JP6086779B2 - 太陽電池モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池モジュールに関するものである。
太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池モジュールは、大気汚染や地球温暖化などの環境問題に対応して、二酸化炭素を排出せずに発電できるクリーンなエネルギー源として注目されている。
太陽電池モジュールは、発電効率を上げるために、様々な工夫がなされている。このような太陽電池モジュールとしては、例えば、太陽光発電素子に対する太陽光の入射角度を制御するもの、あるいは太陽電池モジュール内に入射した太陽光を当該モジュール内に閉じ込めるようにしたもの等が知られている。ここで、「閉じ込める」とは、例えば、太陽電池モジュール内に入射した太陽光が当該モジュールと空気との界面において空気中に出射することなく全反射等することをいう。
特許文献1には、回折格子を設けた太陽電池モジュールが開示されている。この太陽電池モジュールでは、当該モジュール内に入射した太陽光が回折格子において回折されて太陽電池素子に戻るように構成されている。また、回折角度が所定値以上の場合、回折された太陽光は、透明プラスチック基板において全反射する。これにより、太陽電池モジュール内に入射した太陽光を当該モジュール内に閉じ込めようとしている。
特開2001−127313号公報
特許文献1における太陽電池モジュールでは、回折格子を用いて太陽光を当該モジュール内に閉じ込めることがある程度可能となっている。しかしながら、回折格子は、入射光を回折するための微細な加工を施すことによって形成されるため、回折格子の作製は容易ではなかった。また、特許文献1のように回折格子を設けた場合であっても、発電効率の向上は必ずしも十分ではなかった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることの可能な太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、太陽光入射面を有する透明基材と、前記透明基材よりも太陽から遠い側に位置し、かつ、太陽光を反射する面を有する反射面と、前記透明基材及び前記反射面の間に設けられ、太陽光発電素子を有する太陽光発電層とを備える太陽電池モジュールであって、前記反射面は、前記透明基材の前記太陽光入射面に対して非平行の第1の面及び第2の面を有し、少なくとも前記第1の面は太陽光を反射する面であり、前記第1の面と前記第2の面との境界は、前記太陽光発電層に向かって凸となる方向に峰を形成しており、前記第1の面の前記境界から離間する側の端部と、前記第2の面の前記境界から離間する側の端部との間隔は、100μmより大きく形成されており、かつ、前記透明基材の屈折率をn、前記透明基材の前記太陽光入射面に対する前記第1の面の傾斜角(ただし、太陽から遠い側の角度)をθnR、前記透明基材の前記太陽光入射面の垂線と、前記太陽光入射面に入射する太陽光とがなす角度(狭い方の角度;太陽光入射角度)をθinとしたときに、下記式(a)
2θnR+sin−1(sinθin/n)>sin−1(1/n) …(a)
の関係を満たすことを特徴とする太陽電池モジュールを提供する(発明1)。
上記発明(発明1)に係る太陽電池モジュールでは、透明基材の屈折率nと、第1の面の傾斜角θnRと、太陽光入射角度θinとを、式(a)の関係を満たすように設定することによって、太陽電池モジュールの反射面で反射した太陽光を透明基材の太陽光入射面(内側の面)で全反射させることが可能となる。かかる太陽電池モジュールによれば、反射面の第1の面における太陽光の反射と、透明基材の太陽光入射面における太陽光の全反射とが交互に繰り返されるので、太陽光が太陽電池モジュール内を複数回通過することが可能となる。すなわち、この太陽電池モジュールによれば、例えば回折格子等の部材を設けることなく、入射した太陽光を太陽電池モジュールにおける発電に複数回利用することができ、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることができる。また、この太陽電池モジュールにおいては、第1の面と第2の面との境界から離間する側の第1の面の端部と、上記境界から離間する側の第2の面の端部との間隔を100μmより大きく形成したので、当該間隔が太陽光に含まれる様々な光の波長に比べて十分に長くなる。かかる太陽電池モジュールによれば、太陽光に含まれる様々な波長の光が太陽光入射面にて全反射するように、太陽光を上記反射面にて反射させることができるので、太陽光に含まれる様々な波長の光を発電に利用することができ、例えば回折格子を用いる場合と比較して発電効率を向上させることができる。
上記発明(発明1)において、前記透明基材の前記太陽光入射面に対する前記第2の面の傾斜角(ただし、太陽から遠い側の角度)をθsRとしたときに、下記式(b)
θnR<θsR …(b)
の関係を満たすことが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1,2)において、前記第1の面の面積と前記第2の面の面積との面積比は、2:1〜10:1であることが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1〜3)において、前記反射面は、一つの前記第1の面と一つの前記第2の面との組が、前記第1の面と前記第2の面とが交互に位置するように複数連なって、アレイ状になっていることが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1〜4)において、前記θnRは、1°以上30°以下であることが好ましい(発明5)。
上記発明(発明2〜5)において、前記θsRは、75°以上90°以下であることが好ましい(発明6)。
上記発明(発明1〜6)において、前記反射面を有する反射部材と、前記反射部材及び前記太陽光発電層の間に位置する透明媒体と、を備えることが好ましい(発明7)。
本発明に係る太陽電池モジュールは、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの概略構成図である。 図1のA−A線断面における要部拡大図である。 太陽電池モジュール内を光が透過する様子を説明する図である。 変形例1に係る太陽電池モジュールの概略構成図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの概略構成図である。本実施形態に係る太陽電池モジュール10は、太陽に近い側(図1中では上側)から順に、太陽光入射面11aを有する透明基材11と、太陽光発電素子を有する太陽光発電層12と、透明媒体13と、複数の山型の反射面14を有する反射部材15とを積層することによって構成されている。本実施形態に係る太陽電池モジュール10では、太陽光が当該太陽電池モジュール10内に入射した場合、反射面14における太陽光の反射と、太陽光入射面11a(内側の面)における太陽光の全反射とが交互に繰り返されることによって、太陽光が太陽光発電層12を複数回通過することが可能となる。このため、発電における太陽光の利用効率を高めることができ、発電効率を向上させることができる。
透明基材11は、所定の屈折率n(n>1)を有し、太陽光発電層12を衝撃、汚れ、水分の浸入等から保護し、太陽光などの光源の光を透過する基材である。透明基材11は、光の透過率が高い透明な材料によって構成され、太陽光発電層12における太陽に近い側における表面(図1中では上面)に積層されている。本実施形態では、透明基材11における太陽に近い側の表面(図1中では上面)は、太陽電池モジュール10の幅方向(図中X方向)及び長さ方向(図中Y方向)に広がった平面形状を有しており、太陽光入射面11aとなっている。
透明基材11は、例えば、強化ガラス、サファイアガラス、ソーダガラス等からなるガラス板、あるいはポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等からなる樹脂シート又はそれら樹脂シートの積層体を用いて形成される。例えば透明基材11がガラス板の場合には、透明基材11の厚さ(図中Z方向の寸法)は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。また、例えば透明基材11が樹脂シートの場合には、透明基材11の厚さは、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
太陽光発電層12は、光エネルギーを光電変換によって電力に変換する太陽光発電素子(図示省略)を有するシート状の層である。本実施形態の例では、太陽光発電層12は、透明基材11と透明媒体13との間に積層されている。通常、太陽光発電層12の内部では、複数の太陽光発電素子が封止材(図示省略)によって封止されている。
太陽光発電素子としては、例えば、単結晶シリコン太陽電池素子、多結晶シリコン太陽電池素子、アモルファスシリコン太陽電池素子、微結晶シリコン太陽電池素子、球状シリコン太陽電池素子などのシリコン系太陽電池素子を用いることができる。また、太陽光発電素子として、カルコパイライト系(CIS系)太陽電池素子、CIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)系太陽電池素子、ヒ化ガリウム(GaAs)系太陽電池素子などの化合物太陽電池素子を採用することもできる。さらに、太陽光発電素子として、色素増感太陽電池素子、有機薄膜太陽電池素子、多接合型太陽電池素子、HIT(ハイブリッド)型太陽電池素子等を用いてもよい。
封止材としては、光の透過率が高く、且つ、耐候性、耐高温、耐高湿、耐候性等の耐久性、及び電気絶縁性を有する材料が用いられることが好適である。例えば、封止材の材料は、オレフィン系樹脂であることが好ましく、特に酸素等に対するガスバリア性が高いこと、架橋が容易であること、入手のし易さ等の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)であることが好ましい。
太陽光発電層12の厚さ(図中Z方向の寸法)は、1μm以上500μm以下であることが好ましく、特に2μm以上200μm以下であることが好ましい。
透明媒体13は、太陽光などの光源の光を透過する媒体である。透明媒体13は、光の透過率が高い透明な材料を用いて形成され、太陽光発電層12における太陽から遠い側の面(図1中では下面)と、反射部材15の反射面14(図1中では反射部材15の上面)との間に積層されている。
透明媒体13は、例えば、上述した透明基材11と同様の材料から構成される。具体的には、強化ガラス、サファイアガラス、ソーダガラス等のガラス、あるいはポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のプラスチックから構成され、好ましくは、成形が容易なプラスチックから構成される。また、透明媒体13は、太陽光発電層12と反射部材15とを接着する接着剤であってもよい。接着剤の種類は、透明性、耐久性等に優れたものであれば特に限定されない。
透明媒体13の一番厚い部分における厚さT1(図2に示す)は、好ましくは0.001mm以上10mm以下であり、特に好ましくは0.01mm以上5mm以下であり、さらに好ましくは0.05mm以上2mm以下である。
透明媒体13の厚さT1は、発電効率を向上させるために、反射面14における太陽光の反射と、太陽光入射面11a(内側の面)における太陽光の全反射との繰り返し回数が多くなるように、調整することが好ましい。また、光の波長によって特性の異なる複数の太陽光発電素子が太陽光発電層12に並んで設けられている場合には、例えば、太陽光が最初に一の太陽光発電素子に当たり、反射面14で反射した太陽光が別の太陽光発電素子に当たるように、透明媒体13の厚さを調整することにより、発電効率を向上させることができる。
反射部材15は、透明媒体13を透過した光を反射する部材である。本実施形態では、反射部材15は、透明媒体13における太陽から遠い側の面(図1中では下面)に積層されており、反射部材15における太陽に近い側の表面(図1中では上面)が、透明媒体13を透過した光を反射する面を有する反射面14となっている。
反射部材15の反射面14は、透明部材11の太陽光入射面11aに対して非平行の第1の面14a及び第2の面14bを有する。第1の面14a及び第2の面14bは、それぞれ太陽電池モジュール10の長さ方向(図中Y方向)に延びた平面であって、太陽電池モジュール10の幅方向(図中X方向)に互いに隣接するように設けられている。また、第1の面14a及び第2の面14bの境界は頂部14cを形成する。頂部14cは、太陽光発電層12に向かって凸となる方向(図1中では上方)に峰を形成する。すなわち、第1の面14a及び第2の面14bは、太陽光発電層12に向かって突出するように配置されている。ここで、互いに隣接する一の第1の面14aと一の第2の面14bとの組み合わせを1組の山型反射面という。
なお、反射面14のうち少なくとも第1の面14aは、透明媒体13を透過した太陽光を反射する面であることが必要である。一方、第2の面14bは、透明媒体13を透過した太陽光を反射する面であってもよいし、反射しない面であってもよいが、反射する面であることが好ましい。透明媒体13を透過した太陽光が第2の面14bに入射したときに、第2の面14bで反射することにより、太陽光が太陽光発電層12を通過する回数が増え、また、太陽光を太陽電池モジュール10内に閉じ込める確率を高くして、発電効率を向上させることができるからである。
反射部材15の一番厚い部分における厚さT2(図2に示す)は、好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、特に好ましくは0.02mm以上5mm以下であり、さらに好ましくは0.05mm以上2mm以下である。
また、反射面14における一組の山型反射面の幅W(図2に示す)は、100μmより大きく、好ましくは200μm以上50mm以下であり、さらに好ましくは300μm以上20mm以下である。なお、幅Wは、頂部14c(境界)から離間する側の第1の面14aの端部(図2中では右側の端部)と、頂部14cから離間する側の第2の面14bの端部(図2中では左側の端部)との太陽電池モジュール10の幅方向(図中X方向)の間隔を示している。
ここで、例えば反射型の回折格子を太陽電池モジュールに用いた場合には、当該回折格子の波長依存性が高いことから、太陽光に含まれる様々な光のうち一部の波長の光しか全反射させることができない。つまり、発電に利用することができる光は、太陽光に含まれる様々な光のうち一部の波長の光に限られる。そこで、本実施形態の太陽電池モジュール10では、幅Wを100μmより大きく形成することによって、太陽光に含まれる様々な光の波長に比べて当該幅Wを十分に大きくしている。かかる太陽電池モジュール10では、太陽光に含まれる様々な波長の光が太陽光入射面11a(内側の面)にて全反射するように、当該太陽光を反射面14にて反射させることができるので、太陽光に含まれる様々な波長の光を発電に利用することができ、回折格子を用いた場合と比較して発電効率を向上させることができる。また、幅Wが上記のように大きい反射部材15(及び透明媒体13)は、回折格子等と比較して簡単に製造することができる。
第1の面14aの面積は、第2の面14bの面積よりも大きく形成されていることが好ましい。第1の表面14aの面積と第2の表面14bの面積との面積比は、好ましくは2:1〜10:1であり、特に好ましくは3:1〜8:1であり、さらに好ましくは4:1〜6:1である。面積比をこのように設定することにより、太陽光を太陽光入射面11a(内側の面)にて全反射させることの可能な、反射面14における面積が大きくなる。これにより、太陽光を太陽電池モジュール10内に閉じ込め易くなり、発電効率をより向上させることができる。
複数の山型反射面は、第1の面14aと第2の面14bとが交互に位置するように連なって、アレイ状に設けられてもよい。本実施形態では、第1の面14aと第2の面14bとが太陽電池モジュール10の幅方向(図1中ではX方向)に亘って交互に位置するように連なっている。この場合、各山型反射面の第1の面14aがそれぞれ同じ方向を向くように設けられる。これにより、第1の面14aで反射した太陽光の太陽光入射面11aに対する入射角度を、それぞれの山型反射面ごとに揃えることが可能になる。
反射部材15は、太陽光を反射する反射面14を形成できる部材であれば、その材料は特に限定されるものではない。反射部材15は、例えば、プラスチック、ガラス、セラミックス等の硬質材料を成形したものの表面に反射面14として金属反射膜を形成したものであってもよいし、金属を成形してその表面を反射面14としたものであってもよい。金属反射膜を構成する金属および上記金属としては、例えば、アルミニウム、銀、金、ニッケル、スズ、ジルコニウム等の金属が挙げられ、中でも、反射率が高く、緻密な層を比較的容易に形成することができるアルミニウムが好ましい。
次に、第1の面14a及び第2の面14bそれぞれの傾斜角度について、図2を参照して説明する。図2は、図1のA−A線断面における要部拡大図である。
透明基材11の屈折率をn、透明基材11に対する太陽光の入射角度(透明基材11の太陽光入射面11aの垂線Pと、太陽光Lとがなす狭い方の角度;太陽光入射角度)をθin、透明基材11の太陽光入射面11aに対する第1の面14aの傾斜角(ただし、太陽から遠い側の角度)をθnRとする。このとき、太陽光入射面11aの垂線Pと、透明基材11中に入射した太陽光Lとがなす角度θinT(狭い方の角度)は、以下の式(1)のように示される。
θinT=sin−1(sinθin/n) …(1)
次に、透明基材11と太陽光発電層12との界面、及び太陽光発電層12と透明媒体13との界面の各々において、太陽光Lの光軸の偏向がない場合(つまり、太陽光Lが屈折しない場合)、あるいは入射時と出射時の2回の屈折の結果、光軸の偏向がない状態と変わらない場合であって、太陽光Lが反射面14の第1の面14aに入射した場合を仮定すると、第1の面14aにて反射した太陽光Lの、透明基材11の太陽光入射面11aに対する入射角度(太陽光Lと、太陽光入射面11aの垂線Pとがなす角度)θ1Tは、以下の式(2)のように示される。
θ1T=2θnR+θinT …(2)
ここで、太陽光Lが太陽光入射面11aにて全反射するためには、入射角度θ1Tが臨界角θよりも大きくなければならない。つまり、入射角度θ1Tと臨界角θとの関係は、以下の式(3)のように示される。
θ1T>θ …(3)
なお、臨界角θは、スネルの法則によって、以下の式(4)のように示される。
θ=sin−1(1/n) …(4)
式(1)を式(2)に代入することにより求められた入射角度θ1Tの内容と、式(4)の臨界角θの内容とを式(3)に代入することにより、入射角度θ1Tと臨界角θとの関係は、以下の式(5)のように示される。
2θnR+sin−1(sinθin/n)>sin−1(1/n) …(5)
本実施形態に係る太陽電池モジュール10は、式(5)の関係を満たすものである。式(5)の関係を満たすように、透明基材11の屈折率nと、第1の面14aの傾斜角θnRと、太陽光入射角度θinとが設定されることにより、第1の面14aで反射した太陽光を、透明基材11の太陽光入射面11a(内側の面)にて全反射させることが可能となる。なお、太陽光入射角度θinは、時間や季節によって変化するものであるため、太陽電池モジュール10は、上記式(5)を常時満たす必要はない。
上記第1の面14aの傾斜角θnRは、太陽電池モジュール10の設置位置における太陽光の入射角度θinの取りうる範囲に応じて任意に設定され得る。ただし、傾斜角θnRの値が大きい場合には、それに応じて第2の面14bの面積が大きくなることから、太陽光入射面11aから太陽電池モジュール10内に入射した太陽光が第1の面14aに入射され難く、逆に第2の面14bに入射され易くなる。このとき、第2の面14bにて反射した太陽光が太陽光入射面11aから外部に出射され、太陽光を太陽電池モジュール10内に閉じ込めることができない場合がある。このため、第1の面14aの傾斜角θnRは、1°以上30°以下に設定されることが好ましく、特に5°以上25°以下に設定されることが好ましく、さらには10°以上20°以下に設定されることが好ましい。
また、透明基材11の太陽光入射面11aに対する第2の面14bの傾斜角(ただし、太陽から遠い側の角度)をθsRとしたときに、以下の式(6)の関係を満たすことが好ましい。
θnR<θsR …(6)
太陽電池モジュール10内に入射した太陽光は、第1の面14aに当たり続ける限りは、太陽光入射面11aでの全反射によって太陽電池モジュール10内に閉じ込められるが、いずれは第2の面14bに当たり、太陽光入射面11aから太陽電池モジュール10外に出射する場合がある。しかしながら、上記の式(6)の関係を満たすことで、太陽電池モジュール10内に入射した太陽光を第2の面14bに当たり難く、第1の面14aに当たり易くするようにすることができ、したがって、太陽光が太陽電池モジュール10内に閉じ込められる確率を高くすることができる。
上記を鑑みると、第2の面14bの傾斜角θsRは、75°以上90°以下に設定されることが好ましく、特に78°以上88°以下に設定されることが好ましく、さらには80°以上85°以下に設定されることが好ましい。
太陽電池モジュール10は、入射した太陽光が第1の面14aに当たり、太陽電池モジュール10内に閉じ込められ易くするために、第2の面14bが太陽の軌道側を向くように設置することが好ましい。また、前述した式(5)の関係は、前述した透明基材11の屈折率nおよび第1の面14aの傾斜角θnRの好ましい数値範囲から、太陽光の入射角度θinが90°に近づくほど満たし易いものとなる。したがって、太陽電池モジュール10は、太陽光の入射角度θinが大きくなる時間帯(例えば朝夕の時間帯等)が存在するように設置されることが好ましい。具体的には、太陽光の入射角度θinが70°以上90°未満、好ましくは75°以上90°未満、特に好ましくは80°以上90°未満となる時間帯が存在するように設置されることが好ましい。太陽電池モジュール10がこのように設置されることにより、発電効率が顕著に向上し、日中を通して太陽電池モジュール10の発電量を増やすことができる。
上記太陽電池モジュール10を製造する方法は特に限定されない。例えば、プラスチック、ガラス、セラミックス等の硬質材料により、山型を有するように反射部材15の本体部を成形し、その山型を有する側の表面に金属反射膜を積層して反射面14を形成し、反射部材15を得る。あるいは、金属の塊を切削等することにより、反射部材15を得る。得られた反射部材15の反射面14上に、溶融したプラスチックを積層し、これを透明媒体13とする。得られた反射部材15および透明媒体13の積層体と、太陽光発電層12と、透明部材11とを、その順で重ね合わせ、それらを加熱しながらプレスして一体化することにより、太陽電池モジュール10を製造することができる。このような太陽電池モジュール10は、回折格子のような微細な加工を必要とすることなく、簡単に製造することができる。
以上のように構成された太陽電池モジュール10に対して太陽光が入射した場合の一例を、図3を参照して説明する。図3は、太陽電池モジュール内を光が透過する様子を説明する図である。
図3に示す例では、反射面14における各山型反射面の第2の面14bが太陽の軌道側を向くように、太陽電池モジュール1が設置されている。先ず、透明基材11の太陽光入射面11aに対して太陽光Lが入射する。このときの太陽光Lの入射角度は、θinである。
次に、太陽光入射面11aから太陽電池モジュール10内に入射した太陽光Lは、太陽光入射面11aにおいて屈折し、太陽光発電層12に向けて進行する。なお、太陽光Lの屈折角度は、θinTである。また、太陽光発電層12において、太陽光Lの一部は、太陽光発電素子に入射して電気エネルギーに変換され、太陽光Lの他の一部は、太陽光発電層12を透過する。
太陽光発電層12を透過した太陽光Lは、透明媒体13を透過して、反射部材15の第1の面14aにて反射する。第1の面14aにて反射した太陽光Lは、透明媒体13及び太陽光発電層12を介して透明基材11に向けて進行する。なお、太陽光発電層12において、太陽光Lの一部は、太陽光発電素子に入射して電気エネルギーに変換され、太陽光Lの他の一部は、太陽光発電層12を透過する。
太陽光発電層12を透過した太陽光Lが透明基材11の太陽光入射面11aに入射したとき、太陽光入射面11aに対する太陽光Lの入射角度θ1Tが臨界角θより大きいことから、太陽光Lは太陽光入射面11aにて全反射する。
太陽光入射面11aにて全反射した太陽光Lは、太陽光発電層12及び透明媒体13を介して反射部材15に向けて進行する。また、太陽光発電層12において、太陽光Lの一部は、太陽光発電素子に入射して電気エネルギーに変換され、太陽光Lの他の一部は、太陽光発電層12を透過する。
太陽光発電層12を透過した太陽光Lは、透明媒体13を透過して、反射部材15の第1の面14aにて反射する。第1の面14aにて反射した太陽光Lは、透明媒体13及び太陽光発電層12を介して透明基材11に向けて進行する。なお、太陽光発電層12において、太陽光Lの一部は、太陽光発電素子に入射して電気エネルギーに変換され、太陽光Lの他の一部は、太陽光発電層12を透過する。
太陽光発電層12を透過した太陽光Lが透明基材11の太陽光入射面11aに入射したとき、太陽光入射面11aに対する太陽光Lの入射角度θ2Tは、以下の式(7)のように示される。
θ2T=2θnR+θ1T …(7)
上記式(7)において、θ1Tは臨界角θより大きいことから、太陽光Lの入射角度θ2Tは、臨界角θより大きい。このため、太陽光Lは、太陽光入射面11a(内側の面)にて全反射する。
太陽光入射面11aにて全反射した太陽光Lは、太陽光発電層12及び透明媒体13を介して反射部材15に向けて進行する。太陽光Lの一部は、太陽光発電層12の太陽光発電素子に入射して電気エネルギーに変換され、太陽光Lの他の一部は、太陽光発電層12を透過する。
このようにして、第1の面14aにおける太陽光の反射と、太陽光入射面11aにおける太陽光の全反射とが交互に繰り返される。
以上説明したように、本実施形態に係る太陽電池モジュール10によれば、透明基材11の屈折率nと、第1の面14aの傾斜角θnRと、太陽光入射角度θinとを、式(5)の関係を満たすように設定することによって、太陽電池モジュール10の反射面14で反射した太陽光を透明基材11の太陽光入射面11a(内側の面)で全反射させることが可能となる。かかる太陽電池モジュール10によれば、反射面14の第1の面14aにおける太陽光の反射と、透明基材11の太陽光入射面11aにおける太陽光の全反射とが交互に繰り返されるので、太陽光が太陽電池モジュール10内を複数回通過することが可能となる。すなわち、この太陽電池モジュール10によれば、例えば回折格子等の部材を設けることなく、太陽光を太陽電池モジュール10における発電に複数回利用することができ、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることができる。また、この太陽電池モジュール10においては、頂部14c(境界)から離間する側の第1の面14aの端部と、頂部12cから離間する側の第2の面14bの端部との間隔(幅W)を100μmより大きく形成したので、当該間隔が太陽光に含まれる様々な光の波長に比べて十分に長くなる。かかる太陽電池モジュール10によれば、太陽光に含まれる様々な波長の光が太陽光入射面11aにて全反射するように、太陽光を反射面14にて反射させることができる。そのため、太陽光に含まれる様々な波長の光を発電に利用することができ、例えば回折格子を用いる場合と比較して発電効率を向上させることができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記各実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
〔変形例1〕
上記実施形態では、第1の面14a及び第2の面14bの各々が反射部材15に複数設けられている場合(山型反射面が複数設けられている場合)を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、図4に示すように、一つの反射部材15(太陽電池モジュール10)につき、第1の面14a及び第2の面14bがそれぞれ一つずつ設けられてもよい(山型反射面が一つだけ設けられてもよい)。この場合においても、反射面14の第1の面14aにおける太陽光の反射と、透明基材11の太陽光入射面11aにおける太陽光の全反射とを交互に繰り返すことができ、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることができる。
〔変形例2〕
上記実施形態では、透明媒体13が太陽電池モジュール10に設けられている場合を一例として説明したが、太陽光発電層12と反射部材15との間には透明媒体13を設けなくてもよい。また、透明媒体13は、反射部材15に密着しない平面状のシート(いわゆるバックシート)であってもよい。これらの場合においても、反射面14の第1の面14aにおける太陽光の反射と、透明基材11の太陽光入射面11aにおける太陽光の全反射とを交互に繰り返すことができ、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることができる。
〔変形例3〕
上記実施形態では、反射部材15が太陽電池モジュール10に設けられている場合を一例として説明したが、反射部材15を太陽電池モジュール10に設けず、透明媒体13における太陽から遠い側の面に反射膜を形成してもよい。この場合、反射膜における透明媒体13側の面が反射面14となる。この場合においても、反射面14の第1の面14aにおける太陽光の反射と、透明基材11の太陽光入射面11aにおける太陽光の全反射とを交互に繰り返すことができ、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることができる。
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、簡単に製造できる構成で発電効率を向上させることの可能な太陽電池モジュールとして好適に用いられる。
10…太陽電池モジュール
11…透明基材
11a…太陽光入射面
12…太陽光発電層
13…透明媒体
14…反射面
14a…第1の面
14b…第2の面
14c…頂部
15…反射部材

Claims (6)

  1. 太陽光入射面を有する透明基材と、前記透明基材よりも太陽から遠い側に位置し、かつ、太陽光を反射する面を有する反射面と、前記透明基材及び前記反射面の間に設けられ、太陽光発電素子を有する太陽光発電層と、前記太陽光発電層及び前記反射面の間に位置する透明媒体と、を備える太陽電池モジュールであって、
    前記反射面は、前記透明基材の前記太陽光入射面に対して非平行の第1の面及び第2の面を有し、少なくとも前記第1の面は太陽光を反射する面であり、
    前記第1の面と前記第2の面との境界は、前記太陽光発電層に向かって凸となる方向に峰を形成しており、
    前記第1の面の前記境界から離間する側の端部と、前記第2の面の前記境界から離間する側の端部との間隔は、100μmより大きく形成されており、かつ、
    前記透明基材の屈折率をn、
    前記透明基材の前記太陽光入射面に対する前記第1の面の傾斜角(ただし、太陽から遠い側の角度)をθnR
    前記透明基材の前記太陽光入射面の垂線と、前記太陽光入射面に入射する太陽光とがなす角度(狭い方の角度)をθin
    とし、前記透明基材及び前記透明媒体の屈折率を同一としたときに、下記式(a)
    2θnR+sin−1(sinθin/n)>sin−1(1/n) …(a)
    の関係を満たす
    ことを特徴とする太陽電池モジュール。
  2. 前記透明基材の前記太陽光入射面に対する前記第2の面の傾斜角(ただし、太陽から遠い側の角度)をθsRとしたときに、下記式(b)
    θnR<θsR …(b)
    の関係を満たす
    ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
  3. 前記第1の面の面積と前記第2の面の面積との面積比は、2:1〜10:1であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
  4. 前記反射面は、一つの前記第1の面と一つの前記第2の面との組が、前記第1の面と前記第2の面とが交互に位置するように複数連なって、アレイ状になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
  5. 前記θnRは、1°以上30°以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
  6. 前記θsRは、75°以上90°以下であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
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