JP6043121B2 - 道路橋伸縮装置用止水材の施工方法および道路橋伸縮装置 - Google Patents
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Description
この補修工事は、既設止水材を撤去したウェブ面をケレンし、プライマーを塗布・乾燥後、次いで両ウェブ面に接着剤を塗布してウェブ間に止水材本体を挿入し、止水材を接着固定して実施される。
(1)鋼製伸縮装置の対向するウェブの遊間に止水材を設置する道路橋伸縮装置用止水材の施工方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
(a)ウェブ面上にエポキシ樹脂層を形成する工程
(b)前記エポキシ樹脂層上に接着剤層を形成し、止水材を貼合する工程
(2)前記工程(b)において、前記エポキシ樹脂層上にプライマー層を形成した後、プライマー層上に接着剤層を形成する前記(1)に記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
(3)前記工程(a)および(b)を行う前に、以下の工程を行う前記(1)または(2)に記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
(i)対向するウェブの遊間に設置されている既設止水材を撤去する工程
(ii)ウェブ面にケレンを行った後、ウェブ面を洗浄する工程
(4)前記工程(b)において、前記接着剤層の表面にある凹みにシーリング材を注入し、前記接着剤層の表面を平滑化した後に、止水材を貼合する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
(5)前記エポキシ樹脂層が、一液型塗料であるエポキシ樹脂塗料から形成されたものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
(6)道路橋に形成された遊間の上部に設けられ、遊間の伸縮に応じて互いに噛み合うようにした一対のフェースプレートと、該一対のフェースプレートのそれぞれの下部に位置するウェブと、このウェブの遊間に設けられた止水材とを備えた鋼製伸縮装置であって、対向するウェブ面に、エポキシ樹脂層を介して、接着剤層および止水材がこの順に形成されていることを特徴とする道路橋伸縮装置。
(7)エポキシ樹脂層と接着剤層との間にプライマー層が形成されている前記(6)に記載の道路橋伸縮装置。
(I)道路橋に既設の鋼製伸縮装置1の対向するウェブ3,3の遊間に設置されている既設止水材(図示せず)を撤去する撤去工程
(II)ウェブ3,3面にケレンを行った後、ウェブ3,3面を洗浄する洗浄工程
(III)ウェブ3,3面上にエポキシ樹脂層5を形成する成膜工程
(IV)エポキシ樹脂層5上にプライマー層6、接着剤層7をこの順で形成し、止水材8を貼合する貼合工程
撤去工程では、図1(a)に示すように、道路橋に既設の鋼製伸縮装置1の一対のフェースプレート2,2の下部に位置する対向するウェブ3,3の遊間に設置されている、図示しない弾性シール材、受け桶、水切りプレートなどの既設止水材を撤去する。この際、ウェブ面に付着している土砂やゴミなども取り除き、ウェブ3,3の遊間に露出している全ての面を掃除する。
まずウェブ面にケレン(以下、一次ケレンという場合がある)を行う。これにより、ウェブ面の異物、錆および劣化塗膜などを除去し、ウェブ面の洗浄効果を高めることができる。
ケレンは、通常3種ケレン以上、好ましくは3種ケレンで下地調整するのが好ましい。下地調整するには、例えば、電動サンダー、エアグラインダーなどを用いればよい。
なお、下地調整の程度は、(社)日本道路協会発行の「鋼道路橋塗装・防食便覧」に基づくものである、以下同じ。
ウェブ3,3面を洗浄する方法として、例えば、高圧洗浄装置、噴霧器などを用いて水洗浄をする方法;公知の溶剤を用いて脱脂洗浄をする方法などが挙げられ、なかでも、ウェブ面の脱塩効果の点で、水洗浄が好ましい。水洗浄でウェブ面を洗浄する場合は、ウェブ面の発錆を抑制する観点から、水洗浄後にウェブ面を乾拭きして余分な水分を拭き取る。
溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノールなどが挙げられる。
ウェブ3,3面の表面塩分量測定は、例えば、東亜ディーケーケー(株)製のポータブル表面塩分計「SSM−21P」、光明理化学工業(株)製の塩素イオン検知管「201SA」、「201SB」などを用いて行えばよい。残留塩分量を測定した箇所は、測定時の水により発錆するおそれがあるため、測定した箇所を再度ケレンおよび脱脂を行う。
残留塩分量の管理値は、200mg/m2以下であり、好ましくは50mg/m2以下である。
上述のように洗浄されたウェブ3,3面上に、図1(c)に示すように、エポキシ樹脂層5を形成する。これにより、上記洗浄工程により取り除くことができなかった凹み(食孔)等に残留する塩分や錆により、接着剤層7の接着強度を低下させるのを防止することができる。さらに、施行後に新たに散布された凍結防止剤などに起因するウェブ面の発錆をエポキシ樹脂層5により抑制することができる。
エポキシ樹脂層5を形成する方法としては、例えば、エポキシ樹脂塗料を塗布する方法;エポキシ樹脂板をエポキシ樹脂接着剤で貼り付ける方法などが挙げられる。エポキシ樹脂塗料としては、例えば、日本パーカライジング(株)製の「トリック(登録商標)シリーズ(1000、1100、1200)」、日本ペイント(株)製の「パワーバインド(登録商標)」などの一液型塗料;日本ペイント(株)製の「ハイポン(登録商標)(20、90)」などの二液型塗料などが挙げられ、なかでも、現場での作業性の観点から、一液型塗料が好ましい。エポキシ樹脂接着剤としては、例えば、コニシ(株)製の「E4000N」などが挙げられる。
エポキシ樹脂塗料の塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、ローラー塗り、スプレー塗布などが挙げられ、エポキシ樹脂塗料の塗布量を確保し、塗膜の乾燥時間を短縮化するなどの観点から、例えば、刷毛塗りした後に、さらにローラー塗りする2回塗りを行なってもよい。
エポキシ樹脂塗料の塗布量は、30〜500g/m2、好ましくは50〜300g/m2であるのがよい。
まず、エポキシ樹脂層5上に接着剤7を塗布する前に、図1(d)に示すように、エポキシ樹脂層5上に均一に塗布して、プライマー層6を形成する。
プライマー層6を形成する方法としては、例えば、プライマーを塗布する方法などが挙げられる。プライマーとしては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製のプライマー「D3(RF)」などが挙げられる。プライマーの塗布方法としては、例えば、刷毛塗布、ローラー塗布、ハンドスプレー塗布などが挙げられる。プライマーの塗布量は、10〜100g/m2、好ましくは30〜50g/m2であるのがよい。
接着剤の塗布量は、通常100〜900g/m2、好ましくは200〜800g/m2、より好ましくは400〜600g/m2である。
シーリング材としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製の「CF−5044」、コニシ(株)製の「MSシール」などのシリコン系材料などが挙げられる。エポキシ樹脂系シーリング材としては、例えば、コニシ(株)製の「E209」などのノンサグタイプのエポキシ樹脂系材料などが挙げられる。シーリング材やエポキシ樹脂系シーリング材を注入するには、例えば、ゴムヘラなどを用いればよい。
なお、接着剤層の表面を平滑化するとは、局所的な凹凸をなくし、なだらかにすることであり、具体的には局所的な凸部の高さまたは凹部の深さを表面から3mm以下、好ましくは1mm以下にすることである。
ウェブ面に止水材を貼合する方法としては、例えば、図1(f)に示すように、上述した接着剤の塗布方法と同様にして止水材8の貼合面に接着剤を塗布して接着剤層7を形成した後、ウェブ3,3の遊間に位置合わせをして圧縮挿入すればよい。止水材8の貼合面に塗布する接着剤の塗布量は、100〜400g/m2、好ましくは200〜300g/m2であるのがよい。
さらに、図1(g)に示すように、鋼製伸縮装置1の対向するウェブ3,3の遊間に止水材8を設置し、止水材8を保持する支持金具9を取り付け、支持金具9に止水ゴム樋10を取り付ける。止水ゴム樋10としては、例えば、公知の止水ゴムパッキンなどが挙げられる。
図4は、上記のようにして施行された本発明の一実施形態に係る道路橋伸縮装置1を示す断面図である。この鋼製伸縮装置1は、道路橋に形成された遊間の上部に設けられ、遊間の伸縮に応じて互いに噛み合うようにした一対のフェースプレート2,2と、該一対のフェースプレート2,2のそれぞれの下部に位置するウェブ3,3と、このウェブ3,3の遊間に設けられた止水材8とを備える。対向するウェブ面3,3には、エポキシ樹脂層5を介して、プライマー層6、接着剤層7がこの順に形成されている(図2参照)。さらに、止水材8は、ウェブ3,3の遊間に挿入され、かつ支持金具9により支持され、支持金具9には、止水ゴム樋10が取り付けられている。
<破断強度測定>
(株)島津製作所製の万能引張試験機を用いて、各試験体を引張速度50mm/分にて上下に破断するまで拡張させ、試験体の破断強度を測定し、試験体の破断面の確認を行った。
<鋼材>
鋼材として、一般構造用圧延鋼材SS400(JIS G 3101、サイズ:32mmφ×15mmt)を用いた。
<エポキシ樹脂塗料>
エポキシ樹脂塗料として、日本パーカライジング(株)製の「トリック(登録商標)1000」を用いた。
<プライマー>
プライマーとして、東レ・ダウコーニング(株)製のプライマー「D3(RF)」を用いた。
<接着剤>
接着剤として、東レ・ダウコーニング(株)製の「CF−5077」を用いた。
<試験体の作製>
鋼材を2枚用意し、それぞれの鋼材の表面にベルトサンダー等でケレンをして下地処理を行った後、以下の処理を行った。
(塩分付着工程)
下地処理を行った面に、濃度5重量%の食塩水を噴霧して付着させ、乾燥させた。試験体用鋼材に隣接させて設置した100×100の鋼材の表面塩分量をポータブル表面塩分計を用いて測定した。
(成膜工程)
鋼材の食塩水を付着させた面に、エポキシ樹脂塗料を刷毛を用いて300g/m2均一に塗布し、乾燥させてエポキシ樹脂層を形成した。なお、成膜工程は室温23度の環境下で実施した。
(貼合工程)
前記エポキシ樹脂層上にプライマーを刷毛を用いて50g/m2均一に塗布し、乾燥させてプライマー層を形成した後、このプライマー層上に接着剤を刷毛を用いて300g/m2均一に塗布し、12時間以上乾燥させて接着剤層を形成し、この接着剤層上にさらに接着剤を刷毛を用いて300g/m2均一に塗布して、すぐに2枚の鋼材を重ね合わせ、48時間以上乾燥させて試験体を得た。
(塩水処理工程)
この試験体を20重量%沸騰塩水中に1時間浸漬させて、劣化を促進させた。
塩分付着工程を行わなかった他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
塩分付着工程および塩水処理工程を行わなかった他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
成膜工程を行わず、貼合工程において、下地処理を行った面にプライマーを塗布した他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
塩分付着工程および成膜工程を行わず、貼合工程において、下地処理を行った面にプライマーを塗布した他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
塩分付着工程、成膜工程および塩水処理工程を行わず、貼合工程において、下地処理を行った面にプライマーを塗布した他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
塩分付着工程および塩水処理工程を行わず、成膜工程において、エポキシ樹脂層の代わりに、(株)ゼットアールシー・ジャパン製の常温亜鉛メッキ「ZRC」(スプレー)をスプレー塗布して、常温亜鉛メッキ膜を形成した他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
塩分付着工程および塩水処理工程を行わず、成膜工程において、エポキシ樹脂層の代わりに、旭化工(株)製のウレタン反応形プライマー「アサヒシールプライマー」を塗布してウレタン反応形プライマーを形成した後、シャープ化学工業(株)製のペイントウレタンを塗布し、東レ・ダウコーニング(株)製の「CF−5077」を均一に塗布した他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
塩分付着工程、塩水処理工程を行わず、成膜工程において、エポキシ樹脂層の代わりに、関西ペイント(株)製のビニルブチラール系塗料エッチングプライマー「メタラクトH5」を均一に塗布して、エッチングプライマー層を形成した他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
塩分付着工程を行わず、成膜工程において、エポキシ樹脂層の代わりに、関西ペイント(株)製のビニルブチラール系塗料エッチングプライマー「メタラクトH5」を均一に塗布して、エッチングプライマー層を形成した他は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
(a)剥離形態
PP剥離:塗料層(P)/プライマー層(P)間の剥離
PC剥離:プライマー層(P)/接着剤層(C)間の剥離
C材打破:接着剤層(C)の材破
なお、塗料層(P)とは、各実施例・比較例で用いられた表1に示す塗料により形成された層である、以下同じ。
(b)剥離面積
A:試験体の破断表面積の90〜100%が材料破断された接着剤面であり、それ以外の破断面は鋼板面、エポキシ樹脂面またはプライマー面の露出面であった。
B:試験体の破断表面積の10〜30%程度が鋼板面、エポキシ樹脂面またはプライマー露出面であり、それ以外の破断面は材料破断された接着剤面であった。
C:試験体の破断表面積の30〜50%程度が鋼板面、エポキシ樹脂面またはプライマー露出面であり、それ以外の破断面は材料破断された接着剤面であった。
D:試験体の破断表面積の50〜70%程度が鋼板面、エポキシ樹脂面またはプライマー露出面であり、それ以外の破断面は材料破断された接着剤面であった。
E:試験体の破断表面積の70%以上が鋼板面、エポキシ樹脂面またはプライマー露出面であり、それ以外の破断面は材料破断された接着剤面であった。
2 フェースプレート
3 ウェブ
4 取付金具
5 エポキシ樹脂層
6 プライマー層
7 接着剤層
8 支持金具
9 止水ゴム樋
10 シーリング材層
Claims (7)
- 鋼製伸縮装置の対向するウェブの遊間に止水材を設置する道路橋伸縮装置用止水材の施工方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
(a)ウェブ面上にエポキシ樹脂層を形成する工程
(b)前記エポキシ樹脂層上に接着剤層を形成し、止水材を貼合する工程 - 前記工程(b)において、前記エポキシ樹脂層上にプライマー層を形成した後、プライマー層上に接着剤層を形成する請求項1に記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
- 前記工程(a)および(b)を行う前に、以下の工程を行う請求項1または2に記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
(i)対向するウェブの遊間に設置されている既設止水材を撤去する工程
(ii)ウェブ面にケレンを行った後、ウェブ面を洗浄する工程 - 前記工程(b)において、前記接着剤層の表面にある凹みにシーリング材を注入し、前記接着剤層の表面を平滑化した後に、止水材を貼合する請求項1〜3のいずれかに記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
- 前記エポキシ樹脂層が、一液型塗料であるエポキシ樹脂塗料から形成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の道路橋伸縮装置用止水材の施工方法。
- 道路橋に形成された遊間の上部に設けられ、遊間の伸縮に応じて互いに噛み合うようにした一対のフェースプレートと、該一対のフェースプレートのそれぞれの下部に位置するウェブと、このウェブの遊間に設けられた止水材とを備えた鋼製伸縮装置であって、
対向するウェブ面に、エポキシ樹脂層を介して、接着剤層および止水材がこの順に形成されていることを特徴とする道路橋伸縮装置。 - エポキシ樹脂層と接着剤層との間にプライマー層が形成されている請求項6に記載の道路橋伸縮装置。
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