JP2011174254A - 鋼製桁構造物の内部の塗膜劣化部の補修及び防食方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内部の塗膜が劣化した既設の鋼製桁構造物の該内部の塗膜劣化部(1)を、透明ゲル状シート(2)で被覆する。好ましくは、透明ゲル状シート(2)の表面側の全面に、保護層として、可撓性のプラスチック製フィルム(4)を貼付する。さらに好ましくは、透明ゲル状シート(2)及び可撓性のプラスチック製フィルム(4)の周辺部をプラスチック製テープ(5)でシールして端部処理する。
【選択図】図1
Description
近年、設置後長期間経過した鋼製橋梁の更なる維持という目的から、鋼製橋桁の内部の塗膜劣化部の補修として、塗り替え用の塗装が行われるようになった。ここで適用される塗装仕様については、鋼製橋梁の塗装防食の手引書である非特許文献1などに公表されている。
一方、ゲル状のシート材は、各種のものが市販されており、主に電極材の貼付材、工業用粘着材、心電図測定用医療材などとして用いられている。
さらに、塗装作業は、素地調整後、下塗り、中塗り、上塗りの3工程を要することが一般的であり、各工程間では1〜10日間の養生期間が必要となるため、施工が終了するまでに多くの時間を要することとなる。これは、補修塗装のような限られた部分防食をする上では、極めて非効率的となり、単位面積当たりの費用が莫大な額になってしまう。
また、従来の補修塗装では、塗膜の機械的強度が維持されている段階では塗膜下で腐食が進行しても、外観上分からない場合があるが、本発明の補修及び防食方法によれば、被覆層(透明ゲル状シート)が透明であるため、被覆層下の防食状態を目視で直接把握できるので、被覆層が劣化して鋼材の一部に腐食が生じた場合、その部分の被覆層のみの交換により防食状態を維持することができ、補修後の鋼製桁構造物の内部の維持管理及び点検が容易になるとの効果も奏される。
本発明の補修及び防食方法が好適に適用される既設の鋼製桁構造物は、鉄道用、自動車用、歩行者用などの鋼製橋梁や、発電設備、共同溝などにおける鋼製桁構造物において、内部に塗膜の腐食劣化が発生している鋼製桁構造物である。
透明ゲル状シートの厚さは特に制限されないが、好ましくは0.1〜3.0mm、より好ましくは0.5〜1.0mmである。透明ゲル状シートが薄すぎると、塗膜劣化部の腐食発生部への追従密閉性に劣り、また厚すぎると、保護層との端部に隙間を生じやすくなり、長期耐久性に問題を生じてしまう場合がある。
透明ゲル状シートは、シート強度をJIS K 7312に準じて測定した場合に、引張り強度が好ましくは0.5〜1.5MPa、より好ましくは0.7〜1.2MPaで、最大伸び率が好ましくは60〜200%、より好ましくは100〜150%であるものが好ましい。
また、透明ゲル状シートとしては、粘着性及び柔軟性を有するものが好ましい。
粘着性は、下記の方法により測定した粘着力が0.1〜3.0N/mmであるものが好ましく、0.2〜1.5N/mmであるものがより好ましい。
このような粘着性及び柔軟性を有することにより、シートの自重と相俟って、塗膜劣化部に凹凸面があっても該凹凸面にシートが追従し、透明ゲル状シートを塗膜劣化部に一層密着させて被覆することができる。
まず、本発明の補修及び防食方法を、図1に示す施工例について説明する。
本発明の補修及び防食方法は、図1に示すように、前記の鋼製桁構造物の内部における塗膜劣化部1を、前記の透明ゲル状シート2で被覆するものである。
被覆は、透明ゲル状シート2の粘着性及び柔軟性を利用して透明ゲル状シート2を塗膜劣化部1の上に貼付すればよく、塗膜劣化部1が透明ゲル状シート2で確実に覆われるように貼付する。
塗膜劣化部1を透明ゲル状シート2で被覆すると、塗膜劣化部1の鋼材表面は、短時間で酸欠状態となり、保護性のある酸化皮膜で覆われる。この状態は、透明なゲル状シートを通して目視で直接確認できる。
図2及び図3に示す施工例は、透明ゲル状シート2の周囲に両面粘着テープ6が貼付され、この透明ゲル状シート2及び両面粘着テープ6の表面が可撓性のプラスチック製フィルム4(保護層)で被覆されている以外は、図1に示す施工例と同様に施工されたものである。
この施工例は、透明ゲル状シート2及び可撓性のプラスチック製フィルム4(保護層)の剥離防止の点から好ましいものであり、特に、塗膜劣化部1が広範囲に存在するために透明ゲル状シート2を広範囲に貼付しなければならない場合や、塗膜劣化部1の表面に微細な凹凸面がある場合などに好適である。
両面粘着テープ6は、予め、可撓性のプラスチック製フィルム4(保護層)の裏面(透明ゲル状シート2側の表面)の周辺部に貼付しておいてもよく、また、透明ゲル状シート2の貼付後、可撓性のプラスチック製フィルム4(保護層)の貼付前に、透明ゲル状シート2の周囲の活膜部3に貼付してもよい。
下記(1) 〜(8) の手順により、塗膜の腐食劣化が発生している鋼材表面に、図1に示す施工例のように補修及び防食を施した。
(1) 鋼材表面7の塗膜劣化部1を素地調整し、浮き錆や劣化塗膜を除去する。
(2) 塗膜劣化部1及びその周辺の健全塗膜(図1に示す活膜部3)の表面に付着した塵や埃を掃除機で吸い取った後、ウェースで拭き取る。
(3) 透明ゲル状シート2の表面に、防錆剤として重合燐酸500ppmを含む溶液を霧吹きで吹きかけて薄い水膜を作成する。
(4) 水膜を作成した透明ゲル状シート2を塗膜劣化部1に貼付し、透明ゲル状シート2で塗膜劣化部1を確実に被覆する。
(5) 透明ゲル状シート2の表面側の全面に、可撓性のプラスチック製フィルム4(保護層)を貼付する。
(6) 保護層4の上からローラーで透明ゲル状シート2を展圧し、透明ゲル状シート2を塗膜劣化部1に密着させる。
(7) 透明ゲル状シート2が活膜部3にかかる部分で、カッターにより透明ゲル状シート2及び保護層4の端部を切断し、除去する。
(8) 切断部付近の保護層面と健全塗膜面に残る水分や汚れをウェースで拭き取り、端部処理用のプラスチック製テープ5を保護層4の周辺部に貼付し、透明ゲル状シート2及び保護層4の周辺部をプラスチック製テープ5でシールする。
透明ゲル状シート2:積水化成品工業株式会社製のテクノゲル(商品名)のシートタイプ(厚さ0.8mm)
可撓性のプラスチック製フィルム4:厚さ0.3mmの透明ポリエチレンフィルム
プラスチック製テープ5:ユニ工業株式会社製のポリエチレン系テープ(商品名:補修クロステープ、厚さ0.12mm、幅80mm)
実施例1において、端部処理をしない(プラスチック製テープ無)以外は、実施例1と同様にして、塗膜の腐食劣化が発生している鋼材表面に補修及び防食を施した。
実施例1の補修及び防食を施した鋼材(端部処理:有)及び実施例2の補修及び防食を施した鋼材(端部処理:無)について、35℃の5%塩水を鋼材表面に噴霧し、塩水噴霧試験時間が500時間、1000時間及び2300時間における鋼材表面の腐食速度を測定した。
また、比較例1及び2として、実施例1及び2の補修及び防食を施さなかった鋼材それぞれについても、同様にして塩水噴霧試験を行い、鋼材表面の腐食速度を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
実施例1及び2で使用した透明ゲル状シート(積水化成品工業株式会社製のテクノゲルのシートタイプ)の粘着性について、錆鋼(屋外暴露一ヶ月後3種ケレン)、みがき鋼(アセトン脱脂後無塗装)、エポキシ塗装鋼(変性エポキシ樹脂塗料D−5塗装)及びフタル酸系塗装鋼(長油性フタル酸樹脂塗料A−5塗装)に対する粘着力を、下記の方法により測定した。
透明ゲル状シートを上記鋼の表面に貼付し、これを25℃の室内に7日間又は60℃の恒温槽内に7日間放置後、180度ピール試験(試験速度:300mm/min)を行ってピール強度を測定した。
これらの測定結果を表2に示す。
2 透明ゲル状シート
3 活膜部(健全塗膜)
4 可撓性のプラスチック製フィルム(保護層)
5 プラスチック製テープ
6 両面粘着テープ
7 鋼材表面
Claims (7)
- 内部の塗膜が劣化した既設の鋼製桁構造物の該内部の塗膜劣化部を補修及び防食する方法であって、前記塗膜劣化部を透明ゲル状シートで被覆することを特徴とする鋼製桁構造物の内部の塗膜劣化部の補修及び防食方法。
- 透明ゲル状シートの表面側に、該透明ゲル状シートの保護層として、可撓性のプラスチック製フィルムを貼付する請求項1記載の補修及び防食方法。
- 保護層の周辺部をプラスチック製テープでシールする請求項2記載の補修及び防食方法。
- 可撓性のプラスチック製フィルムが透明である請求項2又は3記載の補修及び防食方法。
- 可撓性のプラスチック製フィルムの周囲又はその一部にマグネットを取り付けておく請求項2〜4の何れかに記載の補修及び防食方法。
- 透明ゲル状シートに腐食抑制剤又は脱酸素剤を含有させる請求項1〜5の何れかに記載の補修及び防食方法。
- 腐食抑制剤がポリ燐酸塩系腐食抑制剤でその濃度が100〜2000ppmである請求項6記載の補修及び防食方法。
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