JP3778756B2 - ハロゲン化カーボネート化合物、その製造方法およびそれを用いた難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱安定性の良好なハロゲン化カーボネート化合物、かかるハロゲン化カーボネート化合物をハロゲン置換二価フェノール及びホスゲンから収率良く製造する方法およびこのハロゲン化カーボネート化合物を用いた難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カーボネート型難燃剤特にハロゲン化カーボネートオリゴマーは熱可塑性樹脂用の難燃剤として知られている。ハロゲン化カーボネートオリゴマーは通常2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下テトラブロムビスフェノールAという)のようなハロゲン置換二価フェノールとホスゲンをアルカリ水溶液及び有機溶媒の存在下で反応させることにより製造されている。しかしながら、テトラブロムビスフェノールAのようなハロゲン置換二価フェノールとホスゲンの反応は、一般のポリカーボネート樹脂の原料である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAという)とホスゲンの反応に比べ、2個のブロムのオルト位置換による水酸基の立体障害によって反応性が低く、またオリゴマーを得るにはポリマーを得るよりも過剰のホスゲンとアルカリ化合物を使用する必要がある。これによって、アルカリ化合物によるホスゲンの分解反応が高い割合で起こる欠点がある。
【0003】
また、ホスゲン、アルカリ化合物および脂肪族3級アミンを過剰に用いた場合、必要以上にクロロホーメート末端が生成し、クロロホーメートとアルカリ化合物の反応により、末端水酸基や、クロロホーメートと余剰のアミンが反応してウレタン結合(カルバモイル)が生成し、得られたカーボネート型難燃剤の熱安定性が低下するといった問題がある。
【0004】
また、末端停止剤を添加する際に余剰のホスゲンが存在すると、ジアリールカーボネートが生成し、得られたカーボネート型難燃剤の熱安定性が低下するといった問題がある。
【0005】
特開平3−2216号公報には二価フェノール、ホスゲン、アルカリ化合物、水、有機溶媒及びトリアルキルアミンを、水相対有機溶媒相の容積比を0.5〜1.0:1、アルカリ化合物対二価フェノールのモル比を2.0〜2.4:1、ホスゲン対二価フェノールのモル比を1.08〜1.50:1及びトリアルキルアミンを二価フェノールに対して0.01〜0.35モル%にして15〜50℃で界面反応させることにより低割合のホスゲンの使用でカーボネートオリゴマーのビスクロロホーメートを製造する方法が提案されている。しかしながら、この方法をそのままテトラブロムビスフェノールAに適用したのでは、反応が充分に進行し難く、ホスゲンの分解反応の割合も大きく、収率良くハロゲン化カーボネートオリゴマーを製造することはできない。
【0006】
また、特公昭55−14093号公報には、有機溶媒及びアミン類触媒の存在下アルカリ水溶液に溶解したハロゲン置換二価フェノールとホスゲンを反応させる際に、ハロゲン置換二価フェノールに対するホスゲンのモル比を0.5〜1.1とし、アルカリ水溶液のpHを10〜11にするハロゲン化カーボネートオリゴマーの製造法が提案されている。しかしながら、この方法で得られるハロゲン化カーボネートオリゴマーは反応性分子鎖末端であるヒドロキシル基とクロロホーメート基が混在しており、熱可塑性樹脂の難燃剤として使用すると熱安定性不良、物性低下、表面不良、金型腐食等の問題が生じる。
【0007】
さらに、特公昭52−36799号公報には、ハロゲン置換二価フェノールとホスゲンを界面反応させる際にpHを7〜9にし、ハロゲン置換二価フェノールに対して2〜20モル%の触媒を存在させてホスゲン化反応させた後、pHを13より高くして重縮合反応させるポリカーボネートの製造法が提案されている。しかしながら、この方法では、ハロゲン置換二価フェノールの主たる対象であるテトラブロムビスフェノールAは、溶媒として一般的に使用されている水と塩化メチレンの系で、pH7〜9の範囲では98%以上がフェノラートに転化せず、反応に不活性なジヒドロキシ化合物のままであること、及び一般的に触媒として使用されているトリエチルアミンの触媒効果を発揮させるにはpHが9以上の塩基度が必要であることから、目的とするテトラブロムビスフェノールAとホスゲンの反応は進行し難く、ハロゲン化カーボネートオリゴマーを収率よく製造することはできないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、特開平6−157737号公報において、ハロゲン置換二価フェノールとホスゲンを反応させてカーボネート型難燃剤を製造するに当り、アルカリ化合物の使用量を該二価フェノールに対して1.3〜2.4倍モル、ホスゲンの使用量を該二価フェノールに対して1.1〜1.8倍モルとし且つ触媒として該二価フェノールに対して0.01〜0.1倍モルのアミン類触媒を存在させて反応系のpH9〜12、温度10〜30℃でホスゲン化反応させ、次いで一価フェノールの存在下pH12以上、温度30〜38℃で反応させることにより、ホスゲンの使用量を最低限に抑えて収率良く経済的に製造する方法を提案した。しかしながら、かかる方法により得られたカーボネート型難燃剤は未だ熱安定性において十分ではなく、熱安定性の良好なハロゲン化カーボネートオリゴマーおよび反応性、生産性に優れたかかるハロゲン化カーボネートオリゴマーの製造方法が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の欠点を改善し、熱安定性に優れたハロゲン化カーボネートオリゴマー、かかるハロゲン化カーボネートオリゴマーを収率良く製造する方法およびこのハロゲン化カーボネート化合物を用いた難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。通常、反応性、生産性を上げるために、反応温度を上げる、反応時の濃度を高くする、触媒量を増やす等の手段があるが、かかる手段により得られるハロゲン化カーボネートオリゴマーは一価フェノールによる末端封鎖率が低下し、熱安定性が低下するものと予想された。しかしながら、本発明者は、上記目的を達成せんとして鋭意検討を重ねた結果、予想外にも有機溶媒の使用量および重合反応温度と時間に関して特定の条件を満足させることにより、末端塩素量、末端水酸基量が少ない熱安定性の良好なハロゲン化カーボネート化合物を収率良く製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、下記一般式(1)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Xは臭素原子または塩素原子、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基または−SO2−である。)
で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%で、比粘度が0.015〜0.1のハロゲン化カーボネート化合物であって、該ハロゲン化カーボネート化合物の末端水酸基量が、該ハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して、0.0005モル以下であることを特徴とするハロゲン化カーボネート化合物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記ハロゲン化カーボネート化合物は、その末端塩素量が0.3ppm以下であるハロゲン化カーボネート化合物が提供される。
【0014】
本発明のハロゲン化カーボネート化合物は、前記一般式(1)で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%であり、特に好ましくは実質的に前記一般式(1)で表される構成単位からなるハロゲン化カーボネート化合物である。
【0015】
また、前記一般式(1)において、Xは臭素原子または塩素原子、好ましくは臭素原子を示し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基または−SO2−、好ましくはメチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、−SO2−、特に好ましくはイソプロピリデン基を示す。
【0016】
本発明のハロゲン化カーボネート化合物は、残存するクロロホーメート基末端が少なく、末端塩素量が0.3ppm以下であり、好ましくは0.2ppm以下である。ここで、末端塩素量は、試料を塩化メチレンに溶解し、4−(p−ニトロベンジル)ピリジンを加えて末端塩素(末端クロロホーメート)と反応させ、これを紫外可視分光光度計(日立製作所製U−3200)により測定して求めたものである。末端塩素量が0.3ppmを超えると、ハロゲン化カーボネート化合物自体およびこれを樹脂に配合した樹脂組成物の熱安定性が低下し好ましくない。
【0017】
また、本発明のハロゲン化カーボネート化合物は、残存する水酸基末端が少なく、ハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して、末端水酸基量が0.0005モル以下であり、好ましくは0.0003モル以下である。ここで、末端水酸基量は、試料を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR法により測定して求めたものである。末端水酸基量がハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して、0.0005モルを超えると、ハロゲン化カーボネート化合物自体およびこれを樹脂に配合した樹脂組成物の熱安定性が低下し好ましくない。
【0018】
本発明のハロゲン化カーボネート化合物は、比粘度が0.015〜0.1の範囲、好ましくは0.015〜0.08の範囲である。ここで、ハロゲン化カーボネート化合物の比粘度は、温度20℃で濃度0.7g/dlの塩化メチレン溶液で測定したものである。本発明の比粘度が0.015〜0.1の範囲のハロゲン化カーボネートオリゴマーは、特に高温成形や色目が要求されるポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート用の難燃剤として好適に使用される。
【0019】
本発明の前記一般式(1)で示される末端塩素量が0.3ppm以下であり、末端水酸基量がハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して0.0005モル以下であるハロゲン化カーボネート化合物を得る方法としては、以下に示す製造方法が好適に用いられる。
【0020】
すなわち、本発明によれば、下記一般式(2)で示されるハロゲン置換二価フェノールを60モル%以上含む二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンとを有機溶媒および触媒の存在下反応させてハロゲン化カーボネート化合物を製造するに当り、
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、Xは臭素原子または塩素原子、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基または−SO2−である。)
(1).アルカリ化合物の使用量を該二価フェノールに対して0.9〜1.4倍モル、有機溶媒の使用量を該二価フェノール100gに対して40〜250mlとして、且つ触媒として該二価フェノールに対して0.01〜0.05倍モルのアミン類触媒を存在させた混合液を調製し、
(2).(1)の混合液に、該二価フェノールに対して1.1〜1.8倍モルのホスゲンを添加し、反応系のpHを9〜12の範囲でホスゲン化反応させ、
(3).(2)のホスゲン化後の反応液にアルカリ化合物を添加しpH12以上とし、且つ一価フェノールを添加し、次いで反応温度が37〜45℃の範囲で、且つ該温度範囲での反応時間が10〜120分となる条件で反応させることを特徴とする比粘度が0.015〜0.1であるハロゲン化カーボネート化合物の製造方法が提供される。
【0023】
本発明の製造方法で使用される二価フェノールは、前記一般式(2)で表されるハロゲン置換二価フェノールを60モル%以上、好ましくは80モル%以上有する二価フェノールであり、特に好ましくは実質的に前記一般式(2)で表されるハロゲン置換二価フェノールからなる二価フェノールである。かかるハロゲン置換二価フェノールとしては、具体的には2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称テトラブロムビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジクロル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。特にテトラブロムビスフェノールAが好ましく使用される。これらは単独もしくは2種以上を混合して使用できる。
【0024】
また、前記一般式(2)以外の二価フェノールとしては、上記ハロゲン置換二価フェノールのハロゲン置換していないもの、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられ、これらを全二価フェノール成分の40モル%以下になる量併用することもできる。
【0025】
本発明の製造方法で使用されるアルカリ化合物はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく用いられ、なかでも水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが特に好ましく用いられる。
【0026】
本発明の製造方法で使用される有機溶媒は水に対して実質的に不溶で、反応に対して不活性で且つ反応によって生成するハロゲン化カーボネートオリゴマーを溶解する有機溶媒である。かかる有機溶媒としては例えば塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム等の塩素化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素、アセトフェノン、シクロへキサノン、アニソール等があげられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。なかでも塩化メチレンが特に好ましく使用される。
【0027】
本発明の製造方法で使用されるアミン類触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリへキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、ジエチル−n−プロピルアミン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、N−ジメチルアニリン、N−ジメチル−4−アミノピリジン、N−ジエチル−4−アミノピリジン等の三級アミン、トリメチルドデシルアンモニウムクロリド、トリエチルドデシルアンモニウムクロリド、ジメチルベンジルフェニルアンモニウムクロリド、ジエチルベンジルフェニルアンモニウムクロリド、トリメチルドデシルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルドデシルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム化合物が挙げられる。また、トリフェニル−n−ブチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド等の四級ホスホニウム塩を使用してもよく、なかでもトリエチルアミンが好ましい。これら触媒はホスゲン化反応時に存在させる。
【0028】
本発明の製造方法においては、まず上記二価フェノール、アルカリ化合物、水、有機溶媒およびアミン類触媒からなる混合液を調製する。
【0029】
アルカリ化合物の使用量は、二価フェノールに対して0.9〜1.4倍モル、好ましくは0.95〜1.35倍モル、より好ましくは1.0〜1.3倍モルの範囲とする。アルカリ化合物の使用量が0.9倍モルより少ないと、ホスゲン化反応においてクロロホーメートの生成反応が進行し難く、未反応物が多くなり反応収率が低下するようになる。アルカリ化合物の使用量が1.4倍モルより多くなると、ホスゲン化反応において重合度の制御が難しくなり、また未反応物も多くなり反応収率が低下するようになる。
【0030】
有機溶媒の使用量は二価フェノール100gに対して40〜250mlであり、50〜240mlが好ましく、60〜230mlがより好ましい。有機溶媒の使用量が上記範囲より多いときは、ホスゲン化反応の完結に長い時間を要すと共に、水酸基やクロロホーメート基が残存して得られる反応生成物の熱安定性が悪化することとなる。有機溶媒の使用量が上記範囲より少ないときは有機溶媒相の粘性がホスゲン化反応と共に上昇し、反応液の攪拌混合状態が悪くなり、未反応物が多くなり反応収率が低下し、更に水酸基やクロロホーメート基が残存して得られる反応生成物の熱安定性が悪化することとなる。
【0031】
アミン類触媒の使用量は、二価フェノールに対して0.01〜0.05倍モルであり、0.015〜0.045倍モルが好ましく、0.02〜0.04倍モルがより好ましい。アミン類触媒の使用量が上記範囲より少いとホスゲン化反応の際クロロホーメートの生成反応が進行し難く、未反応物が多く反応収率が低下することとなり、アミン類触媒の使用量が上記範囲より多いとホスゲン化反応の際クロロホーメート基とアミンが反応してウレタン結合(カルバモイル)が生成し、反応生成物の熱安定性が悪化することとなる。
【0032】
上記調製された二価フェノール、アルカリ化合物、水、有機溶媒およびアミン類触媒からなる混合液は、次いでホスゲン化反応を行う。ホスゲン化反応は、かかる混合液にホスゲンを添加し、且つ反応系のpHを9〜12の範囲で反応させる。
【0033】
かかるホスゲン化反応におけるホスゲンの使用量は、二価フェノールに対して1.1〜1.8倍モルである。ホスゲンの使用量が上記範囲より少いときはクロロホーメートの生成反応が進行し難く、未反応物が多くなり反応収率が低下し、上記範囲より多いときは、より過剰のアルカリ化合物が必要になって、ホスゲンや生成したクロロホーメートの分解が多くなり、更に水酸基やクロロホーメート基が残存して得られる反応生成物の熱安定性が悪化することとなる。
【0034】
また、ホスゲン添加時に反応系のpHを9〜12、好ましくはpHを9.5〜11.8、更に好ましくはpHを10.0〜11.5の範囲に維持することが必要であり、ホスゲン化反応中にアルカリ化合物を添加することで上記pH範囲を維持することができる。かかるpH範囲とすることによって過剰のアルカリ化合物によるホスゲンや生成したクロロホーメートの分解を抑制し、クロロホーメートの生成を促進する。ホスゲン添加時の反応系のpHが9未満の時は、クロロホーメートの生成反応が進行し難く、未反応物が多くなり反応収率が低下することとなる。また、ホスゲン添加時の反応系のpHが12より高くなると、重合度の制御が難しくなり、また未反応物も多くなり反応収率が低下することとなる。
【0035】
また、ホスゲン化反応の際の反応温度は10〜30℃の範囲が好ましく、かかる範囲ではホスゲンの分解が少なくホスゲン化反応速度が適度で未反応物が少なく反応収率が高くなり好ましい。
【0036】
本発明の製造方法において、ホスゲン化反応終了後、反応溶液にアルカリ化合物を加えて反応系のpHを12以上にし、且つ一価フェノールを添加し、次いで反応温度が37〜45℃の範囲で、且つ該温度範囲での反応時間が10〜120分間となる条件でさらに重合反応させる。
【0037】
一価フェノールとしては、例えばフェノール、クレゾール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、tert−オクチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、ヒドロキシクロマン類等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上混合して使用してもよい。一価フェノールの使用量は目的とする反応生成物の重合度によって調整すればよい。また、反応系のpHが12未満では一価フェノールに起因するジアリールカーボネートが生成し、反応生成物の熱安定性に悪影響を及ぼし好ましくなく、また触媒の効果が充分に発揮されず、収率が低下するため好ましくない。
【0038】
重合反応温度および重合反応時間は、37〜45℃の温度範囲であり、該温度範囲での反応時間が10〜120分、好ましくは15〜90分、更に好ましくは20〜70分となる条件で重合反応させる必要がある。反応温度が溶媒の沸点以上になる場合にはオートクレープ等圧力容器を用い加圧下で行うことが好ましい。重合反応温度が37℃より低くまたは上記温度範囲での反応時間が短いと、反応完結に長い時間を要すと共に、水酸基やクロロホーメート基が残存して得られる反応生成物の熱安定性が悪化することとなり好ましくない。重合反応温度が45℃を超えると反応生成物の分解反応が生じ好ましくない。
【0039】
かかる重合反応によって得られる有機溶媒溶液から酸洗浄及び水洗等によって不純物を除去した後有機溶媒を除去することによって粉粒状のハロゲン化カーボネート化合物が得られる。
【0040】
本発明の製造方法により得られるハロゲン化カーボネート化合物は、残存するクロロホーメート基末端および水酸基末端が少なく、末端塩素量が0.3ppm以下であり、末端水酸基量がハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して0.0005モル以下である。また、末端停止剤として使用した一価フェノールの使用量により、比粘度が0.015〜0.1の範囲のハロゲン化カーボネートオリゴマー化合物を容易に得ることができる。
【0041】
さらに、本発明によれば、熱可塑性樹脂成分100重量%中、少なくとも50重量%が芳香族ポリエステル樹脂である熱可塑性樹脂100重量部および前記一般式(1)で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%で、比粘度が0.015〜0.1のハロゲン化カーボネート化合物であって、該ハロゲン化カーボネート化合物の末端塩素量が0.3ppm以下であるハロゲン化カーボネート化合物0.1〜50重量部からなる難燃性樹脂組成物が提供される。
【0042】
また、本発明によれば、熱可塑性樹脂成分100重量%中、少なくとも50重量%が芳香族ポリエステル樹脂である熱可塑性樹脂100重量部および前記一般式(1)で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%で、比粘度が0.015〜0.1のハロゲン化カーボネート化合物であって、該ハロゲン化カーボネート化合物の末端水酸基量が、該ハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して、0.0005モル以下であるハロゲン化カーボネート化合物0.1〜50重量部からなる難燃性樹脂組成物が提供される。
【0043】
本発明で用いられる芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸又はその反応性誘導体と、ジオール、又はそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
【0044】
ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸が好適に用いられ、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。
【0045】
芳香族ジカルボン酸は二種以上を混合して使用してもよい。尚、少量であれば該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
【0046】
また本発明の芳香族ポリエステルの成分であるジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を含有するジオール等およびそれらの混合物等が挙げられる。更に少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
【0047】
また本発明の芳香族ポリエステルは少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0048】
具体的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等のような共重合ポリエステルが挙げられる。
【0049】
これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用でき、特に、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが好ましく使用される。
【0050】
また得られた芳香族ポリエステル樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0051】
かかる芳香族ポリエステル樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水又は低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。
【0052】
また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。
【0053】
また芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、o−クロロフェノールを溶媒として25℃で測定した固有粘度が0.4〜1.2が好ましく、0.65〜1.15がより好ましい。
【0054】
本発明において使用される熱可塑性樹脂は、その熱可塑性樹脂成分100重量%中、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%が芳香族ポリエステル樹脂である。また、実質的にかかる芳香族ポリエステル樹脂単独のものも好ましい態様として採用される。
【0055】
かかる芳香族ポリエステル樹脂以外に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性スチレン樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
本発明で用いられるハロゲン化カーボネート化合物は、前述した末端塩素量や末端水酸基量が低減されたハロゲン化カーボネート化合物であり、これを使用した樹脂組成物は、熱安定性および難燃性に優れる。かかるハロゲン化カーボネート化合物の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であり、0.2〜30重量部が好ましく、0.3〜20重量部がより好ましい。
【0057】
また、前記樹脂組成物には、無機系難燃助剤を必要に応じて使用することができる。かかる無機系難燃助剤としては、臭素化合物との相互作用により難燃性を増加させるものであり、具体的には、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三酸化硼素、硼酸亜鉛、赤リン等が挙げられ、なかでも三酸化アンチモンおよび五酸化アンチモンが特に好ましい。無機系難燃助剤の配合量は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜25重量部が好ましく、0.2〜20重量部がより好ましく、0.3〜15重量部がさらに好ましく、0.5〜10重量部が特に好ましい。
【0058】
また、前記樹脂組成物には、無機充填剤を必要に応じて使用することができる。無機充填剤としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、炭素繊維、金属繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカー等の繊維状充填剤、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトフレーク等の板状充填剤、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、炭素短繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、セラミックバルーン、カーボンビーズ、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、赤リン等の各種粒子状充填剤、および上記各種の無機充填材にメッキ、蒸着、スパッタリング等の方法により、金、銀、ニッケル、銅、クロム、アルミニウム等に代表される各種金属や、酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等に代表される金属酸化物等を被覆した無機充填材を挙げることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、マイカ、タルク、ワラストナイトや、これらに各種金属、金属酸化物等を被覆したものが使用できる。無機充填剤の配合量は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、5〜200重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。
【0059】
本発明の難燃性樹脂組成物は、これらの各成分を上記配合割合で配合し、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、二軸押出機等により混合混練する方法を適宜用いることにより製造される。
【0060】
また、本発明の難燃性樹脂組成物には、着色剤、顔料、安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、発泡剤、その他の添加剤を所望により配合することができる。
【0061】
【実施例】
以下に実施例をあげて更に説明する。なお、実施例中の部及び%は重量部及び重量%であり、反応収率、ホスゲン分解率、比粘度、末端塩素量(クロロホーメート量)、末端水酸基量、融点、熱安定性及び難燃性の評価は下記の方法に従った。
【0062】
(a)反応収率:反応終了後の水相中のフェノール成分量(未反応フェノール成分量)を、紫外線吸収スペクトルを測定して求め、次式により算出した。なお、仕込みフェノール成分量及び未反応フェノール成分量には一価フェノール成分を含む。
【0063】
【数1】
【0064】
実施例においてはハロゲン置換二価フェノールとしてテトラブロムビスフェノールA、末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール又は2,4,6−トリブロモフェノールを使用したので、これらを使用した場合について説明する。反応終了後の水相中に存在する未反応のテトラブロムビスフェノールA、p−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノールの各成分の濃度は、各成分の紫外線吸収が重なって現れるので、各成分の吸収極大波長における吸光係数を求め、下記の連立方程式により求めた。なお、吸光度は紫外線吸収スペクトロメータ[(株)日立製作所製U−3200型]により測定した。テトラブロムビスフェノールAとp−tert−ブチルフェノールの濃度の測定は
【0065】
【数2】
【0066】
[Aは各波長での吸光度、bはセル光路長(cm)、Cxはp−tert−ブチルフェノールの濃度(g/リットル)、CyはテトラブロムビスフェノールAの濃度(g/リットル)]により、テトラブロムビスフェノールAと2,4,6−トリブロモフェノールの濃度の測定は
【0067】
【数3】
【0068】
[Aは各波長での吸光度、bはセル光路長(cm)、CyはテトラブロムビスフェノールAの濃度(g/リットル)、Czは2,4,6−トリブロモフェノールの濃度(g/リットル)]による。
【0069】
(b)ホスゲン分解率:反応終了後の水相中の炭酸ナトリウム量を中和滴定により求め、次式により算出した。なお、ここでいうホスゲン分解率にはクロロホーメートの分解も含む。
【0070】
【数4】
【0071】
(c)比粘度:乾燥した試料0.700gを塩化メチレン100mlに溶解し、オストワルド粘度計により20℃で測定し、次式により算出した。
【0072】
【数5】
【0073】
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0074】
(d)末端塩素量(クロロホーメート量):乾燥した試料を塩化メチレンに溶解し、4−(p−ニトロベンジル)ピリジンを加えて末端塩素と反応させ、これを紫外可視分光光度計(日立製作所製U−3200)により測定した。検出限界は0.2ppmである。
【0075】
(e)末端水酸基量:乾燥した試料を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR法により測定した。検出限界は、ハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して0.0003モルである。
(f)融点:カバーグラス上に試料を乗せ、微量融点測定装置[柳本(株)製]の熱板上にセットし、拡大鏡で観察しつつ3℃/分で加熱して細かい液滴が認められたときから透明な液滴になるまでの温度を測定した。
【0076】
(g)ハロゲン化カーボネート化合物の熱安定性:熱重量測定装置(DuPont製951)により、40ml/分の窒素気流下、20℃/分の昇温速度で測定した5%重量減少温度を測定した。
【0077】
(h)樹脂組成物の熱安定性:ポリブチレンテレフタレート樹脂[帝人(株)製TRB−H]100重量部に三酸化アンチモン[日本精鉱(株)製ATOX−S]7重量部及び各実施例や比較例で得られたハロゲン化カーボネートオリゴマー14重量部を混合し、30mmφの押出機により成形温度240℃でペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後射出成形機((株)名機製作所製SJ−25B)を用い、シリンダー温度265℃で10分間滞留させたものとさせないものの試験片(縦70mm、横50mm、厚み2mm)をそれぞれ作成し、その色相の変化(△E)を測定した。色相の変化は、JISZ−8730に従い、色差計(日本電色(株)製SE−2000)を用いて、それぞれのL、a、b値を測定して、次式により算出した。
【0078】
【数6】
【0079】
(i)難燃性(UL−94):(h)で得られたペレットを乾燥した後射出成形機[(株)名機製作所製SJ−25B]によりシリンダー温度265℃で縦152mm×横12.7mm×厚み3.18mm(1/8インチ)及び縦152mm×横12.7mm×厚み1.59mm(1/16インチ)の試験片を成形し、これらの試験片を使用してアンダーライターズラボラトリーのSubject94に従って測定した。
【0080】
[実施例1]
ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコにテトラブロムビスフェノールA130g(0.239モル)、7.0%水酸化ナトリウム水溶液161ml(水酸化ナトリウム0.298モル)、塩化メチレン267ml及びトリエチルアミン0.84ml(0.006モル)を仕込んで溶解し、攪拌下20〜25℃に保持し、48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.76ml(水酸化ナトリウム0.141モル)を加えながらホスゲン29.8g(0.301モル)を60分を要して吹込んでホスゲン化反応させた。ホスゲン化反応終了後p−tert−ブチルフェノール11.1g(0.074モル)と水酸化ナトリウム3.19g(0.080モル)を溶解した水溶液185mlと共に48.5%水酸化ナトリウム水溶液9.64ml(水酸化ナトリウム0.175モル)を加え、38〜41℃の温度で60分間反応させた。反応終了後静置して水相と塩化メチレン相に分離し、水相中の未反応フェノール成分量と炭酸ナトリウム量から反応収率とホスゲン分解率を求めて結果を表2に示した。
【0081】
分離した塩化メチレン相を無機塩類及びアミン類がなくなるまで酸洗浄及び水洗した後、塩化メチレンを除去してハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0082】
[実施例2]
ホスゲン吹込時に加える48.5%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を8.04ml(水酸化ナトリウム0.146モル)とし、ホスゲンの使用量を31.6g(0.319モル)とし、ホスゲン化反応終了後に加えるp−tert−ブチルフェノール水溶液をp−tert−ブチルフェノール16.8g(0.112モル)と水酸化ナトリウム4.83g(0.121モル)を溶解した水溶液280mlとし、これと共に加える48.5%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を8.42ml(水酸化ナトリウム0.153モル)にする以外は実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0083】
[実施例3]
ホスゲン吹込時に加える48.5%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を5.24ml(水酸化ナトリウム0.095モル)とし、ホスゲンの使用量を27.8g(0.281モル)とし、ホスゲン化反応終了後に加えるp−tert−ブチルフェノール水溶液をp−tert−ブチルフェノール4.84g(0.032モル)と水酸化ナトリウム1.39g(0.035モル)を溶解した水溶液80.6mlとし、これと共に加える48.5%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を13.9ml(水酸化ナトリウム0.253モル)にする以外は実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0084】
[実施例4]
ホスゲン吹込時に加える48.5%水酸化ナトリウム水溶液の使用量を9.46ml(水酸化ナトリウム0.172モル)とし、ホスゲンの使用量を33.5g(0.338モル)とし、ホスゲン化反応終了後に加えるp−tert−ブチルフェノール水溶液に代えて2,4,6−トリブロモフェノール36.4g(0.110モル)と水酸化ナトリウム15.2g(0.38モル)を溶解した水溶液197mlとし、これと共に加える48.5%水酸化ナトリウム水溶液を加えない以外は実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0085】
[実施例5]
塩化メチレンの使用量を130mlとした以外は実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0086】
[比較例1]
ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコにテトラブロムビスフェノールA130g(0.239モル)、7.0%水酸化ナトリウム水溶液161ml(水酸化ナトリウム0.298モル)、塩化メチレン361ml及びトリエチルアミン0.84ml(0.006モル)を仕込んで溶解し、攪拌下20〜25℃に保持し、48.5%水酸化ナトリウム水溶液7.76ml(水酸化ナトリウム0.141モル)を加えながらホスゲン29.8g(0.301モル)を60分を要して吹込んでホスゲン化反応させた。ホスゲン化反応終了後p−tert−ブチルフェノール11.1g(0.074モル)と水酸化ナトリウム3.19g(0.080モル)を溶解した水溶液185mlと共に48.5%水酸化ナトリウム水溶液9.64ml(水酸化ナトリウム0.175モル)を加え、30〜36℃の温度で120分間反応させた。反応終了後実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0087】
[比較例2]
実施例1において、ホスゲン化反応終了後p−tert−ブチルフェノール11.1g(0.074モル)と水酸化ナトリウム3.19g(0.080モル)を溶解した水溶液185mlと共に48.5%水酸化ナトリウム水溶液9.64ml(水酸化ナトリウム0.175モル)を加えた後、38〜41℃の温度で2分間反応させた後、すぐに冷却し、以降30〜36℃の温度で90分間反応させた以外は実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0088】
[比較例3]
実施例1において、ホスゲン化反応終了後p−tert−ブチルフェノール11.1g(0.074モル)と水酸化ナトリウム3.19g(0.080モル)を溶解した水溶液185mlと共に48.5%水酸化ナトリウム水溶液9.64ml(水酸化ナトリウム0.175モル)を加えた後、30〜36℃の温度で120分間反応させた以外は実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0089】
[比較例4]
トリエチルアミンの使用量を6.62ml(0.048モル)とした以外は比較例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。生成物の赤外吸収スペクトルには1740cm-1にジエチルカルバモイル末端の存在を示唆するピークが観測された。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0090】
[比較例5]
塩化メチレンの使用量を361mlとし、38℃〜41℃での反応時間を60分間から90分間に代えた以外は実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0091】
[比較例6]
ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコにテトラブロムビスフェノールA108g(0.199モル)、4.6%水酸化ナトリウム水溶液420ml(水酸化ナトリウム0.498モル)及び塩化メチレン300mlを仕込んで溶解し、攪拌下20〜25℃に保持し、48.5%水酸化ナトリウム水溶液30.8ml(水酸化ナトリウム0.560モル)を加えつつホスゲン42.3g(0.428モル)を60分を要して吹込んでホスゲン化反応させた。ホスゲン化反応終了後、p−tert−ブチルフェノール9.2g(0.061モル)と水酸化ナトリウム2.65g(0.066モル)を溶解した水溶液153mlと共に48.5%水酸化ナトリウム水溶液10.0ml(水酸化ナトリウム0.182モル)及びトリエチルアミン0.78ml(0.0056モル)を加え、30〜36℃の温度で120分間反応させた。反応終了後実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0092】
[比較例7]
ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコにテトラブロムビスフェノールA130g(0.239モル)、p−tert−ブチルフェノール11.1g(0.074モル)、7.0%水酸化ナトリウム水溶液378ml(水酸化ナトリウム0.699モル)及び塩化メチレン212mlを仕込んで溶解し、攪拌下20〜25℃に保持し、48.5%水酸化ナトリウム水溶液87.3ml(水酸化ナトリウム1.59モル)を加えつつホスゲン52.9g(0.534モル)を60分を要して吹込んでホスゲン化反応させた。ホスゲン化反応終了後、トリエチルアミン4.67ml(0.0337モル)を加え、30〜36℃に保持して120分間反応させた。反応終了後実施例1と同様にしてハロゲン化カーボネートオリゴマーを得た。得られたハロゲン化カーボネートオリゴマーは高速液体クロマトグラフィーにより、ビス(4−tert−ブチルフェニル)カーボネートが検出された。また、生成物の赤外吸収スペクトルには1740cm-1にジエチルカルバモイル末端の存在を示唆するピークが観測された。反応条件を表1に、評価結果を表2に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
なお、表1中の仕込みモル比の欄に記載する記号は下記の化合物を示し、表2中のN.D.は検出されないことを示す。
(1)TBA:テトラブロムビスフェノールA
(2)TEA:トリエチルアミン
(3)PTBP:p−tert−ブチルフェノール
(4)MC:塩化メチレン
(5)PG:ホスゲン
(6)TBP:2,4,6−トリブロモフェノール
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、末端塩素量、末端水酸基量の低い熱安定性に優れたハロゲン化カーボネート化合物が得られ、このハロゲン化カーボネート化合物は難燃剤として好適に使用され、その奏する工業的効果は格別なものである。
Claims (7)
- 前記ハロゲン化カーボネート化合物は、その末端塩素量が0.3ppm以下である請求項1記載のハロゲン化カーボネート化合物。
- ハロゲン化カーボネート化合物は、前記一般式(1)において、Xは臭素原子およびRはイソプロピリデン基を示す化合物である請求項1記載のハロゲン化カーボネート化合物。
- 下記一般式(2)で示されるハロゲン置換二価フェノールを60モル%以上含む二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンとを有機溶媒および触媒の存在下反応させてハロゲン化カーボネート化合物を製造するに当り、
(1).アルカリ化合物の使用量を該二価フェノールに対して0.9〜1.4倍モル、有機溶媒の使用量を該二価フェノール100gに対して40〜250mlとして、且つ触媒として該二価フェノールに対して0.01〜0.05倍モルのアミン類触媒を存在させた混合液を調製し、
(2).(1)の混合液に、該二価フェノールに対して1.1〜1.8倍モルのホスゲンを添加し、反応系のpHを9〜12の範囲でホスゲン化反応させ、
(3).(2)のホスゲン化後の反応液にアルカリ化合物を添加しpH12以上とし、且つ一価フェノールを添加し、次いで反応温度が37〜45℃の範囲で、且つ該温度範囲での反応時間が10〜120分となる条件で反応させることを特徴とする比粘度が0.015〜0.1であるハロゲン化カーボネート化合物の製造方法。 - ハロゲン置換二価フェノールが、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである請求項4記載のハロゲン化カーボネート化合物の製造方法。
- 有機溶媒が、塩化メチレンである請求項4記載のハロゲン化カーボネート化合物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂成分100重量%中、少なくとも50重量%が芳香族ポリエステル樹脂である熱可塑性樹脂100重量部および請求項1記載のハロゲン化カーボネート化合物0.1〜50重量部からなる難燃性樹脂組成物。
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