JP2011206655A - 塗装方法およびこれに用いる再帰反射性塗料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかる塗装方法は、その表面の一部に反射膜が形成されている球形で透明のビーズである自反射ビーズと透明樹脂とを必須とする塗料を、透明樹脂により基材表面に固定されたときの自反射ビーズの反射膜の位置決めを無作為として塗装することにより、被塗装面に再帰反射性を付与する、ことを特徴とし、本発明にかかる再帰反射性塗料は、その表面の一部に反射膜が形成されている球形で透明のビーズである自反射ビーズと透明樹脂とを必須とし、前記塗装方法に適用される、ことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
また、横桟の外側面に光反射剤を含む樹脂塗膜が形成され、その表面に再帰反射性を有するガラスビーズが付着された防護柵も知られている(特許文献2参照)。
これらに対して、ガラスまたは樹脂からなるビーズの少なくとも一部の表面に光反射性を有する反射膜が設けられた再帰反射ビーズがその反射膜を底面にして塗膜内に設けられている再帰反射性塗膜も知られている(特許文献3参照)。
特許文献3に記載のこの従来技術においては、特許文献1,2の従来技術のように、光反射剤を含む樹脂塗膜を形成することがないため、この点での工程の煩雑さはない。しかし、再帰反射ビーズが反射膜を底面にして塗膜内に設けられていることを必須条件としており、そのため、第1に、基材表面の真正面から照射される光は十分に反射できるが、道路上を走行する自動車からの光など、基材表面に対して斜めから照射される光は、ビーズの反射膜で反射されることが殆どないという問題があり、第2に、ビーズの反射膜を塗膜の底面に向けるための面倒な塗装工程が必要であると言う問題があった。
その過程において、本発明者は、透明樹脂により基材表面に固定された状態での各自反射ビーズは、その表面の反射膜の位置決めが無作為となっていることが重要であることを見出した。すなわち、上述のとおり、前記特許文献3の技術のごとく、反射膜の位置決めが自反射ビーズの底面のみに限定されていると、入射角度が20°以下という非常に限られた範囲でしか再帰反射性が期待できないのに対し、反射膜の位置決めが無作為となっていると、いかなる入射角度であっても、いずれかの自反射ビーズで再帰反射が起こるため、結果として、例えば、防護柵の実際の使用場面で起こるように入射角度が0〜90°の範囲で変化しても、常に一定以上の再帰反射性が発揮されることを見出したのである。
すなわち、本発明にかかる塗装方法は、その表面の一部に反射膜が形成されている球形で透明のビーズである自反射ビーズと透明樹脂とを必須とする塗料を、透明樹脂により基材表面に固定されたときの自反射ビーズの反射膜の位置決めを無作為として塗装することにより、被塗装面に再帰反射性を付与する、ことを特徴とする。
本発明にかかる再帰反射性塗料は、その表面の一部に反射膜が形成されている球形で透明のビーズである自反射ビーズと透明樹脂とを必須とし、上記塗装方法に適用される、ことを特徴とする。
本発明にかかる塗装方法およびこれに用いる再帰反射性塗料について、適宜、図面を用いて具体的に説明する。
図1の例1と例2は、基材表面上に再帰反射性塗膜を形成し、その表面を、キーエンス社製マイクロスコープを用いてレンズ200(同社の商品名)で観察し、写真撮影したものであり、それぞれ、本発明にかかる塗装方法によって形成される再帰反射性塗膜の構造の一例を表すものである。
図1に示す例では、基材上において、自反射ビーズが透明樹脂により被覆された状態で、島状に存在していることが分かる。すなわち、一部のビーズは、接近し、時に、隙間のない状態になって島状を呈していることもあるが、多くのビーズ間で、そして、少なくとも島と島の間において、隙間が出来ている。本発明の塗装方法は、再帰反射性に優れる自反射ビーズを用いているので、このような隙間を有する状態となるように塗装しても十分な再帰反射性を発揮させることができるのであり、以下では、このような状態を指して、「自反射ビーズが互いの間に隙間を空けた状態であること」と表現している。
上述の特許文献1,2の技術では、反射層が必須に用いられており、この反射層は、基材表面を覆い、基材表面の色調やツヤ(JIS K 5500では「ツヤ」と書く。「艶」を意味する。)を隠蔽するので、基材が本来有する色調やツヤが再帰反射性塗膜表面にまで現れてこず、そのために、基材本来の色調やツヤを生かすことが困難であった。また、反射層が必須である分だけ膜厚も厚くなり、さらに、ガラスビーズの底面が反射層にまで達していなければ、所望の再帰反射性は得られないので、結果として、ガラスビーズの粒径も大きくする必要があり、この点においても、やはり、本来有する色調やツヤの現出を妨げるものであった。
そこで、このように再帰反射性と基材本来の色調とツヤの維持という一見して不可能と思われる性能の両立を図るためにさらなる鋭意検討を重ねた結果、従来は、再帰反射性を重視するあまり、必要以上に再帰反射性のビーズを過剰に配合し、ビーズ同士が密着する構造であった結果、基材本来の色調やツヤが、ビーズによって隠蔽されてしまうことが分かった。これに対して、本発明者は、ビーズ表面の一部に反射膜が形成されているビーズである自反射ビーズを用いるようにすれば、ビーズ配合量が十分に多くなければ再帰反射性が得られないという従来の技術常識に反して、意外にも、従来よりも少ないビーズ量、基材に占める少ないビーズ面積率でも効率的に十分な再帰反射性が得られることが分かり(これに対して、ビーズ表面の一部に反射膜が形成されていない場合には、十分な再帰反射性が得られない。このことは、後述の表1の比較例2,3でも明確に示されている。)、そのため、ビーズとビーズの間に基材の塗装面が十分に覗く隙間を有する皮膜構造とすることが可能となり、この構造とすることによって、基材が本来有する色調とツヤ、例えば、基材表面に景観を配慮した濃色の塗装が施されている場合において、この景観色調とツヤが再帰反射性塗膜によって損なわれることを抑止できることも分かった。
なお、本発明は、塗装工程上の煩雑さを避けつつ、様々な入射角度からの入光に対しても十分な再帰反射性を付与することを目的とするものであるので、「自反射ビーズが互いの間に隙間を空けた状態」であることは必須の条件ではない。このような工夫は、環境を配慮して濃色の塗装が施された基材など、基材本来の色調やツヤを生かすことが好ましい場合などに好ましく採用されるものである。
図2に示す例では、3つの自反射ビーズ30および透明樹脂層20からなる集団と、2つの自反射ビーズ30および透明樹脂層20からなる集団が互いに隙間を空けて存在している。図2は一部断面図であるので、図には表れていないが、例えば、奥行き方向でさらに複数の自反射ビーズと集団を形成している場合もある。
本発明にかかる塗装方法では、所定の自反射ビーズと塗膜形成要素である透明樹脂を必須成分とする塗料が用いられる。そして、本発明に適用されるビーズはその一部に反射膜を有する自反射ビーズであることが必須である。
まず、自反射ビーズ30に光L1,L2が直接入射する場合、屈折率が1.8〜2.0である自反射ビーズAではビーズ底面で焦点を結び、屈折率が2.1〜2.5である自反射ビーズBではビーズ底面よりもやや中心に近い位置で焦点を結ぶ。したがって、このように自反射ビーズ30に光が直接入射する場合における再帰反射性は、図3に示すように、自反射ビーズAのほうが自反射ビーズBよりも優れるのである。
図4に示す例では、基材10表面に透明樹脂層20で固定された自反射ビーズ30の表面が、その球状外周面に沿うように、すなわち、断面で見たときに同心円状となるように、透明樹脂層20で僅かに覆われている。このような場合、透明樹脂層20の屈折率が影響して相対屈折率が変化するため、焦点位置も変化する。したがって、この場合、被覆層がない場合にビーズ底面で焦点を結ぶようになっている自反射ビーズAは、焦点位置がビーズ底面からずれて、より外側に位置することになるが、ビーズ底面に反射膜を付けてあるため、その膜面で反射し、さらに透明樹脂層20を通過して外へ出て行くことになる。この時ビーズ内に入った光は反射膜面では集光しておらず(焦点位置がズレているため。)、光の強さとしては弱い光が再帰反射とは違う方向へ出て行くことになる。従って、再帰反射性は著しく低下することになるが、自反射ビーズBでは、被覆されていない状態での焦点位置がビーズ底面より内部に位置するため、透明樹脂層20の屈折率の影響により、焦点位置はビーズの外側に位置するが、自反射ビーズAの時よりもよりビーズの底面側に近づくこととなり、再帰反射性は自反射ビーズAを使用した場合より有効に確認できるのである。
図7に示す例では、図4に示す例において、さらに、透明樹脂層20表面が水膜40で覆われている点で図6に示す例と共通であるが、この例では、水膜40の厚みが厚く、水膜40の表面は平坦になっており、自反射ビーズ30の球状外周面に沿うように、すなわち、断面で見たときに同心円状となるようにはなっていない。この場合、図5に示す例と同様に、自反射ビーズAでは焦点位置がビーズ底面から大きくずれて、特に自反射ビーズ30に対して側面からの入射光において、再帰反射性の低下が著しくなる。そして、自反射ビーズBでは上述のように、塗装物の存在が確認できる程度の視認性が得られるのである。
上に述べた理由から、自反射ビーズAを用いる場合であっても、自反射ビーズの突出部分の表面が完全に露出している状態や、自反射ビーズの突出部分の表面がその球状外周面に沿うように、すなわち、断面で見たときに同心円状に透明樹脂で薄く覆われている状態のように「その頂部を周囲の透明樹脂層から突出させている状態」であれば、十分な再帰反射性を確保することができる。また、自反射ビーズBを用いる場合は、自反射ビーズの全体を透明樹脂層内に埋没させた状態としても十分な再帰反射性を確保することができる。
自反射ビーズAと自反射ビーズBは、上に述べた点を考慮しながら、使用目的に応じて、例えば、以下のように使い分けることができる。
(a)自反射ビーズAを単独で用いる場合は、非常に優れた再帰反射性が期待できる。ただし、自反射ビーズAは、被覆物質による再帰反射性の低下を招きやすいことに留意すべきである。また、実使用時においても、雨天時などに水が付着した状態や、長期間の使用でゴミ、ホコリ、排気ガスによる塵埃などが付着した状態となった場合には、再帰反射性が低下するので、表面に撥水性や防汚性を付与することが好ましい。これら撥水性や防汚性については、これらの性能を付与するための具体的物質の例示とともに、後述する。
(b)自反射ビーズBを単独で用いる場合は、非常に安定した再帰反射性が期待できる。具体的には、自反射ビーズBは、被覆物質による再帰反射性の低下が自反射ビーズAを使用した場合よりも少なく、また、雨天時など、水が付着した状態であっても、再帰反射性への影響は少ない。また、表面が平滑となって、汚れが付着し難い再帰反射性塗膜を得ることができる。上記(a)と同様、汚染物質の付着防止や除去のために、防汚性を付与するようにしても良い。ただし、被覆物質がない場合には自反射ビーズAよりも再帰反射性が低いことに留意する。したがって、高い再帰反射性は必要ないが、安定した再帰反射性を重視する場合には特に有用である。
(c)自反射ビーズAと自反射ビーズBを併用する場合は、自反射ビーズAに基づく優れた再帰反射性と、自反射ビーズBに基づく安定した再帰反射性の両方が期待できる。例えば、晴天時には、自反射ビーズAに基づく優れた再帰反射性が得られ、雨天時には、自反射ビーズBに基づく安定した再帰反射性が得られるので、全天候型の再帰反射性塗膜を形成することができる。上記(a)と同様、汚染物質の付着防止や除去のために、防汚性を付与するようにしても良い。ただし、自反射ビーズAは、被覆物質による再帰反射性の低下を招きやすいので、再帰反射性塗膜における透明樹脂の乾燥膜厚を、再帰反射性を失わない限度に調整する必要がある。
なお、図8〜13に示す再帰反射性塗膜においては、各自反射ビーズが均等に配置された状態となっているが、「自反射ビーズが互いの間に隙間を空けた状態」である場合の実際の構造は、図1,2に示すように、単独のものもあれば複数の自反射ビーズが島状に配置されるものもあるのが通常である。図8〜13は、各態様の比較の簡便化のため、模式的に表したものであるに過ぎず、本発明にかかる塗装方法が、自反射ビーズが均等に配置された再帰反射性塗膜を形成する方法に限定されるものでないことはいうまでもない。
透明樹脂層は、図8,11,12に示す形態のように単層であっても良いし、図9,10,13に示す形態のように複層であっても良い。複層である場合、上層による補強効果などが期待できるとともに、自反射ビーズの脱落防止も可能となる。
本発明で用いる自反射ビーズは、上述のように所定の屈折率を有するものであることが好ましいが、その材料は特に限定されない。例えば、一般的にはガラスビーズが良く知られているが、アクリル樹脂などの透明樹脂ビーズを用いても良い。ビーズの形状は、真球状であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
上述のとおり、自反射ビーズ30表面の反射膜31は、前記ビーズ表面の一部に形成される。上記ビーズ表面の全部に形成したのでは、反射膜31がビーズへの光の入射を妨げ、光がビーズに入射できない。他方、反射膜31を形成する領域が少なすぎると効率的に再帰反射させることができない。したがって、入射、反射の両方が効率的になされるように、反射膜の領域を設定することが好ましく、このような観点から、反射膜を、ビーズ表面の30〜70%の領域に形成することが好ましく、40〜60%の領域に形成することがより好ましく、図8に示すごとく、概ね50%の領域、すなわち、ビーズの半球部分に反射膜31が形成される自反射ビーズ30が特に好ましい。ビーズ表面の半球部分に反射膜31を形成しておけば、50%の確率で再帰反射が起こり、十分な視認性が得られる。反射膜の方向はランダムであることが必要である。様々な入射角度からの光に対しても常に一定以上の再帰反射性を発揮させるためである。
反射膜31の材料となる金属や金属酸化物としては、反射膜としての機能を発現するものであれば特に限定されないが、白色から銀白色の金属や金属酸化物、例えば、アルミニウム、ニッケル、銀、スズ、亜鉛などの金属やこれらの酸化物などが好ましく挙げられ、アルミニウムが特に好ましい。
図8,11の透明樹脂層20は、従来公知の方法により形成することができる。具体的には、自反射ビーズ30を透明樹脂液に分散させ、これを従来公知の塗装方法(例えばスプレー塗装など)により塗装すればよい。図8,11では、透明樹脂による固定状態が異なっているが、これは、例えば、塗装時の吐出量によって調整することができ、すなわち、吐出量が少なければ図8に示すように皮膜表面がビーズの各球状外周面に沿うように凹凸状となり、吐出量を多くしていくと、図11に示すように自反射ビーズの全体が完全に埋没して塗装面が平らになる。
図12の透明樹脂層20や図13の1層目の透明樹脂層20Aのように、自反射ビーズ30の頂部が透明樹脂層20から突出し、かつ、露出した状態とするためには、例えば、透明樹脂を主成分とする塗料を塗布し、透明樹脂層20表面が固化する前に、自反射ビーズを散布して付着させたのち、透明樹脂層20の固化を行う方法が挙げられる。図13の場合には、自反射ビーズ30の頂部が突出し、かつ、露出した状態の透明樹脂層20Aの上に、別の透明樹脂層20Bを積層し、自反射ビーズ30の表面を保護するようにしている。図13の2層目の透明樹脂層20Bは、1層目の透明樹脂層20Aの塗装面上に、透明樹脂を造膜成分とするクリヤー塗料を従来公知の塗装方法により塗装すればよい。
自反射ビーズ30を散布して固着させる方法としては、単に落下散布するだけでもよいし、静電粉体塗装法による噴射やエアー噴射による散布や攪拌羽根、揺動ノズルなどの機械的散布手段を採用することもできる。
自反射ビーズ30の散布は、透明樹脂層20の表面が固化する前に行う。透明樹脂層20の固化形態は様々であるが、塗工後の一定時間は固化が進行せず、流動性を有していたり、軟化状態であったり、変形容易な状態である。表面には、他の物体を付着させる付着性を有している状態である。少なくとも透明樹脂層20の表面に自反射ビーズ30が付着しても、直ぐには脱落せずに留まることができる状態のときに、自反射ビーズ30を散布する。
透明樹脂層20の固化を促進させるために、空気を送風したり、温風やヒータで加熱したり、架橋促進剤を加えたりすることができる。
透明樹脂層20を硬化させる場合、加熱硬化処理を行ったり、紫外線照射などによる硬化処理を行ったりすることもできる。
塗装基材の色調やツヤを確保することが求められる場合には、自反射ビーズが互いの間に隙間を空けた状態とすることが好ましい。
隙間を空けて自反射ビーズを分散させる割合は、自反射ビーズの面積率(以下、単に「ビーズ面積率」という)で85%以下とするのが良く、好ましくはビーズ面積率が70%以下、より好ましくはビーズ面積率が50%以下となるようにし、特に好ましくはビーズ面積率が40%以下が良い。ビーズ面積率が85%を超えてしまうと、自反射ビーズと自反射ビーズの隙間がほとんど無くなり塗装基材の色調やツヤを維持することができなくなるおそれがあり、特にダークブラウン色の場合、色調が明るくなってしまう可能性があるので、この点を重視する場合には、85%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、特に好ましくは40%以下が良いのである。また、ビーズ面積率が5%よりも低い場合、反射はするが、濃色の場合には自反射ビーズの隙間の塗装部分における反射輝度が著しく劣るため、夜間の視認性を確保するには、通常、5%以上必要であり、好ましくは10%以上である。
すなわち、ビーズ面積率の調整のため一々自反射ビーズを含む透明樹脂塗料を調合することは管理面、作業面で多大な時間と労力を要し、実用的ではない場合があるため、透明樹脂と溶剤の合計体積と自反射ビーズの体積との比率を一定にした塗料で、塗装回数、吐出量、基材とガンとの距離、ガンの移動速度などの塗装条件を変更することでビーズ面積率の調整を図ることが望ましい。
なお、本発明において、上記「ビーズ面積率」は、後述の実施例に記載の方法で算出される値をいうこととする。
すなわち、塗装面積が大きく、連続して設置される部材に適用するような場合、反射輝度自体が小さくても視認性が得られ、一方、昼間の景観に影響するため色調管理が重要となってくる場合がある。従って、好ましくはビーズ面積率を10%〜40%とするのが良い。
一方、塗装面積が小さく、不連続な部材に適用するような場合には、反射輝度が小さい場合には視認性が劣る反面、昼間の景観への影響は小さいため、ビーズ面積率を高めの60%〜85%としてもよく、その方がむしろ好ましい。
透明樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れも使用できる。湿気硬化型や紫外線硬化型の樹脂も使用できる。水系樹脂、有機溶剤系樹脂、それらの混合溶媒系樹脂も何れもが使用できる。一般的な接着性樹脂材料が使用できる。また、市販の接着用樹脂がそのまま使用できる場合もある。具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコン系、アルキド系、フッ素系、メラミン系、ポリエステル系などの樹脂やこれらの樹脂の共重合体が挙げられる。
塗料の組成としての透明樹脂としては、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂が好ましく、特にアクリル系樹脂、例えば、アクリルウレタン樹脂、アクリルエポキシ樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルメラミン樹脂などが好ましい。これらは、架橋剤としてイソシアネートを用いることにより耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、耐水性、耐塩水性などの耐久性にも優れるため、屋外用途として優れるからである。
上記硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、オキサゾール系硬化剤などが挙げられる。
上記溶剤としては、例えば、水、トルエン、キシレン、メチルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトン類などのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ベンゼンなどが挙げられる。
上記架橋剤としては、例えば、透明樹脂によっても異なるが、例えば、イソシアネート系、オキサゾリン系の化合物が挙げられる。
上記粘性付与剤としては、例えば、酸化ケイ素系化合物やエチレンオキサイド系の界面活性剤などが挙げられる。
上記安定剤としては、例えば、「アンチゲル」(商品名、BERND SCHWEGMANN社製)などのポリメリックアルコキシレートなどが挙げられる。
上記において、自反射ビーズの配合割合は、樹脂固形分100重量%に対して、100〜600重量%とすることが好ましい。
透明樹脂層20の厚みとしては、自反射ビーズAを用いる場合(単独使用の場合だけでなく、自反射ビーズBと併用する場合も含む)には、再帰反射性を失わない限度であることが必要である。自反射ビーズBの単独使用である場合には、透明樹脂層20の厚みは特に制限されない。
具体的には、透明樹脂層20の乾燥膜厚が、前記自反射ビーズの粒径の2倍以下であることが好ましい。ここにいう乾燥膜厚とは、後述の実施例に記載の方法で測定される値、すなわち、Kett社製の電磁膜厚計「LZ−300C(同社の商品名)」を用いて測定される値とする。
自反射ビーズ30として、粒径の異なる2種以上の自反射ビーズを用いることもできる。例えば、自反射ビーズA,Bを併用する場合において、自反射ビーズAの粒径を大きくし、自反射ビーズBの粒径を小さくすることができる。このようにすれば、自反射ビーズAは透明樹脂層から突出した状態、そして、自反射ビーズBは透明樹脂層などに被覆された状態となり、それぞれの自反射ビーズが有する特質が十分に発揮される。
前記撥水性は、例えば、フッ素、シリコンやこれらの化合物などの撥水性物質の1種または2種以上を主成分とする塗膜を積層することにより付与することができる。
前記防汚性は、表面に親水性を付与したり、汚染物質の分解除去作用を付与したりすることによって発現させることができる。
前記親水性は、例えば、珪素やその化合物である酸化ケイ素などの親水性物質の1種または2種以上を主成分とする塗膜を積層することにより付与することができる。その原理を、酸化ケイ素を例に説明すれば、この物質は、ナノサイズの粒径で、基材表面に単分子膜状に結晶が連なった状態で化学結合しており、この皮膜は、非常に水を取り込み易く、表面に汚れが付着し難いとともに、付着しても、その汚れの下に水分子を取り込み、結果として、放水などによる水洗や雨などの自然現象によって汚れを浮かして容易に洗い落とすことができるのである。
上記において、撥水性または防汚性を付与するために前記の如き塗料を塗り重ねる場合、その乾燥膜厚は、5μm以下となるように塗り重ねることが好ましい。塗膜の乾燥膜厚が5μm以下であれば、この塗膜中での屈折は殆ど無視することができ、他方、5μmを超えると、この塗膜中での屈折の影響が大きくなり、再帰反射性を低下させるおそれがある。
本発明にかかる塗装方法およびこれに用いる再帰反射性塗料によれば、所望の被塗装面に優れた再帰反射性を付与することができる。例えば、ガードレール、ガードパイプ、フェンスなどの防護柵や、ボルト、ナット、キャップ、ブラケット、支柱、ベースプレート、ワイヤーケーブル、ビーム、パイプ、スクリーンパネルなどの防護柵の構成部材、道路標識、自動車の外装(バンパーやドア)、列車の外装、航空機の胴体や翼、ヘリのプロペラ、風車の羽、船の外装など、あらゆる用途に適用することができ、特に安全性などを配慮して視認性の求められる用途に好適に用いられる。これらの材質は特に限定されず、プラスチックや金属など、いずれであっても良い。これらの表面に再帰反射性塗膜を形成することで、夜間などの暗闇においても優れた視認性を発揮し、例えば、自動車のヘッドライトで照らした場合には、運転者のほうに確実に光を反射させることができる。このような被塗装物には、あらかじめ、防錆処理を施しておいたり、環境を配慮した景観色調の塗装を施しておいたりしてよい。そのような環境を配慮した塗装色の例としては、明度4未満の塗装色、例えば、ダークブラウンやダークグレーなどが好ましく挙げられる。
〔実施例1〕
本発明にかかる塗装方法を用いて、図8に示すごとき再帰反射性塗膜を形成した。
すなわち、板厚2.3mm×幅70mm×150mmのZ27亜鉛めっき鋼板に、リン酸亜鉛処理により化成皮膜を形成させ、続けて、粉体塗装機を用いてダークブラウン粉体塗料を塗装し、175℃の温度で20分間焼付けすることによってダークブラウン塗装材を作成した。このダークブラウン塗装材を基材として、以下のようにして、図8に示すごとく、再帰反射性塗膜を形成し、再帰反射性を付与した。
塗料組成や塗装条件(スプレー塗装の往復回数)、塗膜構造を後述の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、再帰反射性塗膜を形成してなる塗装材を得た。
ここで、実施例3,5において、図9に示すごとき積層塗膜を形成する場合には、透明樹脂(架橋剤を内包しウレタン結合を生成させる反応基を有するアクリル樹脂)、重量比では固形分:溶剤(芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤の混合物)=50:50)を粘度調整を行い粘度を200cps(B型粘度計、ローターNo.2、60rpm、15℃での測定)としてなる塗料組成物を、実施例1記載の方法により得られた自反射ビーズを含有する塗膜の上に、スプレー塗装により塗布し、得られた2層塗膜に対し、160℃の温度で20分間の焼付けを行うようにした。スプレー塗装は、スプレーのノズルと基材の距離を30cmとし、ノズル径1.5mm、エアー圧2Kg/cm2、ノズルスピード50cm/2secで4往復の条件にて行った。
比較例1は、再帰反射性塗膜の形成されていない、ダークブラウン塗装材そのものである。
透明樹脂により固定された状態は、全ての実施例、比較例で自反射ビーズの各球状外周面に沿うように凹凸状となっていた。
<性能評価>
上記実施例1〜15、比較例1〜3について、下記の評価方法により、性能を評価した。結果を表1に、表1に記載のビーズの詳細を表2に示す。表1では、これらの実施例、比較例について、ビーズ面積率を併記してある。
再帰反射性は、JIS−Z−9117に準じた以下の方法で再帰反射輝度係数(cd/Lux・m2)を測定して評価した。ただし、光源としては250Wハロゲン電球を用い、被測定物からの距離4mの位置に置いて使用した。また、受光器としてはミノルタ社製輝度計「CS−100(同社の商品名)」を用い、被測定物からの距離3.5mの位置において使用した。光の入射角度を30°、反射光の観測角度を2°とした。この時の被測定物における照度は800Luxであった。
得られた再帰反射輝度係数(cd/Lux・m2、用語の定義については、「JIS−Z−8713」を参照)を以下の基準に基づき、1〜5点で評価した(点が高いほど再帰反射性に優れる)。
再帰反射輝度係数(cd/Lux・m2)が0.20以上 :5
再帰反射輝度係数(cd/Lux・m2)が0.14以上0.20未満:4
再帰反射輝度係数(cd/Lux・m2)が0.07以上0.14未満:3
再帰反射輝度係数(cd/Lux・m2)が0.03以上0.07未満:2
再帰反射輝度係数(cd/Lux・m2)が0.03未満 :1
再帰反射輝度係数が大きいほど、暗闇における視認性が高いものであることを意味する。再帰反射輝度係数は、白色塗装材では普通0.17(cd/Lux・m2)程度(実測値)であり、ダークブラウン塗装材では0.009(cd/Lux・m2)程度である。したがって、実用に供した場合において、再帰反射輝度係数が0.17cd/Lux・m2以上であれば白色塗装材と同等以上の視認性があると言え、本来視認性に乏しいダークブラウン塗装材に対して白色塗装材並みの視認性を付与できていると言えるが、再帰反射輝度係数が0.17cd/Lux・m2未満であっても、再帰反射輝度係数が0.07cd/Lux・m2以上であれば、十分な視認性があると言える。
(色調の評価)
明度はミノルタ社製色彩計「CR−300(同社の商品名)」を用いて景観ガイドラインに示されたマンセル値による測定を行った。
すなわち、基材として用いたダークブラウン塗装材表面の明度を基準として、その上に再帰反射性塗膜を形成した後の明度差によって1〜5点で評価した。
評価 外観色 指定色との明度差
5 指定色と同じ 0.5未満
4 指定色に近い 0.5以上1.0未満
3 やや指定色 1.0以上1.5未満
2 指定色から外れる 1.5以上2.0未満
1 指定色とは言えない 2.0以上
明度差が小さいほど塗装材表面の色調が生かされていることを意味する。一般的な基準では、明度差が1.5未満であれば類似系、明度差が2.0以上であれば対照系と評価する。類似系と評価される明度差1.5未満では、観測者において、塗装材表面に施された本来の色調との差が殆んど感じられず、対照系と評価される明度差2.0以上では、観測者において、塗装材表面に施された本来の色調との差が明確に感じられるものである(やや白っぽく感じられる)。その中間では、僅かに白っぽく感じられるが、塗装材表面に施された本来の色調と比べて、殆んど違和感が感じられないものである。
(ツヤの評価)
ツヤは、目視判断により、再帰反射性塗膜の形成されていない比較例1のダークブラウン塗装材と対比して、以下のように評価した。
◎:基材本来のツヤが生きている。
○:基材本来のツヤがほとんど生きている。
×:基材本来のツヤがなくなっている。
(塗膜性能の評価)
塗膜性能として、(1)碁盤目密着性、(2)沸騰水密着性、(3)耐水密着性、(4)耐候性、(5)耐衝撃性を評価した。
碁盤目密着性、沸騰水密着性、耐水密着性はいずれも、基材であるダークブラウン塗装材と再帰反射塗膜の界面密着性を判定するものである。
(1)碁盤目密着性は、「JIS−K−5600−5−6」に準拠して評価した。
(2)沸騰水密着性は、「JIS−K−5400(1990)−8−20」に準拠し、沸騰水に1時間浸漬、2時間放置後、上記の碁盤目密着性試験を行った。
(3)耐水密着性は、「JIS−K−5600−6−1」に準拠して評価した。
具体的には、試料をイオン交換水に500時間浸漬(浸漬温度23℃)、2時間放置後、上記の碁盤目密着性試験を行った。
(4)耐候性は、「JIS−D−0205−5−4」に準拠したサンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機を用い、300時間試験後の外観および反射性能の劣化の有無を評価した。
(5)耐衝撃性試験は、「JIS−K−5600−5−36」に準拠して評価した。重りは500g、高さ50cmの条件にて試験し、塗膜の剥離や割れの有無、ならびに、ビーズの脱落の有無で判定した。
再帰反射性塗膜を形成した試料の表面をキーエンス社製マイクロスコープを用いレンズ200で観察し、写真撮影した(操作1)。写真から自反射ビーズの輪郭を取りだし(操作2、3)、画像解析により自反射ビーズ部を塗りつぶした後に2値化処理(操作4)し、黒色部の面積率を求めてこれをビーズ面積率とした。ビーズ面積率は同一試料で3ヶ所測定し、その平均値とした。
測定方法の理解を助けるため、図1に示した写真を操作1に供するとともに、操作2、3での輪郭の取り出し、操作4での塗りつぶし、の各例を、それぞれ、図14〜16に示した。
Kett社製の電磁膜厚計「LZ−300C(同社の商品名)」を用いて測定した値を乾燥膜厚とした。
<考察>
実施例4、5以外の実施例では屈折率1.93の自反射ビーズAを用いているため、水の付着により、塗膜表面が被覆されると、再帰反射性が低下すると考えられるが、実施例4、5のように屈折率2.2の自反射ビーズを用いれば、水の付着による再帰反射性への影響が少なく、安定した再帰反射性が得られる。そして、屈折率1.93の自反射ビーズAを用いても、撥水性を付与することで水の付着を防ぎ、再帰反射性の低下を回避できる。また、長期間の使用で、ゴミ、ホコリ、排気ガスによる塵埃などが付着した場合にも再帰反射性が低下することが懸念されるが、防汚性を付与することで、このような再帰反射性の低下を回避できる。
特に、実施例1〜14においては、上記のように十分な再帰反射性を有していながら、ビーズ面積率を抑えることで、塗装材本来の色調やツヤを生かすこともできている。したがって、塗装材が本来有する色調やツヤを生かす必要がある場合には、ビーズ面積率を低く設定しておくことが好ましい。
比較例1は、単に、基材にダークブラウンの塗装を施したものであって、再帰反射性を与えるための何らの工夫も施していないため、当然、十分な反射輝度が得られていない。
比較例3は、比較例2において、透明樹脂にマイカを添加したものであるが、反射輝度が僅かに向上するものの不十分であり、しかも、マイカによって、基材本来の色調が隠蔽されている。
ここで、上記実施例で作製した各塗装材のそれぞれについて、ビーズ面積率を横軸、再帰反射輝度係数を縦軸にとり、各塗装材における測定結果をプロットしたグラフを図17に示し、また、ビーズ面積率を横軸、明度を縦軸にとり、各塗装材における測定結果をプロットしたグラフを図18に示す。
また、同様に、図18の結果からは、ビーズ面積率(x)のみを変化させた場合の明度(y)の変化も、ほぼ直線状の関係(図18に示す結果では、y=0.0281x+1.7591)となる実験式を得ることができた。
上の結果から、ビーズ面積率が再帰反射輝度係数および明度と相関する事実、ならびに、本発明のように再帰反射性に優れた自反射ビーズを用いれば、ビーズ面積率を少なくしても、十分な反射輝度が見込めるという事実が認められる。
20 透明樹脂層
30 自反射ビーズ
31 反射膜
40 水膜
Claims (5)
- その表面の一部に反射膜が形成されている球形で透明のビーズである自反射ビーズと透明樹脂とを必須とする塗料を、透明樹脂により基材表面に固定されたときの自反射ビーズの反射膜の位置決めを無作為として塗装することにより、被塗装面に再帰反射性を付与する、塗装方法。
- 前記自反射ビーズは屈折率が1.8〜2.0の自反射ビーズを含み、その頂部を周囲の透明樹脂層から突出させている、請求項1に記載の塗装方法。
- 前記自反射ビーズは屈折率が2.1〜2.5の自反射ビーズを含み、その全体を透明樹脂層内に埋没させている、請求項1または2に記載の塗装方法。
- 前記自反射ビーズと透明樹脂を必須とする塗料を塗装した後、該塗膜表面に撥水性および/または防汚性を付与する、請求項1から3までのいずれかに記載の塗装方法。
- その表面の一部に反射膜が形成されている球形で透明のビーズである自反射ビーズと透明樹脂とを必須とし、請求項1から4までのいずれかに記載の塗装方法に適用される、再帰反射性塗料。
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