JP2011219596A - カーボネート型難燃剤の製造法 - Google Patents

カーボネート型難燃剤の製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】ハロゲン化カーボネート型難燃剤をホスゲンの使用量を最低限に抑えて収率よく経済的に製造する方法を提供する。
【解決手段】ハロゲン置換二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒及び触媒の存在下反応させてカーボネート型難燃剤を製造するに当り、該二価フェノールを該二価フェノールに対して1.5〜1.7倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し、該二価フェノールに対して1.1〜1.4倍モルのホスゲンを反応させるにあたり、ホスゲン投入量が該二価フェノールに対して1.0倍モルとなる時点から、該二価フェノールに対して0.3〜0.5倍モルのアルカリ化合物の水溶液を投入し始め、残ホスゲンの投入終了と同時に投入が終わるようにし、且つ触媒として該二価フェノールに対して0.02〜0.05倍モルのアミン類触媒を存在させて、反応系のpH9〜12、温度10〜30℃でホスゲン化反応させオリゴマーを得、次いで一価フェノールを投入するにあたり、該一価フェノールを該一価フェノールに対し1.0〜2.0倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し、該水溶液をpH9〜12、温度30〜38℃で投入し、さらにアルカリ化合物水溶液を投入し下pH13以上、温度30〜38℃で反応を完結することを特徴とするカーボネート型難燃剤の製造法。
【選択図】なし

Description

本発明は、カーボネート型難燃剤を製造する方法、更に詳しくはハロゲン置換二価フェノール及びホスゲンからカーボネート型難燃剤をホスゲンの使用量を最低限に抑えて収率よく経済的に製造する方法に関する。
従来より、カーボネート型難燃剤特にハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーは熱可塑性樹脂用の難燃剤として知られている。ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーは通常2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下テトラブロムビスフェノールAという)のようなハロゲン置換二価フェノールとホスゲンをアルカリ水溶液及び有機溶媒の存在下で反応させることにより製造されている。しかしながら、テトラブロムビスフェノールAのようなハロゲン置換二価フェノールとホスゲンの反応は、一般のポリカーボネート樹脂の原料である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAという)とホスゲンの反応に比べ、二個のブロムのオルト位置換による水酸基の立体障害によって反応性が低く、また平均重合度の低いオリゴマーを得るにはポリマーを得るよりも過剰のホスゲンとアルカリ化合物を使用する必要があるため、アルカリ化合物による分解反応が高い割合で起こる欠点がある。
特許文献1には二価フェノール、ホスゲン、アルカリ化合物、水、有機溶媒及びトリアルキルアミンを、水相対有機溶媒相の容積比を0.5〜1.0:1、アルカリ化合物対二価フェノールのモル比を2.0〜2.4:1、ホスゲン対二価フェノールのモル比を1.08〜1.50:1及びトリアルキルアミンを二価フェノールに対して0.01〜0.35モル%にして15〜50℃で界面反応させることにより低割合のホスゲンの使用でカーボネートオリゴマーのビスクロロホーメートを製造する方法が提案されている。しかしながら、この方法をテトラブロムビスフェノールAに適用したのでは、反応が充分に進行し難く、ホスゲンの分解反応の割合も大きく、収率よくハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを製造することはできない。
また、特許文献2には、有機溶媒及びアミン類触媒の存在下アルカリ水溶液に溶解したハロゲン置換二価フェノールとホスゲンを反応させる際に、ハロゲン置換二価フェノールに対するホスゲンのモル比を0.5〜1.1とし、アルカリ水溶液のpHを10〜11にするハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーの製造法が提案されている。しかしながら、この方法で得られるハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーは反応性分子鎖末端であるヒドロキシル基とクロロホーメート基が混在しており、熱可塑性樹脂の難燃剤として使用すると耐熱性不良、物性低下、表面不良、金型腐食等の問題が生じる。
また、特許文献3には、ハロゲン置換二価フェノールとホスゲンを界面反応させる際にpHを7〜9にし、ハロゲン置換二価フェノールに対して2〜20モル%の触媒を存在させてホスゲン化反応させた後、pHを13より高くして重縮合反応させるポリカーボネートの製造法が提案されている。しかしながら、この方法では、ハロゲン置換二価フェノールの主たる対象であるテトラブロムビスフェノールAは、溶媒として一般的に使用されている水と塩化メチレンの系で、pH7〜9の範囲では98%以上がフェノラートに転化せず、反応に不活性なジヒドロキシ化合物のままであること、及び一般的に触媒として使用されているトリエチルアミンの触媒効果を発揮させるにはpHが9以上の塩基度が必要であることから、目的とするテトラブロムビスフェノールAとホスゲンの反応は進行し難く、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを収率よく製造することはできない。
更に、特許文献4には、ハロゲン置換二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒及び触媒の存在下反応させてカーボネート型難燃剤を製造するに当り、アルカリ化合物の使用量を該二価フェノールに対して1.3〜2.4倍モル、ホスゲンの使用量を該二価フェノールに対して1.1〜1.8倍モルとし且つ触媒として該二価フェノールに対して0.01〜0.1倍モルのアミン類触媒を存在させて反応系のpH9〜12、温度10〜30℃でホスゲン化反応させ、次いで一価フェノールの存在下pH12以上、温度30〜38℃で反応を完結することを特徴とするカーボネート型難燃剤の製造法が提案されている。しかしながら、この方法ではホスゲン化反応時に追加のアルカリを添加せず、且つホスゲン化反応終了後、pHコントロールすること無く、一価フェノールおよびアルカリ化合物を加えpH12以上に調整しているため、この時点でクロロホーメート基の分解が生じホスゲンの無駄が生じており、効率よいハロゲン化カーボネート型難燃剤の製造方法とは云えない。
特開平03−002216号公報 特公昭55−014093号公報 特公昭52−036799号公報 特開平06−157737号公報
本発明の目的は、ハロゲン化カーボネート型難燃剤をホスゲンの使用量を最低限に抑えて収率よく経済的に製造する方法を提供することにある。
本発明者は、従来技術の欠点を改善し、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記に特定する諸条件を満足させればハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーに限らず、モノマー型ハロゲン化カーボネートからハロゲン化ポリカーボネートまでがホスゲンの使用量を最低限に抑えて収率よく経済的に製造し得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、
1.ハロゲン置換二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒及び触媒の存在下反応させてカーボネート型難燃剤を製造するに当り、該二価フェノールを該二価フェノールに対して1.5〜1.7倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し、該二価フェノールに対して1.1〜1.4倍モルのホスゲンを反応させるにあたり、ホスゲン投入量が該二価フェノールに対して1.0倍モルとなる時点から、該二価フェノールに対して0.3〜0.5倍モルのアルカリ化合物の水溶液を投入し始め、残ホスゲンの投入終了と同時に投入が終わるようにし、且つ触媒として該二価フェノールに対して0.02〜0.05倍モルのアミン類触媒を存在させて、反応系のpH9〜12、温度10〜30℃でホスゲン化反応させオリゴマーを得、次いで一価フェノールを投入するにあたり、該一価フェノールを該一価フェノールに対し1.0〜2.0倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し、該水溶液をpH9〜12、温度30〜38℃で投入し、さらにアルカリ化合物水溶液を投入し下pH13以上、温度30〜38℃で反応を完結することを特徴とするカーボネート型難燃剤の製造法、
が提供される。
本発明の製造法によれば、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー、ハロゲン化ポリカーボネート難燃剤をホスゲンの使用量を最低限に抑えて収率よく製造することを可能にし、その工業的効果は格別なものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するハロゲン置換二価フェノールは、テトラブロムビスフェノールAを主たる対象とするが、その一部又は全部を他のハロゲン置換二価フェノールで置き換えてもよい。他のハロゲン置換二価フェノールとしては例えば2,2−ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
アルカリ化合物はアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、なかでも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが特に好ましい。
アミン類触媒としては例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、ジエチル−n−プロピルアミン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、N−ジメチルアニリン、N−ジメチル−4−アミノピリジン、N−ジエチル−4−アミノピリジン等の三級アミン、トリメチルドデシルアンモニウムクロリド、トリエチルドデシルアンモニウムクロリド、ジメチルベンジルフェニルアンモニウムクロリド、ジエチルベンジルフェニルアンモニウムクロリド、トリメチルドデシルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルドデシルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム化合物が挙げられる。また、トリフェニル−n−ブチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド等の四級ホスホニウム塩を使用してもよい。これら触媒はホスゲン化反応時に添加するのが最も効果的であり、さらに後の重合反応時に添加してもよい。
本発明で使用する有機溶媒は水に対して実質的に不溶で、反応に対して不活性で且つ反応によって生成するハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを溶解する有機溶媒である。かかる有機溶媒としては例えば塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム等の塩素化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素、アセトフェノン、シクロヘキサノン、アニソール等があげられ、これらは単独又は二種以上混合して使用することができる。なかでも塩化メチレンが好ましい。その使用量は通常ハロゲン置換二価フェノールに対して15〜45倍モル程度である。
本発明にあってはハロゲン置換二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒及び触媒の存在下反応させるホスゲン化反応に際し、該二価フェノールを該二価フェノールに対して1.5〜1.7倍モル、好ましくは1.55〜1.65倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し反応を開始し、ホスゲン投入量が該二価フェノールに対して1.0倍モルを投入した時点から、該二価フェノールに対して0.3〜0.5倍モル、好ましくは0.35〜0.45倍モルのアルカリ化合物の水溶液を、残ホスゲンの投入終了と同時に投入が終わるように投入し、且つpHを9〜12に制御することによって過剰のアルカリ化合物によるホスゲンや生成したクロロホーメートの分解を抑制し、クロロホーメートの生成を促進する。
アルカリ化合物の使用量が上記範囲より少ないとき及び/又はpHが9未満のときは、クロロホーメートの生成反応が進行し難く、未反応物が多くなり反応収率が低下するようになる。アルカリ化合物の使用量が上記範囲より多いとき及び/又はpHが12より高いときは、重合度の制御が難しくなり、また未反応物も多くなり反応収率が低下するようになる。
ホスゲン化反応におけるホスゲンの使用量をハロゲン置換二価フェノールに対して1.1〜1.4倍モル、好ましくは1.20〜1.35倍モル、より好ましくは1.25〜1.33倍モルとし、且つ反応温度を10〜30℃、好ましくは20〜25℃にする必要がある。ホスゲンの使用量が上記範囲より少ないときはクロロホーメートの生成反応が進行し難く、未反応物が多くなり反応収率が低下するようになり、上記範囲より多いときは、より過剰のアルカリ化合物が必要になって、ホスゲンや生成したクロロホーメートの分解が多くなり、更に得られる生成物にクロロホーメート基が残存して耐熱性が悪化するようになる。反応温度が10℃より低いとホスゲン化反応速度が遅く未反応物が増えて反応収率が低下し、30℃より高くなるとホスゲンや生成したクロロホーメートの分解が多くなる。
ホスゲン化反応に際し、ハロゲン置換二価フェノールに対して0.02〜0.05倍モル、好ましくは0.03〜0.04倍モルのアミン類触媒を存在させる。アミン類触媒の使用量が上記範囲より少いとクロロホーメートの生成反応が進行し難く、未反応物が多く反応収率が低下するようになり、上記範囲より多いと重合度の制御が難しく、また反応収率も低下するようになる。
ホスゲン化反応終了後、一価フェノールを投入するに当たり、該一価フェノールを該一価フェノールに対し1.0〜2.0倍モル、好ましくは1.2〜1.8倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し、該水溶液を、オリゴマー溶液のpHが9〜12、温度が30〜38℃となるように調整しながら、好ましくは5〜60分かけて、オリゴマー溶液中に攪拌しながら投入する。その後、さらにアルカリ化合物水溶液を投入し、pH13以上、温度30〜38℃、好ましくは温度30〜36℃で、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間攪拌し、重合反応を完結する。
一価フェノールとしては例えばフェノール、クレゾール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、tert−オクチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、クロマン類等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上混合して使用してもよい。
一価フェノールの溶解に使用するアルカリ化合物の使用量が上記範囲を超えると投入時のpHコントロールが困難になりクロロホーメート末端の分解反応が促進される、上記範囲より少ないと一価フェノールのアルカリ水溶液による溶解が困難となる。
また、重合完結反応においてはpHが13未満では触媒の効果が充分に発揮されず、反応温度が30℃より低いと反応が進行し難く、いずれも収率が低下するようになる。反応温度が38℃より高くなると分解反応が生じるようになる。
一価フェノールの使用量は目的とする生成物の重合度によって異なり、常法により調整すればよい。反応によって得られる有機溶媒溶液から酸洗浄及び水洗等によって不純物を除去した後有機溶媒を除去することによって粉粒状の製品が得られる。
かくして得られるカーボネート型難燃剤は、末端停止剤として使用した一価フェノールの量により比粘度が0.01〜0.7のモノマー型ハロゲン化カーボネート、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー、ハロゲン化ポリカーボネートであり、特に従来製造が困難であった比粘度が0.01〜0.1程度のモノマー型乃至オリゴマー型のカーボネート型難燃剤が、本発明によれば容易に得られる。また、高分子型のものは難燃剤として使用され、難燃性樹脂としても利用できる。
以下に実施例をあげて更に説明する。なお、実施例中の部及び%は重量部及び重量%であり、反応収率、ホスゲン分解率、比粘度、末端塩素量、融点の測定及び衝撃強度、難燃性、外観の評価は下記の方法による。
(a)反応収率:反応終了後の水相中のフェノール成分量(未反応フェノール成分量)を、紫外線吸収スペクトルを測定して求め、次式により算出した。なお、仕込みフェノール成分量及び未反応フェノール成分量には一価フェノール成分を含む。
Figure 2011219596
実施例においてはハロゲン置換二価フェノールとしてテトラブロムビスフェノールA、末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール又は2,4,6−トリブロモフェノールを使用したので、これらを使用した場合について説明する。反応終了後の水相中に存在する未反応のテトラブロムビスフェノールA、p−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノールの各成分の濃度は、各成分の紫外線吸収が重なって現れるので、各成分の吸収極大波長における吸光係数を求め、下記の連立方程式により求めた。なお、吸光度は紫外線吸収スペクトロメータ[(株)日立製作所製 U−3200型]により測定した。テトラブロムビスフェノールAとp−tert−ブチルフェノールの濃度の測定は
Figure 2011219596
[Aは各波長での吸光度、bはセル光路長(cm)、Cxはp−tert−ブチルフェノールの濃度(g/リットル)、CyはテトラブロムビスフェノールAの濃度(g/リットル)]により、テトラブロムビスフェノールAと2,4,6−トリブロモフェノールの濃度の測定は
Figure 2011219596
[Aは各波長での吸光度、bはセル光路長(cm)、CyはテトラブロムビスフェノールAの濃度(g/リットル)、Czは2,4,6−トリブロモフェノールの濃度(g/リットル)]による。
(b)ホスゲン分解率:反応終了後の水相中の炭酸ナトリウム量を中和滴定により求め、次式により算出した。なお、ここでいうホスゲン分解率にはクロロホーメートの分解も含む。
Figure 2011219596
(c)比粘度:乾燥した試料0.700gを塩化メチレン100mlに溶解し、オストワルド粘度計により20℃で測定した。
(d)末端塩素量:乾燥した試料を塩化メチレンに溶解し、トリエチルアミンを加えて攪拌し、トリエチルアミンを加えないものをブランク値としてホルハルト法により測定した。
(e)融点:カバーグラス上に試料を乗せ、微量融点測定装置[柳本(株)製]の熱板上にセットし、拡大鏡で観察しつつ3℃/分で加熱して細かい液滴が認められたときから透明な液滴になるまでの温度を測定した。
(f)衝撃強度:ポリブチレンテレフタレート樹脂[帝人(株)製 TRB−H]100重量部に三酸化アンチモン[日本精鉱(株)製 ATOX−S]7重量部及び各実施例や比較例で得られたカーボネート型難燃剤14重量部を混合し、30mmφの押出機によりペレット化し、得られたペレットを乾燥した後射出成形機[名機(株)製3オンス]により64mm×12.7mm×3.18mm(1/8″)及び64mm×12.7mm×6.35mm(1/4″)の試験片を成形し、これらの試験片に0.25mmRのノッチを付けて温度23℃、湿度50%で24時間処理した後アイゾット衝撃試験機[東洋精機(製)]により測定した。
(g)難燃性(UL−94):(f)で得られたペレットを乾燥した後射出成形機[名機(株)製3オンス]により152mm×12.7mm×3.18mm(1/8″)及び152mm×12.7mm×6.35mm(1/4″)の試験片を成形し、これらの試験片を使用してアンダーライターズラボラトリーのSubject94に従って測定した。
(h)外観:試験片の表面を目視により、凹凸があって光沢のないものを×、凹凸があって光沢の少ないものを△、凹凸がなく光沢のよいものを○とした。
[実施例1]
(A)ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコに純水142.4g(33.62モル)、48.5%水酸化ナトリウム水溶液31.0g(水酸化ナトリウム1.60モル)、テトラブロムビスフェノールA127.9g(1.00モル)、塩化メチレン192.7g(9.65モル)及びトリエチルアミン0.9g(0.036モル)を仕込んで溶解し、攪拌下20〜25℃に保持し、ホスゲン30g(1.29モル)を70分を要して吹込んでホスゲン化反応させた。ホスゲンを1.00モル54分かけて吹き込んだ後、54分から70分にかけて48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.8g(水酸化ナトリウム0.40モル)をpH9〜12に調整しながら投入した。
(B)ホスゲン化反応終了後、純水169.3g(39.96モル)および48.5%水酸化ナトリウム水溶液13.2g(0.68モル)に2,4,6−トリブロモフェノール35.4g(0.455モル)を溶解し末端停止剤アルカリ水溶液を調整し、該溶液をpH9〜12に調整しながら温度30〜36℃に調節して20分かけて投入した。ついで48.5%水酸化ナトリウム水溶液5.8g(水酸化ナトリウム0.3モル)を加えpH13.5にし、30〜36℃に保持して2時間反応させた。反応終了後静置して水相と塩化メチレン相に分離し、水相中の未反応フェノール成分量と炭酸ナトリウム量から反応収率とホスゲン分解率を求めて結果を表3に示した。
(C)分離した塩化メチレン相を無機塩類及びアミン類がなくなるまで酸洗浄及び水洗した後、塩化メチレンを除去してハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。各成分の仕込みモル比、反応条件、反応収率、ホスゲン分解率、比粘度、末端塩素量、融点を表1及び表2に示した。また、得られたオリゴマーを上記の通りポリブチレンテレフタレート樹脂及び三酸化アンチモンと混合し、押出機により240℃でペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後射出成形機によりシリンダー温度240℃で衝撃強度測定試験片及び難燃性測定試験片を作成して衝撃強度、難燃性、外観を評価し、その結果を表3に示した。
[実施例2]
実施例1(B)において、2,4,6−トリブロモフェノール35.4g(0.455モル)の代わりに、p−tert−ブチルフェノール16.0g(0.455モル)を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例3]
実施例1(B)において、末端停止剤アルカリ水溶液を20分かけて投入する方法を、末端停止剤アルカリ水溶液を10分かけて投入する方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例4]
実施例1(A)において、ホスゲン30g(1.29モル)をホスゲン29.8g(1.28モル)に変更したこと、および実施例1(B)において、48.5%水酸化ナトリウム水溶液5.8g(水酸化ナトリウム0.3モル)を加える方法を48.5%水酸化ナトリウム水溶液5.0g(水酸化ナトリウム0.26モル)を加える方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例5]
実施例1(A)において、ホスゲン30g(1.29モル)をホスゲン30.2g(1.30モル)に変更したこと、および実施例1(B)において、48.5%水酸化ナトリウム水溶液5.8g(水酸化ナトリウム0.3モル)を加える方法を48.5%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(水酸化ナトリウム0.34モル)を加える方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例6]
実施例1(A)において、トリエチルアミン0.9g(0.036モル)をトリエチルアミン0.75g(0.030モル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例7]
実施例1(A)において、トリエチルアミン0.9g(0.036モル)をトリエチルアミン1.0g(0.040モル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例8]
実施例1(A)において、48.5%水酸化ナトリウム水溶液31.0g(水酸化ナトリウム1.60モル)を48.5%水酸化ナトリウム水溶液30.0g(水酸化ナトリウム1.55モル)に変更したこと、および48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.8g(水酸化ナトリウム0.40モル)を投入する方法を48.5%水酸化ナトリウム水溶液8.8g(水酸化ナトリウム0.45モル)を加える方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例9]
実施例1(A)において、48.5%水酸化ナトリウム水溶液31.0g(水酸化ナトリウム1.60モル)を48.5%水酸化ナトリウム水溶液32.0g(水酸化ナトリウム1.65モル)に変更したこと、および48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.8g(水酸化ナトリウム0.40モル)を投入する方法を48.5%水酸化ナトリウム水溶液6.8g(水酸化ナトリウム0.35モル)を加える方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例10]
実施例1(B)において、48.5%水酸化ナトリウム水溶液13.2g(0.68モル)を48.5%水酸化ナトリウム水溶液15.1g(水酸化ナトリウム0.78モル)に変更したこと、および48.5%水酸化ナトリウム水溶液5.8g(水酸化ナトリウム0.3モル)を加える方法を48.5%水酸化ナトリウム水溶液3.9g(水酸化ナトリウム0.2モル)を加える方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[実施例11]
実施例1(B)において、48.5%水酸化ナトリウム水溶液13.2g(0.68モル)を48.5%水酸化ナトリウム水溶液11.5g(水酸化ナトリウム0.59モル)に変更したこと、および48.5%水酸化ナトリウム水溶液5.8g(水酸化ナトリウム0.3モル)を加える方法を48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.5g(水酸化ナトリウム0.39モル)を加える方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[比較例1]
実施例1(A)において、トリエチルアミンを使用しなかったこと、および実施例1(B)において、ホスゲン化反応終了後、トリエチルアミン0.9g(0.036モル)を投入したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[比較例2]
実施例1(A)において、ホスゲン30g(1.29モル)をホスゲン33.0g(1.42モル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[比較例3]
実施例1(A)において、ホスゲン化前に添加する48.5wt%水酸化ナトリウム水溶液31.0g(水酸化ナトリウム1.60モル)を48.5wt%水酸化ナトリウム水溶液38.8g(水酸化ナトリウム2.00モル)に変更したこと、およびホスゲン化中に添加する48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.8g(水酸化ナトリウム0.40モル)を48.5%水酸化ナトリウム水溶液6.6g(水酸化ナトリウム0.34モル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[比較例4]
実施例1(A)において、ホスゲン化中に添加する48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.8g(水酸化ナトリウム0.40モル)を48.5%水酸化ナトリウム水溶液11.7g(水酸化ナトリウム0.60モル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[比較例5]
実施例1(B)において、ホスゲン化反応終了後、純水169.3g(39.96モル)および48.5%水酸化ナトリウム水溶液19.0g(0.98モル)に2,4,6−トリブロモフェノール35.4g(0.455モル)を溶解し末端停止剤アルカリ水溶液を調整し、該溶液をpH9〜13.5に調整しながら温度30〜36℃に調節して20分かけて加え、ついで30〜36℃に保持して2時間反応させる方法としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
[比較例6]
実施例1(B)において、末端停止剤アルカリ水溶液をpH9〜12に調整しながら温度30〜36℃に調節して20分かけて投入する方法を、末端停止剤アルカリ水溶液をpH9〜13.5に調整しながら温度30〜36℃に調節して5分かけて投入する方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。評価結果を表3に示した。
なお、表1および表2中の仕込みモル比の欄に記載する記号は下記の化合物を示し、表3中のN.D.は検出されないことを示す。
TEA:トリエチルアミン
TBA:テトラブロムビスフェノールA
PG:ホスゲン
Figure 2011219596
Figure 2011219596
Figure 2011219596
本発明の製造法により得られるカーボネート型難燃剤は、樹脂用の難燃剤として有用である。

Claims (1)

  1. ハロゲン置換二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒及び触媒の存在下反応させてカーボネート型難燃剤を製造するに当り、該二価フェノールを該二価フェノールに対して1.5〜1.7倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し、該二価フェノールに対して1.1〜1.4倍モルのホスゲンを反応させるにあたり、ホスゲン投入量が該二価フェノールに対して1.0倍モルとなる時点から、該二価フェノールに対して0.3〜0.5倍モルのアルカリ化合物の水溶液を投入し始め、残ホスゲンの投入終了と同時に投入が終わるようにし、且つ触媒として該二価フェノールに対して0.02〜0.05倍モルのアミン類触媒を存在させて、反応系のpH9〜12、温度10〜30℃でホスゲン化反応させオリゴマーを得、次いで一価フェノールを投入するにあたり、該一価フェノールを該一価フェノールに対し1.0〜2.0倍モルのアルカリ化合物の水溶液に溶解し、該水溶液をpH9〜12、温度30〜38℃で投入し、さらにアルカリ化合物水溶液を投入し下pH13以上、温度30〜38℃で反応を完結することを特徴とするカーボネート型難燃剤の製造法。
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