従来の記録装置は、インクの種類や色合いだけで被記録媒体の装飾を図るしかなく、色彩による単調な表現しかできなかった。
一方、装飾性を向上するために、ラメ等の装飾材を含有させたインクを用いることも考えられる。しかし、この場合には次のような課題が存在する。装飾材を含有したインクを吐出手段から吐出するためには、装飾材の大きさを吐出口よりも小さくする必要があり、その形状も球状に近いものとする必要がある。このため、装飾材の大きさや形状が制限を受ける。また、インクが装飾材を過剰に含有すると吐出手段がインクを吐出できなくなるおそれがあるため、装飾材の含有量も制限を受ける。さらに、装飾材を含有するインクにおいては、装飾材はインクを構成する液体状の溶媒中に浮遊するが、インクが紫外線により硬化すると、硬化した溶媒がインクの表面を覆い、大半の装飾材が硬化した溶媒の内側に位置することになる。このため、自然光や電灯の光がインク表面に当たっても装飾材に届かず、装飾材は装飾機能を十分に発揮することができない。このように、装飾材を含有させたインクを用いたとしても、所望の装飾性を得られるとは限らなかった。
本発明の目的は、インク以外の材料により装飾を行えるようにすることで、装飾性を向上することができる記録装置、記録装置の制御プログラム、記録方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、第1発明の記録装置は、被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の照射を契機に粘着性を生じながら硬化が進行し、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有するインクを吐出するノズルを備えた吐出手段と、紫外線を照射する照射手段と、前記載置手段を移動させる駆動手段と、前記載置手段が載置した前記被記録媒体の外表面に前記インクを吐出し、前記被記録媒体に付着した前記インクに対し所定の第1照射量の紫外線の照射を行うように、前記吐出手段及び前記照射手段を制御する一括制御手段と、前記一括制御手段の代わりに、前記載置手段が載置した前記被記録媒体の外表面に前記インクを吐出し、前記被記録媒体に付着した前記インクに対し前記第1照射量よりも少ない第2照射量の紫外線の照射を行うように、前記吐出手段及び前記照射手段を制御する一次制御手段と、前記一次制御手段の制御により実行した前記インクの吐出及び前記紫外線の照射の後、当該吐出及び照射が可能な処理領域から、操作者が前記付着した前記インクに対し、前記ノズルの径よりも大きな固体要素の散布作業を実行可能な作業領域へ、前記載置手段を移動させるように、前記駆動手段を制御する二次制御手段と、前記二次制御手段の制御により実行した前記載置手段の前記作業領域への移動の後、前記載置手段を前記作業領域から前記処理領域へ移動させ、前記被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に、前記所定の硬化段階を超えるまで、前記紫外線を照射するように、前記駆動手段及び前記照射手段を制御する三次制御手段とを有することを特徴とする。
本願第1発明の記録装置は、載置手段と、吐出手段とを有する。吐出手段は、載置手段が載置した被記録媒体に対しインクの吐出を行い、印刷による記録を行う。照射手段は、一括制御手段による制御時には、被記録媒体に付着したインクに対し、所定の第1照射量の紫外線を照射する。
一括制御手段の代わりに実行する一次制御手段の制御時には、照射手段は、被記録媒体に付着したインクに対し、一括制御手段の制御時よりも少ない第2照射量の紫外線を照射する。吐出手段が吐出したインクは、照射手段による紫外線の照射を契機に硬化するインクである。インクは、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有する。
一次制御手段の制御に基づくインクの吐出、及び、紫外線の照射の後、二次制御手段の制御に基づき、駆動手段は、処理領域から作業領域へ載置手段を移動させる。操作者は、移動した載置手段に載った被記録媒体に付着した、粘着性を備えている状態のインクに対し、ノズルの径よりも大きな固体要素の散布作業を実行することができる。
載置手段の作業領域への移動及び上記散布作業の後、三次制御手段の制御に基づき、駆動手段は、作業領域から処理領域へ再び載置手段を移動させる。照射手段は、移動した載置手段に載せた被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に対し、再度紫外線を照射し、固体要素を散布したインクを上記所定の硬化段階を超えるまで硬化させる。
本願第1発明の記録装置によれば、紫外線の照射により硬化進行中で粘着性を備えているインクに対し、操作者が固体要素を散布して定着させた後、さらに紫外線を照射して硬化させることができる。インクの種類や色合いだけで装飾を図る従来手法と異なり、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。
第2発明の記録装置は、上記第1発明において、前記一括制御手段の制御による前記インクの吐出及び前記紫外線の照射を実行する一括記録モード、及び、前記一次制御手段の制御による前記インクの吐出及び前記紫外線の照射と、前記二次制御手段の制御による前記載置手段の移動と、前記三次制御手段の制御による前記紫外線の照射とを、実行する、多段記録モード、のうち、いずれかのモードを設定するためのモード設定手段を有し、前記一括記録モードにおいて、前記一括制御手段は、前記第1照射量を、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値以上に設定し、前記多段記録モードにおいて、前記一次制御手段は、前記第2照射量を、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値の0.05倍〜0.95倍の範囲に設定することを特徴とする。
固体要素の散布を行わない場合には、一括記録モードを用いる。所定の硬化段階を超えるまで紫外線を照射し、インクを十分に硬化させることができる。固体要素の散布を行う場合には、多段記録モードを用いる。所定の硬化段階まで紫外線を照射してインクに粘着性を残した状態で、固体要素の散布を行い、粘着性により固体要素をインクに確実に定着することができる。
第3発明の記録装置は、上記第1又は第2発明において、前記二次制御手段の制御により前記駆動手段が前記載置手段を作業領域に移動させた状態において、前記照射手段による紫外線の照射を停止させる、照射停止手段を有することを特徴とする。
被記録媒体が作業領域へ移動した状態で、照射手段が無駄に照射を行うのを防止することができる。
第4発明の記録装置は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記二次制御手段の制御により前記駆動手段が前記載置手段を作業領域に移動させた状態において、前記吐出手段に対し所定のメンテナンス動作を実行させる、メンテナンス実行手段を備えることを特徴とする。
被記録媒体が作業領域へ移動し処理領域に不在となった状態を活用し、吐出手段のメンテナンスを行うことができる。
第5発明の記録装置は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記二次制御手段の制御により前記駆動手段が前記載置手段を作業領域に移動させた状態において、前記三次制御手段による制御に関する情報を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
固体要素をインクに対し所望の態様で定着させるには、固体要素の散布の後の照射を例えばいつ頃からどのように開始すればよいかを知っておくことが望ましい。本願第5発明では、報知手段が、三次制御手段による制御に関する情報を報知するので、操作者は、例えば上記の時間的な目安を確実に知ることができる。
上記目的を達成するために、第6発明の記録装置は、被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の照射を契機に粘着性を生じながら硬化が進行し、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有するインクを吐出するノズルを備えた吐出手段と、紫外線を照射する照射手段と、前記ノズルの径よりも大きな固体要素の散布を行う散布手段と、前記載置手段が載置した前記被記録媒体の外表面に前記インクを吐出し、前記被記録媒体に付着した前記インクに対し、前記所定の硬化段階となる照射量よりも小さい照射量の紫外線の照射を行うように、前記吐出手段及び前記照射手段を制御する第1制御手段と、前記第1制御手段の制御により実行した前記インクの吐出及び前記紫外線の照射の後、前記付着した前記インクに対し、前記固体要素の散布を行うように、前記散布手段を制御する第2制御手段と、前記第2制御手段の制御により実行した前記散布の後、前記被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に、前記所定の硬化段階を超えるまで、前記紫外線を照射するように、前記照射手段を制御する第3制御手段とを有することを特徴とする。
本願第6発明の記録装置は、載置手段と、吐出手段とを有する。吐出手段は、載置手段が載置した被記録媒体に対しインクの吐出を行い、印刷による記録を行う。吐出手段が吐出したインクは、照射手段による紫外線の照射を契機に硬化するインクである。インクは、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有する。照射手段は、第1制御手段の制御に基づき、被記録媒体に付着したインクに対し、上記所定の硬化段階となる照射量よりも小さい照射量の紫外線を照射する。
第1制御手段の制御に基づくインクの吐出、及び、紫外線の照射の後、第2制御手段の制御に基づき、散布手段が、移動した載置手段に載った被記録媒体に付着した、粘着性を備えている状態のインクに対し、ノズルの径よりも大きな固体要素の散布を行う。
上記散布の後、第3制御手段の制御に基づき、照射手段は、載置手段に載せた被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に対し、再度紫外線を照射し、固体要素を散布したインクを上記所定の硬化段階を超えるまで硬化させる。
本願第6発明の記録装置によれば、紫外線の照射により硬化進行中で粘着性を備えているインクに対し、自動的に固体要素を散布して定着させた後、さらに紫外線を照射して硬化させることができる。インクの種類や色合いだけで装飾を図る従来手法と異なり、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。
第7発明の記録装置は、上記第6発明において、前記第1制御手段は、前記第2制御手段の制御に基づく前記散布手段の前記固体要素の散布量が多い場合には照射量を小さくし、前記第2制御手段の制御に基づく前記散布手段の前記固体要素の散布量が少ない場合には照射量を大きくするように、前記照射手段を制御することを特徴とする。
散布する固体要素が多い場合には、第1制御手段に基づく照射手段の照射量を小さくすることにより、インクの硬化程度を低くして粘着性を高くし、より多くの固体要素を確実に定着させることができる。散布する固体要素が少ない場合には、第1制御手段に基づく照射手段の照射量を大きくすることにより、インクの硬化程度を高くして粘着性を低く、より迅速な硬化を優先した定着を行うことができる。
第8発明の記録装置は、上記第1乃至第7発明のいずれかにおいて、前記載置手段に載置した前記被記録媒体に向かって気体を流動させるための流動手段と、二次制御手段の制御実行後で三次制御手段の制御に基づく紫外線の照射の完了前に、若しくは、第2制御手段の制御実行後で第3制御手段の制御に基づく紫外線の照射の完了前に、気体流動を実行するよう前記流動手段を制御する流動制御手段とを有することを特徴とする。
気体の吸引又は送風により過剰な固体要素を除去することで固体要素による紫外線の遮断を防ぎ、インクを効率的に硬化することができる。
第9発明の記録装置は、上記第8発明において、前記流動制御手段は、一次制御手段の制御に基づく、若しくは、第1制御手段の制御に基づく、照射手段による紫外線の照射時において、当該照射手段に向かって気体を流動するように、前記流動手段を制御することを特徴とする。
本願第9発明の記録装置は、照射手段による照射中に流動手段が気体流動による冷却を行う。流動手段を冷却機構と兼用することで、装置構成を簡素化できる。
第10発明の記録装置は、上記第8又は第9発明において、前記流動制御手段は、一次制御手段の制御に基づき、若しくは、第1制御手段の制御に基づき、前記吐出手段が吐出したインクが、当該吐出手段から遠ざかる方向に気体を流動するように、前記流動手段を制御することを特徴とする。
本願第10発明の記録装置は、吐出手段による吐出中に、流動手段がインクを吐出手段から遠ざける気体流動を行う。吐出手段へのインク付着を防止する機構と流動手段とを兼用することで、装置構成を簡素化できる。
第11発明の記録装置は、上記第7乃至第10発明のいずれかにおいて、前記流動制御手段は、三次制御手段の制御に基づく、若しくは、第3制御手段の制御に基づく、前記照射手段の紫外線の照射量が小さいほど弱い気流を生じるように、前記流動手段を制御することを特徴とする。
硬化の程度が低くまだ柔らかい外表面のインクに強い気流が当たり、その外表面の固体要素がインクの内部に不用意に沈むのを防止することができる。
第12発明の記録装置は、上記第1乃至第11発明のいずれかにおいて、一次制御手段の制御に基づく、若しくは、第1制御手段の制御に基づく、前記照射手段の紫外線の照射によって硬化されたインクの外表面に対して移動可能な状態の前記固体要素を除去する除去手段と、二次制御手段の制御実行後で三次制御手段の制御に基づく紫外線の照射の完了前に、若しくは、第2制御手段の制御実行後で第3制御手段の制御に基づく紫外線の照射の完了前に、前記固体要素の除去を実行するよう前記除去手段を制御する除去制御手段とを有することを特徴とする。
過剰な固体要素を除去することで固体要素による紫外線の遮断を防ぎ、インクを効率的に硬化することができる。除去手段の例としては、静電気を用いた固体要素の吸着除去や、振動による固体要素の回収等がある。
第13発明の記録装置は、上記第1乃至第12発明のいずれかにおいて、前記載置手段と前記照射手段とを相対的に移動させる移動手段と、三次制御手段の制御に基づく、若しくは、第3制御手段の制御に基づく、照射手段による紫外線の照射時において、前記載置手段と前記照射手段とを相対的に移動させるよう、前記移動手段を制御する移動制御手段とを有することを特徴とする。
本願第13発明では、載置手段に載った被記録媒体と照射手段とが相対移動することにより、照射手段は紫外線を種々の角度でインクに照射することができる。固体要素がインクの外表面に位置する場合であっても、当該固体要素に遮られない角度から固体要素の裏側のインク部分に対し確実に照射を行うことができ、インクを効率的に硬化することができる。
第14発明の記録装置は、上記第1乃至第13発明のいずれかにおいて、一次制御手段の制御に基づく、若しくは、第1制御手段の制御に基づく、照射手段による紫外線の照射によるインクの硬化段階を設定する硬化度設定手段を有し、一次制御手段若しくは第1制御手段は、前記硬化度設定手段の設定に対応した照射量の紫外線の照射を行うように、前記照射手段を制御することを特徴とする。
インクの種類、使用環境、固体要素の種類、記憶媒体の種類、等によって、同一の照射量であってもインクの硬化段階は一定ではない。硬化段階がどの程度であるかにより、固体要素のインクへの密着度や完全硬化するまでの時間が長短する。本願第14発明においては、硬化度設定手段を設けることで、上記の種々のバリエーションに対応した形で、インクの硬化段階を操作者の所望の段階に確実に設定することができる。
第15発明の記録装置は、上記第1乃至第14発明のいずれかにおいて、前記インクは経時的に硬化するものであって、前記被記録媒体のインクの外表面の粘着性に関連した時点情報又は期間情報を取得する時間情報取得手段を有し、三次制御手段若しくは第3制御手段は、前記時間情報取得手段が取得した前記時点情報又は前記期間情報に対応した粘着性を実現する照射量となるように、前記照射手段を制御することを特徴とする。
操作者が最終的に得たいインクの硬化段階を、操作者の所望のタイミングで確実に得ることができる。
第16発明の記録装置は、上記第1乃至第15発明のいずれかにおいて、前記吐出手段は、エポキシ化合物、オキセタン加工物、及びビニルエーテル加工物のうち少なくとも1つと、重合開始剤、増感剤を含む、カチオン系の前記インクを吐出することを特徴とする。
カチオン系のインクを用い、紫外線を照射することで、インクの粘着性を外表面から喪失させ、インクを経時的に硬化させることができる。
第17発明の記録装置は、上記第1乃至第16発明のいずれかにおいて、三次制御手段若しくは第3制御手段は、前記所定の硬化段階としての、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となる段階、を超えるまで前記紫外線を照射するように、前記照射手段を制御することを特徴とする。
本願第17発明においては、三次制御手段若しくは第3制御手段の制御に基づく照射手段の照射により、十分なインクの硬化状態を得ることができる。
第18発明の記録装置は、上記第1乃至第17発明のいずれかにおいて、一次制御手段若しくは第1制御手段は、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となるときの照射量の最小値の0.05倍〜0.95倍の範囲の照射量を照射するように、前記照射手段を制御することを特徴とする。
本願第18発明においては、一次制御手段若しくは第1制御手段の制御に基づく照射手段の照射により、粘着性を確実に残しているインクの硬化状態を得ることができる。
第19発明の記録装置は、上記第1乃至第18発明のいずれかにおいて、前記固体要素は、セラミック、樹脂、金属のいずれかから成り、粒状、フィルム、粉体、及び繊維のうち、少なくとも1つの形状で構成されていることを特徴とする。
各種材料により構成された固体要素を用いて装飾を行い、装飾性を向上することができる。
上記目的を達成するために、第20発明の記録装置の制御プログラムは、被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の照射を契機に粘着性を生じながら硬化が進行し、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有するインクを吐出するノズルを備えた吐出手段と、紫外線を照射する照射手段と、前記載置手段を移動させる駆動手段と、を有する記録装置に備えられた制御手段に対し、前記載置手段が載置した前記被記録媒体の外表面に前記インクを吐出し、前記被記録媒体に付着した前記インクに対し所定の第1照射量の紫外線の照射を行うように、前記吐出手段及び前記照射手段を制御する一括制御手順と、前記一括制御手順の代わりに、前記載置手段が載置した前記被記録媒体の外表面に前記インクを吐出し、前記被記録媒体に付着した前記インクに対し前記第1照射量よりも少ない第2照射量の紫外線の照射を行うように、前記吐出手段及び前記照射手段を制御する一次手順と、前記一次手順で実行した前記インクの吐出及び前記紫外線の照射の後、当該吐出及び照射が可能な処理領域から、操作者が前記付着した前記インクに対し、前記ノズルの径よりも大きな固体要素の散布作業を実行可能な作業領域へ、前記載置手段を移動させるように、前記駆動手段を制御する二次手順と、前記二次手順で実行した前記載置手段の前記作業領域への移動の後、前記載置手段を前記作業領域から前記処理領域へ移動させ、前記被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に、前記所定の硬化段階を超えるまで、前記紫外線を照射するように、前記駆動手段及び前記照射手段を制御する三次手順とを実行させる。
本願第20発明の制御プログラムの対象となる記録装置は、載置手段と、吐出手段とを有する。吐出手段は、載置手段が載置した被記録媒体に対しインクの吐出を行い、印刷による記録を行う。制御手段が制御プログラムの一括制御手順を実行すると、照射手段は、被記録媒体に付着したインクに対し、所定の第1照射量の紫外線を照射する。
制御手段が制御プログラムの一括制御手順の代わりに一次手順を実行すると、照射手段は、被記録媒体に付着したインクに対し、一括制御手順の実行時よりも少ない第2照射量の紫外線を照射する。吐出手段が吐出したインクは、照射手段による紫外線の照射を契機に硬化するインクである。インクは、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有する。
インクの吐出、及び、紫外線の照射の後、制御手段が制御プログラムの二次手順を実行すると、駆動手段が、処理領域から作業領域へ載置手段を移動させる。操作者は、移動した載置手段に載った被記録媒体に付着した、粘着性を備えている状態のインクに対し、ノズルの径よりも大きな固体要素の散布作業を実行することができる。
載置手段の作業領域への移動及び上記散布作業の後、制御手段が制御プログラムの三次手順を実行すると、駆動手段は、作業領域から処理領域へ再び載置手段を移動させる。照射手段は、移動した載置手段に載せた被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に対し、再度紫外線を照射し、固体要素を散布したインクを上記所定の硬化段階を超えるまで硬化させる。
本願第20発明の制御プログラムを実行する制御手段が制御する記録装置によれば、紫外線の照射により硬化進行中で粘着性を備えているインクに対し、操作者が固体要素を散布して定着させた後、さらに紫外線を照射して硬化させることができる。インクの種類や色合いだけで装飾を図る従来手法と異なり、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。
上記目的を達成するために、第21発明の記録装置の制御プログラムは、被記録媒体を載置可能な載置手段と、紫外線の照射を契機に粘着性を生じながら硬化が進行し、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有するインクを吐出するノズルを備えた吐出手段と、紫外線を照射する照射手段と、前記ノズルの径よりも大きな固体要素の散布を行う散布手段と、を有する記録装置に備えられた制御手段に対し、前記載置手段が載置した前記被記録媒体の外表面に前記インクを吐出し、前記被記録媒体に付着した前記インクに対し、前記所定の硬化段階となる照射量よりも小さい照射量の紫外線の照射を行うように、前記吐出手段及び前記照射手段を制御する第1手順と、前記第1制御手順で実行した前記インクの吐出及び前記紫外線の照射の後、前記付着した前記インクに対し、前記固体要素の散布を行うように、前記散布手段を制御する第2手順と、前記第2手順で実行した前記散布の後、前記被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に、前記所定の硬化段階を超えるまで、前記紫外線を照射するように、前記照射手段を制御する第3手順とを実行させる。
本願第21発明の制御プログラムの対象となる記録装置は、載置手段と、吐出手段とを有する。吐出手段は、載置手段が載置した被記録媒体に対しインクの吐出を行い、印刷による記録を行う。吐出手段が吐出したインクは、照射手段による紫外線の照射を契機に硬化するインクである。インクは、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有する。制御手段が制御プログラムの第1手順を実行すると、照射手段は、被記録媒体に付着したインクに対し、上記所定の硬化段階となる照射量よりも小さい照射量の紫外線を照射する。
インクの吐出、及び、紫外線の照射の後、制御手段が制御プログラムの第2手順を実行すると、散布手段が、載置手段に載った被記録媒体に付着した、粘着性を備えている状態のインクに対し、ノズルの径よりも大きな固体要素の散布を自動的に行う。
上記散布の後、制御手段が制御プログラムの第3手順を実行すると、照射手段は、載置手段に載せた被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に対し、再度紫外線を照射し、固体要素を散布したインクを上記所定の硬化段階を超えるまで硬化させる。
本願第21発明の制御プログラムを実行する制御手段が制御する記録装置によれば、紫外線の照射により硬化進行中で粘着性を備えているインクに対し、自動的に固体要素を散布して定着させた後、さらに紫外線を照射して硬化させることができる。インクの種類や色合いだけで装飾を図る従来手法と異なり、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。
上記目的を達成するために、第22発明の記録方法は、紫外線の照射を契機に粘着性を生じながら硬化が進行し所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有するインクを、被記録媒体の外表面に対しノズルから吐出するとともに、前記被記録媒体に付着した前記インクに対し、前記所定の硬化段階となる照射量よりも小さい照射量の紫外線の照射を行う、第1ステップと、前記第1ステップでの前記インクの吐出及び前記紫外線の照射の後、前記付着した前記インクに対し、前記ノズルの径よりも大きな固体要素の散布を行う第2ステップと、前記第2ステップでの前記散布の後、前記被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に、前記所定の硬化段階を超えるまで、前記紫外線を照射する、第3ステップとを有する。
本願第22発明の記録方法では、第1ステップで、ノズルから被記録媒体に対しインクの吐出を行い、印刷による記録を行う。吐出したインクは、紫外線の照射を契機に硬化するインクである。インクは、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有する。第1ステップでは、被記録媒体に付着したインクに対し、上記所定の硬化段階となる照射量よりも小さい照射量の紫外線を照射する。
第1ステップでのインクの吐出、及び、紫外線の照射の後、第2ステップで、被記録媒体に付着した、粘着性を備えている状態のインクに対し、ノズルの径よりも大きな固体要素の散布を行う。
第2ステップでの上記散布の後、第3ステップで、被記録媒体のインクの外表面の少なくとも一部に対し、再度紫外線を照射し、固体要素を散布したインクを上記所定の硬化段階を超えるまで硬化させる。
本願第22発明の記録方法によれば、紫外線の照射により硬化進行中で粘着性を備えているインクに対し、固体要素を散布して定着させた後、さらに紫外線を照射して硬化させることができる。インクの種類や色合いだけで装飾を図る従来手法と異なり、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。
本発明によれば、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1(a)は本発明の記録装置の一実施形態であるインクジェット記録装置100の全体の概略構成を示す平面図であり、図1(b)はその正面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、インクジェット記録装置100は、インクを吐出する印刷ヘッド101(吐出手段)と、印刷ヘッド101を搭載するキャリッジ102と、キャリッジ102をX軸方向にガイドするX軸ガイドバー103と、キャリッジ102をX軸ガイドバー103に沿って駆動するX軸モータ111とを備えている。またインクジェット記録装置100は、紙や布等の被印刷媒体104(被記録媒体)を載置可能な載置テーブル105(載置手段)と、載置テーブル105をY軸方向に駆動するY軸モータ108(駆動手段)と、Y軸モータ108の回転軸に連結し、載置テーブル105の下面の軸受112と螺合するボールネジ109と、載置テーブル105をY軸方向にガイドするガイドレール110と、ガイドレール110を支持すると共に、内蔵したZ軸モータ(図示せず)により載置テーブル105をZ軸方向に駆動可能な上下駆動機構113とを備えている。またインクジェット記録装置100は、インクを収納したインクタンク106と、インクタンク106から印刷ヘッド101へインクを供給するための遮光性のインクチューブ107とを備えている。
載置テーブル105は、被印刷媒体104をエア吸着によって上面に固定した状態で載置可能である。図1に示す例では、載置テーブル105は2つの被印刷媒体104をX軸方向に並列して載置している。載置テーブル105は、X軸方向における左右両側端部に、印刷ヘッド101をフラッシングする際にインクを噴出するためのフラッシング穴114を有している。また、インクタンク106が収納するインクは、紫外線の照射を契機に粘着性を生じながら硬化が進行し、所定の硬化段階までは外表面に粘着性を有するUVインクであり、例えば、エポキシ化合物、オキセタン加工物、及びビニルエーテル加工物のうち少なくとも1つと、重合開始剤、増感剤等を含む、カチオン系のインクである。このため、本実施形態のインクにおいては、紫外線の照射を契機に経時的にその外表面に関する粘着性の喪失が進行する。印刷ヘッド101は当該インクを被印刷媒体104に対して吐出する。
図2は、インクジェット記録装置100の要部の構成を示す斜視図である。また図3は、図2中III−III断面によるキャリッジ102の側断面図であり、図4は、図2中IV−IV断面によるキャリッジ102の側断面図である。
図2乃至図4に示すように、キャリッジ102は、側断面が略L字型形状を有するアルミ合金等からなる熱伝導性部材である。キャリッジ102は、水平部102aの前側(図2及び図3中左側)端部付近に印刷ヘッド101を搭載している。印刷ヘッド101は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを吐出する印刷ヘッド101Y,101M,101C,101Kの他、透明インクを吐出する印刷ヘッド101T及び白インクを吐出する印刷ヘッド101Wを有している。またキャリッジ102は、印刷ヘッド101のX軸方向における左右両側に、紫外線を照射するUV照射装置121(照射手段)を印刷ヘッド101を挟むように搭載している。UV照射装置121は、被印刷媒体104と対向する下面に、X軸方向及びY軸方向に沿って格子状に配列した複数のUV−LED121aを有している。
キャリッジ102は、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を包み込むように、前面側にダクトカバー122を装着している。このダクトカバー122とキャリッジ102とが、印刷ヘッド101、UV照射装置121及びインクチューブ107を取り囲むチャンバー123を形成している。
キャリッジ102は、ダクトカバー122の中央上部にブロアファン127を有している。ブロアファン127は、図3及び図4中の直線矢印に示すように、チャンバー123内において気体の流動を引き起こす。ブロアファン127による気流は、印刷ヘッド101の背面に設けた熱交換用フィン128及びUV照射装置121の上面に設けた熱交換用フィン133を介して印刷ヘッド101及びUV照射装置121を冷却し、水平部102aの後側(図2及び図3中右側)に設けた噴出口134から被印刷媒体104に向かって流出する。
印刷ヘッド101は、インク吐出口付近にヒータ129を備えている。ヒータ129は、印刷ヘッド101のインク吐出口付近を加熱することにより、吐出口付近のインクの粘度を吐出に最適な粘度とする。また印刷ヘッド101は、ヘッドの温度を検出するサーミスタ131を有している。UV照射装置121も同様に、装置の温度を検出するサーミスタ135を有している。これらのサーミスタ131,135は、印刷ヘッド131及びUV照射装置121の温度を検出し、後述するCPU301に出力する。CPU301は、この検出結果に基づいてブロアファン127の駆動を制御し、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を中心とするチャンバー123内の温度制御を行う。さらに、キャリッジ102は、水平部102aの後端部に立設した垂直部102bに、補助ヒータ132を有している。補助ヒータ132は、チャンバー123内の温度制御を行う際の補助的役割を果たす。
なお、上記Y軸モータ108が載置テーブル105を移動させつつ、X軸モータ111がキャリッジ102と共にUV照射装置121を移動させることで、載置テーブル105とUV照射装置121とを相対的に移動させることができる。したがって、これらY軸モータ108及びX軸モータ111が、特許請求の範囲に記載の移動手段を構成する。
図5は、インクジェット記録装置100の制御系統の機能構成を示すブロック図である。図5に示すように、インクジェット記録装置100の制御系統は、主として、CPU301と、ROM302と、EEPROM302aと、RAM303と、入力インターフェース304と、出力インターフェース305とを備えている。出力インターフェース305は、印刷ヘッド101を駆動する印刷ヘッド回路306と、X軸モータ111を駆動するX軸モータ駆動回路307と、Y軸モータ108を駆動するY軸モータ駆動回路308と、上下駆動機構113のZ軸モータを駆動するZ軸モータ駆動回路309と、UV照射装置121を駆動するUV装置駆動回路310と、ブロアファン127を駆動するブロアファン駆動回路311と、ヒータ129を駆動するヒータ駆動回路312と、補助ヒータ132を駆動する補助ヒータ駆動回路313と、後述するPC320が備える液晶ディスプレイであるLCD321とに接続する。また、入力インターフェース304は、印刷開始指令や印刷データ等の入力を行うためのPC(パーソナルコンピュータ)320と、上述したサーミスタ131,135とに接続する。
ROM302は、各種の制御プログラム等を記憶する。CPU301(制御手段)は、RAM303の一時記憶機能を利用しつつ、ROM302に記憶した上記制御プログラムに従って信号処理を行うことにより、後述する図6乃至図8等のフローチャートに示す制御内容を実行する。
図6は、CPU301が実行する制御内容を表すフローチャートである。図6に示すように、ステップS10では、CPU301は印刷前処理を行う。印刷前処理は、操作者がPC320の図示しないキーボードやマウス等の操作手段を介して行う印刷画像の選択や画像の配置・編集、印刷モードの選択、各種印刷設定の変更等の操作信号を入力し、当該操作信号に基づいて行う印刷の前処理である。なお、上記印刷モードは、被印刷媒体104の種類や印刷層の構成、インクの色・量や紫外線照射量等の各種印刷設定に応じて予め定まっており、RAM303が所定の記憶エリアにデータテーブルとして記憶している(後述の図9及び図10参照)。操作者はこれら複数の印刷モードの中から所望の印刷モードを選択することで、当該印刷モードに対応する印刷設定で印刷を行うことができる。印刷モードの詳細については後述する。なお、上記照射量とは、インクジェット記録装置100で1つの印刷対象を完成するまでに、その印刷対象を構成するインクが受ける照射量、すなわち1つの印刷対象が完成するまでに累積して照射された紫外線の量である。
次のステップS20では、CPU301は、印刷を開始するか否かを判定する。CPU301は、この判定をPC320より印刷開始指令を入力したか否かを検出することにより行う。PC320より印刷開始指令を入力していない場合には(ステップS20でNO)、ステップS10に戻る。一方、PC320より印刷開始指令を入力した場合には(ステップS20でYES)、ステップS100に移行する。
ステップS100では、CPU301は、上記ステップS10で設定した各種印刷設定に従って被印刷媒体104に対し印刷を実行する各印刷モード動作処理を実行する(詳細内容は後述の図7参照)。
ステップS30では、CPU301は、操作者がインクジェット記録装置100の電源のOFF操作を行ったか否かを判定する。操作者が電源OFF操作を行っていない場合には(ステップS30でNO)、先のステップS10に戻り、上述と同様の処理を繰り返す。一方、操作者が電源のOFF操作を行った場合には(ステップS30でYES)、ステップS40に移行し、CPU301はインクジェット記録装置100の終了処理を実行する。終了処理は、例えば起動中のOSやアプリケーションのシャットダウン等である。以上により、本フローチャートを終了する。
上記において、ステップS10が特許請求の範囲に記載のモード設定手段として機能する。
図7は、上記ステップS100の各印刷モード動作処理の詳細内容を表すフローチャートである。図7に示すように、ステップS105では、CPU301は初期印刷を行うか否かを判定する。初期印刷は、被印刷媒体104の表面に対し最初に行う印刷処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する初期印刷の完了回数(初期印刷を行う設定回数)に関わる情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、完了回数記憶エリアと記載する)から読み出し、当該初期印刷の完了回数が0より大きいか否かを判定する。初期印刷の完了回数が0である場合には(ステップS105でNO)、初期印刷を行わないとみなし、後述のステップS115に直接移行する。一方、初期印刷の完了回数が0より大きい場合には(ステップS105でYES)、初期印刷を行うとみなし、次のステップS110に移行する。
ステップS110では、CPU301は、初期印刷に関わる各種設定を行う。具体的には、CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する初期印刷の色設定、インク量、紫外線照射量及び完了回数等をRAM303の所定の記憶エリアから読み出し、印刷モードに対応する印刷設定を行う。
ステップS200では、CPU301は、被印刷媒体104を載置した載置テーブル105を印刷ヘッド101によるインクの吐出及びUV照射装置121による紫外線照射が可能な処理領域(図1に示す領域)に移動させ、上記ステップS110で設定した印刷設定に基づいた初期印刷を、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
ステップS115では、CPU301は、中期印刷を行うか否かを判定する。中期印刷は、上記初期印刷により被印刷媒体104上に形成したインク層の表面に対し、あるいは初期印刷を行わなかった場合(初期印刷の完了回数が0だった場合)には被印刷媒体104の表面に対し行う印刷処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する中期印刷の完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、当該中期印刷の完了回数が0より大きいか否かを判定する。中期印刷の完了回数が0である場合には(ステップS115でNO)、中期印刷を行わないとみなし、後述のステップS125に直接移行する。一方、中期印刷の完了回数が0より大きい場合には(ステップS115でYES)、中期印刷を行うとみなし、次のステップS120に移行する。
ステップS120では、CPU301は、上記ステップS110と同様にして中期印刷に関わる各種印刷設定を行う。
ステップS200では、CPU301は、上記ステップS120で設定した印刷設定に基づいた中期印刷を、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
ステップS125では、CPU301は、後期印刷を行うか否かを判定する。後期印刷は、上記中期印刷により被印刷媒体104上に形成したインク層の表面に対し、あるいは中期印刷を行わなかった場合(中期印刷の完了回数が0だった場合)には初期印刷で形成したインク層の表面若しくは被印刷媒体104の表面に対し行う印刷処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する後期印刷の完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、当該後期印刷の完了回数が0より大きいか否かを判定する。後期印刷の完了回数が0である場合には(ステップS125でNO)、後期印刷を行わないとみなし、後述のステップS135に直接移行する。一方、後期印刷の完了回数が0より大きい場合には(ステップS125でYES)、後期印刷を行うとみなし、次のステップS130に移行する。
ステップS130では、CPU301は、上記ステップS110と同様にして後期印刷に関わる各種印刷設定を行う。
ステップS200では、CPU301は、上記ステップS130で設定した印刷設定に基づいた後期印刷を、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
ステップS135では、CPU301は、操作者による手作業があるか否かを判定する。ここでいう手作業は、印刷途中の被印刷媒体104の所定部分に付着したインクに対してインク以外の材料により装飾を行う作業であり、例えばラメ等の装飾材の散布である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する手作業の有無に関わる情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、手作業有無記憶エリアと記載する)から読み出し、手作業の有無を判定する。手作業がない場合には(ステップS135でNO)、後述のステップS160に直接移行する。一方、手作業がある場合には(ステップS135でYES)、次のステップS140に移行する。
ステップS140では、CPU301は、出力インターフェース305を介してLCD321に表示信号を出力し、各種情報の表示を行う。各種情報は、例えば後述するステップS165及びステップS200による仕上げ処理に関する情報である。具体的には、この後のステップS165及びステップS200における仕上げ処理を何時何分から開始し、どのくらいの照射量で行うかといった情報の表示を行う。
ステップS145では、CPU301は、印刷ヘッド101がフラッシングやパージ等のメンテナンス処理を必要とする状態であるか否かを判定し、必要な状態である場合には、当該メンテナンス処理を実行する。フラッシングは、印刷ヘッド101のインクを前述したフラッシング穴114内に一斉噴射することによってノズル面に発生した詰まりを除去する処理である。またパージは、図示しない吸引ポンプを用いて印刷ヘッド101のノズル面からインクを吸引する処理である。操作者が手作業を行う際にこのようなメンテナンス処理を実行することにより、印刷を行っていない時間を有効活用することができる。
ステップS150では、CPU301は、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力してY軸モータ108及びボールネジ109を駆動させ、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させつつ上述した処理領域から作業位置に移動させる。載置テーブル105が当該作業位置に位置する際には、被印刷媒体104の上面がインクジェット記録装置100の前方側(図1(a)中下側)に露出し、操作者が被印刷媒体104の所定部分に付着したインクに対し上述した装飾材の散布作業を実行することが可能となる。この作業位置が特許請求の範囲に記載の作業領域に相当する。なお、ここでは操作者が手作業で装飾材を散布するので、例えば装飾材を含有させたインクを用いる場合と異なり、印刷ヘッド101のノズルの径よりも大きな装飾材について散布することが可能である。但し、ノズルの径よりも小さな装飾材を散布してもよいのは言うまでもない。
なお、前述したようにインクジェット記録装置100においては、印刷ヘッド101と載置テーブル105とが独立して移動することが可能な構成となっている。このため、CPU301は、上記ステップS145のメンテナンス処理と上記ステップS150の作業位置移動処理とを同時並行して行う。これにより、動作時間を短縮し、処理効率を向上することができる。
ステップS155では、CPU301は、操作者による手作業が完了したか否かを判定する。CPU301は、この判定を、操作者がPC320の上記操作手段を介して作業完了信号を入力したか否かを検出することにより行う。作業完了信号を検出しない場合には(ステップS155でNO)本ステップを繰り返し、作業完了信号を検出した場合には(ステップS155でYES)、次のステップS160に移行する。
ステップS160では、CPU301は、印刷の仕上げを行うか否かを判定する。仕上げは、初期印刷、中期印刷及び後期印刷が終了し、操作者による手作業が行われた被印刷媒体104に対し、紫外線照射及び必要に応じて印刷を施すことで、一連の印刷処理の仕上げを行う処理である。CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する仕上げの完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、当該仕上げの完了回数が0より大きいか否かを判定する。仕上げの完了回数が0である場合には(ステップS160でNO)、仕上げを行わないとみなし、後述のステップS170に直接移行する。一方、仕上げの完了回数が0より大きい場合には(ステップS160でYES)、仕上げを行うとみなし、次のステップS165に移行する。
ステップS165では、CPU301は、上記ステップS110と同様にして仕上げ制御に関わる各種設定を行う。
ステップS200では、CPU301は、上記ステップS165で設定した制御設定に基づいた仕上げを、設定した完了回数だけ行う印刷処理を実行する(詳細内容は後述の図8参照)。
ステップS170では、CPU301は、上記ステップS150と同様に、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力し、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させつつ上述した処理領域から排出位置に移動させる。載置テーブル105が当該排出位置に位置する際には、操作者は載置テーブル105から被印刷媒体104を取り外すことができる。この排出位置は特許請求の範囲に記載の取外領域に相当する。以上により、本サブルーチンを終了する。
なお、操作者が上記装飾材の散布作業を実行可能な上記作業位置と、載置テーブル105から被印刷媒体104を取り外すことが可能な上記排出位置とは、同じ位置としてもよいし異なる位置としてもよい。作業位置と排出位置を同じ位置とした場合には、例えば何らかの不具合(作業の失敗や印刷の失敗)が生じた際に、操作者は迅速に被印刷媒体104を載置テーブル105から取り外すことができる。一方、作業位置と排出位置を異なる位置とする場合には、例えば排出位置を作業位置よりも装置内側とすることで、作業位置が排出位置よりも装置外側となるため、載置テーブル105が作業位置に移動した際に、操作者が印刷完了と間違って被印刷媒体104を載置テーブル105から取り外してしまうことを防止できる。また、作業位置が装置外側に位置するため、操作者が装飾材の散布作業をし易くなるという効果もある。
上記において、ステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードが後述の図9に示す印刷モード「1」〜「6」である場合には、ステップS110及びステップS200、ステップS120及びステップS200、並びに、ステップS130及びステップS200においては、CPU301は、載置テーブル105が載置した被印刷媒体104の外表面にインクを吐出し、被印刷媒体104に付着したインクに対し所定の第1照射量(図9に示す例では100%)の紫外線の照射を行うように、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を制御することになる。これらの手順が特許請求の範囲に記載の一括制御手段として機能すると共に、一括制御手順に相当する。
また、ステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードが後述の図9に示す印刷モード「7」〜「12」である場合には、上記ステップS110及びステップS200、ステップS120及びステップS200、並びに、ステップS130及びステップS200においては、CPU301は、載置テーブル105が載置した被印刷媒体104の外表面にインクを吐出し、被印刷媒体104に付着したインクに対し第1照射量よりも少ない第2照射量(図9に示す例では50%)の紫外線の照射を行うように、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を制御することになる。これらの手順が特許請求の範囲に記載の一次制御手段として機能すると共に、一次手順及び第1ステップに相当する。
また、上記ステップS150においては、CPU301は、上記ステップS110及びステップS200、ステップS120及びステップS200、並びに、ステップS130及びステップS200により実行したインクの吐出及び紫外線の照射の後、当該吐出及び照射が可能な上記処理領域から、操作者が付着したインクに対し、印刷ヘッド101のノズルの径よりも大きなラメ等の装飾材の散布作業を実行可能な作業位置へ載置テーブル105を移動させるように、Y軸モータ108及びボールネジ109の駆動を制御することになる。このステップS150の手順が、特許請求の範囲に記載の二次制御手段として機能すると共に、二次手順及び第2ステップに相当する。
また、上記ステップS165及びステップS200においては、CPU301は、上記ステップS150により実行した載置テーブル105の作業位置への移動の後、載置テーブル105を作業位置から処理領域へ移動させ、被印刷媒体104のインクの外表面の少なくとも一部に、所定の硬化段階を超えるまで、紫外線を照射するように、Y軸モータ108及びボールネジ109並びにUV照射装置121を制御することになる。これらステップS165及びステップS200の手順が、特許請求の範囲に記載の三次制御手段として機能すると共に、三次手順及び第3ステップに相当する。
また、上述したようにCPU301は、上記ステップS145のメンテナンス処理と上記ステップS150の作業位置移動処理とを同時に並行して行う。このため上記ステップS145においては、CPU301は、載置テーブル105を作業位置に移動させた状態において、印刷ヘッド101に対し所定のメンテナンス動作を実行させることとなるため、このステップS145が特許請求の範囲に記載のメンテナンス実行手段として機能する。また、上記ステップS140は、特許請求の範囲に記載の報知手段として機能する。
図8は、上記ステップS200の印刷処理の詳細内容を表すフローチャートである。図8に示すように、ステップS205では、CPU301は、RAM303の所定の記憶エリア(以下、動作回数記憶エリアと記載する)に動作回数「0」を記憶することで動作回数を初期化する。動作回数は、各印刷処理(初期印刷、中期印刷、後期印刷、仕上げ)を実際に行った回数であり、前述の各印刷モードごとに定まった完了回数とは異なるものである(後述の図9及び図10参照)。
ステップS210では、CPU301は、出力インターフェース305を介してX軸モータ駆動回路307に駆動信号を出力し、キャリッジ102をX軸方向に沿って移動させることで印刷ヘッド101を移動させる。これと共に、CPU301は、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力し、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させる。このような印刷ヘッド101のX軸方向の移動と載置テーブル105のY軸方向の移動により、印刷ヘッド101を開始位置に移動させる。開始位置は、載置テーブル105に載置した被印刷媒体104に対する印刷開始位置の上方位置である。これにより、載置テーブル105は印刷ヘッド101によるインクの吐出及びUV照射装置121による紫外線照射が可能な処理領域に移動したことになる。
ステップS215では、CPU301は、UV照射装置121のUV−LED121aが点灯しているか否かを判定する。CPU301は、この判定をUV装置駆動回路310に対して照射信号を出力しているか否かにより行う。UV−LED121aが点灯している場合には(ステップS215でYES)、ステップS225に直接移行する。一方、UV−LED121aが点灯していない場合には(ステップS215でNO)、ステップS220に移り、CPU301は、出力インターフェース305を介してUV装置駆動回路310に照射信号を出力し、UV照射装置121のUV−LED121aを点灯させて紫外線の照射を開始する。そして、ステップS225に移行する。
なお、上記ステップS220におけるUV照射装置121の照射量は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードごとに定まっている(後述の図9及び図10参照)。CPU301は、設定した印刷モードに基づき、対応する照射量情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、照射量調整%記憶エリアと記載する)から読み出し、当該照射量となるように照射を行う。
ステップS225では、CPU301は、図示しないポンプを駆動してインクタンク106から印刷ヘッド101へインクを供給すると共に、出力インターフェース305を介して印刷ヘッド駆動回路306に制御信号を出力し、印刷ヘッド101より被印刷媒体104に対してインクを吐出する。このときのインク量は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードごとに定まっている(後述の図9及び図10参照)。CPU301は、設定した印刷モードに基づき、対応するインク量情報をRAM303の所定の記憶エリア(以下、インク量調整%記憶エリアと記載する)から読み出し、当該インク量となるようにインクの吐出を行う。
ステップS230では、CPU301は、出力インターフェース305を介してX軸モータ駆動回路307に駆動信号を出力し、キャリッジ102をX軸方向に沿って移動させることで印刷ヘッド101をX軸方向に移動させる。これにより、X軸方向の印刷を行う。
ステップS235では、CPU301は、X軸方向の印刷が完了したか否かを判定する。CPU301は、この判定をキャリッジ102がX軸方向における所定位置まで移動したか否かを検出することにより行う。X軸方向の印刷が完了していない場合には(ステップS235でNO)、上記ステップS225に戻りX軸方向の印刷を継続する。一方、X軸方向の印刷が完了した場合には(ステップS235でYES)、次のステップS240に移行する。
ステップS240では、CPU301は、出力インターフェース305を介してY軸モータ駆動回路308に駆動信号を出力し、載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させる。これにより、載置テーブル105はY軸方向に一行分移動する。なおこのとき、例えば被印刷媒体104の表面に凹凸があったり、被印刷媒体104が立体的形状を有するような場合には、CPU301は必要に応じてZ軸モータ駆動回路309にも駆動信号を出力し、載置テーブル105をZ軸方向にも移動させる。
ステップS245では、CPU301は、Y軸方向の印刷が完了したか否かを判定する。CPU301は、この判定を載置テーブル105がY軸方向における所定位置まで移動したか否かを検出することにより行う。Y軸方向の印刷が完了していない場合には(ステップS245でNO)、上記ステップS225に戻り再びX軸方向の印刷を行う。一方、Y軸方向の印刷が完了した場合には(ステップS245でYES)、次のステップS250に移行する。
CPU301は、上述したステップS225〜ステップS245をY軸方向の印刷が完了するまで繰り返す。この間、キャリッジ102をX軸方向に移動させて印刷ヘッド101により一行分のインクを吐出した後、載置テーブル105をY軸方向に一行分移動させ、再び印刷ヘッド101による次の行分のインクの吐出を実行することを繰り返す。
ステップS250では、CPU301は、上記ステップS205においてRAM303の上記動作回数記憶エリアに記憶した動作回数に1を加算し、次のステップS255において動作回数記憶エリアの内容を当該加算した動作回数に更新する。
ステップS260では、CPU301は、印刷動作を完了するか否かを判定する。具体的には、CPU301は、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードに基づき、対応する印刷の完了回数に関わる情報をRAM303の上記完了回数記憶エリアから読み出し、上記ステップS255で上記動作回数記憶エリアに記憶した動作回数が、上記読み出した完了回数に達しているか否かを判定する。動作回数が完了回数に達していない場合には(ステップS260でNO)、先のステップS210に戻り、再び同様の手順を繰り返す。一方、動作回数が完了回数に達している場合には(ステップS260でYES)、ステップS265に移行する。
ステップS265では、CPU301は、出力インターフェース305を介してUV装置駆動回路310に停止信号を出力し、UV照射装置121のUV−LED121aを消灯させて紫外線の照射を停止する。以上により、本サブルーチンを終了する。
なお、初期印刷、中期印刷及び後期印刷のいずれかにおいて手作業前の最後の上記ステップS200の印刷処理を行う場合、上記ステップS265においては、CPU301が、その後のステップS150においてY軸モータ108及びボールネジ109が載置テーブル105を作業位置に移動させた状態において、UV照射装置121による紫外線の照射を停止させることになる。したがって、ステップS265が特許請求の範囲に記載の照射停止手段として機能する。
また、上記ステップS230及びステップS240において、CPU301は、X軸モータ111を制御してUV照射装置121をキャリッジ102と共にX軸方向に沿って移動させると共に、Y軸モータ108を制御して載置テーブル105をY軸方向に沿って移動させる。これにより、載置テーブル105とUV照射装置121とを相対的に移動させるよう、X軸モータ111及びY軸モータ108を制御することになるので、これらステップS230及びステップS240が特許請求の範囲に記載の移動制御手段として機能する。
次に、上述した制御内容に基づいてインクジェット記録装置100が行う具体的な動作について説明する。図9は、各種印刷設定を含むデータテーブルの一例を表す図である。RAM303は、このデータテーブルを所定の記憶エリアに記憶している。
図9に示すデータテーブルは、インクジェット記録装置100で布や金属等である被印刷媒体104に対し正像印刷を行う場合のテーブルである。図9に示す各印刷モードのうち、モード番号が「1」〜「6」である印刷モードは、図に示すように手作業及び仕上げの処理を行わないモードである。したがって、これらの印刷モードは特許請求の範囲に記載の「一括記録モード」に相当する。一方、図9に示す各印刷モードのうち、モード番号が「7」〜「12」である印刷モードは、図に示すように手作業及び仕上げの両方の処理を行うモードである。したがって、これらの印刷モードは初期印刷、中期印刷及び後期印刷のうちの少なくとも1つによるインクの吐出及び紫外線の照射と、手作業を行うための前述したステップS150による載置テーブル105の移動と、仕上げを行うための前述のステップS165及びステップS200による紫外線の照射とを実行するモードであり、特許請求の範囲に記載の「多段記録モード」に相当する。
上記印刷モード「1」〜「6」では、初期印刷、中期印刷及び後期印刷におけるインクを「完全硬化」させるのに対し、印刷モード「7」〜「12」では、初期印刷、中期印刷及び後期印刷のうち手作業前の最終の印刷層におけるインクを「半硬化」させることにより、当該インクの粘着性を利用してラメ等の装飾材を被印刷媒体104に付着させるものである。
ここで、上記「完全硬化」とは、インクが硬化することにより粘着性をほぼ完全に喪失した状態であり、具体的には当該インクを粘着剤として使用した場合に、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となる状態である。「完全硬化」のための照射量としては、「完全硬化」の状態になるときの照射量の最小値以上であればいい。なお、このインクの引張加重が0となるインクの硬化段階が、特許請求の範囲に記載の所定の硬化段階に相当する。また「半硬化」とは、インクが硬化により完全には粘着性を喪失していない状態であり、具体的にはインクが上記「完全硬化」の状態になるときの照射量の最小値である完全硬化照射量の0.05倍〜0.95倍の範囲の照射量によって当該インクが硬化した状態である。
以下に、操作者が図9中の印刷モード「7」を選択した場合について説明する。操作者がPC320の図示しないキーボードやマウス等の操作手段を介して印刷モード「7」を選択すると、CPU301は、図6に示すステップS10において、入力インターフェース304を介して当該モードを特定する信号を入力し、印刷モードを「7」に設定する。なお、このように操作者がモード選択操作を行うのではなく、例えば画像データにモードを特定するデータが含まれており、操作者が印刷する画像を選択するとCPU301が画像データに含まれる上記データに従ってモード設定を行う構成としてもよい。
その後、操作者が被印刷媒体104を載置テーブル105に載置し、PC320より印刷開始指令を入力すると(ステップS20でYES)、ステップS100に移行して、CPU301は各印刷モード動作処理を実行する。当該印刷モード「7」では初期印刷の完了回数が「1」となっているため(ステップS105でYES)、ステップS110においてCPU301は印刷モード「7」に対応した初期印刷各種設定を行う。具体的には、図9に示すように、CPU301は初期印刷の色設定を画像データに従った色である原色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、又は白)、インク量調整%を100%、照射量調整%を50%に設定する。そして、ステップS200においてCPU301は上記印刷設定に基づいて1回の初期印刷処理を実行する。
なお、上記インク量調整%の値は、完全硬化しつつ1回の印刷で印刷処理を完了する場合のインク量を100%とした場合の値であり、上記照射量調整%の値は、上述した完全硬化照射量(インクが「完全硬化」の状態となるときの照射量の最小値)を100%とした場合の値である。印刷モード「7」では、初期印刷の照射量を完全硬化照射量の50%に設定しているため、初期印刷でのインクは「半硬化」した状態となり、図13に示すように、当該インクの粘着性を利用して後述するように装飾材を被印刷媒体104に付着させることが可能となっている。すなわち、当該初期印刷で形成した印刷層は粘着層として機能する。
なお、上記ではインクを「半硬化」させるための照射量を完全硬化照射量の50%としたが、これに限らず、完全硬化照射量の5%〜95%の範囲の照射量であればよい。下限値を5%としたのは、これより下の値ではインクが液体に近い状態となり粘着性を得ることができず、この上にラメ等の装飾材を付与するとインク中に装飾材が沈んでしまい本来の装飾性に達しないからである。また上限値を95%としたのは、これより上の値ではインクが「完全硬化」に近い状態となりこの場合も粘着性を得ることができないからである。
次に、印刷モード「7」では中期印刷及び後期印刷の完了回数が「0」となっているため(ステップS115及びステップS125でNO)、CPU301は中期印刷及び後期印刷を行わずに処理をステップS135に移行する。そして、印刷モード「7」では手作業が「有り」となっているため(ステップS135でYES)、ステップS140及びステップS145において、CPU301は各種情報表示及び必要に応じてメンテナンス処理を行う。このとき、前述したように、CPU301は上記ステップS140において、ステップS165及びステップS200による仕上げ処理に関する情報をLCD321に表示する。具体的には、この後の仕上げ処理を何時何分から開始し、どのくらいの照射量で行うかといった情報の表示を行う。これにより、操作者は装飾材の散布作業をいつまでにしなければならないか等の時間的な目安を確実に知ることができる。
その後、ステップS150において、CPU301は載置テーブル105を処理領域から作業位置に移動させる。このとき、印刷モード「7」では手作業の種類が「ラメ散布」であるため、操作者は露出した被印刷媒体104に対してラメを散布して付着させることで装飾を行う。これにより、印刷後の被印刷媒体104の装飾性を向上することができる。なお、装飾材としてはラメに限るものではなく、例えばスパンコール等でもよい。その他、金属(蒸着したものを含む)、セラミックス、有機材料、樹脂のいずれかから成り、箔(アルミ蒸着したものを含む)、粉体、ビーズ、及び繊維のうち、少なくとも1つの形状で構成されているものでもよい。これらの装飾材が特許請求の範囲に記載の固体要素に相当する。
上記作業が完了し、操作者がその旨をPC320の操作手段を介して入力すると(ステップS155でYES)、CPU301は処理をステップS160に移行する。そして、印刷モード「7」では仕上げの完了回数が「1」となっているため(ステップS160でYES)、ステップS165においてCPU301は印刷モード「7」に対応した仕上げ制御各種設定を行う。具体的には、図10に示すように、CPU301はインク量調整%を0%、照射量調整%を100%に設定する。そして、ステップS200においてCPU301は上記印刷設定に基づいて1回の仕上げ印刷処理を実行する。
なお、印刷モード「7」では仕上げの色設定が「無し」、インク量調整%が「0」となっているため、仕上げ印刷処理ではインクの吐出を行わない。また、仕上げの照射量を完全硬化照射量である100%に設定しているため、上述したように初期印刷において「半硬化」となったインクが、当該仕上げ印刷処理により「完全硬化」する。これにより、半硬化状態で被印刷媒体104に付着させた装飾材を、その後のインクの硬化により固定することができる。
次に、操作者が一括記録モード、例えば図9中の印刷モード「5」を選択した場合について説明する。この印刷モード「5」では、初期印刷、中期印刷及び後期印刷の完了回数が全て「1」となっており(ステップS105、ステップS115、ステップS125でYES)、手作業が「無し」(ステップS135でNO)、且つ、仕上げの完了回数が「0」となっているため(ステップS160でNO)、CPU301はステップS110、ステップS120、ステップS130で印刷モード「5」に対応した印刷各種設定を行い、それぞれのステップS200において上記印刷設定に基づき初期印刷、中期印刷及び後期印刷を各1回ずつ実行する。ここでは、初期印刷、中期印刷及び後期印刷の全てについて照射量を完全硬化照射量である100%に設定しているため、各印刷でのインクは「完全硬化」した状態となる。その後、ステップS170において、CPU301は載置テーブル105を処理領域から排出位置に移動させる。
以上説明した実施形態のインクジェット記録装置100においては、図9に示す印刷モード「7」〜「12」では、初期印刷、中期印刷及び後期印刷に基づくインクの吐出及び紫外線の照射の後、ステップS150において、CPU301が処理領域から作業位置へ載置テーブル105を移動させる。操作者は、移動した載置テーブル105に載った被印刷媒体104に付着した粘着性を備えている状態のインクに対し、ラメ等の装飾材の散布作業を実行することができる。載置テーブル105の作業位置への移動及び散布作業の後、ステップS165及びステップS200において、CPU301は、作業位置から処理領域へ再び載置テーブル105を移動させる。UV照射装置121は、移動した載置テーブル105に載せた被印刷媒体104のインクの外表面の少なくとも一部に対し、再度紫外線を照射し、装飾材を散布したインクを粘着性を喪失させるように所定の硬化段階を超えるまで硬化させる。このように、本実施形態のインクジェット記録装置100によれば、紫外線の照射により硬化進行中で粘着性を備えているインクに対し、操作者が装飾材を散布して定着させた後、さらに紫外線を照射して硬化させることができる。インクの種類や色合いだけで装飾を図る従来手法と異なり、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。
さらに、本実施形態では操作者が手作業で装飾材を散布できるようにしたことで、次のような効果も得ることができる。仮に、装飾性を向上するためにラメ等の装飾材を含有したインクを用いた場合、当該インクを印刷ヘッド101のノズルから吐出するためには、装飾材の大きさをノズルの径よりも小さくする必要があり、その形状も球状に近いものとする必要がある。このため、装飾材の大きさや形状が制限を受ける。また、インクが装飾材を過剰に含有すると印刷ヘッド101がインクを吐出できなくなるおそれがあるため、装飾材の含有量も制限を受ける。これに対し、本実施形態では操作者が手作業で装飾材を付着させるので、装飾材の大きさや形状及びその量について、上述のような制限を受けることがなく、例えばノズルの径よりも大きな装飾材についても付着させることができる。このように、操作者は所望の大きさ、形状の装飾材を所望の量だけ付着させることができるので、装飾性をより向上することができる。
また、装飾材を含有させたインクにおいては、装飾材はインクを構成する液体状の溶媒中に浮遊するが、インクが紫外線により硬化すると、硬化した溶媒がインクの表面を覆い、大半の装飾材が硬化した溶媒の内側に位置することになる。このため、自然光や電灯の光がインク表面に当たっても、装飾材に到る前に硬化した溶媒自体によって光量が弱まったり乱反射してしまう。また光が装飾材に届いたとしても、硬化した溶媒自体によって反射光の光量が弱まったり、硬化物の中で乱反射してしまう。このようなことから、装飾材を含有するインクでは装飾機能を十分に発揮することができない。これに対し、本実施形態では操作者が被印刷媒体104の外表面に装飾材を付着させるので、装飾材が硬化した溶媒の内側に位置するようなことはなく、装飾材は装飾機能を十分に発揮することができる。
また仮に、通常のインクを用い、吐出された直後のインクに装飾材を散布して、その後に紫外線を照射してインクを硬化させたとしても、吐出直後のインクは液体状であるため、装飾材がある程度インク内に沈み、その状態で固定されてしまう。これに対し、本実施形態ではインクを「半硬化」させた状態において、操作者が装飾材を散布して定着させるので、装飾材がインク内に沈み込むことはなく、装飾性をより向上することができる。
また、本実施形態では特に、装飾材の散布を行わない場合には、図9に示す印刷モード「1」〜「6」の一括記録モードを用いる。これらの印刷モードでは所定の硬化段階を超えるまで紫外線を照射し、インクを十分に硬化させることができる。一方、装飾材の散布を行う場合には、図9に示す印刷モード「7」〜「12」の多段記録モードを用いる。これらの印刷モードでは、所定の硬化段階まで紫外線を照射してインクに粘着性を残した状態で装飾材の散布を行うので、インクの粘着性により装飾材を確実に定着することができる。
また、本実施形態では特に、ステップS265において、CPU301が、載置テーブル105がステップS150において作業位置に移動する前にUV照射装置121よる紫外線の照射を停止させる。これにより、被印刷媒体104が作業位置へ移動した状態で、UV照射装置121が無駄に照射を行うのを防止することができる。
また、本実施形態では特に、ステップS145において、CPU301は、載置テーブル105を作業位置に移動させた状態において、印刷ヘッド101に対し所定のメンテナンス動作を実行させる。これにより、被印刷媒体104が作業位置へ移動し処理領域に不在となった状態を活用し、印刷ヘッド101のフラッシングやパージ等のメンテナンスを行うことができる。
また、本実施形態では特に、ステップS140において、CPU301は、ステップS165及びステップS200による仕上げ処理に関する情報をLCD321に表示する。装飾材をインクに対し所望の態様で定着させるには、装飾材の散布の後の照射を例えばいつ頃からどのように開始すればよいかを知っておくことが望ましい。本実施形態では、上述のように仕上げ処理に関する情報をLCD321に表示するので、操作者は、例えば上記の時間的な目安を確実に知ることができる。
また、本実施形態では特に、ステップS230及びステップS240において、CPU301が、載置テーブル105に載った被印刷媒体104とUV照射装置121とが相対移動するように制御する。これにより、UV照射装置121は紫外線を種々の角度でインクに照射することができる。この結果、装飾材がインクの外表面に位置する場合であっても、当該装飾材に遮られない角度から装飾材の裏側のインク部分に対し確実に照射を行うことができ、インクを効率的に硬化することができる。
また、本実施形態では特に、印刷ヘッド101が、エポキシ化合物、オキセタン加工物、及びビニルエーテル加工物のうち少なくとも1つと、重合開始剤、増感剤を含む、カチオン系のインクを吐出する。このようにカチオン系のインクを用い、紫外線を照射することで、インクの粘着性を外表面から喪失させ、インクを経時的に硬化させることができる。
また、本実施形態では特に、ステップS165及びステップS200の仕上げ処理において、CPU301が、所定の硬化段階としての、JIS Z3284に準拠したタッキング試験機による評価においてインクの引張荷重が0となる段階、を超えるまで紫外線を照射するように、UV照射装置121を制御する。これにより、インクを「完全硬化」状態とし、十分なインクの硬化状態を得ることができる。
また、本実施形態では特に、初期印刷、中期印刷及び後期印刷において、CPU301が、完全硬化照射量の0.05倍〜0.95倍の範囲の照射量を照射するように、UV照射装置121を制御する。これにより、インクを「半硬化」状態とし、粘着性を確実に残しているインクの硬化状態を得ることができる。
また、本実施形態では特に、装飾材は、セラミック、樹脂、金属のいずれかから成り、粒状、フィルム、粉体、及び繊維のうち、少なくとも1つの形状で構成されている。このように各種材料により構成された装飾材を用いて装飾を行うことにより、装飾性を向上することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限るものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
(1)装飾材を自動散布する場合
上記実施形態では、操作者が手作業で装飾材を散布するようにしたが、これに限らず、装飾材を自動的に散布するようにしてもよい。
本実施形態のインクジェット記録装置100は、例えばキャリッジ102の近傍に、載置テーブル105に載置した被印刷媒体104上に装飾材を散布可能な散布装置(図示せず)を備えている。この散布装置(散布手段)としては、例えば圧縮エアを用いて装飾材を噴出させる噴出装置や、篩を振動させて装飾材を散布する篩装置等を採用することができる。
図10は、本変形例における各印刷モード動作処理の詳細内容を表すフローチャートであり、前述の図7に対応する図である。図10において、前述の図7と異なる点は、ステップS150の代わりにステップS150Aを設けたことである。すなわち本変形例では、ステップS135において、CPU301が操作者による手作業があるか否かを判定し、手作業がある場合には(ステップS135でYES)、ステップS140及びステップS145において、各種情報表示とメンテナンス処理を実行する。
その後、ステップS150Aでは、CPU301は、出力インターフェース305を介して散布装置駆動回路(図示せず)に駆動信号を出力し、散布装置を駆動させて装飾材を散布する。CPU301は、この装飾材散布処理を、載置テーブル105を処理領域に位置させつつ実行するため、前述の実施形態のように載置テーブル105の作業位置への移動は行わない。その後のステップS160以降の手順は図7と同様である。また、上記以外のCPU301が実行する制御内容は、前述の実施形態と同様である。
上記図10に示すフローチャートにおいて、前述したステップS10の印刷前処理で設定した印刷モードが後述の図9に示す印刷モード「7」〜「12」である場合には、ステップS110及びステップS200、ステップS120及びステップS200、並びに、ステップS130及びステップS200が、特許請求の範囲に記載の第1制御手段として機能すると共に、第1手順に相当する。
また、上記ステップS150Aにおいて、CPU301は、上記ステップS110及びステップS200、ステップS120及びステップS200、並びに、ステップS130及びステップS200により実行したインクの吐出及び紫外線の照射の後、被印刷媒体104に付着したインクに対し、装飾材の散布を行うように散布装置を制御することになる。したがって、ステップS150Aが特許請求の範囲に記載の第2制御手段として機能すると共に、第2手順に相当する。また上記ステップS165及びステップS200が、第3制御手段として機能すると共に、第3手順に相当する。
本変形例によれば、紫外線の照射により硬化進行中で粘着性を備えているインクに対し、自動的に装飾材を散布して定着させた後、さらに紫外線を照射して硬化させることができる。インクの種類や色合いだけで装飾を図る従来手法と異なり、インク以外の材料により装飾を行えるので、装飾性を向上することができる。また自動的に装飾材を散布するので、操作者が手作業で散布を行う場合に比べて作業負担を軽減できる。さらに、手作業を行う場合に比べて載置テーブル105の移動が少なくなるので、印刷処理時間を短縮することができる。
なお、本変形例において、CPU301が、散布装置で散布する装飾材の量に応じて、初期印刷、中期印刷及び後期印刷における照射量を変更するようにしてもよい。例えば、散布装置による散布量が多い場合には、初期印刷、中期印刷及び後期印刷における照射量が小さくなるようにUV照射装置121を制御することで、インクの硬化程度を低くして粘着性を高くし、より多くの装飾材を確実に定着させることができる。また、散布装置による散布量が少ない場合には、初期印刷、中期印刷及び後期印刷における照射量が大きくなるようにUV照射装置121を制御することで、インクの硬化程度を高くして粘着性を低く、より迅速な硬化を優先した定着を行うことができる。
(2)気流により余分な装飾材を除去する場合
上記実施形態では、操作者が手作業で装飾材を散布するが、手作業であるため装飾材の散布量が過剰となる場合も考えられる。この場合、そのまま印刷処理を進めると、その後の仕上げ処理において過剰な装飾材が紫外線を遮断し、インクが適正に硬化しないおそれがある。本変形例は、このようなことを防止するために、ブロアファン127による気流で余分な装飾材を除去するものである。
前述したように、インクジェット記録装置100のキャリッジ102は、ダクトカバー122の中央上部にブロアファン127(流動手段)を有している。このブロアファン127による気流は、印刷ヘッド101の背面に設けた熱交換用フィン128及びUV照射装置121の上面に設けた熱交換用フィン133を介して印刷ヘッド101及びUV照射装置121を冷却した上で、水平部102aの後側に設けた噴出口134から被印刷媒体104に向かって流出する。本変形例では、この流出した気体を利用して余分な装飾材を除去する。
なお、ブロアファン127を用いるのではなく、装飾材を除去するための専用のファンを別途設けてもよい。ファンとしては、送風式だけでなく吸引式を採用することもできる。
図11は、本変形例における各印刷モード動作処理の詳細内容を表すフローチャートであり、前述の図7に対応する図である。図11において、前述の図7と異なる点は、ステップS157を追加したことである。すなわち本変形例では、ステップS155において、CPU301は、操作者による手作業が完了したか否かを判定し、操作者がPC320の上記操作手段を介して作業完了信号を入力した場合には(ステップS155でYES)、ステップS157に移行する。
ステップS157では、CPU301は、出力インターフェース305を介してブロアファン駆動回路311に駆動信号を出力し、ブロアファン127を駆動させる。これによりチャンバー123内に気体の流動が発生し、噴出口134から被印刷媒体104に向かって流出する。この際、余分な装飾材は「半硬化」状態のインクに接触しておらずインクに付着していないため、噴出した気体により容易に除去することができる。その後のステップS160以降の手順は図7と同様である。また、上記以外のCPU301が実行する制御内容は、前述の実施形態と同様である。
上記において、ステップS157では、CPU301は、ステップS150の実行後でステップS165及びステップS200による仕上げ処理に基づく紫外線の照射の完了前に、気体流動を実行するようブロアファン127を制御することになる。したがって、ステップS157は、特許請求の範囲に記載の流動制御手段として機能する。
本変形例によれば、ブロアファン127による気体の送風により過剰な装飾材を除去することで装飾材による紫外線の遮断を防ぎ、インクを効率的に硬化することができる。
なお、前述したように、CPU301は、サーミスタ131,135の検出結果に基づいてブロアファン127の駆動を制御し、印刷ヘッド101及びUV照射装置121を中心とするチャンバー123内の温度制御を行う。したがって、図11には特に図示していないが、初期印刷、中期印刷及び後期印刷においても、CPU301は適宜ブロアファン127を駆動させて印刷ヘッド101及びUV照射装置121の冷却を行う。この初期印刷、中期印刷及び後期印刷における冷却処理においては、CPU301は、UV照射装置121による紫外線の照射時において、当該UV照射装置121に向かって気体を流動するようにUV照射装置121を制御する。したがって、このような初期印刷、中期印刷及び後期印刷における冷却処理も、特許請求の範囲に記載の流動制御手段として機能する。このように、本変形例によれば、ブロアファン127を除去機構及び冷却機構として兼用することができるので、装置構成を簡素化できる。
また、前述の図3及び図4に示すように、キャリッジ102は噴出口134を水平部102aの後側に設けているが、例えば噴出口134を印刷ヘッド101の周囲に設けることにより、気流がインクを印刷ヘッド101から遠ざけるように噴出する構成としてもよい。この場合、初期印刷、中期印刷及び後期印刷におけるインクの吐出中に、ブロアファン127がインクを印刷ヘッド101から遠ざける気体流動を行うことができるので、被印刷媒体104からの跳ね返り等による印刷ヘッド101へのインク付着を防止することができる。また、ブロアファン127をこのようなインクの付着防止機構及び除去機構として兼用することができるので、装置構成を簡素化できる。
さらに、本変形例において、CPU301が、ステップS165及びステップS200による仕上げ処理での紫外線の照射量に応じて、ブロアファン127による気流の強さを制御するようにしてもよい。例えば、仕上げ処理での紫外線の照射量が小さいほど弱い気流を生じるようにブロアファン127を制御することで、硬化の程度が低くまだ柔らかい外表面のインクに強い気流が当たり、その外表面の装飾材がインクの内部に不用意に沈むのを防止することができる。なお、通常は硬化程度が低い場合には多量の装飾材を散布するため、上記のように気流を弱くすることで装飾材が残る可能性があるが、この場合には例えば下記に示すような別途の除去手段で除去すればよい。
(3)ブロアファン以外の装飾材除去手段
上記変形例(2)では、ブロアファン127による気流を利用して余分な装飾材を除去するようにしたが、余分な装飾材を除去する除去装置(図示せず)を別途設けてもよい。この除去装置(除去手段)としては、例えば静電気を用いた金属製の装飾材の吸着除去装置や、振動による装飾材の回収装置等を採用することができる。
図12は、本変形例における各印刷モード動作処理の詳細内容を表すフローチャートであり、前述の図11に対応する図である。図12において、前述の図11と異なる点は、ステップS157の代わりにステップS157Aを設けたことである。このステップS157Aでは、CPU301は、出力インターフェース305を介して除去装置駆動回路(図示せず)に駆動信号を出力し、除去装置を駆動させる。除去装置は、UV照射装置121の紫外線の照射によって硬化されたインクの外表面に対して移動可能な状態の装飾材を除去する。
上記において、ステップS157Aでは、CPU301は、ステップS150の実行後でステップS165及びステップS200による仕上げ処理に基づく紫外線の照射の完了前に、装飾材の除去を実行するよう除去装置を制御することになる。したがって、ステップS157Aは、特許請求の範囲に記載の除去制御手段として機能する。
(4)照射量でなくインクの硬化段階を設定する場合
上記実施形態では、操作者が選択した印刷モードに対応して、CPU301が照射量を設定する。しかし、インクの種類、使用環境、固体要素の種類、記憶媒体の種類等によって、同一の照射量であってもインクの硬化段階は一定ではない。硬化段階がどの程度であるかにより、装飾材のインクへの密着度や完全硬化するまでの時間が長短する。本変形例は、このような点に鑑み、インクの硬化段階を設定するようにしたものである。
具体的には、操作者がPC320の操作手段を介して、印刷モードを選択すると、CPU301がステップS110において、初期印刷、中期印刷及び後期印刷におけるインクの硬化段階を設定する。そしてCPU301は、設定した硬化段階に対応した照射量の紫外線の照射を行うように、UV照射装置121を制御する。なお、このように操作者がモード選択操作を行うのではなく、例えば画像データに硬化段階を特定するデータが含まれており、操作者が印刷する画像を選択するとCPU301が画像データに含まれる上記データに従って硬化段階を行う構成としてもよい。
本変形例においては、上記ステップS110が、特許請求の範囲に記載の硬化度設定手段として機能する。
本変形例によれば、上記の種々のバリエーションに対応した形で、インクの硬化段階を操作者の所望の段階に確実に設定することができる。
(5)期間、時点により照射量の設定を行う場合
上記実施形態では、操作者が印刷モードを選択することで、当該印刷モードに対応して予め定まった照射量に設定するようにしたが、このような固定した設定値から選択して照射量を設定するのではなく、操作者が被印刷媒体104のインクの外表面の粘着性に関連した期間や時点を入力することにより照射量を任意に設定できるようにしてもよい。
例えば、図9に示す印刷モード「7」〜「12」では、仕上げの照射量調整%は全て100%となっているため、印刷処理が終了した段階で被印刷媒体104の印刷層は「完全硬化」状態となっている。しかし、例えば印刷時間を長く取れない場合や、印刷後の完成品を直接手渡しするのではなく送付する等の事情により、印刷直後に「完全硬化」している必要がない場合もある。したがって、本変形例では、操作者が最終的に完成品を得たい時点(例えば送付先に到達する時点)に「完全硬化」するように、UV照射装置121による照射量を設定する。具体的には、操作者がPC320の操作手段を介して、操作者が最終的に完成品を得たい時点(若しくは現時点からその時点までの期間)を入力すると、CPU301がステップS110において期間若しくは時点情報を取得し、当該情報に基づいて照射量を設定する。CPU301は、この設定を、インクの種類(組成)ごとに定まった最初の照射量と完全硬化までに要する時間との相関を表す相関テーブル(図示せず。RAM303が適宜の記憶エリアに記憶している)に基づいて行う。そしてCPU301は、選択した印刷モードのデータテーブルにおける仕上げ処理の照射量を当該照射量に設定する。
例えば、操作者が図9中の印刷モード「11」を選択した場合において、操作者が入力した時点に基づいて設定した照射量が80%であった場合、印刷モード「11」における仕上げにおける照射量調整%を「100」から「80」に変更する。これにより、操作者が最終的に得たいインクの硬化段階を、操作者の所望のタイミングで確実に得ることができる。また、仕上げにおいて「完全硬化」させる必要がないため、印刷時間を短縮することができる。
本変形例においては、上記ステップS110が、特許請求の範囲に記載の時間情報取得手段として機能する。
(6)その他
なお、以上において、図5に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。また、図6乃至図8、図10乃至図12等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
以上では特に記載しなかったが、上記実施形態における被印刷媒体104は、被印刷媒体104へインクの転写を行うためにインクに対して剥離性を有しインクジェット記録装置100内で循環する中間体も含むものである。また、載置テーブル105自体がインクに対して剥離性を有している場合には、載置テーブル105を被印刷媒体104とし、印刷結果であるインクを載置テーブル105の表面から剥がして別の物品に転写してもよい。
上記実施形態では、UV照射装置121の電流値あるいは点灯個数を制御することにより照射量を変更するようにしたが、これに限らず、UV照射装置121が発生する紫外線の照射量については一定としつつ、当該紫外線を何らかの手段で遮蔽して残りの紫外線を通過させることにより、インクに到達する照射量を調整するようにしてもよい。
また以上述べた「完全硬化」については、時間的な要因についてインクの硬化状態や粘着性との相対関係を考慮して、インクに対する紫外線の照射量を決定しているが、その他の要因を時間的な要因と共に考慮してもよい。印刷結果の周辺温度(インクジェット記録装置100のヒータ129、補助ヒータ132、UV−LED121a、各種モータ108,111などが発する熱も含む)も、インクの硬化を進行させる要因として考慮してもよい。
被印刷媒体104の種類や印刷層の構成、インクの色・量や紫外線照射量等に関し、RAM303が所定の記憶エリアに記憶するデータテーブルは、インクジェット記録装置100へネットワークや記憶媒体を介して外部から供給されても、インクジェット記録装置100において操作者によって入力されてもよい。紫外線照射量については、インクの組成や使用用途に関連して、インクの硬化度(粘着度)と温度や時間経過の少なくとも一方との相関に応じて適宜決められる。紫外線照射量は、上記相関に応じ、温度や時間経過の少なくとも一方に応じて自動的に求められるように、インクジェット記録装置100のプログラムを構成してもよい。インクへの紫外線照射量をさまざまに変え、温度や時間経過の少なくとも一方に応じて実験を重ねた結果に対応したデータテーブルを作成し、自動的、または、手動で、紫外線照射量を決定若しくは入力できるように、インクジェット記録装置100のプログラムを構成してもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。