JP2011244726A - コンバイン - Google Patents

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Abstract

【課題】引起し装置による穀粒等の飛散を効果的に遮断する。
【解決手段】上記課題は、運転席5の前側に配置される引起し装置8の上方に、前後方向の傾斜姿勢を変更自在なカバー体15を設けるとともに、このカバー体15に、その前後方向カバー範囲を拡大自在である調節体50を設けたことを特徴とするコンバインにより解決できる。
【選択図】図28

Description

本発明は、運転席の前側に穀稈の引起し装置が配置されるコンバインに関するものである。
下記特許文献1に示された従来技術は、運転席の前側に穀稈を引き起す引起し装置が配置されるコンバインにおいて、各引起し装置の上部を左右方向に長いカバー体によって被覆したものである。このようなカバー体を設けることにより、穀稈(特に長稈)の引起しの際、引起しラグによって脱粒された穀粒や穀稈に付着していた水滴や泥土、さらには引起しラグに付着していた泥土等が運転席側に飛散するのが防止される。そしてその結果、運転席がウインドウで囲まれていない非キャビン型においては運転席のオペレータに穀粒や水滴、泥土(以下、穀粒等ともいう)が直接当たることが防止され、また、ウインドウで囲まれた運転室を有するキャビン型においてはウインドウが水滴、泥土で汚れることが防止される。
特開2002−176825号公報
しかし、従来のカバー体は、引起し装置に対する位置及び姿勢を調節できないため、圃場状態や穀稈の長さ等により変化する穀粒等の飛散状況によっては、あるいはオペレータの姿勢、体型等によっては、穀粒等の飛散を効果的に遮断できなかったり、前方視界(特に分草位置の視界)が不必要に遮られたりする、という問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、運転席(5)の前側に、穀稈を引き起す引起し装置(8)が配置されるコンバインにおいて、該引起し装置(8)の上方に、前後方向の傾斜姿勢を変更自在なカバー体(15)を設けるとともに、このカバー体(15)に、その前後方向のカバー範囲を拡大自在とする調節体(50)を設けたことを特徴とするコンバインである。
請求項2記載の発明は、前記カバー体(15)は、引起し装置(8)の後側で左右方向に架設されたカバー体支軸(16)を回動支点として上下に揺動することで前後方向の傾斜姿勢を変更する構成とし、前記調節体(50)は、左右方向に沿う調節体支軸(51)を介してカバー体(15)に取り付けられ、この調節体支軸(51)を回動支点として回動することでカバー体(15)の前後方向のカバー範囲を拡大する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインである。
請求項3記載の発明は、前記調節体(50)及びカバー体(15)のいずれか一方に前記調節体支軸(51)が設けられ、いずれか他方に前記調節体支軸(51)を弾力的に挟持する一対の挟持部(52,53)が設けられ、この挟持部(52,53)の少なくとも一方(53)は調節体支軸(51)が嵌合する受け溝(53d)を有することを特徴とする請求項1又は2記載のコンバインである。
請求項4記載の発明は、走行車体(1)の右側部分又は左側部分に運転席(5)を有し、運転席(5)の前方に引起し装置(8)を左右方向に間隔を空けて3基以上有し、前記カバー体(15)は両端の引起し装置(8)にわたるように延在しており、前記調節体(50)は少なくとも運転席(5)と対応する左右方向範囲をカバーするように左右方向に延在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項5記載の発明は、前記引起し装置(8)の横側に配置される刈取サイドカバー(18,18)を上部サイドカバー(18a)と下部サイドカバー(18b)とに分割すると共に、該上部サイドカバー(18a)を前記カバー体(15)と一体に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項6記載の発明は、前記引起し装置(8)の引起しケース(12)の上端部前面(12u)を、該引起しケース(12)の下部前面よりも傾斜の緩い後上がり傾斜姿勢となるように屈曲形成するとともに、前記調節体(50)のカバー範囲を前方に拡大することにより前記調節体(50)の前端が引起しケース(12)の前面の屈曲位置よりも前方に位置しうる構成としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項7記載の発明は、前記カバー体(15)は、引起し装置(8)の上側を覆うための上面カバー部(15a)と、この上面カバー部(15a)の後端部から引起し装置(8)の後側に向かって屈曲する後面カバー部(15b)とを有し、このうち上面カバー部(15a)に調節体支軸51を配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンバインである。
請求項1記載の発明によれば、カバー体(15)の前後方向の傾斜姿勢だけでなく、カバー体(15)の前後方向のカバー範囲を調節できるため、オペレータは、圃場状態や穀稈の長さ等による穀粒等の飛散状況に応じて、あるいはオペレータの姿勢、体型等に応じて、前方視界及び穀粒等の飛散防止を比較考量しつつ、カバー体(15)を適切な位置及び姿勢に調節できるようになる。例えば、穀粒等が運転席(5)側に飛散するときには、カバー体(15)の姿勢を穀粒等の飛散方向に対する交差角が直角又はそれに近くなるように姿勢変更し、更に飛散範囲が広いとき等、必要に応じて調節体(50)によりカバー範囲を拡大することにより、穀粒等の飛散をカバー体(15)で効果的に遮りつつ、前方視界を可能な限り確保することができる。一方、穀粒等の飛散が無いか、又は運転席(5)側への飛散が少ないときには、カバー体(15)の姿勢を穀粒等の飛散方向に対して平行又はそれに近くなるように姿勢変更し、更に必要に応じて調節体(50)を非拡大状態等に調節することにより、前方視界を重視した状態とすることができる。なお、本発明のカバー体(15)の姿勢及びカバー範囲の調節は、オペレータが任意に変更できるものであり、このような調節形態に限られるものではない。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、カバー体(15)の傾斜姿勢は、カバー体(15)をカバー体支軸(16)回りに揺動することで変更でき、また調節体(50)によるカバー範囲の調節は、調節体(50)をカバー体(15)に対して調節体支軸(51)回りに回動することで変更できるため、いずれの変更操作もワンタッチで簡単に行うことができるようになる。またそれだけではなく、調節体(50)の角度も調節できるため、前方視界の妨げとならないようにカバー範囲を拡大することが可能となる。さらに、カバー体(15)を上方に揺動させた場合には、オペレータ側への穀粒や泥土の飛散が阻止されるものでありながら、引起しケースの前側カバーの着脱が簡単に行える等、引起し装置(8)のメンテナンスが容易に行える。
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は2記載の発明の効果を奏するうえに、簡素な構成で調節体(50)を確実に支持できるようになるとともに、無段階の回動が可能となる。また、調節体(50)の回動時には、挟持部(52,53)と調節体支軸(51)との摩擦により、接触面間の錆や埃等を素早く取り除くことができ、常時スムーズにカバーを回動させることができるようになる。
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、オペレータは運転席(5)から調節体(50)に手をかけて調節することができ、より的確な調節が可能となるとともに、穀稈の引起しにより後上方へ飛散する穀粒等のうち少なくとも運転席(5)に向かうものについては効果的に遮断することができるようになる。
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、上部サイドカバー(18a)をハンドル代わりにして、上部サイドカバー(18a)とともにカバー体(15)を揺動させることができため、専用のハンドルを設けなくてもカバー体の姿勢変更操作を容易に行うことができるようになる。
請求項6記載の発明によれば、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、オペレータは運転席(5)に着座したままで引起し装置(8)の引起し始端側(下端側)における分草位置を直視でき、分草引起し状況の確認を容易に行うことができ、刈取作業の能率を高めることができるようになるとともに、必要に応じて調節体(50)のカバー範囲を前方に拡大することにより側面視で調節体(50)の前端を引起しケース(12)の前面の屈曲位置よりも前方に位置させて効果的に穀粒等の飛散防止を図ることも可能となる。
請求項7記載の発明によれば、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、カバー体(15)が側面視で略への字型に形成されているので、上面カバー部(15a)の下面部で穀粒等の上方への飛散を阻止し、後面カバー部(15b)の下面部で穀粒等の後方上方への飛散を阻止することができ、従って、運転席(5)への穀粒等の飛散を確実に防止することができるようになる。
コンバインの側面図である。 コンバイン要部の正面図である。 コンバイン要部の平面図である。 穀稈引起し装置の要部の側面図である。 コンバインの側面図である。 コンバイン要部の正面図である。 コンバイン要部の平面図である。 穀稈引起し装置の要部の側面図である。 コンバインの側面図である。 コンバイン要部の正面図である。 コンバイン要部の平面図である。 穀稈引起し装置の要部の側面図である。 コンバイン要部の平面図である。 コンバイン要部の正面図である。 コンバイン要部の平面図である。 コンバインの側面図である。 コンバイン要部の正面図である。 コンバイン要部の平面図である。 穀稈引起し装置の要部の側面図である。 コンバイン要部の正面図である。 コンバインの側面図である。 コンバイン要部の正面図である。 補助引起し装置及び穀稈引起し装置の要部の側面図である。 穀稈引起し装置の要部の側面図である。 穀稈引起し装置の要部の側面図である。 カバー体及び調節体の要部の側面図である。 カバー体及び調節体の要部の平面図である。 穀稈引起し装置の要部の概略縦断面図である。 カバー体及び調節体の要部の概略側面図である。
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図4、図5〜図8及び図9〜図12はそれぞれ異なる状態のコンバインを示すものである。このコンバインは走行車体1に左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置3の前方部に刈取部4を設置し、刈取部4の横側部には運転席5や操作ボックス6等の運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
刈取部4は、圃場に植立する穀稈を左右に分草する分草体7,7…と、分草後の穀稈を引起し経路Kに沿って引き起す4条の殻稈穀稈引起し装置8,8,8,8と、引起し後の穀稈の株元近くを切断して穀稈を刈り取る刈取装置9と、分草後の穀稈の株元側を掻き込んで刈取装置9を経て後方へ搬送する掻込搬送装置10と、掻込搬送後の穀稈を引き継いで揚上搬送しながら姿勢変更して脱穀装置3に受け渡し供給する揚上搬送供給装置11等を有するものである。
刈取部4は、刈取メインフレーム21により走行車体1に対し上下に昇降可能に装備されているものである。より詳細には、刈取メインフレーム21は、刈取懸架台22に袈設された刈取入力軸23を支点として上下に回動する構成であり、刈取昇降シリンダ24の伸縮作動により刈取部4が昇降するようになっている。
穀稈引起し装置8は、前後に分割可能な前後の引起しケース12,13と、この引起しケース12,13に内装された、図示しない伝動スプロケット及び張設輪に巻回されて駆動される無端の引起チェンと、この引起チェンに所定の間隔で取り付けられた引起しラグ14とを有している。引起しラグ14は、引起しチェンの駆動に伴って後斜め上方に上昇移動する際、引起しケース12,13から引起し経路K側の側方に突出して穀稈を引き起すものである。前側引起しケース12は、後側引起しケース13に対し着脱自在に取り付けできる構成としてあり、上方に引き上げると係止ロック状態が解除され前側に取り外しできるようになっている。各前側引起しケース12,12,…の前面は、上端部12uがその下側よりも傾斜の緩い(垂直面に対する上端部12u前面の傾斜角が下端側より大きく)後方傾斜姿勢となるよう屈曲形成されていて、図9に二点鎖線でオペレータの視線を示すように、着座姿勢での作業における分草位置近傍の視界が良好となり、起立姿勢での作業においては分草位置が良く見えるように構成している。符号12cはこの屈曲位置を示している。
刈取装置9は公知のバリカン型のものであり、刈取部4を支持する刈取メインフレーム21の下端部から前方に突出する先端部フレームに配設され、穀稈引起し装置8で穂先側が引き起こし作用を受け、株元側が掻込搬送装置10による掻き込み作用を受けている状態の植立穀稈の株元近くを切断するように構成されている。
刈取後の穀稈は、掻込搬送装置10により後方へ搬送されて揚上搬送供給装置11に引き渡され、揚上搬送供給装置11による揚上搬送過程で姿勢変更された後、フィードチェン3Fに引き渡され脱穀装置3に供給される。揚上搬送供給装置11としては株元側をチェンと挟持杆とで挟持し、穂先側を搬送ラグで掻き上げて搬送する公知の構成を採用することができる。
(カバー体)
各穀稈引起し装置8の上部は、左右横方向に長く構成されたカバー体15によって被覆される構造になっている。カバー体15は金属板により形成する他、ポリカーボネート等のプラスチック板により形成することも可能であり、その場合透明又は半透明にしてカバー体15越しの視認性を確保するのも好ましい。
カバー体15は、穀稈引起し装置8の引き起し経路Kに沿って上昇する引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線上に配置し、前側引起しケース12の上端側12u前面をカバーする状態と、上昇移行する引起しラグ14における引起し経路Kの上方をカバーする状態とに、前後方向の傾斜姿勢を変更自在に構成されている。そして、このカバー体15の姿勢変更手段として、前後上下のスライド構成とすることもできるが、本実施例では図9〜図12に示されるように、左端及び右端の穀稈引起し装置8の背部側に支持ステー8s,8sがそれぞれ立設されるとともに、これら支持ステー8s,8s間に左右横方向に延在するカバー体支軸16が袈設され、カバー体15はこのカバー体支軸16を回動支点として上下に揺動開閉するよう揺動開閉自在に構成されている。カバー体15の上方への開側が引起し経路Kの上方をカバーする姿勢変更状態(開姿勢)であり、下方への閉側が前側引起しケース12の上端側12u前面をカバーする姿勢変更状態(閉姿勢)となる。カバー体15の開閉は、回動支点付近に設けた引張スプリング17により、カバー体支軸16の支点に対してスプリング張力方向を閉側と開側とに切り替え可能な構成になっていて、ワンタッチで揺動開閉することができる。
分草後の穀稈は、図28に示すように、穀稈引起し装置8の引起しケース12,13から引起し経路K内に突出して上昇する引起しラグ14が株元側から穂先側にかけて作用することで引き起こされる際、引起し作用によって穀粒等が運転席5のオペレータに向かって飛散することがあるが、カバー体15を例えば穀粒等の飛散方向と交差する開姿勢に姿勢変更することにより、引起しラグ14により飛び散る穀粒等をカバー体15によって効果的に遮ることができる。
カバー体15は、平板状のもの等、適宜の形状とすることができるが、本実施形態のように、上面カバー部15aと後面カバー部15bとからなるように側面視で略への宇型に形成されていると、上面カバー部15aの下面部で穀粒等の上方への飛散を阻止し、後面カバー部15bの下面部で穀粒等の後方上方への飛散を阻止することができ、従って、運転席5への穀粒等の飛散を確実に防止することができるようになるため好ましい。
カバー体15は、開状態において上面カバー部15aが引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線と交差する配置が好ましいが、後面カバー部15bが引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線と交差する配置とすることも可能である。また、カバー体15を引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線から後方側にずらし、後述する調節体50をそのカバー範囲の前方拡大により引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線上に位置させる構造とすることも可能である。
本実施形態の多条刈りコンバインのように、左右方向中間の引起し装置の左右両側に引起し経路をそれぞれ有する場合、当該引起し装置の下部前方の分草体により隣接条の穀稈は分離されて左右の各引起し経路に導入される。しかし、穀稈が長稈の場合等においては、図20に示すように隣接条の穀稈の穂先が絡んで分離されずに当該引起し装置を跨いでクロスしたまま刈取装置9により刈り取られ、後方に搬送されることがある。この際、当該引起し装置の上端とカバー体15とが接触していると、当該引起し装置を跨ぐクロス部分がこの接触部分に引っ掛かり後方に通過できずに詰まってしまう。また、穀稈の搬送力により穂先の絡みが無理に解けたとしても、穂先相互のしごき作用又はカバー体15と引起しケース12,13との隅部によるしごき作用により穂先の穀粒が脱粒することは避け難い。よって、左右方向中間の穀稈引起し装置8の左右両側に引起し経路をそれぞれ有する場合、図21〜図23に示すように、少なくとも当該穀稈引起し装置8の上端とカバー体15との間に穀稈通過空間15sが確保される構造とし、この穀稈通過空間15sにより左右両側の引起し経路を繋ぐことにより、穀稈の穂先部分がクロスしていてもそのまま後方に通過する構造とするのが好ましい。このような穀稈通過空間15sは、カバー体15の姿勢如何によらず形成される構造とすることも可能であるが、その場合、カバー体15の位置が高くなり前方視界の妨げとなるため、カバー体15を開姿勢としたときにのみ形成される構造とする方が好ましい。
穀稈が倒伏状態で絡みあうような圃場状態で効果的に引起しを行うために、図21〜図23に示すように、穀稈引起し装置8の前方位置に、補助引起しラグ62を前方に突出させながら倒伏状態で絡みあう穀稈に対して左右に分割しながら引起し回動する補助引起し装置60を取り付けることがある。補助引起し装置60は、補助引起しケース61と、この補助引起しケース61に内装された、図示しない伝動スプロケット及び張設輪に巻回されて駆動される無端の補助引起チェンと、この補助引起チェンに所定の間隔で取り付けられた補助引起しラグ62とを有している。補助引起しラグ62は、補助引起しチェンに伴って後斜め上方に上昇移動する際、補助引起しケース61から前方に突出して穀稈を左右に分割しながら引き起すものである。このような状況における作業では、穀粒や泥土が運転席5側へ跳ね易いため前述のカバー体15を設けるのが好ましいが、隣接条の穀稈の穂先が絡んで分離されずに補助引起し装置60及び穀稈引起し装置8を跨いでクロスしたまま搬送される現象が発生し易い。よって、特にこのような補助引起し装置60を設ける場合は、図示するように前述の穀稈通過空間15sを補助引起し装置60の補助引起しラグ62の作用域よりも上方に設け、補助引起し装置60及び穀稈引起し装置8で引起した穀稈を穂先部分がクロスしていてもそのまま後方に通過するように構成するのが好ましい。
本実施例では、各穀稈引起し装置8の左右両サイドに配置された刈取サイドカバー18,18は、上部サイドカバー18aと下部サイドカバー18bとに分割され、上部サイドカバー18aは、下部サイドカバー18bに対して上側面及び外側面上に重合し、前記カバー体15と連結により一体化され、該カバー体15と共に上下に揺動開閉可能に構成されている。刈取サイドカバー18,18と上部サイドカバー18aとは単一のカバー部材として形成しても良い。これにより、上部サイドカバー18aをハンドル代わりにして、上部サイドカバー18aとともにカバー体15を揺動させることができため、専用のハンドルを設けなくてもカバー体15の姿勢変更操作を容易に行うことができるようになる。また、本実施例では、カバー体15及び上部サイドカバー18aを上方に回動させないと、前側引起しケース12及び下部サイドカバー18bの取り外しができなくなっているため、カバー体15及び上部サイドカバー18aは、その下方への閉動によって前側引起しケース12及び下部サイドカバー18bをロックするロック機構の役目を果たす構造になっている。よって、上部サイドカバー18aの下部に重合した下部サイドカバー18bの着脱が簡単に行え、刈取部のメンテナンスも容易である。
図16〜図19に示すように、カバー体15を揺動開閉するためのハンドル15Hをカバー体15に取り付けることも可能である。このハンドル15Hは、運転席5からカバー体15を揺動操作できるように、カバー体15の運転席5に近い部位、例えば運転席5前方の部位から上方に突出しているのが好ましい。
本実施例におけるカバー体15には、その前後方向カバー範囲を拡大自在である調節体50が設けられている。この調節体50により、カバー体15の前後方向の傾斜姿勢だけでなく、カバー体15の前後方向カバー範囲を調節できるため、オペレータは、圃場状態や穀稈の長さ等による穀粒等の飛散状況に応じて、あるいはオペレータの姿勢、体型等に応じて、前方視界及び穀粒等の飛散防止を比較考量しつつ、カバー体15を適切な位置及び姿勢に調節できるようになる。
例えば、穀粒等が運転席5側に飛散するときには、図29(b)及び図23に示すようにカバー体15の姿勢を穀粒等の飛散方向に対する交差角が直角又はそれに近くなる開姿勢に変更し、更に飛散範囲が広いとき等、必要に応じて図29(c)及び図8に示すように調節体50によりカバー範囲を前方に拡大することにより、穀粒等の飛散をカバー体15で効果的に遮りつつ、前方視界を可能な限り確保することができる。一方、穀粒等の飛散が無いか、又は運転席5側への飛散が少ないときには、図29(a)及び図24に示すようにカバー体15の姿勢を穀粒等の飛散方向に対して平行又はそれに近くなる閉姿勢に変更し、更に必要に応じて調節体50を非拡大状態に調節することにより、前方視界を重視した状態とすることができる。さらにこれらの中間程度のカバー範囲とするために、図29(d)及び図25に示すようにカバー体15の姿勢を穀粒等の飛散方向に対して平行又はそれに近くなるように姿勢変更するとともに、調節体50を前方に拡大した状態とすることも可能である。このように、カバー体15の姿勢及びカバー範囲の調節は、オペレータが任意に変更できるものであり、このような調節形態に限られるものではない。
調節体50は、透明又は半透明のポリカーボネート等のプラスチック板により形成して調節体50越しの視認性を確保するのが好ましいが、金属板により形成することも可能である。調節体50の形状は適宜定めることができ、図示例のような矩形状の他、前端縁が弧状に張り出した形状等とすることも可能である。
本実施形態の調節体50は、カバー体15の前側カバー範囲を拡大するものであるが、後側又は前後両側のカバー範囲を拡大する構造としても良い。調節体50におけるカバー範囲の拡大量は適宜定めることができるが、図5に示すように、カバー体15の前端が最も前方に位置する姿勢変更状態で前側引起しケース12の屈曲位置12cよりも後方に位置するとともに、調節体50のカバー範囲を前方に拡大することにより調節体50の前端が前側引起しケース12の屈曲位置12cよりも前方に位置しうる構成とするのが好ましい。これにより、調節体50の前端を前側引起しケース12の屈曲位置12cより後方に位置させれば、オペレータは運転席5に着座したままで分草位置を直視でき、分草引起し状況の確認を容易に行うことができ、刈取作業の能率を高めることができるようになるとともに、必要に応じて調節体50の前端を前側引起しケース12の前面の屈曲位置12cよりも前方に位置させて効果的に穀粒等の飛散防止を図ることも可能となる。
本実施形態の多条刈りコンバインでは、走行車体1の右側部分(又は左側部分)に運転席5を有し、運転席5の前方にも穀稈引起し装置8を有している。このような多条刈りコンバインでは、カバー体15は両端の穀稈引起し装置8にわたるように延在させるとともに、調節体50は少なくとも運転席5と対応する左右方向範囲をカバーするように左右方向に延在させるのが好ましい。この場合、図1〜図12に示される例のように、カバー体15の左右方向の略全体にわたり調節体50を設けると籾殻等の飛散防止効果に優れるが、図14及び図15に示すように運転席5の前方位置のみに調節体50を設けて安価で前方視界に優れる構成とすることも可能である。また、いずれにせよ、オペレータは運転席5から調節体50に手をかけて調節することができ、より的確な調節が可能となるとともに、穀稈の引起しにより後上方へ飛散する穀粒等のうち少なくとも運転席5に向かうものについては効果的に遮断することができるようになる。
特に、調節体50を直接手で操作する場合は、カバー体15及び調節体50は左端の穀稈引起し装置8の左端部又は右端の穀稈引起し装置8の右端部(特に運転席5側)まで延在しているのが好ましい。また図13に示すように、運転席5が走行車体の右側部分に位置し穀稈引起し装置8が運転席5よりも右側まで張り出している場合は、この張り出し部分からの籾殻等の飛散をも防止するため、カバー体15及び調節体50を運転席5の右側まで延在させるのが好ましい。運転席5が左側で穀稈引起し装置8の張り出しが左側の場合も同様にカバー体15及び調節体50を運転席5の左側まで延在させるのが好ましい。
調節体50の拡大調節機構は適宜定めることができ、拡大方向に沿ってスライドする機構(図示略)を採用することもできるが、本実施例の調節体50は、図24〜図27に示すように、基端部がカバー体15の前端部に設けられた左右方向に沿う調節体支軸51によりカバー体15に軸支され、先端側の部分がこの調節体支軸51を回動支点として回動することでカバー体15の前後方向カバー範囲を拡大するものである。この場合、調節体50によるカバー範囲の調節は、調節体50をカバー体15に対して調節体支軸51回りに回動することで変更できるため、変更操作がワンタッチで簡単になるだけでなく、調節体50の角度も調節できるため、前方視界の妨げとならないようにカバー範囲を拡大することも可能である。さらに、カバー体15を上方に揺動させた場合には、オペレータ側への穀粒や泥土の飛散が阻止されるものでありながら、前側引起しケース12の着脱が簡単に行える等、引起し装置8のメンテナンスが容易に行えるという利点もある。
この調節体50の回動機構も適宜定めることができるが、本実施例では、調節体50に調節体支軸51を弾力的に挟持する一対の挟持部52,53を設け、一方の挟持部52をある程度の弾性を有する平板状体(バネ材)により構成し、他方の挟持部53を調節体支軸51が嵌合する円弧状の受け溝53dを有する板状体により構成している。これにより、簡素・安価な構成で調節体50を確実に支持できるようになるとともに、無段階の回動が可能となる。また、調節体50の回動時には、挟持部52,53と調節体支軸51との摩擦により、接触面間の錆や埃等を素早く取り除くことができ、常時スムーズにカバーを回動させることができるようになる。
また、本実施例の一対の挟持部52,53は挟持方向に貫通するネジ挿通孔を有し、これらの螺子挿通孔に対して一方側から他方側へ調節ボルト54bを挿し通してナット体54nに螺合させ、締め付けることにより一方の挟持部52を他方の挟持部53に対して弾力的に押し付ける構造となっているため、調節ボルト54bの締め付けトルクのみで調節体50の回動荷重を容易に調整することができる。よって、このような回動荷重調整手段を設けるのは好ましい。
さらに、調節体支軸51をカバー体15の左右方向に間隔を空けて複数か所に設けるとカバー体15の支持が安定するため好ましく、その場合に各調節体50に前述の回動荷重調整手段を設け、運転席5から遠い方の調節体支軸51における調節体50の回動荷重を、運転席5側の調節体支軸51における調節体50の回動荷重より弱くすると、運転席5側から調節体50を容易に回動させることができるため好ましい。
本実施例では、調節体支軸51をカバー体15に設け、挟持部52,53を調節体50に設けているが、反対に挟持部52,53をカバー体15に設け、調節体支軸51を調節体50に設けても良い。
他方、図示の実施例は、運転席5がウインドウで囲まれていない非キャビン型への適用例であるが、本発明は、ウインドウで囲まれた運転室を有するキャビン型にも適用することができ、その場合にもウインドウの水滴、泥土による汚れを防止できるといった利点がもたらされる。
本発明は、運転席の前側に穀稈の引起し装置が配置されるコンバインに利用できるものである。
5 運転席
8 穀稈引起し装置
K 引起し経路
12 引起しケース(前側)
12u 前側引起しケースの上端部前面
12c 屈曲位置
14 引起しラグ
15 カバー体
15a 上面カバー部
15b 後面カバー部
16 支軸
18 刈取サイドカバー
18a 上部サイドカバー
18b 下部サイドカバー
50 調節体
51 調節体支軸
52 挟持部
53 挟持部
53d 受け溝
60 補助引起し装置

Claims (7)

  1. 運転席(5)の前側に、穀稈を引き起す引起し装置(8)が配置されるコンバインにおいて、
    該引起し装置(8)の上方に、前後方向の傾斜姿勢を変更自在なカバー体(15)を設けるとともに、このカバー体(15)に、その前後方向のカバー範囲を拡大自在とする調節体(50)を設けたことを特徴とするコンバイン。
  2. 前記カバー体(15)は、引起し装置(8)の後側で左右方向に架設されたカバー体支軸(16)を回動支点として上下に揺動することで前後方向の傾斜姿勢を変更する構成とし、前記調節体(50)は、左右方向に沿う調節体支軸(51)を介してカバー体(15)に取り付けられ、この調節体支軸(51)を回動支点として回動することでカバー体(15)の前後方向のカバー範囲を拡大する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
  3. 前記調節体(50)及びカバー体(15)のいずれか一方に前記調節体支軸(51)が設けられ、いずれか他方に前記調節体支軸(51)を弾力的に挟持する一対の挟持部(52,53)が設けられ、この挟持部(52,53)の少なくとも一方(53)は調節体支軸(51)が嵌合する受け溝(53d)を有することを特徴とする請求項1又は2記載のコンバイン。
  4. 走行車体(1)の右側部分又は左側部分に運転席(5)を有し、運転席(5)の前方に引起し装置(8)を左右方向に間隔を空けて3基以上有し、前記カバー体(15)は両端の引起し装置(8)にわたるように延在しており、前記調節体(50)は少なくとも運転席(5)と対応する左右方向範囲をカバーするように左右方向に延在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバイン。
  5. 前記引起し装置(8)の横側に配置される刈取サイドカバー(18,18)を上部サイドカバー(18a)と下部サイドカバー(18b)とに分割すると共に、該上部サイドカバー(18a)を前記カバー体(15)と一体に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。
  6. 前記引起し装置(8)の引起しケース(12)の上端部前面(12u)を、該引起しケース(12)の下部前面よりも傾斜の緩い後上がり傾斜姿勢となるように屈曲形成するとともに、前記調節体(50)のカバー範囲を前方に拡大することにより前記調節体(50)の前端が引起しケース(12)の前面の屈曲位置よりも前方に位置しうる構成としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンバイン。
  7. 前記カバー体(15)は、引起し装置(8)の上側を覆うための上面カバー部(15a)と、この上面カバー部(15a)の後端部から引起し装置(8)の後側に向かって屈曲する後面カバー部(15b)とを有し、このうち上面カバー部(15a)に調節体支軸51を配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンバイン。
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