の内圧が上昇した場合,シールリップから潤滑剤が徐々に漏れ出す可能性がある。
特許文献3においては、第1の突起と第2の突起とを連絡を断つように軸と密着させているため、スクロール圧縮機の旋回軸受部オイルシールに適用した場合、旋回軸受ハウジング内に密閉空間が形成される。軸受等の温度上昇から軸受の密封装置内の内圧が上昇した場合,リップ部から潤滑剤が徐々に漏れ出す可能性がある。
本発明は上記問題点に鑑みて、高回転・高負荷の圧縮機運転においても潤滑材の漏れを低減できるようにしたスクロール式流体機械を提供するものである。
本発明は、固定スクロールと、前記固定スクロールに対向して設けられ、前記固定スクロールと対向する面と反対側の面にボス部を有する旋回スクロールと、前記ボス部に先端側が取り付けられた駆動軸と、前記駆動軸を前記旋回スクロールに対して支持する旋回軸受と、前記ボス部と前記駆動軸との間に設けられ、前記旋回軸受に供給される潤滑剤を封止するシール部材とを備え、前記シール部材は、前記駆動軸の回転によって潤滑剤を前記旋回軸受に向けて移動させる作用を生じるオイルリップ部を有し、前記旋回軸受と前記シール部材との間に形成される空間と前記ボス部の外部に形成される空間とを連通させる連通路を前記オイルリップ部に設けることを特徴とするスクロール式流体機械を提供する。
また、他の観点における本発明は、固定スクロールと、前記固定スクロールに対向して設けられ、旋回運動を行う旋回スクロールと、クランク部を介して前記旋回スクロールに連結され、回転駆動を行う駆動軸と、前記駆動軸を前記旋回スクロールに対して支持する旋回軸受と、前記駆動軸または前記駆動軸に取り付けられたリングの外周側に摺接し、前記旋回軸受に供給される潤滑剤を封止するシール部材とを備え、前記シール部材は、複数の突起部が前記駆動軸の軸方向に対して傾いた向きに形成されたリップシール部を前記駆動軸または前記リングに摺接する部分に有し、前記リップシール部に前記旋回軸受と前記シール部材との間に形成される空間と前記シール部材の前記旋回軸受のある側と反対側に形成される空間とを連通させる連通路を設けるスクロール式流体機械を提供する。
本発明によれば、高回転・高負荷の圧縮機運転においても潤滑材の漏れを低減できるようにしたスクロール式流体機械を提供することができる。
本発明の実施例1に係る圧縮機断面図 本発明の実施例1に係る旋回軸受部拡大図 本発明の実施例1に係るオイルシールの斜視図 本発明の実施例1に係るオイルシールの斜視図 本発明の実施例1に係るオイルシールの斜視図 本発明の実施例1に係るオイルシールとリングの接触状態図 本発明の実施例1に係るオイルシールの組立過程の斜視図 本発明の実施例1に係るオイルシールの組立過程の断面図 本発明の実施例1に係るオイルシールの組立過程の断面図 本発明の実施例2に係るオイルシール(シングルリップ)の斜視図 本発明の実施例3に係るオイルシール(らせん突起)の斜視図 従来構造の旋回軸受部拡大図 本発明の実施例4に係るオイルシール(呼吸孔)の正面図および断面図
以下,本発明に係るスクロール式流体機械の一例として実施例1に係るスクロール式圧縮機を図1から図9に基づき説明する。
ここで、図1は本実施例における圧縮機の断面図であり、図2は本実施例における後述する旋回軸受11付近を拡大した図である。図中,1は圧縮機本体で,該圧縮機本体1は,スクロール式の空気圧縮機が用いられ,後述のケーシング2,固定スクロール3,旋回スクロール4,駆動軸8,クランク部9および自転防止機構15等より構成されている。
2は圧縮機本体1の外殻を構成するケーシングで,該ケーシング2は,図1に示す如く軸方向の一側が閉塞され,軸方向の他側が開口した有底筒状体として形成されている。即ち,ケーシング2は,軸方向の他側(後述の固定スクロール3側)が開口した筒部2Aと,該筒部2Aの軸方向一側に一体形成され径方向内向きに延びた環状の底部2Bと,該底部2Bの内周側から軸方向の両側に向けて突出した筒状の軸受取付部2Cとから大略構成されている。
また,ケーシング2の筒部2A内には,後述の旋回スクロール4,クランク部9および自転防止機構15等が収容されている。また,ケーシング2の底部2B側には,後述する旋回スクロール4の鏡板4A側との間に複数の自転防止機構15(図1中に1個のみ図示)が周方向に所定の間隔をもって配設されている。
3はケーシング2(筒部2A)の開口端側に固定して設けられた一のスクロール部材としての固定スクロールを示している。そして,該固定スクロール3は,図1に示す如く円板状に形成された鏡板3Aと,該鏡板3Aの表面に立設された渦巻状のラップ部3Bと,該ラップ部3Bを径方向外側から取囲むように鏡板3Aの外周側に設けられ,複数のボルト(図示せず)等によりケーシング2(筒部2A)の開口端側に固定された筒状の支持部3Cとにより大略構成されている。
4は他のスクロール部材を構成する旋回スクロールで,この旋回スクロール4は,固定スクロール3と軸方向で対向してケーシング2内に旋回可能に設けられている。そして,旋回スクロール4は,図1に示すように円板状の鏡板4Aと,該鏡板4Aの表面に立設された渦巻状のラップ部4Bと,鏡板4Aの背面(ラップ部4Bと反対側の面)側に突設され,後述のクランク部9に旋回軸受11を介して取付けられる筒状のボス部4Cとにより大略構成されている。
また,旋回スクロール4(鏡板4A)の背面外径側には,ケーシング2の底部2Bとの間に後述の自転防止機構15が旋回スクロール4の周方向に所定の間隔をもって配設されている。そして,旋回スクロール4のボス部4Cは,その中心が固定スクロール3の中心に対して予め決められた所定の寸法(旋回半径)分だけ径方向に偏心して配置されるものである。
5は固定スクロール3のラップ部3Bと旋回スクロール4のラップ部4Bとの間に画成された複数の圧縮室で,該各圧縮室5は,図1中に示す如く旋回スクロール4のラップ部4Bを固定スクロール3のラップ部3Bと重なり合うように配置することにより,これらのラップ部3B,4B間に鏡板3A,4Aに挟まれてそれぞれ形成されるものである。
6は固定スクロール3の外周側に設けられた吸入口で,該吸入口6は,例えば吸気フィルタ6A等を介して外部から空気を吸込み,この空気は各圧縮室5内で旋回スクロール4の旋回動作に伴って連続的に圧縮される。
7は固定スクロール3の中心側に設けられた吐出口で,該吐出口7は,前記複数の圧縮室5のうち,最内径側の圧縮室5から圧縮空気を後述の貯留タンク(図示せず)側に向けて吐出するものである。即ち,旋回スクロール4は,電動モータ(図示せず)等により後述の駆動軸8とクランク部9とを介して駆動され,後述の自転防止機構15によって自転を規制された状態で固定スクロール3に対し旋回運動を行う。
これにより,複数の圧縮室5のうち外径側の圧縮室5は,固定スクロール3の吸入口6から空気を吸込み,この空気は各圧縮室5内で連続的に圧縮される。そして,内径側の圧縮室5は,鏡板3Aの中心側に位置する吐出口7から圧縮空気を外部に向けて吐出するものである。
8はケーシング2の軸受取付部2Cに軸受23,24を介して回転可能に設けられた駆動軸で,該駆動軸8は,ケーシング2の外部に突出した基端側(軸方向の一側)が図示しない電動モータ等の駆動源に着脱可能に連結され,この電動モータによって回転駆動されるものである。また,駆動軸8の先端側(軸方向の他側)には,旋回スクロール4のボス部4Cが後述のクランク部9と旋回軸受11とを介して旋回可能に連結されている。
9は駆動軸8の先端側に一体化して設けられたクランク部で,該クランク部9は,旋回スクロール4のボス部4Cに後述の旋回軸受11を介して連結されている。そして,クランク部9は駆動軸8と一体に回転され,このときの回転は旋回軸受11を介して旋回スクロール4の旋回動作に変換されるものである。
13はケーシング2の底部2Bと旋回スクロール4の背面側との間に設けられた複数の自転防止機構(図1中に1個のみ図示)で,該各自転防止機構15は,例えば補助クランク機構により構成されている。そして,自転防止機構15は,旋回スクロール4の自転を防止すると共に,旋回スクロール4からのスラスト荷重をケーシング2の底部2B側で受承させるものである。なお,自転防止機構15としては,補助クランク機構に替えて,例えばボールカップリング機構またはオルダム継手等を用いて構成してもよい。
16は固定スクロール3の吐出口7に接続して設けられた吐出配管で,該吐出配管16は,貯留タンク(図示せず)と吐出口7との間を連通させる吐出流路を構成するものである。
駆動軸8には,旋回スクロール4の旋回動作を安定させるためにバランスウェイト10が設けられ,圧縮機運転の場合には駆動軸8と一体で回転する。
11は旋回スクロール4のボス部4Cとクランク部9との間に配設された旋回軸受を示し,該旋回軸受11は,旋回スクロール4のボス部4Cをクランク部9に対して旋回可能に支持し,旋回スクロール4が駆動軸8の軸線に対し所定の旋回半径をもって旋回動作するのを補償するものである。
17は旋回軸受11の潤滑剤を封止するために背面プレート4Dのボス部4Cと駆動軸8のクランク部9との間に設けられたシール部材で,該シール部材17は,図2に示すように金属製の芯金部18と,弾性変形可能なゴム等の樹脂材料,例えばニトリルゴム,アクリルゴム,シリコーンゴム,フッ素ゴム等により形成されたリップシール部19と,により構成されている。シール部材17の内周面は、駆動軸8に取り付けられたリング12の外周面に摺接している。なお、リング12を設けない場合は、シール部材17の内周面は、駆動軸8の外周面に摺接することになる。
そして,シール部材17の芯金部18は,軸支持体であるボス部4Cの内周側に嵌合して取付けられた筒状の取付部18Aと,該取付部18Aの軸方向一側から径方向内向きに突出した環状部18Bとからなり,該環状部18Bの内周側には,リップシール部19が一体成型または焼付け等の手段を用いて一体に設けられている。
また,取付部18Aの軸方向他側は開口端となり,その内周側には後述の遮蔽板20が圧入等の手段で嵌合して設けられている。そして,シール部材17(芯金部18)の取付部18Aは,内周側に遮蔽板20を組込んだ状態でボス部4Cの内周側に挿嵌され,旋回軸受11の外輪11Bに当接する位置まで軸方向の他側へと押込まれている。
シール部材17のリップシール部19は,シール摺動用のリング12の外周面(または、駆動軸8の外周面)に摺接する2つのリップ部19A,19B(以下,ダストリップ部19A,オイルリップ部19Bという)を有し,軸方向一側のダストリップ部19Aは,外部の塵埃等からなるダストが後述する封止空間21内に侵入するのを阻止するものである。また,リップシール部19の軸方向他側に位置するオイルリップ部19Bは,後述の遮蔽板20に近い位置でリング12の外周面に摺接することにより,旋回軸受11に給脂した潤滑剤が後述する封止空間21の外部に漏洩するのを阻止するものである。
なお、本実施例では、シール部材17のリップシール部19をシール部材の内周側に設けられているが、シール部材17の内周側には設けずに、シール部材17の外周側に設けてもよい。この場合、リップシール部19は、ボス部4Cと摺接する。
21は駆動軸8のクランク部9,リング12とボス部4Cとの間で、旋回軸受11とシール部材17との間に形成された空間である封止空間である。該封止空間21は,旋回軸受11の軸方向一側とシール部材17との間に位置する環状空間として形成され,旋回軸受11内の潤滑剤がシール部材17の外側へ、即ち、ボス部4Cの外部に形成された空間(シール部材17の旋回軸受11のある側と反対側に形成された空間)へと漏洩するのを防ぐものである。
20はシール部材17による封止空間21内に設けられた遮蔽部材としての遮蔽板で,該遮蔽板20は円皿状の環状板として形成され,径方向の外側部位となる外周部20Aがシール部材17(芯金部18)の取付部18Aに軸方向他側から圧入等の手段で嵌合して取付けられている。
遮蔽板20の径方向内側に位置し径方向の内側部位となる内周部20Bは,リング12の外周面を径方向の微小隙間Sを介して全周にわたり取囲み,この微小隙間Sは,例えば0.05〜0.5mm程度の寸法に形成されている。そして,遮蔽板20は,旋回軸受11とシール部材17との間の封止空間21を分割するように仕切り,旋回軸受11からシール部材17に向けて潤滑剤が漏出するのを抑えるものである。
また遮蔽板20は,その外周部20Aがシール部材17の取付部18Aに固定され,内周部20Bはリング12と微小隙間Sを介して対向しているため,駆動軸8の回転による遠心力の影響で潤滑剤が,旋回軸受11の外輪11B側に片寄ったとしても,このときの潤滑剤がシール部材17(芯金部18)の取付部18A側から外部に漏洩するのを遮蔽板20の外周部20Aにより防ぐことができる。
この場合,遮蔽板20は,外周部20Aがシール部材17の取付部18Aに固定され,内周部20Bが駆動軸8に勘合されたリング12と径方向の微小隙間Sを介して対向しているため,駆動軸8の回転に影響を与えることなく,旋回軸受11の外輪11B等と一緒に旋回スクロール3の円滑な旋回運動を補償するものである。
そして,旋回軸受11内に給脂されたグリース等の潤滑剤は,シール部材17による封止空間21内で遮蔽板20等を用いて外部に漏出するのが抑えられ,内輪11Aと外輪11Bとの間で複数のローラ11Cを潤滑状態に保持することができる。
しかも,シール部材17のリップシール部19は,リング12の外周面に摺接するダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bを有しているので,外部のダスト等が封止空間21内に侵入するのをダストリップ部19Aにより防止できると共に,オイルリップ部19Bにより旋回軸受11の潤滑剤が封止空間21の外部に漏洩するのを防止することができる。
本実施例では、ダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bに突起部19C,19Dを設けた。図3に示すように突起部19C,19Dは、それぞれダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bの内周面に駆動軸8の軸方向に対して傾いた方向に直線状に形成され、間隔を持って複数形成されている。ここで、スクロール式流体機械の駆動によって駆動軸8が回転し、リング12とシール部材17とが相対回転した場合、旋回軸受11からシール部材に向けて潤滑剤が移動する場合がある。本実施例では、突起部19Dを設けることにより、旋回軸受11からシール部材に向けて移動してきた潤滑剤を旋回軸受11へ戻す方向に移動させる作用(ポンプ作用)が生じ、潤滑剤の漏出を防止できる。同様にリング12とシール部材17とが相対回転時に突起部19Cによって生じるポンプ作用によりシール部材17とリング12との間に侵入したダスト等を外部へ戻す(移動させる)ことができる。以上のように突起部19Cは旋回軸受11とは反対側に向けてダストを移動させる作用(ポンプ作用)が生じ、19Dは、潤滑剤を旋回軸受の方向に向けて移動させる作用(ポンプ作用)を生じる。即ち、突起部19Cと突起部19Dとはそれぞれ逆の方向にポンプ作用を生じるため、突起の向きも平行ではなく、それぞれが交差するように駆動軸8の軸方向に対して傾いている。なお、突起部19C,19Dは厳密に直線状でなくてもよく、ポンプ作用を有するのであれば曲線状であってもよい。
さらにダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bに設けられた突起部19C,19Dによるそれぞれのポンプ作用により,ダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bそれぞれのシール性を向上させることが出来る。
とくにオイルリップ部19Bは,一般的にはシール性を向上させるため,図12に示すようにガータースプリング25などを用いてオイルリップ部19Bの接触部の緊縛力を向上させる必要がある。緊縛力を向上させると,摩擦トルク増大による動力ロスが発生し,また発熱が大きくなる事からシール部材のみならず,旋回軸受11や潤滑剤の信頼性が著しく低下する。本発明によれば,ガータースプリング等の緊縛力を向上させる手段がなくても,十分なシール性を確保することが出来るので,旋回軸受11の信頼性を向上できる。
図6に示すようにリップシール部19の内周側で駆動軸8(またはリング12)の外周側との摺接面の一部に旋回軸受11とシール部材17との間に形成された空間である封止空間21とボス部4Cの外部に形成された空間(シール部材17の旋回軸受11のある側と反対側に形成された空間)とを連通させる連通路22(ダストリップ部連通路22A、オイルリップ部連通路22B)を設けた。なお、本実施例では、シール部材17のダストリップ部19Aオとイルリップ部19Bとの間は駆動軸8(またはリング12)の外周側とは摺接していないため、空間Vが存在し、空間Vがダストリップ部連通路22A、オイルリップ部連通路22Bを連通させている。これにより、組立時の封止空間21の容積変化が発生する場合や,外部からの熱影響等で封止空間21内の温度が上昇したときでも,連通路22によって内圧の上昇を抑えることができ,封止空間21内を大気圧状態に保つことができる。なお、連通路22は、突起部19C,19Dを設けることにより、2つの突起部19C、19Dの間の空間に形成される。
一方、特許文献2においては、シールリップ(リップシール部)または駆動軸のねじ溝またはリブに連通路が形成されていない。また、特許文献3においては、第1突起と第2突起との間の摺接部が連通しておらず、仮に複数の第1突起間及び複数の第2突起間に連通路があったとしても軸受とシール部材との間の空間が密閉されてしまう。従って、特許文献2、特許文献3のシール部材を用いた場合、封シール部材との間の空間の圧力が上昇してしまう。
図5はリング12とオイルリップ部19の接触部を示す斜視図である。リング12とダストリップ部19Aは,図6のW詳細ように接触し摺動するが,突起部19Cの両脇には突起部19Cにそって,ダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bで形成される空間Vと外気へ連通するダストリップ部連通路22Aが形成される。ダストリップ部19Aの内側に設けられた突起部19Cは,図2中の空間Vから外側へホコリ等を排除する方向と,空間Vが負圧にならないように空気を戻す方向の両側にポンプ作用が生じるように,図4に示すようないわゆるハの字形の組合せで形成してもよい。
またリング12とオイルリップ部19Bは,図6に示すように接触し摺動するが,突起部19Dの両脇には突起部19Dにそって,ダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bで形成される空間Vと封止空間21へ連通するオイルリップ部連通路22Bが形成される。またダストリップ部19Aの内側に設けられた突起部19Cは,ボス部4Cへホコリ等の進入を防止するため,空間Vから外側へホコリ等を排除する方向に設けられている。
図7から図9は旋回スクロール4と駆動軸8の組立過程を示したものであり。図7は,駆動軸8に予め組み込まれる軸受24,25やケーシング2等は省略した斜視図である。図8の状態からボス部4Cに勘合された旋回軸受外輪11Bと,旋回軸受外輪11Bに回転自由に挿入された保持器(図示せず)を介して回転自由に保持された旋回軸受ローラ11Cと、ボス部4Cに勘合されたシール部材17が組込まれたボス部4Cの内側に、旋回軸受内輪11Aとリング12がクランク部9にあらかじめ勘合された状態でクランク部9が徐々に挿入され,図9の状態を経て先に示した図2の状態まで挿入される。
ここで挿入過程の図9の状態から,シール部材17のリップシール部19のダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bのいずれかがリング12の接触したとき,ボス部4C内には旋回軸受11やシール部材17の隙間空間と,ダストリップ部19で形成されるシールラインとで封止空間21が形成される。さらに図2に示す所定の位置までクランク部9を挿入した場合,封止空間21の容積が変化して封止空間21の圧力が上昇することでエアダンパ作用が生じる。従って、所定の位置までクランク部9を挿入するためには、封止空間21の内圧が上昇した状態でクランク部9を挿入しなければならないため組立が非常に困難となる。
さらに圧縮運転時には,背面プレート4Dのボス部4C等を通じて旋回軸受11とシール部材17との間の封止空間21内に高熱が伝えられ,封止空間21内が高温状態にさらされてしまう。このため,封止空間21内は,熱膨張により内圧が上昇し,旋回軸受11の潤滑剤は,その粘性が低下して液体状となり,液体状の潤滑剤がシール部材17の外部へと徐々に漏出する虞れが生じる。
然るに,本実施例にあっては,ダストリップ部19Aに設けた突起部19Cの両脇に形成されるダストリップ部連通路22Aと,オイルリップ部19Bに設けた突起部19Dの両脇に形成されるオイルリップ部連通路22Bと,ダストリップ部19Aとオイルリップ部19Bで形成される空間Vとで形成される連通路22Bを設けた構造となっている。
この結果,組立時の封止空間21の容積変化が発生する場合や,外部からの熱影響等で封止空間21内の温度が上昇したときでも,連通路22によって内圧の上昇を抑えることができ,封止空間21内を常に大気圧状態に保つことができる。以上より組立性,生産性を確保するとともに,潤滑剤の漏れを防止しての軸受の信頼性を確保することが出来る。
さらにボス部4Cまたは背面プレート4D等に潤滑剤補充機構等を設け,旋回軸受11の潤滑剤を外部から補充する場合,潤滑剤が封止空間21に入り封止空間21の容積変化が起きても,封止空間21内を常に大気圧状態に保つことができるので,円滑な潤滑剤の補充が可能である。
次に、図10を用いて本発明の実施例2を説明する。本実施例では実施例1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。本実施例では、ボス部4Cの周辺が清浄な状態である場合に,実施例1と比較してダストリップ部19Aを省略した形状のシール部材17の構成を示している。シール部材17の芯金部18に一体成型されたリップシール部19がオイルリップ部19Bのみで構成し, オイルリップ部19Bには突起部19Dが設けられ,オイルリップ部連通路22Bにて封止空間21と外気を連通させることで,封止空間21内を常に大気圧状態に保つことができるとともに,突起部19Dによるポンプ作用にてシール性を確保することが出来る。
次に、図11を用いて本発明の実施例3を説明する。本実施例では実施例1または実施例2と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。本実施例では、オイルリップ部19Bに設けた突起部19Eを,らせん状に形成したものである。突起部19Eに沿って両脇にらせん状の連通路22Bを形成して,封止空間21内を大気圧状態に保つ。また,らせん状である突起部19Eにより軸方向のシールラインを複数形成するとともに,ポンプ作用にてより高いシール性を実現することができる。
次に、図13を用いて本発明の実施例4を説明する。本実施例では実施例1乃至3と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。本実施例では、シール部材17の芯金部18の環状材18Bに少なくとも1ヶ所以上の呼吸孔26を形成したものである。呼吸孔26はシール部材17を駆動軸8の方向に貫通して設けられ、シール部材17の旋回軸受11のある側の空間と反対側に形成された空間を連通させる。呼吸孔26により、組立時の封止空間21の容積変化が発生する場合や,連通路22の一部が潤滑剤によって詰まり、外部からの熱の影響等で封止空間21内の温度が上昇した場合でも,内圧の上昇を外気連通路22のみを設けた場合よりも効果的に抑えることができ,封止空間21内を大気圧状態に保つことができる。これにより、潤滑剤の漏れを防止しての軸受の信頼性を確保することが出来る。
また遮蔽板20、芯金部18で構成される空間に潤滑剤が溜まっていき,この呼吸孔26が詰まった場合は,リップシール部19にそれぞれ設けられた外気連通路22で連通効果を確保することができる。
実施例1乃至4はリップシール部19の突起部について説明してきたが、本発明は突起部に代えて溝を形成してもよい。
実施例1乃至4はスクロール式流体機械について説明してきたが、本発明はスクロール式流体機械を1つの構成要素として含むシステムに適用することができる。例えば、スクロール式流体機械を備えた窒素ガス発生装置に適用してもよい。また、スクロール式流体機械はスクロール式圧縮機に限らず、例えば、スクロール式真空ポンプであってもよい。
実施例1乃至3は、駆動軸と軸受を回転運動を行う駆動軸と、駆動軸を支持するための軸受と、軸受に供給される潤滑剤をシールするシール部材があれば、スクロール式流体機械に限らず、例えば、往復動圧縮機などの他の種類の圧縮機にも適用することができる。この場合も軸受を潤滑する潤滑剤をシールするシール部材にリップ部を設け、リップ部に連通路を設けることにより、潤滑剤の漏出を防止する。
一方で、スクロール圧縮機は組立時においてボス部に駆動軸を組み込む場合にエアダンパ作用が生じやすいため、実施例1乃至4の適用により組立を容易にするという他の種類の圧縮機では得られない効果を得ることができる。
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。また、実施例1乃至3を組み合わせることにより本発明を実施してもよい。
1 圧縮機本体
2 ケーシング
2A 筒部
2B 底部
2C 軸受取付部
3 固定スクロール(スクロール部材)
3A 鏡板
3B ラップ部
3C 支持部
4 旋回スクロール(スクロール部材)
4A 鏡板
4B ラップ部
4C ボス部
4D 背面プレート
5 圧縮室
6 吸入口
6A 吸気フィルタ
7 吐出口
8 駆動軸
9 クランク部
10 バランスウェイト
11 旋回軸受
11A 旋回軸受内輪
11B 旋回軸受外輪
11C 旋回軸受ローラ
12 リング
15 自転防止機構
16 吐出配管(吐出流路)
17 シール部材
18 芯金部
18A 取付部
18B 環状材
19 リップシール部
19A ダストリップ部
19B オイルリップ部
19C,19D,19E 突起部
20 遮蔽板
20A 外周部
20B 内周部
21 封止空間
22 外気連通路
22A ダストリップ部連通路
22B オイルリップ部連通路
23,24 軸受
25 ガータースプリング
26 呼吸孔

Claims (17)

  1. 固定スクロールと、前記固定スクロールに対向して設けられ、前記固定スクロールと対向する面と反対側の面にボス部を有する旋回スクロールと、前記ボス部に先端側が取り付けられた駆動軸と、前記駆動軸を前記旋回スクロールに対して支持する旋回軸受と、前記ボス部と前記駆動軸との間に設けられ、前記旋回軸受に供給される潤滑剤を封止するシール部材とを備え、
    前記シール部材は、前記駆動軸の回転によって潤滑剤を前記旋回軸受に向けて移動させる作用を生じるオイルリップ部を有し、前記旋回軸受と前記シール部材との間に形成される空間と前記ボス部の外部に形成される空間とを連通させる連通路を前記オイルリップ部に設けることを特徴とするスクロール式流体機械。
  2. 前記オイルリップ部には、前記駆動軸の回転によって前記旋回軸受に向けて移動させる作用を生じる複数の突起部または溝を設けることを特徴とする請求項1に記載のスクロール式流体機械。
  3. 前記連通路は複数の突起部の間または複数の溝に設けられることを特徴とする請求項2に記載のスクロール式流体機械。
  4. 前記シール部材はダストが前記封止空間に侵入するのを防止するダストリップ部を設けることを特徴とする請求項1に記載のスクロール式流体機械。
  5. 前記ダストリップ部には、前記駆動軸の回転によって前記旋回軸受とは反対側に向けて移動させる作用を生じる複数の突起部または溝を設けることを特徴とする請求項4に記載のスクロール式流体機械。
  6. 前記ダストリップ部には、前記駆動軸の回転によって前記旋回軸受けの側に向けて移動させる作用を有する複数の突起部または溝を設けることを特徴とする請求項5に記載のスクロール式流体機械。
  7. 前記突起部または前記溝は直線状であり、前記オイルリップ部の内周に前記駆動軸の軸方向に対して傾いた向きに形成されることを特徴とする請求項2に記載のスクロール式流体機械。
  8. 前記オイルリップ部に前記突起部または前記溝をらせん状に形成したことを特徴とする請求項2に記載のスクロール式流体機械。
  9. 前記シール部材と前記旋回軸受との間に遮蔽板を設けることを特徴とする請求項1に記載のスクロール式流体機械。
  10. 前記遮蔽板の外周部は前記シール部材の取付部に固定され、前記遮蔽板の内周部と前記駆動軸との間には空間が形成されることを特徴とする請求項9に記載のスクロール式流体機械。
  11. 固定スクロールと、前記固定スクロールに対向して設けられ、旋回運動を行う旋回スクロールと、クランク部を介して前記旋回スクロールに連結され、回転駆動を行う駆動軸と、前記駆動軸を前記旋回スクロールに対して支持する旋回軸受と、前記駆動軸または前記駆動軸に取り付けられたリングの外周側に摺接し、前記旋回軸受に供給される潤滑剤を封止するシール部材とを備え、
    前記シール部材は、複数の突起部が前記駆動軸の軸方向に対して傾いた向きに形成されたリップシール部を前記駆動軸または前記リングに摺接する部分に有し、前記リップシール部に前記旋回軸受と前記シール部材との間に形成される空間と前記シール部材の前記旋回軸受のある側と反対側に形成される空間とを連通させる連通路を設けることを特徴とするスクロール式流体機械。
  12. 前記連通路は前記複数の突起部の間に設けられることを特徴とする請求項11に記載のスクロール式流体機械。
  13. 前記リップシール部は潤滑剤が外部に漏洩するのを防止するオイルリップ部とダストが前記封止空間に侵入するのを防止するダストリップ部により構成されることを特徴とする請求項11に記載のスクロール式流体機械。
  14. 前記オイルリップ部には、前記駆動軸の回転によって前記旋回軸受の側に向けて移動させる作用を生じる複数の突起部を設けることを特徴とする請求項13に記載のスクロール式流体機械。
  15. 前記ダストリップ部には、前記駆動軸の回転によって前記旋回軸受とは反対側に向けて移動させる作用を生じる複数の突起部を設けることを特徴とする請求項14に記載のスクロール式流体機械。
  16. 前記ダストリップ部には、前記駆動軸の回転によって前記旋回軸受けの側へ向けて移動させる作用を生じる複数の突起部を設けることを特徴とする請求項15に記載のスクロール式流体機械。
  17. 前記シール部材に前記駆動軸の方向に貫通し、前記旋回軸受と前記シール部材との間に形成される空間と前記シール部材の前記旋回軸受のある側と反対側に形成される空間とを連通させる呼吸孔を設けることを特徴とする請求項11に記載のスクロール式流体機械。
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