JP2011168630A - 耐燃料透過性の良好な耐寒フッ素ゴム組成物 - Google Patents

耐燃料透過性の良好な耐寒フッ素ゴム組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】フッ素ゴムの低温特性と燃料遮蔽性が低下することなく耐圧縮永久歪み性が改善され、低温環境下で用いても十分な性能を発揮するシール材を提供できるシール材用組成物、および、上記シール材用組成物を用いた、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材として好適に使用し得るシール材の提供。
【解決手段】フッ素含有量が64重量%以上で、含臭素および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物架橋可能な共重合体であり、その共重合体の成分単位組成が、(a)パーフロロ(メトキシメトキシエチルビニルエーテル)成分単位10〜25モル%、(b)フッ化ビニリデン成分単位60〜80モル%、(c)四フッ化エチレン成分単位5〜20モル%、(d)六フッ化プロピレン成分単位0〜10モル%、及び(e)架橋部位用として少量の臭素化および/またはヨウ素化不飽和フロロ炭化水素成分単位((a)〜(d)の合計を100モル%とする)であるフッ素ゴム、窒化ホウ素、金属化合物、有機過酸化物、および多官能性モノマーを特定量で含有することを特徴とするフッ素ゴム系シール材用組成物及び該組成物を硬化してなるフッ素ゴム系シール材。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材形成用として好適なフッ素ゴム系シール材用組成物および自動車燃料と接触する部位用として好適なフッ素ゴム系シール材に関する。
さらに詳しくは、本発明は、耐寒性、耐燃料油性に優れるばかりでなく、耐圧縮永久歪み率にもバランスよく優れる、自動車燃料と接触する部位用として好適なフッ素ゴム系シール材が得られるようなフッ素ゴム系シール材用組成物および該フッ素ゴム系シール材用組成物から得られるシール材に関する。
近年、各国において自動車の増加に伴って、排出ガスの規制が一段と強化されている。この様な排出ガス規制の一つとして燃料蒸散規制がある。
この規制は、燃料蒸散ガスが炭化水素により構成され、大気中の窒素酸化物と光化学反応して光化学スモッグを引き起こすなどいう問題を回避するために設けられたものである。
しかしながら、現在もなお、この問題が十分に改善若しくは解決されたとはいい難く、それゆえ年々燃料蒸散規制が厳しくなってきている。
この様な背景のもと、燃料シール部品からの燃料蒸散ガスを低減する技術が強く望まれている。
燃料蒸散ガスの発生源の一つとして自動車が挙げられる。燃料蒸散ガスを低減するために用いられるものとして自動車燃料と接触する部位用のシール材がある。自動車燃料と接触する部位用のシール材には、燃料タンク等からの燃料油漏れを完璧に防止し得る「耐燃料油性」が求められており、近年はフッ素ゴムが用いられたシール材が主に使用されている。
また、自動車供給のグローバル化が求められている昨今では、北米のような寒冷地で使用しても十分な性能を発揮することを要求されるため、低温特性に優れ、且つ耐燃料油性の良いシール部材が要求されている。
しかしながら、フッ素ゴムには種々のものがあるが、良好な低温特性を示すフッ素ゴムを使用した場合、良好な低温特性と引き換えに燃料遮蔽性が悪化する傾向にある。
このため、燃料遮蔽性を低下させることなく低温特性が改善されたシール部材が強く望まれている。
そのような要求に対し、本出願人らは、特開2004−217892号公報(特許文献1)にて、低温特性の良好なフッ素ゴムに、マイカやグラファイトなどの充填剤を配合することにより、低温特性と燃料遮蔽性を改善する手法を提案した。
しかしながら、マイカやグラファイトを配合した場合、良好な低温特性と燃料遮蔽性を示すものの、カーボンを配合した場合と比較すると、耐圧縮永久歪み性が悪化するという不具合があった。
特開2004−217892号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、フッ素ゴムの低温特性と燃料遮蔽性が低下することなく耐圧縮永久歪み性が改善され、低温環境下で用いても十分な性能を発揮するシール材、特に自動車燃料用インジェクターなどの自動車燃料と接する部位等で好適に使用できるシール材用組成物を提供することを目的としている。
また、本発明は、フッ素ゴムの低温特性と燃料遮蔽性が低下することなく耐圧縮永久歪み性が改善された上記シール材用組成物を用いることにより、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材として好適に使用し得るシール材を提供することを目的としている。
本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物は、フッ素含有量が64重量%以上で、含臭素および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物架橋可能な共重合体であり、その共重合体の成分単位組成が、
フッ素含有量が64重量%以上で、含臭素および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物架橋可能な共重合体であり、その共重合体の成分単位組成が、
(a)パーフルオロメチルビニルエーテル成分単位、
(b)フッ化ビニリデン成分単位、
(c)四フッ化エチレン成分単位、
及び
(d)架橋部位用としての臭素化および/またはヨウ素化不飽和フロロ炭化水素成分単位であるフッ素ゴムと、
該フッ素ゴム100重量部に対して、
窒化ホウ素を5〜50重量部と、
金属化合物を2重量部以上と、
有機過酸化物を0.5〜6重量部と、
多官能性モノマーを1〜10重量部と
を含有することを特徴としている。
本発明に係るフッ素ゴムは、JIS K6261に規定のTR試験におけるTR−10値が、−30℃以下であることが好ましい。
また、本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物は、上記窒化ホウ素の平均粒径が2〜20μmであり、比表面積が2〜35m2/gであることが好ましい。
本発明に係る上記フッ素ゴム系シール材用組成物は、燃料油、潤滑油、作動油等の油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール、アルコールと油類の混合物、アルコールと芳香族または脂肪族炭化水素との混合物のうちの何れかの収容物と接触する部位用のシールに使用されるシール材形成用として好適に用いられ、特に、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材形成用として好適に用いられる。
本発明に係るフッ素ゴム系シール材は、上記の何れかに記載のフッ素ゴム系シール材用
組成物を架橋してなることを特徴としている。
本発明に係る上記フッ素ゴム系シール材は、燃料油、潤滑油、作動油等の油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール、アルコールと油類の混合物、アルコールと芳香族または脂肪族炭化水素との混合物のうちの何れかの収容物と接触する部位用のシール材用として好適に用いられ、特に、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材用として好適に用いられる。
本発明に係る上記フッ素ゴム系シール材は、JISK 6261に規定のTR試験にお
ける、シール材のTR−10値が−25℃以下であり、JISK6262の規定に準拠する測定法により200℃、70時間の条件下で測定した圧縮永久歪み率が40%以下であり、下記測定方法により測定した燃料油透過係数が70℃のとき20(mg・mm)/(cm2・24h)未満であることが、特に上記自動車燃料用シール材などの用途に用いる
上で好ましい。
[燃料油透過係数]
上部が開口した容器状治具(材質:SUS304、寸法:高さ5cm×直径5cm×肉厚5mm)内に、JIS K6258にて規定される燃料油を深さが3cm(体積40m
l)の量を入れ、次いで、ゴム試験片(寸法:直径5cm×2mm(厚))を容器状治具の開口部が封止されるように載置して目開き120μmの金属メッシュをゴム試験片上に載置した後、このゴム試験片と前記容器状治具との当接部が密封されるように、上部治具を締付け、次いで、このようにゴム試験片がセットされた燃料透過試験用治具を、常圧、70℃の条件に設定した恒温槽に入れ、24時間毎にその重量を測定し、その重量変化から、燃料透過量を測定し、燃料透過係数[mg・mm/ cm2・24h]=燃料透過量[mg/24h]×試験片厚さ[mm]/透過面積[cm2]から求める。
本発明に係る上記組成物を架橋(加硫)すれば、フッ素ゴムの耐寒性、耐燃料油性ばかりでなく、耐圧縮永久歪み性もバランス良く改善され、自動車燃料用インジェクターなどのような、自動車燃料油やアルコール、アルコールと油類の混合物、アルコールと芳香族または脂肪族炭化水素との混合物(混合油)等と接する部位、あるいはこれら燃料油が蒸気等として存在する部位に好適に使用できるシール材が得られる。
上記シール材は上記の部位で使用されても、燃料油などによりシール材が膨潤あるいは界面で剥離せず、燃料油の透過、燃料油の漏れ、シール材の劣化、腐食、変質、崩壊、変形などの発生がないか、あっても極めて少ない。
さらには、「耐燃料油性」、特に耐含酸素燃料性に優れ、また、冬季の寒冷地など極低温下におかれても、シール材の硬化、ひび割れ(低温脆化)などを発生しないことから「耐寒性」に優れる。
そして、該シール材は、耐寒性、耐燃料油性に優れるばかりでなく、耐圧縮永久歪み性もバランスよく改善されているので、優れたシール性が発揮され、上記用途に好適に使用できる。
本発明のフッ素ゴム系シール材、特に自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材は、上記フッ素ゴム系シール材用組成物、好ましくは上記自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材用組成物を加硫(架橋)してなり、常態物性(硬さ、引張強さ、伸び)は元より、耐熱性、耐寒性、耐燃料油性に優れ、且つ耐圧縮永久歪み性にもバランスよく優れるので、自動車燃料用シール材料として好適に用いることができる。
このフッ素ゴム系シール材は、耐熱性、耐寒性、耐燃料油性(特に耐含酸素燃料油性)にバランス良く優れるばかりでなく、低温特性、燃料遮断性、耐圧縮永久歪み性にバランス良く優れるので、上記用途に、中でも自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材として好適に使用され、さらには低温環境下で用いても十分なシール性能を発揮する。
上記フッ素ゴム系シール材は、例えば、スクィーズパッキンとして好適に用いられる。
図1は、本発明に係る自動車燃料用フッ素ゴム系シール材をインジェクター用Oリングとして用いた態様を示す説明図である。 図2は、本発明に係る自動車燃料用フッ素ゴム系シール材の燃料透過試験方法で用いられる燃料透過試験装置を説明する説明図である。 図3は、本発明で用いられる低温シール試験方法及び燃料シール試験方法を説明する説明図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明する。
まず、本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物およびフッ素ゴム系シール材について、具体的に説明する。
<フッ素ゴム系シール材用組成物>
本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物(シール材用組成物、組成物等とも言う。)は、以下に詳述する過酸化物架橋可能なフッ素ゴムと、充填材としての窒化ホウ素と、金属化合物(腐食防止剤、受酸剤)と、有機過酸化物と、多官能性モノマーとを含有している。
なお、本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物は、優れた耐熱性、耐寒性、耐燃料油性に優れるばかりでなく、低温特性、燃料遮蔽性、耐圧縮永久歪み性の何れにも優れるシール材を形成するために、該シール材組成物中に含まれる成分配合量の基準となる下記過酸化物架橋可能なフッ素ゴムを、フッ素ゴム系シール材用組成物中、50〜97重量%、好ましくは60〜90重量%の量で含有する。
<過酸化物架橋可能なフッ素ゴム>
本発明で用いられる過酸化物架橋可能なフッ素ゴムは、F19NMR法により求められるフッ素含有量が64重量%以上、好ましくは64〜68重量%、特に好ましくは64重量%以上65重量%未満であり、含臭素および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有している。
このフッ素ゴムを形成する際に用いられるフッ素ゴム系シール材用組成物中あるいは含フッ素共重合体中のフッ素含有量が上記範囲にあると、得られるシール材は、耐寒性と耐燃料油性のバランスが良好となる傾向がある。
上記フッ素ゴム(含フッ素共重合体)は、以下の成分を含有してなる含フッ素共重合体である。
(a)パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE):「CF2=CF(OCF3)」から誘導される成分単位(以下、単に、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)成分単位などと略称する。他の成分についても以下同様に略称する。);
(b)フッ化ビニリデン(VdF):「CH2=CF2」から誘導される成分単位;
(c)四フッ化エチレン(TFE):「CF2=CF2」から誘導される成分単位;
(d)架橋部位用としての臭素化および/またはヨウ素化不飽和フロロ炭化水素成分単位。
なお、上記含フッ素共重合体には、(a)〜(d)以外の成分が、シール性や材料物性が損なわれない範囲で少量含まれていてもよいが、(a)〜(d)成分のみからなることが好ましい。
上記(a)〜(d)以外の成分としては、例えば、パーフロロメトキシメトキシエチルビニルエーテル(PMMEVE):「CF3O−CF2O−C24O−CF=CF2」から
誘導される成分単位、ヘキサフルオロプロピレン(HFP):「CF2=CFCF3」から誘導される成分単位などが上げられる。
上記した臭素化および/またはヨウ素化不飽和フロロ炭化水素成分単位形成用のモノマーとしては、1-ブロモ-2-ヨード-パーフロロエタン、1-ブロモ-3-ヨード-パーフロロプロパンなどが挙げられる。
この含フッ素共重合体中においては、用いられた各モノマーは、その炭素・炭素2重結合部位で2重結合が開裂して単結合のモノマーユニット(重合単位、成分単位などとも言う。)となり、隣接するモノマーユニットと互いに結合(連結)しているものと考えられる。
そして、得られた含フッ素共重合体では、用いられた含フッ素単量体由来の含フッ素成分単位が、ランダムあるいは規則的に配列しており、固体または液体状である。
上記含フッ素共重合体の平均分子量は、含フッ素共重合体の成形加工性や機械的諸特性等を考慮して適宜決定可能であるが、平均分子量の指標としての極限粘度[η](測定法:ウベローデ粘度計での35℃における上記フッ素樹脂共重合体を含む溶液の落下時間から求めたもの。)が通常、0.2〜5.0dl/g、好ましくは、0.4〜3.0dl/gであることが成形加工性の点から望ましい。
なお、自動車用燃料、特に含酸素燃料には、『Aggressive』成分と称される酸性物質が存在し、これがゴム−金属接触部分にさびを発生させる原因と考えられている。
本発明では、フッ素ゴム系シール材用組成物およびフッ素ゴム系シール材に金属化合物を上記量で添加・含有しているので、『Aggressive』成分をシール材内部に吸収し、シール材−金属間の電池作用を防止することができるものと考えられる。
それゆえ、本発明のフッ素ゴム系シール材を特に自動車燃料用シール材などとして用いる場合には、このフッ素ゴム系シール材と接する金属製部材の腐食促進を、効率よく防止できるのであろうと考えられる。
このような過酸化物架橋可能なフッ素ゴムは、常法に準じて製造される。
このような過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(未加硫ゴム、未架橋の含フッ素共重合体などとも言う。)のムーニー粘度(JISK6300準拠、ML1+10 ,121℃)は
ゴム加工上10〜120、好ましくは20〜80であることが望ましいが、特に制限はない。
また、このような過酸化架橋可能なフッ素ゴムは、JIS K6261に規定のTR試
験におけるTR−10値が、好ましくは−30℃以下であることが望ましい。
<窒化ホウ素(偏平状充填剤)>
偏平状充填剤は、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材中にあって、シール材料の燃料遮蔽性の向上に寄与し、燃料の蒸散を一層抑制することが可能になる。
本発明のフッ素ゴム系シール材用組成物は、扁平状充填材として、窒化ホウ素を必須成分として含有している。
扁平状充填剤として窒化ホウ素を含有すると、シール材料の燃料遮蔽性の向上、燃料蒸散の抑制という効果を得るばかりでなく、低温特性と圧縮永久歪み性とを低下させることなく燃料遮蔽性を向上させることが可能となる。
この様な効果は、窒化ホウ素を含有せず、例えば、マイカ、タルク、カオリン、グラファイトなどを含有する場合には得られない。
なお、偏平充填剤としては、窒化ホウ素と、例えば、クレー、マイカ、グラファイト、二硫化モリブデン等とを1種または2種以上、本発明の機能を損なわない範囲で組み合わせて用いてもよい。
なお、窒化ホウ素には、複数の結晶系、例えば、六方晶系、立方晶系、菱面体晶系などがありいずれも使用可能であるが、本発明で用いられる窒化ホウ素の結晶形としては、六方晶系が好ましい。
これらの偏平充填剤は、平均粒子径φが2〜20μm、好ましくは5〜18μmであることが好ましい。
また、これらの偏平充填剤は、比表面積が2〜35cm2/g、好ましくは3〜20cm2/gであることが好ましい。
さらに、これらの偏平充填剤は、アスペクト比が3以上、好ましくは5〜30であることが好ましい。
平均粒子径、またはアスペクト比がこれ以下のものを用いると、燃料遮蔽性の向上が見られない。一方、これ以上の平均粒子径または比表面積のものを用いると、実用レベルの補強性が得られない(具体的には、ゴムの引張強度または破断伸びが小さい。)。
さらに、比表面積がこれ以下のものを用いると、実用レベルの補強性が得られない。一方、比表面積がこれ以上のものを用いると、燃料遮蔽性の向上が見られない傾向にある。
上記偏平充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、2種以上を混合して用いる場合には、得られる混合物の平均粒子径、比表面積、アスペクト比が上記範囲にある限り、平均粒子径、比表面積、アスペクト比がそれぞれ同一である偏平充填剤を2種以上混合して用いてもよく、また、平均粒子径、比表面積、アスペクト比の何れか1つ以上が異なる2種以上の偏平充填剤を混合して用いてもよい。
窒化ホウ素は、上記フッ素ゴム(FKM)100重量部あたり通常、5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の量で用いられる。窒化ホウ素の配合量が特に5重量部未満では添加効果である燃料の遮蔽性の向上が見られない傾向にある。
そして、特に50重量部を超える量で添加すると、得られるシール材形成用組成物の粘度が上昇し成型加工性がわるくなる傾向にあり、また、加硫してなるシール材は、非常に硬くなる傾向があり、さらには機械物性が悪化する傾向にある。
この場合、窒化ホウ素の配合量が特に5重量部未満では添加効果である燃料の遮蔽性の向上が見られない傾向がある。また、窒化ホウ素の配合量が特に50重量部を超える量であると、加硫してなるシール材は、非常に硬くなる傾向があり、その結果、得られるシール材形成用組成物の粘度が上昇し混練できなくなって、加工性が悪くなる傾向がある。
<金属化合物>
金属化合物は、腐食防止剤と受酸剤としての機能を有し、該金属化合物としては、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム等が挙げられる。
本発明では、これらの金属化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合するなどして組み合わせて使用してもよい。
このような金属化合物は、ゴム系シール材と当接する金属製部材の腐食防止効果などを有しているが、上記した種々の機能・効果を考慮すると、過酸化物架橋可能な(未架橋)フッ素ゴム100重量部に対して、通常2重量部以上、好ましくは5〜15重量部の量で用いられる。
このような金属化合物として、上市されているものとしては、例えば、近江化学工業社製の「カルディック」(水酸化カルシウム)、堺化学工業社製の亜鉛華(酸化亜鉛)、協和化学工業社製の「DHTシリーズ」(ハイドロタルサイト)などが挙げられる。
<有機過酸化物>
有機過酸化物としては、一般にゴムに使用可能なものであれば特に制限なく使用でき、過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(FKM)100重量部に対して、通常0.5〜6重量部、好ましくは1〜5重量部の量で用いられる。
有機過酸化物の配合量が、特に0.5重量部未満では、充分な架橋密度が得られない傾向にあり、また特に6重量部を超えると、発泡により架橋成形物が得られなかったり、得られてもゴム弾性、伸びが低下したりする傾向がある。
有機過酸化物としては、例えば、第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(第3ブチルパーオキシ)3,3,5トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n−ブチル−4,4−ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレートなどが挙げられる。これら有機過酸化物は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
<多官能性モノマー>
多官能性モノマーとしては、一般にゴムに使用可能なものであれば、特に制限なく使用でき、過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(FKM)100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部の量で用いられる。
多官能性モノマーの配合量が過酸化物架橋可能なフッ素ゴム(FKM)100重量部に対して、特に1重量部未満では、充分な架橋密度が得られない傾向にあり、また、特に1
0重量部を超える量で用いても、発泡により、架橋成形物が得られなかったり、得られても弾性、伸びが低下したりする傾向がある。
多官能性モノマーとしては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N' −m−フェニレンビスマレイミドなどが挙げられる。これら多官能性モノマーは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
<その他の配合成分>
ゴム組成物中には、以上の必須成分以外に、以下に例示する配合剤など、ゴム工業で一般的に使用されている配合剤を、必要に応じて適宜添加されていてもよい。
例えば、「平均粒径6μm、Keystone Filler & Mfg製、Mineral Black 325BA」などの、石炭を粉砕し、平均粒径φ10μm以下(通常φ1〜10μm)、好ましくは3〜8μmに微粉末化した瀝青質微粉末;
カーボンブラック、ホワイトカーボンなどの補強剤;
上記形状(平均粒径、アスペクト比)の偏平充填剤以外のタルク、クレー、グラファイト、珪酸カルシウムなどの充填剤;
ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックスなどの加工助剤;
老化防止剤;
可塑剤;など。
このような配合組成の架橋性含フッ素共重合体組成物を得るには、上記成分を配合し、該組成物が加硫(架橋)されないような温度、圧力条件、例えば、常温(例えば25℃)、常圧下に、必要により攪拌、混練等すればよい。なお、この攪拌・混練の際には、インターミックス、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練機またはオープンロールなどを使用することができる。
<架橋(加硫)>
架橋(加硫)成形体であり、特に、自動車燃料用フッ素ゴム系シール材に代表される用途に好適に使用されるフッ素ゴム系シール材(単に、シール材とも言う。)を調製するには、圧縮成型、移送成型、射出成型、押出成型、カレンダー成型等の一般のゴム成型法を適宜利用できる。
具体的には、例えば、次のような成型例が挙げられる。
すなわち、上記フッ素ゴム系シール材用組成物(配合物)を、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレスなどを用いて、通常、150〜200℃で3〜60分程度加熱(一次加硫)する。さらに、必要に応じて、加熱オーブンなどを用いて、通常、150〜250℃程度で1〜24時間程度加熱(二次加硫)してもよい。
なお、上記加硫は、必要により、加圧下にて行ってもよく、また上記組成物を、所定の型内に充填して行ってもよい。
このような架橋反応においては、架橋性含フッ素共重合体中より臭素またはヨウ素が有機過酸化物により脱離され、その脱離部分に多官能性モノマーが反応・結合して架橋構造が形成されているものと考えられる。
<シール材の用途>
このようにして得られるシール材は、加硫成形品であり、耐燃料油性、耐寒性、耐圧縮永久歪性にバランス良く優れ、耐熱性等にもバランス良く優れている。
したがって、その好適な用途としては、燃料インジェクター(燃料噴射装置、特に電磁
弁型燃料噴射装置)、燃料ポンプ、燃料タンク、燃料配管などにおける、燃料あるいはその気体と接触する部位でのシールに使用されるスクィーズパッキン(例:O−リング、X−リング、D−リング、角リングなど。)、その他のパッキン(例:Uパッキン、Vパッ
キン、Lパッキン、Jパッキンなどのリップパッキン)、ダイヤフラム、ライニング、ロ
ール、オイルシール等が挙げられる。
図1に、本発明のフッ素ゴム系シール材を燃料インジェクター(燃料噴射装置)のO−リングとして使用した態様を示す。
シール対象としては、自動車燃料油に限定されず、潤滑油、作動油等の油類の他、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、アルコールと油類の混合物、アルコールと芳香族または脂肪族炭化水素との混合物なども包含される。
このような本発明に係るフッ素ゴム系シール材は、JISK 6261に規定のTR試
験における、シール材のTR−10値が好ましくは−25℃以下であり、JISK6262の規定に準拠する測定法による圧縮永久歪み率が200℃、70hで好ましくは40%以下であり、燃料油透過係数が70℃のとき好ましくは20(mg・mm)/(cm2
24h)未満であることが望ましい。
なお、上記燃料油透過係数は、通常、下記燃料に浸されない材質の容器状治具と燃料油さえ用いれば、容器状治具の寸法や燃料油の量などに関係なく燃料油透過係数を一義的に測定可能であるが、本願発明においては、上記燃料油透過係数は次のように求める。
[図2]に示すように上部が開口した容器状治具20(材質:SUS304、寸法:高さ5cm×直径5cm×肉厚5mm)内のb部に、JIS K6258にて規定される燃
料油Cを深さが約3cm(体積約40ml)の量を入れる。
次いで、ゴム試験片30(寸法:直径5cm×2mm(厚))を容器状治具20の開口部が封止されるように載置して目開き120μmの金属メッシュ60をゴム試験片30上に載置した後、このゴム試験片30と前記容器状治具20との当接部が密封されるように、上部治具40を締付ける。
なお、金属メッシュ60は、主に、燃料油の圧力によりゴムの試験片が上側に膨らんで透過面積が変ってしまうことを防止する目的で用いる。
次いで、このようにゴム試験片がセットされた燃料透過試験用治具50を、常圧、70℃の条件に設定した恒温槽(図示せず)に入れ、24時間毎にその重量を測定し、その重量変化から、燃料透過量を測定する。
次いで、燃料透過係数[mg・mm/ cm2・24h]=燃料透過量[mg/24h]×試験片厚さ[mm]/透過面積[cm2]から燃料透過係数を求める。
以下、本発明に係るフッ素ゴム系シール材用組成物、特に自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材用組成物および、フッ素ゴム系シール材、特に自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材について、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例などで用いた試験方法、配合成分の組成、物性等は、以下の通りである。
<試験方法>
[硬さ]
JIS K6253:1997に準拠して、測定温度23℃でデュロメータ法によりA硬さを測定した

[引張試験]
JIS K6251に準拠して、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、架橋シートの破断時の引張強度と伸びを測定した。
[耐寒性]
耐寒性は、JIS K6261に準拠して、低温弾性回復試験(TR試験)により、TR−10
(℃)(加えた伸びの 10%が回復する温度)を測定して評価した。
[燃料透過試験]
図2に示す治具50を用いて下記の通り燃料透過試験を行い、燃料油透過係数を求めた。
すなわち、燃料透過試験は、図2に示すように上部が開口した容器状治具20(材質:SUS304、寸法:高さ5cm×直径5cm×肉厚5mm)内のb部にJIS K6258にて
規定される燃料油Cを深さが約3cm(体積約40ml)の量を入れた。
次いで、ゴム試験片30(寸法:直径5cm×2mm(厚))を容器状治具20の開口部が封止されるように載置して目開き120μmの金属メッシュ60をゴム試験片30上に載置した後、このゴム試験片30と前記容器状治具20との当接部が密封されるように、上部治具40を締付けた。
次いで、このようにゴム試験片がセットされた燃料透過試験用治具50を、常圧、70℃の条件に設定した恒温槽(図示せず)に入れ、24時間毎にその重量を測定し、その重量変化から、燃料透過量を測定し、燃料透過係数を次のように求めた。
燃料透過係数[mg・mm/ cm2・24h]=燃料透過量[mg/24h]×試験片厚さ[mm]/透過面積[cm2]
[圧縮永久歪み試験]
JISK 6262の規定に準拠する測定法により、圧縮永久歪み試験を行った。
すなわち、G25(JIS B 2401)サイズのOリングを所定の厚さのスペーサーと一緒に金属板ではさみボルトで締めて25%圧縮した。次いで、常圧、200℃の条件に設定した恒温槽(図示せず)に上記の圧縮したOリングを入れ、70時間放置した後、耐圧縮永久歪み性の指標となる圧縮永久歪み率を測定した。
[低温シール試験]
図3は、低温シール試験に用いた治具の断面模式図である。
この低温試験用治具10は、下部治具2と、その上面にセットされる上部治具1とからなる。
下部治具2の上面2aには、平面リング状の溝4が設けられており、該溝内には、「P−24O−リング」3が嵌着されている。
また、上部治具1には、上下に貫通する孔5が設けられ、孔5内の下部5aには、フッ素系不活性液体(商品名「フロリナート(R)」、米国3M社製)aが入れられ、その液体aの下面は下部治具2の上面2aと接し封止されている。また、上記液体aの上方には、液体aを加圧可能にプレス6が配設されている。
以下の低温シール試験では、このような図3に示す低温シール試験用治具のa部にフッ素系不活性液体(「フロリナートFC77」(R)、米国3M社製)を入れた後、−45℃の恒温槽に1時間放置する。
その後、図3中、矢印(→)で示すように、プレス6を押し下げて1MPaの圧力をかけ、下部治具2と上部治具1との接合面bからの上記フッ素系不活性液体の漏れの有無を確認する。
[燃料シール試験]
燃料シール試験も、図3に示す治具を用いて行う。
すなわち、燃料シール試験では、図3に示す治具のa部に、フッ素系不活性液体(商品名「フロリナートFC77(R)」、米国3M社製)aに代えて、メタノールを入れた後、25℃で168時間放置する。
その後、メタノールを除去し、代わりに上記フッ素系不活性液体「フロリナートFC77」を入れた後、図3中、矢印(→)で示すように、プレス6を押し下げて、1MPaの圧力をかけ、下部治具2と上部治具1との接合面b部からの上記フッ素系不活性液体「フロリナートFC77」の漏れの有無を確認する。
なお、以下の実施例、比較例で用いた含フッ素(共)重合体、補強材等の略号は、以下の通り。
(イ−1)フッ素ゴム(A1):
デュポンエラストマー社製ポリマー「バイトンGLT600S」であって、以下の組成、性状を有する共重合体。
(a1)パーフルオロメチルビニルエーテル成分単位、
(b1)フッ化ビニリデン成分単位、
(c1)四フッ化エチレン成分単位、及び
(d1)架橋部位用としてヨウ素化不飽和フロロ炭化水素成分単位
を有する含フッ素共重合体(未架橋フッ素ゴム、フッ素含有量64重量%、TR−10値:30℃以下)、ムーニー粘度(JISK6300準拠、ML1+10,121℃)65。
(イ−2)フッ素ゴム(A2):
デュポンエラストマー社製ポリマー「バイトンGBL200」であって、
ヘキサフルオロプロピレン成分単位、
フッ化ビニリデン成分単位、
四フッ化エチレン成分単位、及び
架橋部位用としてヨウ素化不飽和フロロ炭化水素成分単位を有する含フッ素共重合体(未架橋フッ素ゴム、フッ素含有量68重量%、TR−10値:−15℃)、ムーニー粘度(JISK6300準拠、ML1+10,121℃)65。
(ロ)MTカーボン:
キャンカーブ製、 THERMAX N990LSRHDBP(商品名)
[実施例1]
<配合物の組成>
フッ素ゴム(A1) 100重量部、
MTカーボン 20重量部
窒化ホウ素1 (電気化学工業製電荷ボロンナイトライドHGP:結晶形:六方晶、平均粒子径5μm、比表面積11m2/g) 20重量部、
酸化亜鉛(金属化合物として) 4重量部、
過酸化物(日本油脂社製 パーヘキサ25B−40, 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン)40%希釈品) 1.5重量部
トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製タイク(WH−60) 3重量部。
上記組成の配合物を、ニーダーに投入し、25℃から100℃まで昇温させながら20分間混練した後、オープンロールで、10分間混練した。この未加硫ゴム組成物の加硫成形は、厚さ2mmのシート、あるいはOリング形状の金型を用いて、熱板設定温度180℃にて、加硫プレスにより10分間圧縮成形して一次加硫することで加硫品を得た。次いで、加熱オーブンにより230℃×22時間の二次加硫により行い、150mm×150mm×2mm(厚)の加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートについて、前記方法にてTR試験を行った。
また、得られた加硫シートを用いて前記方法にて透過係数を求め、さらに、得られたP−24サイズのOリングを用いて前記方法にて圧縮永久歪み率を求めた。
また、低温シール性試験及び燃料シール試験についても行った。
結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えて窒化ホウ素2(電気化学工業製電荷ボロンナイトライドMGP:六方晶、平均粒子径13μm、比表面積5m2/g)を用いた以外は
実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えてマイカ1(三信鉱工社製FSN,平均粒径5μm)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えてマイカ2(三信鉱工社製FSE,平均粒径10μm)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えてマイカ3(三信鉱工社製F1,平均粒径31〜45μm)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、配合物の組成を下記の通りとした以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
<配合物の組成>
フッ素ゴム(A1) 100重量部、
MTカーボン 40重量部
酸化亜鉛(金属化合物として) 4重量部、
過酸化物(日本油脂社製 パーヘキサ25B−40, 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン)40%希釈品) 1.5重量部、
トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製タイク(WH−60) 3重量部。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、配合物の組成を下記の通りとした以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
<配合物の組成>
フッ素ゴム(A2) 100重量部、
MTカーボン 40重量部
酸化亜鉛(金属化合物として) 4重量部、
過酸化物(日本油脂社製 パーヘキサ25B−40, 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン)40%希釈品) 1.5重量部、
トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製タイク(WH−60) 3重量部。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例6]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えて焼成タルク(浅田製粉社製エンスタック24、平均粒子径7μm、比重 3.3)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例7]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えて表面処理した焼成カオリン(BSAF社製Translink37、2次粒子径1.4μm)を用いた以外は実施例1と同様にして加
硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例8]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えてグラファイトC−1(日電カーボン製、平均粒径10.7μm)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイ
ズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
[比較例9]
実施例1において、フッ素ゴム(A1)に代えてフッ素ゴム(A2)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
[実施例3]
実施例1において、窒化ホウ素1の配合量を20重量部から45重量部に変更した以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
[比較例10]
実施例1において、窒化ホウ素1の配合量を20重量部から60重量部に変更した以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
[比較例11]
実施例1において、窒化ホウ素1の配合量を20重量部から3重量部に変更した以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えて窒化ホウ素3(電気化学工業製電荷ボロンナイトライドSGP:結晶系:六方晶、平均粒子径18μm、比表面積2m2/g)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
[比較例12]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えて窒化ホウ素4(電気化学工業製電荷ボロンナイトライドJP75:結晶系:六方晶、平均粒子径25μm、比表面積3m2/g)を用いた
以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
[比較例13]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えて窒化ホウ素5(電気化学工業製電荷ボロンナイトライドSP7:結晶系六方晶、平均粒子径1.4μm、比表面積37m2/g)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
[実施例5]
実施例1において、窒化ホウ素1に代えて窒化ホウ素6(電気化学工業製電荷ボロンナイトライドSP-2:結晶系六方晶、平均粒子径4μm、比表面積34m2/g)を用いた以
外は実施例1と同様にして加硫シートおよびP−24サイズのOリングを得た。
得られた加硫シートおよびO−リングについて実施例1と同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
Figure 2011168630
Figure 2011168630
表1に示す試験結果より、本発明の自動車燃料用フッ素ゴム系シール材の好適な例を示す実施例1は耐寒性、耐燃料油性ともに良好であり、かつ耐圧縮歪み性に優れていることから耐熱性やシール性が良好であることがわかる。また、本発明の自動車燃料用フッ素ゴ
ム系シール材が上記良好な物性を有することは、該フッ素ゴム系シール材が自動車燃料用シール材として好適に使用できることを示している。
一方、窒化ホウ素の代わりにマイカ、焼成タルク、表面処理焼成カオリンあるいはグラファイトを用いた比較例1〜3及び6〜8のシール材は、耐寒性、耐燃料性に優れるものの、圧縮永久歪み率が大きく、耐熱性やシール性に劣ることが分かる。
また、窒化ホウ素はもとより、その他の偏平状充填剤を用いなかった比較例4及び5のシール材では、耐圧縮永久歪み率が小さいものの、耐寒性あるいは耐燃料油性に劣ることがわかる。
そして、窒化ホウ素を含有する自動車燃料用フッ素ゴム系シール材であっても、組成が本願規定範囲外であるフッ素ゴムを用いた比較例9では、燃料透過性や圧縮永久歪み率が大きく向上しているものの耐寒性に劣ることがわかる
そして、窒化ホウ素の配合量が本願規定範囲外である比較例10及び11では、機械物性に劣ることがわかる。
また、窒化ホウ素の平均粒子径が本願規定範囲外である比較例12では、燃料透過性や圧縮永久歪み率が良化しているものの引張強度に劣ることがわかる
さらに、窒化ホウ素の平均粒子径が本願規定範囲外である比較例13では、燃料透過性がやや劣り、伸びも劣ることがわかる
以上詳述したことから明らかなように、本発明のフッ素ゴム系シール材は、耐熱性、耐寒性、耐燃料油性に優れるばかりでなく、耐圧縮永久歪み性にもバランスよく優れる。
そのため、自動車燃料と接触するような部位で用いられるシール材として好適であるばかりではなく、特に低温環境下で用いられる用途にも好適である。
また本発明によれば、このようなフッ素ゴム系シール材が得られるようなフッ素ゴム系シール材用組成物が提供される。
1・・・・・・上部治具
2・・・・・・下部治具
2a・・・・・・下部治具の上面
3・・・・・・「P−24」Oリング
4・・・・・・平面リング状の溝
5・・・・・・貫通孔
5a・・・・・・孔内の下部
6・・・・・・プレス
10・・・・・・低温試験用治具
a・・・・・・フッ素系不活性液体(商品名「フロリナートFC77(R)」、米国3M10社製)
b・・・・・・燃料油C
20・・・・・・上部が開口した容器状治具
30・・・・・・ゴム試験片
40・・・・・・上部治具
50・・・・・・燃料透過試験用治具
60・・・・・・金属メッシュ

Claims (9)

  1. フッ素含有量が64重量%以上で、含臭素および/または含ヨウ素化合物に由来する架橋部位を有し、過酸化物架橋可能な共重合体であり、その共重合体の成分単位組成が、
    (a)パーフルオロメチルビニルエーテル成分単位、
    (b)フッ化ビニリデン成分単位、
    (c)四フッ化エチレン成分単位、
    及び
    (d)架橋部位用としての臭素化および/またはヨウ素化不飽和フロロ炭化水素成分単位であるフッ素ゴムと、
    該フッ素ゴム100重量部に対して、
    窒化ホウ素を5〜50重量部と、
    金属化合物を2重量部以上と、
    有機過酸化物を0.5〜6重量部と、
    多官能性モノマーを1〜10重量部と
    を含有することを特徴とするフッ素ゴム系シール材用組成物。
  2. 上記窒化ホウ素の平均粒径が2〜20μmであり、比表面積が2〜35m2/gであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ゴム系シール材用組成物。
  3. 上記フッ素ゴム系シール材用組成物が、燃料油、潤滑油、作動油等の油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール、アルコールと油類の混合物、アルコールと芳香族または脂肪族炭化水素との混合物のうちの何れかの収容物と接触する部位用のシール材形成用として用いられる、請求項1または2に記載のフッ素ゴム系シール材用組成物。
  4. 上記フッ素ゴム系シール材用組成物が、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材形成用として用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素ゴム系シール材用組成物。
  5. 上記請求項1〜4の何れかに記載のフッ素ゴム系シール材用組成物を架橋してなるフッ素ゴム系シール材。
  6. 上記フッ素ゴム系シール材が、燃料油、潤滑油、作動油等の油類;芳香族炭化水素;脂肪族炭化水素;アルコール、アルコールと油類の混合物、アルコールと芳香族または脂肪族炭化水素との混合物のうちの何れかの収容物と接触する部位用のシール材用として用いられる、請求項5に記載のフッ素ゴム系シール材。
  7. 上記フッ素ゴム系シール材が、自動車燃料と接触する部位用のフッ素ゴム系シール材用として用いられる、請求項5に記載のフッ素ゴム系シール材。
  8. JISK 6261に規定のTR試験における、シール材のTR−10値が−25℃以
    下であり、
    JISK6262の規定に準拠する測定法により200℃、70時間の条件下で測定した圧縮永久歪み率が40%以下であり、
    下記測定方法により測定した燃料油透過係数が20(mg・mm)/(cm2・24h
    )未満である、
    請求項5〜7の何れかに記載のフッ素ゴム系シール材;
    [燃料油透過係数]
    上部が開口した容器状治具(材質:SUS304、寸法:高さ5cm×直径5cm×肉厚5mm)内に、JIS K6258にて規定される燃料油を深さが3cm(体積40m
    l)の量を入れ、次いで、ゴム試験片(寸法:直径5cm×2mm(厚))を容器状治具の開口部が封止されるように載置して目開き120μmの金属メッシュをゴム試験片上に載置した後、このゴム試験片と前記容器状治具との当接部が密封されるように、上部治具を締付け、次いで、このようにゴム試験片がセットされた燃料透過試験用治具を、常圧、70℃の条件に設定した恒温槽に入れ、24時間毎にその重量を測定し、その重量変化から、燃料透過量を測定し、燃料透過係数[mg・mm/ cm2・24h]=燃料透過量[mg/24h]×試験片厚さ[mm]/透過面積[cm2]から求める。
  9. 上記フッ素ゴム系シール材がスクィーズパッキンである請求項5〜8の何れかに記載のフッ素ゴム系シール材。
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