JP2011241515A - ガラス繊維織物の開繊装置及び開繊方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】処理後のガラス繊維糸束の糸幅のばらつきが小さいガラス繊維織物の開繊方法及び開繊装置を提供する。
【解決手段】開繊装置1では、ローラ31〜34の駆動により、ガラス繊維織物200がX方向に搬送され、上槽10の水系液W1内に浸漬される。下槽20内に載置された超音波発生装置の振動子40の振動で超音波振動が発生し、水系液W2を介して上槽10の底部11及び側部12のうち水系液W2と接する領域に振動が伝播し、底部11及び側部12が振動することにより水系液W1に振動が伝播する。これにより上槽10の水系液W1内のガラス繊維織物200に対して超音波振動が与えられ、ガラス繊維織物200が開繊される。水系液W1内の振動が均一となり、この振動により開繊するガラス繊維織物200の開繊後の糸幅のばらつきが抑制される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス繊維織物の開繊装置及び開繊方法に関する。
プリント配線基板用積層板として主に用いられるガラス繊維織物の樹脂の含浸性及び表面平滑性の向上を目的として、ガラス繊維織物に対して開繊処理を施すことが知られている。この開繊処理方法として、超音波を利用する方法が開示されている。特許文献1では、脱気水の存在下で、無機繊維織物を超音波で処理することで開繊を行う方法が示されている。
特開2003−96661号公報
一般的に、開繊処理後のガラス繊維織物を構成するガラス繊維糸束の経糸及び緯糸の糸幅にばらつきがあると、表面平滑性及び樹脂含浸性が低下することが知られている。近年、表面平滑性及び樹脂含浸性がより高いガラス繊維織物が求められていて、開繊処理後のガラス繊維織物を構成するガラス繊維糸束の糸幅のばらつきをより低下させる必要がある。
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、処理後のガラス繊維糸束の糸幅のばらつきが小さいガラス繊維織物の開繊装置及び開繊方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本願発明は処理槽と搬送手段とからなる。すなわち、本発明に係るガラス繊維織物の開繊装置は、水系液W2を貯留する下槽に対して水系液W1を貯留する上槽の下部を前記水系液W2に浸漬させ、下槽の水系液W2中であり且つ上槽に対して下側となる位置に超音波発生装置の振動子を設けた処理槽と、上槽の水系液W1中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させる搬送手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係るガラス繊維織物の開繊装置の他の態様として、水系液W1を貯留する下槽に対して水系液W2を貯留する上槽の下部を前記水系液W1に浸漬させた処理槽であって、上槽の水系液W2中に超音波発生装置の振動子を設けた処理槽と、下槽の水系液W1中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させる搬送手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係るガラス繊維織物の開繊装置の他の態様として、内部を隔壁により上槽及び下槽の二槽に区画された処理槽であって、下槽に水系液W2が充填されると共に、上槽に水系液W1が貯留され、下槽の水系液W2中に超音波発生装置の振動子が設けられた処理槽と、上槽の水系液W1中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させる搬送手段と、を備えることを特徴とする。
上記のガラス繊維織物の開繊装置によれば、ガラス繊維織物が搬送手段により搬送されながら浸漬される水系液W1が貯留される水槽と、超音波発生装置の振動子が設けられて水系液W2が貯留される水槽とが区別される。そして、超音波発生装置の振動子が振動することにより、超音波が発生すると、水系液W2が振動し、この振動が水系液W2を介して水系液W1が貯留される水槽に伝播し、ガラス繊維織物が浸漬される水系液W1が振動する。このとき、振動子の振動の影響を受けて水系液W1が貯留される水槽のうち水系液W1及び水系液W2と接する領域全体が振動し、この振動を受けて水系液W1が振動する。このようにガラス繊維織物が浸漬される水系液W1が貯留される水槽の外部から水系液W1が貯留される水槽に対して振動が与えられるため、水系液W1の振動が均一となり、この振動により開繊するガラス繊維織物の開繊後の糸幅のばらつきが抑制される。
また、ガラス繊維織物は、厚さが50μm以下であることが好ましい。ガラス繊維織物の厚さが上記の範囲であることで、上記の開繊装置を用いた処理により、ガラス繊維織物の開繊が好適に行われる。
なお、本発明は上記のようにガラス繊維織物の開繊装置として記述する他に、以下のようにガラス繊維織物の開繊方法としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
すなわち、本発明に係るガラス繊維織物の開繊方法は、水槽中に貯留された水系液中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させ、水槽の外部に設けられた超音波発生装置の振動子の振動により水系液を振動させることを特徴とする。
本発明によれば、処理後のガラス繊維糸束の糸幅のばらつきが小さいガラス繊維織物の開繊装置及び開繊方法が提供される。
第1実施形態に係る開繊装置の構成を説明する概略構成図である。 第1実施形態に係る開繊装置における超音波発生装置の振動子の配置を説明する図であり、下槽と振動子とを上方から見た図である。 第2実施形態に係る開繊装置の構成を説明する概略構成図である。 第3実施形態に係る開繊装置の構成を説明する概略構成図である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1,2を用いて第1実施形態に係る開繊装置の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る開繊装置の構成を説明する概略構成図である。また、図2は、第1実施形態に係る開繊装置における超音波発生装置の振動子の配置を説明する図であり、下槽と振動子とを上方から見た図である。図1に示すように、開繊装置1は、上槽10と下槽20とからなる処理槽100と、ローラ31〜34(搬送手段)と、振動子40と水改質装置50と、を含んで構成される。
上槽10及び下槽20はそれぞれが水系液を貯留可能な槽であって、上槽10と比較して下槽20の内径が大きくされていて、下槽20の内側に上槽10が設けられたいわゆる二重槽となっている。上槽10には、水系液W1が貯留される。また、下槽20には、水系液W2が貯留される。そして、上槽10の底部11と側部12のうちの下方の領域は、内側において水系液W1と接すると共に、外側において水系液W2と接触する状態となるまで、水系液W1及び水系液W2が貯留されている。このように、本実施形態の開繊装置1では、上槽10の底部11及び側部12のうち、その内側で水系液W1と接触すると共にその外側で水系液W2と接触する領域、すなわち、上槽10の底部11全体と、側部12のうちの下方の領域とが、処理槽の上槽10と下槽20とを区画している。このように、上槽10と下槽20とを区画する領域は、その全てが上槽10の水系液W1及び下槽20の水系液W2の両者と接する構成とされる。
そして、ローラ31〜34によってガラス繊維織物200がX方向に対して搬送されることにより、上槽10に貯留された水系液W1に対してガラス繊維織物200が浸漬される。
一方、下槽20の底部21の内側には2つの超音波発生装置の振動子30が配置される。振動子40は、図2に示すように下槽20の底部21において、ガラス繊維織物200の搬送方向Xに対して垂直な方向に沿って、搬送されるガラス繊維織物200に対応する位置に所定の間隔をあけて配置される。なお図2の破線は、上槽及びローラの配置を示している。
さらに、下槽20には、水改質装置50が接続される。この水改質装置50は下槽20に貯留される水系液W2の溶存気体量を制御する装置であり、吸引ライン51により水系液W2を吸引すると共に溶存気体量を調整された水系液W2が返送ライン52から下槽20に対して返送される構成となっている。
次に、上記の開繊装置1を構成する各部について詳細に説明する。
まず、開繊処理を行う対象であるガラス繊維織物200は、複数本のガラス繊維(フィラメント)により構成されたガラス繊維束を製織して得られ、例えば、経糸及び緯糸が製織されて形成されたものである。また、本実施形態に係る開繊装置1により開繊を好適に行うためには、ガラス繊維織物200の厚さが50μm以下であることが好ましく、10μm〜45μmがさらに好ましい。ガラス繊維織物200の厚さが50μmよりも大きい場合には、本実施形態のように超音波を利用した開繊を十分に行うことができない場合がある。また、ガラス繊維織物200の厚さが10μm未満である場合には、織物の目曲がりが発生しやすいため、取り扱い性が低下する可能性がある。また、本実施形態では、ガラス繊維織物200の幅は1280mmとされている。この幅は特に限定されない。
ガラス繊維織物200を構成するガラス繊維の材料であるガラスの組成は特に限定されないが、例えば、代表的な無アルカリガラスであるEガラス、低誘電率ガラス、高弾性率ガラス等が用いられる。また、ガラス繊維の太さは3μm〜25μmの範囲にあることが好ましい。そして、ガラス繊維束は、複数のガラスフィラメントをサイズ剤により集束して作製される。このサイズ剤は、例えば被膜形成剤成分がでんぷん系またはPVA(polyvinyl alcohol)系のサイズ剤である。
ガラス繊維束の番手は50tex〜1200texの範囲にあることが好ましい。なお、ガラス繊維束の番手(tex)は、ガラス繊維の1000mあたりの質量(グラム数)に相当する。また、ガラス繊維織物200の織組織としては、平織り・綾織等が挙げられるが、平織りが好適である。
なお、ガラス繊維織物の開繊処理は、ガラス繊維を集束するために用いられるサイズ剤を除去するために加熱炉等で熱処理する脱油工程よりも前段で行うことが好ましい。開繊処理は、水系液中で超音波振動を与えることでサイズ剤を軟化させて繊維束の開繊を行うものである。これに対して、脱油工程後はガラス繊維織物のサイズ剤が熱によって固化するいわゆるヒートセット現象が発生し、その結果開繊が十分に行われない可能性があるため、脱油工程前に開繊処理を行うことが好ましい。
上記のガラス繊維織物200を浸漬するために上槽10に貯留される水系液W1は、その種類は特に限定されず、例えば水道水、工業用水を使用してもよい。また、ガラス繊維束に付着したサイズ剤が溶けていてもよく、例えば、コロイダルシリカなどの粒子を含含有してもよい。
コロイダルシリカ含有水系液は、超高分子量無水珪酸からなる微粒子をコロイド溶液としたものである。より詳細には、この微粒子の体積平均粒子径は5μm〜2000μmであることが好ましく、70μm〜100μmであることがさらに好ましい。コロイダルシリカ含有水系液に対するコロイダルシリカの質量の割合は、0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜2質量%であることがより好ましい。コロイダルシリカ含有水系液にガラス繊維織物200を浸漬して開繊処理が行った場合、コロイダルシリカの微粒子がガラスフィラメント間に十分に入り込み、この微粒子がガラスフィラメント間の隙間を確保するので、特に樹脂含浸性に優れたガラス繊維織物を得ることができる。
水系液W1の水温を60℃〜90℃とすることが好ましい。水系液W1の水温を上記の範囲とすることで、ガラス繊維束に付着したサイズ剤の軟化が促進され、開繊装置1によるガラス繊維織物200の開繊効果を高めることができる。なお、水温が60℃未満である場合にはサイズ剤の軟化が不十分となりやすく、また、水温が90℃より高くしても、サイズ剤の軟化は促進されない。
また、ガラス繊維織物200を水系液W1中でローラ31〜34により搬送させる際の移動速度と、水系液W1中での浸漬時間については特に限定されず、ガラス繊維織物200の厚さやガラス繊維束の番手等によって適宜変更することができる。
超音波発生装置の振動子40が載置される下槽20に貯留される水系液W2は、その種類は特に限定されず、例えば水道水等を使用してもよい。また、水系液W2の水温を60℃〜90℃とすることが好ましい。水系液W2の水温を上記の範囲とすることで、水系液W2中の例えば空気、酸素などの溶存気体量を低減させることができる。溶存気体量を低減させた場合、振動子40の振動によって発生する圧力が溶存気体によって低減されることを抑制でき、ガラス繊維織物200の開繊を促進することができる。なお、この溶存気体量を低減させる方法は、水系液W2の水温を上昇させる方法のほかに、下槽20に接続された水改質装置50を使用する方法がある。水改質装置50を用いて溶存気体量を低下させた場合でも水温を60℃〜90℃とする場合と同様の効果が得られる。
なお、水系液W1と水系液W2とは上槽10と下槽20とに区画されて貯留するため、上槽10及び下槽20は個別に温度制御を行うことができる。ここで、上記のように水系液W1の水温及び水系液W2の水温のいずれも60℃〜90℃であることが好ましいので、水系液W1及び水系液W2の両者を加温する構成としてもよいが、水系液W1及び水系液W2の間の隔壁となる上槽10の底部11が熱伝導性を有する場合には、水系液W1及び水系液W2の少なくとも一方を加温する構成とすることで水系液W1及び水系液W2の双方の加温を行うこともできる。また、一方のみ加温する構成としてもよい。
上槽10及び下槽20は、水系液W1,W2をそれぞれ貯留することができる材質であれば特に限定されず、例えば鋼製、プラスチック製、FRP(繊維強化プラスチック)製等とすることができる。なお、比重及び弾性率が高い材質からなる場合のほうが、超音波振動による圧力の低下を低減することができるため、比重及び弾性率が高い鋼製であることが好ましい。上槽10及び下槽20が例えば振動を吸収しやすい柔軟性の高い材料等であると、下槽20から上槽10へ(又はその逆方向へ)超音波振動を効率よく伝播させることが困難となる。また、水系液W1,W2による腐食を考慮すると、ステンレス製であることがより望ましい。また、上槽10と下槽20とを区画すると共に、水系液W1及び水系液W2の双方に接触する上槽10の底部11と側部12は、超音波振動を伝播させる目的と水槽の強度面を考慮して、その厚さが2〜5mmであることが好ましい。また、ガラス繊維織物200の幅が1280mmである場合には、上槽10は、ガラス繊維織物200の幅と同じ方向の幅が1440mm、幅に対して垂直な方向の長さが1700mm、深さが200mmとされる。なお、この大きさは、ガラス繊維織物200の大きさやローラ31〜34の仕様等によって適宜変更される。
上槽10中でガラス繊維織物200を浸漬させる位置についても特に限定されないが、ガラス繊維織物200は上槽10の底部11に近いほうが、下槽20で発生し伝播する超音波の振動を受けやすいので好ましい。ただし上槽10の底部11とガラス繊維織物200との距離が2cm未満である場合には、ガラス繊維織物200が底部11に接触して破損する可能性がある。また、上槽10の底部11とガラス繊維織物200との距離が20cmよりも大きくなった場合には、超音波の振動が十分に伝わらない可能性がる。
下槽20内の底部には超音波発生装置の振動子40が載置される。超音波発生装置としては、特に限定されず、公知の装置を使用することができる。振動子40はガラス繊維織物200の幅が1280mmである場合、搬送方向Xに垂直な方向に沿って図2に示すように3台載置することができる。また、振動子40の数は限定されず、適宜変更することができる。また、振動子40の数を変更して超音波振動の強度を変更することに代えて、超音波発生装置による超音波の平均出力密度を調整することで超音波振動の強度を変更することもできる。ただし、振動子40のコストに対するガラス繊維織物200の開繊効果を考慮すると、振動子40は2台又は3台とすることが好ましい。振動子40は1台であってもよいが、上槽10の底部を均一に振動させることが困難となる可能性がある。
超音波発生装置の出力は、水系液中での周波数が約50kHz〜200kHzとなるように適宜選択することができる。
さらに、下槽20には水改質装置50が接続される。水改質装置50は、水系液W2の溶存気体量を制御するために設けられる。水改質装置50としては公知の装置を用いることができる。なお水改質装置50は必須の構成ではなく、例えば水系液W2の水温を制御することで、溶存気体量を低減させることができる場合には、水改質装置50を備えていなくてもよい。
上記の開繊装置1では、ローラ31〜34の駆動により、ガラス繊維織物200がX方向に搬送され、上槽10の水系液W1内に浸漬される。ここで、下槽20内に載置された超音波発生装置の振動子40が振動することにより、超音波振動が発生し、この振動は、水系液W2を介して上槽10の底部11及び側部12のうち水系液W2と接する領域に伝播し、底部11及び側部12が振動することにより水系液W1に振動が伝播する。これにより上槽10の水系液W1内のガラス繊維織物200に対して超音波振動が与えられ、ガラス繊維織物200が開繊される。
すなわち、本実施形態に係るガラス繊維織物200の開繊方法は、水系液W2を貯留する下槽20に対して水系液W1を貯留する上槽10の下部を浸漬させた処理槽100のうち、上槽10中に貯留された水系液W1中にガラス繊維織物200を搬送させながら浸漬させ、下槽20の水系液W2中であり且つ該上槽10に対して下側となる位置に設けた超音波発生装置の振動子40の振動により水系液W2を振動させることを特徴とする。
このように、上記実施形態に係る開繊装置1では、超音波発生装置の振動子40の振動の影響を受けて上槽10の底部11及び側部12のうち水系液W2と接する領域が振動し、この振動を受けて水系液W1が振動する。すなわち、ガラス繊維織物200が浸漬される水系液W1が貯留される上槽10の外部に設けられた振動子40によって、水系液W1が貯留される上槽10に対して振動が与えられるため、水系液W1の振動が均一となり、この振動により開繊するガラス繊維織物の200開繊後の糸幅のばらつきが抑制される。
さらに、水系液W1としてコロイダルシリカ含有水系液を使用した場合には、超音波発生装置の振動子40が載置されている下槽20と、コロイダルシリカ含有水系液が貯留される上槽10とが区画されているため、コロイダルシリカ含有水系液が超音波振動した場合に、超音波発生装置の振動子40に作用することで金属粉が発生することが抑制される。したがって、この金属粉がガラス繊維織物200に混入することによるガラス繊維織物200の製品不良の発生や、振動子40を含む超音波発生装置の破損を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、図3を用いて第2実施形態に係る開繊装置を説明する。図3は、第2実施形態に係る開繊装置の構成を説明する概略構成図である。
第2実施形態に係る開繊装置2が第1実施形態に係る開繊装置1と異なる点は以下の点である。すなわち、ガラス繊維織物200が下槽20内を搬送されている点、これ応じて水系液W1と水系液W2とが入れ替わっている点、及び、超音波発生装置の振動子40が上槽10内の底部11に載置されている点が第1実施形態と相違する。なお水改質装置は必要に応じて振動子40が載置され、且つ水系液W2が貯留される上槽10に対して接続される。
図3に示すように、開繊装置2では、ガラス繊維織物200が下槽20内にX方向に搬送されるようにローラ31〜34が配置される。そして、下槽20内には、上槽の底部11及び側部12の下側の領域と水系液W1とが接触するように水系液W1が所定量貯留され、この水系液W1に対してガラス繊維織物200が浸漬される構成とされる。一方、上槽10内には超音波発生装置の振動子40が載置され、この振動子40と接するように水系液W2が貯留される。これにより、上槽10と下槽20とを区画する上槽の底部11及び側部12の下側の領域は、上槽10の水系液W2及び下槽20の水系液W1の両者と接する構成とされる。
この開繊装置2では、上槽10内に載置された超音波発生装置の振動子40が振動することにより、超音波振動が発生し、この振動は、水系液W2を介して上槽10の底部11及び側部12のうち水系液W2と接する領域に伝播し、底部11及び側部12が振動することにより水系液W1に振動が伝播する。これにより下槽20の水系液W1内のガラス繊維織物200に対して超音波振動が与えられ、ガラス繊維織物200が開繊される。
すなわち、本実施形態に係るガラス繊維織物200の開繊方法は、水系液W1を貯留する下槽20に対して水系液W2を貯留する上槽10の下部を浸漬させた処理槽のうち、下槽20中に貯留された水系液W1中にガラス繊維織物200を搬送させながら浸漬させ、上槽10の水系液W1中に設けた超音波発生装置の振動子40の振動により水系液W2を振動させることを特徴とする。
このように、本実施形態に係る開繊装置2においても第1実施形態の開繊装置1と同様に超音波発生装置の振動子40の振動の影響を受けて上槽10の底部11及び側部12のうち水系液W2と接する領域が振動する。すなわち、ガラス繊維織物200が浸漬される水系液W1が貯留される下槽20の外部に設けられた振動子40によって、下槽20内の水系液W1に対して振動が与えられるため、水系液W1の振動が均一となり、この振動により開繊するガラス繊維織物の200開繊後の糸幅のばらつきが抑制される。
(第3実施形態)
次に、図4を用いて第3実施形態に係る開繊装置を説明する。図4は、第3実施形態に係る開繊装置の構成を説明する概略構成図である。
第3実施形態に係る開繊装置3が第1実施形態に係る開繊装置1と異なる点は以下の点である。すなわち、上槽の外側に下槽が設けられている構成ではなく、1つの処理槽60において中段に隔壁61が設けられていることにより上槽62と下槽63とに区画されている点が第1実施形態と相違する。
この処理槽60は、上槽62と下槽63とは、上槽62の底部を形成する隔壁61によって区画されている。そして、上槽62の内部には水系液W1が貯留されると共に、ローラ31〜34によってガラス繊維織物200がX方向に搬送されることでこの水系液W1に対してガラス繊維織物200が浸漬する構成となっている。また、下槽63にはその底部に超音波発生装置の振動子40が載置されると共に、下槽63の内部には水系液W2が充填されている。ここで充填とは、下槽63内の空間全てが水系液W2により満たされていることをいう。
そして、上槽62の底部を形成る隔壁61は、水系液W1が貯留される上槽62と水系液W2が充填される下槽63とが連通しないように設けられていて、上槽62内の水系液W1と下槽63内の水系液W2が混合することがないように区切られている。
また、下槽63にはその底部に超音波発生装置の振動子40が載置されると共に、下槽63の内部には水系液W2が満たされる。これにより隔壁63は上面側では水系液W1と接触し、下面側では水系液W2と接触する。なお水改質装置は必要に応じて振動子40が載置され、且つ水系液W2が貯留される下槽63に対して接続される。
なお、上槽62、下槽63及び隔壁61は、水系液W1,W2をそれぞれ貯留することができる材質であれば特に限定されず、例えば鋼製、プラスチック製、FRP(繊維強化プラスチック)製等とすることができる。なお、比重及び弾性率が高い材質からなる場合のほうが、超音波振動による圧力の低下を低減することができるため、比重及び弾性率が高い鋼製であることが好ましい。また、本実施形態の隔壁61としては平面形状の部材が用いられるが、隔壁61は平面形状でなくてもよく、例えば、その一部が凹凸を有している形状であってもよい。
ここで、処理槽60の下槽63内に載置された超音波発生装置の振動子40が振動することにより、超音波振動が発生し、この振動は、水系液W2を介して隔壁63に伝播し、この隔壁63が振動することにより水系液W1に振動が伝播する。これにより上槽62の水系液W1内のガラス繊維織物200に対して超音波振動が与えられ、ガラス繊維織物200が開繊される。
すなわち、本実施形態に係るガラス繊維織物200の開繊方法は、内部を隔壁10により上槽62及び下槽63の二槽に区画され、下槽63に水系液W2が充填されると共に、上槽62に水系液W1が貯留された処理槽60のうち上槽62の水系液W1中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させ、下槽63の該水系液W2中に設けられた超音波発生装置の振動子40の振動により水系液W2を振動させることを特徴とする。
このように、本実施形態に係る開繊装置3においても第1実施形態の開繊装置1と同様に超音波発生装置の振動子40の振動の影響を受けて隔壁61が振動し、この振動を受けて水系液W1が振動するする。すなわち、ガラス繊維織物200が浸漬される水系液W1が貯留される上槽62の外部に設けられた振動子40によって、上槽62内の水系液W1に対して振動が与えられるため、水系液W1の振動が均一となり、この振動により開繊するガラス繊維織物の200開繊後の糸幅のばらつきが抑制される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず種々の変更を行うことができる。
例えば、振動子40の配置は上記実施形態に限定されない。具体的には、ガラス繊維織物200の搬送方向Xに対して垂直な方向に沿って複数の振動子40を載置せず、搬送方向Xに対して所定の角度を有する方向に沿って複数の振動子40を配置する構成としてもよい。ただし、ガラス繊維織物200における開繊の均一性を考慮すると、ガラス繊維織物200の幅方向(搬送方向Xに対して垂直な方向)のうち一方側のみに振動子40が配置される構成よりも、ガラス繊維織物200の幅方向のどの位置に対しても振動子40が近接されるように配置されることが好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
第1実施形態に記載の開繊装置1(図1参照)を用いてガラス繊維織物の開繊を行った。具体的には、処理槽100は図1に示すように上槽10と下槽20とからなるステンレス製の二重槽を用いた。この処理槽の上槽10は、ガラス繊維織物200の幅と同じ方向の幅が1440mm、幅に対して垂直な方向の長さが1700mm、深さが200mmであった。また、開繊前のガラス繊維織物200としては、厚さが20μmのガラス繊維織物(型番:A1027、日東紡社製)を用いた。このガラス繊維織物200の幅は1280mmであった。
また、上槽10に貯留する水系液W1及び下槽20に貯留する水系液W2はいずれも水道水とし、水系液W2のみ温調器(型式:MCIII−60L、株式会社松井製作所製)により水温を60℃に調整した。なお水改質装置50は使用しなかった。水系液W2の溶存酸素を溶存酸素測定器により測定したところ、3ppmであった。また、超音波発生装置(品番:75203、株式会社カイジョー製)の振動子40は3台とし、ガラス繊維織物200の幅が1280mmであるのに対して下槽20の図2に示すように搬送方向Xに対して垂直な方向に3台載置した。振動子40の一辺の大きさは200mmであり、出力周波数は100kHzとし、超音波の出力密度1.2kWとした。
また、ローラ31〜34によるガラス繊維織物200の搬送速度は5m/分とし、上槽10内部におけるガラス繊維織物200の搬送位置は、ガラス繊維織物200が上槽10の底部11及び側部12に接触しない範囲の位置とした。
上記の開繊装置によりガラス繊維織物に対して開繊処理を行い、実施例1に係るガラス繊維織物を得た。
(実施例2)
水系液W1として水道水に代えてコロイダルシリカ含有水系液を用いた以外は実施例1と同様の開繊処理を行った。なお、実施例2で用いたコロイダルシリカは、粒径が70μmであり、コロイダルシリカ含有水系液の濃度が0.2重量%であった。以上により、実施例2に係るガラス繊維織物を得た。
(実施例3)
水系液W2の温度を90℃としたこと以外は実施例2と同様にして開繊処理を行い、実施例3に係るガラス繊維織物を得た。
(実施例4)
水系液W2の温度を90℃としたこと以外は実施例1と同様にして開繊処理を行い、実施例4に係るガラス繊維織物を得た。
(実施例5)
下槽20に対して、水改質装置(型式:40007、株式会社カイジョー製)を接続して、水系液W2の溶存気体量が溶存酸素の測定値で3ppm以下となるように調整し、水温の調整を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして開繊処理を行い、実施例5に係るガラス繊維織物を得た。
(実施例6)
水系液W2の温度を20℃としたこと以外は実施例1と同様にして開繊処理を行い、実施例4に係るガラス繊維織物を得た。なお、水系液W2の溶存酸素を溶存酸素測定器により測定したところ、5ppmであった。
(実施例7)
開繊前のガラス繊維織物200として、厚さが42μmのガラス繊維織物(型番:A1078、日東紡社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして開繊処理を行い、実施例7に係るガラス繊維織物を得た。
(実施例8)
開繊前のガラス繊維織物200として、厚さが70μmのガラス繊維織物(型番:A3313、日東紡社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして開繊処理を行い、実施例8に係るガラス繊維織物を得た。
(比較例1)
比較例1として、実施例1において開繊前のガラス繊維織物、すなわち、厚さが20μmのガラス繊維織物(型番:A1027、日東紡社製)を用いた。
(比較例2)
実施例1に用いた開繊前のガラス繊維織物に対して、単槽からなる処理槽を用いて開繊処理を行ったこと以外は実施例1と同様にした。
具体的には、単槽からなる処理槽の内部に超音波発生装置の振動子40を載置すると共に水系液W2を貯留し、処理槽の内部に対してローラを用いてガラス繊維織物を搬送することで、ガラス繊維織物を水系液W2に浸漬させることで、ガラス繊維織物に対して超音波処理を施すことで、比較例2に係るガラス繊維織物を得た。
(比較例3)
比較例3として、実施例8において開繊前のガラス繊維織物、すなわち、厚さが70μmのガラス繊維織物(型番:A3313、日東紡社製)を用いた。
(評価方法・結果)
実施例1〜8及び比較例1〜3のガラス繊維織物から、50mm×50mmサイズのサンプルをそれぞれ9箇所採取し、各サンプルの経糸・緯糸の糸幅を、それぞれ20箇所レーザ顕微鏡により測定した。これにより、各実施例・比較例においてそれぞれ180箇所の測定を行い、経糸及び緯糸のそれぞれについて、平均値、最大値、最小値、標準偏差を算出した。
実施例1〜8及び比較例1〜3のガラス繊維織物の製造条件及び評価結果を表1に示す。単槽の装置で超音波処理を行った比較例2と比して、実施例1〜8のガラス繊維織物では、経糸及び緯糸の双方について、糸幅の標準偏差が低いことが確認された。
また、実施例2,3はガラス繊維織物が浸漬される水系液W1がコロイダルシリカ含有水系液であったが、ガラス繊維織物が浸漬される上槽と超音波発生装置が載置される下槽とが区画されていたため、超音波発生装置の破損や、ガラス繊維織物に対する金属破片の混入等はなかった。
Figure 2011241515
1,2,3…開繊装置、10…上槽、11…底部、12…側部、20…下槽、21…底部、31〜34…ローラ、40…振動子(超音波発生装置)、50…水改質装置、100…処理槽、200…ガラス繊維織物。

Claims (5)

  1. 水系液W2を貯留する下槽に対して水系液W1を貯留する上槽の下部を浸漬させ、該下槽の該水系液W2中であり且つ該上槽に対して下側となる位置に超音波発生装置の振動子を設けた処理槽と、
    前記上槽の前記水系液W1中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させる搬送手段と、
    を備えることを特徴とするガラス繊維織物の開繊装置。
  2. 水系液W1を貯留する下槽に対して水系液W2を貯留する上槽の下部を浸漬させた処理槽であって、該上槽の該水系液W2中に超音波発生装置の振動子を設けた処理槽と、
    前記下槽の前記水系液W1中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させる搬送手段と、
    を備えることを特徴とするガラス繊維織物の開繊装置。
  3. 内部を隔壁により上槽及び下槽の二槽に区画された処理槽であって、該下槽に水系液W2が充填されると共に、該上槽に水系液W1が貯留され、該下槽の該水系液W2中に超音波発生装置の振動子が設けられた処理槽と、
    前記上槽の該水系液W1中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させる搬送手段と、
    を備えることを特徴とするガラス繊維織物の開繊装置。
  4. 前記ガラス繊維織物は、厚さが50μm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス繊維織物の開繊装置。
  5. 水槽中に貯留された水系液中にガラス繊維織物を搬送させながら浸漬させ、
    該水槽の外部に設けられた超音波発生装置の振動子の振動により該水系液を振動させる
    ことを特徴とするガラス繊維織物の開繊方法。



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