以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1乃至図7は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、透過型表示装置および面光源装置の概略構成を示す断面図であり、図2は、光学シートの上面図であり、図3および図4は光学シートのシート面への法線方向に沿った断面図である。
図1に示された透過型表示装置10は、透過型表示部15と、透過型表示部15の背面側(画像観察者側とは反対側)に配置され透過型表示部15を背面側から面状に照らす面光源装置20と、を備えている。透過型表示部15は、例えば、液晶表示パネル(LCDパネル)から構成され、この場合、透過型表示装置10は液晶表示装置として機能する。ここでLCDパネルとは、ガラス等からなる一対の支持板と、支持板間に配置された液晶(層)と、液晶分子の配向を一つの画素を形成する領域毎に電場によって制御する電極と、を有するパネルである。支持板間の液晶は、一つの画素を形成する領域毎にその配列を変化させられ得るようになっている。この結果、液晶表示パネル15は、面光源装置20からの均一な面内輝度分布の面状光を画素毎に透過させるか又は遮断することによって画像を形成するシャッターとして、機能するようになる。
一方、面光源装置20は、図1に示すように、光源25と、光源25からの光をその進行方向を偏向して透過させる光学シート40と、光学シート40の出光側に配置された偏光分離フィルム35と、を有している。また、光学シート40の入光側には、光を拡散させる光拡散シート38が設けられている。面光源装置20は、例えばエッジライト(サイドライト)型等の種々の形態で構成され得るが、本実施の形態においては、直下型のバックライトユニットとして構成されている。このため、光源25は光学シート40の入光側において光学シート40と対面するようにして配置されている。また、光源25は、光学シート40の側に開口部(窓)を形成された箱状の反射板28によって背面側から覆われている。
なお、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学シート40等を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図1、図3および図4においては上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学シート40等を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側のことである(光源側)。
また、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
さらに、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、光学シート40のシート面、偏光分離フィルム35のフィルム面、光拡散シート38のシート面、面光源装置15の発光面、および、透過型表示装置10の表示面は、互いに平行となっている。さらに、「正面方向」とは、光学シート40のシート面に対する法線の方向nd(図3参照)であり、また、面光源装置20の発光面の法線方向等にも一致する。
光源25は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状のLED(発光ダイオード)や白熱電球、面状のEL(電場発光体)等の種々の態様で構成され得る。本実施の形態においては、図1および図3(二点鎖線)に示すように、光源25は、線状に延びる複数の冷陰極管を有している。反射板28は、光源25からの光を光学シート40側へ向けるための部材であり、反射板28の少なくとも内側表面は、例えば金属等の高い反射率を有する材料からなっている。
偏光分離フィルム35は、入射光の偏光状態に基づいて、入射光のうち特定の偏光成分を透過させるとともに、その他の偏光成分を反射して再び光源側へ戻す機能を有したシート状部材である。輝度の向上に役立ち得る偏光分離フィルム35として、米国3M社から入手可能な「DBEF」(登録商標)を用いることができる。また、「DBEF」以外にも、韓国Shinwha Intertek社から入手可能な高輝度偏光シート「WRPS」や、あるいは、ワイヤーグリッド偏光子等を、偏光分離フィルム35として用いることができる。
光拡散シート38は、入射光を拡散させ、好ましくは入射光を等方拡散させ、光源25の構成に応じた輝度ムラ(光源の像、管ムラとも云う)を緩和し、輝度の面内分布を均一化させるためのシート状部材である。このような光拡散シート38として、基部と、基部内に分散され光拡散機能を有した光拡散性粒子と、を含むシートが用いられ得る。一例として、反射率の高い材料から光拡散性粒子を構成することにより、あるいは、基部をなす材料とは異なる屈折率を有する材料から光拡散性粒子を構成することにより、光拡散性粒子に、光拡散機能を付与することができる。
次に、光学シート40について説明する。
図2および図3に示すように、光学シート40は、シート状の本体45と、シート状の本体部45の一方の面46上に設けられた少なくとも三個以上のフライアイレンズ(蠅の目レンズ)を構成する第1単位形状要素(点状単位形状要素、第1単位光学要素)50と、シート状の本体部45の一方の面46上に配列されシート面上の一方向に延びた多数の第2単位形状要素(線状単位形状要素、第2単位光学要素)55と、を有している。図2に示すように、第1単位形状要素50は、本体部45の一方の面46上に隙間を空けて配列されている。一方、第2単位形状要素55は、本体部45の一方の面46上のうちの第1単位形状要素50の間に配置されている。そして、本実施の形態においては、本体部45の一方の面46の全領域が、第1単位形状要素50および第2単位形状要素55によって覆われている。さらに詳細には、本体部45の一方の面46のうちの一部の領域が第1単位形状要素50によって覆われ、本体部45の一方の面46のうちの前記一部の領域以外のその他の全領域が、第2単位形状要素55によって覆われている。このような第1単位形状要素50および第2単位形状要素55の配置によれば、光学シート40へ入射した光が、光学的作用を及ぼされることなく、光学シート40の出光面から出射すること、いわゆる「素抜け」を防止することができる。
本実施の形態においては、図3および図4に示すように、本体部45は、前記一方の面46に対向する他方の面47として、光学シート40の入光面41をなす平滑な面を有している。なお、「平滑」とは、光学的な意味合いでの平滑を意味するものである。すなわち、ここでは、或る程度の割合の可視光が、光学シート40の入光面41(本体部45の他方の面47)において散乱することなくスネルの法則を満たしながら屈折するようになる程度を意味している。したがって、例えば、本体部45の他方の面47(光学シート40の入光面41)の十点平均粗さRz(JISB0601)が最短の可視光波長(0.38μm)以下となっていれば、十分、平滑に該当する。
次に、第1単位形状要素50について説明する。複数の第1単位形状要素50は、本体部45の一方の面46上に二次元配列されている。複数の第1単位形状要素50には、その配置中心51によって本体部45の一方の面46上に三角形を画定するようになる三つの第1単位形状要素が、少なくとも含まれている。すなわち、三つの第1単位形状要素50のうちの二つは、図2に示す如く、その配置中心位置51が一方の面46上におけるある一つの方向に沿ってずれるように、配置されており、且つ、他の組み合わせからなる二つの第1単位形状要素は、その配置中心位置51が一方の面上において前記一つの方向と交差する他の方向に沿ってずれるように、配置されている。
一例として、図2に示す態様では、多数の第1単位形状要素50が、本体部45の一方の面46上に規則的に配列されている。図2に示す例において、多数の第1単位形状要素50の平面内における配列は、各第1単位形状要素50の面46上への射影に相当する合同な円を、最密に平面充填した構造から各円同士を引き離した配列を以って、本体部45の一方の面46上に配列されている。即ち、一つの第1単位形状要素50が、等間隔を空けて円周状に6回対称に配置された六つの第1単位形状要素50によって周囲から取り囲まれるようになっている。これは所謂結晶に於ける二次元の六方最密充填構造から各単位形状要素を引き離した配列に対応する。言い換えると、多数の第1単位形状要素50は、60°の角度で互いに対して傾斜した本体部45の一方の面46上の異なる二つの方向に、共通の一定ピッチで、配列されている。つまり、図2に示すように、多数の第1単位形状要素50は、本体部45のシート面上の第1方向d1に沿って一定のピッチで配列されているとともに、本体部45のシート面上の第2方向d2及び第3方向d3に沿っても一定のピッチで配列されており、この第1方向d1と第2方向d2及び第1方向d1と第3方向d3とは互いに対して60°の角度だけ傾斜している。さらに言い換えると、本体部45の一方の面46上において、最も近接した三つの第1単位形状要素50の配置中心51が、本体部45の一方の面46上で、正三角形の頂点上にそれぞれ位置するように、多数の第1単位形状要素50が配列されている。
なお、図2に図示する例においては、光学シート40のシート面への法線方向ndから観察した場合に、各光源25の長手方向daと、第1単位形状要素50の配列方向の一つd1が、直交するようになっている。
また、本実施の形態において、各第1単位形状要素50の出光面は、曲面によって形成されている。したがって、図3に示すように、光学シート40のシート面への法線方向ndに平行である断面において、各第1単位形状要素50の出光面の外輪郭は、曲線によって構成されるようになる。とりわけ本実施の形態では、図3に示すように、光学シート40のシート面への法線方向ndに平行である断面において、各第1単位形状要素50は、出光側に突出する円の一部分または出光側に突出する楕円の一部分に相当する形状を有している。さらに詳細には、各第1単位形状要素50は、回転楕円体の一部に相当する形状または球体の一部に相当する形状を有する単位レンズとして、形成されている。さらに、本体部45のシート面への法線方向ndと平行な断面であって且つ第2単位形状要素55の配列方向と平行な断面(以下において、「主切断面」とも呼ぶ)、すなわち、図3および図4に示す断面において、本体部45の一方の面46に沿った第1単位形状要素50の幅W1は、法線方向ndに沿った一方の面46からの第1単位形状要素50の高さH1以上の長さとなっている(すなわち、W1≧H1)。この結果、図3および図4に示されているように、光学シート40の主切断面において、第1単位形状要素50の頂部付近における輪郭は、法線方向ndに対して、大きく傾斜するようになる。
なお、曲面からなる出光面を有した第1単位形状要素50の断面形状が楕円の一部分に相当する場合、正面方向を中心として対称的な輝度の角度分布を確保するという観点から、当該断面楕円形状の長軸または短軸のいずれかが光学シート40のシート面への法線方向(つまり、正面方向)ndと平行に延びていることが好ましい。
第1単位形状要素50の具体例として、本体部45の一方の面46上における第1単位形状要素50の配置ピッチP1(図2参照)を10μm〜400μmとすることができる。また、本体部45の一方の面46上での第1単位形状要素50の配列方向に沿った、第1単位形状要素50の底面の幅W1(図2参照)を10μm〜200μmとすることができる。さらに、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部45の一方の面46からの第1単位形状要素50の突出高さH1(図4参照)を5μm〜100μmとすることができる。なお、図示する例において、多数の第1単位形状要素50は互いに同一に構成されている。
なお、本実施の形態においては、光学シート40の法線方向ndに沿って単位形状要素50,55が設けられている側から光学シート40を観察した場合に本体部45の一方の面46上において第1単位形状要素50が占めている領域の割合(以下において、単に「充填率」とも呼ぶ)が、10.0%以下となるように、当該一方の面46上に設けられている。この充填率は、言い換えると、第1単位形状要素50の出光側面のうちの第2単位形状要素55によって覆われていない部分を、光学シート40の法線方向ndに沿って一方の面46へ投影した領域の、一方の面46に対する面積比に相当する。
第1単位形状要素50の配置ピッチP1、幅W1および高さH1等は、この充填率の条件を満たすように設定される。実際の充填率の特定においては、例えば顕微鏡により観察された光学シート40の出光面上の一区画であって、第1単位形状要素50の配置ピッチP1や幅W1等を考慮した上で全体の充填率を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述の寸法例で構成された第1単位形状要素を含む光学シートにおいては、10mm×10mmの部分)についての充填率を算出し、算出された値を当該光学シートの充填率として取り扱うようにしてもよい。
次に、第2単位形状要素55について説明する。多数の第2単位形状要素55は、リニアアレイプリズム部を構成するようになっている。本実施の形態においては、図2に示すように、各第2単位形状要素55は、本体部45のシート面に平行な一方向に直線状に延びている。且つ、多数の第2単位形状要素55は、其の延びる方向(前記一方向)に直交する他方向に隙間無く並べて配列されている。なお、図示する例においては、光学シート40のシート面への法線方向ndから観察した場合に、第2単位形状要素55は、第1単位形状要素50の一つの配列方向d1に直交して、各光源25の長手方向daと平行に延びている。
本実施の形態においては、図3および図4に示すように、主切断面(第2単位形状要素55の配列方向に平行であるとともに光学シート40のシート面への法線方向ndにも平行である断面)において、各第2単位形状要素55は、多角形形状、とりわけ出光側に突出する三角形形状となっている。すなわち、各第2単位形状要素55はいわゆる三角柱の単位プリズムとして形成されている。そして、正面方向輝度を集中的に向上させるという観点からは、当該断面形状がとりわけ二等辺三角形形状であるとともに、等辺の間に位置する頂角が本体部45の一方の面46から出光側に突出するように、各第2単位形状要素55が構成されていることが好ましい。
図示した具体例では、本体部45の一方の面46上での第2単位形状要素55の配列方向に沿った、第2単位形状要素55の底面の幅W2(図4参照)が、本体部45の一方の面46上での第2単位形状要素55の配列方向に沿った第1単位形状要素50の幅W1よりも小さくなっている。第2単位形状要素55の具体例として、本体部45の一方の面46上での第2単位形状要素55の配列方向に沿った、第2単位形状要素55の底面の幅W2(図4参照)を1μm〜200μmとすることができる。また、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部45の一方の面46からの第2単位形状要素55の突出高さH2(図4参照)を0.5μm〜50μmとすることができる。なお、図示する例において、多数の第2単位形状要素55は互いに同一に構成されている。さらに、第2単位形状要素55の断面形状が二等辺三角形状である場合には、正面方向輝度を集中的に向上させる観点から、等辺の間に位置するとともに出光側に突出する頂角の角度θ(図4参照)が、80°以上120°以下となっていることが好ましく、90°であればさらに好ましい。
なお、本明細書における「三角形形状」とは、厳密な意味での三角形形状のみでなく、製造技術における限界や成型時の誤差等を含む略三角形形状や、三角形形状と同様の光学的機能を期待することが可能な略三角形形状など、例えば、三角形の頂点が丸くなっている形状や、三角形の頭部が切断されている形状(截頭三角形)等を含む。同様に、本明細書において用いる、その他の形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「円」、「楕円」、「平行」、「直交」、「多角形形状」等の用語も、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
以上のような構成によれば、第1単位形状要素50を本体部45の一方の面46と平行な面に投影した形状(底面形状)は、第2単位形状要素の如くの線状に延びた柱状体では無く、円、楕円、三角形、四角形、六角形等に代表される様な、該面内に於ける広がりが限定された有界な閉曲線、多角形等の形状をなす。斯かる幾何学形状の第1単位形状要素50を、本体部45の一方の面46上に充填率10%以下に配置した結果、第1単位形状要素50の該面上での配列形態は、丁度、蝿の目レンズ(フライアイレンズ)に於いて各単位レンズ同士(単位形状要素同士)の間隔を広げて、各単位レンズ間に間隙を設けたような配列となる。斯かる間隙に第2単位形状要素55が埋め込まれる。第2単位形状要素55の方は、第1単位形状要素50に当接して分断される以外は、本体部45の一方の面46上に於いて、一端から他端に向かって連続的に延びて存在(延在)している。
ところで、図3および図4に示すように、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部45の一方の面46からの第2単位形状要素55の突出高さH2は、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部45の一方の面46からの第1単位形状要素50の突出高さH1よりも低くなっている。この結果、本体部45の一方の面46上において、各第2単位形状要素55は、第1単位形状要素50によって分断されており、第2単位形状要素55の長手方向に沿って隣り合う二つの第1単位形状要素50の間を延びている。
従来技術の欄で説明したように、一般的に、光学シートは、透過型表示装置に組み込まれる前、透過型表示装置に組み込まれる際の大きさの部材として多数重ね合わされた状態で、あるいは、透過型表示装置に組み込まれる際の大きさに切断される前のウェブ状の部材として巻き取られた状態で、取り扱われる、例えば輸送される。また、光学シートは、他の部材と重ね合わされて面光源装置(透過表示装置)に組み込まれ、この面光源装置(透過表示装置)として、取り扱われる、例えば輸送される。この際、第2単位形状要素55のように主切断面における断面形状が三角形であり尖端を有した単位形状要素(単位プリズム)は、他の部材と小領域において局所的に接触するようになる。この結果、単位形状要素の頂部に擦れ痕が形成される、さらには、単位形状要素の頂部に変形が生じるといった、光学シートが表示装置に組み込まれた際に観察者に視認され得るようになる欠陥が、生じることもあった。
一方、本実施の形態では、第2単位形状要素55の本体部45からの高さH2は、円形または楕円形の一部に相当する断面形状を有した第1単位形状要素50の本体部45からの高さH1よりも低くなっている。この結果、光学シート40が他の部材と隣接して配置されたとしても、第1単位形状要素50が他の部材に接触し、外力の影響を受けやすい先鋭な頂部を有した第2単位形状要素55は、他の部材に接触することはない。
第1単位形状要素50は円形または楕円形の一部に相当する断面形状を有していることから、断面三角形形状の第2単位形状要素55と比較して、第1単位形状要素50は頂部において高い剛性を有している。而かも、第1単位形状要素50の頂部近傍は球面乃至球面に近似される表面形状である。その為、幾何学的に、これと接触する他の部材は滑り易く、他の部材と接触した際の摩擦は低減される。そもそも、第1単位形状要素50が球体の一部または回転楕円体の一部として構成されている場合には、光学シート40および隣接する他の部材の少なくとも一方に曲がりや反り等が生じたとしても、光学シート40と他の部材との相対位置が滑らかに変化し得る。すなわち、光学シート40と他の部材との間での摩擦力を低減することができる。また、断面三角形形状の第2単位形状要素55が他の部材と接触する場合と比較して、第1単位形状要素50が他の部材と接触する場合には、他の部材との接触面積が大きくなり、単位面積あたりの接触圧力を低下させることを、期待することもできる。これらのことから、第1単位形状要素50は、第2単位形状要素55と比較して、優れた耐擦傷性を有していると言え、単位形状要素の頂部に、擦れ、潰れ、その他の変形等が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
とりわけ、本実施の形態においては、第1単位形状要素50の幅W1が高さH1以上の長さとなっている。したがって、第1単位形状要素50は、頂部において、より平坦化された輪郭を有するようになり、より高い耐擦傷性を有している。
以上のことから、本実施の形態によれば、光学シート40の単位形状要素が他の部材に接触することに起因した不具合、例えば、光学シート40の歩留まり低下や、光学シート40が組み込まれた表示装置10によって表示される画像の画質の劣化等を、防止することができる。
なお、光学シート40の耐擦傷性を向上させる観点からは、第2単位形状要素55の突出高さH2が、第1単位形状要素50の突出高さH1の9/10以下となっていることが好ましく、第1単位形状要素50の突出高さH1の2/3以下となっていることがより好ましい。
また、以上のような耐擦傷性の向上は、本体部45上に三個以上の第1単位形状要素50が設けられている場合に、確保され得るようになる。三つの第1単位形状要素50の頂部51によって、第2単位形状要素55に接触しない唯一の面が幾何学的に画成され、この面の位置に、光学シートに隣接する他の部材の面が配置され、支持され得るようになるからである。ただし、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、表示装置に組み込まれて使用される光学シートにおいては、第1単位形状要素50の充填率が0.1%以上となる場合に安定して、さらには、第1単位形状要素50の充填率が0.3%以上となる場合により安定して、第2単位形状要素55を隣接する他の部材から離間させて光学シート40の耐擦傷性を向上させることができた。
次に、以上のような構成からなる光学シート40の製造方法の一例について説明する。以下の例においては、図5に示すような成型装置60を用いた賦型によって、第1単位形状要素50と第2単位形状要素55とを一体的にシート材48上に形成することができる。第1単位形状要素50および第2単位形状要素55の形成に用いる材料としては、成型性が良好であるとともに入手が容易であり且つ優れた光透過性を有する樹脂(一例として、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物)が好適に用いられる。
まず、成型装置60について説明する。図5に示すように、成型装置60は、略円柱状の外輪郭を有した成型用型70を有している。図6に示すように、成型用型70の円柱の外周面(側面)に該当する部分に円筒状の型面(凹凸面)72が形成されている。円柱状からなる成型用型70は、円柱の外周面の中心を通過する中心軸線CA、言い換えると、円柱の横断面の中心を通過する中心軸線CAを有している。そして、成型用型70は、中心軸線CAを回転軸線として回転しながら(図5参照)、成型品としての光学シート40を成型するロール型として構成されている。
図6に示すように、型面72には、光学シート40の第1単位形状要素50に対応する凹部74と、第2単位形状要素55に対応する溝76と、が形成されている。溝76は、型面72の中心軸線CAを中心として円周状に延びている、あるいは、型面72の中心軸線CAを中心として螺旋状に延びている。いずれの場合においても、溝76は、型面72の中心軸線CAに対して概ね垂直な方向(中心軸線に対する溝76の角度は、90°±1×10−2 °程度)に延びている。凹部74は、例えばフォトリソグラフィ技術を利用したエッチングにより、例えば、中空の鉄芯表面に銅層を被覆して成る円筒状基材または円柱状基材の円周面上の所望の位置に形成され得る。その後、凹部74が形成された円筒状基材または円柱状基材の円周面上に、例えば切削バイトを用いた切削加工により、凹部74を横切るようにして延びる溝76を形成することができる。
図5に示すように、成型装置60は、帯状に延びるシート材(成型用基材シート)48を供給する成型用基材供給装置62と、供給されるシート材48と成型用型70の型面72との間に流動性を有した材料49を供給する材料供給装置64と、シート材48と成型用型70の凹凸面72との間の材料49を硬化させる硬化装置66と、をさらに有している。硬化装置66は、硬化対象となる材料49の硬化特性に応じて適宜構成され得る。
次に、このような成型装置60を用いて光学シート40を作製する方法について説明する。まず、成型用基材供給装置62から、例えば透明性を有した樹脂からなるシート材48が供給される。供給されたシート材48は、図5に示すように、成型用型70へと送り込まれ、成型用型70と一対のローラ68とによって、型70の凹凸面72と対向するようにして保持されるようになる。
また、図5に示すように、シート材48の供給にともない、シート材48と成型用型70の型面72との間に、材料供給装置64から流動性を有する材料49が供給される。ここで、「流動性を有する」とは、成型用型70の型面72へ供給された材料49が、型面72の凹部74および溝76内に入り込み得る程度の流動性を有することを意味する。なお、供給される材料49としては、成型に用いれ得る種々の既知な材料を用いることができる。以下に示す例においては、材料供給装置64から電離放射線硬化型樹脂が供給される例について説明する。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線(UV)を照射されることにより硬化するUV硬化型樹脂や、電子線(EB)を照射されることによって硬化するEB硬化型樹脂を選択することができる。
ところで、従来、単位レンズを二次元配列してなるフライアイレンズを賦型により作製する場合、単位レンズの充填率によらず、例えば、本実施の形態における第1単位形状要素50のように低充填率であったとしても、単位レンズに気泡が形成されること、あるいは、単位レンズの表面に凹陥部が形成されてしまうといた不具合が生じやすかった。このことからすると、本実施の形態による光学シート40の第1単位形状要素50にも、気泡や凹陥部が形成されてしまうといった不具合の発生が予想されたが、本件発明者らが実験を行ったところ、このような不具合の発生は効果的に抑制された。このようにフライアイレンズの単位レンズと同様に二次元配列された第1単位形状要素50への気泡や凹陥部等の形成を効果的に抑制することが可能となるメカニズムは明らかではないが、以下にその一要因と考えられ得るメカニズムについて説明する。
以上に説明してきた製造方法においては、型面72に形成された溝76が、型面72上において、成型用型60の中心軸線CAに対して略垂直な方向に延びている。したがって、図7に示すように、材料供給装置64から供給される材料49は、成型用型70により作製されるようになる光学シート40の第2単位形状要素55の長手方向(前記一方向であって、図7における紙面の左右方向)に対応する方向に沿うようにして、成型用型70上に充填されていく。つまり、第2単位形状要素55を形成するための溝76に沿って材料49が供給されていく。
上述したように、この溝76は、第1単位形状要素50を形成するための凹部74内を通過して延びている。このため、型70の凹部74内に材料49が入り込む際に、それまで凹部74内を埋めていた気体(典型的には空気)が、材料の供給にともなって当該凹部74内から溝76内へ移動しやすくなっている。すなわち、型70の凹部74内に材料49を充填する際に凹部74内の気泡が特定の経路をたどって凹部74内から抜け出す傾向がつくり出される。この結果、型面72内に充填された材料49中に、気泡が混入してしまうことを効果的に防止することができるものと想定される。ただし、本件発明は以上の推定メカニズムに限定されるものではない。
なお、本件発明者らが実験を重ねたところ、このような型70内からの気体の排出を促進する上で、第2単位形状要素55の突出高さH2を、第1単位形状要素50の突出高さH1の1/10以上に設定することが有効であり、さらに1/3以上に設定することがより有効であることが知見された。
その後、成型用シート材48は、型70の型面72との間を電離放射線硬化型樹脂によって満たされた状態で、硬化装置66に対向する位置を通過する。このとき、硬化装置66からは、電離放射線硬化型樹脂49の硬化特性に応じた電離放射線(紫外線または電子線等)が放射されており、電離放射線はシート材48を透過して電離放射線硬化型樹脂49に照射される。この結果、型面72の凹部74内および溝76内に充填されていた電離放射線硬化型樹脂が硬化して、硬化した電離放射線硬化型樹脂からなる第1単位形状要素50および第2単位形状要素55がシート材48上に形成されるようになる。
その後、図5に示すように、シート材48が型70から離間し、これにともなって、型面72の凹部74内および溝76内に成型された単位形状要素50,55がシート材48とともに型70から引き離される。この結果、上述した光学シート40が得られる。
成型された単位形状要素50,55(硬化した材料49)を型70から抜く工程において、単位形状要素50,55(硬化した材料49)は、成型された第2単位形状要素55の長手方向(前記一方向)に沿うようにして、型70からしだいに引き離されていくようになる。上述したように、第2単位形状要素55は第1単位形状要素50と一体的に成型されて長細く延びている。したがって、このような方法によれば、成型された第2単位形状要素55および第1単位形状要素50の離型がスムースの行われるようになり、成型された第2単位形状要素55および第1単位形状要素50に亀裂が生じることや、成型された第2単位形状要素55および第1単位形状要素50がシート材48上から剥がれてしまうこと等を、効果的に防止することができる。
なお、図7に示された例において、シート材48は型70の表面に接触していない。この結果、図7に示すように作製された光学シート40の本体部45は、シート材48とシート状に硬化した材料49とから構成されるようになる。このような方法によれば、成型された第2単位形状要素55および第1単位形状要素50が、離型時に、型70内に部分的に残留してしまうことを効果的に防止することができる。
以上のようにして、ロール型として構成された成型用型70がその中心軸線CAを中心として一回転している間に、流動性を有した材料49を型70内に供給する工程と、型70内に供給された材料49を型70内で硬化させる工程と、硬化した材料49を型70から抜く工程と、が型70の型面72上において順次実施されていき、光学シート40が得られる。この際、第2単位形状要素55の長手方向(前記一方向)が、機械方向に沿うようしてこのような光学シート40を成型することによって、光学シート40への気泡の混入、および、光学シート40の表面への穴の形成を、効果的に抑制することができる。このため、得られた光学シート40は、期待された所望の光学的特性を発揮することができるようになる。また、型70内からの気泡の排出が促進されるため、二次元配列された第1単位形状要素50を含んだ光学シート40を通常のフライアイレンズシートよりも高速で効率よく生産することも可能となる。これにより、第1単位形状要素50を含む光学シート40の製造コストを削減することが可能となる。なお、光学シート40を成型するための型70の製造コストは、断面三角形形状を有した単位プリズムを含む従来のプリズムシートを成型するための型や、通常のフライアイレンズシートを成型するための型の製造コストから大幅に上昇することはない。
ただし、以上のような賦型法による光学シート40の作製は一例に過ぎず、例えば押し出し成型法や転写成型法等の成型法や、その他の製造方法によって、光学シート40を作製してもよい。
次に、以上のような光学シート40、面光源装置20および透過型表示装置10の作用について説明する。
まず、透過型表示装置10および面光源装置20の全体的な作用について説明する。
図1に示す如く、光源25で発光された光は、直接または反射板28で反射した後に観察者側に進む。観察者側に進んだ光は、光拡散シート38で等方拡散された後に、光学シート40に入射する。光学シート40において、光の進行方向と正面方向(光学シート40のシート面への法線方向)ndとによってなされる角度が、主として、0°に近付くように、光が偏向される。また、光学シート40においては、輝度の面内分布が均一化するように、光が拡散するようになる。なお、光学シート40の作用については、後に詳述する。
光学シート40を出光した光は、その後、偏光分離フィルム35を透過する。透過型表示部15は、面光源装置20からの光を画素毎に選択的に透過させる。これにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。
次に、光学シート40の作用についてさらに詳述する。
まず、光学シート40の出光面の大部分を構成するようになる第2単位形状要素(単位プリズム)55による作用について説明する。図3および図4に示すように、リニアアレイプリズム部を形成する第2単位形状要素55を介して、光学シート40から出射する光L36,L45−L48は、第2単位形状要素(単位プリズム)55の出光側面(プリズム面)のうちの面56aにおいて屈折する。この屈折により、正面方向ndから傾斜した方向に進む光L36,L45−L48の進行方向は、光学シート40へ入射する際における光の進行方向と比較して、主として、光学シート40のシート面への法線方向ndに対する角度が小さくなる側へ曲げられる。このような作用により、上述したように、第2単位形状要素55は、透過光の進行方向を正面方向nd側に絞り込むことができる。すなわち、第2単位形状要素55は、透過光に対して集光作用を及ぼすようになる。
その一方で、正面方向ndから大きく傾斜しない方向へ進む光L37は、図3に示すように、第2単位形状要素55の出光側面(プリズム面)において全反射を繰り返し、その進行方向を入光側(光源側)へ転換する。
上述したように、本実施の形態において、第2単位形状要素55の配列方向は、光源25の配列方向と平行になっている。したがって、隣り合う二つの光源25の中間点に対面する位置を中心とした光学シート40の領域であって、光源25からの光が大きな入射角度で入射する傾向のある光学シート40の領域に入射する光の進行方向を、当該光の進行方向と正面方向ndとによってなされる角度が0°に近付くように、第2単位形状要素55の出光側面(プリズム面)での屈折により、変化させることができる。この結果、隣り合う二つの光源25の中間点に対面する位置を中心とした領域であって輝度が低下する傾向のある光学シート40の領域において、輝度が低くなり過ぎてしまうことを防止することができる。
また、光源25の直上に位置する光学シート40の領域であって、光源25からの光が小さな入射角度で多く入射するようになる光学シート40の領域に入射する光を、第2単位形状要素55の出光側面(プリズム面)での全反射により、光源側へ戻すことができる(図3の光L37を参照)。この結果、光源25の直上に位置する領域であって輝度が高くなり過ぎる傾向のある光学シート40の領域において、輝度が高くなり過ぎてしまうことを防止することができる。
この結果、第2単位形状要素55によって、正面方向輝度を向上させるだけでなく、光源25の発光部の配列に応じて発生する輝度ムラ(管ムラ)を効果的に低減し、光源の像(ライトイメージ)を目立たなくさせることができる。
次に、第1単位形状要素(単位レンズ)50による作用について説明する。図3および図4に示すように、第1単位形状要素50は、法線方向ndに対して大きく傾斜した方向に進む光L31,L41−L44に対して、主として集光作用を及ぼすようになる。その一方で、図3に示すように、第1単位形状要素50は、法線方向ndに対して大きく傾斜しない方向に進む光L32を全反射により、入光側へ戻すように機能する。すなわち、第1単位形状要素50は、第2単位形状要素55と概ね、同様に輝度の面内分布を均一化させながら、正面方向輝度を向上させる機能を有している。
なお、上述したように、第1単位形状要素50は、少なくとも頂部においては法線方向ndを中心として対称的に構成されている。また、第1単位形状要素50は、本体部45の一方の面46上に二次元配列されている。したがって、第1単位形状要素50は、光学シート40のシート面上の任意の方向に沿った面内において、光の進行方向を変化させることができる。この結果、光源25の配列方向を考慮することなく光学シート40を光源25上に配置したとしても、第1単位形状要素50による集光機能および光拡散機能が発揮されるようになる。
ところで、断面多角形形状、例えば図4に示すように断面三角形形状を有するように構成された第2単位形状要素55に入射する光は、その進行方向が正面方向ndから傾斜している場合、正面方向ndを基準として当該光L45−L48の進行方向とは逆側に傾斜した一方側の出光側面(一方側のプリズム面)56aに多く入射するようになる。そして、断面三角形形状を有するように構成された第2単位形状要素55に入射した当該光L45−L48の進行方向の正面方向ndに対する傾斜角度が一定であれば、当該光L45−L48が一方側の出光側面(一方側のプリズム面)56a上のどの位置に入射するかに依らず、第2単位形状要素55から出射する際における当該光L45−L48の出射方向の正面方向ndに対する傾斜角度も一定となる。すなわち、第2単位形状要素55から出射する光の進行方向は、概ね、当該第2単位形状要素55の構成(例えば、形状や屈折率等)に起因して決定されるようになる。
なお、図4における光L41−L49の光学シート内における進行方向の正面方向ndに対する傾斜角度は、同一となっている。
このような第2単位形状要素55の光学的特性に対し、図4に示すように、断面円形状または断面楕円形状を有するように構成された第1単位形状要素50に入射する光L41−L44は、当該光の進行方向の正面方向ndに対する傾斜角度が一定であったとしても、当該光が第1単位形状要素50の出光側面(レンズ面)上のどの位置に入射するかによって、第1単位形状要素50から出射する際における当該光の出射方向の正面方向ndに対する傾斜角度が異なってくる。したがって、第1単位形状要素50から出射する光の進行方向は、当該第1単位形状要素50の構成(例えば、形状や屈折率等)だけでなく、当該第1単位形状要素50への入射位置にも大きく影響を受けるようになる。
そして、第1単位形状要素50の配置間隔および第2単位形状要素の配置間隔は、光源25の配置間隔と比較して、非常に狭くなっている。したがって、一つの単位形状要素50,55へ向けて光源25から入射する光の傾斜角度は略同一となる。この結果、曲面によって構成された出光面を有する第1単位形状要素(単位レンズ)50は、光の進行方向の正面方向ndに対する角度を比較的に広い角度範囲内に絞り込むとともに、当該絞り込まれた角度範囲内における輝度分布を滑らかに変化させるようにすることが可能となる。一方、断面多角形状からなる第2単位形状要素(単位プリズム)55は、正面方向ndを中心とする比較的に狭い角度範囲内に、光の進行方向の正面方向ndに対する角度を絞り込むことが可能となる。すなわち、断面多角形状からなる第2単位形状要素55は、その構成を適宜設計されることにより、極めて優れた集光機能を発揮し得るようになる。
つまり、断面多角形状からなる第2単位形状要素(単位プリズム)55は、曲面によって構成された出光面を有する第1単位形状要素(単位レンズ)50と比較して、より強い集光機能を発揮することができるとともに、第1単位形状要素(単位レンズ)50は、第2単位形状要素(単位プリズム)55と比較して、より強い光拡散機能を発揮することができる。このような第1単位形状要素50および第2単位形状要素55の光学特性からすると、第2単位形状要素55のみを有した従来のプリズムシートと比較して、第1単位形状要素50と第2単位形状要素55とを有する本実施の形態による光学シート40においては、正面方向輝度が低下してしまうものと予想される。
前記特許文献1(特開2008−70456号公報)の光学シートでは、三角柱形状の単位プリズムの斜面上に単位球面レンズの一部が寄生した構造の為、該単位プリズム及び該単位球面レンズともに相互の機能を抑制し合い、集光機能及び光拡散機能の両方が、該単位プリズムのみ配列した光学シート及び該単位球面レンズのみ配列した光学シートに及ば無いものであった。
その一方で、本発明の光学シートに於いては、本件発明者が実験(シミュレーションを含む)を重ねたところ、確かに、第1単位形状要素50の充填率が増加するにつれて、しだいに、正面方向輝度が低下していくといった全体的な傾向があるものの、低充填率領域においては、全体的な傾向とは異なる異質な傾向を有することが確認された。具体的には、後述する実施例において実験結果の一部が示されているように、第2単位形状要素55とともに第1単位形状要素50を低充填率でまばらに配置することによって、第2単位形状要素55のみを有した従来のプリズムシートと概ね同等の正面方向輝度を確保し得ることが知見された。さらには、第1単位形状要素50を0より大きく10%以下の充填率で、第2単位形状要素とともに、設けた場合には、第2単位形状要素55のみを有した従来のプリズムシートと比較して、正面方向輝度を維持することだけでなく、正面方向輝度をさらに上昇させることすら可能となることが知見された。これは、従来の技術常識の延長では予想し難い意外な結果である。
このように低充填率で設けられた第1単位形状要素50によって、第2単位形状要素55のみによって確保される正面方向輝度をさらに向上させることが可能となるメカニズムは明らかではないが、以下にその一要因と考えられ得る第1単位形状要素50と第2単位形状要素55との相乗的な作用効果について説明する。ただし、本件発明は、以下の推定メカニズムに限定されるものではない。
断面多角形状、図4に示す例では断面三角形形状を有するように構成された第2単位形状要素55に入射する光の多くは、当該光の進行方向が正面方向ndから傾斜している場合、正面方向ndを基準として当該光L45−L48の進行方向(図示する例では、出光側に向けて紙面の左側に傾斜する方向)とは逆側に傾斜した(図示する例では、紙面の左側に配置され出光側に向けて紙面の右側に倒れた)一方側の出光側面(一方側のプリズム面)56aに多く入射するようになる。しかしながら、図4に示すように、第2単位形状要素55に入射する光の一部L49は、正面方向ndを基準として当該光L49の進行方向と同一側に傾斜した他方側の出光側面(他方側のプリズム面)56bにも入射することがある。他方側の出光側面56bに入射した光の多くは、当該出光側面56bで全反射する。そして、当該光の一部L49は、全反射した後に、極めて大きな出射角度で第2単位形状要素(単位プリズム)55から出射し得る。そして、このような光は、いわゆるサイドローブを形成する光であり、透過型表示装置10において有効に利用されることなく、むしろ、映像の画質を劣化させることにもなる。
そして、上述してきた本実施の形態によれば、本体部45の一方の面46上には、第2単位形状要素55だけでなく、第1単位形状要素50も設けられている。そして、図4に示すように、第1単位形状要素50の本体部45からの突出高さH1が第2単位形状要素55の本体部45からの突出高さH2よりも高くなっているため、極めて大きな出射角度で第2単位形状要素(単位プリズム)55から出射した光L49は、第1単位形状要素50内へ入射する(光L49a参照)、或いは、第1単位形状要素50の出光側面で反射する(光L49b参照)。
第1単位形状要素50へ入射した光L49aは、第1単位形状要素50の曲面からなる出光側面で一回以上全反射し、その進行方向を逆側(光源側、入光側)に転換し得る。とりわけ、本実施の形態においては、第1単位形状要素50は、主切断面において円の一部または楕円の一部分に相当する形状を有しており、さらには、主切断面において幅W1が高さH1よりも長くなっている。このため、第1単位形状要素50へ入射した光L49aは、その後、法線方向ndに対して非常に大きく傾斜した第1単位形状要素50の出光側面に入射するようになり、結果として、全反射されて進行方向を逆側に転換する傾向を強く持つようになる。このような光L49aは、反射板28等での反射により、再び出光側(観察者側)へ進行方向を転換し再利用され得る。すなわち、第1単位形状要素50は、サイドローブをなす不要光としていったん光学シート40から出射した光を、光学シート40内に回収し、正面方向輝度の向上に寄与し得る光として再利用するように働く。
一方、第1単位形状要素50の出光側面で反射する光L49bは、第1単位形状要素50での反射によって、進行方向を変化させる。図示する例のように、第1単位形状要素50の基端部側(入光側)から先端部側(出光側)に向けて第1単位形状要素50の幅がしだいに狭まっていく場合、第1単位形状要素50での反射によって、光L49bは、正面方向ndに対してその進行方向がなす角度が小さくなるように、進行方向を曲げられる。すなわち、サイドローブをなす不要光としていったん光学シート40から出射した光L49に対し、第1単位形状要素50の出光側面によって集光作用を及ぼし、法線方向nd近傍の光に転換することができる。
以上のように、低充填率で設けられた第1単位形状要素50は、第2単位形状要素55に起因して発生し従来不要光となっていた光の進行方向を偏向させ、当該光を正面方向輝度の向上に寄与させるように機能すると推測される。とりわけ、図示する例のように、第1単位形状要素50が第2単位形状要素55よりも高さ及び幅において大きくなっている場合、複数の第2単位形状要素55のうちの少なくともいくつかが、第1単位形状要素50によって、当該第2単位形状要素55の長手方向に分断されるようになる。このような態様では、第1単位形状要素50が、第2単位形状要素55とは別個の光学要素として光学機能を有効に発揮することが可能になるものと推測される。実際に、第1単位形状要素50が低充填率で設けられた本実施の形態に係る光学シート40の輝度の角度分布を測定したところ、第2単位形状要素55のみを有した従来のプリズムシートについての輝度の角度分布に見られていた広角度域のサブピークが、存在していなかった。言い換えると、第1単位形状要素50が低充填率で設けられた本実施の形態に係る光学シート40の輝度の角度分布では、従来のプリズムシートの輝度の角度分布に見られるサイドローブの発生が緩和、さらには防止されていた。つまり、本実施の形態による光学シート40によれば、第1単位形状要素50および第2単位形状要素55の単独の光学的作用だけでなく、第1単位形状要素50および第2単位形状要素55の相乗的な光学的作用により、実際に表示装置に組み込まれている集光シートのうち最も正面方向輝度を向上させることができるとされているプリズムシートの正面方向輝度をさらに改善することができる。
なお、光学シート40の正面方向輝度を向上させる観点からは、第2単位形状要素55の突出高さH2が、第1単位形状要素50の突出高さH1の9/10以下であり1/10以上となっていることが好ましく、第1単位形状要素50の突出高さH1の2/3以下であり1/3以上となっていることがより好ましいことが知見された。
また、本件発明者らが鋭意実験を重ねたところ、隣り合う二つの第1単位形状要素50の間の距離と、第2単位形状要素55の配列ピッチP2と、を調節することにより、第1単位形状要素50および第2単位形状要素55の相乗的な光学的機能をより効果的に発揮されるようにすることができた。具体的には、第1単位形状要素50の平均最小間隔Saが、本体部45のシート面上における一方向(すなわち、第2単位形状要素55の長手方向)へ直交する方向(すなわち、第2単位形状要素55の配列方向)に沿った第2単位形状要素55の配列ピッチP2以上となっていることが好ましい。好ましくは、第1単位形状要素50の平均最小間隔Saが、第2単位形状要素55の配列ピッチP2の2倍以上となっていることが好ましい。
ここで平均最小間隔Saとは、任意に選択したある一つの第1単位形状要素50と、本体部45のシート面に沿って当該一つの第1単位形状要素50に最も近接して配置された他の一つの第1単位形状要素50と、の間における本体部45のシート面に沿った離間間隔の平均値のことをいう。上述した実施の形態では、同一の幅(図示する例では、本体部45の一方の面46上における直径)W1を有した第1単位形状要素50が、同一の配列ピッチP1で、本体部45の一方の面46上に配列されている。したがって、平均最小間隔Saは、配列ピッチP1と幅W1との差(=P1−W1)となる(図2参照)。他の例として、第1単位形状要素50が本体部45の一方の面46上にランダム(不規則)に配列されている場合には、任意に選択したある一つの第1単位形状要素50と、本体部45のシート面に沿って当該一つの第1単位形状要素50に最も近接して配置された他の第1単位形状要素50と、の間における離間間隔を、多数、例えば20〜100箇所測定し、測定値の平均をとることにより、平均最小間隔Saを求めることができる。
一方、本実施の形態においては、第2単位形状要素55は互いに隙間をあけることなく配列されている。したがって、本体部45のシート面上における一方向へ直交する方向に沿った第2単位形状要素55の配列ピッチP2は、第2単位形状要素55の幅W2に相当する。
第1単位形状要素50の平均最小間隔Saが、第2単位形状要素55の配列ピッチP2以上となっている場合、必ず、第2単位形状要素55の配列方向(前記一方向に直交する方向)に沿って隣り合う二つの第1単位形状要素50の間に、少なくとも一つの第2単位形状要素55が存在するようになる(図3参照)。言い換えると、図2によく示されているように、一方向に沿って隣り合う二つの第1単位形状要素50の間を、その他の第1単位形状要素50によって覆われること無く延びる一つの第2単位形状要素55(厳密には、一つ分の第2単位形状要素55に相当する出光側面)が延在することになる。この結果、第1単位形状要素50によって阻害されることなく、隣り合う二つの第1単位形状要素50の間で、第2単位形状要素55が期待された光学的機能を発揮しているものと推定される。第2単位形状要素55の光学的機能が十分に発揮されると、正面方向輝度の向上や輝度の面内分布の均一化といった本来的な目的が実現されるだけでなく、上述したように、法線方向に大きく傾斜した方向に進みサイドローブをなすようなる光も発生するようになる。そして、このサイドローブをなすようなる光は、第1単位形状要素50からの上述した光学的作用を及ぼされ、正面方向輝度の向上に寄与するようになるものと推測される。ただし、本件発明はこの推測に限定されるものではない。
さらに、本件発明者らが鋭意実験を重ねたところ、以下に説明するように、透過型表示部15および面光源装置20を互いに対して特定の条件で位置決めすることにより、正面方向輝度を数%(例えば3%程度)上昇させ得ることが確認された。
市販されている多くの光学シート40は、延伸フィルムを用いて作製されている。具体的には、図5〜図7を参照しながら説明した上述の光学シートの製造方法において、成型用基材供給装置62から供給されるシート材48として、延伸フィルムが用いられることが多い。ここで延伸フィルムとは、一以上の特定の方向に力を加えて、例えば高分子フィルムを引き伸ばすことにより(延伸させることにより)得られるフィルムである。このような延伸フィルムは、種々の分野、例えば包装用フィルム等にも用いられており、一般的に、機械的性質および化学的性質が安定しているとともに安価に入手可能である。このような延伸フィルムは、複屈折性を有し、これと第2単位形状要素の持つ偏光特性との複合効果によって、延伸された方向(延伸軸と平行な方向)の偏光成分をそのまま透過させる一方で、それ以外の方向の偏光成分の一部分を吸収する。すなわち、延伸軸方向の偏光成分の透過率が最大となり、延伸軸と直交する方向の偏光成分の吸収率が最大と成る。このため、本体部に延伸フィルムを含む形態の本発明の光学シートに於いては、延伸軸(延伸方向と平行な軸)を当該延伸フィルムの透過軸と呼称し、延伸軸方向と直交する方向を吸収軸とも呼称し得る。
一方、典型的な透過型表示部15は、液晶パネルから構成されている。そして、液晶パネル(透過型表示部)15は、一対の偏光板16,17と、一対の偏光板16,17間に配置され液晶層を含む液晶セル18と、を有している(図1参照)。偏光板16,17は、入射した光を直交する二つの偏光成分に分解し、一方の方向(透過軸(偏光軸)と平行な方向)の偏光成分を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)の偏光成分を吸収する機能を有している。
そして、後述する実施例での結果とも合致するように、正面方向から観察した場合に延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸(透過軸)とが互いに対して傾斜するように、すなわち、正面方向から観察した場合に延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸とによってなされる角度の絶対値が0°より大きくなるように、透過型表示部15と面光源装置20とを互いに対して位置決めすることによって、正面方向輝度を向上させ得ることが確認された。とりわけ、正面方向からの観察において延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸とによってなされる角度の絶対値が0°より大きく50°以下となっている場合に、正面方向からの観察において延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸とが平行となっている場合と比較して、正面方向輝度をより向上させることができた。そしてさらに、正面方向からの観察において延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸とによってなされる角度の絶対値が20°以上45°以下となっている場合に、正面方向輝度を効果的に向上させることができた。このような現象は、線状に延びる第2単位形状要素55と、10%以下の充填率で配置された第1単位形状要素50と、を有する上述した本実施の形態に係る光学シート40を含んだ表示装置10に限られることなく、線状に延びる第2単位形状要素55のみを含み第1単位形状要素50を含まない光学シート(いわゆるプリズムシート)を含んだ表示装置についても生じることが確認された。
このような現象が生じるメカニズムの詳細は不明であるが、主として線状に延びる第2単位形状要素55からの光学的作用により、本体部45(延伸フィルム48)を透過した光は多少なりとも偏光状態となること、及び、延伸フィルムは屈折率異方性を有し透過光の偏光軸方向を回転させることに起因しているものと考えられる。すなわち、本体部45の延伸フィルム48と透過型表示部15の下偏光板16との間を進む光の無偏光状態が主として第2単位形状要素55によって異方的に乱されるため偏光状態となる。一般に、第2単位形状要素55の主切断面内で屈折する透過光はP偏光成分をより多く含み、透過した光の偏光方向は稜線方向(伸びる方向)に多く偏光する。通常、第2単位形状要素55の稜線方向と透過型液晶表示部15の下偏光板16の透過軸とは同方向乃至略同方向と設定される。従って、このままであると、第2単位形状要素55の透過光の偏光軸方向と下偏光板16の透過軸方向とは直交する(成分の比率が多くなる)為、光源光の中で下偏光板16で吸収されて画像表示に利用不能な光量が増える。其の結果、透過型表示装置の正面方向輝度が低下することになる。一方、本体部45の延伸フィルム48は本体部45のシート面内方向に於いて屈折率異方性を有し、屈折率の最大方向(遅相軸)及び屈折率の最小方向(進相軸)を有する。其の為、斯かる屈折率(の面内)異方性を有する本体部を透過する偏光の偏光軸を(本体部45のシート面内に於いて)回転させる。したがって、予め、延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の透過軸とを所定の程度ずらしておくことによって、本体部45及び第2単位形状要素55を透過した光の偏光軸方向を下偏光板16の透過軸と同方向乃至略同方向に矯正し得る。これによって、正面方向輝度の上昇に寄与するようになるものと推測される。ただし、本件発明は、この推測に限定されるものではない。
なお、延伸フィルムが二軸延伸によって形成されている場合には、厳密には、延伸フィルム内の幅方向における各位置において延伸軸の方向が変化する。そして、ここでいう、光学シート40に含まれる延伸フィルムの延伸軸、すなわち、透過型表示部15の下偏光板16の透過軸と対比されるべき延伸フィルムの延伸軸は、延伸フィルムのうちの、表示装置10の表示領域の中央部分に対面するようになる部分での延伸軸とする。例えば、表示装置10の表示領域が矩形状である場合には、二つの対角線の交点に対面する部分における延伸フィルムの延伸軸を、透過型表示部15の下偏光板16の透過軸と対比することになる。通常、表示装置10の正面輝度の評価は、表示領域の中央部分での正面輝度によって行われるからである。また、表示領域中央部から離れるに従って斯かる透過軸と延伸軸との角度は乖離してくる可能性もあるが、現実的には、表示領域の周縁部での輝度低下は或る程度許容可能であるためでもある。
また、延伸フィルムと下偏光板16との一つの特定の配置状態において、延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸とによって、足し合わせると180°となる二つの角度が画成されるようになる。そして、ここでいう延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸とによってなされる角度とは、二つの角度のうちの、角度の絶対値が小さくなる方の角度のことを指し示すこととする。すなわち、ここでいう延伸フィルム48の延伸軸と下偏光板16の偏光軸とによってなされる角度の絶対値は、0°以上90°以下となる。
以上のような本実施の形態によれば、光学シート40が、低充填率で本体部45の一方の面46上に配置された三個以上の第1単位形状要素50と、本体部45の一方の面46上に配列され、各々が本体部45のシート面上の一方向と平行に延びる、複数の第2単位形状要素55と、を有しており、第1単位形状要素50の一方の面46からの突出高さH1が、第2単位形状要素55の一方の面46からの突出高さH2よりも高くなっている。このような光学シート40においては、低充填率で配置された第1単位形状要素50によって、第2単位形状要素55の光学的機能に起因して得られる正面方向輝度を大きく低下させることはない。とりわけ、第1単位形状要素50の充填率が0より大きく10%以下の場合には、第2単位形状要素55の光学的機能に起因して得られる正面方向輝度を維持するだけでなく、光源光を有効利用することによって、第2単位形状要素55の光学的機能に起因して得られる正面方向輝度をさらに上昇させることができる。加えて、光学シート40に隣接する他の部材に高さH1が高い第1単位形状要素50が接触し、第2単位形状要素55を他の部材から引き離し、第2単位形状要素55が光学シート40に隣接する他の部材と接触することを防止することができる。このため、第1単位形状要素50の構成によって光学シート40全体の耐擦傷性を確保しつつ、第2単位形状要素55については、耐擦傷性を考慮することなく、例えば頂部の面取り等を行うことなく、要望される光学特性に応じてその形状を設計され得る。すなわち、本実施の形態による光学シートによれば、光学シートの正面方向輝度を向上させることと光学シートの耐擦傷性を向上させることとの両方を同時に可能にすることができる。
斯かる耐擦傷性及び正面方向輝度を共に高い水準に維持する為には、第1単位形状要素の充填率は0.1%以上5%以下とする。中でも0.3%以上1.5%以下の範囲とすることが好ましい。
とりわけ、上述した実施の形態によれば、第1単位形状要素50が曲面からなる出光面を有し、一具体例として第1単位形状要素50の主切断面における断面形状が円形状の一部または楕円形状の一部に相当する形状を、出光側頂部を含む領域に、含んでおり、且つ、第2単位形状要素55の主切断面における断面形状が多角形形状、一具体例として三角形形状となっている。このような例によれば、第2単位形状要素55からの光学的作用によって、優れた正面方向輝度を確保し得るだけでなく、第1単位形状要素50および第2単位形状要素55からの相乗的な光学的作用によって、この優れた正面方向輝度をさらに向上させることができる。また同時に、優れた耐擦傷性を有する第1単位形状要素50によって、第2単位形状要素55が他の部材と接触することを防止し、先鋭な先端部を有する第2単位形状要素55を保護することができる。したがって、第2単位形状要素55の頂部に面取り加工等を施す必要もなく、光学特性を追求した形状を第2単位形状要素55に付与することができる。すなわち、第1単位形状要素50の構成によって発揮される機能によって、光学シート40全体としての耐擦傷性を改善し、光学シート40の優れた光学的機能が安定して発揮されるようにすることができる。また、光学シート40の耐擦傷性が改善されることから、通常、光学シートを重ねて又は巻き取って輸送する際に、隣接する光学シート間に配置する保護シートを排除することも可能となる。
さらに、光学シート40単体として正面方向輝度を向上させることができるため、面光源装置20に別途の光拡散シートを配置したとしても、面光源装置20の出光面における正面方向輝度を維持することができる。すなわち、面光源装置20の出光面における正面方向輝度を維持しながら、面光源装置20の出光面で測定される輝度の角度分布の変化をより滑らかにすること、輝度の面内部分をさらに均一化させること、光源25の像を目立たなくさせること、表示装置10の視野角を拡大させることが可能となる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
上述した実施の形態において、曲面状の出光面を有する第1単位形状要素50が、球体の一部分または回転楕円体の一部分に相当する形状を有している例を示したが、これに限られない。例えば、第1単位形状要素が、本体部45から突出する円錐台と、この円錐台上に配置された半球と、を組み合わせてなる形状を有するようにしてもよい。また、上述した実施の形態において、光学シート40の法線方向ndに沿った断面において、第1単位形状要素50が、円形状の一部分または楕円形状の一部分に相当する形状を有する例を示したが、これに限られない。例えば、第1単位形状要素が、光学シート40の法線方向ndに沿った断面において、本体部45から突出する台形と、この台形上に配置された半球と、を組み合わせてなる形状を有するようにしてもよい。さらに、上述した実施の形態において、第1単位形状要素50の底面(本体部45に接続する面)が円形状からなる例(図2参照、即ち光学シート40のシート面の法線ndを回転軸とする回転体となる例)を示したが、これに限られない。例えば、第1単位形状要素の底面が、楕円となる形状、或は三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形形状として形成されてもよい。さらに、上述した実施の形態において、光学シート40の第1単位形状要素50がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られない。例えば、高さ、断面形状および底面形状等の少なくとも一つが互いに異なる複数種類の第1単位形状要素50が、光学シート40に含まれていてもよい。例えば、本体部の一方の面46上に、第1単位形状要素として、互いに曲率半径が異なる2種類以上の半球面をランダムに配置する形態(勿論、該各々の第1単位形状要素の間には第2単位形状要素が配置される)が挙げられる。斯かる形態に於いては、全ての第1単位形状要素が同一である形態に較べて、光拡散機能がより向上する。
また、上述した実施の形態において、第1単位形状要素50が、本体部45の一方の面46上において、互いから60°傾斜した二つの方向に沿って、当該二つの方向間で互いに同一な一定のピッチで並べて配列されている例を示したが、これに限られず、その他の態様で、第1単位形状要素50が、本体部45の一方の面46上に規則的な配列で設けられていてもよい。例えば、第1単位形状要素50が、本体部45の一方の面46上において、直交する二方向に沿って、二方向間で互いに同一の一定ピッチで並べて配列されるように(正方格子状に配列されるように)してもよい。なお、第1単位形状要素50が本体部45の一方の面46上に規則的な配列で設けられる場合、例えば、第1単位形状要素50が本体部45の一方の面46上において異なる複数方向の各々に、方向間で互いに同一または異なる一定のピッチで、配列されている場合には、図8および図9に示すように、本体部45の一方の面46上において第1単位形状要素50が一定のピッチで配列されている複数の方向のうちの最短ピッチでの配列方向が、第2単位形状要素55の配列方向と交差していること、すなわち、第2単位形状要素55の配列方向に傾斜または直交していること、さらに言い換えると、第2単位形状要素55の配列方向と非平行となっていることが好ましい。なお、最短ピッチでの配列方向が複数ある場合には、最短ピッチでの配列方向のすべてが第2単位形状要素55の配列方向と交差していることが好ましい。さらに、第1単位形状要素50が本体部45の一方の面46上に規則的な配列で設けられる場合には、例えば、第1単位形状要素50が本体部45の一方の面46上において異なる複数方向の各々に一定ピッチで配列されている場合には、図9に示すように、本体部45の一方の面46上において第1単位形状要素50が一定のピッチで配列されている複数の方向が、すべて、第2単位形状要素55の配列方向と交差していること、すなわち、第2単位形状要素55の配列方向に傾斜または直交していること、さらに言い換えると、第2単位形状要素55の配列方向と非平行となっていることが好ましい。
このように第1単位形状要素50の配列方向を第2単位形状要素55の配列方向に対して位置決めすることによれば、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内におけるモアレ、即ち、両単位形状要素50、55相互の干渉によるモアレ(以下、単にモアレと呼称する)を目立たなくせることができる。また、このように第1単位形状要素50の配列方向を第2単位形状要素55の配列方向に対して位置決めすることは、充填率が10%を超える光学シートであって、例えば、第1単位形状要素50が積極的にフライアイレンズとして機能し得る程度に充填されている光学シートにおいても、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内におけるモアレを目立たなくせることに有効である。すなわち、シート状の本体部45と、本体部45の一方の面46上に配列された複数の第1単位形状要素50と、本体部45の一方の面46上に配列され、本体部45のシート面上の一方向と平行に延びる複数の第2単位形状要素55と、を備えた光学シートにおいても、以上に説明したように、第1単位形状要素50の配列方向を第2単位形状要素55の配列方向に対して位置決めすることが有効である。それどころか、充填率が10%以下の光学シート10では第1形状要素50の配列ピッチが比較的に長くなり、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内におけるモアレが目立ちにくい傾向もあることから、むしろ、以上のように第1単位形状要素50の配列方向を第2単位形状要素55の配列方向に対して位置決めすることは、充填率が10%を超える光学シートにおいて、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内におけるモアレを目立たなくせることにより有効であるとも言える。
なお、図8および図9に示す例においては、第1単位形状要素50は、図2に示す例と同様に、互いに対して60°ずつ傾斜した第1方向d1、第2方向d2および第3方向d3のそれぞれに同一の一定ピッチP1で配置されており、これにともなって、第1〜第3方向d1,d2,d3とは異なるその他の方向(例えば図9における第4方向d4)にも、第1〜第3方向d1,d2,d3における配列ピッチP1よりも長い一定ピッチ(例えば図8および図9におけるピッチP1a)で、配列されている。そして、図8および図9に示す例では、本体部45の一方の面46上において第1単位形状要素50が一定のピッチで配列されている複数の方向のうちの最短ピッチでの三つの配列方向d1〜d3のすべてが、第2単位形状要素55の配列方向に対して交差している(但し、図8の形態に於いては、第4方向d4のみ第2単位形状要素55の配列方向と一致する)。さらに図9に示す例では、本体部45の一方の面46上において第1単位形状要素50が一定のピッチで配列されている複数の方向(例えば第1〜第4方向d1〜d4)が、全て、第2単位形状要素55の配列方向に対して交差している。
また、上述した実施の形態によれば、第1単位形状要素50が本体部45の一方の面46上に規則的な配列で設けられている例を示したが、これに限られず、第1単位形状要素50が本体部45の一方の面46上に不規則的な配列で設けられていてもよい。第1単位形状要素50を本体部45の一方の面46上にランダムに配列する方法の一例として、次の方法を挙げることができる。
まず、本体部45の一方の面46上に規則的な配列で位置決めされた基準点52を、第1単位形状要素50の配置中心を決定する上での(仮想的な)基準位置として、決定する。例えば、本体部45の一方の面46上において異なる複数方向の各々に、方向間で互いに同一または異なる一定間隔で、基準点52が位置決めされるようにする。一例としての図10に示す例での基準点52は、上述の図8の光学シート40における第1単位形状要素50の各配置中心51と同一の位置に決定されており、図11に示す例での基準点52は、上述の図9の光学シート40における第1単位形状要素50の各配置中心51と同一の位置に決定されている。
次に、基準点52の位置、または、別の第1単位形状要素と接触しないように基準点52からずらされた位置に、第1単位形状要素50の一方の面46上における各配置位置51が決定される。具体的な手法としては、まず、各基準点52から、任意の方向へ、0以上所定の上限値(例えば、隣り合う二つの基準点の最小間隔)以下の長さだけずれた位置に、第1単位形状要素50の配置中心53(これも仮想的な位置)を仮決めする。この方法においてずれ量が0の場合には、基準点52の位置に、第1単位形状要素50の配置中心53が仮決めされることになる。そして、仮決めされた各配置中心53に第1単位形状要素50を配置しても、当該第1単位形状要素50と別の第1単位形状要素50とが接触乃至は交叉しない場合には、当該仮決めされた配置中心53を、第1単位形状要素50の配置中心51(現実的的な位置)として採用する。一方、仮決めされた各配置中心に第1単位形状要素50を配置すると、当該第1単位形状要素50と別の第1単位形状要素50とが接触乃至は交叉してしまう場合には、再度、対応する基準点52から、任意の方向へ、0以上所定の上限値(例えば、隣り合う二つの基準点の最小間隔)以下の長さだけずれた位置に、第1単位形状要素50の配置中心53を仮決めし、仮決めされた配置中心53に第1単位形状要素50を配置した場合に、第1単位形状要素50同士の接触が生じるかどうかを確認する。
なお、仮決めされる配置中心53までの基準点52からのずれ量の上限値が、隣り合う二つの基準点の最小間隔((二つの基準点の配列ピッチ)−(第1単位形状要素50の底面をなす形状の幅))以下である場合には、仮配置の基準とした基準点52同士が隣り合う第1単位形状要素50同士の接触を検討すればよい。一例として、図10および図11に示すように基準点52が配列されている場合、一つの基準点52を基準として仮配置される一つの第1単位形状要素50については、当該一つの基準点52の周囲にある六つの基準点52を基準として仮配置される六つの第1単位形状要素50との接触を検討すればよい。
以上の作業を繰り返して、図10および図11に示すように、本体部45の一方の面46上における第1単位形状要素50の各配置中心が決定され、第1単位形状要素50を本体部45の一方の面46上に不規則な配列で配置することができる。このようにして第1単位形状要素50を本体部45の一方の面46上にランダムに配列した場合には、第1単位形状要素の充填率が10%以下の光学シートに限られず、第1単位形状要素の充填率が10%を超えるような光学シートにおいても、第1単位形状要素50が本体部45上に偏って配置されることに起因した輝度の面内ばらつきの発生を防止しながら、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内におけるモアレを目立たなくせることができる。とりわけ、充填率が10%以下の光学シート10においては、基準点52から仮の配置位置53までのずれ量の上限値を大きく設定することが可能となり、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内における両単位形状要素50、55相互の干渉によるモアレをより効果的に目立たなくせることができる。
なお、以上のような方法での第1単位形状要素50の各配置中心の決定は、例えばコンピュータ等を用いて実施され得る。この際、コンピュータ等の負荷を減じるため、光学シート10を複数の区域に分割して、一つの区域での計算結果の一部または全部を他の区域で利用するようにしてもよい。また、このように複数の区域に分割して第1単位形状要素50の配置中心を決定する場合には、隣り合う二つの区域間での調整も必要に応じて実施しておくことが好ましい。例えば、一つの区域内において最も縁部に位置する基準点52を基準として仮決めされた配置中心53に置かれる第1単位形状要素50が、同一の区域内に位置する基準点52を基準として配置される第1単位形状要素50と接触するか否かを調べるだけでなく、隣り合う他の区域内に位置する基準点52を基準として配置される第1単位形状要素50と接触するか否かも調べるようにしてもよい。
ところで、上述した方法において基準点52を規則的な配列で位置決めする場合、例えば、本体部45の一方の面46上において異なる複数方向の各々に一定ピッチで基準点52を位置決めする場合には、図10および図11に示すように、本体部45の一方の面46上において基準点52が一定のピッチで配列されている複数の方向のうちの最短ピッチでの三つの配列方向d1〜d3が、第2単位形状要素55の配列方向と交差(傾斜または直交)していること、すなわち、第2単位形状要素55の配列方向と非平行となっていることが好ましい。さらに、上述した方法において基準点52を規則的な配列で位置決めする場合、例えば、本体部45の一方の面46上において異なる複数方向の各々に一定ピッチで基準点52を位置決めする場合には、図11に示すように、本体部45の一方の面46上において第1単位形状要素50が一定のピッチで配列されている複数の方向(例えば第1〜第4方向d1〜d4)が、すべて、第2単位形状要素55の配列方向と交差(傾斜または直交)していること、すなわち、第2単位形状要素55の配列方向と非平行となっていることが好ましい。
このように第1単位形状要素50を配置する上での基準となる基準点52の配列方向を第2単位形状要素55の配列方向に対して位置決めすることによれば、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内におけるモアレをさらに効果的に目立たなくせることができる。また、このように第1単位形状要素50を配置する上での基準となる基準点52の配列方向を第2単位形状要素55の配列方向に対して位置決めすることは、充填率が10%を超える光学シートであって、例えば、第1単位形状要素50が積極的にフライアイレンズとして機能し得る程度に充填されている光学シートにおいても、第1単位形状要素50の配列および第2単位形状要素55の配列に起因した光学シート40内におけるモアレを目立たなくせることに有効である。すなわち、シート状の本体部45と、本体部45の一方の面46上に配列された複数の第1単位形状要素50と、本体部45の一方の面46上に配列され、本体部45のシート面上の一方向と平行に延びる複数の第2単位形状要素55と、を備えた光学シートにおいても、以上に説明したように、第1単位形状要素50を配置する上での基準となる基準点52の配列方向を第2単位形状要素55の配列方向に対して位置決めすることが有効である。
なお、図10および図11に示す例においては、基準点52は、図2に示す第1単位形状要素50の配置中心51と同様に、互いに対して60°ずつ傾斜した第1方向d1、第2方向d2および第3方向d3のそれぞれに同一の一定ピッチP1で配置されており、同時に、第1〜第3方向d1,d2,d3とは異なるその他の方向(例えば図9における第4方向d4)にも、第1〜第3方向d1,d2,d3における配列ピッチP1よりも長い一定ピッチ(例えば図9におけるピッチP1a)で、配列されている。そして、図10および図11に示す例では、本体部45の一方の面46上において基準点52が一定のピッチで配列されている複数の方向のうちの最短ピッチでの配列方向d1〜d3が、第2単位形状要素55の配列方向に対して交差している。また、図11に示す例では、本体部45の一方の面46上において基準点52が一定のピッチで配列されている複数の方向が、すべて、第2単位形状要素55の配列方向に対して交差している。
さらに、上述した実施の形態において、第2単位形状要素55が、断面において、二等辺三角形形状を有する例を示したが、これに限られない。例えば、第2単位形状要素55の断面形状が、諸特性付与等の目的で、三角形形状に変調、変形を加えた形状であってもよい。具体例として、光学機能を適宜調整するために第2単位形状要素55の断面形状が、図12に示すように三角形のいずれか一以上の辺が折れ曲がった(屈曲した)形状、三角形のいずれか一以上の辺が湾曲した形状(所謂扇形)、三角形の頂点近傍を湾曲させて丸みを帯びさせた形状、三角形のいずれか一以上の辺に微小凹凸を付与した形状であってもよい。また、第2単位形状要素55の断面形状が、三角形形状以外の形状、例えば台形等の四角形、五角形、或は六角形等の種々の多角形形状を有するようにしてもよい。さらに、第2単位形状要素55が、断面において、円または楕円形状の一部分に相当する形状を有するようにしてもよい。
尚、此処で、三角柱とした第2単位形状要素55の主切断面である三角形の頂点(近傍)に丸み帯びさせる形態の目的は、該丸みにより光拡散の強化(其の分、正面方向輝度は落ちるが)、及び頂点の力学的強度の向上(頂部の欠損、傷付きの防止)の効果を発現せしめることにある。斯かる頂点の丸みによる効果を十分有効に発現する為には、該丸みの曲率半径は、2μm以上、より好ましくは、5μm以上とする。又、正面方向輝度の大きな低下を生じ無い為には、該丸みの曲率半径は12μm以下とする。
一方、三角柱固有の集光機能(正面方向輝度向上)を十分享受する場合には、該頂点は、実質上、丸みを帯び無い形態を採用する。斯かる実質上頂部が丸みを帯び無いとは、第2単位形状要素12の主切斷面である三角形の頂点の該曲率半径が2μm未満、より好ましくは、1μm以下である。但し、該頂点の曲率半径が光源光スペクトルの最低波長未満になれば、実質上、該丸みによる幾何光学的な効果は無視し得る。可視光線の最低波長は0.38μmである為、該頂点の曲率半径が0.1〜0.3μm程度になれば、該頂点の曲率半径は幾何学的に0μmになったとみなすことが可能であり、敢えてこれ以下に曲率半径を加工する必要は無い。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40の第2単位形状要素55がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られない。高さ及び断面形状等の少なくとも一つが互いに異なる複数種類の第2単位形状要素55が、光学シート40に含まれていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、隣り合う第2単位形状要素55が、隣接して隙間無く配置される例を示したが、これに限られず、隣り合う第2単位形状要素55が隙間を空けて配置され、第1単位形状要素50および第2単位形状要素55のいずれも配置されていない領域が、本体部45の一方の面46に設けられるようにしてもよい。
さらに、光学シート40が光を拡散させる拡散機能を有するようにしてもよい。例えば、本体部45が一方の面46と他方の面47との間に光拡散層(中間マット層)を有するようにしてもよい。このような光拡散層(中間マット層)は、基部と、基部中に分散された光拡散剤と、を有する層として構成され得る。光拡散剤を含む光拡散層は、例えば、光拡散剤が光反射機能を有することにより、あるいは、光拡散剤が基部とは異なる屈折率を有することにより、光拡散機能を付与され得る。また他の例として、本体部45の他方の面47が光拡散層(裏面マット層)によって形成されるようにしてもよい。このような光拡散層(裏面マット層)は、上述した中間マット層と同様の光拡散剤を有した層、あるいは、エンボス加工やヘアライン加工等によって形成された凹凸面を有した層として構成され得る。
さらに、光学シート40が帯電防止層を含むようにしてもよい。光学シート40に帯電防止層を加えることにより、本体部45全体に帯電防止機能を発現させることができる。この変形例によれば、埃等の異物付着を低減することができ、光学特性に与える悪影響を抑制することができる。また、上述した光拡散層が帯電防止機能を有するようにしてもよい。
さらに、光学シート40が、最入光側面(入光面41)をなす反射防止層を含むように形成されていてもよい。光学シート40の最入光側面が反射防止層によって形成されることにより、光の利用効率を向上させることができる。なお、反射防止層は、出光側に隣接する層(例えば本体部45)よりも屈折率が低い層(低屈折率層)の単層として形成されていてもよい。あるいは、反射防止層が、屈折率の低い層(低屈折率層)と、当該屈折率の低い層と比較して屈折率の高い層(高屈折率層)と、が交互に配置された複数の層であって、最入光側が屈折率の低い層(低屈折率層)となっている複数の層として、形成されていてもよい。斯かる低屈折率層としては例えば、弗化マグネシウム(MgF2)が挙げられ、又高屈折率層としては例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)が挙げられる。さらに、反射防止層が、特開昭50−70040号公報記載の如くの、光波長以下のピッチで配列された複数の入光側の突出する突起であって、各々が入光側に向けて次第に本体部45のシート面と平行な断面での断面積を小さくしていく、複数の突起を有したモスアイ(moth-eye)型の層として形成されていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、細長状の第2単位形状要素55の配列方向と、細長状の光源25の配列方向が、平行となっている例を示したが、これに限れない。細長状の第2単位形状要素55の配列方向と、細長状の光源25の配列方向が、交差していてもよく、一例として直交していてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20の光源25の発光部が、線状に延びる冷陰極線管からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、点状のLED(発光ダイオード)や面状のEL(電場発光体)等からなる発光部を用いることも可能である。また、上述した実施の形態において、光学シート40が直下型の面光源装置20に適用されている例を示したが、これに限られない。上述した光学シート40を、例えばエッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)の面光源装置に適用することも可能であり、このような場合においても、光学シート40は直下型の面光源装置20に適用された場合と略同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40が組み込まれた面光源装置20および透過型表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られない。偏光分離フィルム35や光拡散シート38を削除または別の部材と置き換えてもよいし、集光シート等の他のシート状部材を追加して面光源装置20および透過型表示装置10に組み込むようにしてもよい。
さらに、光学シート10の正面方向輝度向上のため、該電離放射線硬化性樹脂の硬化後の屈折率は高い方が好ましく、1.55以上、より好ましくは1.58以上の物を選択することができる。上記の如きアクリレート(或いはメタクリレート)系化合物から成る電離放射線硬化性樹脂の場合に於いて、硬化物の屈折率を1.55以上に高めるための手段としては、例えば、オルトフェノキシアクリレートを含む組成物とすることが挙げられる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<第1の調査>
まず、シミュレーションにより、上述した実施の形態と同様の構成を有した光学シートの出光側における正面方向輝度を調査した。シミュレーションでは、光学シートの充填率を変化させていき、この充填率の変化にともなった正面方向輝度の変化を調査した。
シミュレーション対象とした光学シートは、本体部と、本体部の一方の面上に設けられた、フライアイレンズを構成する、少なくとも三個以上の第1単位形状要素と、本体部の一方の面上に配列され、各々が本体部のシート面上の一方向と平行に延びる、複数の第2単位形状要素と、を備えるようにした。第1単位形状要素の一方の面からの高さが、第2単位形状要素の一方の面からの高さよりも高くなるようにした。また、本体部の一方の面の全面が、第1単位形状要素および第2単位形状要素のいずれかによって覆われているようにした。
図14には、シミュレーション結果のうちの代表的な一例が示されている。図14に示された結果は、単位形状要素の構成(形状や寸法)等の充填率以外の条件を同一にした複数の光学シートについて調査したものである。また、図14に示された結果は、光源等の光学シート以外の条件も同一にして調査した。なお、図14に示された結果は、第1単位形状要素および第2単位形状要素の断面形状や配列方法を上述した実施の形態と同一にした光学シートについての結果である。すなわち、このシミュレーションにおいて、第1単位形状要素は、球または回転楕円体の一部分を含む形状を有し、第2単位形状要素は、断面直角二等辺三角形形状を有するようにした。
シミュレーション結果として図14に示されたグラフは、片対数グラフであり、縦軸に正面方向の輝度比(%)をとり、対数軸である横軸に充填率(%)をとっている。輝度比は、充填率が0%であり、第2単位形状要素のみが本体部の一方の面上に配置された光学シート(いわゆるプリズムシート)であって、第1単位形状要素が設けられていない点のみにおいてシミュレーション対象となった他の光学シートと構成が異なる光学シートについて調査された正面方向輝度に対する比とした。
図14に示されているように、全体的な傾向として、充填率の減少にともない、輝度比が100%に収束するかのようにしだいに上昇していった。より正確には、充填率が低くない領域では、充填率が0%に近付くにつれてしだいに輝度比の値が100%に収束していく漸近線を画定するように、シミュレーション結果として得られたデータがグラフ上にプロットされた。なお、図14では、片対数グラフを用いて、低充填領域におけるデータを多く示すようにしているが、シミュレーション結果として得られたデータを通常のグラフ上にプロットした場合に、このような漸近線がより明瞭に確認される。
その一方で、充填率が低い領域では、その他の領域とは若干異なる異質な傾向を呈するようになった。具体的には、充填率が低い領域におけるシミュレーション結果では、充填率が低くなるにつれて、グラフ上において輝度比が前記漸近線からいったん離れていき、その後、この漸近線とは別の経路で輝度比が100%に近付いていくようになった。図14のグラフ上において、シミュレーション結果として得られた低充填領域での輝度比は、前記漸近線から輝度比が高くなる側にずれている。とりわけ、充填率が10%以下の領域においては、シミュレーション結果として得られた輝度比が、100%以上となり、第2単位形状要素のみが本体部の一方の面上に配置された光学シート(いわゆるプリズムシート)を用いた場合と同等以上の正面方向輝度が確保される結果となった。
<第2の調査>
次に、実施例1〜5に係る透過型表示装置、並びに、比較例1および比較例2に係る透過型表示装置を実際に作製し、作製された透過型表示装置について、正面方向輝度および耐擦傷性を評価した。
〔透過型表示装置の構成〕
実施例1〜5に係る透過型表示装置、並びに、比較例1および比較例2に係る透過型表示装置は、上述した実施の形態と同様に、面光源装置および液晶表示パネル(透過型表示部)を有するように構成した。図13に示すように、実施例1〜5に係る透過型表示装置並びに比較例1および比較例2に係る透過型表示装置において、面光源装置は、上述した実施の形態と同様に、細長状に延びる複数の冷陰極管からなる光源と、光源を取り囲む反射板と、光源の出光側に配置された光拡散シートと、光拡散シートの出光側に配置された光学シートと、光学シートの出光側に配置された偏光分離フィルムと、を有するようにした。実施例1〜5に係る透過型表示装置、並びに、比較例1および比較例2に係る透過型表示装置において、光学シート以外の面光源装置の部材は、互いに同一のものを使用した。また、実施例1〜5に係る透過型表示装置、並びに、比較例1および比較例2に係る透過型表示装置において、液晶表示パネルも互いに同一のものを使用した。
光拡散シートは、基部と、基部とは異なる屈折率を有し基部中に分散された光拡散性粒子と、から構成されていた。偏光分離フィルムは、米国3M社から入手可能な「DBEF」(登録商標)から構成されていた。なお、光学シート以外の、光拡散シート、偏光分離フィルム、光源、反射板および透過型表示部は、市販されている液晶表示装置に組み込まれていたものを使用した。
実施例1〜5に係る透過型表示装置および比較例2に係る透過型表示装置において、光学シートは、上述した実施の形態における光シートと同様に、シート状の本体部と、本体部の一方の面上に設けられたフライアイレンズを構成する第1単位形状要素と、本体部の一方の面上に配列され、各々が本体部のシート面上の一方向と平行に延びる、複数の第2単位形状要素と、を有するように構成した。一方、比較例1に係る透過型表示装置の光学シートは、第1単位形状要素が設けられていない点において、他の透過型表示装置の光学シートと異なるようにした。
実施例1〜5に係る透過型表示装置および比較例2に係る透過型表示装置の光学シートにおいて、第1単位形状要素の配列は、上述の実施の形態で説明した配列(図2参照)と同様にした。また、第1単位形状要素は半球状に構成した。実施例1〜5に係る透過型表示装置並びに比較例1および比較例2に係る透過型表示装置の光学シートにおいて、第2単位形状要素の配列方向と光源(冷陰極管)の配列方向とが平行となるようにした。また、各透過型表示装置の光学シートにおいて、第2単位形状要素は、その配列方向にそって隙間なく並べた。さらに、各透過型表示装置の光学シートにおいて、第2単位形状要素は、正面方向を中心として対称となるようにして配置された直角二等辺三角形状を断面形状として有すようにし、且つ、断面三角形形状の頂角に面取りを施さなかった。
各透過型表示装置における、光学シートの形状寸法および配列間隔は、表1に示すとおりとした。表1において、「屈折率」は、第1単位形状要素および第2単位形状要素をなす材料の屈折率である。表1中の「W1」は、本体部上において第1単位形状要素の底面をなす円の直径の値であり、図2および図4に示されたW1に対応する寸法である。表1中の「H1」および「H2」は、それぞれ、第1単位形状要素および第2単位形状要素の本体部からの法線方向に沿った高さであり、図4に示されたH1およびH2に対応する寸法である。表1中の「充填率」は、光学シートを法線方向ndに沿って出光面側から観察した場合における、本体部の一方の面のうちの第1単位形状要素によって被覆されている領域の割合である。表1中の「頂角R」は、第2単位形状要素の主切断面における断面形状をなす三角形の頂部に形成された丸味の半径の大きさである(製造条件等に起因して形成された面取りRに相当)。表1中の「P2」は、第2単位形状要素の配列方向に沿った第2単位形状要素の配列ピッチの大きさであり、図2および図4に示されたP2に対応する寸法である。
〔評価方法〕
(評価方法1)
実施例1〜5に係る透過型表示装置並びに比較例1および比較例2に係る透過型表示装置によって全面白色を表示した状態で、正面方向輝度(cd/m2)の測定を行った。輝度の測定には、トプコン製のBM−7を用いた。輝度測定結果を表1に示す。表1においては、比較例1の透過型表示装置についての測定値に対する、各透過型表示装置についての測定値の割合を百分率で表している。実施例1〜5に係る透過型表示装置の正面方向輝度は、比較例1に係る透過型表示装置の正面方向輝度以上となった。また、上述の図14に示されたシミュレーション結果における正面方向輝度と充填率との関係は、表1における実測された正面方向輝度と充填率との関係と、同様の傾向であることが確認された。
(評価方法2)
実施例1〜5に係る透過型表示装置並びに比較例1および比較例2に係る透過型表示装置の各光学シートに対し、次のような耐擦傷性試験を行った。まず、光学シートの単位形状要素が突出している側の面上にシート状の摩擦物を配置した。ここで、摩擦物は、透過型表示装置に組み込まれているシート状部材(大日本印刷株式会社製の下偏光フィルムH25)とし、このシート状部材のマット面が光学シートに接触するようにした。面積3.14mm
2である摩擦物の領域上に300gの重りを配置した。この状態から、重りを配置された摩擦物に対して光学シートを掃引し、光学シートを摩擦物に対して相対移動させた。光学シートの掃引は、2000m/minの速度で、第2単位形状要素の配列方向と平行な方向に行った。掃引は、5cmの区間を1.5往復分行った。重りおよび摩擦物を取り除いた後の光学シートに目視で視認可能な擦傷痕が形成されているかを確認した。表1に示すように、実施例1〜5に係る透過型表示装置および比較例2に係る透過型表示装置の光学シートには擦傷痕が形成されていなかったが、比較例1に係る透過型表示装置の光学シートには目立つ擦傷痕が形成されていた。
<第3の調査>
サンプル1〜15に係る光学シートを作製した。作製された光学シートについてモアレの発生について調査した。
〔光学シート〕
サンプル1〜15に係る光学シートは、上述した実施の形態における光学シートと同様に、シート状の本体部と、本体部の一方の面上に設けられた第1単位形状要素と、本体部の一方の面上に配列され、各々が本体部のシート面上の一方向と平行に延びる、複数の第2単位形状要素と、を有するように構成した。各光学シートにおいて、第1単位形状要素は半球状に構成した。各光学シートにおいて、第2単位形状要素は、正面方向を中心として対称となるようにして配置された直角二等辺三角形状を断面形状として有すようにし、且つ、断面三角形形状の頂角に面取りを施さなかった。また、各光学シートにおいて、第2単位形状要素は、その配列方向にそって隙間なく並べた。光学シートの形状寸法は、表2に示すとおりとした。
表2において、「W1」は、本体部上において第1単位形状要素の底面をなす円の直径の値であり、図2および図4に示されたW1に対応する寸法である。表2中の「H1」および「H2」は、それぞれ、第1単位形状要素および第2単位形状要素の本体部からの法線方向に沿った高さであり、図4に示されたH1およびH2に対応する寸法である。表2中の「充填率」は、光学シートを法線方向ndに沿って出光面側から観察した場合における、本体部の一方の面のうちの第1単位形状要素によって被覆されている領域の割合である。
サンプル1〜8に係る光学シート並びにサンプル11および12に係る光学シートでは、第1単位形状要素を本体部の出光側面上に不規則的な配列で配置した。第1単位形状要素の本体部の出光側面上における各配置位置は、図10および図11を参照して説明したように、本体部の出光側面上に規則的な配列で位置決めされた基準点の位置から、0以上で予め設定した上限値以下の長さだけ、本体部の出光側面に沿ったランダムに決定される方向へ、別の単位形状要素に接触しないようにずらした位置に決定した。なお、基準点は、図10および図11に示すように、本体部の出光側面上において互いに対して60°傾斜した方向の各々に、互いに同一の一定のピッチで配列されるように、位置決めした。
サンプル1〜8に係る光学シート並びにサンプル11および12に係る光学シートについて、表2における第1単位形状要素に関する「ピッチ」には、基準点の配列ピッチであって、図10および図11に示されたP1に対応する寸法を示している。表2における第1単位形状要素に関する「ずれ量」には、第1単位形状要素の配置位置を決定する際に、基準点からランダムな方向へずらされる量の上限の値を示している。また、サンプル1〜8に係る光学シート並びにサンプル11および12に係る光学シートについて、表2における「バイアス角」は、基準点が一定のピッチで配列されている方向のうちの最短のピッチで配列されている方向が、第2単位形状要素の長手方向に対してなす本体部の出光側面上における角度である。
なお、図10および図11に示された基準点の配列方法では最短のピッチでの基準点の配列方向は複数存在する。そして、複数の配列方向がそれぞれ第2単位形状要素の長手方向となす角度のうちの最小の角度のことをバイアス角度とし、具体的には図11における角度θxが表2における「バイアス角」に相当する。なお、図10に示された例では、最短のピッチでの基準点の配列方向の一つ(図10における第2方向d2)が、第2単位形状要素の長手方向と平行となっており、したがって、図10に示された例におけるバイアス角度は0°となる。
サンプル9に係る光学シートでは、上述の図9に示された配列で、第1単位形状要素を本体部の出光側面上に規則的な配列で配置した。サンプル9に係る光学シートについて、表2における第1単位形状要素に関する「ピッチ」は、第1単位形状要素の配列ピッチのことであり、図9に示されたP1に対応する寸法である。サンプル9に係る光学シートについて、表2における「バイアス角」は、第1単位形状要素が一定のピッチで配列されている方向のうちの最短のピッチで配列されている方向が、第2単位形状要素の長手方向に対してなす本体部の出光側面上における角度のことである。
なお、図9に示された第1単位形状要素の配列方法では最短のピッチでの第1単位形状要素の配列方向は複数存在する。そして、複数の配列方向がそれぞれ第2単位形状要素の長手方向となす角度のうちの最小の角度のことをバイアス角度としており、具体的には、「バイアス角」は図9に示されたθxの角度のことである。
サンプル10,13〜15に係る光学シートでは、上述の図8に示された配列で、第1単位形状要素を本体部の出光側面上に規則的な配列で配置した。サンプル10,13〜15に係る光学シートについて、表2における第1単位形状要素に関する「ピッチ」は、第1単位形状要素の配列ピッチのことであり、図8に示されたP1に対応する寸法である。サンプル10,13〜15に係る光学シートについては、第1単位形状要素の最短ピッチでの配列方向の一つ(図8における第2方向d2)が、第2単位形状要素の長手方向と平行になっているため、表2における「バイアス角」は0°とした。
〔評価方法〕
各サンプルに係る光学シートを評価テーブル(DOJIN KOKI MFG Co,Ltd「スチールライトテーブルKLT-L406LC-F」)の曇りガラス上に載置し、評価テーブルに内蔵された6本の40W蛍光灯によって曇りガラス越しに光学シートを照明した状態で、光学シートにモアレが目視で確認できるか否かについて調査した。評価結果を、表2に◎、○、△および×で示す。なお、いずれの方向から観察してもモアレが視認されなかったサンプルに対して、◎を付した。光学シートを凝視することによって限られた方向からモアレがうっすら観察されたサンプルに対して、○を付した。表示装置用の光学シートとしての製品検査としては合格レベルであるが、光学シートを凝視することによって、○を付したサンプルよりもモアレが目立って観察されたサンプルに対して、△を付した。注意深く観察することなくモアレの存在が確認されたサンプルに対して、×を付した。ただし、×を付したサンプルに係る光学シートにおいても、モアレの発生の程度は弱く、例えば、面光源装置用光拡散シートとの組み合わせで使用されることにより、モアレが目立たなくなるものもあった。
第1単位形状要素が規則的な配列で配置されている場合、バイアス角を0°以外に設定すると、すなわち、第1単位形状の配列方向を第2単位形状要素の長手方向に対して傾斜させると、モアレが目立たなくなる傾向があった。また、第1単位形状要素が不規則的な配列で配置されている場合、バイアス角を0°以外に設定すると、すなわち、第1単位形状要素の配置位置を決定する基準となる基準点の配列方向を第2単位形状要素の長手方向に対して傾斜させると、モアレが目立たなくなる傾向があった。さらに、第1単位形状要素が不規則的な配列で配置されている場合、ずれ量が大きくなると、モアレが目立たなくなる傾向があった。これらの傾向は、充填率が10%以下の光学シートだけでなく、充填率が10%を超える光学シートについても、現れた。
<第4の調査>
次に、面光源装置と、面光源装置上に配置された下偏光板と、からなる仮想の表示装置を実際に作製し、作製された仮想表示装置について、正面方向輝度を評価した。
〔表示装置の構成〕
仮想の表示装置に含まれた面光源装置は、上述した実施の形態と同様に、細長状に延びる複数の冷陰極管からなる光源と、光源の背後に配置された反射板と、光源の出光側に配置された光拡散シート(拡散板)と、光拡散シートの出光側に配置された光学シートと、を有するようにした。仮想表示装置の構成要素のうち、光学シート以外の面光源装置の部材および下偏光板は、実際に市販されている液晶表示装置(液晶テレビ)に組み込まれているものであって、各仮想表示装置間で互いに同一のものを使用した。
光学シートは、シート状の本体部と、本体部の一方の面上に互いに平行となるように設けられた直線状に延びる多数の単位プリズムと、を有するようにした。単位プリズムは、上述した実施の形態と同様に、主切断面における断面形状が、正面方向を中心として対称的に配置された直角二等辺三角形形状となるように、構成した。一つの光学シートに含まれる多数の単位プリズムは互いに同一に構成し、且つ、各光学シート間でも、単位プリズムは互いに同一に構成した。また、各光学シートにおいて、単位プリズムは、本体部上に、隙間なく配列されるようにした。
各光学シートは、上述した実施の形態において図5〜図7を参照しながら説明した製造方法と概ね同様にして、シート材上に単位プリズムを成型することによって作製した。本体部の一部分をなすシート材として、二軸延伸PETフィルムを用いた。そして、異なる仮想表示装置に組み込まれる光学シート間で、二軸延伸PETフィルムの延伸軸と単位プリズムの稜線の方向(単位プリズムの長手方向)との角度を種々変化させた。また、すべての仮想表示装置において、下偏光板は、各光学シートの単位プリズムの稜線の方向と下偏光板の透過軸(偏光軸)とが平行となるように、光学シートを含む面光源装置に対して位置決めした。すなわち、下偏光板の透過軸と光学シートの単位プリズムの長手方向とがなす角度は、各仮想表示装置の間で、0°で一致しており、その一方で、下偏光板の透過軸と光学シートの本体部に含まれる二軸延伸PETフィルムの延伸軸とがなす角度は、各仮想表示装置の間で、種々異なるようにした。
なお、下偏光板の透過軸および二軸延伸PETフィルムの延伸軸は、透過軸が特定された標準偏光板を用いて、予め特定しておいた。具体的には、下偏光板または二軸延伸PETフィルムに対して別途の標準偏光板を重ね合わせ、重なり合った部分が最も暗くなる状態まで、下偏光板または二軸延伸PETフィルムと別途の標準偏光板との向きをずらしていった。そして、最も暗くなる状態における別途の標準偏光板の透過軸と直交する方向を、下偏光板の透過軸および二軸延伸PETフィルムの延伸軸として特定した。
〔評価方法〕
各仮想表示装置の光源を点灯した状態で、下偏光板の出光面での正面方向輝度(cd/m2)の測定を行った。輝度の測定には、トプコン製のBM−7を用いた。輝度測定結果を図15に示す。また、各仮想表示装置の面光源装置の光学シートの出光側に偏光分離フィルム(米国3M社製の「DBEF」(登録商標))を配置して、同様に正面方向輝度を測定した結果を図16に示す。図15および図16において、縦軸は、測定された輝度の値を比で表しており、横軸は、正面方向から観察した場合における下偏光板の透過軸と光学シートに含まれる二軸延伸PETフィルムの延伸軸とによってなされる角度を表している。
二軸延伸PETフィルムの延伸軸と下偏光板の偏光軸とを傾斜させることにより、二軸延伸PETフィルムの延伸軸と下偏光板の偏光軸とが平行となっている場合(二軸延伸PETフィルムの延伸軸と下偏光板の偏光軸とによってなされる角度の絶対値が0°となる場合)と比較して、正面方向輝度を向上させることができた。とりわけ、二軸延伸PETフィルムの延伸軸と下偏光板の偏光軸とによってなされる角度の絶対値が0°より大きく50°以下となる場合には、二軸延伸PETフィルムの延伸軸と下偏光板の偏光軸とが平行となっている場合よりも高い正面方向輝度を確保することができた。さらに、二軸延伸PETフィルムの延伸軸と下偏光板の偏光軸とによってなされる角度の絶対値が20°以上45°以下となる場合には、優れた正面方向輝度を確保することができた。