JP2011190809A - 密閉形圧縮機 - Google Patents

密閉形圧縮機 Download PDF

Info

Publication number
JP2011190809A
JP2011190809A JP2011119844A JP2011119844A JP2011190809A JP 2011190809 A JP2011190809 A JP 2011190809A JP 2011119844 A JP2011119844 A JP 2011119844A JP 2011119844 A JP2011119844 A JP 2011119844A JP 2011190809 A JP2011190809 A JP 2011190809A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piston
connecting rod
rotation restricting
hermetic compressor
elastic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2011119844A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5393727B2 (ja
Inventor
Tsutomu Nozaki
務 野▲崎▼
Shinichi Sato
真一 佐藤
Masatoshi Mishina
将利 三品
Tomohiro Nagao
智大 長尾
Shoichi Nakajima
昌一 中島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Appliances Inc
Original Assignee
Hitachi Appliances Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Appliances Inc filed Critical Hitachi Appliances Inc
Priority to JP2011119844A priority Critical patent/JP5393727B2/ja
Publication of JP2011190809A publication Critical patent/JP2011190809A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5393727B2 publication Critical patent/JP5393727B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Compressor (AREA)

Abstract

【課題】摺動損失を低減して効率を向上させた圧縮機を提供する。
【解決手段】電動要素からの回転力を伝えるクランクシャフト7と、クランクシャフト7側に開口してこの開口内に内球面4aを有するピストン4と、内球面に接続される球体部2aを一端とし他端をクランクシャフト7と接続される軸受部としこれらの両端をつなぐロッド部を有するコンロッド2とを備え、内球面4aが水平方向の円弧の中心角が鉛直方向の円弧の中心角より大きく形成され、球体部4aは内球面2aの水平方向の開口寸法よりも小さい寸法となる小寸法部を有し、内球面2aと球体部4aとがボールジョイント構造で連結される密閉形圧縮機であって、小寸法部と対向する位置に、コンロッド2とピストン4との間の相対的な回転を規制する回転規制部10dを備え、この回転規制部10dは、ピストン4に取り付けられるとともに、相対的な回転の際には、小寸法部と当接可能とした。
【選択図】 図7

Description

本発明は、冷蔵庫,ルームエアコン等に用いられる密閉形圧縮機に関し、特に、往復運動するピストンを有する密閉形圧縮機に関する。
往復運動するピストンを有する密閉形圧縮機においては、クランクシャフトとピストンとをコンロッドで連結し、回転運動するシャフトの運動を往復運動に変える構造が用いられている。この中で、ピストンとコンロッドの連結構造としては、特許文献1に記載のようにラジアル軸受により連結される構造が知られている。
特許文献1は、ピストンとコンロッドとの連結部にピストンピンを用いており、このピストンピンが軸となるような軸受構造として両者が連結される構造となっている。
また、ピストンとコンロッドの他の連結構造としては、特許文献2及び特許文献3のように球面軸受により連結されるいわゆるボールジョイント構造が知られている。ボールジョイント構造として連結されるものとしては、特許文献2のようにピストンに設けられる内球面を塑性加工により成型した構造が知られている。また、特許文献3では、ピストンの内球面の一部と、コンロッドの外球面の一部とがともに削除され、コンロッドの外球部分をピストンの内球部に挿入後にピストンを回転してコンロッドとピストンとを連結させている。
また、特許文献2では、ボールジョイント構造の球面受け座に窒化処理及びリン酸マンガン処理の両方もしくは一方を施し、球面に高炭素クロム鋼材を使用している。特許文献4ではボールジョイント式で連結されるピストンを焼結成形した例が示されている。
特開2004−27969号公報 特開2003−214343号公報 特開2003−184751号公報 特開昭64−69862号公報
上述の従来例のうち、特許文献1はピストンとコンロッドの連結をピストンピンによって行っているが、この連結構造は、ピストン側に挿入されるピストンピンを軸部とし、コンロッド側に軸受部を有している。したがって、ピストン側の軸がコンロッド側の軸受に傾いて挿入されると摺動に関して問題が生じる場合があった。すなわち、ピストンピンとコンロッドの間の摺動部が局所的になり、このとき、両者の接触面圧も過大となるため、摺動部の磨耗等によって信頼性の低下を招くことにもなり得る。特許文献1では、潤滑油の供給を安定化して信頼性の向上を図っているが、軸受構造に起因して発生する摺動部の局所化自体を解決するものではなかった。
一方、特許文献2及び特許文献3はボールジョイント方式によってピストンとコンロッドを連結する構造を採用している。ボールジョイント方式の連結によれば、特許文献1のようにピストンピンとコンロッドとの間の摺動,磨耗は問題となることはない。
特許文献2は、ピストンに設けられる球座を塑性加工により成型しているため、上記のような問題は生じないが、ピストンとコンロッドとの間の摺動に問題が生じ得る構成であった。すなわち、連結状態を確保するため、球座部分を閉じる方向に加工されているため、連結部に供給される潤滑油の通路が狭くなってしまい、潤滑油が充分に流れない場合がある。したがって、連結部分への潤滑油の流入,流出を充分に確保できず、球面軸受部の温度上昇及び損傷を招く可能性があった。
これに対し、特許文献3は、コンロッドの球体部の一部をカットした平面部を有する構造としており、ピストン側の球座にコンロッドの球体部を挿入後に回転させることで両者を連結させている。この構成は潤滑油供給のためのスペースを確保することができるが、球体部がピストンに対して相対的に回転すると連結が外れてしまうという問題があった。そこで、特許文献3では回転規制部材を備えて連結の解除を防止しているが、例えば特許文献2の図12に示された構造の回転規制部材では、回転規制部材であるストッパーがピストンと摺動して騒音が発生する可能性がある。また、図13及び図15の構造ではストッパーが摩擦力のみで保持される構造のため、運転中にピストンが回転する力が作用したときに摩擦力が変化し、コンロッドのストッパーが抜けてしまう可能性がある。
また、特許文献2のように球面(ボール)に高炭素クロム鋼材を用いた場合には、高炭素クロム鋼材の硬度が高いため、加工性に問題が生じていた。すなわち、耐摩耗性が高いだけではなく、加工性にも優れた材料が求められていた。なお、このような硬度が硬い材料を用いた場合には、特許文献2では加工性の問題からコンロッドを一体成形することが難しい。そこで、ピストンとの連結部分となる球面の形状を真円に近づけるためには、ロッド部と球体部とを別々に成形し、その後に両者を接続する工程が必要となってしまう。このとき、生産効率が低下してしまう場合があった。
一方、球体部分とロッド部分を敢えて一体に形成すると、球体部分の精度維持が困難であるため、ピストン摺動面で損失が発生しやすくなるだけではなく、摩耗の進行による信頼性の低下を招くおそれがあった。
本発明は、上記のような従来例で生じ得る課題を解決しようとするもので、ピストンとロッドを球面軸受により連結するボールジョイント方式の密閉形圧縮機において、信頼性の確保、あるいは摺動損失を低減して効率を向上させた圧縮機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、密閉容器内に圧縮要素及び電動要素が収納され、電動要素からの回転力を伝えるクランクシャフトと、このクランクシャフト側に開口してこの開口内に内球面を有するピストンと、前記内球面に接続される球体部を一端とし他端をクランクシャフトと接続される軸受部としこれらの両端をつなぐロッド部を有するコンロッドとを備え、前記内球面が水平方向の円弧の中心角が鉛直方向の円弧の中心角より大きく形成され、前記球体部は前記内球面の水平方向の開口寸法よりも小さい寸法となる小寸法部を有し、前記内球面と前記球体部とがボールジョイント構造で連結される密閉形圧縮機であって、
前記小寸法部と対向する位置に、コンロッドとピストンとの間の相対的な回転を規制する回転規制部を備え、
この回転規制部は、前記ピストンに取り付けられるとともに、前記相対的な回転の際には、前記球体部の前記小寸法部と当接可能とした。
また、上記の密閉形圧縮機において、前記小寸法部は互いに平行な平面部によって形成され、この平面部の間の寸法を前記円弧の径よりも小さい寸法を有する部分と同じ寸法を有し、前記回転規制部は前記平面部に対向する平面形状を有する凸形状とした。
また、前記回転規制部とピストンの開口内の内周面との間に弾性部を備え、この弾性部からの弾性力によって回転規制部が保持されるものとした。
また、これらの弾性部及び回転規制部は、一部材で構成される抜け止め部材の一部として設けられており、この抜け止め部材は、ピストンの開口内の内周面に向かって延伸する延伸部を有し、この延伸部の端部がピストン内周面に設けられた溝に入ることにより保持される構成とした。
また、前記弾性部を、ピストンの内周面と当接する外周面を曲面状とし、ピストンの内周面に沿う形状のバネ部材とした。
また、前記弾性部及び前記回転規制部はコンロッドの上方及び下方の両側に配設され、上方の回転規制部と下方の回転規制部との間の寸法を前記小寸法部よりも大きくし、弾性部は、これらの回転規制部に対し、球体部を挟む方向に力を発生するものとした。
また、弾性部を構成するバネ部材は、ピストンの内周面の周方向に複数配置されたバネによって構成されるものとした。
また、上方に位置する弾性部及び回転規制部と、下方に位置する弾性部及び回転規制部との間は支持部によってつながれており、これらの弾性部,回転規制部及び支持部を一部材で構成するものとした。
また、抜け止め部材の延伸部は、支持部に設けられるものとした。
さらに、前記内球面には酸化膜により封孔処理された鉄系焼結材が用いられ、前記球体部には酸化膜による封孔処理と窒化処理を施された鉄系焼結材が用いられ、前記回転規制部の硬度を前記球体部の表面硬度よりも大きくした。
そして、前記内球面と前記球体部とを、さらに窒化処理された鉄系焼結材とし、又は前記球体部を酸化膜により封孔処理と窒化処理を施された鉄系焼結材とした。
また、前記コンロッドは、ビッカース硬さで、内部の硬度を表面に近い部分よりも低いものとした。
また、前記圧縮要素で圧縮される冷媒として、ハイドロカーボン系の冷媒を用いるとともに、潤滑油としてエステル系合成油を用いるものとした。
本発明によれば、ボールジョイント部の摺動損失を低減することができ、効率の向上した圧縮機を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る密閉形圧縮機の縦断面図。 ピストンの内側構造の詳細図。 図2のA−A断面図。 図2のB−B断面図。 コンロッドの斜視図。 抜け止め部材の斜視図。 ピストンとコンロッドの組立状態を示す斜視図。 コンロッドの球体部が回転規制部と接触した状態を示した図。 コンロッドとピストンとの連結部分の横断面図。 延伸部を支持部に設けた抜け止め部材の斜視図。 コンロッドとピストンとの連結部分の縦断面図。 ピストン材料及びコンロッド材料の摩耗試験結果。 ピストン材料及びコンロッド材料の硬さ測定結果。 ピストン材料及びコンロッド材料の深さと硬さの関係を示す測定結果。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る密閉形圧縮機の縦断面図である。本実施例の密閉形圧縮機は、密閉容器内に設けられた軸受部1a及びフレーム1bと一体に成形されたシリンダ1内をピストン4が往復動して圧縮要素を構成するレシプロ型の圧縮機である。フレーム1bの下部には、電動要素として、電動機を構成するステータ5及びローラ6が備えられており、クランクシャフト7の回転中心から偏心した位置に、クランクピン7aが設けられている。
クランクシャフト7は、フレームの軸受部1aに貫通してフレーム1bの下部から上部へ延伸しており、クランクピン7aがフレーム1bの上方側に位置するように設けられている。クランクシャフト7の下部はロータ6と直結しており、電動機の動力によってクランクシャフト7は回転する。クランクピン7aとピストン4との間はコンロッド2で連結されており、クランクピン7a及びコンロッド2を介してピストン4が往復動する構成となっている。
すなわち、本実施例の密閉形圧縮機は、密閉容器内にシリンダ1,ピストン4等の圧縮要素と、電動機等の電動要素が収納されており、クランクシャフト7によって電動要素からの回転力を伝える構成を前提としている。コンロッド2とピストン4の連結構造については後述するが、ピストン4はクランクシャフト7側に開口して、この開口内に内球面を有している。
次にピストン4について図2〜図4を用いて説明する。図2はピストン4の内側構造の詳細図であり、ピストン4をクランクシャフト7側から見た図である。本実施例のピストン4はクランクシャフト7側に開口し、開口内部の奥側に内球面4aを有している。図3は図2のA−A断面図であり、図4は図2のB−B断面図である。
図2は上述のように、ピストン4をクランクシャフト7側から見た図であり、ピストン4が密閉形圧縮機に取り付けられた状態では、図2の上下方向が図1における密閉形圧縮機の上下方向と一致する。また、図2の左右方向は、図1において手前側と奥側とを結ぶ水平の方向となる。したがって、図3は、水平面の断面であるA−A断面を、ピストン4の上側あるいは下側から見た状態を示すものであり、図4は鉛直方向の断面であるB−B断面をピストン4の左側あるいは右側から見た状態を示すものである。また、図3では図中の下側がピストン4の奥側となり、図4では図中の右側がピストン4の奥側となる。
ピストン4の内球面4aは、後述するように、コンロッド2の先端部に設けられる球体部の外球面を受ける軸受構造を構成するものであり、A−A断面ではコンロッド2の外球面を180°以上の角度で包む形状としている。したがって、コンロッド2の外球面がピストン4の内球面4aに包持され、コンロッド2とピストン4とが連結される。一方、B−B断面ではコンロッド2の外球面を180°以下の角度で包む形状となっており、B−B断面ではA−A断面よりも摺動面積が少ない構造となっている。
このように、内球面4aの水平方向(A−A断面)における円弧の中心角を、鉛直方向(B−B断面)における円弧の中心角より大きく形成する構造としたため、上下方向には摺動面積が少ない断面としたボールジョイント構造となっている。したがって、潤滑油が通りやすく、また、潤滑油の通る経路自体も短くなり、連結部に潤滑油の流入及び流出がしやすく、摺動による磨耗等を低減することができる。また、内球面4aの奥側には凹部があるため、摺動面をより小さくすることができる。
また、図2〜図4より明らかなように、ピストン4の内周部の奥側に位置する内球面4aの上方又は/及び下方には空間が存在しており、この空間には抜け止め部材10が配設される。抜け止め部材10及びその取付状態については後述する。
次に、ピストン4と連結されるコンロッド2について、図5を用いて説明する。本実施例のコンロッド2は、ピストン4の内球面4aに接続される球体部2aを一端とし、他端をクランクシャフト7と接続される軸受部とし、これらの両端をつなぐロッド部2cを有する構造であり、図5はこの構造を備えたコンロッド2の斜視図である。
図に示すように、コンロッド2は、ピストン4の内球面4aに挿入される球体部2a,クランクピン7aに挿入されるラジアル軸受部2b、及び球体部2aとラジアル軸受部2bとをつなぐロッド部2cを備えて構成され、球体部2aの外球面は、球体の一部が切り欠かれた構造となっている。
この球体の一部が切り欠かれた部分は、球体の外径寸法よりも小さい小寸法部となり、この小寸法部を利用してコンロッド2とピストン4とは連結される。両者の連結については後述する。本実施例では小寸法部分を、互いに平行な平面部によって形成し、この2つの平面部の間の寸法が、球体の外径寸法(すなわち、円弧の径)よりも小さな小寸法部の寸法となる。
このように、外球面2aの一側と他側に平面部を有する構成としているため、ピストン4とコンロッド2が連結されても潤滑油の通る経路が短く、また、潤滑油が流れやすいため、摺動部分に潤滑油が供給できる構造となる。
コンロッド2とピストン4とを連結するにあたっては、コンロッド2の外球面2aに設けられた平面部を利用する。図3に示すように、ピストン4の内球面4aは、コンロッド2の外球面2aを180°以上の角度で包む形状としており、A−A断面における内球面4aの開口寸法Lは外球面2aの外径よりも小さい寸法となっている。一方、外球面2aの2つの平面部間の寸法は、内球面4aの開口寸法Lよりも小さく設定している。この開口寸法Lの部分がコンロッド2の球体部を挿入するための隙間であり、上述の小寸法部はこの開口寸法Lよりも小さい部分を示している。
本実施例では、外球面2aに設けられる2つの平面部をほぼ平行に設けており、両平面部を内球面4aの開口内へと挿入することができる。コンロッド2がピストン4の内球面4a内に挿入された後は、コンロッド2とピストン4とを相対的に回転させ、両者は連結する。なお、本実施例においては外球面2aに2つの平面部を設けた構成としたが、必ずしもこれに限られるものではなく、両者が連結可能となるように内球面4aの開口寸法Lより小さい寸法部分を外球面2aに設ければよい。
このように連結されたコンロッド2とピストン4は、両者の相対的な回転がなければ内球面4aの開口寸法が球体部2aの外径よりも小さいために抜けることは無く、また、摺動部を小さくすることができる。
しかし、衝撃等の何らかの作用によって、両者が相対的に回転すると、コンロッド2とピストン4との連結が解除されてしまうため、本実施例では連結外れ防止のために抜け止め部材10を備えている。
抜け止め部材10について、図6及び図7を用いて説明する。図6は本実施例の抜け止め部材10の斜視図であり、図7は抜け止め部材10が組み込まれて連結されたピストン4とコンロッド2の状態を示す斜視図である。なお、本実施例の抜け止め部材10は、コンロッド2とピストン4との相対的な回転を防止する回転規制部材としての作用を併せ持つ形状としており、コンロッド2側ではなく、ピストン4側に固定されることを特徴の1つとしている。
回転規制部材を設けるにあたっては、本実施例のようにピストン4側に固定する方式とコンロッド2側に固定する方式が考えられるが、本実施例では上述のようにピストン4側に固定される方式を採用した。密閉形圧縮機の運転状態では、クランクシャフト7の回転運動を、コンロッド2を介してピストン4の往復運動に変換し、シリンダ1内の冷媒を圧縮する。すなわち、レシプロ型の圧縮機では、ピストン4は往復運動を行うのに対し、コンロッド2はピストン4の往復運動の方向とそれと直交する方向の複合的な運動を行っている。したがって、ピストン4側に回転規制部材を設けた場合にはコンロッド2側に設けた場合と比較して固定が外れにくく、信頼性の向上が図れる。
また、ピストン4が往復する1サイクルの間に、ピストン4とコンロッド2の間の相対的な位置関係は常に変化する。ここで、コンロッド2側に回転規制部材を設けると、回転規制部材は、ピストン4の開口内部の中で常に位置が変化し、摺動面の増加を招きやすくなっていた。摺動面の増加は異音の原因ともなり得るため、信頼性とともに品質の低下をも招きやすいという問題があった。本実施例ではピストン4側に回転規制部材を備えて、これらの諸問題の解決を図ったものである。
図6に示すように、本実施例の抜け止め部材(かつ回転規制部材。以下同様)10は第1弾性部10a,第2弾性部10b、これらの両弾性部をつなぐ支持部10c、及びコンロッド2の相対的な回転を規制する回転規制部10dを備えて構成されている。これらの各構成のうち、第1弾性部10a及び第2弾性部10bはピストン4の開口内部の内周部と当接し、弾性力によって抜け止め部材10は支持されている。抜け止め部材10がコンロッド2とともにピストン4に取り付けられた状態については後述する。
回転規制部10dは、コンロッド2とピストン4とが相対的に回転しようとする場合に、これを規制するための壁を形成するものであり、これらの壁は互いに対向して設けられている。コンロッド2が取り付けられた状態では、コンロッド2の球体部2aに設けられた平面部とそれぞれの回転規制部10dとが対向して配置される。本実施例では、球体部2aに設けられる内球面4aの開口寸法Lより小さい寸法部分を、平面部によって形成しているため、回転規制部10dにほぼ平面となる部分を有し、また、互いに対向する両回転規制部10dをほぼ平行となるように設けることとしている。回転規制部10dの形状については後述する。
図7は、この抜け止め部材10が取り付けられた状態を示す斜視図である。抜け止め部材10が取り付けられると、第1弾性部10aがピストン4の内周部4bを押す力を発生し、摩擦力によって抜け止め部材10をピストン4の開口内部に固定する。同様に第2弾性部も内周部4bと当接させ、抜け止め部材10がピストン4の開口内部で強固に固定される。このように、両弾性部10a,10bは、回転規制部10dに対し、球体部2aを挟む方向に力を発生するものとした。
抜け止め部材10がこのように固定されることによって、ピストン4がシリンダ1内で回転し、コンロッド2とピストン4とが相対的に回転しようとしても、コンロッド2がピストン4から抜ける位置までは至らない構成とすることができる。なぜなら、互いに対向する回転規制部10d間の距離が球体部2aの外径よりも小さいため、コンロッド2とピストン4とが相対的に回転しようとすると、球体部2aの外球面が回転規制部10dと必ず当接して回転が規制されるためである。
また、本実施例では、壁を形成する回転規制部10dをバネ構造である第1弾性部10a及び第2弾性部10bによって固定しているため、回転規制部10dとコンロッド2の球体部2aとが衝突した場合であっても両者の過度の変形を防止することができる。また、抜け止め部材10を取り付ける際も、ピストン4の内球面4aやコンロッド2の球体部2aを変形させることなくボールジョイント構造が実現できる。
また、回転規制部10dは単に壁を形成しているだけであるため、圧縮機の通常の運転状態にあってはコンロッド2と摺動することはない。したがって、両者の摩擦による損失や異音の発生を抑制することができる。
さらには、弾性部10a,10bを構成するバネ部材は、ピストンの内周面の周方向に複数配置されるものとしたため、回転規制部10dの取付状態を安定的に保持することが可能となっているだけではなく、抜け止め部材10の取り付けやすさも向上している。加えて、弾性部10a,10bはピストン4の内周面4bに沿うような曲面形状としているため、回転規制部10dのさらなる安定的な保持が可能である。
また、上方に位置する弾性部10a及び回転規制部10dと、下方に位置する弾性部10b及び回転規制部10dとの間は支持部10cによってつながれており、これらの弾性部10a,10b、回転規制部10d及び支持部10cを一部材で構成しているため、取付状態の維持と取り付けやすさの向上を図ることができる。
図8は、コンロッド2の球体部2aが回転規制部10dに接触した状態を示した図であり、図8(a)は接触状態を示す正面図、図8(b)は接触時の斜視図である。コンロッド2とピストン4とが相対的に回転すると、球体部2aが回転規制部10dと当接する。このとき、回転規制部10dが壁となって過剰な回転を規制することによって、ピストン4がコンロッド2から外れることを防いでいる。また、回転規制部10dは弾性部10a,10bによって弾性的に支持されているため、コンロッド2とピストン4が急激に回転した場合であっても、球体部2aが回転規制部10dと衝突する際の衝撃を軽減し、破損を防止している。
図8に示すように、本実施例の回転規制部10dは球体部2側に凸形状となっており、ピストン4の内球面4aの上方側の開口にこの凸形状部10d′が入り込むようになっている。また、内球面4aの下方側の開口も上方側と同様に凸形状部が入り込むように抜け止め部材10が取り付けられている。このような回転規制部10dを備えたことの作用は以下のとおりである。
回転規制部10dに上記のような凸形状部10d′がなく、全体に一様の平面形状とすると、ピストン4とコンロッド2との相対的な回転が発生したとき、回転規制部10dと最初に当接するのは、球体部2aの円弧部分と平面部との境界部2a′になる。この部分は円弧と平面の稜線に相当するため、回転規制部10dと勢いよく衝突すると回転規制部10dや境界部2a′に破損を招く場合があった。また、回転規制部10dが単純な平面形状であれば、当接時に変形が生じやすいという問題もあった。
本実施例では、凸形状部10d′を有する構成としてこれらの問題の解決を図っている。ただし、単に凸形状部10d′を備えただけでは回転規制部10dの強度の向上には寄与するが、形状や高さによっては先に境界部2a′が回転規制部10dと衝突してしまう。そこで、本実施例の凸形状部10d′は、ピストン4とコンロッド2との相対的な回転時に、球体部2aの平面部と最初に当接するものとしている。その具体的な構成としては、凸形状部10d′の上端部の幅よりも、凸形状部10d′と対向するコンロッド球体部2aの平面部の幅が大きくなるように設定されている。
このように、回転規制部10dが、球体部2aの小寸法部である平面部と当接可能としたことによって、回転規制部10d、ひいては抜け止め部材10全体としての強度の向上が図られるだけではなく、衝突等によるコンロッド2の破損も軽減することができる。
なお、図8に示すように、凸形状部10d′は、球体部2aと抜け止め部材10との間を閉塞するものではなく、両者の間には空間を設けて、潤滑油の流入,流出のための隙間を確保している。
なお、本構造において、第1弾性部10aと第2弾性部10bとは支持部10cによって接続されて、回転規制部10d,10d間の距離が保たれている。支持部10cは両回転規制部の手前側を互いにつないでいるが、コンロッド2側の球体部2aと衝突した場合に問題が生じる場合があった。すなわち、ピストン4の軸方向への回転力が過度に作用すると、コンロッド2の球体部2aと回転規制部10dとが接触,衝突し、弾性部10a又は10bが押し込まれ、両回転規制部10dの奥側が開いてしまう現象が発生する場合がある。
このとき、上述のような抜け止め部材10とコンロッド2との関係が保ちきれないため、抜け止め部材10がピストン4から外れやすくなってしまう。そこで、以下に示すような形態を有して抜け止め部材10をピストン4の内部に固定することとしている。
図9はコンロッド2とピストン4との連結部分の横断面図であり、この断面は、両者を連結した状態における図2のA−A断面に相当するものである。図9を用いて抜け止め部材10の形状及びピストン4の形状を説明する。この例における抜け止め部材10は、支持部10cからピストン4の内周面側に延伸した延伸部10eを備えている。延伸部10eの端部は、ピストン4の開口側に曲げられて形成されており、この曲げの向きは、弾性部10a,10bと逆向きであればよい。すなわち、支持部10cよりピストン4内の奥側に位置する弾性部10a,10bに対して、延伸部10eの端部はピストン4の開口側に曲げられる。また、曲げ形状は、上記の条件を満たし、かつ、延伸部10eの端部がピストン4の内周面に設けられる溝4cに挿入される構造であれば、特に限られるものではない。
また、延伸部10eの端部が溝4cに挿入された状態にあっては、延伸部10eの先端部が溝4cの段部と当接しているため、延伸部10eの曲げ形状及び抜け止め部材10の抜ける方向の関係から、延伸部10eの先端部が支えとなり、ピストン4からの脱落を抑止することができる。一方、抜け止め部材10を取り付ける場合には、延伸部10eの端部が溝4cの位置まで押し込まれると両者が簡単に係合し、取付性も良好とすることができる。したがって、抜け止め部材10がピストン4から抜ける方向に力が作用したときであってもこれを抑止し、ピストン4とコンロッド2との連結が外れることを防ぐことができる。
図10は、延伸部10eを支持部10cに設けた抜け止め部材10の斜視図である。図に示すように、延伸部10eは両回転規制部10dのちょうど中間の位置に設けられている。延伸部10eも、弾性部10a,10bと同様に弾性力を有しており、抜け止め部材10を取り付けるにあたって、ピストン4の開口内に押し込んでいる状態では、ピストン4の内周面に対して弾性力を与える。延伸部10eがたわんで、溝4c位置まで押し込まれると、延伸部10eの先端部が溝4c内に挿入される。
延伸部10eの先端部が溝4cに挿入され、抜け止め部材10がピストン4に取り付けられた状態では、溝4c内において延伸部10eがピストン4内周面に対して弾性力を与える必要はない。しかし、本実施例では、抜け止め部材10が取り付けられた状態でもピストン4の内周面に弾性力を付与するように取り付けられている。このように抜け止め部材10が取り付けられることによって、抜け止め部材10がピストン4から脱落することを効果的に防止することができる。
上述の例は、支持部10cに延伸部10eを設け、延伸部10eの端部が溝4cと係合するものを示したが、図11は弾性部10a,10bに、ピストン4の内周面側に延伸する延伸部10eを備えた例を示したものである。図10は、この例におけるコンロッド2とピストン4との連結部分の縦断面図であり、この断面は、両者を連結した状態における図2のB−B断面に相当するものである。
これらの例は、延伸部10eの端部が溝4cに挿入されているため、抜け止め部材10がピストン4から抜ける方向に力が作用したときであっても延伸部10eと溝4cとが係合し、延伸部10eの端部が支えとなって、抜け止め部材10がピストン4から脱落することを抑止できる。したがって、コンロッド2とピストン4の連結状態が維持され、信頼性の確保に寄与する構造とすることができる。
また、図11の例では、延伸部10eを弾性部10a,10bに備えていることから、次のような作用を奏する。この例では、第1弾性部10a及び第2弾性部10bは、コンロッド2の球体部2aと回転規制部10dを挟んで対向する位置に配置されるため、ピストン4内の中心側から、ピストン4の外側に向かって、球体部2a,回転規制部10d,第1弾性部10a(又は第2弾性部10b),延伸部10e,溝4cの順に位置している。したがって、球体部2aが回転規制部10dに衝突しても延伸部10eと溝4cとの係合が外れる方向への力は働きにくく、抜け止め部材10が脱落しにくいものとすることができる。
以下、これらの実施例のさらなる一例を示しながら、これらの構造の効果について検討した結果について言及する。ここでは、ボールジョイント構造の球体部2aの半径を6.495mm、内球面4aの半径を6.505mmとした場合を一例として説明する。なお、ボールジョイント構造においては、球体部2aの径はピストン4側の内球面4aの径よりも小さいことはいうまでもなく、この径の相違によって生ずる隙間部分に潤滑油が流入及び流出し、両部材の間の潤滑を行っている。また、両者の中心位置は常に同一位置に存在するわけではないため、特にピストン4の内部の最奥部には凹部が設けられている(図9,図11等参照)。この凹部は潤滑油の油溜まり部としても機能し、例えば、図9や図11に示したように、コンロッド2の内部に潤滑油の供給孔を設けて凹部と連通する構造としても良い。
また、図3に示した断面における内球面4aの角度として、ピストン4の軸心からの角度θ41を97°とし、図4に示す角度θ42を34°とした。このようにθ41及びθ42を規定することによって、B−B断面における潤滑油の通る経路をA−A断面と比較して約1/3短縮し、また、内球面4aを全面にわたって97°とした場合と比較して、ボールジョイント構造に流れる潤滑油の油量を約3倍に増やした構成とした。
さらに、ピストン4の内周面に設けられる溝4cを、幅1mm,深さ1mmの矩形とし、ピストン4の内周にリング状に一様に設けた。
このような具体的構造を有するボールジョイント構造を密閉型圧縮機に用いた場合、ボールジョイント構造が外れることなく、かつ良好な摺動性を維持できる結果を得た。この結果は、図9及び図10に示したような抜け止め部材、図11に示したような抜け止め部材であっても同様であり、上記の各構造を有することが圧縮機の効率,信頼性の向上に寄与することが確認できた。
以上のように、本発明の各実施例によれば、ボールジョイント構造の内球面および外球面を変形させることなく組立てを簡単に行うことができる。加えて、ボールジョイント機構部分の内球側と外球側の一部を切り欠くことで摺動面積が減少し、また、潤滑油の移動が容易となる。
したがって、密閉形圧縮機の運転時の摺動損失を低減して効率の向上に寄与するとともに、異音の発生による騒音等を抑制することができる。
また、ボールジョイント構造の連結解除を抑制することができるため、高い信頼性を有する密閉形圧縮機を提供することができる。
次に、ボールジョイント機構部を構成するピストン4とコンロッド2の材質について説明する。本実施例では、ボールジョイントの摺動部となる球体部2a及びピストン4の内球面4aを酸化物膜によって封孔処理された鉄系焼結材としている。具体的には、原料粉の焼結後に適宜形状を加工し、水蒸気処理をすることで内部及び表面の空孔を空孔表面に生成する酸化物膜によって封孔し、潤滑油膜が空孔を通して容易に排出されないようにしている。後述するように、水蒸気処理による封孔部の酸化物は、焼結材の強度を向上させる効果もある。
図12にピストン4及びコンロッド2に使用する材料について、リングオンブロック摩擦試験機により摺動試験を行った結果を示す。本試験においては、摺動速度を1.01m/sとし、試験負荷を123.5Nとした。摺動試験には焼結材1と焼結材2とを用いており、これらの各焼結材は炭素の含有量が異なっている(図12の※欄参照)。回転片と固定片の組合せには、水蒸気による酸化膜処理を施したもの、さらに窒化処理を施したものも含まれ、回転片と固定片の組合せとして、No.1〜No.5の各組合せについて試験を行い、摩耗量を測定した。
図に示す試験結果を見ると、固定片のみ酸化膜処理を施した焼結材を使用したNo.1及びNo.2では、回転片の摩耗量が多いことがわかる。一方、回転片と固定片の両方に酸化膜処理を施した焼結材を用いたNo.3,No.4,No.5は摩耗量が少ない結果となった。この結果から、ピストン4及びコンロッド2に、水蒸気によって封孔処理された焼結材を用いることによって、摩耗量を小さく抑えることが可能となる、ということができる。
図13に焼結材のロックウェルBスケール見かけ硬さ測定を行った結果を示す。図12で摩耗量が少ない材料の組合せと照らし合わせると、回転片の硬さは固定片の硬さよりもロックウェルBスケールで同等もしくは10程度高い組合せであることがわかる。このような組合せによれば、摩耗により問題が生じやすいコンロッド2の摩耗量を低減することができる。
これらの図12及び図13の結果によりピストン4及びコンロッド2の材料として焼結材に酸化膜処理を行ったものを使用することとした。
さらに具体的な例として、ピストン4の材料として酸化膜処理を施したFe−Cu−C系焼結材を使用し、また、コンロッド2の材料として酸化膜処理を施したFe−Cu−C系焼結材を使用し、これらのピストン4及びコンロッド2を用いて図1に示すような密閉形圧縮機を製作した。この密閉形圧縮機の運転回転数を毎分4900回転,吐出圧力1.6MPaで30日間運転したところ、ボールジョイント構造部に異常な摩耗は発生せず、良好な摺動性を維持できる結果を得た。
第二の例として、ピストン4の材料として酸化膜処理を施したFe−Cu−C系焼結材を使用し、コンロッド2の材料として酸化膜処理及び窒化処理を施したFe−Cu−C系焼結材を使用した密閉形圧縮機を製作し、運転回転数を毎分4900回転,吐出圧力1.6MPaで30日間運転したところ、ボールジョイント構造部に異常な摩耗は発生せず、良好な摺動性を維持できる結果を得た。
第三の例として、ピストン4の材料として酸化膜処理及び窒化処理を施したFe−Cu−C系焼結材を使用し、コンロッド2の材料として酸化膜処理及び窒化処理を施したFe−Cu−C系焼結材を使用した密閉形圧縮機を製作し、運転回転数を毎分4900回転,吐出圧力1.6MPaで30日間運転したところ、この場合でもボールジョイント構造部に異常な摩耗は発生せず、良好な摺動性を維持できる結果を得た。
これらの三つの例に関し、以下、考察を加える。図14はピストン材料及びコンロッド材料の深さと硬さの関係を示す測定結果である。図に示すように、各材料の表面からの深さを横軸とし、ビッカース硬さHVを縦軸として、材料の深さと硬さの関係を示している。焼結材1の(A)例として、焼結後に水蒸気処理をすることで内部及び表面の空孔を空孔表面に生成する酸化膜によって封孔したものに対して、さらに窒化処理を施したものを用いている。(B)例は、酸化膜処理を行わずに窒化処理を施したものを示し、(C)例は酸化膜処理を行い、窒化処理を行わない例を示している。
また、焼結材2の(α)例は、酸化膜処理及び窒化処理を施したものであり、(β)例は酸化膜処理を施し、窒化処理を行わない例を示している。これらの窒化処理は、窒化処理温度500〜600℃程度の一般的なガス軟窒化によって行った。
図14からわかるように、水蒸気処理によって酸化膜を生成したものに対し、さらに窒化処理を施すと硬度が向上する。したがって、コンロッド2には、水蒸気によって封孔処理され、さらに窒化処理が施された焼結材を用いることが望ましい。このとき、ピストン4にも、窒化処理が施された焼結材を用いても構わないが(上記の第三の例)、表面同士が同材種となることを避け、ピストン4には窒化処理を施さなくてもよい(上記の第二の例)。
一方、水蒸気による封孔処理を行わずに窒化処理を施した場合には、図14に示すように焼結材料内の微孔を介して内部まで硬化し、材料全体として脆化してしまう。したがって、コンロッド2の破損等によって、信頼性の低下を招きやすい。
本実施例では、表面に近い部分は、耐摩耗性を確保するために十分な硬度を保持しながらも、内部の硬度をビッカース硬さで表面に近い部分よりも低くし、靭性に優れたコンロッド2を得ている。そのために、水蒸気処理によって封孔処理を行った後に窒化処理を施しており、これによって信頼性に優れた密閉形圧縮機を提供することが可能となる。
なお、上記の窒化処理に変えて、浸炭処理、あるいは浸硫窒化処理を行っても同様の効果が期待できる。
上記のような表面処理を行うために、製造においては、次のような寸法上の考慮が必要である。すなわち、コンロッド2の製造にあたっては、まず原料粉の焼結後に適宜形状を加工する。このとき、コンロッド2の球体部2aとなる部分の径を、完成時におけるピストン4の内球面4aの径よりも小さくすることが必要である。反対に、ピストン4の内球面4aとなる部分の径は、完成時におけるコンロッド2の球体部2aの径よりも大きくすることが必要である。その後、水蒸気処理等を行い、その分だけ球体部2aの径は大きくなり、内球面4aの径が小さくなる。
次に抜け止め部材10について説明する。コンロッド2は、抜け止め部材10よりも表面硬度を小さくすることでさらに信頼性の向上が図れる。図8に示すように、コンロッド2の球体部2aが、抜け止め部材10と当接する部分は、球体部2aに設けられた平面部であり、この平面部は、通常の運転状態においてピストン4の内球面4aと摺動する部分ではない。したがって、たとえ平面部が若干量だけ摩耗したとしても、ピストン4との摺動関係に大きな変化はない。
一方、抜け止め部材10が、球体部2aとの当接によって摩耗し、回転規制部10dの厚さが薄くなると、抜け止め部材10が破損し、ピストン4とコンロッド2との連結が解除される場合がある。このとき、密閉形圧縮機としての機能が損なわれ、故障の原因となってしまう。本実施例では、抜け止め部材10は、コンロッド2の表面硬度よりも高い硬度を有するSUS301−1/4Hを用いることによって、信頼性の向上を図っている。
以上説明した本実施例の密閉形圧縮機が、実際に運転する際には、摺動部分の温度が高くなり過ぎないように留意する必要がある。摺動部温度の過剰な上昇は摩耗の促進を招き、結果として信頼性の低下を招くからである。特に、表面処理を施した焼結材を用いた本実施例の場合には、温度の過剰な上昇による信頼性の低下を防ぐために、運転時の摺動部分の温度を150℃以下としている。上記の第一例乃至第三例と同種の試験を行い運転したところ、摺動部分の温度を150℃以下とした場合には、ボールジョイント構造部に異常な摩耗は発生せず、良好な摺動性を維持できる結果を得た。
また、実際の運転の際に使用される潤滑油について説明する。上記の実施例のように、水蒸気による封孔処理(酸化膜処理)や窒化処理を施した焼結材を用いたピストン4及びコンロッド2の表面に油膜を保持するためには、潤滑油として、窒化膜表面に吸着力がよいエステル系合成油を用いることが有効である。封孔処理は、摺動部に供給された潤滑油の油膜を保持するために必須であり、窒化膜と相性のよいエステル系合成油を用いれば摺動損失の低減だけではなく、異常摩耗を抑制することができる。
一例として、冷媒にハイドロカーボン系のR600a(イソブタン)を用い、潤滑油にエステル系合成油を用いると、ボールジョイント構造部に異常な摩耗は発生せず、良好な摺動性を維持できる結果を得た。なお、潤滑油として鉱油とエステル系合成油を混合して用いても良好な摺動性は維持され、鉱油のみを潤滑油として用いた場合と比較して高い信頼性を得ることができた。
上述の実施例によれば、ボールジョイント構造の内球面及び外球面に発生する異常摩耗を抑えることができるため、密閉形圧縮機の長期信頼性が確保される。また、密閉形圧縮機動作時の摺動損失の低減も図られ、結果として密閉形圧縮機の効率向上に寄与する。したがって、信頼性が高く、省電力に適した密閉形圧縮機を提供することが可能となる。
1…シリンダ、2…コンロッド、2a…球体部、2a′…境界部、4…ピストン、4a…ピストンの内球面、4c…溝、7…クランクシャフト、10…抜け止め、10a…第1弾性部、10b…第2弾性部、10c…支持部、10d…回転規制部、10d′…凸形状部、10e…延伸部。

Claims (12)

  1. 密閉容器内に圧縮要素及び電動要素が収納され、前記電動要素からの回転力を伝えるクランクシャフトと、このクランクシャフト側に開口してこの開口内に内球面を有するピストンと、前記内球面に接続される球体部を一端とし他端を前記クランクシャフトと接続される軸受部としこれらの両端をつなぐロッド部を有するコンロッドとを備え、前記内球面が水平方向の円弧の中心角が鉛直方向の円弧の中心角より大きく形成され、前記球体部は前記内球面の水平方向の開口寸法よりも小さい寸法となる小寸法部を有し、前記内球面と前記球体部とがボールジョイント構造で連結される密閉形圧縮機であって、
    前記小寸法部と対向する位置に、前記コンロッドと前記ピストンとの間の相対的な回転を規制する回転規制部を備え、
    この回転規制部は、前記ピストンに取り付けられるとともに、前記相対的な回転の際には、前記小寸法部と当接可能としたことを特徴とする密閉形圧縮機。
  2. 請求項1に記載の密閉形圧縮機において、前記小寸法部は互いに平行な平面部によって形成され、この平面部の間の寸法を円弧の径よりも小さい寸法を有する前記部分と同じ寸法を有し、前記回転規制部は前記平面部に対向する平面形状部を有する凸形状としたことを特徴とする密閉形圧縮機。
  3. 請求項1又は2に記載の密閉形圧縮機において、前記回転規制部と前記ピストンの開口内の内周面との間に弾性部を備え、前記弾性部からの弾性力によって前記回転規制部が保持されることを特徴とする密閉形圧縮機。
  4. 請求項3に記載の密閉形圧縮機において、前記弾性部及び前記回転規制部は、一部材で構成される抜け止め部材の一部として設けられており、この抜け止め部材は、前記ピストンの開口内の内周面に向かって延伸する延伸部を有し、前記延伸部の端部が前記内周面に設けられた溝に入ることにより保持されることを特徴とする密閉形圧縮機。
  5. 請求項3又は4に記載の密閉形圧縮機において、前記弾性部は前記ピストンの内周面と当接する外周面を曲面状とし、前記内周面に沿う形状のバネ部材であることを特徴とする密閉形圧縮機。
  6. 請求項4に記載の密閉形圧縮機において、前記弾性部及び前記回転規制部は前記コンロッドの上方及び下方の両側に配設され、上方の回転規制部と下方の回転規制部との間の寸法は前記小寸法部よりも大きく、前記弾性部は、前記回転規制部に対し、前記球体部を挟む方向に力を発生することを特徴とする密閉形圧縮機。
  7. 請求項5又は6に記載の密閉形圧縮機において、前記バネ部材は、前記ピストンの内周面の周方向に複数配置されたバネによって構成されていることを特徴とする密閉形圧縮機。
  8. 請求項6に記載の密閉形圧縮機において、上方に位置する弾性部及び回転規制部と下方に位置する弾性部及び回転規制部との間をつなぐ支持部を備え、これらの弾性部,回転規制部及び支持部を一部材で構成したことを特徴とする密閉形圧縮機。
  9. 請求項8に記載の密閉形圧縮機において、前記延伸部は前記支持部に設けられたことを特徴とする密閉形圧縮機。
  10. 前記内球面には酸化膜により封孔処理された鉄系焼結材が用いられ、前記球体部には酸化膜による封孔処理と窒化処理を施された鉄系焼結材が用いられ、
    前記回転規制部の硬度を前記球体部の表面硬度よりも大きくしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の密閉形圧縮機。
  11. 前記コンロッドは、ビッカース硬さで、内部の硬度が表面に近い部分よりも低いことを特徴とする請求項10に記載の密閉形圧縮機。
  12. 前記圧縮要素で圧縮される冷媒として、ハイドロカーボン系の冷媒を用いるとともに、潤滑油としてエステル系合成油を用いたことを特徴とする請求項10又は11に記載の密閉形圧縮機。
JP2011119844A 2005-08-03 2011-05-30 密閉形圧縮機 Expired - Fee Related JP5393727B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011119844A JP5393727B2 (ja) 2005-08-03 2011-05-30 密閉形圧縮機

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005224831 2005-08-03
JP2005224831 2005-08-03
JP2011119844A JP5393727B2 (ja) 2005-08-03 2011-05-30 密閉形圧縮機

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005359731A Division JP4834395B2 (ja) 2005-08-03 2005-12-14 密閉形圧縮機

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011190809A true JP2011190809A (ja) 2011-09-29
JP5393727B2 JP5393727B2 (ja) 2014-01-22

Family

ID=37737455

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011119844A Expired - Fee Related JP5393727B2 (ja) 2005-08-03 2011-05-30 密閉形圧縮機

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5393727B2 (ja)
CN (2) CN100478567C (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6132211B2 (ja) 2012-02-20 2017-05-24 パナソニックIpマネジメント株式会社 摺動部材およびこれを用いた冷媒圧縮機、並びに、冷蔵庫およびエアーコンディショナー
CN103541882B (zh) * 2012-07-12 2016-05-11 珠海格力节能环保制冷技术研究中心有限公司 压缩组件及其所应用的压缩机
CN106401909A (zh) * 2016-09-26 2017-02-15 加西贝拉压缩机有限公司 一种用于制冷压缩机的活塞连杆装置
CN107524694B (zh) * 2017-07-24 2019-05-31 广州万宝集团压缩机有限公司 一种连杆轴承结构

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62265478A (ja) * 1986-05-12 1987-11-18 Matsushita Refrig Co 密閉型電動圧縮機のピストン装置
JPH02161180A (ja) * 1988-12-14 1990-06-21 Hitachi Ltd ボールジョイントピストン
JPH09228972A (ja) * 1996-12-26 1997-09-02 Hitachi Ltd 圧縮機の鉄系摺動部品及びこれの表面処理方法と圧縮機
JPH1077492A (ja) * 1996-09-04 1998-03-24 Daikin Ind Ltd 冷凍機油および冷凍機および圧縮機
JP2003028060A (ja) * 2002-05-17 2003-01-29 Toshiba Corp 密閉形コンプレッサ
JP2003097429A (ja) * 2002-06-06 2003-04-03 Taiho Kogyo Co Ltd 摺動部材
JP2003120534A (ja) * 2001-10-05 2003-04-23 Hitachi Ltd 冷凍用圧縮機及びそのコンロッド製造方法
JP2003184751A (ja) * 2001-12-20 2003-07-03 Hitachi Ltd 密閉形圧縮機
JP2005113842A (ja) * 2003-10-10 2005-04-28 Hitachi Home & Life Solutions Inc 往復式圧縮機及びその製造方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE69213597T2 (de) * 1991-06-07 1997-02-13 Toshiba Kawasaki Kk Kältemittelverdichter unter Verwendung der Kältemittel HFC134a und HFC152a
KR100432714B1 (ko) * 2000-12-06 2004-05-24 주식회사 엘지이아이 밀폐형 압축기 습동부품의 표면처리 방법
JP4021668B2 (ja) * 2002-01-18 2007-12-12 東芝キヤリア株式会社 レシプロ式密閉型電動圧縮機

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62265478A (ja) * 1986-05-12 1987-11-18 Matsushita Refrig Co 密閉型電動圧縮機のピストン装置
JPH02161180A (ja) * 1988-12-14 1990-06-21 Hitachi Ltd ボールジョイントピストン
JPH1077492A (ja) * 1996-09-04 1998-03-24 Daikin Ind Ltd 冷凍機油および冷凍機および圧縮機
JPH09228972A (ja) * 1996-12-26 1997-09-02 Hitachi Ltd 圧縮機の鉄系摺動部品及びこれの表面処理方法と圧縮機
JP2003120534A (ja) * 2001-10-05 2003-04-23 Hitachi Ltd 冷凍用圧縮機及びそのコンロッド製造方法
JP2003184751A (ja) * 2001-12-20 2003-07-03 Hitachi Ltd 密閉形圧縮機
JP2003028060A (ja) * 2002-05-17 2003-01-29 Toshiba Corp 密閉形コンプレッサ
JP2003097429A (ja) * 2002-06-06 2003-04-03 Taiho Kogyo Co Ltd 摺動部材
JP2005113842A (ja) * 2003-10-10 2005-04-28 Hitachi Home & Life Solutions Inc 往復式圧縮機及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
CN101397987B (zh) 2011-08-03
CN100478567C (zh) 2009-04-15
CN101397987A (zh) 2009-04-01
JP5393727B2 (ja) 2014-01-22
CN1916408A (zh) 2007-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5580532B2 (ja) メカニカルシール装置
JP5393727B2 (ja) 密閉形圧縮機
US8028614B2 (en) Wobble plate compressor
CN108343606B (zh) 压缩机构、压缩机及制冷设备
JP6363488B2 (ja) 圧縮機
JP4834395B2 (ja) 密閉形圧縮機
KR20130039335A (ko) 베인형 압축기
US8627758B2 (en) Axial piston pump with pistons having metallic sealing rings
JP2009108825A (ja) スクロール式流体機械
EP3561304A1 (en) Scroll compressor and assembly method thereof
JP4694956B2 (ja) 密閉形圧縮機
JP2010133530A (ja) 軸受構造及び該軸受構造を備えた過給機
KR100783232B1 (ko) 밀폐형 압축기
CN207813932U (zh) 压缩机构、压缩机及制冷设备
JP4968539B2 (ja) スラストニードル軸受
JP2005307949A (ja) スクロール型流体機械
CN107514365B (zh) 泵体组件及具有其的压缩机
JP4300219B2 (ja) 密閉型圧縮機及びこれを用いた冷蔵庫
JP2014202162A (ja) スクロール型流体機械
JP2006077745A (ja) 流体機械
JP2005248925A (ja) スクロール型流体機械
WO2009128228A1 (ja) 圧縮機の潤滑剤供給構造
JP4832502B2 (ja) 密閉形圧縮機及び密閉形圧縮機を用いた冷蔵庫
JP2019183704A (ja) 容量可変型圧縮機
JP2004270523A (ja) 回転流体機械

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110601

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120702

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130205

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130329

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130917

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131015

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5393727

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees