JP2011154997A - リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池用電極、リチウム二次電池及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含有するリチウム二次電池用活物質及びそれを含有するリチウム二次電池であって、前記固溶体が含有する金属元素の組成比率が、Li1+(x/3)Co1−x−y−zNiy/2Mgz/2Mn(2x/3)+(y/2)+(z/2)(x>0、y>0、z>0、x+y+z<1)を満たし、空間群P3112に帰属可能なエックス線回折パターンを有し、エックス線回折測定による(003)面と(114)面の回折ピークの強度比が、I(003)/I(114)≧1.15であることを特徴とする。また、充電を行う工程に特徴を有するリチウム二次電池の製造方法である。
【選択図】なし
Description
そして、特許文献3に記載の固溶体を活物質としたリチウム二次電池は、後述の比較例にあるように、高率放電時の容量が得られないという問題があった。
Li[Liz/(2+z){(LixNi(1-3x)/2Mn(1+x)/2)(1-y)Coy}2/(2+z)]O2・・・(I)
(ただし、0.01≦x≦0.15 0≦y≦0.35
0.02(1−y)(1−3x)≦z≦0.15(1−y)(1−3x))」(請求項1)の発明が記載され、Li量が化学量論組成より若干リッチな範囲にあることが重要であり、これにより電池性能(特にレート特性や出力特性)が向上することが示されている(段落[0014]及び[0015])が、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物がマグネシウムを含有する特定組成である場合に、放電容量が顕著に向上し、高率放電特性が顕著に向上することは示唆されていない。
なお、本発明に係る前記固溶体のエックス線回折図は、空間群P3112に帰属可能なものであるが、これを空間群R3−mに帰属することも不可能ではない。このとき、空間群P3112に帰属した場合における前記(114)面の回折ピークは、空間群R3−mに帰属した場合には「(104)面の回折ピーク」と読み替える必要がある。ここで、空間群の表記に関し、「R3−m」は、本来は「3」の上にバー“−”を付して表記すべきところ、本明細書では、便宜上、“R3−m”と表記することとする。
後述の実施例にあるように、焼成温度を920〜1000℃とすることによって、「固溶体が含有する金属元素の組成比率が、Li1+(x/3)Co1−x−y−zNiy/2Mgz/2Mn(2x/3)+(y/2)+(z/2)(x>0、y>0、z>0、x+y+z<1)を満たす」リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、空間群P3112に帰属可能なエックス線回折パターンを有し、エックス線回折測定による(003)面と(114)面の回折ピークの強度比が、I(003)/I(114)≧1.15となり、放電容量が大きく、かつ、高率放電特性が優れた活物質が得られる。
上記のように、好ましい焼成温度は、活物質の酸素放出温度により異なるから、一概に焼成温度の好ましい範囲を設定することは難しいが、好ましくは900から1050℃、より好ましくは920から1000℃であれば高い特性を発揮することができる。
硫酸マンガン5水和物と硫酸ニッケル6水和物と硫酸コバルト7水和物と硫酸マグネシウム7水和物をCo、Ni、Mn、Mgの各元素が12.5:17.438:68.75:1.312の比率となるようイオン交換水に溶解させ混合水溶液を作製した。その際に、その合計濃度が0.667mol/l、体積が180mlとなるようにした。次に、1リットルのビーカーに600mlのイオン交換水を準備し、湯浴を用いて50℃に保ち、8NのNaOHを滴下することでpHを12.0に調整した。その状態でArガスを30minバブリングさせ、溶液内の溶存酸素を十分取り除いた。ビーカー内を回転速度700rpmで攪拌させ、先程の硫酸塩の混合水溶液を3ml/minのスピードで滴下した。その間、湯浴を用いて温度を一定に保ち、8NのNaOHを断続的に滴下することでpHを一定に保った。同時に、還元剤として濃度2.0mol/lのヒドラジン水溶液50mlを0.83ml/minのスピードで滴下した。両方の滴下が終了した後、攪拌を止めた状態で12h以上静止することで共沈水酸化物を十分粒子成長させた。
2θ:18.6±1°における回折ピークから(003)面の回折ピークの面積を求め、2θ:44.1±1°における回折ピークから(114)面の回折ピークの面積を求め、両者の回折ピークの強度比(面積比)I(003)/I(114)を算出したところ、1.41であった。
なお、「ピーク強度」とは、エックス線検出器がエックス線量をカウントした数の積算値であるから、エックス線回折図に現れるピークにおいては、「面積」に相当する。但し、比較するピークの幅に差がないかピークの幅が十分に狭い場合には、ピークの高さを比較すればよいが、今回は、ピークの高さだけではなく、面積を比較した。
さらに、エックス線回折図形のデータをコンピュータ上でリートベルト解析を行い、この解析過程で、ガウス関数およびローレンツ関数に含まれる結晶パラメータを精密化し、このようにして求めた結晶パラメータから、格子歪み及び結晶子サイズをそれぞれ算出したところ、結晶子サイズは180nmであった。
表1の実施例2〜5に示す焼成温度(980℃、960℃、940℃、920℃)に変更した他は、実施例1と同様にして、本発明に係る活物質を合成した。
実施例1と同様に、回折ピークの強度比(面積比)I(003)/I(114)を算出したところ、1.15〜1.35であった。
表1の比較例1〜5に示す焼成温度(900℃、800℃、700℃、550℃、1100℃)に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例に係る活物質を合成した。
比較例5については、空間群がC2/mであり、P3112とは異なるものであった。
実施例1と同様に、回折ピークの強度比(面積比)I(003)/I(114)を算出したところ、0.95〜1.13であった。
共沈水酸化物前駆体が含有する金属元素の組成及び水酸化リチウム一水和物の混合量について、表1の実施例6〜9に示す組成式に沿って変更した他は、実施例1と同様にして、本発明に係る活物質を合成した。
また、回折ピークの強度比(面積比)I(003)/I(114)を算出したところ、1.35〜1.51であった。
比較例6〜9の活物質は、実施例6〜9とそれぞれ同じ固溶体の組成とし、焼成温度を800℃に変更した他は、実施例1と同様にして、合成した。
また、回折ピークの強度比(面積比)I(003)/I(114)を算出したところ、1.12〜1.13であった。
共沈水酸化物前駆体が含有する金属元素からMgを除き、組成がLi1.2Co0.1Ni0.15Mn0.55O2となるように変更し、表1の比較例10〜15に示す焼成温度(1000℃、900℃、800℃、700℃、550℃、1100℃)に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例に係る活物質を合成した。
比較例15については、空間群がC2/mであり、P3112とは異なるものであった。
実施例1と同様に、回折ピークの強度比(面積比)I(003)/I(114)を算出したところ、0.94〜1.422であった。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにAlを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.144Al0.012Mn0.544O2を合成した。
硫酸マンガン5水和物と硫酸ニッケル6水和物と硫酸コバルト7水和物をCo、Ni、Mnの各元素が12.69:18.28:69.03の比率となるようイオン交換水に溶解させ混合水溶液を作製した。その際に、その合計濃度が0.667mol/l、体積が180mlとなるようにした。次に、1リットルのビーカーに600mlのイオン交換水を準備し、湯浴を用いて50℃に保ち、8NのNaOHを滴下することでpHを12.0に調整した。その状態でArガスを30minバブリングさせ、溶液内の溶存酸素を十分取り除いた。ビーカー内を回転速度700rpmで攪拌させ、先程の硫酸塩の混合水溶液を3ml/minのスピードで滴下した。その間、湯浴を用いて温度を一定に保ち、8NのNaOHを断続的に滴下することでpHを一定に保った。同時に、還元剤として濃度2.0mol/lのヒドラジン水溶液50mlを0.83ml/minのスピードで滴下した。両方の滴下が終了した後、攪拌を止めた状態で12h以上静止することで共沈水酸化物を十分粒子成長させた。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにAlを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.1395Al0.021Mn0.5395O2を合成した。
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成と水酸化リチウム一水和物及び水酸化アルミニウムの混合量について、表1の比較例17に示す組成式に沿って変更した他は、比較例16と同様にして比較例に係る活物質を合成した。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにTiを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.15Ti0.03Mn0.52O2を合成した。
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成と水酸化リチウム一水和物及び二酸化チタンの混合量について、表1の比較例18に示す組成式に沿って変更した他は、比較例16と同様にして比較例に係る活物質を合成した。
活物質としての特性を本発明のものと比較するために、Mgの代わりにTiを含有する固溶体Li1.2Co0.1Ni0.15Ti0.05Mn0.5O2を合成した。
共沈水酸化物前駆体が含有する遷移金属元素の組成と水酸化リチウム一水和物及び二酸化チタンの混合量について、表1の比較例19に示す組成式に沿って変更した他は、比較例16と同様にして比較例に係る活物質を合成した。
実施例1〜9及び比較例1〜19のそれぞれの活物質をリチウム二次電池用正極活物質として用いて以下の手順でリチウム二次電池を作製し、電池特性を評価した。
また、比較例5の活物質は、実施例1〜5と上記の金属元素比率は同一であるが、焼成温度が1100℃と高いため、回折ピークの強度比はI(003)/I(114)≧1.15を満たすものの、空間群P3112に帰属可能なエックス線回折パターンを有していないので、放電容量及びレート比率が極めて低くなった。
さらに、実施例1と比較例10とを比較すると、実施例1の活物質の放電容量が242mAh/gであるのに対して、比較例10の活物質の放電容量は223mAh/gであるから、Niの一部をMgで置換することにより、放電容量が顕著に向上することが分かる。このようにMgを含有させることにより、放電容量が顕著に向上することは予測可能とはいえない。
したがって、放電容量を顕著に向上させるためには、リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体が含有する金属元素の組成比率を、Li1+(x/3)Co1−x−y−zNiy/2Mgz/2Mn(2x/3)+(y/2)+(z/2)(x>0、y>0、z>0、x+y+z<1)とするだけでは十分ではなく、エックス線回折測定による(003)面と(114)面の回折ピークの強度比を、I(003)/I(114)≧1.15とすることが必要であるといえる。
Claims (9)
- α−NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含有するリチウム二次電池用活物質であって、前記固溶体が含有する金属元素の組成比率が、Li1+(x/3)Co1−x−y−zNiy/2Mgz/2Mn(2x/3)+(y/2)+(z/2)(x>0、y>0、z>0、x+y+z<1)を満たし、空間群P3112に帰属可能なエックス線回折パターンを有し、エックス線回折測定による(003)面と(114)面の回折ピークの強度比が、I(003)/I(114)≧1.15であることを特徴とするリチウム二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体が含有する金属元素の組成比率が、1/3<x<2/3、0<y<2/3、0<z<0.3であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、Li[Li1/3Mn2/3]O2、LiNi1/2Mn1/2O2、LiCoO2及びLiMg1/2Mn1/2O2の4つの成分の固溶体から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、構成されるそれぞれの元素の価数が、Li1+,Mn4+,Ni2+,Co3+,Mg2+であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 920〜1000℃の焼成温度で焼成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物の固溶体は、共沈法を用いて製造されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用活物質。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用活物質を含有するリチウム二次電池用電極。
- 請求項7に記載のリチウム二次電池用電極を備えたリチウム二次電池。
- 充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)以下である充電方法が採用される請求項8に記載のリチウム二次電池を製造するための製造方法であって、4.3V(vs.Li/Li+)を超え4.8V(vs.Li/Li+)以下の正極電位範囲に出現する、電位変化が比較的平坦な領域に少なくとも至る充電を行う工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
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