以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図5は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は透過型表示装置および面光源装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は光学シートの断面図である。
図1に示された表示装置10は、透過型表示部15と、透過型表示部15の背面側に配置され透過型表示部15を背面側から面状に照らす面光源装置20と、を備えている。透過型表示部15は、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、表示領域Z1に画像を形成する装置である。
本実施の形態において、透過型表示部15は、液晶表示パネルから構成されている。つまり、透過型表示装置10は液晶表示装置として機能する。液晶表示パネル(透過型表示部)15は、一対の偏光板16,17と、一対の偏光板間に配置された液晶層18と、を有している。偏光板16,17は、入射した光を直交する二つの偏光成分に分解し、一方の方向の偏光成分を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向の偏光成分を吸収する機能を有している。
液晶層18には、一つの画素を形成する領域毎に、電界印加がなされ得るようになっている。そして、電界印加された液晶層18の配向は変化するようになる。入光側に配置された下偏光板16を透過した特定方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分は、一例として、電界印加されている液晶層18を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、電界印加されていない液晶層18を通過する際にその偏光方向を維持する。このため、液晶層18への電界印加の有無によって、下偏光板16を透過した特定方向の偏光成分が、下偏光板16の出光側に配置された上偏光板17をさらに透過するか、あるいは、上偏光板17で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。尚、本明細書に於いて、「上偏光板17」及び「下偏光板16」に於ける「上下」とは、液晶層18に対して出光側、即ち画像観察者側を「上」、入光側を「下」と呼稱する。必ずしも重力の方向(鉛直方向)に於ける上下とは対応し無い。
このようにして液晶パネル(透過型表示部)15では、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御し得るようになっている。なお、液晶パネル(液晶セル)の構成は、従来の液晶表示装置に組み込まれている装置(部材)と同様に構成することができ、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
ところで、この明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から透過型表示部15を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図2においては紙面の上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から透過型表示部15を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側(光源側、図2においては紙面の下側)のことである。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「対称」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
図1に示すように、面光源装置20は、光源25と、光源25からの光を受ける光学シート40と、を有している。光学シート40は、光源25からの光の進行方向を屈折及び/又は反射により偏向し、当該光の少なくとも一部分を透過させる。また、図1に示す例においては、光学シート40の入光側に、つまり、光学シート40と光源25との間に、光を拡散させる光拡散シート(下拡散板)30がさらに設けられている。
面光源装置20は、例えばエッジライト(サイドライト)型等の種々の形態で構成され得るが、本実施の形態においては、直下型のバックライトユニットとして構成されている。このため、光源25は光学シート40の入光側において光学シート40と対面するようにして配置されている。また、光源25は、反射板28によって背面側から覆われている。反射板28は、光学シート40の側に開口部(窓)を有する箱状に形成されている。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。一具体例として、「光学異方性フィルム」には、「光学異方性シート」や「光学異方性板」と呼ばれる部材も含まれる。
また、本明細書において「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、光学シート40のシート面、光拡散シート30のシート面、光学シート40の後述する本体部45のシート面、本体部45を構成する後述する光学異方性フィルム50のフィルム面、面光源装置20の発光面20a、および、透過型表示装置10の表示面10a等は、互いに平行となっている。
光源25は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状のLED(発光ダイオード)や白熱電球、面状のEL(電場発光体)等の種々の態様で構成され得る。本実施の形態においては、図1に示すように、光源25は、直線状に延びる複数の冷陰極管からなる発光部25aを有している。反射板28は、光源25からの光を透過型表示部15の側へ向けるための部材であり、反射板28の少なくとも内側表面は、例えば金属、誘電体多層膜等の高い反射率を有する材料からなっている。
光拡散シート30は、入射光を拡散させ、好ましくは入射光を等方拡散させ、光源25の構成に応じた輝度ムラ(発光部25aの配置位置に対応した輝度の強弱パターンで、管ムラとも呼ぶ)を緩和し、輝度の面内分布を均一化させて光源25の像を目立たなくさせるためのシート状部材である。このような光拡散シート30として、基部と、基部内に分散され光拡散機能を有した光拡散性粒子と、を含むシートが用いられ得る。一例として、反射率の高い材料から光拡散性粒子を構成することにより、あるいは、基部をなす材料とは異なる屈折率を有する材料から光拡散性粒子を構成することにより、光拡散性粒子に、光拡散機能を付与することができる。
次に、光学シート40について説明する。本実施の形態における光学シート40は、主に、入光側から入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させ正面方向の輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)を発揮するように、構成されている。なお、本明細書において「正面方向」とは、面光源装置20の発光面20aに対する法線の方向nd(図2参照)であり、また、表示装置10の表示面10aの法線方向等にも一致する。
図2に示すように、光学シート40は、シート状の本体部45と、本体部45の出光側面45a上に配列された多数の単位光学要素(単位形状要素とも呼称される)42と、を有している。図1に示す実施形態において、光学シート40は、面光源装置20の最も出光側に配置されており、光学シート40の単位光学要素42が透過型表示部15(とりわけ、図示する例では、透過型表示部15の下偏光板16)と隣り合っている。
本体部45は、図2に示すように、光学異方性フィルム50と、光学異方性フィルム50の出光側に積層された樹脂層47と、含んでいる。この樹脂層47は、後述する光学シート40の製造方法に起因して単位光学要素42と同一の樹脂材料によって形成される層であり、省略することも可能である。図2に示すように、本実施の形態において、本体部45は、単位光学要素42が形成された出光側面45aに対向する入光側面45bとして、光学シート40の入光側面40bをなす平滑な面を有している。この平滑な面は、光学異方性フィルム50によって形成されている。
光学異方性フィルム50は、当該フィルムのフィルム面と平行であるとともに互いに直交する二つの軸方向への屈折率が異なる値を呈する、面内位相差Reを少なくとも有したフィルムである。光学異方性フィルム50としては、例えば高分子フィルムを、一以上の特定の方向に力を加えて引き伸ばすことにより(延伸させることにより)得られるフィルムを用いることができる。このような延伸フィルムは、種々の分野、例えば包装用フィルム等に用いられており、一般的に、機械的性質および化学的性質が安定しているとともに安価に入手可能である。多くの延伸フィルムにおいて、高分子の配列が製造中における延伸加工に起因して規則性を有するようになり、当該フィルムのフィルム面とそれぞれ平行であり互いに直交する二つの配光軸の軸方向(図4に於ける進相軸Ab方向及びこれと直交する遅相軸方向)への屈折率が異なる値を呈するようになる(複屈折性)。またさらに、本実施形態で採用する二軸延伸された多くの延伸フィルムにおいては、図4に示すように、屈折率楕円体の長軸Acが厚さ方向(正面方向、図4におけるZ方向)から傾斜している。
本実施の形態において、一例として、光学異方性フィルム50が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなっている。そして、図3に示すように正面方向からの観察において、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reに関する配向軸、すなわち進相軸Abおよび遅相軸のいずれもが下偏光板16の透過軸Aaと交差するように、下偏光板16を含む透過型表示部15と、光学異方性フィルム50を含む光学シート40と、が互いに対して位置決めされている。とりわけ、本実施の形態によれば、正面方向からの観察において、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reに関する進相軸Abと下偏光板16の透過軸Aaとによってなされる角度のうちの劣角、即ち小さい方の角度θ1の大きさ(絶対値)が、10°以上50°以下となっている。本件発明者らが鋭意実験を重ねたところ、正面方向ndからの観察において面内位相差Reに関する配向軸を透過軸Aaに対して傾斜させることにより、表示装置10によって表示される映像の明るさを明るくすることができた。とりわけ、正面方向からの観察において面内位相差Reに関する進相軸Abと透過軸Aaとによってなされる角度のうちの小さい方の角度θ1の大きさ(絶対値)が10°以上50°以下となっていれば、面内位相差Reに関する配向軸のいずれかと透過軸Aaとが平行になっている場合と比較して、また、面内位相差を有さないフィルム(例えばTACフィルム)を用いた場合と比較しても、表示装置10によって表示される映像の明るさを目視で判別可能な程度に上昇させることができた。
さらに、本実施の形態では、図3に示すように正面方向からの観察において、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acと下偏光板16の透過軸Aaとによってなされる角度のうちの小さい方の角度θ2の大きさ(絶対値)が、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reに関する進相軸Abと下偏光板16の透過軸Aaとによってなされる角度のうちの小さい方の角度θ1の大きさ(絶対値)よりも、小さくなるように、下偏光板16を含む透過型表示部15と、光学異方性フィルム50を含む光学シート40と、が互いに対して位置決めされている。本件発明者らが鋭意実験を重ねたところ、正面方向からの観察において厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acと透過軸Aaとによってなされる角度θ2の大きさ(絶対値)が、正面方向からの観察において面内位相差Reに関する進相軸Abと透過軸Aaとによってなされる角度θ1の大きさ(絶対値)よりも、小さくなっていれば、前記角度θ2の大きさ(絶対値)が前記角度θ1の大きさ(絶対値)以上となっている場合と比較して、表示装置10によって表示される映像の明るさを目視で判別可能な程度に上昇させることができた。
また、光学異方性フィルム50の下偏光板16に対する位置決めによって、表示映像の明るさの上昇を図る上で、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reは、500nm以上5000nm以下であることが好ましい。光学異方性フィルム50の面内位相差Reがこの範囲にある場合、表示映像の明るさを効果的に上昇させることができるためである。
なお、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abとは、光学異方性フィルム50のフィルム面と平行な方向のうちの屈折率が最小となる方向に延びる軸である。一方、厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acとは、図4の如く、光学異方性フィルム50についての屈折率楕円体の長軸と平行な方向の軸線のことである。そして、正面方向からの観察において厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acと透過軸Aaとによってなされる角度θ2とは、厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acを、光学異方性フィルム50のフィルム面上に正射影で投影した軸Ac’と透過軸Aaとがなす角度に相当する。このような面内位相差Reに関する進相軸Abおよび厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acは、日本分光(株)製の「エリプソメーター M150」あるいは王子計測機器(株)製の自動複屈折計「KOBRA21ADH」を用いて特定され得る。なお、面内位相差Reに関する遅相軸とは、光学異方性フィルム50のフィルム面(XY平面)上において、面内位相差Reに関する進相軸Abと直交する方向に延びる軸である。面内位相差Reに関する遅相軸は、面内位相差Reに関する進相軸Abと同様の装置を用いて特定され得る。
また、面内位相差Re、面内位相差Reに関する進相軸Ab、厚さ方向位相差Rth、厚さ方向位相差Rthに関する主軸Ac、下偏光板16の透過軸Aa等は、測定に用いられる波長によって、異なってくる。上記説明では、一例として、可視光波長域の概ね中心に位置する波長であって、光の三原色の一つをなす緑色光の波長550nmにおいて、面内位相差Reに関する進相軸Ab、厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acおよび下偏光板16の透過軸Aaが所定の条件を満たす旨を説明したが、これに限られず、可視光の全波長域で上述した条件が満たされるようにしてもよい。
ところで、光学異方性フィルム50が二軸延伸によって形成されている場合、厳密には、光学異方性フィルム50内の各位置において、屈折率楕円体の形状は変化する。すなわち、光学シート40に含まれる光学異方性フィルム50の進相軸Abおよび主軸Acの透過軸Aaに対する上述した角度θ1,θ2も、光学異方性フィルム50内の各位置において変化する。ただし、一般的に、表示領域Z1の中央における明るさの変化が観察者によって感知されやすく、逆に、表示領域Z1の縁部における明るさの変化は観察者によって感知されにくい。つまり、上述した作用効果を期待する上では、表示領域Z1の中央における進相軸Ab,主軸Acの透過軸Aaに対する角度θ1,θ2を評価することが重要であり、本発明において、進相軸Ab,主軸Acは、表示領域の中央で特定することとする。例えば、表示領域が矩形状に形成されていれば、当該矩形状に関する一対の対角線の交点の位置において、進相軸Ab,主軸Acを特定することとする。
次に、単位光学要素(単位形状要素、単位プリズム、単位レンズ)42について説明する。図2に示すように、本実施の形態において、単位光学要素42は、本体部45の出光側面45a上に、隙間をあけることなく並べて配置されている。この結果、光学シート40の出光面40aは、単位光学要素42の出光面42aのみによって構成されている。
図1に示すように、多数の単位光学要素42は、本体部45の出光側面45a上のある配列方向に配列されている。各単位光学要素42は、その配列方向と交差する方向に、線状に延びている。とりわけ本実施の形態において、単位光学要素42は直線状に延びている。また、単位光学要素42の長手方向は、本体部45のシート面と平行な面上において、単位光学要素42の配列方向に直交している。図1から理解され得るように、正面方向からの観察において、光学シート40の単位光学要素42の配列方向は、光源25をなす細長状の発光部(冷陰極管)25aの配列方向と平行になっている。
図2では、光学シート40の本体部45のシート面の法線方向nd(図1参照)および単位光学要素42の配列方向の両方に平行な断面(「光学シートの主切断面」とも呼ぶ)において、光学シート40が示されている。本実施の形態においては、図2に示すように、光学シートの主切断面において、各単位光学要素42は、出光側に突出する三角形形状となっている。そして、正面方向輝度を集中的に向上させるという観点から、当該断面形状がとりわけ二等辺三角形形状であるとともに、等辺の間に位置する頂角が本体部45の出光側面45aから出光側に突出するように、各単位光学要素42が構成されている。
また、本実施の形態において、光学シートの主切断面における各単位光学要素42の断面形状は、出光面側に90°頂角が突出した直角二等辺三角形形状となっており、単位光学要素42の長手方向(直線状に延びている方向)に沿って一定となっている。また、光学シート40に含まれた複数の単位光学要素42は、全て同様に構成されている。
以上のような構成からなる単位光学要素42の具体例として、単位光学要素42の配列方向に沿った単位光学要素42の配列ピッチP(図2参照:本実施の形態においては、単位光学要素42の幅に相当する)を5μm〜200μmとすることができる。また、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部45の出光側面45aからの第2単位光学要素42の突出高さH(図2参照)を1μm〜150μmとすることができる。さらに、単位光学要素42の断面形状が二等辺三角形状である場合には、正面方向輝度を集中的に向上させる観点から、等辺の間に位置するとともに出光側に突出する頂角の角度θt(図2参照)が、80°以上120°以下となっていることが好ましく、90°であればさらに好ましい。
次に、以上のような構成からなる光学シート40の製造方法の一例について説明する。以下の例においては、図5に示すような成型装置60を用いた賦型によって、単位光学要素42を樹脂層47とともに光学異方性フィルム50上に形成することができる。単位光学要素42および樹脂層47の形成に用いられる材料としては、成型性が良好であるとともに入手が容易であり且つ優れた光透過性を有する樹脂(一例として、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物)が好適に用いられる。
まず、成型装置60について説明する。図5に示すように、成型装置60は、略円柱状の外輪郭を有した成型用型70を有している。成型用型70の円柱の外周面(側面)に該当する部分に円筒状の型面(凹凸面)72が形成されている。円柱状からなる成型用型70は、円柱の外周面の中心を通過する中心軸線CA、言い換えると、円柱の横断面の中心を通過する中心軸線CAを有している。型面72には、光学シート40の単位光学要素42に対応する凹部(図示せず)が形成されている。すなわち、成型用型70は、中心軸線CAを回転軸線として回転しながら(図5参照)、成型品としての光学シート40を成型するロール型として構成されている。
図5に示すように、成型装置60は、帯状に延びる光学異方性フィルム(成型用基材シート)50を供給する成型用基材供給装置62と、供給される光学異方性フィルム50と成型用型70の型面72との間に流動性を有した材料43を供給する材料供給装置64と、光学異方性フィルム50と成型用型70の凹凸面72との間の材料43を硬化させる硬化装置66と、をさらに有している。硬化装置66は、硬化対象となる材料43の硬化特性に応じて適宜構成され得る。
次に、このような成型装置60を用いて光学シート40を作製する方法について説明する。まず、帯状に延びる光学異方性フィルム50が、成型用基材供給装置62から供給される。本実施の形態において、供給される光学異方性フィルム50は、一例として、機械的特性(強度等)、化学的特性(安定性等)および光学的特性(透過性等)が良好であるとともに安価に入手可能な二軸延伸したポリエチレンテレフタレートからなっている。供給された光学異方性フィルム50は、図5に示すように、成型用型70へと送り込まれ、成型用型70と一対のローラ68とによって、型70の凹凸面72と対向するようにして保持されるようになる。
また、図5に示すように、光学異方性フィルム50の供給にともない、光学異方性フィルム50と成型用型70の型面72との間に、材料供給装置64から流動性を有する材料43が供給される。この材料43は、単位光学要素42と本体部45の樹脂層47とを形成するようになる。ここで、「流動性を有する」とは、成型用型70の型面72へ供給された材料43が、型面72の凹部(図示せず)内に入り込み得る程度の流動性を有することを意味する。
供給される材料43としては、成型に用いれ得る種々の既知な材料(例えば、上述した、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物から成る電離放射線硬化型樹脂)を用いることができる。以下に示す例においては、材料供給装置64から電離放射線硬化型樹脂が供給される例について説明する。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線(UV)を照射されることにより硬化するUV硬化型樹脂や、電子線(EB)を照射されることによって硬化するEB硬化型樹脂を選択することができる。
その後、成型用基材としての光学異方性フィルム50は、型60の型面72との間を電離放射線硬化型樹脂によって満たされた状態で、硬化装置66に対向する位置を通過する。このとき、硬化装置66からは、電離放射線硬化型樹脂43の硬化特性に応じた電離放射線が放射されており、電離放射線は光学異方性フィルム50を透過して電離放射線硬化型樹脂43に照射される。電離放射線硬化型樹脂43が紫外線硬化型樹脂の場合には、硬化装置66は、例えば、高圧水銀燈等の紫外線照射装置とする。この結果、型面72と光学異方性フィルム50との間に充填されている電離放射線硬化型樹脂43が硬化して、硬化した電離放射線硬化型樹脂からなる単位光学要素42および本体部45の樹脂層47が光学異方性フィルム50上に形成されるようになる。
その後、図5に示すように、光学異方性フィルム50が型70から離間し、これにともなって、型面72の凹部内に成型された単位光学要素42が、光学異方性フィルム50に接合された樹脂層47とともに図中右方のローラ68部にて型60から引き離される。このようにして、上述した光学シート40が得られる。
上述した製造方法において、光学異方性フィルム50は型70の表面72に接触していない。このため、上述してきたように、作製された光学シート40の本体部45は、光学異方性フィルム50と、光学異方性フィルム50と面接合してシート状に硬化した樹脂層47と、から構成されるようになる。このような方法によれば、成型された単位光学要素42が、離型時に、型70の凹部内に部分的に残留してしまうことを効果的に防止することができる。
以上のようにして、ロール型として構成された成型用型70がその中心軸線CAを中心として一回転している間に、流動性を有した材料43を型70内に供給する工程と、型70内に供給された材料43を型70内で硬化させる工程と、硬化した材料43を型70から抜く工程と、が型70の型面72上において順次実施されていき、光学シート40が得られる。
次に、以上のような表示装置10の作用について説明する。
図1に於いて、光源25で発光された光は、直接または反射板28で反射した後に観察者側に進む。観察者側に進んだ光は、光拡散シート30で等方拡散された後に、光学シート40に入射する。この入射光は、本体部45を透過して、光学シート40の単位光学要素42へ到達し、その後、単位光学要素42から出射する。
図1に於いて、単位光学要素42から出射する光L21,L22は、単位光学要素(単位プリズム)40の出光側面(プリズム面)42aにおいて屈折する。この屈折により、正面方向ndから傾斜した方向に進む光L21,L22の進行方向(出射方向)は、主として、光学シート40へ入射する直前における光の進行方向と比較して、光学シート40のシート面への法線方向ndに対する角度が小さくなるように、曲げられる(図2参照)。このような光学シート40の作用により、単位光学要素42は、透過光の進行方向を正面方向nd側に絞り込むことができる。すなわち、単位光学要素42は、透過光に対して集光作用を及ぼして、正面方向輝度が集中的に高くなるように輝度の角度分布に変化をもたらす。
なお、このような単位光学要素42の集光作用は、正面方向ndから大きく傾斜して進む光に対してより効果的に及ぼされる。このため、光学シート40よりも光源側に配置された光拡散シート30による拡散の程度にも依るが、光源25から大きな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25から離れた領域において、効果的に正面方向輝度を上昇させることができる(図4の光L21参照)。
その一方で、図2に示すように、正面方向ndに対する進行方向の傾斜角度が小さい光L23は、単位光学要素42の出光側面(レンズ面)において全反射を繰り返し、その進行方向を入光側(光源側)へ転換することもある。このため、光学シート40よりも光源側に配置された光拡散シート30による拡散の程度にも依るが、光源25から小さな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25の直上位置において、輝度が高くなり過ぎることを防止することができる。
このように、面光源装置20の発光面20aと平行な方向における光源25からの離間距離に依存して、透過光に対して単位レンズ40から主として及ぼされる光学的作用が相違する。これにより、光源25の発光部25aの配列に応じて発生する輝度ムラ(管ムラ)を効果的に低減し、光源の像(ライトイメージ)を目立たなくさせることもできる。すなわち、光学シート40は、透過光に対して光拡散作用も及ぼし、輝度の面内バラツキを均一化させるように機能する。
以上のようにして、光源25の構成に起因した輝度の面内バラツキを解消しながら、光学シート40から出射する光の出射角度を、正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込むことができる。
光学シート40を出光した光は、その後、透過型表示部15に入射する。透過型表示部15は、面光源装置20からの光を画素毎に選択的に透過させる。これにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。
ところで、透過型表示部15の下偏光板16は、その透過軸Aaと平行な方向の偏光成分を透過させ、透過軸Aaに直交する吸収軸と平行な方向の偏光成分を吸収する。すなわち、光学シート40から透過型表示部15に進んできた光のうちの一部分が、下偏光板16によって吸収されるようになる。また、上述したように、下偏光板16の入光側に配置された光学シート40の本体部45は、光学異方性フィルム50を用いて構成されている。この光学異方性フィルム50は、進相軸方向と遅相軸方向とで其の屈折率が相違する。其の為、光学異方性フィルム50を透過する光は、進相軸方向に電場が振動する偏光成分と遅相軸方向に電場が振動する偏光成分とで透過光に位相差を生じる。其の結果、進相軸方向の電場強度と遅相軸方向の電場強度が異なる直線偏光光を透過させると、透過の前後で偏光方向(電場の振動方向)が、当該フィルム50の持つ進相軸方向と遅相軸方向との屈折率差及び厚みに応じた角度だけ、回転する性質を持つ。
また、図1の如き表示装置では、光源25から透過型表示部15迄の光線経路に於いて、存在する各種部材、特に単位光学要素42によって、偏光する傾向を持つ。通常の光学設計により図1の如き表示装置を組み立てる場合、製造工程上の制約及び表示装置の求める諸性能、例えば、観察者に対する上下及び左右方向の視野角、画像コントラストを確保することの結果、単位光学要素42等で生じた偏光方向が透過型表示部15の下偏光板16の透過軸と相違する。例えば、図1の構成の表示装置に於いて、斯かる全体設計の結果、主に単位光学要素42の偏光作用によって、3角柱プリズムに代表される単位光学要素42の延びる方向と下偏光板16の透過軸が一致した配置となる。
そこで、上述したように、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abおよび遅相軸は、正面方向からの観察において、下偏光板16の透過軸Aaと交差している。より具体的には、光学異方性フィルム50についての面内位相差Reに関する進相軸Abは、正面方向からの観察において、下偏光板16の透過軸Aaに対し、10°以上50°以下の大きさの角度をなして傾斜している。このように光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abが下偏光板16の透過軸Aaに対して位置決めされている場合、単位光学要素42により生じた直線偏光成分の光に対して、光学異方性フィルム50が当該直線偏光成分の光の振動方向を回転させて、振動方向と下偏光板16の透過軸とのずれを縮小することも可能である。実際、斯かる構成によって透過型表示分15から出向する光(画像光)の輝度は上昇することが確認された。
但し、以上の如き機構のみだとした場合、単位光学要素42の出光側に光学異方性フィルム50が配置された構成の場合には、無理無く輝度向上效果が説明出来るが、逆に、図1の如く単位光学要素42の入光側に光学異方性フィルム50が配置された構成の場合には、輝度向上效果は奏し無いことが予想されそうでもある。
しかしながらが、本件発明者らが鋭意実験を繰り返したところ、このような予想とは眞逆に、図1の如く単位光学要素42の入光側に光学異方性フィルム50が配置された構成の場合に於いても、表示装置10によって映像を明るく表示することができることが確認された。このような現象が生じる理由の詳細は不明であるが、本発明で採用した光学異方性フィルム50に於いては、実は、当該フィルム50を透過する光透過率および透過光の偏光状態は、面内位相差Reに関する配向軸だけでなく、厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acにも大きな影響を受けているものと推定される。
本件発明者らは鋭意実験を繰り返した結果として、正面方向からの観察において、厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acが、面内位相差Reに関する進相軸Abよりも、透過軸Aaに接近している場合、つまり図3における角度θ2の大きさ(絶対値)が角度θ1の大きさ(絶対値)より小さい場合、角度θ2の大きさ(絶対値)が角度θ1の大きさ(絶対値)以上となっている場合と比較して、表示装置10によって映像を明るく表示することができることも確認した。このような確認結果と、光学異方性フィルム50を透過する光透過率および透過光の偏光状態が厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acにも大きな影響を受けるといった推定と、は合致するものである。
以上のような本実施の形態によれば、光源25からの発光量を増大させることなく、光源25からの光を有効利用することによって、表示装置10によって映像をより明るく表示することができる。すなわち、本実施の形態によれば、光源25からの光の利用効率を向上させて、面光源装置20および表示装置10の輝度特性を改善することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について適宜図面を参照しながら説明する。以下の変形例において参照する図6及び図7においては、上述した実施の形態と同一に構成され得る部分について、上述した実施の形態において対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を付している。
例えば、上述した実施の形態において、光学異方性フィルム50を含んで構成された本体部45上に、主切断面において直角二等辺三角形の断面形状を有する単位光学要素(単位プリズム)42が形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、単位光学要素42の主切断面における断面形状が、諸特性付与等の目的で、三角形形状に変調、変形を加えた形状であってもよい。具体例として、光学機能を適宜調整するために単位光学要素42の断面形状が、三角形のいずれか一以上の辺が折れ曲がった(屈曲した)形状、三角形のいずれか一以上の辺が湾曲した形状(所謂扇形)、三角形の頂点近傍を湾曲させて丸みを帯びさせた形状、三角形のいずれか一以上の辺に微小凹凸を付与した形状であってもよい。また、単位光学要素42の主切断面における断面形状が、三角形形状以外の形状、例えば台形等の四角形、五角形、或は六角形等の種々の多角形形状を有するようにしてもよい。さらに、図6に示すように、単位光学要素42の主切断面における断面形状が、円、楕円、抛物線、双曲線、又は正弦波曲線の一部分に相当する形状を有するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態において、光学異方性フィルム50を含んで構成された本体部45上に、線状に延びる多数の単位光学要素42が形成されている例を示したがこれに限られない。光学異方性フィルム50を含んで構成された本体部45上に、フライアイレンズ(マイクロレンズ)を構成する単位光学要素が配列されるようにしてもよい。一例として、回転楕円体の一部分からなる単位光学要素あるいは半球面等の球体の一部分からなる単位光学要素が、本体部45上に二次元配列されるようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学異方性フィルム50を含んで構成された本体部45上に設けられた単位形状要素42がすべて同一構成を有する例を示したが、これに限られず、光学異方性フィルム50を含んで構成された本体部45上に設けられた単位形状要素の二以上が、互いに異なる形状を有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、表示装置10内に組み込まれる光学異方性フィルムのうちの、下偏光板16に入光側から最も近接する位置に配置される光学異方性フィルム50が、光学シート40の本体部45に含まれる例を示したが、これに限られない。例えば、図6に示すように、表示装置10内に組み込まれる光学異方性フィルムのうちの、下偏光板16に入光側から最も近接する位置に配置される光学異方性フィルム51が、下偏光板16に入光側から隣接して又は別途の層を介して積層され(図6に示す態様)或いは下偏光板16の入光側に隙間を空けて対面して配置されてもよい。一具体例として、光学異方性フィルム51が、下偏光板16を擦傷等から保護するフィルム或いは下偏光板16を支持する基材として機能するようにしてもよい。
なお、本件発明者ら鋭意実験を繰り返して確認したところ、光学異方性フィルム50を含んで構成された本体部45上に形成された単位形状要素42に関する以上の変形例、並びに、光学異方性フィルム50の配置位置を変更する以上の変形例においても、上述したように、
・光学異方性フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reに関する配向軸を、下偏光板16の透過軸Aaに対して交差させることにより、好ましくは、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reに関する進相軸Abを、10°以上50°以下の大きさ(絶対値)の角度をなして下偏光板16の透過軸Aaに対して交差させることにより、及び/又は、
・正面方向からの観察において、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acと下偏光板16の透過軸Aaとによってなされる小さい方の角度θ2の大きさ(絶対値)が、光学異方性フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reに関する進相軸Abと下偏光板16の透過軸Aaとによってなされる小さい方の角度θ1の大きさ(絶対値)よりも、小さくなるように位置決めすることにより、
表示装置10によって表示される映像の明るさを向上させることができた。
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20の光源25の発光部25aが、線状に延びる冷陰極管からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、点状のLED(発光ダイオード)或いは白熱電球等や面状のEL(電場発光体)等からなる発光部を用いることも可能である。また、上述した実施の形態において、光学シート40が直下型の面光源装置20に適用されている例を示したが、これに限られない。上述した光学シート40を、例えばエッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)の面光源装置に適用することも可能であり、このような場合においても、光学シート40は直下型の面光源装置20に適用された場合と略同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40が組み込まれた面光源装置20および透過型表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られない。例えば、配置位置を適宜変更したり、他のシート状部材を追加したりしてもよい。なお、上述してきたように、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する配向軸(進相軸Abおよび遅相軸)並びに厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acを下偏光板16の透過軸Aaに対して上述してきた所定の関係に保つことにより、表示装置10によって表示される映像の明るさを明るくすることができる。したがって、このような作用効果をより顕著に享受することを可能とするため、互いに位置決めされた光学異方性フィルム50と下偏光板16との間に、光の偏光状態に影響を与え得るシートが介在されていないことが好ましい。
ところで、図7に示すように、面光源装置20に、反射型の偏光分離シート52が用いられることがある。反射型の偏光分離シート52は、その透過軸Adと平行な方向の偏光成分を透過させ、その透過軸Adに直交する反射軸と平行な方向の偏光成分を反射する。通常、正面方向からの観察において、反射型の偏光分離シート52の透過軸Adが下偏光板16の透過軸Aaと平行となるように、面光源装置20の反射型の偏光分離シート52が透過型表示部15の下偏光板16に対して位置決めされている。また、通常、反射型の偏光分離シート52と下偏光板16との間で光の偏光状態が乱されることを防止するため、反射型の偏光分離シート52は、面光源装置20の最も出光側に配置され、多くの場合、面光源装置20の発光面20aを形成する。
図7に示す表示装置10においては、光学シート40から透過型表示部15に進んできた光のうちの一部分が偏光分離シート52を透過し、他の光は偏光分離シート52で反射して、その進行方向を入光側へ向けて折り返す。偏光分離シート52で反射された光は、その後、反射や屈折等を繰り返すことによって偏光状態が変化し、再び、偏光分離シート52を透過し得るようになる。すなわち、反射型の偏光分離シート52は、下偏光板16で吸収されるべき光の再利用を図り、これにより、光源25からの光の利用効率を向上させることに寄与する。
このような反射型の偏光分離シート52としては、米国3M社から入手可能な「DBEF」(登録商標)を用いることができる。また、「DBEF」以外にも、韓国Shinwha Intertek社から入手可能な高輝度偏光シート「WRPS」(登録商標)や、あるいは、ワイヤーグリッド偏光子等を用いることもできる。さらには、例えばコレステリック規則性を有したコレステリック液晶層からなる旋光選択層と、旋光選択層の出光側に積層された四分の一波長層(λ/4位相差層)と、を有してなるフィルム部材を、反射型偏光分離シート52として用いることができる
本件発明者らは、偏光分離シート52を含んだ面光源装置20において、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する配向軸(進相軸Abおよび遅相軸)並びに厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acが偏光分離シート52の透過軸Adに対して及ぼす影響についても、調査した。その結果、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する配向軸(進相軸Abおよび遅相軸)並びに厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acを、下偏光16の透過軸Aaに対する上述した位置決めと同様にして、偏光分離シート52の透過軸Adに対して位置決めすることにより、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができた。
すなわち、正面方向からの観察において、光学異方性フィルム50についての面内位相差Reに関する配向軸が反射型偏光分離シート52の透過軸Adと交差するように、光学異方性フィルム50と反射型偏光分離シート52とが互いに対して位置決めされていることが好ましく、とりわけ、正面方向からの観察において、光学異方性フィルム50についての面内位相差Reに関する進相軸Abと反射型偏光分離シート52の透過軸Adとによってなされる角度のうちの小さい方の角度の大きさ(絶対値)が、10°以上50°以下となっていることが好ましい。
本件発明者らが鋭意実験を重ねて確認したところ、正面方向からの観察において面内位相差Reに関する配向軸を透過軸Adに対して傾斜させることにより、表示装置10によって表示される映像の明るさを明るくすることができた。とりわけ、正面方向からの観察において面内位相差Reに関する進相軸Abと透過軸Adとによってなされる角度のうちの小さい方の角度の大きさ(絶対値)が10°以上50°以下となっていれば、面内位相差Reに関する進相軸Abと透過軸Aaとが平行になっている場合と比較して、また、面内位相差を有さないフィルム(例えばTACフィルム)を用いた場合と比較しても、表示装置10によって表示される映像の明るさを目視で判別可能な程度に上昇させることができた。
また、光学異方性フィルム50についての厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acと反射型偏光分離シート52の透過軸Adとによってなされる角度のうちの小さい方の角度の大きさ(絶対値)が、光学異方性フィルム50についての面内位相差Reに関する進相軸Abと反射型偏光分離シート52の透過軸Adとによってなされる角度のうちの小さい方の角度の大きさ(絶対値)よりも、小さくなるように、光学異方性フィルム50と反射型偏光分離シート52とが互いに対して位置決めされていることが好ましい。本件発明者らが鋭意実験を重ねたところ、正面方向からの観察において厚さ方向位相差Rthに関する主軸Acと透過軸Adとによってなされる角度の大きさ(絶対値)が、正面方向からの観察において面内位相差Reに関する進相軸Abと透過軸Adとによってなされる角度の大きさ(絶対値)よりも、小さくなっている場合、その逆の場合と比較して、表示装置10によって表示される映像の明るさを目視で判別可能な程度に上昇させることができた。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
面光源装置20と、面光源装置20上に配置された下偏光板16と、からなる仮想の表示装置を実際に作製し、作製された仮想表示装置について、正面方向輝度を評価した。
〔表示装置〕
(調査1に係る表示装置)
仮想の表示装置に含まれた面光源装置は、図8に模式的に示すように上述した実施の形態と同様に、細長状に延びる複数の冷陰極管からなる発光部25aによって構成された光源25と、光源の背後に配置された反射板28と、光源25の出光側に配置された光拡散シート(下拡散板)30と、光拡散シートの出光側に配置された光学シート40と、を有するようにした。仮想表示装置の構成要素のうち、光学シート以外の面光源装置の部材および下偏光板16は、実際に市販されている液晶テレビ(シャープ株式会社製のLC−32GH3)に組み込まれて使用されているものであって、各仮想表示装置間で互いに同一のものを使用した。
光学シート40は、上述した実施の形態と同様に、シート状の本体部45と、本体部の出光側面45a上に互いに平行となるように設けられた直線状に延びる多数の単位プリズム42と、を有するようにした。単位プリズムは、上述した実施の形態と同様に、主切断面における断面形状が、正面方向を中心として対称的に配置された直角二等辺三角形形状となるように、構成した。一つの光学シートに含まれる多数の単位プリズムは互いに同一に構成し、且つ、各光学シート間でも、単位プリズムは互いに同一に構成した。また、各光学シートにおいて、単位プリズムは、本体部上に、64μmのピッチで隙間なく配列されるようにした。
各光学シートは、上述した実施の形態において図5を参照しながら説明した製造方法と概ね同様にして、光学異方性フィルム50上に単位プリズムを成型することによって作製した。本体部の一部分をなす光学異方性フィルム50として、二軸延伸PETフィルムを用いた。そして、異なる仮想表示装置に組み込まれる光学シート間で、二軸延伸PETフィルムの面内位相差Reに関する進相軸Abと単位プリズム42の稜線の方向(単位プリズムの長手方向)との角度を種々変化させた。また、すべての仮想表示装置において、下偏光板16は、各光学シートの単位プリズムの稜線の方向と下偏光板の透過軸Aaとが平行となるように、光学シートを含む面光源装置に対して位置決めした。すなわち、正面方向からの観察において下偏光板の透過軸Aaと光学シートの単位プリズムの長手方向とがなす角度は、各仮想表示装置の間で、0°で一致しており、その一方で、正面方向からの観察において下偏光板16の透過軸Aaと光学シート40の本体部45に含まれる二軸延伸PETフィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abとがなす角度θ1は、各仮想表示装置の間で、種々異なるようにした。
なお、下偏光板の透過軸Aaおよび光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abは、王子計測機器(株)製の自動複屈折計「KOBRA21ADH」を用いて特定した。各透過軸を特定する際の波長は、550nmとした。
(調査2に係る表示装置)
図9に模式的に示すように調査1に係る表示装置の光学シート40と下偏光板16との間に、反射型の偏光分離シート52を配置して、調査2に係る表示装置を作製した。すなわち、調査2に係る表示装置は、偏光分離シート52が設けられた点において調査1に係る表示装置と異なり、他において調査1に係る表示装置と同一とした。なお、反射型の偏光分離シート52は、その透過軸Adが正面方向からの観察において下偏光板16の透過軸Aaと平行となるように、位置決めした。なお、反射型の偏光分離シート52の透過軸Adは、王子計測機器(株)製の自動複屈折計「KOBRA21ADH」を用い、波長550nmの光で特定した。また、反射型の偏光分離シート52としては、米国3M社製の「DBEF」(登録商標)を用いた。
〔評価方法〕
各仮想表示装置の光源を点灯した状態で、下偏光板の出光面での正面方向輝度(cd/m2)の測定を行った。輝度の測定には、トプコン製のBM−7を用いた。調査1および調査2に係る仮想表示装置についての輝度測定結果を、それぞれ、図8および図9に示す。図8および図9において、縦軸は、測定された輝度の値を比で表しており、横軸は、正面方向から観察した場合における下偏光板の透過軸Aaと光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abとによってなされる角度のうちの小さい方の角度θ1を表している。
光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する配向軸(進相軸Abおよび遅相軸)を、下偏光板16の透過軸Aa(調査2に係る表示装置については、下偏光板16の透過軸Aaおよび反射型偏光分離シート52の透過軸Ad)に対して傾斜させることにより、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する配向軸(進相軸Abおよび遅相軸)と下偏光板16の透過軸Aaとが平行となっている場合(光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abと下偏光板16の透過軸Aaとによってなされる角度の絶対値が0°および90°となる場合であり、図8及び図9の横軸の中央部および両端部)と比較して、正面方向輝度を向上させることができた。とりわけ、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する進相軸Abと下偏光板16の透過軸Aaとによってなされる角度のうちの小さい方の角度θ1の絶対値(大きさ)が5°以上70°以下となる場合、特に、10°以上50°以下となる場合には、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する配向軸と下偏光板16の透過軸Aaとが平行となっている場合と比較して、目視で、明るさの上昇を確認することができた。
なお、比較調査として、調査1に係る表示装置の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる光学異方性フィルムを同一厚さの二軸延伸トリアセチルセルロースフィルム(以下において、二軸延伸TACフィルムと呼ぶ)に置き換えた比較例に係る表示装置について、正面方向輝度を調査した。比較例に係る表示装置では、二軸延伸TACフィルムを下偏光板に対して回転させることによって正面方向輝度が変化した。ただし、二軸延伸TACフィルムを用いた比較例に係る表示装置についての正面方向輝度の変化量は、二軸延伸PETを用いた調査委1に係る表示装置と比較して、ごく僅かであった。そして、二軸延伸PETからなる光学異方性フィルム50を用いた実施例の表示装置において、光学異方性フィルム50についての面内位相差Reに関する進相軸Abが下偏光板16の透過軸Aaに対して、5°以上70°以下特に、10°以上50°以下の大きさの角度をなした場合、比較例に係る表示装置で表示される映像の明るさと比較して、目視で判断し得る程度に、映像の明るさを上昇させることができた。
また一般に、P波(P偏光とも云う)はS波(S偏光とも云う)と比較して高い透過率を呈するようになり、逆に、S波はP波と比較して高い反射率を呈するようになる。とりわけ、主切断面内に於いて、単位光学要素42の出光側面42aでの屈折により正面方向へ偏向し得る角度から単位光学要素の出光側面に入射して光学シートを出射する光については、該主切斷面内方向に電場が振動するP波の透過率が、該単位光学要素の稜線方向に電場が振動するS波の透過率を、大きく上回るようになる。つまり、線状の単位光学要素42を配列してなる光学シート40は、線状単位光学要素の配列方向(稜線と直交)方向に電場が振動するP波を選択的に透過させるといった偏光(分離)機能を有している。但し、現実には、単位光学要素内に於いて稜線方向に進行して単位光学要素の斜面から出向する光も多少存在し、これら光については該稜線方向に電場が振動する光がP波として出光し、これが混在する為、線状の単位光学要素から出向する光の偏光方向(電場の振動方向)は該配列方向と完全に平行では無くなるが、平行に近い方向になる。其の為光学シートのこの偏光(分離)機能を利用し、而かも下偏光板に入射する光を最大限有效に透過、利用せしめる観点から、光学シート40を出た光の偏光方向は、正面方向からの観察において、下偏光板の透過軸Aaの方向に対して0°から45°未満の大きさの角度をなして交差していることが好ましく、下偏光板の透過軸Aaの方向と平行になっていることがとりわけ好ましいとされている。一方、面内位相差Reを持つ光学異方性フィルム50を透過する光は、面内位相差に関する配向軸に対して偏光方向を回転させる作用を有する。そこで、実施例では、光学シート40と光学異方性フィルム50とを、光学異方性フィルム50の面内位相差に関する配向軸と下偏光板の透過軸Aaとを特定の角度関係で配置する。これにより、本來であれば、下偏光板16の透過軸Aaと該下偏光板16に入射する単位光学要素42の出射光の偏光方向とが交叉していたものを、光学異方性フィルム50の偏光方向回転作用によって矯正して、下偏光板への入射光の偏光方向が下偏光板16の透過軸Aaと一致(乃至は少なくとも交叉角度を低減化)する。これを以って、該下偏光板16で吸收され損失となる光成分を最小化出來る。
その一方で、調査1および調査2に係る表示装置(図8および図9の模式図参照)では、透過型液晶表示装置の設計上の諸事情から、単位光学要素の配列方向が、正面方向からの観察において、下偏光板の透過軸Aaの方向に対して直交している。此の形態は、現実の液晶表示装置では良く採用される形態であるが、下偏光板16の透過軸Aaと直交する偏光方向の為に該下偏光板16で吸收され損失となる光成分が生じる。其の為、光学シート自体の偏光分離機能を有効利用する観点からは最も不利な配置といえる。にもかかわらず、上述したように、光学異方性フィルム50の面内位相差Reに関する配向軸(とりわけ進相軸Ab)、或いは更に厚み方向の屈折率楕円体の主軸Acを下偏光板16の透過軸Aaに所定の関係で位置決めすることにより、目視で判断し得る程度に表示映像の明るさを向上させることができ、正面方向輝度では4〜6%程度も上昇させることができた。このような光学異方性フィルムの面内位相差Reに関する配向軸(とりわけ進相軸Ab)、或いは更に厚み方向の屈折率楕円体の主軸Acの位置決めに起因した正面方向輝度の上昇量は、光学シートの単位光学要素による偏光分離機能に起因した正面方向輝度の上昇量よりも大きかった。