以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における印刷形態、版胴速度及び材料速度を示す図であり、版胴周長B0よりも印刷長Dが短い場合を示している。本発明の実施形態による制御方式は、図25に示した、版胴に材料を同期させる制御方式を前提にして、図24に示したように、版胴を加減速させるものである。印刷時には、版胴を基準速度で回転させ、版胴に材料を同期(追従)させ、版胴の基準速度と同一の速度で走行させる。一方、非印刷時には、版胴を加減速させ、元の基準速度に戻すと共に、次の印刷位置を所定位置に合わせるために、材料を一旦減速させた後加速させ、版胴の基準速度と同一の元の速度に戻す。これにより、印刷と印刷との間の空白時間及び空白距離を短くすることができ、製品に対する印刷の高速化を図ることができる。
〔フレキソ印刷機〕
まず、フレキソ印刷機について説明する。図2は、本発明の実施形態による印刷装置を含むフレキソ印刷機の全体構成の概略を説明する図である。このフレキソ印刷機10は、3台の印刷ユニット1〜3、ダンサー11−4、巻出機4、巻取機5及び印刷装置30を備えて構成される。材料6は、巻出機4から印刷ユニット1〜3及びダンサー11−4を介して巻取機5へ走行し、所定長(製品長)の製品毎に、第1の印刷ユニット1により1色目が印刷され、第2の印刷ユニット2により2色目が印刷され、第3の印刷ユニット3により3色目が印刷される。
3色刷りの印刷制御は、印刷ユニット用制御装置31−1〜31−3を備えた印刷装置30により行われる。印刷ユニット用制御装置31−1は、1色目の印刷を行う印刷ユニット1に備えた版胴13−1の回転速度(版胴速度)及び材料6の走行速度(材料速度)を制御する。同様に、印刷ユニット用制御装置31−2は、2色目の印刷を行う印刷ユニット2に備えた版胴13−2の回転速度及び材料6の走行速度を制御し、印刷ユニット用制御装置31−3は、3色目の印刷を行う印刷ユニット3に備えた版胴13−3の回転速度及び材料6の走行速度を制御する。そして、印刷ユニット用制御装置31−1は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせて1色目の印刷を行うための制御を行う。同様に、印刷ユニット用制御装置31−2は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせて2色目の印刷を行うための制御を行い、印刷ユニット用制御装置31−3は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせて3色目の印刷を行うための制御を行う。
巻出機4は、材料6の巻き出しを行い、巻取機5は、印刷ユニット1〜3により3色刷りの印刷が行われた材料6の巻き取りを行う。ダンサー11−4は、印刷ユニット3に備えた後述するフィード15−3と巻取機5との間に設けられ、巻取機5による材料6の巻き取りが行われる際に、一定量の材料6の溜め込みを行う。一定量の溜め込みを行うのは、フィード15−3が材料6を走行させて巻取機5が材料6を巻き取るときに、フィード15−3が巻取機5の負荷にならないようにするためである。また、ダンサー11−4が設けられていない場合は、巻取機5が、フィード15−3による材料6への張力の影響を受けてしまい、材料6を巻き取ることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。
印刷ユニット1は、ダンサー11−1、圧胴12−1、版胴13−1、アニロックスロール14−1、フィード15−1、マークセンサ16−1、乾燥機17−1、版胴用モータ(M1)18−1、版胴用エンコーダ19−1、フィード用モータ(M2)20−1及びフィード用エンコーダ21−1を備えている。
ダンサー11−1は、巻出機4とフィード15−1との間に設けられ、フィード15−1が材料6を走行させるときに、巻出機4がフィード15−1の負荷にならないようにするため、一定量の材料6の溜め込みを行う。これは、ダンサー11−1が設けられていない場合、フィード15−1が、巻出機4による材料6への張力の影響を受けてしまい、材料6を適切な速度で走行させることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。
圧胴12−1及び版胴13−1は、走行する材料6を挟挿し、版胴13−1に設けられた版22−1により、材料6における製品上の所定位置に印刷を行う。アニロックスロール14−1は、印刷のためのインキを、版胴13−1に設けられた版22−1に転移する。版胴用モータ18−1は、印刷ユニット用制御装置31−1からのM1速度指令に従って駆動し、版胴13−1及びアニロックスロール14−1を回転させる。版胴用エンコーダ19−1は、版胴用モータ18−1の駆動に伴い、版胴13−1の回転位置(版胴位置)及び回転速度等を検出するためのパルス信号(版胴エンコーダ信号)を印刷ユニット用制御装置31−1に出力する。
フィード15−1は、回転によって材料6を走行させる。フィード用モータ20−1は、印刷ユニット用制御装置31−1からのM2速度指令に従って駆動し、フィード15−1を回転させ材料6を走行させる。フィード用エンコーダ21−1は、フィード用モータ20−1の駆動に伴い、材料6の走行位置及び走行速度等を検出するためのパルス信号(フィードエンコーダ信号)を印刷ユニット用制御装置31−1に出力する。
マークセンサ16−1は、材料6上において製品毎の所定位置に付されたマークを検出し、マーク検出信号を印刷ユニット用制御装置31−1に出力する。このマークセンサ16−1の設置位置は、製品上の所定位置に印刷位置を合わせるために調整される。マークセンサ16−1の設置位置が変更されることにより、マークを検出するタイミングが異なるようになり、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることができる。乾燥機17−1は、圧胴12−1及び版胴13−1により挟挿され印刷された材料6を乾燥する。
印刷ユニット2は、印刷ユニット1と同様の構成をしており、ダンサー11−2、圧胴12−2、版胴13−2、アニロックスロール14−2、フィード15−2、マークセンサ16−2、乾燥機17−2、版胴用モータ(M3)18−2、版胴用エンコーダ19−2、フィード用モータ(M4)20−2及びフィード用エンコーダ21−2を備えている。版胴13−2には版22−2が設けられている。
ダンサー11−2は、印刷ユニット1のフィード15−1とフィード15−2との間に設けられ、フィード15−2が材料6を走行させるときに、フィード15−1がフィード15−2の負荷にならないようにするため、一定量の材料6の溜め込みを行う。これは、フィード15−2が、印刷ユニット1のフィード15−1とは独立して、材料6の走行制御を行うためである。また、ダンサー11−2が設けられていない場合、フィード15−2が、フィード15−1による材料6への張力の影響を受けてしまい、フィード15−1とは関係なく材料6を適切な速度で走行させることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。これにより、2色目の印刷を行う印刷ユニット2は、1色目の印刷を行う印刷ユニット1とは独立して、材料6を独自に走行制御することにより、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることができる。
圧胴12−2、版胴13−2等については、印刷ユニット1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
印刷ユニット3は、印刷ユニット1,2と同様の構成をしており、ダンサー11−3、圧胴12−3、版胴13−3、アニロックスロール14−3、フィード15−3、マークセンサ16−3、乾燥機17−3、版胴用モータ(M5)18−3、版胴用エンコーダ19−3、フィード用モータ(M6)20−3及びフィード用エンコーダ21−3を備えている。版胴13−3には版22−3が設けられている。
ダンサー11−3は、印刷ユニット2のフィード15−2とフィード15−3との間に設けられ、フィード15−3が材料6を走行させるときに、フィード15−2がフィード15−3の負荷にならないようにするため、一定量の材料6の溜め込みを行う。これは、フィード15−3が、印刷ユニット2のフィード15−2及び印刷ユニット1のフィード15−1とは独立して、材料6の走行制御を行うためである。また、ダンサー11−3が設けられていない場合、フィード15−3が、フィード15−2による材料6への張力の影響を受けてしまい、フィード15−2とは関係なく材料6を適切な速度で走行させることができなくなり、材料6が伸びてしまうからである。これにより、3色目の印刷を行う印刷ユニット3は、2色目の印刷を行う印刷ユニット2及び1色目の印刷を行う印刷ユニット1とは独立して、材料6を独自に走行制御することにより、製品上の所定位置に印刷位置を合わせることができる。
圧胴12−3、版胴13−3等については、印刷ユニット1,2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1は、予め設定された基準速度指示及び増速指示に基づいて基準位置指令及び基準速度指令を生成し、基準位置指令及び基準速度指令を印刷ユニット用制御装置31−2,31−3に出力する。また、印刷ユニット用制御装置31−1は、版胴用エンコーダ19−1から版胴エンコーダ信号を入力して版胴位置(原点を基準にした版胴13−1の回転位置(角度))を算出し、版胴位置、基準位置指令及び基準速度指令に基づいて、版胴13−1の回転速度を定めるパターンを生成し、M1速度指令として版胴用モータ18−1へ出力する。また、印刷ユニット用制御装置31−1は、マークセンサ16−1からマーク検出信号を入力すると共に、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力し、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置及び走行速度等、版胴位置、版胴周長B0並びに製品長Lに基づいて、材料6の走行速度を定めるパターンを生成し、M2速度指令としてフィード用モータ20−1へ出力する。
このように、印刷ユニット用制御装置31−1は、M1速度指令により版胴13−1を回転させ、M2速度指令によりフィード15−1を制御し、材料6を走行させる。版胴周長B0よりも印刷長Dが極端に短い場合は、印刷時に、版胴13−1の回転に追従するように材料6を一定速度に走行制御し、非印刷時に、版胴13−1を加速及び減速させ、材料6を減速及び加速させる。また、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−1の設置位置に基づいて、版胴13−1に設けられた版22−1による印刷位置を、製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット1において1色目の印刷が行われる。
ここで、予め設定された基準速度指示は、全ての印刷ユニット1〜3において、印刷時の版胴13−1〜13−3の回転速度、及び材料6の走行速度を定める共通の指示である。基準速度指示に基づいて生成された基準位置指令及び基準速度指令も同様に、全ての印刷ユニット1〜3において共通の指示である。また、予め設定された増速指示は、版胴13−1〜13−3を一定速度から加速させる増速位置(角度)、上限速度等を含む情報である。また、予め設定された版胴周長B0及び製品長Lも同様に、全ての印刷ユニット1〜3において共通に用いられるデータである。
印刷ユニット用制御装置31−2は、印刷ユニット用制御装置31−1から基準位置指令及び基準速度指令を入力すると共に、版胴用エンコーダ19−2から版胴エンコーダ信号を入力して版胴位置を算出し、版胴位置、基準位置指令及び基準速度指令に基づいて、版胴13−2の回転速度を定めるパターンを生成し、M3速度指令として版胴用モータ18−2へ出力する。また、印刷ユニット用制御装置31−2は、印刷ユニット用制御装置31−1と同様に、マークセンサ16−2からマーク検出信号を入力すると共に、フィード用エンコーダ21−2からフィードエンコーダ信号を入力し、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置及び走行速度等、版胴位置、版胴周長B0並びに製品長Lに基づいて、材料6の走行速度を定めるパターンを生成し、M4速度指令としてフィード用モータ20−2へ出力する。
このように、印刷ユニット用制御装置31−2は、M3速度指令により版胴13−2を回転させ、M4速度指令によりフィード15−2を制御し、材料6を走行させる。版胴周長B0よりも印刷長Dが極端に短い場合は、印刷時に、版胴13−2の回転に追従するように材料6を一定速度に走行制御し、非印刷時に、版胴13−2を加速及び減速させ、材料6を減速及び加速させる。また、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−2の設置位置に基づいて、版胴13−2に設けられた版22−2による印刷位置を、製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット2において2色目の印刷が行われる。
印刷ユニット用制御装置31−3は、印刷ユニット用制御装置31−2と同様である。このように、印刷ユニット用制御装置31−3は、M5速度指令により版胴13−3を回転させ、M6速度指令によりフィード15−3を制御し、材料6を走行させる。版胴周長B0よりも印刷長Dが極端に短い場合は、印刷時に、版胴13−3の回転に追従するように材料6を一定速度に走行制御し、非印刷時に、版胴13−3を加速及び減速させ、材料6を減速及び加速させる。また、マーク検出信号の入力タイミングに基づいて、すなわち、マークセンサ16−3の設置位置に基づいて、版胴13−3に設けられた版22−3による印刷位置を、製品上の所定位置に合わせる。これにより、印刷ユニット3において3色目の印刷が行われる。
〔版胴の動き、材料の動き及び印刷位置〕
次に、図2に示したフレキソ印刷機10において、版胴13−1〜13−3の動き、材料6の動き及び印刷位置について説明する。図3は、版胴13−1〜13−3の動き及び印刷位置を説明する図である。図3(1)は、製品上の印刷位置及び版胴速度を示している。材料6を分断して得られる製品長Lの製品毎に、印刷ユニット1により印刷αが行われ、印刷ユニット2により印刷βが行われ、印刷ユニット3により印刷γが行われるものとし、それぞれの印刷位置は図3(1)に示すとおりとする。印刷は、印刷αの始端から印刷γの終端までの間で行われ、その距離を印刷長Dとする。このような印刷α,β,γを実現するための版胴13−1の回転速度を定めるパターンであるM1速度指令、版胴13−2のM3速度指令、及び版胴13−3のM5速度指令は、印刷箇所を含む印刷長Dに対して一定速度であり、印刷箇所を含まない印刷長D以外に対して加速及び減速のパターンである。このM1速度指令、M3速度指令及びM5速度指令は、同一のパターンであり、一定速度のパターンには、印刷α,β,γが行われる領域が含まれる。
図3(2)は、版胴13−1〜13−3上に設けられた版22−1〜22−3の位置を示している。版胴13−1〜13−3の直径は同じであるとする。版胴13−1上の版22−1、版胴13−2上の版22−2及び版胴13−3上の版22−3は、図3(1)に示した印刷α,β,γを実現するために、図3(2)に示す位置に設けられる。版胴13−1〜13−3上の版22−1〜22−3の位置は、図3(1)に示した製品上の印刷α,β,γの位置に対応している。印刷長Dに対応する角度を70°とすると、この70°の区間において印刷が行われ、290°の区間において印刷が行われないことになる。つまり、aの位置からbの位置までの70°の区間が、M1速度指令、M3速度指令及びM5速度指令のうちの印刷長Dに対する一定速度の領域に対応し、bの位置からcの位置までの145°の区間が、加速の領域に対応し、cの位置からaの位置までの145°の区間が、減速の領域に対応する。
図4は、材料6の動き及び印刷位置を説明する図である。図4に示すように、M2速度指令は、材料6の製品毎の所定位置に印刷αを行うための指令であり、加速(u〜v)及び一定速(v〜w)の同調速度指令VA−VCと、減速(w〜x)の停止速度指令VBとからなるパターンが繰り返された指令である。尚、M2速度指令は、加速(u〜v)及び一定速(v〜w)の同調速度指令VA−VCと、減速(w〜x)及び停止(x〜u、図示せず)の停止速度指令VBとからなるパターンが繰り返される場合もあり得る。本実施形態においては、材料6の走行が停止しない例にて説明する。
具体的には、M2速度指令は、製品の所定位置が版胴13−1の挟挿位置にあるところから加速を開始し(u)、版胴13−1に設けられた版22−1が挟挿位置にある期間の間一定速度となり(v〜w)、その後減速し(w〜x)、次の製品の所定位置が版胴13−1の挟挿位置にあるところで加速を再開する(u)軌道をとるパターンである。前述のとおり、一定速度(v〜w)の後減速し(w〜x)、次の製品の所定位置が版胴13−1の挟挿位置にあるところで停止する軌道をとるパターンもあり得る。ここで、同調速度指令VA−VCのうちの一定速(v〜w)は、一定速度で回転する版胴13−1の回転速度と同一であり、このときに印刷αが行われる。図2に示した印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1は、このようなパターンを生成し、M2速度指令としてフィード用モータ20−1へ出力する。これにより、材料6は、このパターンで走行することになる。
印刷ユニット2におけるフィード15−2のM4速度指令、及び、印刷ユニット3におけるフィード15−3のM6速度指令も、材料6の製品毎の所定位置に印刷β,γをそれぞれ行うための指令である。図2に示した印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−2,31−3は、このようなパターンを生成し、M4,M6速度指令としてフィード用モータ20−2,20−3へ出力する。これにより、材料6は、これらのパターンでそれぞれ走行することになる。
また、図4に示すように、材料6には、製品長Lの製品毎に印刷α,β,γが形成されることにより、複数の連続した製品が生産される。材料6には、製品毎に製品長L間隔のマークが予め付されている。
印刷αは、材料6が版胴13−1と同一の速度で走行しているときに、版胴13−1及び圧胴12−1により所定位置になされる。同様に、印刷βは、材料6が版胴13−2と同一の速度で走行しているときに、版胴13−2及び圧胴12−2により所定位置になされ、印刷γは、材料6が版胴13−3と同一の速度で走行しているときに、版胴13−3及び圧胴12−3により所定位置になされる。
印刷α,β,γの開始位置は、マーク検出信号の入力タイミングの変化、すなわち、マークセンサ16−1〜16−3の設置位置に基づいたM2,M4,M6速度指令によって材料6を走行制御することで、製品上の所定位置に合わせられる。例えば、マークセンサ16−2の設置位置を変更することにより、図4のM4速度指令のように、ズレ量k2ずれた位置に印刷βを行うことができる。つまり、印刷α,β,γの開始位置は、マークセンサ16−1〜16−3の設置位置を変更することにより決定することができる。マークセンサ16−1〜16−3の設置位置と印刷α,β,γのズレ量(開始位置)との関係は、マークセンサ16−1〜16−3の設置位置を変えて印刷を行う試運転にて、データを収集することにより得られる。
〔印刷装置/印刷ユニット用制御装置〕
次に、図2に示した印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1〜31−3について説明する。図5は、印刷ユニット1に対し1色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置31−1の構成を示すブロック図である。この印刷ユニット用制御装置31−1は、印刷基準部32、版胴制御部33−1及びフィード制御部(材料制御部)34−1を備えている。
印刷基準部32は、予め設定された基準速度指示及び増速指示(増速位置、上限速度等)に基づいて基準速度指令を生成し、基準速度指令に基づいて基準位置指令を生成し、基準位置指令及び基準速度指令を版胴制御部33−1及び印刷ユニット用制御装置31−2,31−3に出力する。印刷基準部32の詳細については後述する。
版胴制御部33−1は、印刷基準部32から基準位置指令及び基準速度指令を入力すると共に、版胴用エンコーダ19−1から版胴エンコーダ信号を入力し、版胴エンコーダ信号から版胴位置を算出し、版胴位置、基準位置指令、基準速度指令及び予め設定された位相補正値に基づいたフィードフォワード制御によりM1速度指令を生成し、M1速度指令を版胴用モータ18−1へ出力する。これにより、版胴13−1は、M1速度指令が示す速度で回転する。また、版胴制御部33−1は、版胴位置をフィード制御部34−1に出力する。版胴制御部33−1の詳細については後述する。
フィード制御部34−1は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力すると共に、マークセンサ16−1からマーク検出信号を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力する。そして、フィード制御部34−1は、版胴位置、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置等、並びに、予め設定された版胴周長B0及び製品長Lに基づいて、材料6の走行速度を定めるパターンを生成し、M2速度指令としてフィード用モータ20−1へ出力する。フィード制御部34−1の詳細については後述する。
図6は、印刷ユニット2に対し2色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置31−2の構成を示すブロック図である。この印刷ユニット用制御装置31−2は、版胴制御部33−2及びフィード制御部34−2を備えている。
図5に示した印刷ユニット用制御装置31−1と図6に示す印刷ユニット用制御装置31−2とを比較すると、印刷ユニット用制御装置31−1,31−2は共に、版胴制御部33−1,33−2及びフィード制御部34−1,34−2を備えている点で共通する。一方、印刷ユニット用制御装置31−1は、印刷基準部32を備えているのに対し、印刷ユニット用制御装置31−2は、印刷基準部32を備えていない点で相違する。
印刷ユニット用制御装置31−2の版胴制御部33−2は、印刷ユニット用制御装置31−1から基準位置指令及び基準速度指令を入力すると共に、版胴用エンコーダ19−2から版胴エンコーダ信号を入力し、版胴制御部33−1と同様に、版胴位置、基準位置指令、基準速度指令及び予め設定された位相補正値に基づいたフィードフォワード制御によりM3速度指令を生成し、M3速度指令を版胴用モータ18−2へ出力する。これにより、版胴13−2は、M3速度指令が示す速度で回転する。また、版胴制御部33−2は、版胴位置をフィード制御部34−2に出力する。
フィード制御部34−2は、版胴制御部33−2から版胴位置を入力すると共に、マークセンサ16−2からマーク検出信号を、フィード用エンコーダ21−2からフィードエンコーダ信号を入力する。そして、フィード制御部34−2は、版胴位置、マーク検出信号の入力タイミング、フィードエンコーダ信号から得られる材料6の走行位置等、並びに、予め設定された版胴周長B0及び製品長Lに基づいて、材料6の走行速度を定めるパターンを生成し、M4速度指令としてフィード用モータ20−2へ出力する。
尚、印刷ユニット3に対し3色目の印刷制御を行う印刷ユニット用制御装置31−3の構成については、印刷ユニット用制御装置31−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
また、印刷ユニット用制御装置31−1〜31−3により生成される材料6のM2,M4,M6速度指令は、印刷位置及び印刷α,β,γに応じて異なるパターンとなる。このパターンの違いに伴って材料6の走行も印刷ユニット1〜3毎に異なるものとなるが、この走行の違いは、ダンサー11−1〜11−4によって吸収することができる。
〔印刷基準部〕
次に、図5に示した印刷ユニット用制御装置31−1の印刷基準部32について説明する。図7は、印刷基準部32の構成を示すブロック図である。また、図12は、印刷基準部32の処理を説明するフローチャートであり、図18は、版胴13−1が増速する場合の、印刷基準部32により生成される基準速度等を説明するタイミングチャートである。印刷基準部32は、速度発信器101、増速回路102、加算回路103及び角度変換回路104を備えている。
速度発信器101は、予め設定された基準速度指示を入力し、基準速度指示に変化があった場合、急峻な変化を緩和してランプ状の変化になるように、入力した基準速度指示を演算して基準速度を生成し、増速回路102及び加算回路103に出力する(ステップS1201)。ステップS1201により生成された基準速度は、図18に示すように、0から基準速度指示の値までランプ状に変化し、その後は基準速度指示の値を維持する。
増速回路102は、速度発信器101から基準速度を入力すると共に、予め設定された増速指示(増速位置、上限速度等)を入力し、さらに、角度変換回路104から基準位置指令を入力する。そして、増速回路102は、図1に示した版胴速度のパターンのうちの加速及び減速のパターン、すなわち図3(1)に示したM1速度指令における加速及び減速の三角形状パターンのみを生成し、この三角形状パターンを増速度として加算回路103に出力する(ステップS1202)。ステップS1202により生成された増速度の三角形状パターンは、図18に示すように、開始時点から増速位置に相当する時点taまでの間で0を維持し、時点taから時点tcまでの間で増加し、時点tcから時点tbの間で減少するパターンとなる。具体的には、図18を参照して、増速回路102は、速度発信器101から入力した基準速度が基準速度指示の値に一定になったか否かを判定し、一定になった時点で0の増速度を生成して出力する。そして、角度変換回路104からの基準位置指令の示す角度と増速指示に含まれる増速位置(角度)とを比較し、基準位置指令の示す角度が増速位置に到達したと判定した場合、そのときの時点ta以降、0から所定の加速度にて増加する増速度を算出して出力する。そして、所定時間経過した時点tc以降、所定の減速度で減少する増速度を算出して出力する。尚、増速度が上限速度を超えた場合は、上限速度を増速度として出力する。この場合、三角形状パターンではなく、台形形状パターンとなる。そして、増速度が0に到達した場合、その時点tbから0を維持し、前述した基準位置指令の角度と増速位置とを比較する処理を行う。このようにして、増速回路102は、三角形状パターンを順次生成する。
ここで、時点taから時点tcまでの間の加速度及び時点tcから時点tbまでの間の減速度の傾きは同一であり、増速度は、時点tcを基点として対称の速度になるように算出される。図18に示す後述の基準速度指令のパターンの1製品サイクルにおいて、加速及び減速の三角形状パターンが増速度に相当する。この基準速度指令のパターンにおいて、一定速度の領域が印刷時の70°(図3(1)(2)を参照)相当の距離(印刷長D)であり、加速及び減速の領域が非印刷時の290°相当の距離(製品長L−印刷長D)である。したがって、加速及び減速の三角形状パターンは、基準速度を加算したときの面積が非印刷時の290°相当の距離(L−D)になるように、基準速度、上限速度、加速及び減速時の傾きの上限値または1製品サイクル時間(1製品の生産時間:図18においてtbに相当する。)から、一義的に決定される。尚、図3(2)に示したaの位置が時点taに対応し、cの位置が時点tcに対応し、bの位置が時点tbに対応する。
加算回路103は、速度発信器101から基準速度を入力すると共に、増速回路102から増速度を入力し、これらを加算して基準速度指令を生成し(ステップS1203)、角度変換回路104、版胴制御部33−1及び印刷ユニット用制御装置31−2,31−3に出力する(ステップS1204)。ステップS1203により生成された基準速度指令は、版胴速度のパターンの元となり、図18に示すように、開始時点から増速位置に相当する時点taまでの間で基準速度指示の値を維持し、時点taから時点tcまでの間で増加し、時点tcから時点tbの間で減少するパターンとなる。
角度変換回路104は、加算回路103から基準速度指令を入力し、基準速度指令の示す速度を積分して位置に変換し、基準位置指令を生成し(ステップS1205)、版胴制御部33−1及び印刷ユニット用制御装置31−2,31−3に出力する(ステップS1206)。具体的には、角度変換回路104は、基準速度指令を周波数変換してパルス化し、そのパルスの値を加算(積分)して基準位置指令を生成する。ステップS1205により生成された基準位置指令は、図18に示すようなパターンとなる。
このように、印刷基準部32は、基準速度指示及び増速指示に基づいて基準速度指令及び基準位置指令を生成する。基準速度指令は、印刷ユニット1〜3の版胴13−1〜13−3を一定速、加速及び減速のパターンで回転させるための指令であり、基準位置指令は、印刷ユニット1〜3の版胴13−1〜13−3が基準速度指令で回転する際に、回転位置を合わせて位置同期させるための指令である。
図19は、版胴13−1が増速しない場合の、印刷基準部32により生成される基準速度等を説明するタイミングチャートである。版胴13−1が増速しないで一定速度を維持する場合、増速回路102に入力される増速指示が存在しないから、図19に示すように、増速回路102により生成される増速度は、0を維持するパターンとなり、加算回路103により生成される基準速度指令は、基準速度指示の値を維持するパターンとなる。また、角度変換回路104により生成される基準位置指令は、開始時点から1製品サイクルの時点までの間に0から増加し、1製品サイクルの時点にて0に戻るパターンとなる。このように、図18に示した基準位置指令のパターン及び図19に示した基準位置指令のパターンによれば、図18の方が1製品サイクルの時間を短くすることができる。したがって、製品に対する印刷の高速化を図ることができ、製品の生産効率を向上させることができる。
〔版胴制御部〕
次に、図5に示した印刷ユニット用制御装置31−1の版胴制御部33−1について説明する。図8は、版胴制御部33−1の構成を示すブロック図である。また、図13は、版胴制御部33−1の処理を説明するフローチャートである。版胴制御部33−1は、位置検出器111、位相回路112、減算器113、乗算器114、位置偏差リミッター115及び加算器116を備えている。
位置検出器111は、版胴用エンコーダ19−1から、版胴13−1の原点を示す信号を含む版胴エンコーダ信号を入力し、原点を基準にした版胴位置(版胴13−1の回転位置(角度))を検出し、位相回路112及びフィード制御部34−1に出力する(ステップS1301)。例えば、位置検出器111は、原点を0として、0°の位置から360°の位置まで変化するデータ(版胴13−1が1回転したときの回転位置データ)を版胴位置として検出する。版胴13−1の原点を示す信号は、回転する版胴13−1が所定位置にあることを示す信号である。すなわち、位置検出器111は、この原点を基準にした回転位置(角度)を算出し、算出した回転位置を版胴位置として検出する。
尚、位置検出器111により出力される版胴位置は、版胴13−1に設けられた版22−1により材料6に対して印刷が開始するタイミングの回転位置(版22−1の始点位置)、及び版22−1により材料6に対して印刷が完了するタイミングの回転位置(版22−1の終点位置)を認識することができるデータになっている。これらの印刷開始及び印刷完了のときの版胴位置を示す回転位置設定値は、印刷ユニット用制御装置31−1に予め格納されている。
位相回路112は、位置検出器111から版胴位置を入力すると共に、予め設定された位相補正値を入力し、版胴位置に位相補正値を加算し、補正後の版胴位置を減算器113に出力する(ステップS1302)。位相補正値は、版胴13−1の位相を決定するためのデータである。減算器113は、位相回路112から補正後の版胴位置を入力すると共に、印刷基準部32から基準位置指令を入力し、基準位置指令から補正後の版胴位置を減算して版位置偏差を求め、乗算器114に出力する(ステップS1303)。
乗算器114は、減算器113から版位置偏差を入力し、ゲインKを乗算して版位置偏差速度指令を求め、位置偏差リミッター115に出力する(ステップS1304)。位置偏差リミッター115は、乗算器114から版位置偏差速度指令を入力し、版位置偏差速度指令の値が予め設定された値を超えている場合、版位置偏差速度指令の値を予め設定された値に制限し、加算器116に出力する。加算器116は、位置偏差リミッター115から版位置偏差速度指令を入力すると共に、印刷基準部32から基準速度指令を入力し、基準速度指令に版位置偏差速度指令を加算してM1速度指令を生成する(ステップS1305)。そして、加算器116は、M1速度指令を版胴用モータ18−1へ出力する(ステップS1306)。
尚、版胴制御部33−1が安定して動作しているときは、減算器113により出力される版位置偏差が0であり、加算器116は、基準速度指令をM1速度指令として出力する。これに対し、版胴13−1が基準位置指令の示す位置で回転していないときは、その位置で回転するように、すなわち、版位置偏差が0になるように、減算器113及び乗算器114によって版位置偏差速度指令が生成され、加算器116は、その版位置偏差速度指令を加算してM1速度指令を生成し、出力する。そして、版胴13−1が基準位置指令の示す位置で回転するようになると、版位置偏差が0になり、版胴制御部33−1は安定して動作するようになる。このようにして、版胴13−1は、M1速度指令に従って回転する。
このように、版胴制御部33−1は、M1速度指令により、予め設定された基準速度指示及び増速指示に基づいて生成された基準速度指令のパターンにて版胴13−1を回転させることができる。また、版胴制御部33−1は、位置検出器111、位相回路112、減算器113、乗算器114、位置偏差リミッター115及び加算器116によるフィードフォワード制御にて、基準位置指令が示す位置と版胴位置とを同期制御することにより、基準位置指令が示す位置に版胴位置を合わせながら版胴13−1を回転させることができる。例えば、版胴13−1のロールスリップ等が原因して版胴位置にズレが発生した場合であっても、そのズレが蓄積されることなく、基準位置指令が示す位置に版胴位置を合わせることができる。この場合、基準位置指令は印刷ユニット1〜3間で共通の指令であるから、印刷ユニット1〜3において、基準位置指令が示す共通の位置に版胴13−1〜13−3の版胴位置をそれぞれ合わせながら、版胴13−1〜13−3を回転させることができる。版胴13−1〜13−3の位相は、位相回路112に入力される位相補正値により設定することができ、印刷ユニット1〜3毎に異なる設定にすることができる。
尚、図6に示した印刷ユニット用制御装置31−2の版胴制御部33−2及び印刷ユニット用制御装置31−3の版胴制御部33−3については、印刷ユニット用制御装置31−1の版胴制御部33−1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
(版胴の位相設定)
次に、版胴13−1〜13−3を所定の位相で回転制御する処理について説明する。前述したとおり、版胴制御部33−1〜33−3は、位相回路112に入力される位相補正値分ずらした位相で、版胴13−1〜13−3を回転制御する。つまり、オペレータにより予め設定された位相補正値により、版胴13−1〜13−3を、所定の位相で回転させることができる。
一般に、版22−1〜22−3は、版胴13−1〜13−3上の基準線に対して所定位置に設けられるから、位相補正値が設定されない場合は、版胴13−1〜13−3間の位相はまちまちとなる。つまり、印刷ユニット1〜3間でそれぞれ独立したタイミングで印刷が行われることになるから、材料6の緩み、張り及びスリップの影響が異なるタイミングでダンサー11−1〜11−4に反映されてしまい、ダンサー11−1〜11−4による材料6の溜め込み量(ダンサー11−1〜11−4の位置)は個々に変動する。これに対し、位相補正値が設定される場合は、版胴13−1〜13−3間の位相を合わせることができ、同じタイミングで印刷が行われることになるから、材料6の緩み等の影響はダンサー11−1〜11−4に同時に反映され、これらの影響は全体として吸収されることになる。つまり、ダンサー11−1〜11−4による材料6の溜め込み量(ダンサー11−1〜11−4の位置)の変動を最小限に抑えることができる。
〔フィード制御部〕
次に、図5に示した印刷ユニット用制御装置31−1のフィード制御部34−1について説明する。図9は、フィード制御部34−1の構成を示すブロック図である。フィード制御部34−1は、実製品長算出部210、VA−VC生成部(同調速度指令生成部)220、VB生成部(停止速度指令生成部)230及びセレクタ240を備えている。
実製品長算出部210は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力すると共に、マークセンサ16−1からマーク検出信号を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力する。そして、実製品長算出部210は、予め設定された製品長Lを入力し、マーク検出信号の入力タイミングにより実製品長RLを算出し、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力する。ここで、実製品長RLは、マークセンサ16−1の設置位置が変更されることに伴って一時的に変わる値、言い換えると、マーク検出信号の入力タイミングが変化することに伴って一時的に変わる値である。実製品長RLが一時的に変わると、材料偏差速度指令VCの加速開始点が移動し、印刷位置が変わる。すなわち、マークセンサ16−1の設置位置が変更されることにより、マーク検出信号の入力タイミングが変化して実製品長RLが一時的に変わり、材料偏差速度指令VCの加速開始点が移動し、印刷位置を変えることができる。
VA−VC生成部220は、版胴制御部33−1から版胴位置を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力すると共に、実製品長算出部210から実製品長RLを入力する。そして、VA−VC生成部220は、版胴位置の変化量に基づいて、版胴13−1の回転速度である基準速度指令VAを算出し、VB生成部230に出力する。また、VA−VC生成部220は、入力した版胴位置と、印刷完了のときの版胴位置を示す予め設定された回転位置設定値(印刷αの終了位置に対応する版胴位置)とに基づいて、印刷完了を生成し、VB生成部230及びセレクタ240に出力する。また、VA−VC生成部220は、予め設定された版胴周長B0から実製品長RLを減算し、その減算結果と、その後の版胴位置と、フィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて材料偏差速度指令VCを算出する。また、VA−VC生成部220は、基準速度指令VA−材料偏差速度指令VCである同調速度指令VA−VCをセレクタ240に出力すると共に、基準速度指令VAに基づいてレートRを算出し、VB生成部230に出力する。
VB生成部230は、実製品長算出部210から実製品長RLを、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力すると共に、VA−VC生成部220から印刷完了、レートR及び基準速度指令VAを入力する。そして、VB生成部230は、実製品長RLと、その後のフィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて停止速度指令VBを算出し、セレクタ240に出力する。
セレクタ240は、VA−VC生成部220から印刷完了及び同調速度指令VA−VCを、VB生成部230から停止速度指令VBを入力し、同調速度指令VA−VCまたは停止速度指令VBをM2速度指令として、フィード用モータ20−1へ出力する。
図20は、M2速度指令のパターンと材料6及び版胴13−1のサイズとの関係を説明する図である。フィード制御部34−1により生成されるM2速度指令のパターンは、VA−VC生成部220により生成される加速及び一定速の同調速度指令VA−VCと、VB生成部230により生成される減速及び停止(本例の場合は減速のみ)の停止速度指令VBとからなる。
材料6には、製品毎の所定箇所に、製品長Lの間隔で、製品の始端からmの距離にマークが付されている。製品の始端から版胴13−1による印刷αの印刷開始位置までの間の距離をc、印刷αの印刷長をa、印刷終了位置から製品の終端までの間の距離をbとすると、M2速度指令を構成する同調速度指令VA−VCの加速により走行する距離(M2速度指令のパターンにおける加速部分の面積)はcである。また、同調速度指令VA−VCの一定速により走行する距離(一定速度部分の面積)はaであり、停止速度指令VBの減速による走行する距離(減速部分の面積)はbである。この場合、時点t0から時点t2までの加速、一定速及び減速による材料6の走行距離はc+a+bであり、この距離は製品長L=a+b+cである。尚、図20は、M2速度指令において加速により走行する距離と、製品の始端から印刷αの印刷開始位置までの間の距離cとが同一であり、M2速度指令において減速により走行する距離と、印刷αの印刷終了位置から製品の終端までの間の距離bとが同一である場合を示しているが、必ずしも同一である必要はない。例えば、印刷αの印刷開始位置よりも(L−a)/2の距離分、製品の始端方向へ離れた箇所を基点とした場合、M2速度指令において加速により走行する距離と、前記基点から印刷αの印刷開始位置までの間の距離(L−a)/2とが同一であり、M2速度指令において減速により走行する距離と、印刷αの印刷終了位置から次の製品における前記基点までの間の距離(L−a)/2とが同一であってもよい。これは、後述する図21についても同様である。
また、図20には、版胴13−1を直線状に伸ばしたときの模式図が示されている。版22−1の長さは印刷長aに等しく、版胴13−1は、少なくとも印刷長aにおいて一定速で回転する。
図21は、印刷ユニット1において、図3(1)に示したM1速度指令のパターンで回転する版胴13−1に対し、M2速度指令のパターンで走行する材料6の動きを説明する図である。フィード制御部34−1は、材料6が図21に示す(1)〜(4)の順序で動作するように、図20に示したM2速度指令を生成する。図21において、(1)は、材料6が加速走行を終了して一定速走行を開始する時点t1=tb(図20を参照)(tbは図18のtbに対応している。ta,tcについても同様。)の状態を示している。この時点t1において、版胴13−1は、減速を終了して一定速度で回転し始める。製品の始端から距離cにある印刷開始位置をa1とすると、印刷開始位置a1上に、版胴13−1に設けられた版22−1の始点が存在する。すなわち、材料6が挟挿される版胴13−1と圧胴12−1との間の挟挿位置に、材料6の印刷開始位置a1が存在し、版22−1の始点が存在している。ここから印刷が開始し、材料6の走行速度と版胴13−1の回転速度とが同一になる。
(2)は、材料6が一定速走行を終了して減速走行を開始する時点t2の状態を示している。この時点t2において、版胴13−1は、一定速度で回転している。製品の印刷終了位置をa2とすると、印刷終了位置a2上に、版胴13−1に設けられた版22−1の終点が存在し、ここで印刷が終了する。すなわち、版胴13−1の挟挿位置には、材料6の印刷終了位置a2が存在し、版22−1の終点が存在している。
(3)は、材料6が減速走行を継続している時点t3=taの状態を示している。この時点t3において、版胴13−1は、一定速度を終了して加速し始める。
(4)は、材料6が減速走行を終了して加速走行を開始する時点t4=t0=tcの状態を示している。この時点t4において、版胴13−1は、加速を終了して減速し始める。材料6が挟挿される版胴13−1と圧胴12−1との間の挟挿位置に、製品の終端(次の製品の始端)が存在する。
〔実製品長算出部〕
次に、図9に示したフィード制御部34−1の実製品長算出部210について説明する。前述のとおり、実製品長算出部210は、版胴位置、マーク検出信号及びフィードエンコーダ信号を入力し、予め設定された製品長Lを用いて、マーク検出信号の入力タイミングにより実製品長RLを算出し、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力する。図9を参照して、実製品長算出部210は、マークディテクター211及びマスク処理部212を備えている。
図14は、実製品長算出部210の処理を説明するフローチャートである。実製品長算出部210のマークディテクター211は、マークセンサ16−1からマーク検出信号を入力すると、マーク検出信号をマスク処理部212に出力する(ステップS1401)。マスク処理部212は、マークディテクター211からマーク検出信号を入力すると共に、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を入力し、フィードエンコーダ信号から走行位置を算出し、この走行位置が、マーク検出信号を入力したときの位置から所定のマスク距離分進めた位置までの間、マスク信号をマークディテクター211に出力する。ここで、所定のマスク距離は、材料6の走行速度に影響を受けることのない距離であり、製品長Lに応じて予め設定される。
マークディテクター211は、マスク処理部212からマスク信号を入力し、マスク信号を入力している間、マーク検出信号の入力を無視する(ステップS1402)。マスク信号は、マークセンサ16−1によるマークの誤検出があったときのマーク検出信号の入力を無視するために用いられ、マークディテクター211は、マスク信号を用いることにより、マークセンサ16−1によりマークが検出されマーク検出信号を入力してから所定のマーク距離の間に、次のマーク検出信号を入力しないようにする。また、マークディテクター211は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力し、マスク信号を入力していないときのマーク検出信号を入力したタイミングにおける版胴位置と次にマーク検出信号を入力したタイミングにおける版胴位置との間の差、及び、製品長Lを版胴位置に換算したときの予め設定された値とを用いて、実製品長RLを算出する(ステップS1403)。例えば、製品長Lに対する版胴位置の差が予め設定されており、実製品長RLと版胴位置の差とが比例関係にあるとした場合、実際に算出した版胴位置の差に基づいて実製品長RLを算出する。そして、マークディテクター211は、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力する(ステップS1404)。
尚、マークディテクター211は、入力した版胴位置と、予め設定された印刷完了のときの版胴位置を示す回転位置設定値とを比較し、一致したときに印刷完了を判定し、その印刷完了のタイミングで実製品長RLの算出及び出力処理を行う。つまり、マークディテクター211により出力される実製品長RLは、印刷完了のタイミングで更新される。
このように、実製品長算出部210によれば、マーク検出信号の入力タイミング及び製品長L等に基づいて、実製品長RLを算出するようにした。これにより、VA−VC生成部220及びVB生成部230は、材料6の伸縮に伴う実製品長RLを用いてM2速度指令を生成することができる。したがって、材料6の材質等による伸縮が生じたとしても、材料6の走行速度はそれに影響を受けることがないから、材料6上の印刷位置がずれることなく、所定箇所に正確に印刷を行うことができる。
また、実製品長算出部210によれば、印刷完了のタイミングで、実製品長RLを算出し、実製品長RLをVA−VC生成部220及びVB生成部230に出力するようにした。これにより、VA−VC生成部220及びVB生成部230は、印刷が行われていないときに、最新の実製品長RLに基づいたカウンターのプリセット等を行い、次の製品の印刷に対するM2速度指令を生成することができる。したがって、材料6上の予め設定された印刷開始位置から精度高く印刷を行うことができる。
〔VA−VC生成部〕
次に、図9示したフィード制御部34−1のVA−VC生成部220について説明する。前述のとおり、VA−VC生成部220は、版胴位置、フィードエンコーダ信号及び実製品長RL等を入力し、版胴13−1の回転速度である基準速度指令VAを算出し、版胴位置から印刷完了を生成し、予め設定された版胴周長B0から実製品長RLを減算し、その減算結果と、その後の版胴位置と、フィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて材料偏差速度指令VCを算出する。また、VA−VC生成部220は、印刷完了をVB生成部230に出力し、基準速度指令VA−材料偏差速度指令VCをセレクタ240に出力すると共に、基準速度指令VAに基づいてレートRを算出し、VB生成部230に出力する。
図9を参照して、VA−VC生成部220は、バリカム221、F/Vフィルター222、減算器223、加減算器224、同調側カウンター225、レート可変器226、加速度計算器227、乗算器228及び減算器229を備えている。
図15は、VA−VC生成部220の処理を説明するフローチャートである。VA−VC生成部220のF/Vフィルター222は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力し、周波数を電圧に変換するコンバータ及び所定の周波数の信号を除去するフィルターにより(ステップS1501)、版胴位置に基づいて版胴13−1の回転速度である基準速度指令VAを生成し、減算器229、レート可変器226及びVB生成部230に出力する(ステップS1502)。この基準速度指令VAは、印刷基準部32により生成された基準速度指令、及び版胴制御部33−1により生成されたM1速度指令に対応し、同じ値となる。
バリカム221は、版胴制御部33−1から版胴位置を入力し、版胴位置と、印刷完了のときの版胴位置を示す予め設定された回転位置設定値とを比較し、一致したときに印刷完了を判定し(ステップS1503)、印刷完了を同調側カウンター225、VB生成部230及びセレクタ240に出力する。
減算器223は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された版胴周長B0から実製品長RLを減算し、その減算結果(B0−RL)を加減算器224に出力する。加減算器224は、減算器223から減算結果(B0−RL)を、フィード用エンコーダ21−1からフィードエンコーダ信号を、版胴制御部33−1から版胴位置をそれぞれ入力し、減算結果(B0−RL)とフィードエンコーダ信号との加算値から版胴位置を減算し、その加減算結果を同調側カウンター225に出力する。
同調側カウンター225は、加減算器224から加減算結果を入力すると共に、バリカム221から印刷完了を入力する。そして、同調側カウンター225は、印刷完了を入力したタイミングにおいて、入力した加減算結果(B0−RL)をカウント値としてプリセットする(ステップS1504)。その後、同調側カウンター225は、版胴13−1の回転による版胴位置の入力に伴ってカウント値を減算し(ステップS1505)、材料6の走行によるフィードエンコーダ信号の入力に伴ってカウント値を加算し(ステップS1506)、加減算した結果のカウント値を材料偏差速度指令カウント値VC’として乗算器228に出力する。すなわち、同調側カウンター225は、印刷完了を入力したタイミングにおいてB0−RLをカウント値としてプリセットし、その後の版胴位置の入力に伴ってカウント値を減算し、フィードエンコーダ信号の入力に伴ってカウント値を加算する。
加速度計算器227は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された製品長L、製品の始端から印刷開始位置までの間の予め設定された距離c、予め設定された印刷αの印刷長a及び実製品長RLにより加速度を算出し、乗算器228に出力する。例えば、製品長Lと実製品長RLとの関係及び予め設定された印刷αの印刷長aから実印刷長を算出し、加速距離P0=(実製品長RL−実印刷長)/2を算出し、距離cに対する実距離(加速距離P0)及び印刷時の一定速度の値を用いて加速度を算出する。これにより、材料6が伸縮した場合であっても、その伸縮量に応じた加速度を算出することができる。
レート可変器226は、F/Vフィルター222から基準速度指令VAを入力し、加速度計算器227により計算された加速度を補正するためのレートRを、入力した基準速度指令VAの値に応じて設定し、乗算器228及びVB生成部230に出力する。具体的には、レート可変器226は、基準速度指令VAが版胴13−1の回転速度として最高値のときにはレートRを1に設定し、基準速度指令VAが最高値以下のときには、基準速度指令VAの値に比例するように、0〜1の範囲でレートRを設定する。
乗算器228は、同調側カウンター225から材料偏差速度指令カウント値VC’を入力すると共に、加速度計算器227から加速度を、レート可変器226からレートRをそれぞれ入力する。そして、乗算器228は、入力した加速度に、予め計算された加速度にするためのゲインを乗算し、印刷速度に応じたレートRを乗算し、その結果を材料偏差速度指令カウント値VC’に乗算し、その結果である材料偏差速度指令VCを減算器229に出力する(ステップS1507)。例えば、版胴13−1の印刷時の一定速度におけるフィード用モータ20−1(M2)の最高周波数をF0とすると、ゲインは、加速距離P0−(P0−Z/2)に設定される。ここで、Z=√((P02−42−F02)/(4×π2×応答周波数))である。
図22は、フィード制御部34−1の基本動作を説明するタイミングチャートである。(1)は基準速度指令VA、(2)は材料偏差速度指令VC、(3)は同調速度指令VA−VC、(4)は停止速度指令VB、(5)はM2速度指令、(6)は印刷完了、横軸は時間をそれぞれ示している。
(1)において、F/Vフィルター222により出力される基準速度指令VAは、版胴13−1の回転速度であり、時間軸に対して一定速、加速及び減速のパターンとなる。(2)において、材料偏差速度指令VCは、同調側カウンター225により出力される材料偏差速度指令カウント値VC’に対して乗算器228がゲイン等を乗算して得られる指令である。したがって、材料偏差速度指令カウント値VC’も、この材料偏差速度指令VCと同様のパターンとなる。材料偏差速度指令カウント値VC’は、印刷完了のタイミングでB0−RLであり、その後徐々に小さくなって0になる。材料偏差速度指令VCは、印刷完了のタイミングでB0−RLに相当する値(乗算器228においてゲイン等を乗算した値)であり、その後徐々に小さくなって0になる。
版胴位置は、版胴13−1が一定速度及び加速して回転していることから、時間の経過に伴って一定の割合で大きくなる。また、フィードエンコーダ信号による走行位置のデータは、材料6が印刷完了後は減速することから、印刷完了後時間の経過に伴って小さくなる。したがって、印刷完了後の材料偏差速度指令カウント値VC’は、B0−RLを頂点として徐々に小さくなって0になり、次の印刷完了が入力されるまで、0を維持する。同様に、材料偏差速度指令VCは、図22(2)に示したように、徐々に小さくなり、次の印刷完了が入力されるまで0を維持する。
図9及び図15に戻って、減算器229は、F/Vフィルター222から基準速度指令VAを入力すると共に、乗算器228から材料偏差速度指令VCを入力し、基準速度指令VAから材料偏差速度指令VCを減算し、減算結果の同調速度指令VA−VCをセレクタ240に出力する(ステップS1508)。減算器229により出力される減算結果である同調速度指令VA−VCは、図22(3)のパターンとなる。ここで、図22(3)において、時点t0から時点t1までの間の加速部分の面積は、乗算器228におけるゲインによって、図20に示した距離c(図22において(L−a)/2)となり、時点t1からt2までの間の四角形の面積は、図20に示した距離aとなる。
このように、印刷ユニット1において、VA−VC生成部220によれば、印刷完了のタイミングでB0−RLをカウント値にプリセットし、版胴13−1の回転及び材料6の走行に伴ってカウント値を減少させて0を維持させる同調側カウンター225、及び、カウント値にゲイン等を乗算する乗算器228を用いて、図22(3)に示した同調速度指令VA−VCを生成するようにした。これにより、M2速度指令のうちの加速及び一定速部分を生成することができる。
〔VB生成部〕
次に、図9に示したフィード制御部34−1のVB生成部230について説明する。前述のとおり、VB生成部230は、実製品長RL、フィードエンコーダ信号、印刷完了及びレートR等を入力し、印刷完了のときに、実製品長RLと、その後のフィードエンコーダ信号の示す材料6の走行位置等とに基づいて停止速度指令VBを算出し、セレクタ240に出力する。図9を参照して、VB生成部230は、停止距離計算器231、停止側カウンター232、減速度計算器233、乗算器234及び速度リミッター235を備えている。
図16は、VB生成部230の処理を説明するフローチャートである。停止距離計算器231は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された製品長L、製品の印刷終了位置から製品の終端までの間の予め設定された距離b、予め設定された印刷αの印刷長a及び実製品長RLにより、実際の停止距離を算出し、停止側カウンター232に出力する。例えば、停止距離計算器231は、製品長Lと実製品長RLとの関係及び予め設定された印刷αの印刷長aから実印刷長を算出し、停止距離=(実製品長RL−実印刷長)/2を算出するようにしてもよい。これにより、材料6が伸縮した場合であっても、その伸縮量に応じた停止距離を算出することができる。
停止側カウンター232は、停止距離計算器231から停止距離を、フィード用エンコーダ21−1から材料6の走行位置を示すフィードエンコーダ信号をそれぞれ入力すると共に、VA−VC生成部220から印刷完了を入力する(ステップS1601)。そして、停止側カウンター232は、印刷完了を入力したタイミングにおいて、停止距離をカウント値にプリセットし(ステップS1602)、材料6の走行に伴うフィードエンコーダ信号の入力によりカウント値を減算し(ステップS1603)、減算結果のカウント値を停止速度指令カウント値VB’として乗算器234に出力する。
図9及び図16に戻って、減速度計算器233は、実製品長算出部210から実製品長RLを入力し、予め設定された製品長L、材料6の走行が開始する位置(製品の始端)から印刷開始位置までの間の予め設定された距離c、予め設定された印刷長a、製品の印刷終了位置から製品の終端までの間の予め設定された距離b、及び実製品長RLにより減速度を算出し、乗算器234に出力する。例えば、製品長Lと実製品長RLとの関係から実印刷長を算出し、減速距離=(実製品長RL−実印刷長)/2を算出し、距離bに対する実距離(減速距離)及び印刷時の一定速度の値を用いて減速度を算出する。これにより、材料6が伸縮した場合であっても、その伸縮量に応じた減速度を算出することができる。
乗算器234は、停止側カウンター232から停止速度指令カウント値VB’を入力すると共に、減速度計算器233から減速度を、VA−VC生成部220からレートRをそれぞれ入力する。そして、乗算器234は、入力した減速度に、予め計算された減速度にするためのゲインを乗算し、印刷速度に応じたレートRを乗算し、その結果を停止速度指令カウント値VB’に乗算し、その結果である停止速度指令VBを速度リミッター235に出力する。
速度リミッター235は、乗算器234から乗算後の停止速度指令VBを入力すると共に、VA−VC生成部220から基準速度指令VAを入力し、停止速度指令VBが基準速度指令VAよりも大きくならないように、停止速度指令VBに速度制限を施し、速度制限処理後の停止速度指令VBをセレクタ240に出力する(ステップS1604)。これにより、停止速度指令VBを基準速度指令VA以下の指令に制限することができるから、印刷完了のタイミングにおいて、材料6の走行速度が急変することを防止できる。したがって、材料6が急に加速することがなく余分な負荷がかからないから、材料6を円滑に走行させることができる。
図22(4)において、停止速度指令VBは、停止側カウンター232により出力される停止速度指令カウント値VB’に対し、乗算器234がゲインを乗算し、速度リミッター235が速度制限を施すことにより得られる指令である。停止速度指令カウント値VB’も、この停止速度指令VBと同様なパターンである。停止速度指令カウント値VB’は、印刷完了のタイミングにおいて停止距離に応じた値であり、その後徐々に小さくなって0になる。同様に、停止速度指令VBは、印刷完了のタイミングで停止距離に応じた値(乗算器234及び速度リミッター235においてゲイン及び制限を施した値、結果としてVAになる。)であり、その後徐々に小さくなって0になる。ここで、図22(4)において、時点t3から時点t4(t0)までの間の減速部分の面積は、乗算器234におけるゲインによって、図20に示した距離b(図22において(L−a)/2)となる。
このように、印刷ユニット1において、VB生成部230によれば、印刷完了のタイミングで製品の印刷終了位置から製品の終端までの間の停止距離をカウント値にプリセットし、材料6の走行に伴ってカウント値を減少させて0を維持させる停止側カウンター232、カウント値にゲイン等を乗算する乗算器234、及び、停止速度指令VBが基準速度指令VAよりも大きくならないように速度制限を施す速度リミッター235を用いて、図22(4)に示した停止速度指令VBを生成するようにした。これにより、M2速度指令のうちの減速及び停止部分(本例の場合は減速部分のみ)を生成することができる。
〔セレクタ〕
次に、図9に示したフィード制御部34−1のセレクタ240について説明する。前述のとおり、セレクタ240は、印刷完了、同調速度指令VA−VC及び停止速度指令VBを入力し、同調速度指令VA−VCまたは停止速度指令VBをM2速度指令として、フィード用モータ20−1へ出力する。
図10は、セレクタ240の構成を示すブロック図である。また、図17は、セレクタ240の処理を説明するフローチャートである。このセレクタ240は、比較器241、ラッチ回路242及び切替器243を備えている。セレクタ240は、同調速度指令VA−VCが停止速度指令VBよりも大きいときに同調速度指令VA−VCをM2速度指令として出力し、同調速度指令VA−VCが停止速度指令VB以下のときに停止速度指令VBをM2速度指令として出力する。
比較器241は、VA−VC生成部220から同調速度指令VA−VCを入力すると共に、VB生成部230から停止速度指令VBを入力し、VA−VC>VBのときにONの制御信号を出力し、VA−VC≦VBのときにOFFの制御信号を出力する。ラッチ回路242は、比較器241から制御信号を入力すると共に、VA−VC生成部220から印刷完了を入力し、切替制御信号を切替器243に出力する。具体的には、ラッチ回路242は、比較器241からONの制御信号を入力すると、出力をセットしてONの切替制御信号を出力する。また、ラッチ回路242は、ONの切替制御信号を出力しているときに印刷完了を入力すると、出力をリセットしてOFFの切替制御信号を出力する。
切替器243は、VA−VC生成部220から同調速度指令VA−VCを、VB生成部230から停止速度指令VBを入力すると共に、ラッチ回路242から切替制御信号を入力する。印刷完了を入力しておらず(ステップS1701)、VA−VC>VBのときに(ステップS1703)、切替制御信号がONになる。切替器243は、切替制御信号がONのときに同調速度指令VA−VCをM2速度指令として出力する(ステップS1704)。また、印刷完了を入力すると切替制御信号がOFFになり、切替器243は、切替制御信号がOFFのときに停止速度指令VBをM2速度指令として出力する(ステップS1702)。
図22(5)において、M2速度指令は、(3)の同調速度指令VA−VC及び(4)の停止速度指令VBが合成された指令である。図10に示したセレクタ240は、図22(3)の同調速度指令VA−VC、(4)の停止速度指令VB及び(6)の印刷完了を入力し、前述した処理を行うことにより、(5)のM2速度指令を出力する。
このように、印刷ユニット1において、セレクタ240によれば、製品の所定位置から印刷αの印刷終了位置までの間で、同調速度指令VA−VCをM2速度指令として出力するようにした。これにより、材料6の走行は、加速して版胴13−1と同じ一定速度になり、製品の印刷開始位置から印刷が開始される。そして、セレクタ240は、印刷終了位置から次の製品の所定位置までの間で、停止速度指令VBをM2速度指令として出力するようにした。これにより、材料6の走行は、製品の印刷が完了して版胴13−1と同じ一定速度から減速する。
以上のように、本発明の実施形態による印刷装置30によれば、印刷ユニット1〜3毎の印刷ユニット用制御装置31−1〜31−3において、版胴制御部33−1〜33−3は、印刷基準部32により生成された共通の基準位置指令及び基準速度指令に基づいて、M1,M3,M5速度指令を生成し、版胴用モータ18−1〜18−3により版胴13−1〜13−3を一定速、加速及び減速のパターンで回転制御するようにした。また、フィード制御部34−1〜34−3は、印刷α,β,γを行う際に、版胴エンコーダ信号から算出された版胴位置、フィードエンコーダ信号から算出された材料6の走行位置、予め設定された製品長L及び版胴周長B0等に基づいて、M2,M4,M6速度指令を生成し、フィード用モータ20−1〜20−3により材料6を一定速度、減速及び加速のパターンで走行制御するようにした。これにより、版胴13−1〜13−2を一定速度で回転している時に、材料6における製品上の所定位置から、印刷α,β,γを行うことができる。
また、本発明による印刷装置30によれば、版胴13−1〜13−3に材料6を同期させる制御方式を前提にして、印刷時に、版胴13−1〜13−3に材料6を同期(追従)させ、版胴13−1〜13−3の基準速度と同一の速度で走行させるようにし、非印刷時に、版胴13−1〜13−3を加速及び減速させると共に、材料6を減速及び加速させるようにした。これにより、印刷と印刷との間の空白時間及び空白距離を短くすることができ、製品に対する印刷の高速化を図ることができる。したがって、印刷装置30による製品の生産効率を向上させることができる。
〔印刷ユニット用制御装置の共通化〕
次に、印刷ユニット1〜3毎に設けられた印刷装置30の印刷ユニット用制御装置31−1〜31−3について、共通化した場合の構成例を説明する。図11は、印刷ユニット1〜3間で共通化した印刷ユニット用制御装置の構成を示すブロック図である。この印刷ユニット用制御装置31は、印刷基準部32、版胴制御部33、フィード制御部34及びスイッチ35を備えている。
印刷基準部32、版胴制御部33及びフィード制御部34は、図5及び図6に示した印刷基準部32、版胴制御部33−1,33−2及びフィード制御部34−1,34−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
スイッチ35は、印刷基準部32から基準位置指令及び基準速度指令を入力するか、または、他の印刷ユニット用制御装置から基準位置指令及び基準速度指令を入力し、予め設定された選択信号に従って、印刷基準部32側または他の印刷ユニット用制御装置側のいずれか一方の指令を選択し、選択した基準位置指令及び基準速度指令を版胴制御部33に出力する。
図2に示したフレキソ印刷機10の例では、印刷ユニット用制御装置31−1が印刷基準部32を備え、印刷ユニット用制御装置31−2,31−3が印刷基準部32を備えていない。したがって、印刷ユニット用制御装置31−1として用いられる印刷ユニット用制御装置31は、選択信号により、印刷基準部32から入力した基準位置指令及び基準速度指令を版胴制御部33に出力する。これは、図5に示した構成と同様である。一方、印刷ユニット用制御装置31−2,31−3として用いられる印刷ユニット用制御装置31は、選択信号により、他の印刷ユニット用制御装置(印刷ユニット用制御装置31−1)から入力した基準位置指令及び基準速度指令を版胴制御部33に出力する。これは、図6に示した構成と同様である。つまり、選択信号は、印刷基準部32により出力される基準位置指令及び基準速度指令を使用するか否かにより、予め設定される。
このように、図11に示した印刷ユニット用制御装置31によれば、この印刷ユニット用制御装置31を印刷ユニット用制御装置31−1〜31−3として用い、印刷ユニット用制御装置31−1においては、印刷基準部32からの指令を版胴制御部33に出力するように選択信号を設定し、印刷ユニット用制御装置31−2,31−3においては、他の印刷ユニット用制御装置31−1からの指令を版胴制御部33に出力するように選択信号を設定するようにした。これにより、印刷ユニット用制御装置31−1〜31−3の共通化を図ることができるから、印刷色の数が増える毎に共通の印刷ユニット用制御装置31を用いればよく、印刷色の数の増加に容易に対応することができる。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、3色刷りを行う印刷ユニット1〜3を備えたフレキソ印刷機10の例を示したが、本発明は、印刷色の数及び印刷ユニットの数に限定されることがない。例えば、1色刷りであってもよいし、4色刷りであってもよい。4色刷りを行う場合は、4台の印刷ユニットを備えたフレキソ印刷機10であればよい。この場合も、4台の印刷ユニットのそれぞれに対して印刷ユニット用制御装置31が設けられ、印刷基準部32は共通して1箇所に備えられていればよい。