以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。同図に示したように、この画像形成装置10は、黒(K),マゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),クリア(透明;CL)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12M,12C,12Y,12CLと、各ヘッド12K,12M,12C,12Y、12CLに供給する紫外線硬化型インク(いわゆるUVインク)を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、各ヘッドの下流側にそれぞれ配置された半固溶化光源16A,16B,16C、16D,16Eと、最終ヘッド(クリアヘッド12CL)後段の半固溶化光源16Eの下流に配置された加圧定着部17と、該加圧定着部17の後段に配置された本硬化光源18と、記録媒体たる記録紙20を供給する給紙部22と、記録紙20のカールを除去するデカール処理部24と、各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLのノズル面(インク吐出面)及び各半固溶化光源16A〜Eの光出射面に対向して配置され、記録紙20の平面性を保持しながら記録紙20を搬送する吸着ベルト搬送部26と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部28と、を備えている。
紫外線硬化型インクは、紫外線エネルギーの付与によって硬化(重合化)する成分(モノマー、オリゴマー、又は低分子量ホモポリマー、コポリマーなどの紫外線硬化性成分)と重合開始剤とを含むインクであり、紫外線を受光すると重合を開始し、重合の進行とともに増粘し、やがて硬化する性質を有する。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLに対応する色(透明色を含む)のインクを貯蔵するインクタンク14K,14M,14C,14Y,14CLを有し、各タンクは所要の管路30を介してヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。なお、クリアヘッド12CLは、カラー画像の作像において着色点を付与するものではなく、他の有色インク(K,M,C,Y)によるインク打滴量を考慮して、各描画点のインク打滴量を概ね均一化するように透明インクを付与するものである。
図1において、給紙部22の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部22から送り出される記録紙20はマガジン32に装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部24においてマガジン32の巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム34で記録紙20に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター38が設けられており、該カッター38によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター38は、記録紙20の搬送路幅以上の長さを有する固定刃38Aと、該固定刃38Aに沿って移動する丸刃38Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃38Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃38Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター38は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙20は、吸着ベルト搬送部26へと送られる。吸着ベルト搬送部26は、ローラ41,42間に無端状のベルト43が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLのノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト43は、記録紙20の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。ローラ41,42間に掛け渡されたベルト43の内側には、不図示の吸着チャンバが設けられており、この吸着チャンバをファンで吸引して負圧にすることによって記録紙20がベルト43上に吸着保持される。
ベルト43が巻かれているローラ41,42の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図9中符号134として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト43は図1上で反時計回り方向に駆動され、ベルト43上に保持された記録紙20は図1の右から左へと搬送される。
各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLは、当該画像形成装置10が対象とする記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙20の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLは、記録紙20の送り方向に沿って上流側から黒(K)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y),クリア(CL)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLが記録紙20の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。このヘッド配列順序は、硬化感度の鈍い色順に上流側から並べたものである。
吸着ベルト搬送部26により記録紙20を搬送しつつ各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙20上にカラー画像を形成し得る。なお、クリアインクは、インク表面の平滑性を保つため、有色インクが着弾していない領域、又は有色インクの打滴量が少ない領域に吐出される。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙20をヘッド12K,12M,12C,12Yに対して相対移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙20の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス方式の画像形成装置10は、記録ヘッドを主走査方向に往復動作させながら描画を行うシャトルスキャン方式に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、KMCYの標準色(4色)とクリア(CL)インクの組み合わせによる構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせは本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。
各ヘッドの下流に配置されている半固溶化光源16A〜16Eは、ヘッドと同様に記録紙20の最大紙幅に対応する長さを有し、記録紙20の搬送方向と略直交する方向に延在するように固定されている。半固溶化光源16A〜16Eには、本硬化光源18と比べて発光波長領域の狭いLED素子、或いはLD素子が好適に用いられる。ただし、半固溶化光源16A〜16Eや本硬化光源18の中心波長や発光波長領域は使用されるインクの設計に応じて選択される。
各半固溶化光源16A〜16Eは、隣接配置されている上流側のヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLによる着弾インクを半固溶化状態(他色インクと接液状態でも混色を起こさない程度の粘度)にする程度のエネルギーの紫外線を照射する。
すなわち、半固溶化光源16A〜16Eは、先行するヘッド12K,12M、12C,12Y又は12CLによって記録紙20上に打滴されたインクを本硬化していない柔軟な(変形容易な)インク状態にする機能を果たすとともに、後続のヘッド12M,12C、12Y,12CLから吐出される他色インクとが記録紙20上で混合して色滲みを起こすことがないように、その混合を防止し得る程度に記録紙20上のインクを半硬化させる機能を果たす。
記録紙20が上流のヘッドを通過して、次のヘッド下に入る前に、半固溶化光源16A〜16Eから光を照射して、記録紙20上のインクを半硬化状態にし、次段の異色ヘッドによる打滴を行うようになっている。
図1の例では、黒ヘッド12Kによる打滴後に、半固溶化光源16Aによる光照射を経て黒インクを半固溶化させてから、マゼンタヘッド12Mによる打滴を行う。同様に、マゼンタヘッド12Mによる打滴後は、半固溶化光源16Bによる光照射を経てシアンヘッド12Cによる打滴を行い、その後半固溶化光源16Cによる光照射を経てイエローヘッド12Yによる打滴を行う。イエローヘッド12Yによる打滴後は半固溶化光源16Dによる光照射を経て、クリアヘッド12CLによる打滴を行い、半固溶化光源16Eによって光照射を行う。
記録紙20の搬送方向に沿って上流側に存在するヘッドから吐出されたインク程、半固溶化領域を通過する回数が多くなるが、既述のとおり、硬化感度の鈍い色順にヘッドが配
置されているため、最終の半固溶化光源16Eを通過した段階で記録紙20上のインクは色間の硬化の進行差が小さく平準化された半固溶状態となっている。
最終の半固溶化光源16Eの後段に設けられた加圧定着部17(平滑化手段)は、表面を剥離性の高い樹脂でコーティングしたローラ45を含んで構成される。該ローラ45は中空構造とし、中心部にハロゲンランプなどのヒータ46を配設し、熱を加えながら記録紙20の画像面を加圧する構造とする。加圧定着部17によってインク表面を加熱加圧することにより、インク表面の凹凸が平坦化される。また、熱を加えず加圧だけで平滑化可能な場合は、加熱しなくてもよい。なお、多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
加圧定着部17は、加圧圧力を調整できる機構(例えば、バネ負荷によってローラ45の押しつけ力を与える可変する構造)を有し、記録紙20の厚みやインク量に応じて適切な加圧圧力に制御される。
加圧定着部17の後段には本硬化光源18が設けられている。本硬化光源18は、半固溶化光源16A〜16Eよりも発光波長域が広く、照射光量が大きいメタルハライドランプや水銀ランプなどを用いる。
加圧定着部17によって平滑化処理が行われた記録紙20は、本硬化光源18によってインクを完全に硬化させるに足る光照射が行われ、本定着が行われる。
また、加圧定着部17のローラ45は、不図示の移動機構によって記録紙20と接触しない所定の退避位置へ移動させることができるように構成されている。インク面の平滑化処理を行う場合には、ローラ45を記録紙20と接触させる所定の位置(平滑化処理位置)に位置させて加圧を行う。一方、インク面の平坦化処理が不要な場合は、ローラ45を退避位置に退避させ、圧力を加えずに本硬化光源18にて硬化定着させる。これにより、インク表面の凹凸が残ったままの作画も可能である。
なお、加圧定着部17について加圧/非加圧を切り換える手段として、上記した退避機構に代えて、加圧定着部17を取外し(離脱)可能な構造としてもよい。すなわち、平滑化処理が不要な場合には、当該画像形成装置10から加圧定着部17(又はその一部)を離脱させ、平滑化処理を省略するという態様も可能である。
こうして、本硬化光源18による本硬化処理(搬送ハンドリングにおいてもインクこすれ等による画質劣化を起こさない程度に硬化定着させる処理)を経て生成されたプリント物は排紙部28から排出される。なお、図1には示さないが、排紙部28には、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12K,12C,12M,12Y,12CLの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図2(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図2(b) はその一部の拡大図である。また、図3はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4は1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2中の4−4線に沿う断面図)である。
記録紙20上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図2(a),(b) に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙20の送り方向と略直交する方向に記録紙20の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a) の構成に代えて、図3に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙20の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図2(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。
図4に示したように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図4中不図示、図6中符号60として記載)と連通しており、インクタンク60から供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成している加圧板(振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、ピエゾ素子などの圧電体が好適に用いられる。インク吐出後、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPN はd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPN で直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン又は1個の帯状を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙20の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙20の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン又は1個の帯状の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔インク供給系の構成〕
図6は画像形成装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インクタンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。図6には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、画像形成装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ64で覆う。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、ヘッド50内のインク(圧力室内)に気泡が混入した場合、ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッド50への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ58が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータ58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かってアクチュエータ58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル板表面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、アクチュエータ58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド50のノズル面に、圧力室52内のインクをポンプ等で吸い込む吸引手段を当接させて、気泡が混入したインク又は増粘インクを吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。
〔半固溶化硬化部の構造例〕
ここで半固溶化硬化部の構造例について説明する。なお、各半固溶化光源16A〜16Eの構造は共通しているので、これらを代表して符号16で表す。図7は半固溶化光源16の詳細な構造例を示した部分断面図であり、図8は図7中の8A矢視断面図である。
これらの図面に示したように、半固溶化光源16は、遮光囲い70の内側においてヘッド50の長手方向に沿って複数の紫外線LED素子72がライン状に並べられて配置され、これら紫外線LED素子72列の下方に集光用のシリンドリカルレンズ84が配置された構造を有している。なお、符号78は、紫外線LED素子72が支持されている基板である。
遮光囲い70の底部には光出射口となるスリット状の開口部76が形成されるとともに、該開口部76の周囲には光出射方向に凸の遮光くちばし86が設けられている。また、記録紙20と対向する遮光囲い70の底面には、紫外線吸収コーディング88が施されている。
紫外線LED素子72群から発せられる発散光は、シリンドリカルレンズ84の作用によって紙送り方向に略直交する方向に沿って線状に集光され、記録紙20上に照射される
。シリンドリカルレンズ84に代えて、これと同様の集光パワーをもつ、光屈折面形状の非球面を1面以上有するレンズ群を用いることも可能である。
図7及び図8で説明した紫外線LED素子72群を選択的に発光させたり、各素子の発光量を制御することより、紫外線の照射エリアについて所望の照射範囲及び光量(強度)分布を実現することができる。
記録紙20のサイズやヘッド50による打滴範囲及びインク量に応じて紫外線LED素子72の発光位置及び発光量を適切に制御して必要最小限の発光を行うことにより、ヘッド50への悪影響(ノズル51内インクの硬化など)を極力抑制する。
なお、半固溶化光源16の構成は、図7及び図8のような砲弾型の紫外線LED素子72を用いる構成に限定されず、基板上にLED素子を一次元的に並べたものであってもよい。また、LEDに代えて、LD(レーザダイオード)を用いる構成も可能である。
〔制御系の説明〕
次に、画像形成装置10の制御系について説明する。
図9は画像形成装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。画像形成装置10は、通信インターフェース110、システムコントローラ112、画像メモリ114、モータドライバ116、ヒータドライバ118、加圧駆動部119、プリント制御部120、画像バッファメモリ122、ヘッドドライバ124、メディア検出部126、光源制御部128等を備えている。
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ130から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース110にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ130から送出された画像データは通信インターフェース110を介して画像形成装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ114に記憶される。画像メモリ114は、通信インターフェース110を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ112を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ114は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ112は、通信インターフェース110、画像メモリ114、モータドライバ116、ヒータドライバ118、加圧駆動部119等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ130との間の通信制御、画像メモリ114の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ134やヒータ46、加圧定着部17の加圧機構138等を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ116は、システムコントローラ112からの指示に従ってモータ134を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ118は、システムコントローラ112からの指示に従って加熱ドラム34や加圧定着部17のローラ45内のヒータ46その他各部のヒータを駆動するドライバである。
加圧駆動部119は、システムコントローラ112からの指示に従って加圧機構138を駆動して加圧圧力を可変するとともに、加圧機構138を退避位置及び平滑化処理位置の間で移動させる手段である。
プリント制御部120は、システムコントローラ112の制御に従い、画像メモリ114内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ124に供給する制御部である。プリント制御部120において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ124を介して色別のヘッド50のインク吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部120には画像バッファメモリ122が備えられており、プリント制御部120における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ122に一時的に格納される。なお、図9において画像バッファメモリ122はプリント制御部120に付随する態様で示されているが、画像メモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部120とシステムコントローラ112とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ124はプリント制御部120から与えられるドットデータに基づいて各ヘッド50の吐出駆動用アクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ124にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース110を介して外部から入力され、画像メモリ114に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ114に記憶される。画像メモリ114に蓄えられた画像データは、システムコントローラ112を介してプリント制御部120に送られ、該プリント制御部120において既知のディザ法、誤差拡散法などの手法によりインク色ごとのドットデータに変換される。
こうして、プリント制御部120で生成されたドットデータに基づいてヘッド50が駆動制御され、ヘッド50からインクが吐出される。記録紙20の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙20上に画像が形成される。
メディア検出部126は、記録紙20の紙種やサイズを検出する手段である。例えば、給紙部22のマガジン32に付されたバーコード等の情報を読み込む手段、用紙搬送路中の適当な場所に配置されたセンサ(用紙幅検出センサ、用紙の厚みを検出するセンサ、用紙の反射率を検出するセンサなど)が用いられ、これらの適宜の組み合わせも可能である。また、これら自動検出の手段に代えて、若しくはこれと併用して、所定のユーザインターフェースからの入力によって紙種やサイズ等の情報を指定する構成も可能である。
メディア検出部126により取得された情報はシステムコントローラ112及び/又はプリント制御部120に通知され、インク吐出制御及び半固溶化光源16の制御、加圧機構138の制御等に利用される。
光源制御部128は、半固溶化光源16の点灯(ON)/消灯(OFF)並びに点灯位置、点灯時の発光量等を制御する半固溶化光源制御回路と、本硬化光源18の点灯(ON)/消灯(OFF)並びに点灯時の発光量等を制御する本硬化光源制御回路と、を含んで構成される。光源制御部128は、プリント制御部120からの指令に従って各光源(16,18)の発光を制御する。
〔画像形成装置10の制御例〕
次に、上記の如く構成された画像形成装置10の制御例について説明する。図10は画像形成装置10の制御アルゴリズム例を示したフローチャートである。ここでは、用紙(
メディア)の種類やインクの着弾量等の情報を基に半固溶化条件及び加圧加熱条件を制御する例を示す。
同図に示すとおり、まず、メディア種の判定処理(ステップS10)において、使用する記録媒体の種類を判定する。この判定方式には、例えば、記録紙20の光学反射率検出等による自動検出、マガジン検出、ユーザインターフェースによるメニュー指定等が用いられる。
ステップS10のメディア種判定結果に基づき、使用されるメディア種に対応した判定値=Aを確定する(ステップS12)。画像形成装置10は、メディア種と判定値とを対応付けたメディア種テーブルのデータを格納した情報記憶手段(内部メモリ又は外部メモリ)を備えており、このメディア種テーブルを参照して判定値が決定される。
上記のメディア種判定の処理(ステップS10)と並行して、又はこれに続いて、用紙厚の判定処理(ステップS20)を行う。判定方式には、例えば、記録紙20の厚み検出等による自動検出やマガジン検出などが用いられる。ステップS20の用紙厚判定の結果に基づき、用紙厚に対応した判定値=Bを確定する(ステップS22)。
また、プリントすべき画像のデータに基づいてインクの液滴量の判定を行い(ステップS30)、使用するインクの種類等も考慮して、その液滴量に対応した判定値=Cを確定する(ステップS32)。
こうして求めた判定値A,B,Cを用いて加圧圧力を決定する。例えば、加圧圧力を適値に定めるには、液滴量と用紙厚に所定の重み付けをし、また液滴量に対しては、メディア種により浸透状況等の差があるため、メディア種の項を係数としてかけた条件式である次式 [数1] のような加圧圧力判定式を用いて計算する(ステップS40)。
[数1] (α1 ×A)×(γ1 ×C)+β1 ×B
ただし、係数α1 ,γ1 ,β1 はそれぞれ所定の定数値である。
上記加圧圧力判定式 [数1] の結果を求め、その結果に対応した加圧圧力調整値Pを確定する(ステップS42)。
加圧定着時の加圧圧力の制御方法については、既述のとおり、例えば、ニップローラ(45)のバネ負荷で加圧圧力が加わる構成とし、上記ステップS42で求めた加圧圧力調整値Pの値に応じてバネを伸縮させて圧力を調整可能な構成とする。こうして、インクにかかる圧力条件を大きく変えない(圧力条件の変動範囲を一定以内に制御する)ことにより、インクの剥がれや割れを防ぐことができる。
また、ステップS12,S22,S32で求めた判定値A,B,Cを用いて加熱温度を決定する。例えば、加熱温度を適値に定めるには、メディア種と用紙厚と液滴量がある重み付けを持ち、概略独立的に関係し合うことから、次式 [数2] のような加熱温度判定式を用いて計算する(ステップS50)。
[数2] α2 ×A+β2 ×B+γ2 ×C
ただし、係数α2 ,γ2 ,β2 はそれぞれ所定の定数値である。
上記加熱温度判定式 [数2] の結果を求め、その結果に対応した加熱温度調整値Tを確定する(ステップS52)。
加圧定着時の加熱温度の制御方法については、既述のとおり、加圧定着のローラ45の中心部にハロゲンランプなどのヒータ46を配置し、上記ステップS52で求めた加温温度調整値Tの値に応じてヒータ46の温調温度を調整可能な構成とする。
また、ステップS12,S22,S32で求めた判定値A,B,Cを用いて付加エネルギーを決定する。例えば、付加エネルギーを適値に定めるには、用紙厚の影響はほぼ関与しないため、メディア種と液滴量がある重み付けをもって概略独立的に関係するため、次式 [数3] のような付加エネルギー判定式を用いて計算する(ステップS60)。
[数3] α3 ×A+γ3 ×C
ただし、係数α3 ,γ3 はそれぞれ所定の定数値である。
上記付加エネルギー判定式 [数3] の結果を求め、その結果に対応した付加エネルギー調整値Eを確定する(ステップS62)。
この付加エネルギー調整値Eの値に応じて、半固溶化光源16の照射量を調整可能な構成とする。
このように、メディアの特性やインク着弾量の情報を基に加圧定着部17の加圧加熱条件、半固溶化光源16の照射エネルギー条件を最適とすることにより、安定した定着処理が可能となり、インクの剥離や割れを防止することができる。
上述の説明では、紫外線硬化型インクを使用する例を述べたが、本発明の実施に際しては、光硬化型インクに限らず、電子線、X線などの輻射線の照射や加熱などよって硬化する他のエネルギー付与硬化型インクを用いることが可能であり、使用されるインクに応じてその硬化剤を活性化させる(重合を活性化させる)のに適した半固溶化硬化部及び本硬化部が設けられる。
また、本発明の実施に際しては、重合によって硬化する性質のインクに限らず、ソリッドインクに代表される相変化型インクを用いることもできる。ソリッドインクは、常温で固体であり、加熱すると低粘度となる性質を有しているので、記録紙20上に着弾したインクが完全に硬化しない程度に搬送系を加熱し、記録紙20上に吐出されたインクを高粘度液状態に維持して加圧定着部17へと搬送する。そして、かかる柔軟な液状態で平滑化処理を行った後に、本硬化部(本定着部)へと送る。この場合、本硬化部には、冷却手段を含む定着手段が設置される。冷却手段は、例えば、記録媒体に冷風をかけて強制的に記録媒体上のインクを冷やす空冷方式や、搬送系など記録媒体周辺に冷却水を循環させて記録媒体表面を冷却する水冷方式などがある。もちろん、これ以外にも様々な冷却方法を適用可能である。
図11に相変化型インクを用いる場合の画像形成装置の構成例を示す。図11中図1と同一又は類似する部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。図11に示した画像形成装置10’は、ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLのノズル面と対向する搬送部に加熱部160が配設され、加圧定着部17の後段(下流)には本硬化手段としての冷却部180が配置されていている。また、図示されていないが、各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CL及びそれぞれのインク供給部(14K,14M,14C,14Y,14CL)は、相変化型インクを液化させるためのヒータ(加熱手段)を有している。
相変化型インクは、各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CL内において高温溶融状態で保持され、アクチュエータ58の駆動によってヘッド12K,12M,12
C,12Y,12CLから液滴として吐出される。
加熱部160は、温度制御可能なヒータを含み、各ヘッド12K,12M,12C,12Y,12CLから吐出されたインクを他色インクと混色を起こさない程度の粘度の半固溶状態に保持するために必要な熱を記録紙20上のインクに与える。
すなわち、記録紙20上に着弾したインクは、加熱部160からの熱によって半固溶化し、その半固溶状態が保たれた状態で加圧定着部17によって平滑化される。
本例の冷却部180は、記録紙20を挟んで上下に対向配置されたファン181,182を含んで構成されている。これらファン181,182によって記録紙20の印字面側及び裏面側から冷風をかけて冷却することにより、記録紙20上のインクは相変化によって固化定着する。
図12は、図11に示した画像形成装置10’のシステム構成を示す要部ブロック図である。図12中図9と同一又は類似の部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図9の光源制御部128、半固溶化光源16及び本硬化光源18に代えて、図12の例では、それぞれ搬送温度制御部129、加熱部160及び冷却部180を備えている。
搬送温度制御部129は、加熱部160のON/OFF並びに発熱量(加熱温度)等を制御する温度制御回路と、冷却部180のファン181,182のON/OFFや回転数(風量)等を制御する冷却制御回路と、を含んで構成され、プリント制御部120からの指令に従って加熱部160及び冷却部180を制御する。
図13は、図11及び図12で説明した画像形成装置10’の制御アルゴリズム例を示したフローチャートである。図13中図10のフローチャートと同一又は類似の工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図10のステップS60及びS62に代えて、図13のフローチャートでは、それぞれステップS60’及びS62’の工程を含んだ構成になっている。
すなわち、ステップS60’では、ステップS12,S22,S32で求めた判定値A,B,Cを用いて次式 [数4] の搬送温度判定式を計算する。
[数4] α3 ×A+γ3 ×C
ただし、係数α3 ,γ3 はそれぞれ所定の定数値である。
上記搬送温度判定式 [数4] の結果を求め、その結果に対応した搬送温度調整値E’を確定する(ステップS62’)。そして、この搬送温度調整値E’の値に応じて、加熱部160の加熱温度を調整する。
上記実施形態では、色別に複数のフルライン型ヘッドを配置した構成を述べたが、本発明の実施に際しては、多色一体型のヘッドにおいて色別にノズル列が形成されているというヘッド構成も可能である。また、フルライン型ヘッドに代えて、短尺ヘッドを主走査方向に往復動作させるシャトルスキャン方式のヘッドを用いることもできる。
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書では下記に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
発明(1): インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッド及び記録媒体のうち少なくとも一方を搬送して前記吐出ヘッドと前記記録媒体を相対移動させる搬送手段と、前記吐出ヘッドに対する前記記録媒体の相対的搬送方向における前記吐出ヘッドの下流側に配置され、その上流側にある吐出ヘッドから吐出されたインクを他色インクと接液状態でも混色を起こさない程度の粘度の半固溶状態に硬化させる半固溶化硬化手段と、前記半固溶化硬化手段の下流側に配置され、前記記録媒体上のインクを平滑化する平滑化手段と、前記平滑化手段の下流側に配置され、前記記録媒体上のインクを搬送ハンドリングにおいてもインクこすれ等による画質劣化を起こさない程度に硬化定着させる本硬化手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
この発明において、描画インクには、紫外線硬化型インクに代表されるエネルギー付与硬化型インク又はソリッドインクに代表される相変化型インクを好適に用いることができる。ソリッドインクは、常温で固体であり、加熱によって低粘度化する性質を有している。したがって、ソリッドインクを用いる場合には、半固溶化硬化手段として加熱手段を用い、本硬化手段として冷却手段を用いる。
発明(2):前記平滑化手段は、前記記録媒体上のインクを加圧する加圧手段を含んで構成されることを特徴とする発明(1)記載の画像形成装置。
発明(3):前記平滑化手段は、更に前記記録媒体上のインクを加熱する加熱手段を含んで構成されることを特徴とする発明(2)記載の画像形成装置。
発明(4):前記吐出ヘッドにエネルギー付与硬化型インクを供給するインク供給手段を備えたことを特徴とする発明(1)、(2)又は(3)記載の画像形成装置。
発明(5):前記吐出ヘッドは、複数色のインクの色ごとに設けられるとともに、これら色別の複数の吐出ヘッドはエネルギー付与による硬化感度の鈍いインク色の順番に上流側から配置され、各吐出ヘッドの下流側にそれぞれ前記半固溶化硬化手段が配置されていることを特徴とする発明(4)記載の画像形成装置。
発明(6):前記記録媒体の種類、インクの種類及びインク着弾量のうち少なくとも1つの条件に応じて前記平滑化手段の平滑化条件及び前記半固溶化硬化手段により付与するエネルギーのうち少なくとも一方を制御する制御手段を備えたことを特徴とする発明(1)乃至(5)の何れか1項記載の画像形成装置。
発明(7):相変化型インクを前記吐出ヘッドに供給する相変化型インク供給手段を備え、前記吐出ヘッドは、前記相変化型インクを高温溶融状態で吐出し、前記本硬化手段は、冷却により前記相変化型インクを本硬化することを特徴とする発明(1)、(2)又は(3)記載の画像形成装置。
相変化型インクを使用する場合、吐出ヘッド内では高温溶融状態で保持され、ノズルから液として吐出される。半固溶化硬化手段は、吐出ヘッドから吐出された相変化型インクを半固溶状態に保持する程度の熱をインクに与える。本硬化手段は、当該半固溶状態のインクを搬送ハンドリングにおいてもインクこすれ等による画質劣化を起こさない程度に硬化定着させるべく、記録媒体上のインクを冷却する。
発明(8):有色インクを吐出する吐出ヘッドの後段にクリアインクを吐出するための吐出ヘッドが設けられていることを特徴とする発明(1)乃至(7)の何れか1項記載の画像形成装置。
発明(9):前記平滑化手段を所定の平滑化処理位置から所定の退避位置へと移動させる退避駆動機構を備えていることを特徴とする発明(1)乃至(8)の何れか1項記載の画像形成装置。
発明(10):インク吐出用のノズルを有する吐出ヘッドから記録媒体に向けてインクを吐出するとともに、前記吐出ヘッド及び前記記録媒体のうち少なくとも一方を搬送して前記吐出ヘッドと前記記録媒体を相対移動させ、前記記録媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、前記吐出ヘッドによって前記記録媒体上にエネルギー付与硬化型インク又は相変化型インクを吐出させる吐出工程と、前記吐出工程で吐出されたインクを他色インクと接液状態でも混色を起こさない程度の粘度の半固溶状態に硬化させる半固溶化硬化処理工程と、前記記録媒体上で半固溶化状態にあるインクを加圧してインクを平滑化する平滑化処理工程と、前記平滑化処理工程の後に前記記録媒体上のインクを搬送ハンドリングにおいてもインクこすれ等による画質劣化を起こさない程度に硬化定着させる本硬化処理工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
10…画像形成装置、12K,12C,12M,12Y,12CL…ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16,16A,16B,16C,16D,16E…半固溶化光源、17…加圧定着部、18…本硬化光源、20…記録紙、22…給紙部、26…吸着ベルト搬送部、32…マガジン、45…ローラ、46…ヒータ、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、58…アクチュエータ、112…システムコントローラ、119…加圧駆動部、120…プリント制御部、126…メディア検出部、138…加圧機構、160…加熱部、180…冷却部