以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図8は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は透過型表示装置および面光源装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は光学シートの断面図である。
図1に示された表示装置10は、透過型表示部15と、透過型表示部15の背面側に配置され透過型表示部15を背面側から面状に照らす面光源装置20と、を備えている。透過型表示部15は、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、表示領域Z1に画像を形成する装置である。
本実施の形態において、透過型表示部15は、液晶表示パネルから構成されている。つまり、透過型表示装置10は液晶表示装置として機能する。液晶表示パネル(透過型表示部)15は、一対の偏光板16,17と、一対の偏光板間に配置された液晶層18と、を有している。偏光板16,17は、入射した光を直交する二つの偏光成分に分解し、一方の方向の偏光成分を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向の偏光成分を吸収する機能を有している。
液晶層18には、一つの画素を形成する領域毎に、電界印加がなされ得るようになっている。そして、電界印加された液晶層18の配向は変化するようになる。入光側に配置された下偏光板16を透過した特定方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分は、一例として、電界印加されている液晶層18を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、電界印加されていない液晶層18を通過する際にその偏光方向を維持する。このため、液晶層18への電界印加の有無によって、下偏光板16を透過した特定方向の偏光成分が、下偏光板16の出光側に配置された上偏光板17をさらに透過するか、あるいは、上偏光板17で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。尚、本明細書に於いて、「上偏光板17」及び「下偏光板16」に於ける「上下」とは、液晶層18に対して出光側、即ち画像観察者側を「上」、入光側を「下」と呼稱し、必ずしも重力の方向(鉛直方向)に於ける上下とは対応し無い。
このようにして液晶パネル(透過型表示部)15では、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御し得るようになっている。なお、液晶パネル(液晶セル)の構成は、従来の液晶表示装置に組み込まれている装置(部材)と同様に構成することができ、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
ところで、この明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から透過型表示部15を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図2においては紙面の上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から透過型表示部15を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側(光源側、図2においては紙面の下側)のことである。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「対称」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
図1に示すように、面光源装置20は、光源25と、光源25からの光を受ける光学シート40と、を有している。光学シート40は、光源25からの光の進行方向を屈折及び/又は反射により偏向する。また、図1に示す例においては、光学シート40の入光側に、つまり、光学シート40と光源25との間に、光を拡散させる光拡散シート(下拡散板)30がさらに設けられている。
面光源装置20は、例えばエッジライト(サイドライト)型等の種々の形態で構成され得るが、本実施の形態においては、直下型のバックライトユニットとして構成されている。このため、光源25は光学シート40の入光側において光学シート40と対面するようにして配置されている。また、光源25は、反射板28によって背面側から覆われている。反射板28は、光学シート40の側に開口部(窓)を有する箱状に形成されている。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。一具体例として、「基材フィルム」には、「基材シート」や「基板」と呼ばれる部材も含まれる。
また、本明細書において「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、光学シート40のシート面、光拡散シート30のシート面、光学シート40の後述する本体部45のシート面、本体部45を構成する後述する基材フィルム50のフィルム面、面光源装置20の発光面20a、および、透過型表示装置10の表示面10a等は、互いに平行となっている。
光源25は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状のLED(発光ダイオード)や白熱電球、面状のEL(電場発光体)等の種々の態様で構成され得る。本実施の形態においては、図1に示すように、光源25は、点状のLEDからなる発光部25aを有している。発光部25aは、光学シート40のシート面と平行な仮想面上に二次元配列されている。より具体的には、多数の発光部25は、当該仮想面上の異なる二つの方向に沿って、典型的には当該仮想面上に位置する直交する二方向に沿って、配列されている。反射板28は、光源25からの光を透過型表示部15の側へ向けるための部材であり、反射板28の少なくとも内側表面は、例えば金属、誘電体多層膜等の高い反射率を有する材料からなっている。
光拡散シート30は、入射光を拡散させ、好ましくは入射光を等方拡散させ、光源25の構成に応じた輝度ムラ(発光部25aの配置位置に対応した輝度の強弱パターンで、管ムラとも呼ぶ)を緩和し、輝度の面内分布を均一化させて光源25の像を目立たなくさせるためのシート状部材である。このような光拡散シート30として、基部と、基部内に分散され光拡散機能を有した光拡散性粒子と、を含むシートが用いられ得る。一例として、反射率の高い材料から光拡散性粒子を構成することにより、あるいは、基部をなす材料とは異なる屈折率を有する材料から光拡散性粒子を構成することにより、光拡散性粒子に、光拡散機能を付与することができる。
次に、光学シート40について説明する。本実施の形態における光学シート40は、主に、入光側から入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させ正面方向の輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)を発揮するように、構成されている。なお、本明細書において「正面方向」とは、面光源装置20の発光面20aに対する法線の方向nd(図2参照)であり、表示装置10の表示面10aの法線方向、光学シート40のシート面への法線方向、本体部45のシート面への法線方向、基材フィルム50のフィルム面への法線方向等にも一致する。
図2に示すように、光学シート40は、シート状の本体部45と、本体部45の出光側面45a上に配列された多数の単位光学要素(単位形状要素とも呼称される)42と、を有している。図1に示す実施形態において、光学シート40は、面光源装置20の最も出光側に配置されており、光学シート40の単位光学要素42が透過型表示部15(とりわけ、図示する例では、透過型表示部15の下偏光板16)と隣り合っている。
このうちまず、単位光学要素42について説明する。なお本明細書において、「単位光学要素」は、「単位形状要素」、「(単位)プリズム」、「(単位)レンズ」といった用語と同様に、入射光に対して種々の光学的作用(例えば、反射や屈折)を及ぼし得る形状を有した要素(光学要素)を意味するものである。そして、「単位光学要素」、「単位形状要素」、「(単位)プリズム」および「(単位)レンズ」等の用語は、光学要素として、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
図1および図2に示すように、本実施の形態において、単位光学要素42は、本体部45の出光側面45a上に、隙間をあけることなく並べて配置されている。この結果、光学シート40の出光側面40aは、単位光学要素42の出光側面42aのみによって構成されている。
図1に示すように、多数の単位光学要素42は、本体部45の出光側面45a上のある配列方向に配列されている。各単位光学要素42は、その配列方向と交差する方向に、線状に延びている。とりわけ本実施の形態において、単位光学要素42は直線状に延びている。また、単位光学要素42の長手方向は、本体部45のシート面と平行な面上において、単位光学要素42の配列方向に直交している。図1から理解され得るように、正面方向からの観察において、光学シート40の単位光学要素42の配列方向は、光源25をなす点状の発光部(LED)25aの配列方向のうちの一つと平行になっている。
図2では、光学シート40の本体部45のシート面の法線方向nd(図1参照)および単位光学要素42の配列方向の両方に平行な断面(「光学シートの主切断面」とも呼ぶ)において、光学シート40が示されている。本実施の形態においては、図2に示すように、光学シートの主切断面において、各単位光学要素42は、出光側に突出する三角形形状となっている。そして、正面方向輝度を集中的に向上させるという観点から、当該断面形状がとりわけ二等辺三角形形状であるとともに、等辺の間に位置する頂角が本体部45の出光側面45aから出光側に突出するように、各単位光学要素42が構成されている。とりわけ、本実施の形態において、光学シートの主切断面における各単位光学要素42の断面形状は、出光側面側に90°頂角が突出した直角二等辺三角形形状となっており、単位光学要素42の長手方向(直線状に延びている方向)に沿って一定となっている。また、光学シート40に含まれた複数の単位光学要素42は、全て同様に構成されている。
次に、単位光学要素42を支持している本体部45について説明する。本体部45は、図2に示すように、基材フィルム50と、基材フィルム50の出光側に積層された樹脂層(ランド部)47と、を含んでいる。この樹脂層47は、後述する光学シート40の製造方法に起因して単位光学要素42と同一の樹脂材料によって形成される層であり、省略することも可能である。図2に示すように、本実施の形態において、本体部45は、単位光学要素42が形成された出光側面45aに対向する入光側面45bとして、光学シート40の入光側面40bをなす平滑な面を有している。
基材フィルム50は、光学異方性を有したフィルムである。光学異方性を有した基材フィルム50としては、例えば高分子フィルムを、一以上の特定の方向に力を加えて引き伸ばすことにより(延伸させることにより)得られるフィルム、典型的には二軸延伸ポリエチレンテレフタレートを用いることができる。延伸フィルムは、種々の分野、例えば包装用フィルム等に用いられており、一般的に、機械的性質および化学的性質が安定しているとともに安価に入手可能である。延伸フィルムにおいては、高分子の配列が製造中における延伸加工に起因して規則性を有するようになり、当該フィルムのフィルム面とそれぞれ平行であり互いに直交する二つの配光軸の軸方向への屈折率が異なる値を呈する、すなわち、複屈折性を呈するようになる。
ところで、本体部45に含まれるようになる基材フィルム50については、当該基材フィルム50の平行配置消光位軸Aaと当該基材フィルム50の傾斜配置消光位軸Abとが、非平行となっている、言い換えると、交差している。本件発明者らが、鋭意研究を重ねたところ、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abとが非平行となっている基材フィルム50は、樹脂製フィルムの押し出し時厚みや延伸の程度等を調節することによって、作製され得ることを知見した。
なおここで、基材フィルム50の平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abとは、対象となる基材フィルムの光学異方性を示す指標であり、それぞれ次のようにして特定される。まず、平行配置消光位軸Aaについて説明し、その後、傾斜配置消光位軸Abについて説明する。
まず、図4に示すように、平行配置消光位軸Aaを特定すべき基材フィルム50を、クロスニコル状態で配設された一対の偏光板(入光側および出光側の偏光板)100a,100bの間に配置する。ここで、一対の偏光板100a,100bは、上述した液晶表示パネル15の偏光板16,17とは別物であり、専ら平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abの特定に用いられる試験用の光学素子である。また、クロスニコル状態とは、図4に示すように、板面が互いに平行となり且つ一対の偏光板100a,100bの透過軸Ai、Aoが互いに直交するようにして、一対の偏光板100a,100bを配置した状態のことである。次に、基材フィルム50を偏光板100a,100bと平行に保ちながら、当該基板フィルム50を、偏光板40の板面への法線方向ndaと平行な方向を中心として、回転させていく。このとき、一対の偏光板のうちの入光側の偏光板100aの側から、偏光板100a板面への法線方向ndaに進む非偏光の光を、基材フィルム50が間に配置された一対の偏光板100a,100bに投射し、出光側の偏光板100b上における当該偏光板100bの板面への法線方向ndaへの輝度を調査する。出光側偏光板100b上での輝度の変化から、消光位となる状態、すなわち、基材フィルム50の一方向への回転にともなって輝度の低下がピークとなる状態を探し出す。そして、図5に示すように、偏光板100aの板面への法線方向と平行な方向から消光位状態を観察した際に、入光側偏光板100aの透過軸Aiと平行になる基材フィルム50上における方向を、当該基材フィルム50の平行配置消光位軸Aaとして特定する。
傾斜配置消光位軸Abは、一対の偏光板100a,100bの間に、対象となる基材フィルム50を40°傾斜して配置する点において、平行配置消光位軸Aaと異なっている。すなわち、まず、図6に示すように、クロスニコル状態で配設された一対の偏光板(入光側および出光側の偏光板)100a,100bの間に、一対の偏光板100a,100bの板面に対して基材フィルム50のフィルム面が40°傾斜するようにして、当該基材フィルム50を配置する。次に、図6に示すように、偏光板100a,100bに対して40°傾斜した状態を維持しながら、基材フィルム50を、偏光板40の板面への法線方向ndaと平行な方向を中心として回転させていき、消光位となる状態を探し出す。そして、図7に示すように、偏光板100aの板面への法線方向ndaと平行な方向から消光位状態を観察した際に、入光側偏光板100aの透過軸Aiと平行になる基材フィルム50上における方向を、当該基材フィルム50の傾斜配置消光位軸Abとして特定する。
なお、図14に示されたグラフは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの一例を、クロスニコル状態の偏光板100a,100bの間にて、偏光板100a,100bの板面への法線方向ndaと平行な方向を中心として180°回転させた場合における、出光側偏光板100b上での輝度の変化を示している。図14のグラフでは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを製造する際の機械方向(すなわち、ポリエチレンテレフタレートフィルムの押し出し方向)に対する角度が横軸に示されている。図14に示された例では、基材フィルム50を偏光板100a,100bと平行に配置した平行配置状態では、当該基材フィルム50の製造時における機械方向に相当する方向が入光側偏光板100aの透過軸と平行になる位置から24°回転したときに最初の消光位を示し、さらに90°回転させる度に消光位を示した。一方、基材フィルム50を偏光板100a,100bに対して40°傾斜させた傾斜配置状態では、当該基材フィルム50の製造時における機械方向に相当する方向が入光側偏光板100aの透過軸と平行になる位置から15°回転したときに最初の消光位を示し、さらに90°回転させる度に消光位を示した。
なお、図14に示された輝度の変化の調査、並びに、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abの特定は、日本分光(株)製の「エリプソメーター M150」あるいは王子計測機器(株)製の自動複屈折計「KOBRA21ADH」を用いて実施され得る。
本件発明者らが鋭意実験を重ねたところ、基材フィルム50の平行配置消光位軸Aaと当該基材フィルム50の傾斜配置消光位軸Abとが非平行となっている場合、後述の実施例で実証されているように、光源の出力を増大させることなく輝度特性を効果的に改善することが可能となることが、知見された。より具体的には、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、図3に示すように、光学シート50の平面視において、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abが、単位光学要素42の長手方向dlに対して0°より大きく45°未満の傾斜角度で同じ側に傾斜しており、且つ、平行配置消光位軸Aaの単位光学要素42の長手方向dlに対する傾斜角度θ1が、傾斜配置消光位軸Abの単位光学要素42の長手方向dlに対する傾斜角度θ2よりも大きくなっている場合に、言い換えると、光学シート50の平面視において、単位光学要素42の長手方向dlと、単位光学要素42の長手方向dlに対して45°未満の傾斜角度θ2で傾斜した平行配置消光位軸Aaと、の間に、単位光学要素42の長手方向dlおよび平行配置消光位軸Aaの両方に対して傾斜した傾斜配置消光位軸Abが位置している場合、光源25の出力や単位光学要素42の構成を変化させることなく正面方向輝度を向上させることができた。
従来、光学シートに用いられる二軸延伸樹脂フィルム、典型的には、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、当該二軸延伸樹脂フィルムをフィルム面への法線方向に透過する光および当該二軸延伸樹脂フィルムを斜めに透過する光に対して、同傾向の偏光作用を及ぼすものと考えられていた。このような従来の技術常識に従えば、上述の方法で特定される傾斜配置消光位軸Abは、平行配置消光位軸Aaと平行になるものと考えられるだろう。このため、このような背景からすれば、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを非平行とすることよって得られる作用効果、すなわち、輝度特性を改善し得るようになるといった作用効果は、技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであると言える。
さらに、本件発明者らが実験を重ねたところ、基材フィルム50の三次元的な光学異方性を利用して輝度特性を改善する上で、基材フィルム50についての波長550nmでの面内位相差Reは、500nm以上5000nm以下であることが好ましいことがわかった。
ところで、計測に用いられる光の波長によって、特定される平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abが変化してしまう可能性がある。そこで本発明では、特に波長への言及が無い場合、可視光波長域の概ね中心に位置する波長であって、光の三原色の一つである緑色を担う波長550nmの光を用いて平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを特定することとする。ただし、波長が550nmの光だけでなく、可視光の全波長域で特定された平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abが、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abに関する上述の条件を満たすことがより好ましい。
また、基材フィルム50が二軸延伸によって形成されている場合、厳密には、基材フィルム50内の各位置は、互いに異なる光学異方性を持つようになる。すなわち、光学シート40に含まれる基材フィルム50の平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abも、基材フィルム50内の各位置において変化する。ただし、一般的に、表示領域Z1の中央における明るさの変化が観察者によって感知されやすく、逆に、表示領域Z1の縁部における明るさの変化は観察者によって感知されにくい。つまり、上述した作用効果を期待する上では、表示領域Z1の中央における平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを評価することが重要であり、本発明において、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abは、光学シートの表示領域Z1に対応する部分の中央で特定することとする。例えば、表示領域が矩形状に形成されていれば、当該矩形状に関する一対の対角線の交点の位置において、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを特定することとする。
以上のような構成からなる単位光学要素42の具体例として、単位光学要素42の配列方向に沿った単位光学要素42の配列ピッチP(図2参照:本実施の形態においては、単位光学要素42の幅に相当する)を5μm〜200μmとすることができる。また、光学シート40のシート面への法線方向ndに沿った本体部45の出光側面45aからの第2単位光学要素42の突出高さH(図2参照)を1μm〜150μmとすることができる。さらに、単位光学要素42の断面形状が二等辺三角形状である場合には、正面方向輝度を集中的に向上させる観点から、等辺の間に位置するとともに出光側に突出する頂角の角度θt(図2参照)が、80°以上120°以下となっていることが好ましく、90°であればさらに好ましい。
次に、以上のような構成からなる光学シート40の製造方法の一例について説明する。以下の例においては、図8に示すような成型装置60を用いた賦型によって、単位光学要素42を樹脂層47とともに基材フィルム50上に形成することができる。単位光学要素42および樹脂層47の形成に用いられる材料としては、成型性が良好であるとともに入手が容易であり且つ優れた光透過性を有する樹脂(一例として、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物)が好適に用いられる。
まず、成型装置60について説明する。図8に示すように、成型装置60は、略円柱状の外輪郭を有した成型用型70を有している。成型用型70の円柱の外周面(側面)に該当する部分に円筒状の型面(凹凸面)72が形成されている。円柱状からなる成型用型70は、円柱の外周面の中心を通過する中心軸線CA、言い換えると、円柱の横断面の中心を通過する中心軸線CAを有している。型面72には、光学シート40の単位光学要素42に対応する凹部(図示せず)が形成されている。すなわち、成型用型70は、中心軸線CAを回転軸線として回転しながら(図8参照)、成型品としての光学シート40を成型するロール型として構成されている。
図8に示すように、成型装置60は、帯状に延びる基材フィルム(成型用基材シート)50を供給する成型用基材供給装置62と、供給される基材フィルム50と成型用型70の型面72との間に流動性を有した材料43を供給する材料供給装置64と、基材フィルム50と成型用型70の凹凸面72との間の材料43を硬化させる硬化装置66と、をさらに有している。硬化装置66は、硬化対象となる材料43の硬化特性に応じて適宜構成され得る。
次に、このような成型装置60を用いて光学シート40を作製する方法について説明する。まず、帯状に延びる基材フィルム50が、成型用基材供給装置62から供給される。本実施の形態において、供給される基材フィルム50は、一例として、機械的特性(強度等)、化学的特性(安定性等)および光学的特性(透過性等)が良好であるとともに安価に入手可能な二軸延伸したポリエチレンテレフタレートからなっている。供給された基材フィルム50は、図8に示すように、成型用型70へと送り込まれ、成型用型70と一対のローラ68とによって、型70の凹凸面72と対向するようにして保持されるようになる。
また、図8に示すように、基材フィルム50の供給にともない、基材フィルム50と成型用型70の型面72との間に、材料供給装置64から流動性を有する材料43が供給される。この材料43は、単位光学要素42と本体部45の樹脂層47とを形成するようになる。ここで、「流動性を有する」とは、成型用型70の型面72へ供給された材料43が、型面72の凹部(図示せず)内に入り込み得る程度の流動性を有することを意味する。
供給される材料43としては、成型に用いれ得る種々の既知な材料(例えば、上述した、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物から成る電離放射線硬化型樹脂)を用いることができる。以下に示す例においては、材料供給装置64から電離放射線硬化型樹脂が供給される例について説明する。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線(UV)を照射されることにより硬化するUV硬化型樹脂や、電子線(EB)を照射されることによって硬化するEB硬化型樹脂を選択することができる。
その後、成型用基材としての基材フィルム50は、型70の型面72との間を電離放射線硬化型樹脂によって満たされた状態で、硬化装置66に対向する位置を通過する。このとき、硬化装置66からは、電離放射線硬化型樹脂43の硬化特性に応じた電離放射線が放射されており、電離放射線は基材フィルム50を透過して電離放射線硬化型樹脂43に照射される。電離放射線硬化型樹脂43が紫外線硬化型樹脂の場合には、硬化装置66は、例えば、高圧水銀燈等の紫外線照射装置とする。この結果、型面72と基材フィルム50との間に充填されている電離放射線硬化型樹脂43が硬化して、硬化した電離放射線硬化型樹脂からなる単位光学要素42および本体部45の樹脂層47が基材フィルム50上に形成されるようになる。
その後、図8に示すように、基材フィルム50が型70から離間し、これにともなって、型面72の凹部内に成型された単位光学要素42が、基材フィルム50に接合された樹脂層47とともに図中右方のローラ68の位置にて型70から引き離される。このようにして、上述した光学シート40が得られる。
上述した製造方法において、基材フィルム50は型70の表面72に接触しておらず、基材フィルム50と型70との間には材料43が介在している。このため、上述してきたように、作製された光学シート40の本体部45は、基材フィルム50と、基材フィルム50と面接合してシート状に硬化した樹脂層(ランド部)47と、から構成されるようになる。このような方法によれば、成型された単位光学要素42が、離型時に、型70の凹部内に部分的に残留してしまうことを効果的に防止することができる。
以上のようにして、ロール型として構成された成型用型70がその中心軸線CAを中心として一回転している間に、流動性を有した材料43を型70内に供給する工程と、型70内に供給された材料43を型70内で硬化させる工程と、硬化した材料43を型70から抜く工程と、が型70の型面72上において順次実施されていき、光学シート40が得られる。
次に、以上のような表示装置10の作用について説明する。
図1に於いて、光源25で発光された光は、直接または反射板28で反射した後に観察者側に進む。観察者側に進んだ光は、光拡散シート30で等方拡散された後に、光学シート40に入射する。この入射光は、本体部45を透過して、光学シート40の単位光学要素42へ到達し、その後、単位光学要素42から出射する。
図2に於いて、単位光学要素42から出射する光L21,L22は、単位光学要素(単位プリズム)40の出光側面(プリズム面)42aにおいて屈折する。この屈折により、正面方向ndから傾斜した方向に進む光L21,L22の進行方向(出射方向)は、主として、光学シート40へ入射する直前における光の進行方向と比較して、光学シート40のシート面への法線方向ndに対する角度が小さくなるように、曲げられる(図2参照)。このような光学シート40の作用により、単位光学要素42は、透過光の進行方向を正面方向nd側に絞り込むことができる。すなわち、単位光学要素42は、透過光に対して集光作用を及ぼして、正面方向輝度が集中的に高くなるように輝度の角度分布に変化をもたらす。
なお、このような単位光学要素42の集光作用は、正面方向ndから大きく傾斜して進む光に対してより効果的に及ぼされる。このため、光学シート40よりも光源側に配置された光拡散シート30による拡散の程度にも依るが、光源25から大きな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25から離れた領域において、効果的に正面方向輝度を上昇させることができる(図2の光L21参照)。
その一方で、図2に示すように、正面方向ndに対する進行方向の傾斜角度が小さい光L23は、単位光学要素42の出光側面(プリズム面)において全反射を繰り返し、その進行方向を入光側(光源側)へ転換することもある。このため、光学シート40よりも光源側に配置された光拡散シート30による拡散の程度にも依るが、光源25から小さな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25の直上位置において、輝度が高くなり過ぎることを防止することができる。
このように、面光源装置20の発光面20aと平行な方向における光源25からの離間距離に依存して、透過光に対して単位光学要素42から主として及ぼされる光学的作用が相違する。これにより、光源25の発光部25aの配列に応じて発生する輝度ムラ(管ムラ)を効果的に低減し、光源の像(ライトイメージ)を目立たなくさせることもできる。すなわち、光学シート40は、透過光に対して光拡散作用も及ぼし、輝度の面内バラツキを均一化させるように機能する。
以上のようにして、光源25の構成に起因した輝度の面内バラツキを解消しながら、光学シート40から出射する光の出射角度を、正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込むことができる。
光学シート40を出光した光は、その後、透過型表示部15に入射する。透過型表示部15は、面光源装置20からの光を画素毎に選択的に透過させる。これにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。
ところで、本実施の形態では、図3に示すように、光学シート40に含まれている基材フィルム50の平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abは非平行となっている。さらに、光学シート40の平面視において、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abは、単位光学要素42の長手方向に対して0°より大きく45°未満の傾斜角度θ1,θ2で同じ側に傾斜しており、平行配置消光位軸Aaの単位光学要素42の長手方向dlに対する傾斜角度θ1は、平行配置消光位軸Aaの単位光学要素42の長手方向dlに対する傾斜角度θ2よりも大きくなっている。このような光学シートによれば、後述する実施例でも実証されているように、同一の材料を用いて作製された同一構成を有する光学シートに対して、正面方向輝度を数%程度上昇させることができる。
従来、光学シートに用いられる延伸フィルムについては、当該延伸フィルムを斜めに透過する光に対する偏光作用と、当該延伸フィルムを法線方向に透過するする光に対する偏光作用とは、程度の差があるものの、同様の傾向を呈するものと考えられていた。また、線状の単位光学要素によって正面方向へ偏向される光は、僅かながら偏光していることが知られている。具体的には、単位光学要素の配列方向に振動する偏光成分の光が、単位光学要素の長手方向に振動する光よりも、高い透過率で単位光学要素を有した光学シートを透過し得ることが知られている。こられのことから、延伸フィルムの面内位相差に関する配向軸を単位光学要素の配列方向に対して位置決めすることのみが検討されてきた。
したがって、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを単位光学要素42の長手方向に対して調節することに起因して、正面方向の輝度が改善され得るといった作用効果は、技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであると言える。このような顕著な作用効果が得られる理由の詳細については不明であるが、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを非平行とすることによって基材フィルム50内で三次元的な偏光作用が生じ、この基材フィルム50での三次元的な偏光作用と線状配列された単位光学要素42での偏光作用との相乗的な作用により、正面方向に抜ける光量が増加するものと推定される。なお、本発明は、この推定に拘束されるものではない。
以上のような本実施の形態によれば、光学異方性を有した基材フィルム50と単位光学要素42の長手方向dlとを位置決めすることにより、同一の材料を用いて同一の構成に形成された光学シートと比較して、正面方向輝度を効果的に上昇させることができる。一具体例として、光源25の出力を増強することなく、単位光学要素42の形状を適宜設計したり光学シートとは別途の部材(例えば、光拡散シート30)の光学特性を適宜設計したりすることにより、正面方向輝度を低下させることなく視野角が拡大するように輝度特席を調節することも可能となる。すなわち、本実施の形態の光学シート40によれば、光源の出力を増強することなく、輝度特性を効果的に改善することができる。
そして、このような作用効果は、専ら、基材フィルム50自体の光学異方性、更には、基材フィルム50の光学異方性に対する単位光学要素の長手方向の位置決めにより実現される。すなわち、光学シート50自体の構成によって、面光源装置20および表示装置10の輝度特性の改善が可能となり、面光源装置20および表示装置10に含まれる他の構成要素に対して、例えば、下偏光板16の透過軸に対して、光学シート50を位置決めする必要がない。したがって、本実施の形態によれば、面光源装置20および表示装置10の設計の自由度を害すことなく、輝度特性を改善することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について適宜図面を参照しながら説明する。以下に説明する変形例においても、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、変形例の説明において参照する図9および図10においては、上述した実施の形態と同一に構成され得る部分について、上述した実施の形態において対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を付している。
例えば、上述した実施の形態において、基材フィルム50を含んで構成された本体部45上に、主切断面において直角二等辺三角形の断面形状を有する単位光学要素(単位プリズム)42が形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、単位光学要素42の主切断面における断面形状が、諸特性付与等の目的で、三角形形状に変調、変形を加えた形状であってもよい。具体例として、光学機能を適宜調整するために単位光学要素42の断面形状が、三角形のいずれか一以上の辺が折れ曲がった(屈曲した)形状、三角形のいずれか一以上の辺が湾曲した形状(所謂扇形)、三角形の頂点近傍を湾曲させて丸みを帯びさせた形状、三角形のいずれか一以上の辺に微小凹凸を付与した形状であってもよい。また、単位光学要素42の主切断面における断面形状が、三角形形状以外の形状、例えば台形等の四角形、五角形、或は六角形等の種々の多角形形状を有するようにしてもよい。さらに、図9に示すように、単位光学要素42の主切断面における断面形状が、円、楕円、抛物線、双曲線、又は正弦波曲線の一部分に相当する形状を有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、基材フィルム50を含んで構成された本体部45上に設けられた単位光学要素42がすべて同一構成を有する例を示したが、これに限られず、基材フィルム50を含んで構成された本体部45上に設けられた単位光学要素の二以上が、互いに異なる形状を有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20の光源25の発光部25aが、点状のLED(発光ダイオード)からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、線状に延びる冷陰極管或いは白熱電球等や面状のEL(電場発光体)等からなる発光部を用いることも可能である。一例として、図9および図10に示された例において、光源25は、直線状に延びる複数の冷陰極管からなる発光部25aを有しており、発光部25aの配列方向と単位光学要素42の配列方向とが平行となっている。また、上述した実施の形態において、光学シート40が直下型の面光源装置20に適用されている例を示したが、これに限られない。上述した光学シート40を、例えば図15に示すように、エッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)の面光源装置に適用することも可能であり、このような場合においても、光学シート40は直下型の面光源装置20に適用された場合と略同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート40が組み込まれた面光源装置20および透過型表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られない。例えば、光拡散シート30を削除または別の部材と置き換えてもよいし、集光シート等の他のシート状部材を追加して面光源装置20および透過型表示装置10に組み込むようにしてもよい。
一例として、図10に示すように、面光源装置20の最出光側に、反射型の偏光分離シート52を設けるようにしてもよい。反射型の偏光分離シート52は、その透過軸と平行な方向の偏光成分を透過させ、その透過軸に直交する反射軸と平行な方向の偏光成分を反射する。したがって、通常では、正面方向からの観察において反射型の偏光分離シート52の透過軸が下偏光板16の透過軸と平行となるようにして、反射型の偏光分離シート52が面光源装置20に組み込まれる。反射型の偏光分離シート52によれば、光源光の利用効率を向上させて、輝度特性を改善することができる。このような反射型の偏光分離シート52として、米国3M社から入手可能な「DBEF」(登録商標)を用いることができる。また、「DBEF」以外にも、韓国Shinwha Intertek社から入手可能な高輝度偏光シート「WRPS」(登録商標)や、あるいは、ワイヤーグリッド偏光子等を用いることもできる。さらには、例えばコレステリック規則性を有したコレステリック液晶層からなる旋光選択層と、旋光選択層の出光側に積層された四分の一波長層(λ/4位相差層)と、を有してなるフィルム部材を、反射型偏光分離シート52として用いることができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
サンプル1〜3に係る光学シートを作製した。各光学シートは、互いに異なる光学異方性を呈する基材フィルムを含むようにし、基材フィルム以外の構成は互いに同一となるようにした。また、サンプル1〜3に係る光学シートをそれぞれ面光源装置に組み込んで、面光源装置の発光面での正面方向輝度を評価した。
〔光学シート〕
各光学シートは、上述した実施の形態と同様に、シート状の本体部と、本体部の出光側面上に互いに平行となるように設けられた直線状に延びる多数の単位光学要素(単位プリズム)と、を有するようにした。単位光学要素は、上述した実施の形態と同様に、主切断面における断面形状が、正面方向を中心として対称的に配置された直角二等辺三角形形状となるように、構成した。一つの光学シートに含まれる多数の単位光学要素は互いに同一に構成し、且つ、各光学シート間でも、単位光学要素は互いに同一に構成した。また、各光学シートにおいて、単位光学要素は、本体部上に、隙間なく配列されるようにした。各光学シートは、上述した実施の形態において図8を参照しながら説明した製造方法と概ね同様にして、基材フィルム上に単位光学要素(単位プリズム)を成型することによって作製した。
本体部の一部分をなす基材フィルムとして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート製フィルムを用いた。基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートのペレットをフィルム状に押し出すとともに、押し出されたフィルム状樹脂を機械方向(押し出し方)と機械方向に直交する幅方向とに延伸することによって、作製した。この際、サンプル1〜3に係る光学シートの基材フィルム間において光学異方性、とりわけ平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを変化させることを目的として、押し出し直後におけるフィルム状樹脂の厚みと、機械方向および幅方向への延伸比率と、を変化させて同一厚みの複数の基材フィルムを作製した。
各サンプルに係る光学シート用に作製された各基材フィルムについて、王子計測機器(株)製の自動複屈折計「KOBRA21ADH」を用いて、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abを特定した。なお、平行配置消光位軸Aaは図4および図5を参照しながら説明した方法によって特定し、傾斜配置消光位軸Abは図6および図7を参照しながら説明した方法によって特定した。すなわち、各基材フィルムを一対の偏光板100a,100bの間で回転させながら、出光側偏光板100b上での正面方向輝度の変化を測定していき、当該基材フィルムの消光位軸Aa,Abを特定した。この際、消光位軸Aa,Abの特定に用いた光の波長は、550nmとした。図14には、一例としてサンプル1に係る基材シートについて、当該基材シートを一対の偏光板100a,100bと平行に保って回転させながら出光側偏光板上で正面方向輝度を測定した結果、並びに、当該基材シートを一対の偏光板100a,100bに対して40°傾斜させた状態に保って回転させながら出光側偏光板上で正面方向輝度を測定した結果を示している。図14における横軸の0°は、基材シートの作製時における機械方向と平行な方向である。
また、各基材フィルムについて、作製時における機械方向に対応する方向と特定された平行配置消光位軸Aaとによってなされる角度、および、作製時における機械方向に対応する方向と特定された傾斜配置消光位軸Abとによってなされる角度を求めた。なお、単位光学要素は、その長手方向が基材フィルムの押し出し方向と平行になるように、基材フィルム上に作製した。実際の光学シートの生産においても、ロール状の基材フィルム上に単位光学要素を連続的に作製していくことが可能となるため、単位光学要素の長手方向は、一般的に、基材フィルムの生産時における機械方向と一致するようになる。したがって、作製時における機械方向MDに対応する方向と平行配置消光位軸Aaとによってなされる角度は、光学シートの平面視において単位光学要素の長手方向dlと平行配置消光位軸Aaとによってなされる傾斜角度θ1に相当し、作製時における機械方向MDに対応する方向と傾斜配置消光位軸Abとによってなされる角度は、光学シートの平面視において単位光学要素の長手方向dlと傾斜配置消光位軸Abとによってなされる傾斜角度θ2に相当する。
サンプル1〜3に係る基材フィルムの平行配置消光位軸Aa、傾斜配置消光位軸Abおよび単位光学要素の長手方向dl(機械方向MD)の関係、並びに、傾斜角度θ1,θ2を、図11〜図13および表1にそれぞれ示す。サンプル1に係る基材フィルムでは、図11に示すように、光学シートの平面視において、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abが、単位光学要素の長手方向dlに対して45°未満の傾斜角度で同じ側に傾斜しており、且つ、平行配置消光位軸Aaの単位光学要素の長手方向dlに対する傾斜角度θ1(24°)は、傾斜配置消光位軸Abの単位光学要素の長手方向dlに対する傾斜角度θ2(15°)よりも大きくなった。サンプル2に係る基材フィルムでは、図12に示すように、光学シートの平面視において、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abが、単位光学要素の長手方向dlに対して45°未満の傾斜角度で同じ側に傾斜しており、且つ、平行配置消光位軸Aaの単位光学要素の長手方向dlに対する傾斜角度θ1および傾斜配置消光位軸Abの単位光学要素の長手方向dlに対する傾斜角度θ2が、同一の18°となった。サンプル3に係る基材フィルムでは、図13に示すように、光学シートの平面視において、平行配置消光位軸Aaおよび傾斜配置消光位軸Abが、単位光学要素の長手方向dlに対して45°未満の傾斜角度で同じ側に傾斜しており、且つ、平行配置消光位軸Aaの単位光学要素の長手方向dlに対する傾斜角度θ1(5°)は、傾斜配置消光位軸Abの単位光学要素の長手方向dlに対する傾斜角度θ2(11°)よりも小さくなった。
〔面光源装置〕
面光源装置は、各サンプルに係る光学シートを用いて、図15に示す構成を有するようにした。すなわち、面光源装置は、光拡散用の白色ドットが裏面に設けられた導光板(いわゆる、印刷導光板)と、導光板の側方に配置された光源と、導光板の出光面に対向して配置された光拡散シートと、光拡散シートの出光側に配置された光学シートと、を有するようにした。光源は、導光板の一辺に沿って並べられた多数のLEDとした。光源、導光板および光拡散シートは、実際に市販されているパナソニック製32インチ型テレビ受像器に組み込まれていたものを利用した。
〔評価方法〕
各サンプルに係る光学シートを用いた面光源装置について、光源を点灯した状態で、面光源装置の発光面上での正面方向輝度(cd/m2)の測定を行った。輝度の測定には、トプコン製のBM−7を用いた。各サンプルについて測定された正面方向輝度の値を、輝度比として、表1に示す。