JP2012004396A - 圧電体膜の製造方法とそれを用いた圧電体素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、圧電体を用いた素子の特性と信頼性を向上させるものである。
【解決手段】本発明は、真空チャンバ内に一対のターゲットを対向させることで対向空間を設け、前記ターゲットの対向方向に対して略直交するように基板と鉛供給源を設置し、前記対向方向に沿って磁界を発生させるとともに、前記ターゲットに電圧を印加することでプラズマを発生させて前記基板に圧電体膜を形成するものであって、前記圧電体膜を形成する際、前記鉛供給源から鉛蒸気を前記対向空間に供給するとともに、前記真空チャンバ内の圧力を0.13Pa以下とすることを特徴とする圧電体膜の製造方法であり、圧電体素子の強誘電特性、圧電特性、焦電特性と信頼性を向上させるものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、センサやアクチュエータに用いられる圧電体膜の製造方法とそれを用いた圧電体素子に関するものである。
圧電性、焦電性、自発分極、高誘電率などの特性を有するペロブスカイト構造の圧電体材料は、その特性を利用して半導体メモリや各種センサ、アクチュエータ等に幅広く応用されている。圧電体材料の代表としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrxTi1-x)O3)や、 チタン酸バリウム・ストロンチウム((Ba,Sr)TiO3)、タンタル酸ビスマス・ストロンチウム(SrBi2Ta29)等があり、応用するデバイスの要求特性に応じて適宜使い分けるものである。
例えばアクチュエータとして変位量を重視する場合は、圧電性、特に電気機械結合係数を主として選定するものであり、半導体メモリとして用いる場合は、分極電荷量や自発分極による半導体の抵抗率変化を利用するため、誘電率や自発分極を主として選定することが重要である。
圧電体膜は、その結晶配向性によって得られる電気的特性が異なることが知られており、上記のデバイスに適用するためには、基板上に形成する膜の結晶配向性を制御する必要がある。
結晶配向性を制御する手法の一例としては、基板上に形成した下部電極等に圧縮応力が残留するように形成し、その上に設けた圧電体膜に圧縮応力を付加するものである。
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
特開2002−57298号公報
しかしながら上述のように、下部電極に残留する応力を利用する場合、通常形成する数μm以下の電極厚みでは結晶配向性を十分に制御できないという課題があった。さらに、電極材料や温度など形成条件に制約があることから生産性が低くなるという課題もあった。
そこで本発明は、圧電体膜自体に応力を残留させて結晶配向性を高めることを目的とする。
前記目的を達成するために本発明は、真空チャンバ内に一対のターゲットを対向させて対向空間を設け、前記ターゲットの対向方向に対して略直交するように基板と鉛供給源を配置し、前記対向方向に沿って磁界を発生させるとともに、前記ターゲットに電圧を印加することでプラズマを発生させて前記基板に圧電体膜を形成するものであって、前記圧電体膜を形成する際、前記鉛供給源から鉛蒸気を前記対向空間に供給するとともに、前記真空チャンバ内の圧力を0.13Pa以下としたものである。
以上のように本発明は、対向ターゲット方式のスパッタ装置を用いるものであって、鉛蒸気を適宜供給しながら圧電体膜を形成する際に、スパッタチャンバ内を0.13Pa以下とすることで、ターゲットから飛散するスパッタ粒子の基材に対する入射角を浅くすることができるので、形成する圧電体膜そのものに圧縮応力を付加して結晶配向性を高めることができる。
本発明の一実施の形態における薄膜形成装置の概略図 本発明の一実施の形態における圧電体素子の断面図 (a)従来の薄膜形成方法における圧電体素子のドメインを示す模式図、(b)本発明の薄膜形成方法における圧電体素子のドメインを示す模式図 (a)従来の薄膜形成方法における圧電体素子の結晶構造図、(b)本発明の薄膜形成方法における圧電体素子の結晶構造図 本発明の一実施の形態におけるPZT膜の残留応力を説明する特性図 本発明の一実施の形態におけるPZT膜の面間隔のシフトを説明する特性図 本発明の一実施の形態におけるPZT膜の面間隔を説明する特性図 本発明の別の実施の形態における薄膜形成装置の概略図 図8に示す薄膜形成装置の一部断面図 本発明の別の実施の形態における薄膜形成装置の概略図
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1に本実施の形態における薄膜形成装置の概略図を示す。この薄膜形成装置は、ターゲットをスパッタし、基材上にPb(Zr0.55Ti0.45)O3(以下、PZT膜と記す)を成膜する薄膜形成装置である。装置の構成を、図1を用いて説明する。
図1に示すように、スパッタチャンバ1と、このスパッタチャンバ1内に配置されて、一定の間隔で平行に対向する二枚のターゲット2と、このターゲット2の近傍に配置されたガス導入部3と、基板ホルダ4とを備えている。なお、ターゲット2として、Zr/Ti=55/45のPb(Zr0.55Ti0.45.)O3とを用い、カソード5に接続している。
ターゲット2間で対向空間を形成し、これらターゲット2の対向方向に対して略直交するように基板ホルダ4が配置されている。
さらに対向空間の側面には、Pb蒸発源6を備えたPb蒸発源用加熱機構7を設けており、排気ポンプとつながった排気孔の対面に配置している。このPb蒸発源6によりPb蒸気をスパッタチャンバ1内に適宜供給することができる。なお、本実施の形態では、Pb蒸発源6としてPbOを用いている。
また、本実施の形態では基板ホルダ4は、フローティング状態とするか、あるいはアースと接続させている。この基板ホルダ4には加熱機能(図示せず)と回転機構(図示せず)が付いており、基材であるシリコン基板を一定の温度で加熱でき、回転しながら薄膜を形成できるようになっている。
ガス導入部3には、ガス流量制御器8とガスボンベ9が接続されており、スパッタチャンバ1内に導入するスパッタガスとしてアルゴンガスを、反応性ガスとして酸素ガスを、ガス流量制御器8で調整してスパッタチャンバ1内に供給する。これらのガスは、スパッタ時には電離されて、ラジカルや陽イオン、陰イオンが生成される。なお、本実施の形態では、導入する酸素ガスとスパッタガスとの比は1:10とし、これらのガス圧は約0.033Paとした。
また各ターゲット2の背面にはそれぞれ磁石が配置されている。そして一方のターゲット2aに設けられた磁石にはN極を内側(対向空間側)に、他方のターゲット2bにはS極が内側(対向空間側)となるように配置されている。したがって、これらの磁石によって、対向空間には磁界が発生し、ターゲット2の対向方向、すなわち、一方のターゲット2aから他方のターゲット2bへと磁力線が走る。
なお、本実施の形態では、カソード5内にも冷却機構を設けており、冷却水によりターゲット2を冷却することができる。これにより、ターゲット2への熱応力を緩和している。
また、本実施の形態では、カソード5と高周波電源12との間に整合器10を設け、短絡を防止している。また、ターゲット2の外周にはアースシールドを設け、ターゲット2のみがスパッタされるようにしている。
さらに、本実施の形態は、特にPbTiO3やPb(Zr1-x,Tix)O3等のペロブスカイト構造を有したPb系の蒸気圧が大きく異なる元素を含んだ複合酸化物において、基板を加熱しながら、プラズマから外れた空間に設置された基板上にPZT膜を成膜する際に問題となる、膜中のPb量の欠損を補完する効果を有する。
本実施の形態は、図に示すように二つのターゲット2a,2bを対向させ、一方のターゲット2aから他方のターゲット2bへと向かう磁界を発生させることによって、対向空間にほぼ一様の磁界が形成される。そして、この磁界によりプラズマを閉じ込めるとともに、成膜したPZT膜にダメージを与えるγ電子や負イオンを捕捉することで、結果として結晶性を高めることが出来る。
しかし、一方でPZT膜を形成する基板がプラズマから外れており、プラズマのエネルギーによる結晶化のアシストを受けることが出来なくなるため、基板を加熱する必要がある。基板温度を高くすると形成したPZT膜からPbが再蒸発するため、Pb蒸発源6を具備することでPb蒸気が基板近傍ならびにスパッタチャンバ1全体に充満し、Pbの飽和状態を作り出し、上述したPZT膜を、組成ずれを起こすことなく成膜することができる。
次に、上記薄膜形成装置を用いた成膜方法について説明する。
まず初めに基板ホルダ4に、基材となるシリコン基板を配置し、スパッタチャンバ1の内部を真空ポンプ11によって1×10-4Pa以下まで排気する。また、基板ホルダ4の加熱機能を用い、シリコン基板をPZT膜が結晶化する温度まで加熱する。ここでは、熱電対を貼り付けて実際の構成で測定した620℃まで加熱するものとする。
次にPb蒸発源6を、Pb蒸発源用加熱機構7で加熱することにより、Pb蒸気をスパッタチャンバ1に導入する。このときPb蒸発源6の表面の温度が650℃となるように加熱する。
次に、スパッタチャンバ1内において、ガス導入部3からスパッタガスであるアルゴンガスと反応ガスである酸素を導入し、Pb蒸気とアルゴンガスと酸素ガスとの全圧を所定の圧力に調整した後、ターゲット2に負電圧を印加する。こうすることにより、アルゴンガスがイオンと電子とに電離してプラズマとなり、イオン(Ar+)がターゲット2に衝突する。そしてターゲット2の表面からターゲット粒子が飛び出し、基板上にPZT膜を形成する。なお、本実施の形態では、電圧供給源として電力密度2.7W/cm2の高周波電源12を用いた。
ここで、本実施の形態において重要なのは、ターゲット粒子が飛び出すスパッタ時の全圧力を0.033Paとなるように調整することである。
上記の方法で成膜したPZT膜の特性を次に説明する。
図2は、本実施の形態で成膜したPZT膜13上に電極14等を形成した圧電体素子15の断面図である。シリコン基板16(表面に70nmのSiO2を形成したもの)上に、下部電極17としてTi(10nm)とPt(400nm)を積層し、その下部電極17上にPZT膜13(2500nm)を、このPZT膜13上にAu(300nm)からなる上部電極14を形成している。なお、下部電極17は、平行平板マグネトロンスパッタ、上部電極14は電子ビーム蒸着で形成している。
本実施の形態を用いて成膜することにより、PZT膜13には圧縮応力Y(図2中に矢印で図示)を内在することとなる。
この圧縮応力Yにより、通常であれば、図3(a)に示すように、a軸とc軸がシリコン基板16の表面に対して不規則に並ぶのに対し、圧縮応力Yを内在しているため、c軸がシリコン基板16の表面に対して垂直方向に、優先配向する構造となる。そのため、ドメイン(分極)18(図中の矢印)は、180°ドメインが支配的となり、90°ドメインの割合を減少させることができる。
さらに本実施の形態によれば、ドメイン18の配向性に加えて結晶構造を変化させることができる。
図4は、本実施の形態で成膜したPZT膜13の結晶構造の変化を説明するための結晶構造図である。
本来、Zr/Ti=52/48のPZT膜は、図4(a)に示すように、相境界近傍(Morphotropic phase boundary、以降「MPB」と記す)のc軸長さとa軸長さが近似している擬立方晶構造、または菱面体晶構造をとる。このPZT膜13を、熱膨張係数がPZT膜13より小さいシリコン基板16上に形成すると、シリコン基板16からの拘束により引張応力を受け、c軸長さとa軸長さとの比率(c/a)が小さくなる。c/aの比率が小さくなると、分極反転温度であるキュリー温度の低下や、脱分極温度も低下し、耐熱性などの信頼性が低下する。
上記に対して本実施の形態では、PZT膜13自体に圧縮応力Yを内在させることができるので、この圧縮応力Yにより、図4(b)に示す正方晶へ相変態させ、その結果、c/aは図4(a)に比較して大きくなる。
上記のように、ドメイン18の配向性と結晶構造を制御することにより、正方晶の分極軸であるc軸を電界方向と一致させることにより、印加電圧と変位との線形性を高めることができ、補正回路等を必要としない小型で安価なセンサやアクチュエータを実現することができる。
さらに、c/aを大きくすることができるので、分極反転温度であるキュリー温度や脱分極温度も高くすることができるので、耐熱性を高めることができる。
ここで圧縮応力YをPZT膜13自身に内在させることができる理由について説明する。
圧縮応力Yを内在できる理由は、対向したターゲット2から飛び出すターゲット粒子が持つ運動エネルギー(圧縮応力Y方向のエネルギー)が、スパッタ粒子の堆積する過程で圧縮応力として膜中に残留するからである。さらに、このスパッタ粒子の運動エネルギーを、シリコン基板16の表面に対して、水平方向のベクトル値を垂直方向より大きくしているため、スパッタ粒子の堆積過程でPZT膜13の基板表面と平行方向のパッキング(密度)が上がり、基板表面と垂直方向の膜厚方向へ体積が膨張する。その結果、結晶品質の劣化や、ピーニング効果を用いる際のAr等のスパッタ時のガスが不純物としてPZT膜13内に残留することを抑制する効果も有するためである。
これらの効果により、PZT膜13の結晶構造は、シリコン基板16の表面に平行なc面の面間隔(c軸長さ)が伸びて、c/aが無歪のセラミックパウダーパターンと比較して大きくなる。
なお、本実施の形態のPZT膜13に圧縮応力Yが残留していることは、X線回折法によるSin2Ψ測で確認できる。
成膜したPZT膜13は、PZT(001)面がシリコン基板表面に対して平行に単一配向しているため、X線回折装置の煽り角度χを0°、45°、55°、90°と変化させ、各χに対応するPZT(001)面の逆格子回折から格子定数を算出する。そして、正方晶PZT膜と仮定してPZT(001)面に関するSin2Ψプロットを行い、応力値を測定するものである。
計算ではPZT膜13の内部にはσ11、σ22方向の2軸等方応力が内在していると仮定し、このSin2Ψ法から膜内部に残留している応力値を測定した。その結果を図5に示す。図5より、スパッタチャンバ1内の全圧力を0.67Paとして成膜したPZT膜13は、168MPaの引張り応力の残留を確認できた。これに対して、スパッタチャンバ1内の全圧力を0.033Paで形成したPZT膜13は、762MPaの圧縮応力の残留を確認できた。なお、残留応力の確認は、上述した方法以外にX線回折を用いた2D法でも確認することが出来る。
次に結晶構造の変化について説明する。図6は、スパッタチャンバ1内の全圧力と、PZT(001)面のピーク強度の位置の相関を示す特性図である。スパッタチャンバ1内の全圧力を0.01Paから2.66Paとして成膜したPZT膜13を比較している。図6より、0.67Paより高い全圧力で形成したPZT膜13は、ピークの位置が高角側に存在していることがわかる。
次に、これらのピーク強度から、全圧力に対するPZT(001)面の面間隔を求めた。
面間隔は下記ブラッグの公式より算出した。
2dsinθ=nλ
d:面間隔、n:反射次数、λ:X線の波長、θ:ブラッグ角
X線の波長はCuのKα1=1.54051Åを用い、PZT(002)面のブラッグ角から算出した。
その結果を図7に示す。図7より、全圧力を0.67Paで成膜すると、PZT(001)面の面間隔は、4.073Å〜4.077Åであった。一方、全圧力を0.13Pa時で成膜すると、ピークトップの位置が低角側にシフトし、PZT(001)面の面間隔は、同一組成のセラミックと略同等の4.082Åと伸びる。さらに全圧力0.033Paで成膜すると、PZT(001)面の回折角度がより低角に移動し、PZT(001)面の面間隔は、4.101Åと大きく伸びることが分かる。上記の結果より、本実施の形態の薄膜形成方法では、全圧力を少なくとも0.13Pa以下とするものである。さらに望ましくは、全圧力を0.033Pa以下とすることで、c/aをさらに大きくすることができるので、本実施の形態の効果をより高めることができる。
以上より、本実施の形態のPZT膜13は、圧縮応力Yを内在して形成されることで、シリコン基板16の表面に垂直なc軸長さが、a軸長さよりも長い正方晶の結晶構造を有していることが実証できる。
なお、本実施の形態では、形成するPZT膜13として、Pb(Zr0.55,Ti0.45)O3膜を例に挙げたが、MPB近傍組成のPZT、菱面体晶組成のPZTならびに正方晶組成のPZTやPbを含んだペロブスカイト型複合酸化物でも同様のことが可能であり、更には蒸気圧の大きいK系やBi系のペロブスカイト構造を有した強誘電体膜にも応用が可能である。
本実施の形態では、基材として熱酸化膜を形成したシリコン基板16を挙げたが、PZT膜形成時の高温に耐えることができて、かつ、基板を構成する元素と電極、PZT膜との拡散を抑制することができるならば、特に制限は無く、SiO2、硝子、Al23基板やMgO基板などにも応用が可能である。
また、スパッタガスと反応性ガスとは異なるガスを用いたが、反応性ガスの陽イオンがスパッタガスとして機能する場合は、同じガスを用いてもよい。
さらに本実施の形態では、形成したPZT膜13そのものに圧縮応力を内在させることが可能となるため、以下のような効果も期待できる。
まず、成膜工程を減らすことができるため、手間と時間の減少、コストの削減が可能となり、生産性が向上する。また、外部より応力を印加する手段が不要となるため、駆動回路を含めて回路構造が簡素化する。さらに、高温処理プロセスによる不純物成分の脱ガスや組成変動などの品質低下、外部応力による層間の剥離や層内の結晶欠陥の発生が招く損失の増大による品質低下、連続通電時の漏れ電流による発熱による品質低下等の品質の問題も改善される。
さらに、本実施の形態はPZT膜13への応力印加手段を、特願平9−39394に記載の技術のように、下地層とのエピタキシャル関係が成立していない場合でも格子を歪ませc軸方向の長さを長くすることができるため、以下のような効果も期待できる。
先ず、下地層の選択が広がるため、生産性が上がる。更には電極材料等でデバイス特性に適した材料を自由に選択することができる。更にはエピタキシャル成長に必要となる高価な形成装置や分析機器が不要となりコストの削減も可能となる。
(実施の形態2)
以下、別の実施の形態について説明する。なお、実施の形態1と同じ箇所は説明を簡略かする。
実施の形態1の薄膜形成装置との違いは、Pb蒸気の供給源をスパッタチャンバ1内ではなく外部に設け、Pb蒸気をキャリアガスとともにスパッタチャンバ1内に導入する点である。
図8に本実施の形態の薄膜形成装置の構造図を示す。Pb蒸気の供給は、キャリアガス用のガスボンベ20、ガス流量制御器21からなるガスラインと、このガスラインに、Pb原料供給部22、液体流量制御器23、気化室24からなるPb蒸気供給用のガスラインが接続され、コンダクタンスバルブ25で調圧されてスパッタチャンバ1内にPb蒸気をキャリアガスと混合させて供給するPb供給用ガスライン26を通じて行うものである。なお、上記キャリアガス用のガスラインと、Pb蒸気供給用のガスラインにはそれぞれ加熱機構が設けられており、一定の温度でPb蒸気をスパッタチャンバ1内に導入することが可能である。
また、スパッタチャンバ1内には、略平行に対向する二枚のターゲット2と、このターゲット2近傍に配置されたガス導入部3と、基板ホルダ4周辺に設けられたPb供給源導入部19が設置されており、このPb供給源導入部19よりキャリアガスとともにPb蒸気を均一に基板ホルダ4へ送り込んでいる。
図9は、スパッタチャンバ1内の一部断面図であり、特にPb供給源導入部19を正面に見た断面図である。このPb供給源導入部19は、基板ホルダ4の外周かつ同心円状に設けられており、矢印のごとく基板ホルダ4の中心へ、基板表面に対して概ね平行にキャリアガスとともにPb蒸気を供給することができる。そのため、ターゲット2からのスパッタ粒子の方向と、Pb蒸気の供給方向を概ね一致させることができる。
次に、上記薄膜形成装置を用いた薄膜形成方法について説明する。
まず、基板ホルダ4に基材となるシリコン基板16を配置し、スパッタチャンバ1の内部を真空ポンプ11によって1×10-4Pa以下まで排気する。また、基板ホルダ4の加熱機能を用い、シリコン基板16をPZT膜13が結晶化する温度まで加熱する。
次に、Pb原料供給部22のPb源として鉛β-ジケトン錯体Pb(dpm)2を130℃で液化した後、液体流量制御器23で精密に流量制御を行った液化原料を、減圧された気化室24へ供給し、170℃で気化した後キャリアガスとしてアルゴンを用いてコンダクタンスバルブ25により所定の圧力となるようにスパッタチャンバ1内に供給する。尚、この際ガスラインや各バルブは一定の温度に加熱することで、ガスラインの詰まりを防止している。なお、キャリアガスであるArは、スパッタガスの代わりとしても用いることが可能である。
次に、スパッタチャンバ1内において、ガス導入部3からスパッタガスであるアルゴンガスと反応ガスである酸素を導入し、Pb蒸気とアルゴンガスと酸素ガスとの全圧力を所定の圧力に調整しターゲット2に負電圧を印加する。負電圧を印加することで、アルゴンガスがイオンと電子とに電離してプラズマとなり、イオン(Ar+)がターゲット2に衝突してターゲット2からターゲット2粒子が飛び出す。尚、電圧供給源として電力密度2.7W/cm2の高周波電源12を用い、スパッタ時の全圧力を0.033Paとなるように調整した。
このように、スパッタチャンバ1の外部でPbを気化させてその蒸気をキャリアガスとともに導入することで、スパッタチャンバ1の内部でPbを加熱、気化させる場合と比較して、より高精度にPb蒸気の導入量を制御することが可能となる。その結果、成膜したPZT膜13は組成ずれがなくかつ結晶配向性を高めることが可能となり、生産性を高めることができる。
(実施の形態3)
以下、別の実施の形態について説明する。尚、実施の形態1および2と同じ箇所は説明を簡略化する。
本実施の形態は、実施の形態2の装置にさらにラジカル源を設けた点である。
図10に本実施の形態の薄膜形成装置の構造図を示す。
この薄膜形成装置は、スパッタチャンバ1とこのスパッタチャンバ1に取り付けられたECR(Electron Cyclotron Resonance)ラジカル源(高密度ラジカル源)27とを備えている。
図10に示すように、この薄膜形成装置は、スパッタチャンバ1内には、略平行に対向する二枚のターゲット2と、このターゲット2近傍に配置されたガス導入部3と、ECRラジカル源27と対向する基板ホルダ4と、基板ホルダ4の周辺にPb源とキャリアガスを導入するPb供給源導入部19が配置されている。
また、本実施の形態で用いるECRラジカル源27は、そのラジカル放出面を、ターゲット2に挟まれた対向空間にその側面から臨むように配置した。すなわちターゲット2の対向面とECRラジカル源27のラジカル放出面とがほぼ垂直な関係にある。そして、このECRラジカル源27によってプラズマ雰囲気を形成し、ターゲット2の対向方向に対して、ほぼ垂直方向からラジカル等を放出している。
そして本実施の形態では、基板ホルダ4とECRラジカル源27とは、対向空間を介して対面している。
なお、本実施の形態で用いたECRラジカル源27は、プラズマ生成部28に導波管29を介して高周波電源30からマイクロ波(2.45GHz)を送り込み、放電を起こすものである。
プラズマ生成部28の外周には875Gの磁束密度を形成することができる磁気コイルあるいは永久磁石を用いた磁界発生部31が配置され、これによりプラズマ生成部28の中心軸方向に磁場が印加されている。そしてこの磁場における磁力線の回りを電界が回転し、この電界によって電子も回転して加速される。そしてこの電子の回転周波数とマイクロ波周波数とを一致させて共振させ、マイクロ波のエネルギーを効率よく電子に吸収させる。この現象をECR(電子サイクロトロン共鳴)という。そしてECRによって加熱された電子が、ガス導入部3から導入された反応性ガス(酸素ガス)に衝突すると、酸素ガスは、ラジカルや陽イオン(O+)、陰イオン(O-)が生成される。
次に薄膜形成方法について説明する。
まず、基板ホルダ4に基材となるシリコン基板16を配置し、スパッタチャンバ1の内部を真空ポンプ11によって1×10-4Pa以下まで排気する。また、基板ホルダ4の加熱機能を用い、シリコン基板16をPZT膜13が結晶化する温度まで加熱する。ここでは480℃まで加熱する。
次に、スパッタチャンバ1内において、ガス導入部3からスパッタガスであるアルゴンガスを導入し、ターゲット2に負電圧を印加すると、アルゴンガスがイオンと電子とに電離してプラズマとなり、イオン(Ar+)がターゲット2に衝突してターゲット2からターゲット粒子が飛び出す。尚、電圧供給源として電力密度2.7W/cm2の高周波電源12を用いた。
またECRラジカル源27からスパッタチャンバ1内に酸素ラジカルを導入すると、この酸素ラジカルと前述のターゲット粒子とが反応する。このように、ECRラジカル源27から酸素ラジカルを供給し、ターゲット粒子と反応させることによって、酸素欠損の少ないPZT膜13を形成することができる。
そしてこの反応後のターゲット粒子がシリコン基板16表面に付着して徐々に堆積し、PZT膜13を形成することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態で挙げた効果の他に以下に説明する別の効果を奏する。
本実施の形態は、高密度のラジカルを発生可能であるECRラジカル源27を備えているため、高い真空度でスパッタ形成することができ、スパッタ粒子の基板表面方向に対して平行方向の運動エネルギーを更に高めることができるため、PZT膜13に内在する圧縮応力をより強めることが出来るとともに、結晶化時の温度によるポテンシャルエネルギーを低減することができ、緻密性が高く結晶欠陥が少なく、結晶性の高いPZT膜13を形成することができる。
本実施の形態は、二つのターゲット2を対向させ、一方のターゲット2から他方のターゲット2へと向う磁界を発生させることによって、ターゲット2間の対向空間にほぼ一様の磁界が形成される。そして、この磁界の向きとほぼ垂直方向から負イオンが放出される。そのため、負イオンは磁界中でサイクロトロン運動をするので、負イオンは磁界に捕捉された状態となり、これにより負イオンの進行は抑えられ、この結果として結晶性を高めることができる。
さらに、ECRラジカル源27を用いると、高効率でラジカルを発生させることができる一方で、負イオンの発生も多くなる。また、高密度でラジカル、イオン等が発生すると、比較的磁束密度が低く、アノード面が大量に存在するスパッタチャンバ1側へと直進しやすくなる。
その結果、本実施の形態は、高密度のラジカルを発生させかつ、負イオンの衝突を抑制し、PZT膜13へのダメージを低減することは、結晶性に優れたPZT膜13の形成に顕著な効果を有する。
さらに活性な酸素ラジカルを効率的に導入すると共に、酸素イオンの衝突を抑制することによって、PZT膜13の結晶中の原子が欠落するのを抑制し、電気的絶縁性に対する信頼性の高いPZT膜13を形成することができる。
尚、ECRラジカル源27などの高密度ラジカル源はイオンも高密度に発生させることができるため、スパッタガスも反応性ガスと同様に、高密度ラジカル源から放出してもよい。
本発明の強誘電体素子は、チューナブルフィルタや高周波用コンデンサデバイス等に応用される可変容量素子、角速度センサなどのセンサデバイス、精密位置決め用のアクチュエータデバイスに利用できる。
1 スパッタチャンバ
2 ターゲット
3 ガス導入部
4 基板ホルダ
5 カソード
6 Pb蒸発源
7 Pb蒸発源用加熱機構
8 ガス流量制御器
9 ガスボンベ
10 整合器
11 真空ポンプ
12 高周波電源

Claims (4)

  1. 真空チャンバ内に一対のターゲットを対向させて対向空間を設け、
    前記ターゲットの対向方向に対して略直交するように基板と鉛供給源を配置し、
    前記対向方向に沿って磁界を発生させるとともに、
    前記ターゲットに電圧を印加することでプラズマを発生させて前記基板に圧電体膜を形成するものであって、
    前記圧電体膜を形成する際、前記鉛供給源から鉛蒸気を前記対向空間に供給するとともに、
    前記真空チャンバ内の圧力を0.13Pa以下とすることを特徴とする圧電体膜の製造方法。
  2. 前記鉛供給源をスパッタチャンバ外に設け、この鉛供給源から供給される鉛蒸気を、ガスラインを介して前記対向空間に供給することを特徴とする請求項1に記載の圧電体膜の製造方法。
  3. 前記真空チャンバに接続してラジカル供給源を設け、
    このラジカル供給源から前記対向空間にラジカルを供給しながら圧電体膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の圧電体膜の製造方法。
  4. 前記請求項1から3のいずれかに記載の製造方法を用いて圧電体膜を形成したことを特徴とする圧電体素子。
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