JP7067739B2 - 再帰反射性塗装物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は再帰反射性塗装物およびその製造方法に関し、詳しくは、入射した光を入射方向と同一の方向に反射させる再帰反射性を備えた再帰反射性塗装物およびこのような再帰反射性塗装物を製造するための方法に関する。
従来、暗闇での視認性向上のため、再帰反射性が利用されてきた。ここで、再帰反射性とは、外部から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させる特性のことであり、例えば、自動車のヘッドライトを効率良く運転者のほうに反射させて注意を喚起することができる。
このような再帰反射性を有するものとして、ガラスビーズが汎用されている。ガラスビーズは、光の屈折により反射光の光路を所望の方向に制御すること(すなわち、入射方向に反射光を返すこと)を可能とするものではあるものの、それ単独では反射性に乏しく、充分な反射光が得られない。そこで、従来技術では、反射性を付与するための手段が講じられている。
例えば、反射層の上に定着層が設けられ、ガラスビーズが定着層の下層の反射層にまで埋没した構成を採用する技術が従来知られている(特許文献1参照)。
また、粉体塗装により形成された第1の樹脂塗膜上に、反射材が分散され、かつ、ガラスビーズを表面が露出するように埋没させた第2の樹脂塗膜を形成する技術も知られている(特許文献2参照)。
さらに、上記従来技術よりも再帰反射性に優れる再帰反射性塗装物とこのような再帰反射性塗装物を効率的に得るための再帰反射性塗装物の製造方法が、本願出願人によって提案されている(特許文献3参照)。この特許文献3に記載の技術は、再帰反射性を付与すべき被塗装面に少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性の塗膜が形成されてなる再帰反射性塗装物であって、前記ガラスビーズは、前記塗膜内で複層となり、かつ、その一部が前記塗膜の表面において部分的に露出しており、前記反射材が、前記塗膜内に分散され、かつ、前記塗膜の表面近傍では、前記ガラスビーズの底面に沿って存在していることを特徴とするものである。
特開2000-160522号公報 特開2007-92393号公報 特許第5872240号公報
上記特許文献3の技術は、上記特許文献1や上記特許文献2の技術よりも高い再帰反射性を発揮させることができ、産業的価値の高い技術であるが、本発明者による更なる改良の検討において、使用環境等によっては再帰反射性の劣化が起こり得ることが判明した。
そこで、本発明は、再帰反射性の長期安定性に優れる再帰反射性塗装物とこのような再帰反射性塗装物を効率的に得るための再帰反射性塗装物の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者は、上記課題を解決するために以下の如く鋭意検討を行った。
すなわち、上記特許文献3に記載の技術は、防護柵のボルトなどへの再帰反射性の付与に適しているが、例えば、ボルトの頭部にのみ再帰反射塗装をした場合、特に塩害環境が厳しい場所においては、ボルト頭部の円周側の亜鉛めっきから発生した白錆がボルト頭表面に流れる。このようにして白錆が再帰反射ビーズを覆うことが、再帰反射性の劣化の原因となっているのではないかと考えられた。
そこで、更に種々の方策を検討した結果、白錆などの影響を低減するため、再帰反射性塗膜よりも下層側、すなわち、めっきを含む鋼材全体に第一層として塗装を施し、さらに再帰反射性を付与する部分のみに再帰反射塗装を施す事により、実際に再帰反射性の長期安定性がもたらされることを確認した。ここで鋼材全体に施す第一層の塗膜層について本発明者らは鋭意検討の結果、あらゆる形状に追随して均一な膜厚が形成される電着塗装塗膜を形成することを着想した。特にボルトのようなネジ部がある場合、通常の溶剤系塗料を用いて塗装した場合にはネジ部の山部は膜厚が薄く、谷部は塗料が溜まって厚くなってしまい、嵌合に不具合を生じてしまう問題があった。また、ボルトのネジ部は嵌合の関係から全体にめっきも薄いため腐食が進行しやすく、ボルトは、通常ネジ部から劣化していき、ボルトとしての耐久性もネジ部の耐久性(耐食性)に左右される。すなわち鋼材全体に第一層として電着塗装による塗膜を形成させることにより、再帰反射性の長期安定化が得られるだけでなくさらに部材そのものの耐久性を向上することができた。
本発明は、上記知見に基づき完成されるに至った。
すなわち、本発明にかかる再帰反射性塗装物は、防護柵用の構成部材を被塗装物とし、前記被塗装物に対し塗装により再帰反射性が付与されてなる再帰反射性塗装物であって、前記被塗装物は、防護柵の使用状態において外部に露出する部分のみならず、防護柵の使用状態において防護柵を構成する各構成部材の接合により外部から隠れる部分においても、その表面の上に電着塗装塗膜が形成されており、かつ、前記電着塗装塗膜が形成された被塗装物表面のうち、防護柵の使用状態において外部に露出する部分において、前記電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜がさらに形成されてなる。
本発明にかかる再帰反射性塗装物は、また、嵌合部を備える部材を被塗装物とし、前記被塗装物に対し塗装により再帰反射性が付与されてなる再帰反射性塗装物であって、前記被塗装物は、その使用状態において外部に露出する部分のみならず、その使用状態において外部から隠れる嵌合部においても、その表面の上に電着塗装塗膜が形成されており、かつ、前記電着塗装塗膜が形成された被塗装物表面のうち、その使用状態において外部に露出する部分において、前記電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜がさらに形成されてなる。
本発明にかかる再帰反射性塗装物は、また、ボルトを被塗装物とし、前記被塗装物に対し塗装により再帰反射性が付与されてなる再帰反射性塗装物であって、前記被塗装物は、ボルト頭のみならず、ネジ部においても、その表面の上に電着塗装塗膜が形成されており、かつ、ボルト頭において、前記電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜がさらに形成されてなる。
また、本発明にかかる再帰反射性塗装物の製造方法は、上記本発明の再帰反射性塗装物を製造するための再帰反射性塗装物の製造方法であって、電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜をさらに形成するための工程として、反射材および造膜樹脂を含む塗料を塗布して反射材が分散されてなる塗料膜を形成し、前記塗料膜が硬化する前にガラスビーズを吹き付け、そののち、前記塗料膜を硬化することにより、前記ガラスビーズが内部で複層となり、かつ、その表面において前記ガラスビーズの一部が露出した再帰反射性塗膜を形成する工程を含む
本発明の再帰反射性塗装物は、電着塗装塗膜の上に再帰反射性塗膜が形成されている。
電着塗装は、複雑な形状の被塗装物であっても均一に塗装を施すことができるため、例えば、ボルトのネジ部のように複雑な形状に対しても、その形状に追随して、嵌合の不具合等の発生もなく、被膜を形成することができる。そして、被塗装物の表面の上に均一に形成された前記電着塗装塗膜の上に再帰反射性塗膜が形成されていることで、白錆などの影響が再帰反射性塗膜に及ぶことが防止され、再帰反射性が長期にわたって発揮される。
本発明にかかる再帰反射性塗装物の製造方法は、上記再帰反射性塗装物を容易に得ることを可能とする。
本発明の再帰反射性塗装物の一実施形態を示す一部断面図である。 本発明の再帰反射性塗装物の製造方法の一実施形態において、ガラスビーズの吹き付け前後の状態を示す一部断面図である。
以下、本発明にかかる再帰反射性塗装物およびその製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔再帰反射性塗装物〕
<被塗装物>
被塗装物は、再帰反射性が付与される対象となる構造物や構成部材である。
再帰反射性は、その性質上、暗闇(夜間や、トンネル内、工場内、工事現場などの暗所)において、特に車両(自動車、原動機付自転車、軽車両、鉄道車両、建設車両、産業車両など)からの視認性向上のために利用することができる。
そこで、例えば、車両の路外への逸脱やこれによる乗員や歩行者への傷害防止などの目的で設けられるガードレールやガードパイプなどの防護柵、または、防護柵用の構成部材に再帰反射性を付与する試みがなされている。したがって、これら防護柵やその構成部材を被塗装物とすることができる。
防護柵用の構成部材としては、例えば、ボルト、ナット、キャップ、ブラケット、支柱、ベースプレート、ワイヤーケーブル、ビーム、パイプ、スクリーンパネルなどが挙げられる。
上記以外にも、各現場に存在する種々の構造物や部材に対し、適用可能性がある。例えば、トンネル内の構造物やその構成部材(ボルト、ナット、キャップ、ワッシャー、クリップなど)を被塗装物としてもよい。
なお、被塗装物への電着塗装塗膜や再帰反射性塗膜の塗装は、被塗装物の表面の全体にわたっていても良いし、一部のみであっても良い。
さらに、再帰反射性塗膜は、電着塗装塗膜が形成された領域の全面を覆うようにしても良いし、一部を覆うようにしてもよい。すなわち、電着塗装塗膜の被覆面積と再帰反射性塗膜の被覆面積は異なっていてもよい。
例えば、ボルトを例にとると、その使用状態において、ボルト頭は外部に露出しているが、ネジ部は隠れている。
そのため、再帰反射性塗膜はボルト頭に形成されていれば十分である。
他方、電着塗装塗膜はボルト頭だけでなく、ネジ部にも形成されていた方がよい。ネジ部で白錆等が発生した場合、その影響が、再帰反射性塗膜が形成されたボルト頭に及ぶおそれがあるからである。
従って、本発明において特に好ましいのは、被塗装物の表面全体に電着塗装塗膜が形成され、そのうち、ボルト頭などの再帰反射性が必要な領域のみに再帰反射性塗膜が形成される実施形態である。
電着塗装塗膜であるから、スプレー塗装などと異なり、ネジ部などの複雑な形状にも追随して、均一に被膜が形成され、嵌合等の機能を阻害しないし、ネジ部などのめっきの薄い箇所でも防錆性を向上させることができる。複雑な形状に対して一度に均一塗装ができる点では塗装コストの低減にも繋がる。
また、電着塗装塗膜が耐候性に劣る場合(例えばエポキシ樹脂電着塗装塗膜などを用いる場合)でも、外部に露出した部分には再帰反射性塗膜が積層されることで、耐候性を増強することができる。このように、両者は相互の利点を活かしながら、全体として優れた再帰反射性塗装物をもたらす。
上述したような被塗装物の表面は、防錆や再帰反射性塗膜との密着性向上などのために前処理がなされていてもよい。特に防護柵用の構成部材のように鋼材本体の長期寿命が要求される場合などには、例えば、亜鉛めっき層などの防錆処理が成された上に後述する電着塗装塗膜及び再帰反射性塗膜を有するものであることが好ましい。さらに、亜鉛めっき層と後述する電着塗装塗膜との間に、化成処理層もしくはブラスト処理層が形成されていると、電着塗装塗膜の密着性が向上し、ひいては再帰反射性塗膜の長期密着性、再帰反射性の長期化に繋がるため好ましい。
亜鉛めっきは鋼材の防錆に一般的に用いられており、防護柵の構成部材なども、通常、前記亜鉛めっき層を有している。例えば、プレめっきによる溶融亜鉛めっきあるいはポストめっきのどぶづけ亜鉛めっき方法により形成することができ、その厚みとしては、例えば、どぶづけ亜鉛めっき方法の場合には、片面あたり350~550g/m2である。プレめっきによる亜鉛めっきの場合は、一般的には両面で270g/m2の付着量のものが用いられることが多い。
前記化成処理層としては、例えば、亜鉛めっきの化成処理として一般的なリン酸塩処理により形成することができ、その厚みは通常最適とされる1~5g/m2が良い。どぶづけ亜鉛めっきの場合には化成処理の代わりにブラスト処理を行ってもよい。
<電着塗装塗膜>
本発明の再帰反射性塗装物は、被塗装物の表面の上に電着塗装塗膜が形成される。
電着塗装塗膜は、電着塗装により形成される被膜である。そして、電着塗装は、極性溶媒中で塗料粒子に電荷を持たせ、被塗装物を電極にして塗装する方法である。
電着塗装に用いる塗料としては、大きくカチオン型とアニオン型に分類することができ、樹脂の種類も種々知られているが、本発明においてその種類は特に限定されるものではない。ただし、下地との密着性に優れ、白錆などによる再帰反射性の劣化を抑制する効果にも優れるという点で、エポキシ樹脂カチオン電着塗装が好ましい。
上記電着塗装塗膜の膜厚は、特に限定されないが、白錆等の防止(耐食性)、被塗装物の機能(例えば、ネジ部の嵌合など)の阻害回避、コストなどの観点から、例えば、8~35μmであることが好ましく、15~25μmであることがより好ましい。
<再帰反射性塗膜>
本発明の再帰反射性塗装物は、上述した電着塗装塗膜の上に再帰反射性塗膜が形成されてなるものである。以下では、まず、これら再帰反射性塗膜の構成要素について説明する。
造膜樹脂としては、特に限定するわけではないが、通常、実用的な光透過性を有する程度の透明性を有するものが用いられる。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れも使用できる。湿気硬化型や紫外線硬化型の樹脂も使用できる。具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エチレン酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ナイロン系、オレフィン系、天然ゴム系、アルキッド系、塩化ビニル系、フッ素系などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂の共重合体も使用できる。中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、これらを1種用いあるいは2種以上併用することができる。アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などの耐候性に優れる樹脂を用いることで、電着塗装塗膜の耐候性が乏しくとも、これを補完することができる。
なお、熱硬化性樹脂の場合、熱硬化温度がガラスビーズの機能を損なわない程度のものが好ましい。熱硬化温度が高過ぎると、加熱硬化処理において、ガラスビーズが変形したり溶融したりして、再帰反射特性が損なわれる。具体的な熱硬化温度として、550℃以下が採用できる。
反射材としては、再帰反射性塗膜中に分散可能であり、かつ、反射性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、鱗片状、舌片状、薄片状などの片状の反射材が好ましく挙げられる。このような片状の反射材は、ガラスビーズの球面に沿って配向し易く、これにより、再帰反射性塗膜中に反射材がランダムに存在する場合と比べて、再帰反射効率が高くなるからである。
反射材の粒径は、例えば、1~500μmに設定でき、より好ましくは5~50μmに設定できる。その平均粒径としては、例えば、5~25μmに設定でき、より好ましくは10~20μmに設定できる。微細な反射材は、再帰反射性塗膜中に均一に分散されるので、反射機能が良好に発揮できる。
このような反射材としては、具体的には、例えば、マイカが好ましく挙げられる。マイカとしては、雲母を原料としたものや合成マイカなどを使用することができる。一般的にマイカの反射光は白色である。マイカ表面に、酸化チタンの被覆をしておくと、反射性能が高まる。反射材として、アルミニウムなどの表面反射性を有する金属、無機材料、鉱物なども使用できる。反射材が、着色されたものであれば、反射機能に加えて着色機能も発揮することができる。例えば、アルミニウム粒子は、シルバー色の反射光を出す。着色アルミニウム粒子は、その着色された色の反射光を出す。ノンリーフィングタイプのアルミニウム粒子は、表面酸化が起こり難く、良好な反射性を持続でき、使用に適したものとなる。
前記ガラスビーズは、入射光をガラスビーズ内で屈折させてガラスビーズ球面に焦点を結ばせ、反射光となって再帰させるという働きをもっている。理想的には球形のものを用いるが、実用的には、工業的に得られる程度の球形度を有していれば十分な再帰反射性が発揮できる。球形以外の楕円体や長円体、多面体に近い形状のものでも、球形に比べると劣るが、ある程度の再帰反射性を示すことができる。
ガラスビーズの屈折率によって、入射光および反射光の屈折作用が変わる。再帰反射性を良好にするには、屈折率1.5~2.2のものが好ましく、1.8~2.0のものがより好ましい。さらに好ましくは、屈折率1.92±0.02である。ガラスビーズの屈折率が1.5未満であると、屈折率が低いため反射光の方向が大幅にずれて視認性が著しく低下するおそれがあり、2.2を超える場合も、反射光の方向がずれて視認性が低下する恐れがある。
また、ガラスビーズは、10~1000μmの粒径を有することが好ましく、より好ましくは20~120μmである。その平均粒径としては、40~120μmが好ましく、60~120μmがより好ましい。ガラスビーズの粒径が小さすぎると、充分な反射性能が得られなくなるおそれがあり、逆に大きすぎると、ガラスビーズが脱落しやすくなったり、外観を損なったりするおそれがある。
ガラスビーズは、透明性に優れたものが好ましい。ただし、再帰反射性を損なわない程度に薄く着色された半透明のガラスビーズも使用可能であり、この明細書において、ガラスビーズとは、半透明のガラスビーズをも含む。
ガラスビーズは、上述の造膜樹脂と親和性を有するものであることが好ましい。すなわち、無機物であるガラスビーズは、有機物である造膜樹脂とは本来的に親和性に乏しいものであるが、例えば、ガラスビーズを表面処理して有機化することにより、造膜樹脂との親和性を付与することができる。
例えば、ガラスビーズにシラン処理を施すことにより造膜樹脂との親和性を付与することができる。なお、シラン処理とは、無機物と有機物の親和力を高めるための処理である。
上記再帰反射性塗膜は、その構成要素として、上述した造膜樹脂、反射材、ガラスビーズ以外に、本発明の効果を害しない範囲で他の構成要素を含んでいても良い。
例えば、再帰反射性塗膜内部に着色剤が分散されていても良い。これにより、再帰反射光を色付けすることができる。
このような着色剤としては、特に限定するわけではないが、通常の塗料用や染色用の着色材料が使用できる。着色剤は、再帰反射性塗膜中に分散するものであってもよいし、溶解してしまうものであってもよい。粒子状のものや鱗片状のもの、繊維状のものなどが使用できる。着色剤の粒径は、例えば、0.01~10μmの範囲に設定できる。
上記再帰反射性塗膜の膜厚は、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。ガラスビーズの粒径にもよるが、50μm以上であれば、ガラスビーズの後述する複層構造を形成しやすい。
また、この再帰反射性塗膜の膜厚につき、ガラスビーズの粒径との関係で言えば、例えば、ガラスビーズの平均粒径に対し、1.5~3.0倍であることが好ましく、2.0~2.5倍であることが好ましい。
ここで、本発明において、再帰反射性塗膜はガラスビーズが内部に含まれていると共にその一部が表面において露出している構造であることが、優れた再帰反射性を発揮させるのに有利である。かかる構造においては、通常、再帰反射性塗膜表面の厚みは一定ではないから、上記膜厚は、下限について言うときは、最も厚みの薄いところ(ビーズの露出部分は除く)での再帰反射性塗膜の膜厚を基準とし、上限について言うときは最も厚みの厚いところ(ビーズの露出部分は除く)での再帰反射性塗膜の膜厚を基準とする。
本発明の再帰反射性塗装物は、被塗装物の表面の上に、上述の電着塗装塗膜及び再帰反射性塗膜が形成されてなるものであって、前記反射材が前記再帰反射性塗膜内に分散されているとともに、前記ガラスビーズは前記再帰反射性塗膜内で複層となり、かつ、その一部が前記再帰反射性塗膜の表面において部分的に露出していることが、優れた再帰反射性を発揮させる上で好ましい。このような好適な構造を例として、本発明にかかる再帰反射性塗装物の構造を、以下、図面を参照しつつ説明する。
図1に見るように、被塗装物の表面60の上に、電着塗装塗膜30が形成され、電着塗装塗膜30の上に、再帰反射性塗膜10が形成されている。
被塗装物の表面60と電着塗装塗膜30の間には、防錆のための亜鉛めっき層50と、亜鉛めっき層50と電着塗装塗膜30との密着性を高めるための化成処理層(もしくはブラスト処理層)40が順次形成されている。
さらに、電着塗装塗膜30と再帰反射性塗膜10との間には、両者の密着性を高めるために、プライマー層20が形成されている。
プライマー層20としては、例えば、エポキシ樹脂塗料により形成することができ、その厚みとしては、例えば、2~50μmである。
再帰反射性塗膜10は、造膜樹脂を主成分としており、再帰反射性塗膜10内部に分散している反射材11と、再帰反射性塗膜10内で複層となり、かつ、その一部が再帰反射性塗膜10の表面において部分的に露出しているガラスビーズ12とからなる。
これにより、再帰反射性塗膜10表面において露出しているガラスビーズ12に外部から光が入射すると、入射した光が内部で屈折し、ガラスビーズ12の底面にその焦点を結び、元来た方向へ帰って行く再帰反射現象を起こすが、一部ガラスビーズ12の外へ抜け出て行く。しかし、このガラスビーズ12の外へ抜け出た光の一部も、その近辺に、再帰反射性塗膜10内に分散している反射材11が存在するため、反射材11で再度反射(鏡面反射)する。したがって、ガラスビーズ12へ入射した光は、ほぼ全て、元来た方向へ戻る再帰反射光となる。さらに、図示しないが、再帰反射性塗膜10内に着色剤が含有されているものであれば、ガラスビーズ12の焦点付近に着色剤が存在することとなり、再帰反射光はその近辺の着色剤の色を拾いながら出て行くので、再帰反射光に色を付けることができる。
特に、この実施形態では、図1に示すように、ガラスビーズ12が複層となっていて、非常に密に存在しているため、再帰反射効率が極めて高いとともに、反射材11がガラスビーズ12の底面に沿って存在しているので、ガラスビーズ12を通過した光Lが直ちに反射材11で反射され、これによっても、再帰反射効率の向上が果たされている。この点、反射層がガラスビーズ保持層とは別の層として設けられていて、光が反射層に到達するまでの間にガラスビーズ保持層で拡散してしまって再帰反射性が損なわれてしまう従来技術に対して、極めて高い優位性を有するものである。
なお、上述のようにガラスビーズ12が複層となっていることによって、最上層のガラスビーズ12が脱落してもその下のガラスビーズ12によって再帰反射性が発現されることとなり、安定した再帰反射性の発揮が期待される。例えば、ガラスビーズ12は造膜樹脂に固着しているので、ガラスビーズ12の脱落が問題となるおそれはあまりないが、最上層のガラスビーズ12とその下層のガラスビーズ12の間に造膜樹脂が僅かにしか存在していない箇所では、衝撃や塗膜の経時劣化により最上層のガラスビーズ12の脱落が考えられる。しかし、この場合は、最上層のガラスビーズ12と下層のガラスビーズ12との間に造膜樹脂が僅かしか存在しないのであるから、最上層のガラスビーズ12が脱落しても、下層のガラスビーズ12が実質的に露出した状態になるのであって、下層のガラスビーズ12の表面に僅かに残り得る造膜樹脂およびその内部に存在する反射材によって、下層のガラスビーズ12への入光が妨げられる可能性は低く、したがって、最上層のガラスビーズ12の脱落後も引き続き高い再帰反射性を発現するものと推測される。
〔再帰反射性塗装物の製造方法〕
本発明の再帰反射性塗装物の製造方法は、被塗装物に対し塗装により再帰反射性が付与されてなる再帰反射性塗装物の製造方法であって、前記被塗装物の表面の上に電着塗装により電着塗装塗膜を形成し、前記電着塗装塗膜の上に、反射材および造膜樹脂を含む塗料を塗布して反射材が分散されてなる塗料膜を形成し、前記塗料膜が硬化する前にガラスビーズを吹き付け、そののち、前記塗料膜を硬化することにより、前記ガラスビーズが内部で複層となり、かつ、その表面において前記ガラスビーズの一部が露出した再帰反射性塗膜を形成する。
被塗装物については上述したとおりであり、説明を割愛する。被塗装物の表面の上に亜鉛めっき層、化成処理層・ブラスト処理層などが形成されて良いことも上述のとおりであり、亜鉛めっき処理や、化成処理・ブラスト処理の方法自体は、従来公知の方法を採用できる。
被塗装物の表面の上に、亜鉛めっき処理や、化成処理・ブラスト処理などの適宜の処理を施した後、電着塗装を行う。
電着塗装自体も従来公知の方法により行うことができる。
次に、電着塗装塗膜の上に、適宜プライマー層の形成等を行った後、反射材および造膜樹脂を含む塗料を塗布して反射材が分散されてなる塗料膜を形成する。
上記塗料膜を形成するための塗料としては、反射材および造膜樹脂を必須成分とするが、必要に応じて着色剤をも用いても良い。
反射材の配合割合は、特に限定されないが、例えば、塗料全量に対して、10~30重量%とすることが好ましく、15~25重量%とすることが好ましい。10重量%未満では、反射効果が充分に得られないおそれがあり、30重量%を超えると、被塗装物の表面との接着不良や塗料被膜の強度低下を起こすおそれがある。
造膜樹脂の配合割合は、特に限定されないが、例えば、塗料全量に対して、10~60重量%とすることが好ましく、20~50重量%とすることがより好ましい。10重量%未満では、被塗装物の表面との接着不良や塗料被膜の強度低下を起こすおそれがあり、60重量%を超えると、反射輝度の低下となるおそれがある。
着色剤を配合する場合の配合割合は、色によって大きく変わるので特に限定されないが、例えば、塗料全量に対して、60重量%以下とすることが好ましく、50重量%以下とすることがより好ましい。50重量%を超えると、再帰反射輝度の低下を招くおそれがある。
反射材、造膜樹脂、着色剤の具体的例示などについては上述したとおりであり、説明を割愛する。
その他、塗料に通常使用される溶剤(水系、有機溶剤系、これらの混合系のいずれでも良い)、反射材や着色剤の分散を助ける分散剤、乾燥後の塗膜のひび割れを防ぐひび割れ防止剤、塗料粘度を適度に調整する粘度調整剤などや、硬化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、消泡剤、架橋剤、粘性付与剤、安定剤などが適宜使用される。
次に、この塗料膜が固化する前に、ガラスビーズを吹き付ける。これにより、ガラスビーズが塗料膜内部に埋入される。
このときの塗料膜の厚みとしては、比較的広範な範囲が許容される。ガラスビーズが複層となるようにするための厚みが必要であることから、ガラスビーズの粒径にもよるが、例えば、ガラスビーズの平均粒径に対し、1.0~3.0倍であることが好ましく、1.4~2.0倍であることがより好ましい。1.0倍未満では、ガラスビーズの複層構造を形成させることが困難となるおそれがあり、また、ガラスビーズの付着性が充分に担保されないおそれもある。
ガラスビーズの吹き付け圧としては、塗料膜の膜厚や粘度にもよるが、例えば、1.0~2.5Kg/cm2とすることができ、1.8~2.2Kg/cm2とすることがより好ましい。吹き付け圧が強すぎるとガラスビーズや塗料が飛散してしまうおそれがあり、吹き付け圧が弱すぎるとガラスビーズが塗料膜内に充分に埋入せず、所望の複層構造が得られないおそれがある。
ガラスビーズを吹き付ける際の塗料膜の粘度としては、ガラスビーズの吹き付け圧や塗料膜の膜厚にもよるが、比較的広範な範囲が許容され、例えば、100~550cpsとすることが好ましく、150~250cpsとすることがより好ましい。粘度が高すぎるとガラスビーズの埋入が困難となるので、所望の複層構造が得られないおそれがあり、粘度が低すぎると所望の膜厚を得ることが困難となったり、タレなどの塗膜欠陥を招いたりするおそれがある。
ガラスビーズの吹き付け量としては、特に限定されることはなく、被塗装物上をガラスビーズで覆い隠す程度とすればよい。
ここで、図2を参照して、本発明においてシラン処理を施したガラスビーズを適用することやマイカを用いることの利点について説明する。図2(a)はガラスビーズ吹き付け前であり、図2(b)はガラスビーズ吹き付け後である。
上述のように、シラン処理などを施したガラスビーズを用いるなど、ガラスビーズが造膜樹脂と親和性を有するものである場合、図2(b)に示すように、ガラスビーズ12と造膜樹脂を主成分とする塗料膜10との界面において、ガラスビーズ12の周囲を塗料膜10が覆うように存在することとなるので、焼付け後においても、図1に示すように、塗料膜10の表面でのガラスビーズ12の脱落が効果的に抑制されるとともに、塗料膜10内部に分散して存在する反射材11もガラスビーズ12の周囲を覆うように存在することとなる結果、ガラスビーズ12を通過した光が反射材11で効率よく反射され、高い再帰反射性を発揮することにも貢献することとなる。
このように、ガラスビーズがシラン処理により造膜樹脂と親和性を有することで、ガラスビーズに対する塗料のぬれ性が向上するのであるが、特に、本実施形態では、ガラスビーズの複層構造を採用していることによってガラスビーズが密に存在しており、ガラスビーズ間の間隙に存在する塗料のぬれ性が高いと、ガラスビーズと塗料との接触角が小さくなり塗料との馴染みが良く、また、溶剤の蒸発に伴って塗料のレベルが低下していく際、図2(b)に示すようにガラスビーズ12の周囲を塗料膜10が覆う構造が形成されやすく、ガラスビーズ12の脱落防止や反射材11に基づく再帰反射効率の向上が良好に発揮される。
また、マイカのごとく片状の反射材11を用いていれば、ガラスビーズ12が塗料膜10に埋入されるときに、図2(a)に示すガラスビーズ吹き付け前の状態ではランダムに存在していたマイカ(反射材11)が、図2(b)に示すガラスビーズ吹き付け後の状態では、ガラスビーズ12によって押しのけられてその表面形状(通常は球面)に沿った形で配向されることとなり、これにより、高い再帰反射効率が発揮される。
以上の工程の後、前記塗料膜の硬化を行う。この硬化は、通常、焼付けにより行うが、この焼付け条件としては、特に限定するわけではないが、例えば、80~190℃で0.3~1.0時間とすることができる。
なお、プライマー層の上に再帰反射性塗膜を形成する場合、このプライマー層の焼付け硬化を上記塗料膜の焼付け硬化と同時に行うようにしてもよい。すなわち、プライマー塗料を塗布した後に乾燥を行い、焼付け硬化を行うことなく、反射材および造膜樹脂を含む塗料を塗布し、かつ、ガラスビーズの吹き付けを行ったのちに、焼付け硬化を行う方式(2コート1ベーク方式)を採用しても良い。これによれば、塗膜形成工程の簡素化が図られる。
特に、本発明は、反射層とガラスビーズ保持層の2層を設けずにこれを1層で形成するようにした点で、従来よりも工程が半分で済むというコストメリットを有するものであるので、上述する2コート1ベーク方式を採用すれば、工程の簡素化によるコストメリットがさらに生かされることとなる。
以下、実施例を用いて、本発明にかかる再帰反射性塗装物とその製造方法について詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量%」を単に「%」と表記し、「重量部」を単に「部」と表記する。
〔実施例1〕
M16×35のボルト(JIS B 1180)に、JIS H 8641 2種に従ったどぶづけ亜鉛めっき法により片面あたり350g/m2のめっきを施した。ただしネジ部はこの限りではない。これにリン酸塩処理(サーフダインEC1000、日本ペイント株式会社製)により化成皮膜を形成させ、これを試験片とした。
上記試験片に対し、エポキシ樹脂カチオン電着塗料「パワーフロート1200」(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製)を用いて、電着塗装を行った。
具体的には、電流密度を1A/cm2とし、電着時間2分施した後水洗し、焼付け条件140℃×20分にて樹脂を焼付け硬化した。
膜厚は19μmであった。
上記ボルトの頭部に、白色のエポキシ系プライマー塗料「エポキシプライマーホワイト」(ロックペイント社製)を厚み30μmで塗布し、2時間乾燥後、反射材および造膜樹脂を含む下記塗料(A)を厚み200μm(塗布直後)で塗布した。
塗料(A):反射材としての鱗片状のマイカ(粒径分布5~25μm、エンゲルハード社製)20部、造膜樹脂としてアクリルウレタン樹脂を固形分濃度50%の割合で含む塗料「ロックIUウレタン」(ロックペイント社製)80部を撹拌混合して、予め調製しておいたもの。
塗料(A)の塗装時の粘度は、160cpsであった。
続けて、シラン処理ガラスビーズ「UB67MG」(平均粒径100μm、屈折率1.93、ユニチカ社製)を、吹き付け圧2Kg/cm2で被塗装物上の塗料膜をガラスビーズで覆い隠すまで吹き付けた。
次に、165℃の温度で20分間焼付けすることによって、プライマー塗料膜および塗料(A)からなる塗料膜を同時焼付け硬化し、実施例1にかかる再帰反射性塗装物を作製した。プライマー塗膜の乾燥膜厚は30μmであり、再帰反射性塗膜の乾燥膜厚は230μmであった。得られた塗装物は、ガラスビーズが塗料(A)からなる塗膜内で複層となり、かつ、その一部が前記塗膜の表面において部分的に露出していることが断面写真から確認できた。
〔実施例2〕
カチオン電着塗装の上に、白色のエポキシ系プライマー塗料「エポキシプライマーホワイト」(ロックペイント社製)を塗装せず直接反射材および造膜樹脂を含む塗料(A)を塗装する以外は実施例1と同じ方法でボルト塗装を行った。
〔比較例1〕
電着塗装を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1にかかる塗装物を得た(リン酸塩処理後の試験片に対し、電着塗装を行わず、プライマー塗料の塗布以降の工程を行った)。
〔性能評価試験〕
下記(1)及び(2)により、実施例1,2、比較例1の塗装物(ボルト)の塩害環境での耐久性評価試験を行った。
(1)塩水噴霧試験
JIS K 5600-7-1の規定に準拠して塩水噴霧試験を実施した。500時間試験後取出し、腐食外観と再帰反射性を調べた。
(2)再帰反射性の評価
スガ試験機社製の再帰反射性能測定器「NS-1」を用いて、ボルトの頭部を観察角0.2°で反射輝度係数(cd/Lux・m2)を測定した。反射輝度係数が高いほど、再帰反射性能が良好と評価される。
評価は(1)の塩水噴霧試験を行う前(初期)と試験後(経時)行い、塩害環境における再帰反射性の長期安定性評価とした。
〔結果及び考察〕
上記性能評価試験の結果を下表1に示す。
Figure 0007067739000001
比較例1では、塩害環境において、頭部の周辺のめっき部からの流れ錆が頭部に影響し、再帰反射性が低下することが分かるが、実施例1及び2では、塩害環境においても、優れた再帰反射性が損なわれることなく、安定して発揮されることが分かった。また、再帰反射性塗装を施さないネジ部の腐食も電着塗装塗膜により、大きく向上することがわかった。
〔参考試験〕
電着塗装塗膜の種類による違いについて検証するため、以下の参考試験を行った。
板厚3.2mm×幅70mm×長さ150mmの熱延鋼板(JIS G3131に記載のSPHC)にどぶづけ亜鉛めっき法により片面あたり350g/m2のめっきを施した。これにリン酸塩処理(サーフダインEC1000、日本ペイント株式会社製)により化成皮膜を形成させ、これを試験片とした。この上層に種類の異なる電着塗装を施した。
次いで、下記塩水噴霧試験を行って塩害環境における耐食性評価を実施した。
(1)塩水噴霧試験(クロスカット有り)
試験前にクロスカット(長さ80mm)を入れ、JIS K 5600-7-1の規定に準拠して塩水噴霧試験を実施した。240時間試験後取出し、クロスカット部に沿ってテープ剥離試験を行い、クロスカット部からの片側最大剥離幅を測定し、評価した。
評価 最大剥離幅
◎ 1mm未満
○ 1mm以上、5mm未満
△ 5mm以上、10mm未満
× 10mm以上
(2)塩水噴霧試験(クロスカット無し)
JIS K 5600-7-1の規定に準拠して塩水噴霧試験を実施した。500時間試験後取出し外観判定を行った。
評価 塗膜外観
◎ 塗膜の膨れ、剥離無し
○ 5mm未満の膨れまたは剥離が1個以上、5個未満
△ 5mm未満の膨れまたは剥離が5個以上、10個未満
× 5mm未満の膨れもしくは剥離が10個以上、または5mm以上の膨れもしくは剥離が1個以上
結果を表2に示す。
Figure 0007067739000002
上記試験結果から分かるように、樹脂が変性ポリアミド・イミド樹脂の場合やアニオン電着塗装の場合には、本試験で再現したような厳しい塩害環境においては、下地との密着性や防錆効果が不十分となり、電着塗装膜の下地めっきに白錆が発生しやすく、かつ流れてしまうおそれがある。
これと比較してエポキシ樹脂カチオン電着塗装を施した場合には、下地めっきとの密着性と防錆性に優れ、白錆の発生を大きく抑制することができる。
従って、電着塗装塗膜として、エポキシ樹脂カチオン電着塗装塗膜を適用することが、本発明の優れた効果を十分に活かす上で、好ましいことが分かった。
本発明は、例えば、視認性向上による事故の防止や視線誘導のため、表面の所望の位置に再帰反射性が付与された防護柵やその構成部材などとして好適に利用することができる。
10 再帰反射性塗膜(または焼付け前の塗料膜)
11 反射材
12 ガラスビーズ
20 プライマー層
30 電着塗装塗膜
40 化成処理層(またはブラスト処理層)
50 亜鉛めっき層
60 被塗装物の表面

Claims (9)

  1. 防護柵用の構成部材を被塗装物とし、前記被塗装物に対し塗装により再帰反射性が付与されてなる再帰反射性塗装物であって、
    前記被塗装物は、防護柵の使用状態において外部に露出する部分のみならず、防護柵の使用状態において防護柵を構成する各構成部材の接合により外部から隠れる部分においても、その表面の上に電着塗装塗膜が形成されており、かつ、前記電着塗装塗膜が形成された被塗装物表面のうち、防護柵の使用状態において外部に露出する部分において、前記電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜がさらに形成されてなる、再帰反射性塗装物。
  2. 前記被塗装物が、ボルト、ナット、キャップ、ブラケット、支柱、ベースプレート、ワイヤーケーブル、ビーム、パイプおよびスクリーンパネルから選ばれるものである、請求項1に記載の再帰反射性塗装物。
  3. 嵌合部を備える部材を被塗装物とし、前記被塗装物に対し塗装により再帰反射性が付与されてなる再帰反射性塗装物であって、
    前記被塗装物は、その使用状態において外部に露出する部分のみならず、その使用状態において外部から隠れる嵌合部においても、その表面の上に電着塗装塗膜が形成されており、かつ、前記電着塗装塗膜が形成された被塗装物表面のうち、その使用状態において外部に露出する部分において、前記電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜がさらに形成されてなる、再帰反射性塗装物。
  4. ボルトを被塗装物とし、前記被塗装物に対し塗装により再帰反射性が付与されてなる再帰反射性塗装物であって、
    前記被塗装物は、ボルト頭のみならず、ネジ部においても、その表面の上に電着塗装塗膜が形成されており、かつ、ボルト頭において、前記電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜がさらに形成されてなる、再帰反射性塗装物。
  5. 前記被塗装物の表面の上に亜鉛めっき層が形成され、前記亜鉛めっき層の上に前記電着塗装塗膜が形成されている、請求項1から4までのいずれかに記載の再帰反射性塗装物。
  6. 前記電着塗装塗膜がエポキシ樹脂カチオン電着塗装塗膜である、請求項1から5までのいずれかに記載の再帰反射性塗装物。
  7. 前記再帰反射性塗膜における造膜樹脂がアクリル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記電着塗装塗膜と前記再帰反射性塗膜の間にプライマー層を備える、請求項に記載の再帰反射性塗装物。
  8. 請求項1から7までのいずれかに記載の再帰反射性塗装物を防護柵用の構成部材として備える、防護柵。
  9. 請求項1から7までのいずれかに記載の再帰反射性塗装物を製造するための再帰反射性塗装物の製造方法であって、
    電着塗装塗膜の上に、少なくとも造膜樹脂と反射材とガラスビーズとからなる再帰反射性塗膜をさらに形成するための工程として、反射材および造膜樹脂を含む塗料を塗布して反射材が分散されてなる塗料膜を形成し、前記塗料膜が硬化する前にガラスビーズを吹き付け、そののち、前記塗料膜を硬化することにより、前記ガラスビーズが内部で複層となり、かつ、その表面において前記ガラスビーズの一部が露出した再帰反射性塗膜を形成する工程を含む、再帰反射性塗装物の製造方法。
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