以下に、本発明にかかる光起電力素子モジュールおよびその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
実施の形態1.
図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる光起電力素子モジュールである太陽電池モジュールの構成を示す要部斜視図である。図1−2は、本発明の実施の形態1にかかる光起電力素子モジュールである太陽電池モジュールを受光面側から見た要部平面図である。図1−3は、本発明の実施の形態1にかかる光起電力素子モジュールである太陽電池モジュールの構成を示す要部断面図であり、図1−1におけるA−A断面図である。実施の形態1にかかる太陽電池モジュールは、光透過性を有する第1のモジュール主面材である透明支持体1、両面発電可能な両面発電太陽電池素子2、透明支持体1の平面方向と略平行に設けられた光透過性を有する第2のモジュール主面材である耐候性樹脂膜3、封止樹脂4、素子間接続線5、波長選択性光反射体6を備える。この両面発電太陽電池素子2においては、透明支持体1側の主面を第1主面、耐候性樹脂膜3側の主面を第2主面とする。同様に、この太陽電池モジュールにおいては、透明支持体1側の主面を第1主面、耐候性樹脂膜3側の主面を第2主面とする。
透明支持体1としては、透明ガラスなどの光透過性を有する材料が使用され、例えば板ガラスなどを用いることができる。両面発電太陽電池素子2としては、例えば多結晶シリコン太陽電池セル、単結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン、銅インジウムセレン、カドミウムテルルなどを用い、裏面電極に透明導電膜や裏面の一部分のみに形成された金属電極を用いた太陽電池などを用いることができる。また、両面発電太陽電池素子2は、複数の素子が互いに離間して略一面上に設けられて太陽電池素子アレイを構成している。両面発電太陽電池素子2は、第1主面および前記第2主面から入射する光を吸収して発電する。
耐候性樹脂膜3としては、例えば耐候性ポリエチレンテレフタラート樹脂や反射材として白色顔料を練りこんだポリエチレンテレフタラート樹脂などを用いることができる。封止樹脂4としては、例えばエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)などの透明な封止材を用いることができる。素子間接続線5としては、例えば銅線を用いることができる。
波長選択性光反射体6は、両面発電太陽電池素子2の第2主面よりも耐候性樹脂膜3側に配置され、両面発電太陽電池素子2を透過する波長の光を選択的に反射するとともに、それ以外の波長でかつ両面発電太陽電池素子2で吸収可能な波長の光を透過可能である光反射体である。すなわち、波長選択性光反射体6は、特定の波長の光を選択的に反射し、それ以外の波長の光は透過させる光反射体である。波長選択性光反射体6としては、例えば光反射性を有する干渉性誘電体膜を用いることができる。波長選択性光反射体6の光反射性を有する干渉性誘電体膜としては、誘電率の異なる誘電体層が少なくとも2層以上積層してなる膜を用いることができる。前記の膜としては、例えば、テトラフルオロエチレン(屈折率1.3程度)やポリエチレン、ポリスチレンポリカーボネートなどの密度を変えることにより屈折率を変えた高分子フィルムなどからなり、高屈折率を有する高屈折率層と低屈折率を有する低屈折率層とを交互に積層したものを用いることができる。このような誘電体膜の屈折率を変化させるために無機粒子と有機物との混合体を使用することもできる。このような誘電体積層膜による波長選択性光反射体6に用いる各層の構成材は、光起電力素子の光吸収波長域で光吸収がないことが望ましい。
また、各低屈折率層と各高屈折率層とは、高誘電率の層の屈折率をn1、高誘電率の層の膜厚をt1、低誘電率の層の屈折率をn2、低誘電率の層の膜厚をt2、光反射体に垂直入射する光の波長をλ0とすると、下記の数式(2)の条件を満たすように各層の膜厚および屈折率を調整することにより、波長λ0で光反射を生じる波長選択性光反射体6を得ることができる。一般には高屈折率層と低屈折率層との各層の光学膜厚がそれぞれ等しくなるように設計されている。ここで、光学膜厚とは、光が透過する媒質の屈折率をn、光が透過する媒質の膜厚をtとした場合、n×tで定義される量である。この光反射体の反射率を高く保つ波長範囲の最適範囲は、太陽電池の波長ごとの発電感度によって異なるため、それに合わせた設計を行う必要がある。
また、上記の干渉性の誘電体膜での光反射が生じる波長範囲を広げるためには、上記λ0が変化するように徐々に各構成層の屈折率や膜厚を変化させていってもよく、一般的には等差的に、あるいは等比的に膜厚が増加していくように設計されることが多い。このような理由としては、波長選択性光反射体6を構成する全体の層のなかで上記の式を満たす波長で高い反射率を有する層があればその層がその波長の光を反射し、膜厚を変動させることにより、対象とする波長領域全体に対して高い反射率を有する波長選択性光反射体6となるためである。
一般的に、各低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が大きい方が、構成層数が小さくても高い反射率を広い波長範囲で得ることができるが、各低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が小さい場合は、構成層数を増やすことによって大きな反射率を広い波長領域で得ることができる。
このような干渉性の光反射体としては、例えば、赤外線領域の光を選択的に反射あるいは透過させるホットミラーやコールドミラーといわれるものがある。無機誘電体多層膜のほかにも、例えば特許文献2に示される多層高分子膜があり、実際の商品としては、700nmよりも長波長の光を反射する住友スリーエム社製Nano−90Sなどがあるが、第1主面に入射した光のうち光起電力素子を透過する光を反射し、第1主面の反対側から入射する光を透過させる目的のためには、例えば200μm程度の厚みの結晶シリコン太陽電池であれば光吸収が微弱な900nm〜1200nm程度の領域で反射率が高く、光吸収が十分大きく光が素子を透過しない900nm程度以下の波長領域では光透過性を有するフィルムが好ましい。この波長領域は材料以外にも光発電素子の厚さによっても変化し、例えば結晶シリコン太陽電池の場合であれば100μm程度の厚みの場合は850nm〜1200nm程度の長波長の光が吸収されずに透過してしまうため、これに合わせて反射する波長の設計を行う必要がある。
このような光反射体として、例えば屈折率1.6程度のポリスチレンフィルムと屈折率1.49程度のポリプロピレンとの積層体でこのような干渉性の光反射体を形成するには、各々の光学膜厚を210nmから290nm程度の厚さまで徐々に増加するようにしてポリスチレンフィルムとポリプロピレンとを交互に200層程度を積層することによって900nmから1200nm程度の波長範囲で高い反射率を有する誘電体干渉性光反射体を形成することができる。一般的に、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が大きい方が高い反射率を得ることができるため、屈折率のより低いテトラフルオロエチレンや屈折率のより高いジルコニア含有ポリスチレンなどとの組み合わせにより、さらに反射性に優れた光反射体を作ることができる。
このように、両面発電太陽電池素子2での光吸収係数が小さい波長領域で反射率が高い波長選択性光反射体6を両面発電太陽電池素子2の裏面側(発電効率の低い面側)に配置することにより、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2の第2主面に透過した光を、波長選択性光反射体6により反射させて再び両面発電太陽電池素子2に導くことができる。また、太陽電池モジュールの第2主面から入射した光のうち、両面発電太陽電池素子2での光吸収係数が大きい波長領域の光は、波長選択性光反射体6を透過することができるため、両面発電太陽電池素子2に入射して発電に寄与できる。これにより、発電出力に優れた太陽電池モジュールを得ることができる。
また、波長選択性光反射体6から反射した光のガラスへの光の入射角θが、下記の数式(3)の条件を満たす角度θC(臨界角)以上となるように、正反射性の高い波長選択性光反射体6が太陽電池モジュールの受光面に対してなす角αを一定以上の角度、θC/2以上の角度となるように斜面(光反射面)を形成することにより、両面発電太陽電池素子2の領域以外の領域に入射して太陽電池モジュールの第2主面側に到達した光の一部が大気とモジュール界面や波長選択性光反射体6により反射され、両面発電太陽電池素子2に導光されるようになり、発電出力に優れた太陽電池モジュールを得ることができる。したがって、波長選択性光反射体6は、平面状であってもよいが、太陽電池モジュールの受光面と下記の数式(4)で示す角度αC以上の角度をなす光反射面によって構成してもよく、素子間の間隔等により発電出力に有利な方を選択することができる。また、実際の発電環境ではモジュール表面に対する入射角は一定ではなく、また、モジュール表面に対して垂直入射する光のみではなく、モジュール表面が必ずしも平坦ではないため、垂直入射光以外の光についても上述のθが臨界角以上となるように、太陽電池モジュールの受光面と下記の数式(4)で示す角度αc以上の角度をなす光反射面によって構成することが好ましい。
例えば、アモルファスシリコン太陽電池に代表される、透明ガラス電極などを用いる薄膜系太陽電池の場合は、光発電素子間の間隔は、光電変換効率を重視した場合1ミリメートル以下と狭く、素子間に入射した光を反射させて素子に導くことによる利得があまり大きくない。この場合は、モジュールにおける光入射面とは反対の面全体に波長選択性光反射体6を平面状に形成してもよい。この場合、アモルファスシリコンは人間の目に見える可視光のうち一部を透過し、波長選択性光反射体6は可視光全体を透過するため、屋外の光を取り入れることができるシースルー太陽電池を作製することができ、意匠性を向上させることができる。
例えば、太陽電池モジュールの透明媒質が一般的なガラスとエチレンビニルアセテート(EVA)により構成されている場合は、太陽電池モジュールの透明媒質の屈折率は約1.5であることから臨界角は42度となる。そして、効率的な導光のためには、波長選択性光反射体6の斜面(光反射面)が太陽電池モジュールの表面となす角度は21度以上となる必要がある。
その一方で、受光面に対して上述の数式(4)で示す角度αC以上の角度をなす波長選択性光反射体6での反射光はガラス−大気界面で反射され、受光面に対して平行方向に導光される。ここで、太陽電池モジュールの表面と光反射体6の斜面(光反射面)とのなす角度が大きいほど、光が受光面に対して平行な方向に角度がつくため、その導光距離が長くなり太陽電池素子に導光され易くなるとともにモジュール表面に入射する光が垂直入射でなくとも反射体に反射された光がガラス大気−界面に臨界角以上の角度で入射させることができるようになる。また、その一方で、太陽電池モジュールの表面と波長選択性光反射体6の斜面(光反射面)とのなす角度が大きくなりすぎると、隣接する波長選択性光反射体6の斜面(光反射面)との間で光が多重反射し、波長選択性光反射体6での反射光のガラス−大気界面への入射角θが大きくなり、反射光がガラスから出射してしまい導光効率が低下する。
このため、すでに特許文献1でも示されているように、波長選択性光反射体6を受光面に対して30度程度の角度をなすように配置することによって、太陽電池モジュールの表面に垂直に入射した光の、受光面と平行な方向への導光距離が長くなり、特に発電出力の向上にとって好ましい。干渉性誘電体膜を波長選択性光反射体6として用いる場合に上記のような太陽電池モジュールの表面に対して一定以上の角度をなすように波長選択性光反射体6を配置した場合は、波長選択性光反射体6への光の入射角が垂直入射(入射角0度)とならないため、干渉性誘電体膜の反射波長領域はより短波長に移動する。このため、太陽電池モジュール内の光閉じ込めに有効なモジュール受光面材料に対する臨界角以上となる光の反射率を、目的となる波長λθで向上させるためには、誘電体反射膜への光の入射角をθ、誘電体反射膜中での屈折角をβ、反射体が存在している媒質の屈折率をnmとし、誘電体反射膜の繰り返し単位一つあたりの実効屈折率をne、高誘電率の層の屈折率をn1’、高誘電率の層の膜厚をt1’、低誘電率の層の屈折率をn2’、低誘電率の層の膜厚をt2’、誘電体反射膜へ垂直入射した光の反射光の中心波長をθ0’としたとき、干渉性誘電体膜の各繰り返し単位となる一対の高屈折率層と低屈折率層の各1層ずつの光学膜厚の和(n1’×t1’+n2’×t2’)が、概ね下記の数式(5)を満たす膜厚以上とすることによってさらに高い効果を得ることができる。
具体的には、屈折率1.6程度のポリスチレンフィルムと屈折率1.49程度のポリプロピレンフィルムとの積層体でこのような干渉性の波長選択性光反射体6を形成するには、各々の光学膜厚を420nmから580nm程度の厚さまで除除に増加するようにして交互に200層程度を積層することによって、入射角60度、波長400nmから1100nm程度の範囲で高い反射率を有する干渉性誘電体からなる波長選択性光反射体6を形成することができる。
特に、この干渉性誘電体膜は、太陽電池モジュールの受光面に垂直な成分の光は反射して有効に太陽電池素子に導光する一方で、ガラス−大気界面で有効に反射されて太陽電池素子に有効に導光される光成分は透過率が高くなるため、導光される光の光路は妨げない一方で、太陽電池素子に有効に導光されない太陽電池モジュールの受光面に対して垂直に近い成分の光は選択的に反射して、太陽電池素子に導光することができるという効果を有する。このため、長距離にわたって光を伝送することができるという優れた効果を有する。
上記の干渉性の誘電体膜での光反射が生じる波長範囲を広げるためには、上記λθが変化するように徐々に各構成層の屈折率や膜厚を変化させていってもよく、一般的には等差的に、あるいは等比的に膜厚が増加していくように設計されることが多い。このような理由としては、波長選択性光反射体6を構成する全体の層のなかで上記の式を満たす波長で高い反射率を有する層があればその層がその光学膜厚に対応する波長の光を反射し、膜厚を変動させることによりその光学膜厚に対応する波長領域全体に対して高い反射率を有する波長選択性光反射体6となるためである。
以上のように構成された実施の形態1にかかる太陽電池モジュールにおいては、光反射性を有する干渉性誘電体膜からなる波長選択性光反射体6を、太陽電池モジュールの裏面の耐候性樹脂膜3と封止樹脂4との間に備える。これにより第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2の第2主面側に透過した光の一部を、波長選択性光反射体6により反射させ、両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
また、太陽電池モジュールの第2主面から入射した光の大部分が波長選択性光反射体6を透過することにより、直接またはモジュール−大気界面で反射して両面発電太陽電池素子2へ再入射する。これにより、第2主面から入射した光を発電に寄与させることができる。
したがって、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールにおいては、太陽電池モジュールの第1主面および第2主面から入射した光を発電に寄与させることができるとともに、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2を透過した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができ、発電出力の増大が図られた太陽電池モジュールが実現されている。
また、波長選択性光反射体6は、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成されてもよい。これにより、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の非発電領域へ入射した光の一部を、モジュール−大気界面の臨界角よりも大きい角度となるように、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域の波長選択性光反射体6により太陽電池モジュールの表面へ反射させ、この反射光をモジュール−大気界面で反射させて両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。これにより、非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高め、さらに発電出力の増大が図ることができる。そして、非発電領域の広さをより広く取ることで、より発電出力を向上させることもできる。このような波長選択性光反射体6の表面形状は、例えばモジュール表面に平行な方向に延びる三角柱が平行に並んだ形状が好ましい。
また、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールにおいては、波長選択性光反射体6として誘電体を用いることにより、隣接する太陽電池モジュール間の耐電圧性、絶縁性を高めながら、高い光閉じ込め構造を得ることができる。
また、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールにおいては、波長選択性光反射体6として誘電体を用いることにより、光反射体として金属膜を用いる場合のように封止材の酸化による光反射率の劣化が生じず、高い信頼性を有する太陽電池モジュールが実現されている。
また、一般的に使用されている光散乱による非発電領域から発電領域への導光では、ガラス内から大気へ光が出射してしまい、白く見えていた。これに対し、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールでは、反射体として、例えば一般的な光起電力素子の光吸収領域である可視領域の光を透過させる波長選択性光反射体6を用いることにより、太陽電池素子2間の非発電領域に入射した可視領域の光がモジュールを透過することができる。これにより、非発電領域にシースルー性を持たせることができ、デザイン性に優れた太陽電池モジュールが実現される。
したがって、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールによれば、太陽電池モジュールにおける両主面から入射した光を有効に利用でき、かつ従来は透過により無駄にしていた光を有効に利用することができ、発電出力および意匠性に優れた太陽電池モジュールが実現されている。
なお、上記においては、波長選択性光反射体6を両面発電太陽電池素子2の第2主面よりも耐候性樹脂膜3側であって耐候性樹脂膜3の内側に設けたが、波長選択性光反射体6を耐候性樹脂膜3の外側に設けてもよい。
以上のような実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの作製方法を、両面発電太陽電池素子2として単結晶シリコン太陽電池セル(以下、セル2と呼ぶ)を用いた単結晶シリコン太陽電池モジュールを例として図2−1〜図2−3を参照して説明する。図2−1〜図2−3は、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの作製方法の一例を説明する断面図である。
まず、2つのセル2において一方のセル2の表側電極と他のセル2の裏側電極との間(負極と正極との間)に素子間接続線5として導線を渡しかけ、各電極と導線とを半田付けすることにより、一方のセル2と他方のセル2との電気的接続を行う。この電気的接続を複数のセル2に対して行って全てのセル2を直列接続し、セル2を列状に数珠繋ぎにして一繋ぎにする。
つぎに、透明支持体1の上、たとえば透明ガラス基板の上に、封止樹脂4としてのシート状のエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)を載せ、さらに上記の一繋ぎになった複数のセル2を発電効率が高い側の受光面(第1受光面)が透明ガラス基板側となるように載置する(図2−1)。この上から、封止樹脂4として別のEVAシートを載せ、波長選択性光反射体6として干渉性誘電体フィルムを接着した耐候性樹脂膜3としての耐候性ポリエチレンテレフタラートフィルムを、干渉性誘電体フィルムがEVA側になるように載置する。
つぎに、波長選択性光反射体6に凹凸を付ける場合は、この上に凹凸がついた硬質の板、例えば20μm程度のピラミッド型の凹凸がついた金型21を重ねる(図2−2)。ここで、ピラミッド型の凹凸面は、透明ガラス基板の面内と一定以上の角度をなすように形成されている。波長選択性光反射体6に凹凸を付けない場合は、平板状の金型(図示せず)を重ねる。
そして、上記積層物の全体をダイアフラムによって挟み、減圧下で封止材の軟化点以上の温度に加熱し、封止剤を軟化させて、透明ガラス基板と耐候性ポリエチレンテレフタラートフィルムとの間に圧力を加えてEVAシート間を圧着する(図2−3)。これにより、セル2の第2主面側で、波長選択性光反射体6としての反射性誘電体フィルムがセル2の受光面に対して一定以上の角度をなすような構造を形成することができる。また、波長選択性光反射体6に凹凸を付けない場合は、太陽電池モジュールの第2主面側で、波長選択性光反射体6としての反射性誘電体フィルムが平板状とされた構造(図1−3参照)を形成することができる。
以上のような実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、光反射性を有する干渉性誘電体膜からなる波長選択性光反射体6を、太陽電池モジュールの裏面の耐候性樹脂膜3と封止樹脂4との間に形成する。これにより第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2の第2主面側に透過した光の一部を、波長選択性光反射体6により反射させ、両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
また、太陽電池モジュールの第2主面から入射した光の大部分が波長選択性光反射体6を透過することにより、直接またはモジュール−大気界面で反射して両面発電太陽電池素子2へ再入射する。これにより、第2主面から入射した光を発電に寄与させることができる。
したがって、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池モジュールの第1主面および第2主面から入射した光を発電に寄与させることができるとともに、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2を透過した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができ、発電出力の増大が図られた太陽電池モジュールを作製することができる。
また、波長選択性光反射体6は、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成してもよい。これにより、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の非発電領域へ入射した光の一部を、モジュール−大気界面の臨界角よりも大きい角度となるように、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域の波長選択性光反射体6により太陽電池モジュールの表面へ反射させ、この反射光をモジュール−大気界面で反射させて両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。これにより、非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高め、さらに発電出力の増大が図ることができる。そして、非発電領域の広さをより広く取ることで、より発電出力を向上させることもできる。このような波長選択性光反射体6の表面形状は、例えばモジュール表面に平行な方向に延びる三角柱が平行に並んだ形状が好ましい。
また、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、波長選択性光反射体6として誘電体を用いることにより、隣接する太陽電池モジュール間の耐電圧性、絶縁性を高めながら、高い光閉じ込め構造を得ることができる。
また、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、波長選択性光反射体6として誘電体を用いることにより、光反射体として金属膜を用いる場合のように封止材の酸化による光反射率の劣化が生じず、高い信頼性を有する太陽電池モジュールを作製することができる。
また、一般的に使用されている光散乱による非発電領域から発電領域への導光では、ガラス内から大気へ光が出射してしまい、白く見えていた。これに対し、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの製造方法では、反射体として、例えば一般的な光起電力素子の光吸収領域である可視領域の光を透過させる波長選択性光反射体6を用いることにより、太陽電池素子2間の非発電領域に入射した可視領域の光がモジュールを透過することができる。これにより、非発電領域にシースルー性を持たせることができ、デザイン性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。
したがって、実施の形態1にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池モジュールにおける両主面から入射した光を有効に利用でき、かつ従来は透過により無駄にしていた光を有効に利用することができ、発電出力および意匠性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2にかかる光起電力素子モジュールである太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。実施の形態2にかかる太陽電池モジュールは、透明支持体1、両面発電可能な両面発電太陽電池素子2、耐候性樹脂膜3、封止樹脂14、素子間接続線5、波長選択性光反射体小片16を備える。この太陽電池モジュールにおいては、透明支持体1側の主面を第1主面、耐候性樹脂膜3側の主面を第2主面とする。
透明支持体1としては、透明ガラスなどの光透過性を有する材料が使用され、例えば屈折率が1.5程度の板ガラスなどを用いることができる。両面発電太陽電池素子2としては、例えば単結晶シリコン太陽電池セルなどの結晶系シリコン太陽電池セルを用いることができる。耐候性樹脂膜3としては、例えば透明ポリエチレンテレフタラート樹脂や反射材として白色顔料を練りこんだポリエチレンテレフタラート樹脂などを用いることができる。封止樹脂14としては、例えば屈折率が1.5程度のエチレンビニルアセテート(EVA)を用いることができる。素子間接続線5としては、例えば銅線を用いることができる。
波長選択性光反射体小片16は、隣接する両面発電太陽電池素子2間に対応する領域および両面発電太陽電池素子2の第2主面よりも耐候性樹脂膜3側に配置され、両面発電太陽電池素子2を透過する波長の光を選択的に反射するとともに、それ以外の波長でかつ両面発電太陽電池素子2で吸収可能な波長の光を透過可能である光反射体である。すなわち、波長選択性光反射体小片16は、特定の波長の光を選択的に反射し、それ以外の波長の光は透過させる光反射体である。波長選択性光反射体6としては、正反射性を有する光反射体として例えばチタニア粒子膜、屈折率1.3程度のテトラフルオロエチレンやポリエチレンの密度や含有無機粒子などを変えることにより屈折率を変えたフィルムを積層した誘電体などを用いることができる。また、波長選択性光反射体小片16としては、一般的な光起電力素子の光吸収領域である可視領域の光を透過させる光反射体を用いることができる。そして、波長選択性光反射体小片16は、隣接する両面発電太陽電池素子2の間および両面発電太陽電池素子2の裏面側に配置されている。
ここで、波長選択性光反射体小片16から反射した光のガラスへの光の入射角θが、上記の数式(3)の条件を満たす角度θC(臨界角)以上となるように、正反射性の高い波長選択性光反射体小片16が太陽電池モジュールの受光面に対してなす角αを一定以上の角度、θC/2以上の角度となるように斜面(光反射面)を形成することにより、両面発電太陽電池素子2の領域以外の領域に入射して太陽電池モジュール裏面に到達した光が反射され両面発電太陽電池素子2に導光されるようになり、発電出力に優れた太陽電池モジュールを得ることができる。したがって、波長選択性光反射体小片16は、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成される。
両面発電太陽電池素子2の厚さとしては、300nm〜500μm程度であり、この両面発電太陽電池素子2を封止する封止樹脂14の厚みは100μm〜数ミリ程度であることが一般的である。このことから、波長選択性光反射体小片16の大きさとしては、光の干渉が生じない数μm以上の大きさであり、また封止樹脂14に入りきる数ミリメートル程度以下の大きさであり、また厚みとしては数μm〜数百μmとなる。ただし、太陽電池モジュールの構成に合わせて適宜変更可能である。
以上のように構成された実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、波長選択性光反射体小片16を、封止樹脂14における隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域および両面発電太陽電池素子2の第2主面側の領域に備える。ここで、波長選択性光反射体小片16は、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成される。
これにより、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の非発電領域へ入射した光の一部を、モジュール−大気界面の臨界角よりも大きい角度となるように、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域の波長選択性光反射体小片16により太陽電池モジュールの表面へ反射させ、この反射光をモジュール−大気界面で反射させて両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
また、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2の第2主面側に透過した光の一部を、両面発電太陽電池素子2の第2主面側の領域の波長選択性光反射体小片16により反射させ、両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
また、太陽電池モジュールの第2主面から入射した光の大部分が封止樹脂14における隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域および両面発電太陽電池素子2の第2主面側の領域の波長選択性光反射体小片16を透過することにより、直接またはモジュール−大気界面で反射して両面発電太陽電池素子2へ再入射する。これにより、第2主面から入射した光を発電に寄与させることができる。
したがって、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、太陽電池モジュールの第1主面および第2主面から入射した光を発電に寄与させることができるとともに、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2を透過した光および非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができ、発電出力の増大が図られた太陽電池モジュールが実現されている。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができるため、非発電領域の両面発電太陽電池素子2に対する面積比を増大することにより、両面発電太陽電池素子2の面積を増大させることなく、発電出力を増大できるという効果も奏する。この場合、目的により非発電領域の広さをより広く取ることもできる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、光反射体の傾斜面が連続膜でなく小片で構成されることにより、反射体に曲げ応力が生じず、光反射体の積層誘電体膜の剥離を防ぐことができる。
また、一般的に使用されている光散乱による非発電領域から発電領域への導光では、ガラス内から大気へ光が出射してしまい、白く見えていた。これに対し、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールでは、反射体として、例えば一般的な光起電力素子の光吸収領域である可視領域の光を透過させる波長選択性光反射体小片16を用いることにより、太陽電池素子2間の非発電領域に入射した可視領域の光がモジュールを透過することができる。これにより、非発電領域にシースルー性を持たせることができ、デザイン性に優れた太陽電池モジュールが実現される。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、太陽電池モジュールを透過する透過光の波長領域を変えて、透過光の色を制御することによりデザイン性を更に向上させることができる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、波長選択性光反射体小片16として誘電体を用いることにより、隣接する太陽電池モジュール間の耐電圧性、絶縁性を高めながら、高い光閉じ込め構造を得ることができる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、波長選択性光反射体小片16として誘電体を用いることにより、光反射体として金属膜を用いる場合のように封止材の酸化による光反射率の劣化が生じず、高い信頼性を有する太陽電池モジュールが実現されている。
したがって、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールによれば、太陽電池モジュールにおける両主面から入射した光を有効に利用でき、かつ従来は透過により無駄にしていた光を有効に利用することができ、発電出力および意匠性に優れた太陽電池モジュールが実現されている。
なお、封止樹脂14における両面発電太陽電池素子2の第2主面側の領域には太陽電池モジュールの受光面と略平行な光反射面を有する波長選択性光反射体小片16を配置し、封止樹脂14における隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域には太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成される波長選択性光反射体小片16を配置してもよい。この場合も上記の実施の形態2にかかる太陽電池モジュールと同様の効果を得ることができる。
以上のような実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの作製方法を、両面発電太陽電池素子2として単結晶シリコン太陽電池セル(以下、セル2と呼ぶ)を用いた単結晶シリコン太陽電池モジュールを例として図4−1〜図4−4を参照して説明する。図4−1〜図4−4は、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの作製方法を説明する断面図である。
まず、2つのセル2において一方のセル2の表側電極と他のセル2の裏側電極との間(負極と正極との間)に素子間接続線5として導線を渡しかけ、各電極と導線とを半田付けすることにより、一方のセル2と他方のセル2との電気的接続を行う。この電気的接続を複数のセル2に対して行って全てのセル2を直列接続し、セル2を列状に数珠繋ぎにして一繋ぎにする。
透明支持体1としての透明ガラス基板の上に封止樹脂14となるエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)シート14aを載置する。ここで、EVAシート14aの片面にはピラミッド形状になるようにエンボス加工が施されており、このピラミッド形状が上を向くように載置する。また、ピラミッド形状の凹凸面は、透明ガラス基板と一定以上の角度をなすように形成されている。
つぎに、EVAシート14a上に、上記の一繋ぎになった複数のセル2を、発電効率が高い側の受光面が透明ガラス基板側となるように載置する(図4−1)。
つぎに、EVAシート14aにおける隣接するセル2間の領域に波長選択性光反射体小片16を撒く(図4−2)。波長選択性光反射体小片16は、エンボス加工面のピラミッド形状の凹凸面に沿って配置する。波長選択性光反射体小片16としては、例えば屈折率1.6程度のポリスチレンフィルムと屈折率1.49程度のポリプロピレンとを、各々の光学膜厚を210nmから290nm程度の厚さまで徐々に増加するようにしてポリスチレンフィルムとポリプロピレンとを交互に200層程度を積層したものを1ミリメートル角程度に裁断したフィルム片を用いる。
つぎに、波長選択性光反射体小片16として上記のフィルム片が混入されるとともに片面がエンボス加工されたエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)シート14bを、エンボス加工された面をセル2に向けて載置する。さらに、この上に、耐候性樹脂膜3としての耐候性ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムや水分バリア層を有する積層体を耐候性ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを外側に向けて載置する(図4−3)。このようなフィルム片入りEVAシート14bは、フィルム片をエチレンビニルアセテート原料液に加えることで作製することができる。
つぎに、各部材を積層した積層体を、ダイアフラムに挟み、減圧下で封止材の軟化点以上の温度に加熱することで封止材であるEVAシート14a、14bを軟化させる。そして、透明ガラス基板と耐候性ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムとの間に圧力を加えてEVAシート14aとEVAシート14b間とを圧着する(図4−4)。
あらかじめ封止材を、反射光のモジュール−大気界面への入射角が臨界角以上となるような斜面を持った凹凸形状に成形しておくことにより、隣接するセル2間で波長選択性光反射体小片16が太陽電池モジュールの受光面に対して一定以上の角度をなすような構造を形成することができる。
EVAシート14bの形成時においては、フィルム片の主面の向きが該シートと平行方向になりやすい。このため、上記の圧着の際に、EVAシート14aおよびEVAシート14bが軟化した状態で平板同士を平行方向に移動させることにより、EVAシート14b内に含まれる波長選択性光反射体小片16が透明ガラス基板と一定以上の角度をなすようにできる。
これにより、セル2の第2主面側および隣接するセル2間で波長選択性光反射体小片16の光反射面がセル2の受光面に対してなす角度を調整して、一定以上の角度をなすような構造を形成することができる。
以上のように構成された実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、波長選択性光反射体小片16を、封止樹脂14における隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域および両面発電太陽電池素子2の第2主面側の領域に形成する。ここで、波長選択性光反射体小片16は、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成される。
これにより、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の非発電領域へ入射した光の一部を、モジュール−大気界面の臨界角よりも大きい角度となるように、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域の波長選択性光反射体小片16により太陽電池モジュールの表面へ反射させ、この反射光をモジュール−大気界面で反射させて両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
また、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2の第2主面側に透過した光の一部を、両面発電太陽電池素子2の第2主面側の領域の波長選択性光反射体小片16により反射させ、両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
また、太陽電池モジュールの第2主面から入射した光の大部分が封止樹脂14における隣接する両面発電太陽電池素子2の間の領域および両面発電太陽電池素子2の第2主面側の領域の波長選択性光反射体小片16を透過することにより、直接またはモジュール−大気界面で反射して両面発電太陽電池素子2へ再入射する。これにより、第2主面から入射した光を発電に寄与させることができる。
したがって、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池モジュールの第1主面および第2主面から入射した光を発電に寄与させることができるとともに、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2を透過した光および非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができ、発電出力の増大が図られた太陽電池モジュールを作製することができる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールにおいては、非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができるため、非発電領域の両面発電太陽電池素子2に対する面積比を増大することにより、両面発電太陽電池素子2の面積を増大させることなく、発電出力を増大できるという効果も奏する。この場合、目的により非発電領域の広さをより広く取ることもできる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、光反射体の傾斜面が連続膜でなく小片で形成するため、光反射体に曲げ応力が生じず、光反射体の積層誘電体膜の剥離を防ぐことができる。
また、一般的に使用されている光散乱による非発電領域から発電領域への導光では、ガラス内から大気へ光が出射してしまい、白く見えていた。これに対し、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、一般的な光起電力素子の光吸収領域である可視領域の光を透過させる波長選択性光反射体小片16を用いているため太陽電池素子2間の非発電領域に入射した光がモジュールを透過することができる。これにより、非発電領域にシースルー性を持たせることができ、デザイン性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池モジュールを透過する透過光の波長領域を変えて、透過光の色を制御することによりデザイン性を更に向上させることができる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、波長選択性光反射体小片16として誘電体を用いることにより、金属による反射体に比べて、隣接する太陽電池モジュール間の耐電圧性、絶縁性を高めながら、高い光閉じ込め構造を得ることができる。
また、実施の形態2にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、波長選択性光反射体小片16として誘電体を用いることにより、光反射体として金属膜を用いる場合のように封止材の酸化による光反射率の劣化が生じず、高い信頼性を得ることができる。
したがって、実施の形態2にかかる太陽電池モジュール製造方法によれば、太陽電池モジュールにおける両主面から入射した光を有効に利用でき、かつ従来は透過により無駄にしていた光を有効に利用することができ、発電出力および意匠性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3にかかる光起電力素子モジュールである太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。実施の形態3にかかる太陽電池モジュールは、透明支持体1、両面発電可能な両面発電太陽電池素子2、耐候性樹脂膜3、封止樹脂24、素子間接続線5、光反射体26a、波長選択性光反射体26bを備える。この太陽電池モジュールにおいては、透明支持体1側の主面を第1主面、耐候性樹脂膜3側の主面を第2主面とする。
透明支持体1としては、透明ガラスなどの光透過性を有する材料が使用され、例えば屈折率が1.5程度の板ガラスなどを用いることができる。両面発電太陽電池素子2としては、例えば単結晶シリコン太陽電池セルなどの結晶系シリコン太陽電池セルを用いることができる。耐候性樹脂膜3としては、例えば透明ポリエチレンテレフタラート樹脂や反射材として白色顔料を練りこんだポリエチレンテレフタラート樹脂などを用いることができる。封止樹脂24としては、例えば屈折率が1.5程度のエチレンビニルアセテート(EVA)を用いることができる。素子間接続線5としては、例えば銅線を用いることができる。
波長選択性光反射体26bは、両面発電太陽電池素子2を透過する波長の光を選択的に反射するとともに、それ以外の波長でかつ両面発電太陽電池素子2で吸収可能な波長の光を透過可能である光反射体である。すなわち、波長選択性光反射体26bは、特定の波長の光を選択的に反射し、それ以外の波長の光は透過させる光反射体である。光反射体26aは光反射体であり、波長選択性を有していてもよく、波長選択性光反射体26bとともに例えば光反射性を有する干渉性誘電体膜を用いることができる。また、反射体26aは、連続膜によって光起電力素子モジュールの裏面の光起電力素子間にあたる部分に形成されていてもよいが、以下では小片とした場合について記述する。光反射体26aとしては、反射率の高い金属膜や二酸化チタン粒子を用いることができる。
光反射性を有する干渉性誘電体膜としては、誘電率の異なる誘電体層が少なくとも2層以上積層してなる膜を用いることができる。前記の膜としては、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニアなどの無機膜からなり、高屈折率を有する高屈折率層と低屈折率を有する低屈折率層とを交互に積層したものや、テトラフルオロエチレン(屈折率1.3程度)やポリエチレン、ポリスチレンポリカーボネートなどの密度を変えることにより屈折率を変えた高分子フィルムなどからなり、高屈折率を有する高屈折率層と低屈折率を有する低屈折率層とを交互に積層したものを用いることができる。このような誘電体膜の屈折率を変化させるためにシリカ、ジルコニア、チタニアなどの無機膜との積層体、あるいは無機粒子と有機物との混合体を使用することもできる。このような誘電体積層膜による光反射体26aおよび波長選択性光反射体26bに用いる各層の構成材は、光起電力素子の光吸収波長域で光吸収がないことが望ましい。
また、各低屈折率層と各高屈折率層とは、高誘電率の層の屈折率をn1、高誘電率の層の膜厚をt1、低誘電率の層の屈折率をn2、低誘電率の層の膜厚をt2、光反射体26a、波長選択性光反射体26bでの光反射波長をλ0とすると、上記の数式(2)の条件を満たすように各層の膜厚および屈折率を調整することにより、波長λ0で光反射を生じる光反射体26aおよび波長選択性光反射体26bを得ることができる。一般には高屈折率層と低屈折率層との各層の光学膜厚がそれぞれ等しくなるように設計されている。この光反射体の反射率を高く保つ波長範囲の最適範囲は、太陽電池の波長ごとの発電感度によって異なるため、それに合わせた設計を行う必要がある。
また、上記の干渉性の誘電体膜での光反射が生じる波長範囲を広げるためには、上記λ0が変化するように徐々に各構成層の屈折率や膜厚を変化させていってもよく、一般的には等差的に、あるいは等比的に膜厚が増加していくように設計されることが多い。このような理由としては、光反射体26aおよび波長選択性光反射体26bを構成する全体の層のなかで上記の式を満たす波長で高い反射率を有する層があればその層がその波長の光を反射し、膜厚を変動させることにより、対象とする波長領域全体に対して高い反射率を有する光反射体26aおよび波長選択性光反射体26bとなるためである。
一般的に、各低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が大きい方が、構成層数が小さくても高い反射率を広い波長範囲で得ることができるが、各低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が小さい場合は、構成層数を増やすことによって大きな反射率を広い波長領域で得ることができる。
このような干渉性の光反射体としては、例えば、赤外線領域の光を選択的に反射あるいは透過させるホットミラーやコールドミラーといわれるものがある。無機誘電体多層膜のほかにも、例えば特許文献2に示される多層高分子膜があり、実際の商品としては、700nmよりも長波長の光を反射する住友スリーエム社製Nano−90Sなどがあるが、第1主面に入射した光のうち光起電力素子を透過する光を反射し、第1主面の反対側から入射する光を透過させる目的のためには、例えば200μm程度の厚みを持つ結晶シリコン太陽電池であれば光吸収が微弱な900nm〜1200nm程度の領域で反射率が高く、光吸収が十分大きく光が素子を透過しない900nm程度以下の波長領域では光透過性を有するフィルムが好ましい。この波長領域は材料以外にも光発電素子の厚さによっても変化し、例えば結晶シリコン太陽電池の場合であれば100μm程度の厚みの場合は850nm〜1200nm程度の長波長の光の一部が吸収されずに透過してしまうため、これに合わせて反射する波長の設計を行う必要がある。
このような光反射体として、干渉性誘電体膜を用いて高い反射率を有するものを形成するためには、具体的には例えば屈折率約2.5の二酸化チタン膜と屈折率約1.45の酸化シリコン膜とをこれらの光学膜厚がともに250nmとなるように蒸着により光起電力素子の上に交互に11層程度以上積層することにより、800nm〜1200nmの波長範囲における光の反射が高く、かつ光反射体への入射角において0度の光の反射が高い光反射体を形成することができる。
この際、300nm〜800nmの波長領域の光のシリコンに対する光吸収量、および感度を増大させるために、両面発電太陽電池素子2における第2主面側の表面には反射防止膜および不活性化膜(パッシベーション膜)としてシリコン窒化膜やアモルファスシリコンと酸化スズの積層膜やシリコン酸化膜と二酸化チタン膜との積層膜などが形成されていることが好ましい。具体的には、約30nm程度のシリコン酸化膜と20nm程度の二酸化チタン膜が第2主面側の表面に形成された単結晶シリコン太陽電池の第2主面側表面上に、屈折率約2.5の二酸化チタン膜と屈折率約1.45の酸化シリコン膜とを、酸化シリコン膜が最外層となるように且つこれらの光学膜厚がともに250nmとなるように電子ビーム蒸着などにより交互に11層程度以上積層する。これにより、太陽電池モジュールの第2主面から入射してくる光と、シリコンの吸収が少なく光反射体で反射する波長領域の光とで発電することができる。このような800nm以上の波長の光を反射する誘電体積層膜の例としては国際公開第2003/001609号等がある。
また、例えば屈折率1.6程度のポリスチレンフィルムと屈折率1.49程度のポリプロピレンとのような屈折率の差が小さい積層体でこのような干渉性の光反射体を形成するには、各々の光学膜厚を200nmから300nm程度の厚さまで等差的に増加するようにしてポリスチレンフィルムとポリプロピレンとを交互に250層程度積層することによって800nmから1200nm程度の波長範囲で高い反射率を有する誘電体干渉性光反射体を形成することができる。一般的に、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が大きい方が高い反射率を得ることができるため、屈折率のより低いテトラフルオロエチレンや屈折率のより高いジルコニア含有ポリスチレンなどとの組み合わせにより、さらに反射性に優れた光反射体を作ることができる。
光起電力素子の第1主面もしくは第2主面の表面が反射防止などのために凹凸構造を持つ場合、光反射体26aおよび波長選択性光反射体26bへの光の入射角が垂直入射(入射角0度)とならないため、干渉性誘電体膜の反射率は低下する。このため、誘電体反射膜への光の入射角をβとしたとき、干渉性誘電体膜の各繰り返し単位となる一対の高屈折率層と低屈折率層の各1層ずつの光学膜厚の和を、概ね上記の数式(5)を満たす膜厚以上とすることによってさらに高い効果を得ることができる。
具体的には、例えば、概ねシリコンの(100)となる角度でスライスされた単結晶シリコンウェハ上に形成されたシリコン(111)面は、シリコン(100)面に対しおおよそ54.7度の角度をなす。このため、第1主面の(100)面に対して垂直入射した光は(111)からなるピラミッド状の凹凸構造から形成される第1主面を有する太陽電池素子に入射し、その反対側の面に対して入射角約40度で光が入射する。この場合、屈折率1.6程度のポリスチレンフィルムと屈折率1.49程度のポリプロピレンとの積層体でこのような干渉性の光反射体26aおよび波長選択性光反射体26bを形成するには、各々の光学膜厚を約240nmから360nm程度の厚さまで徐々に増加するようにして交互に250層程度を積層することによって、入射角約45度、おおよそ波長800nmから1200nm程度の範囲で高い反射率を有する干渉性誘電体膜からなる光反射体26aおよび波長選択性光反射体26bを形成することができる。
特に、この干渉性誘電体膜は、太陽電池モジュールの受光面に垂直な成分の光は反射して有効に太陽電池素子に導光する一方で、ガラス−大気界面で反射されて太陽電池素子に有効に導光される光成分は透過率が高くなるため、導光される光の光路は妨げない一方で、太陽電池素子に有効に導光されない太陽電池モジュールの受光面に対して垂直に近い成分の光は選択的に反射して、太陽電池素子に導光することができるという効果を有する。このため、長距離にわたって光を伝送することができるという優れた効果を有する。
また、波長選択性光反射体26bとしては、例えばチタニア粒子膜、屈折率1.3程度のテトラフルオロエチレンやポリエチレンの密度や含有無機粒子などを変えることにより屈折率を変えたフィルムを積層した波長選択性を有する干渉性誘電体反射膜を用いることができる。波長選択性を有さない光反射体26aとしてアルミフォイルなどの金属箔を用いることができる。そして、この場合、光反射体26aは、両面発電太陽電池素子2の正極と負極、素子間接続線5間を短絡しないように隣接する両面発電太陽電池素子2間の領域および両面発電太陽電池素子2よりも裏面側において隣接する両面発電太陽電池素子2間に対応する領域の封止樹脂24中に複数列に配置されている。
ここで、光反射体26aから反射した光のガラスへの光の入射角θが上記の数式(3)の条件を満たす角度θC(臨界角)以上となるように、正反射性の高い光反射体26aを太陽電池モジュールの受光面に対して一定以上の角度、θc/2以上の角度がつくように斜面(光反射面)を形成する。これにより、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の非発電領域へ入射した光の一部を、光反射体26aにより太陽電池モジュールの表面へ反射させ、この反射光をモジュール−大気界面で反射させて両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。また、太陽電池モジュールの第2主面から入射した光の大部分が光反射体26aが保持された領域で反射され、モジュール第2主面表面で再反射し、波長選択性光反射体26bを透過することにより第2主面から入射した光を発電に寄与させることができる。したがって、隣接する光起電力素子間の領域に存在する光反射体26aが、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成されることによってモジュール第2主面からの入射光をセル第2主面で受光し発電すると共に、隣接する光起電力素子間の領域に入射した光を光起電力素子に導くことができ、発電出力に優れた太陽電池モジュールを達成できる。
両面発電太陽電池素子2の厚さとしては、300nm〜500μm程度であり、この両面発電太陽電池素子2を封止する封止樹脂24の厚みは100μm〜数ミリ程度であることが一般的である。このことから、光反射体26aの大きさとしては、光の干渉が生じない数μm以上の大きさであり、また封止樹脂24に入りきる数ミリメートル程度以下の大きさであり、また厚みとしては数μm〜数百μmとなる。ただし、太陽電池モジュールの構成に合わせて適宜変更可能である。また、金属による高い反射率の利点を生かし、光反射体26aとして金属箔等を用いた場合は、両面発電太陽電池素子2の正極と負極の間を短絡しないようにするために50mm以下の大きさが望ましい。
また、波長選択性光反射体26bは、両面発電太陽電池素子2の裏面(発電効率の低い面)に設けられる。波長選択性光反射体26bは、両面発電太陽電池素子2を透過して該両面発電太陽電池素子2の裏面に到達した光を反射して、両面発電太陽電池素子2に再度入射させて、太陽電池素子2に吸収させる。その一方で、太陽電池モジュールの第2主面から入射してきた光の大部分は、波長選択性光反射体26bを透過して両面発電太陽電池素子2に吸収されて発電に寄与する。このため、太陽電池モジュールにおける両主面から入射した光を有効に利用でき、かつ従来は透過により無駄にしていた光を有効に利用することができる。
また、太陽電池素子を光が透過する場合は、透過光が熱に変換されて住宅の屋根等の太陽電池モジュールの設置場所の温度が上昇する。しかし、本発明によれば透過光のエネルギー量を減らすことができるため透過光による温度上昇を抑制することができる。
以上のように構成された実施の形態3にかかる太陽電池モジュールにおいては、光反射体26aを、隣接する両面発電太陽電池素子2間の領域および両面発電太陽電池素子2よりも裏面側において隣接する両面発電太陽電池素子2間に対応する領域の封止樹脂24中に複数列にわたって備える。ここで、光反射体26aは、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成される。
これにより、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の非発電領域へ入射した光の一部を、モジュール−大気界面の臨界角よりも大きい角度となるように、光反射体26aにより太陽電池モジュールの表面へ反射させ、この反射光をモジュール−大気界面で反射させて両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。さらに、前列(両面発電太陽電池素子2側)の光反射体26aの間を抜けて太陽電池モジュールの裏面に回った光を後列(耐候性樹脂膜3側)の光反射体26aにより両面発電太陽電池素子2側に反射させ、前列の波長選択性光反射体26bを透過させて太陽電池素子2に導光させることができる。これにより、光の利用効率をさらに高めることができる。
また、以上のように構成された実施の形態3にかかる太陽電池モジュールにおいては、波長選択性光反射体26bを、両面発電太陽電池素子2の裏面(発電効率の低い面)に備える。これにより、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2の裏面に達した光を、波長選択性光反射体26bにより反射させ、両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
したがって、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールにおいては、太陽電池モジュールの第1主面および第2主面から入射した光を発電に寄与させることができるとともに、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2を透過した光および非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができ、発電出力の増大が図られた太陽電池モジュールが実現されている。
また、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールにおいては、非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができるため、非発電領域の両面発電太陽電池素子2に対する面積比を増大することにより、両面発電太陽電池素子2の面積を増大させることなく、発電出力を増大できるという効果も奏する。この場合、目的により非発電領域の広さをより広く取ることもできる。
また、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールにおいては、光反射体26aの傾斜面が連続膜でなく小片で構成されることにより、反射体に曲げ応力が生じず、光反射体の積層誘電体膜の剥離を防ぐことができる。
また、一般的に使用されている光散乱による非発電領域から発電領域への導光では、ガラス内から大気へ光が出射してしまい、白く見えていた。これに対し、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールでは、太陽電池素子2間の非発電領域に入射した光を透明支持体1−大気界面で反射させて透明支持体1から光が出射しないようにしているため、光反射体26aがある非発電領域は暗く見える。これにより、非発電領域の色を、一般的に黒に近い色をした太陽電池素子により近い色とすることができ、デザイン性に優れた太陽電池モジュールが実現されている。
したがって、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールによれば、太陽電池モジュールにおける両主面から入射した光を有効に利用でき、かつ従来は透過により無駄にしていた光を有効に利用することができ、発電出力および意匠性に優れた太陽電池モジュールが実現されている。
以上のような実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの作製方法を、両面発電太陽電池素子2として単結晶シリコン太陽電池セル(以下、セル2と呼ぶ)を用いた単結晶シリコン太陽電池モジュールを例として図6−1〜図6−3を参照して説明する。図6−1〜図6−3は、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの作製方法を説明する断面図である。
まず、2つのセル2において一方のセル2の表側電極と他のセル2の裏側電極との間(負極と正極との間)に素子間接続線5として導線を渡しかけ、各電極と導線とを半田付けすることにより、一方のセル2と他方のセル2との電気的接続を行う。この電気的接続を複数のセル2に対して行って全てのセル2を直列接続し、セル2を列状に数珠繋ぎにして一繋ぎにする。なお、セル2の第2主面側(発電効率の低い面側)には上述した干渉性誘電体膜からなる波長選択性光反射体26bを設けてある。
透明支持体1としての透明ガラス基板の上に封止樹脂24となるエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)シート24aを載置する。ここで、EVAシート24aの片面にはピラミッド形状になるようにエンボス加工が施されており、このピラミッド形状が上を向くように載置する。また、ピラミッド形状の凹凸面は、透明ガラス基板と一定以上の角度をなすように形成されている。
つぎに、EVAシート24a上に、上記の一繋ぎになった複数のセル2を、発電効率が高い側の受光面が透明ガラス基板側となるように載置する(図6−1)。
つぎに、EVAシート24aにおける隣接するセル2間の領域に光反射体26aを撒く。つぎに、光反射体26aとしてアルミフォイル片が混入されるとともに片面がピラミッド形状になるようにあらかじめエンボス加工されたエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)シート24bの表面を短時間軟化させる。このようなEVAシート24bは、アルミフォイル片をエチレンビニルアセテート原料液に加えることで作製することができる。
そして、EVAシート24bが軟化している間に、厚み10μm程度のアルミフォイルを該EVAシート24bのエンボス加工が施された片面に接着する。つぎに、EVAシート24bの片面に接着されたアルミフォイルを、レーザー等を用いてたとえば1mm角程度の格子状のアルミフォイルパターンに切り分けて、各アルミフォイルパターン間を絶縁する。なお、ここではレーザーにより各アルミフォイルパターン間の絶縁を行ったが、もともとアルミ箔の小片になっているものをエンボス加工が施されたEVAシート24bの片面に軽く敷き詰めてもよい。
つぎに、このEVAシート24bを、上記の一繋ぎになった複数のセル2の上にエンボス加工された面をセル2に向けて載置する。さらに、この上に、耐候性樹脂膜3としての耐候性ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムや水分バリア層を有する積層体を耐候性ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを外側に向けて載置する(図6−2)。
つぎに、各部材を積層した積層体をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシートで挟み(図示せず)、減圧下で100℃程度に加熱することで封止材であるEVAシート24aとEVAシート24bを軟化させる。そして、透明ガラス基板と耐候性ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムとの間に圧力を加えてEVAシート24aとEVAシート24b間を圧着する(図6−3)。
あらかじめ封止材を、反射光のモジュール−大気界面への入射角が臨界角以上となるような斜面を持った凹凸形状に成形しておくことにより、隣接するセル2間で光反射体26aがセル2の受光面に対して一定以上の角度をなすような構造を形成することができる。
EVAシート24bの形成時においては、フィルム片の主面の向きが該シートと平行方向になりやすい。このため、上記の圧着の際に、EVAシート24aおよびEVAシート24bが軟化した状態で平板同士を平行方向に移動させることにより、EVAシート24b内に含まれる光反射体26aが透明ガラス基板と一定以上の角度をなすようにできる。
これにより、セル2の第2主面側および隣接するセル2間で光反射体26aの光反射面が太陽電池モジュールの受光面に対してなす角度を調整して、一定以上の角度をなすような構造を形成することができる。
以上のような実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、光反射体26aを、隣接する両面発電太陽電池素子2間の領域および両面発電太陽電池素子2よりも裏面側において隣接する両面発電太陽電池素子2間に対応する領域の封止樹脂24中に複数列にわたって形成する。ここで、光反射体26aは、太陽電池モジュールの受光面と上記の数式(4)で示す一定の角度αC以上の角度をなす斜面(光反射面)によって主に構成する。
これにより、隣接する両面発電太陽電池素子2の間の非発電領域へ入射した光の一部を、モジュール−大気界面の臨界角よりも大きい角度となるように、光反射体26aにより太陽電池モジュールの表面へ反射させ、この反射光をモジュール−大気界面で反射させて両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。さらに、前列(両面発電太陽電池素子2側)の光反射体26aの間を抜けて太陽電池モジュールの裏面に回った光を後列(耐候性樹脂膜3側)の光反射体26aとして働くアルミフォイル小片により両面発電太陽電池素子2側に反射させ、前列の光反射体26aに反射させて太陽電池素子2に導光させることができる。これにより、光の利用効率をさらに高めることができる。
また、以上のように構成された実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、波長選択性光反射体26bを、両面発電太陽電池素子2の裏面(発電効率の低い面)に形成する。これにより、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2の裏面に達した光を、波長選択性光反射体26bにより反射させ、両面発電太陽電池素子2へ再入射させることができる。
また、太陽電池モジュールの第2主面から入射した光の大部分が波長選択性光反射体26bを透過することにより、直接両面発電太陽電池素子2へ入射し、また光反射体26aで反射し、モジュール−大気界面で再反射して両面発電太陽電池素子2へ再入射する。これにより、第2主面から入射した光を発電に寄与させることができる。
したがって、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの製造方法よれば、太陽電池モジュールの第1主面および第2主面から入射した光を発電に寄与させることができるとともに、第1主面から入射して両面発電太陽電池素子2が吸収しきれずに両面発電太陽電池素子2を透過した光および非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができ、発電出力の増大が図られた太陽電池モジュールを作製することができる。
また、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、非発電領域に入射した光を両面発電太陽電池素子2へ再入射させて光の利用効率を高めることができるため、非発電領域の両面発電太陽電池素子2に対する面積比を増大することにより、両面発電太陽電池素子2の面積を増大させることなく、発電出力を増大できるという効果も奏する。この場合、目的により非発電領域の広さをより広く取ることもできる。
また、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの製造方法においては、光反射体26aを小片で構成することにより、絶縁性に優れた反射体を形成することができる。
また、一般的に使用されている光散乱による非発電領域から発電領域への導光では、ガラス内から大気へ光が出射してしまい、白く見えていた。これに対し、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの製造方法では、太陽電池素子2間の非発電領域に入射した光を透明支持体1−大気界面で反射させて透明支持体1から光が出射しないようにしているため、光反射体26aがある非発電領域は暗く見える。これにより、非発電領域の色を、一般的に黒に近い色をした太陽電池素子により近い色とすることができ、デザイン性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。
したがって、実施の形態3にかかる太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池モジュールにおける両主面から入射した光を有効に利用でき、かつ従来は透過により無駄にしていた光を有効に利用することができ、発電出力および意匠性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。