(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1A乃至図25を参照して説明する。図1Aは、後述するジブ8が格納される格納状態での車両形クレーン1を示す図である。図1Aに示すように、車両形クレーン1は、車体1Aと、車体1A上に取り付けられるジブ張出し装置2とを備える。ジブ張出し装置2は、旋回台3と、旋回台3に取り付けられるブーム4とを備える。ブーム4の基端部は、旋回台3に起伏可能に枢支されている。ブーム4と旋回台3との間には、ブーム4を起伏するためのブーム起伏シリンダ(図示しない)が設けられている。車体1A上の旋回台3の近傍には、走行運転室とクレーン操作室とを兼ねる運転室5が配置されている。車体1Aの前側と後側には、それぞれアウトリガ6A,6Bが設けられている。
また、車両形クレーン1は、ブーム4の長さを補うジブ8を備える。ジブ8は、長手方向に伸縮可能となっている。ジブ8が格納される格納状態では、ジブ8は、先端をブーム4の基端側に、基端をブーム4の先端側に向けた状態で、ブーム4の一側面に沿って配置されている。
ブーム4の先端部には、2本のブーム側テンションロッド7A,7Bが連結されている。ジブ8の先端部には、伸縮可能な2本のジブ側テンションロッド9A,9B(図1B参照)が連結されている。また、ブーム4の先端部には、第1のワイヤロープW1を介してメインフック10Aが支持されている。
ジブ8を使用する際には、まず、図1Aに示すような格納状態から図1Bに示すような下抱き状態にジブ8を移動する。下抱き状態では、ジブ8がブーム4の下面に沿って配置される。そして、ジブ8の前方への張出し作業を行う。図1Cに示すように、下抱き状態でジブ8は伸長され、ジブ8の基端がブーム4の先端部に連結される。また、下抱き状態で、ブーム側テンションロッド7A,7Bとジブ側テンションロッド9A,9Bとを連結する。
そして、図1Dに示すように、ブーム起伏シリンダによりブーム4を例えば最も起状した位置まで起状する。この状態からジブ8を収縮する。この際、ジブ8は基端部のみがブーム4の先端部で枢支された状態となる。これにより、図1Eに示すように、ジブ8が、ブーム4の先端部との連結部を中心に、鉛直方向に垂れ下がった垂下状態まで回動する。そして、図1Fに示すように、ブーム起伏シリンダによりブーム4を伏状させ、垂下状態を維持した状態でジブ8の先端部を地上から手の届く位置に配置する。この状態で、ジブ側テンションロッド9A,9Bの伸縮を規制し、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さをロックする。
また、この状態で、第2のワイヤロープW2をジブ8の先端まで引き出し、第2のワイヤロープW2の先端にサブフック10Bを吊り下げる。そして、図1Gに示すように、ブーム4を再び起状することにより、ジブ8が垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態に配置される。そして、図1Hに示すように、振出し開始状態からジブ8を伸縮することにより、ジブ8が張出し方向の前方に振出される。
図2は、ブーム4を示す図である。図2に示すように、ブーム4は、長手方向に延設されるブーム本体11と、ブーム本体11の先端側に配設されるブームヘッド12とを備える。ブームヘッド12の下端は、ブーム本体11の下面より下側まで延設されている。
ブーム本体11の基端部には、ブーム支持用ブラケット13が設けられている。ブーム4は、ブーム支持用ブラケット13でブーム支持用ピン(図示しない)を介して旋回台3に起伏可能に枢支されている。ブーム本体11には、ブーム起伏シリンダ(図示しない)のロッドが取り付けられるブーム起伏シリンダ用ブラケット14が設けられている。また、ブーム本体11の運転室5(図1A参照)と反対側の側面には、ジブ8の基端側を支持するジブホルダ15と、ジブ8の先端側を支持するジブ支持用ブラケット16とが設けられている。
図3及び図4は、ジブホルダ15の構成を示す図である。図3及び図4に示すように、ブーム本体11の一側面(本実施形態では運転室5と反対側の側面)には、ジブホルダ支持部材17が設けられている。ジブホルダ15は、ジブホルダ支持部材17の下端部で支軸15aを介して回動可能に枢支されている。ジブホルダ15には、ジブホルダ駆動シリンダ18のロッド18aが連結されている。ジブホルダ駆動シリンダ18の上端部は、ジブホルダ支持部材17の上端部で枢支されている。ジブホルダ15は、ジブホルダ駆動シリンダ18の駆動により、第1の位置(図4中の破線で示す位置)と第2の位置(図4中の実線で示す位置)との間で回動する。また、ジブホルダ15には、ジブ8と連結するための2つの連結ピン15bが設けられている。
また、ジブホルダ15には、ロックピン挿通孔15cが設けられている。また、ジブホルダ支持部材17には、ロックピン挿通孔17aが設けられている。ロックピン挿通孔15c,17aにロックピン19を挿通することにより、ジブホルダ15が第1の位置に固定される。ロックピン挿通孔15c,17aにロックピン19が挿通されていない状態では、ジブホルダ15が第1の位置と第2の位置との間で回動可能となる。ロックピン19の挿脱は、運転室5での操作がブーム本体11に設けられる挿脱機構(図示しない)に伝達されることにより行われる。
図5は、ジブ支持用ブラケット16の構成を示す図である。図5に示すように、ジブ支持用ブラケット16には、ジブ8と連結するための連結ピン16aが設けられている。連結ピン16aには、フートピン挿通孔16bが設けられている。
図6は、ブーム4の先端部を図2の矢印A1の方向から視た図である。図6に示すように、ブーム本体11の運転室5側の側面(ジブホルダ15が設けられる側と反対側の側面)の下端部には、リンク21が設けられている。図7は、リンク21の構成を示す図である。図7に示すように、リンク21には、ストッパ21aが設けられている。リンク21には、リンク駆動シリンダ22のロッド22aが連結されている。リンク駆動シリンダ22のリンク21と反対側の端部は、ブーム本体11に枢支されている。リンク駆動シリンダ22を駆動することにより、リンク21は第1の位置(図7中の破線で示す位置)と第2の位置(図7中の実線で示す位置)との間で移動する。
図8は、図1Hに示す振出し状態でのブーム4の先端部及びジブ8を示す図である。図8に示すように、ブームヘッド12の上端部には、第1のワイヤロープW1(図1A参照)及び第2のワイヤロープW2(図1F参照)を案内する第1のシーブユニット25が設けられている。また、ブームヘッド12の下端部には、第1のワイヤロープW1を介してメインフック10A(図1A参照)を支持する第2のシーブユニット26が設けられている。第2のシーブユニット26の前方には、第3のシーブユニット27がブームヘッド12から先端側に延出した状態で設けられている。第3のシーブユニット27には、第1のシーブユニット25に案内される第2のワイヤロープW2が掛け回されている。
図9は、ブームヘッド12の下端部の構成を示す図である。図9において、矢印A2の方向が運転室5の位置する側とする。図9に示すように、第2のシーブユニット26は、ブームヘッド12を幅方向に貫通するシーブシャフト31を備える。シーブシャフト31の両端部には、ジブ8の基端が連結される連結手段32A,32Bが設けられている。下抱き状態からジブ8を張出す際には、ジブ8はシーブシャフト31を支点として回動する。図10は、2つの連結手段32A,32Bの中で運転室5側の側面に設けられる第1の連結手段32Aを示す図である。図10に示すように、溝状に形成されるカム部33が設けられている。なお、運転室5と反対側の側面に設けられる第2の連結手段32Bには、カム部33が設けられていない。
図9に示すように、ブームヘッド12には、1対のテンションロッドストッパ35A,35Bがブームヘッド12から先端側に突設されている。テンションロッドストッパ35A,35Bにより、ブーム側テンションロッド7A,7Bのテンションロッドストッパ35A,35Bよりもブームヘッド12側への回動が規制されている。ジブ8が張出される前の状態では、テンションロッドストッパ35A,35B上に、ブーム側テンションロッド7A,7Bが配置されている。テンションロッドストッパ35A,35Bの中で運転室5側に配置されるのを第1のテンションロッドストッパ35Aのブームヘッド12の幅方向の寸法b1は、運転室5と反対側に配置される第2のテンションロッドストッパ35Bのブームヘッド12の幅方向の寸法b2より大きくなっている。また、ブームヘッド12には、ジブ8の張出し時にジブ側テンションロッド9A,9Bの中で運転室5側に設けられる第1のジブ側テンションロッド9Aを案内するテンションロッドガイド36が設けられている。なお、運転室5と反対側の第2のジブ側テンションロッド9Bを案内するガイドは設けられていない。
図8に示すように、ジブ8は、張出し時にブームヘッド12に連結されるベースジブ42を備える。ベースジブ42は、ブームヘッド12の幅方向の寸法より大きい間隔寸法を有する二股部41を備える。ジブ8の張出し時には、二股部41の間の空間部46をメインフック10A(図1A参照)が通過する。二股部41の基端には、シーブシャフト31の連結手段32A,32Bに連結されるフォーク47A,47Bが設けられている。フォーク47A,47Bにはフートピン挿通孔47aが設けられている。フォーク47A,47Bがシーブシャフト31の連結手段32A,32Bに連結される際には、フートピン挿通孔47aにフートピン48が挿通されている。
図11(A)は下抱き状態でのブーム4及びジブ8を示す図であり、図11(B)は図1Hに示す振出し状態においてジブ8のブーム4に対するオフセット角7°の際のブーム4及びジブ8を示す図である。図11(A)(B)において、矢印A3の方向が運転室5の位置する側である。図11(A)に示すように、下抱き状態では、ジブ8とブーム起伏シリンダとの干渉を防止するために、ジブ8はブーム4に対して運転室5と反対側に所定の角度α傾いて配置されている。一方、図11(B)に示すよう、振出し状態ではジブ8がブーム4に対して傾いていない状態に配置されている。
図12(A)は、下抱き状態でのフォーク47A,47Bの中で運転室5側に設けられる第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aの連結状態を示す図である。図12(A)に示すように、第1の連結手段32Aの径d1は、第1のフォーク47Aの底部47bからフートピン挿通孔47aまでの寸法t1と略同一に形成されている。ここで、第1の連結手段32Aには、溝状のカム部33が設けられている。このため、フートピン48とカム部33が当接した状態では、第1の連結手段32Aと第1のフォーク47Aの底部47bとの間に隙間49が形成される。隙間49により、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部が遊びを有する。これにより、ジブ8をブーム4に対して所定の角度α傾けて配置可能となる。
図12(B)は振出し状態においてジブ8のブーム4に対するオフセット角60°の際の第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結状態を示す図である。前述のように、振出し状態では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さがロックされている。このため、ジブ側テンションロッド9A,9Bの張力により、ジブ8がブーム4側に引き寄せられる。ジブ8が引き寄せられ、ジブ8が回転することにより、図12(B)に示すように、第1の連結手段32Aと第1のフォーク47Aの底部47bとの間の隙間49が、カム部33により埋められる。このため、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部の遊びがなくなる。これにより、ジブ8がブーム4に対して傾いていない状態に固定される。
なお、図1Gに示す振出し開始状態までは、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さがロックされた状態でジブが回動することはない。このため、ジブ8にジブ側テンションロッド9A,9Bの張力は掛からず、ジブ8がブーム4側に引き寄せられることはない。これにより、第1の連結手段32Aと第1のフォーク47Aの底部47bとの間に隙間49が形成される。隙間49により、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部が遊びを有し、ジブ8をブーム4に対して運転室5と反対側に傾いて配置可能となる。
従来は、下抱き状態と振出し状態とでフートピン48の差し込む位置を変えることにより、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部の遊びを調整していた。しかし、ジブ張出し装置2では、第1の連結手段32Aのカム部33により第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部の遊びが調整されるため、フートピン48を差し替える作業が不要となる。
図8に示すように、ジブ8の二股部41の運転室5側の側面には、外方に突設されるガイド部材51が設けられている。図1Dに示すようなジブ8を張出す直前の状態では、リンク21が第2の位置(図7中の実線で示す位置)に配置されている。この際、ガイド部材51は、リンク21及びストッパ21aによりリンク21上に留められた状態となっている。この状態からリンク駆動シリンダ22により、リンク21を第2の位置から第1の位置(図7中の破線で示す位置)へ移動する。リンク21が移動することにより、ジブ8のガイド部材51がリンク21と干渉しない状態となる。これにより、ジブ8はブームヘッド12のシーブシャフト31を中心として張出し方向の前方へ回動する。
図8に示すように、ベースジブ42の先端側には第1のジブ43が、第1のジブ43の先端側には第2のジブ44が設けられている。第1のジブ43及び第2のジブ44は、長手方向に移動可能となっている。第1のジブ43及び第2のジブ44が長手方向に移動可能であるため、ジブ8は長手方向に伸縮可能となっている。
図13及び図14は、ジブ8の内部構造を示す図である。図13及び図14に示すように、ジブ8の内部には、第1のジブ43を長手方向に移動させるジブ起伏シリンダ53が設けられている。図13はジブ起伏シリンダ53が最も収縮した状態を、図14はジブ起伏シリンダ53が最も伸長した状態を示している。ジブ起伏シリンダ53の基端部には、トラニオン部54が設けられている。トラニオン部54はフランジ構造を有し第1のジブ43の基端部にフランジ連結されている。フランジ連結をすることにより、ジブ起伏シリンダ53の座屈強度が向上する。また、フランジ連結することにより、ジブ起伏シリンダ53の先端側端部のたわみ量が小さくなる。ジブ起伏シリンダ53のロッド54aの基端側には、クレビス部55が設けられている。クレビス部55には、ジブ起伏シリンダ53のピン挿入穴55aが設けられている。ピン挿入穴55aに連結ピン55bを挿入することにより、クレビス部55がベースジブ42に連結される。クレビス部55では、ジブ起伏シリンダ53は上下方向に移動可能となっている。ジブ起伏シリンダ53の先端部には、シリンダ先端ローラ53aが設けられている。第2のジブ44の長手方向への移動は手動で行われる。第2のジブ44の移動は、ジブ起伏シリンダ53は最も伸長した状態に近い状態で行われる。
図15(A)(B)は、ジブ起伏シリンダ53の自重によるたわみ量を従来例と比較して示す図である。図15(A)に示すように、従来のシリンダの固定例のジブ起伏シリンダ53´では、クレビス部55´は、ピン連結により固定されている。トラニオン部54´は、ジブ起伏シリンダ53´の伸縮によりジブ起伏シリンダ53´の軸方向に摺動可能で、かつ、ピンの軸方向に回転可能にピン連結されている。また、クレビス部55´にピンの軸方向へのジブ起伏シリンダ53´の回転を抑制し、座屈強度を向上させる機構が設けられることもある。しかし、従来の連結方法では、ジブ起伏シリンダ53´の先端部での自重によるたわみ量δ´が大きくなる。このため、シリンダ先端ローラ53a´の第2のジブ44´への接地力が大きくなる。したがって、第2のジブ44´を長手方向に移動させる際に、抵抗が大きくなり、作業性が低下する。
一方、図15(B)に示すように、ジブ起伏シリンダ53では、トラニオン部54は、フランジ連結により垂直面方向での回転運動が不可能状態となるため、径方向を軸とした回転も不可能な状態となる。この連結方法では、ジブ起伏シリンダ53の先端部のたわみ量δが従来のジブ起伏シリンダ53´のたわみ量δ´より小さくなる。このため、シリンダ先端ローラ53aの第2のジブ44への接地力を小さくすることが可能となる。また、フランジ連結を採用することにより、トラニオン部54と第1のジブ43との連結部の構成をコンパクト化することが可能となる。なお、ジブ起伏シリンダ53では、トラニオン部54でジブ起伏シリンダ53が上下方向に移動しないが、クレビス部55でジブ起伏シリンダ53が径方向に移動可能となっている。このため、トラニオン部54とクレビス部55との間でジブ起伏シリンダ53の上下方向にズレが生じることが防止される。これにより、ジブ起伏シリンダ53に過度の力が掛かることが防止され、ジブ起伏シリンダ53からの油漏れ、その他の不具合が防止される。
図8に示すように、ジブ8の第1のジブ43の張出し方向の後方に位置する面(下抱き状態で上側に位置する面)には、ジブホルダ15に連結されるホルダ用ブラケット57と、ジブ支持用ブラケット16に連結されるブラケット連結手段58とを備える。ホルダ用ブラケット57には、ジブホルダ15の連結ピン15bが挿入される2つの連結ピン挿入穴57aが設けられている。ブラケット連結手段58には、ジブ支持用ブラケット16の連結ピン16aが挿入される連結ピン挿入穴58aが設けられている。ブラケット連結手段58は、連結ピン16aが連結ピン挿入穴58aに挿入される状態で、ジブ支持用ブラケット16に枢支されている。連結ピン挿入穴58aに連結ピン16aが挿入された状態では、連結ピン16aのフートピン挿通孔16b(図5参照)にフートピン48が挿通されている。これにより、フートピン48が抜止めとして作用し、ジブ支持用ブラケット16からのブラケット連結手段58の抜けが防止される。これにより、ジブ支持用ブラケット16とブラケット連結手段58とがより確実に連結される。なお、ジブ8を張出す前にフートピン48は,フートピン挿通孔16bからフォーク47A,47Bのいずれか一方のフートピン挿通孔47aに差し替えられる。
ジブ8を格納状態(図1A参照)から下抱き状態(図1B参照)に移動する際は、まずジブホルダ15のロックピン挿通孔15c及びジブホルダ支持部材17のロックピン挿通孔17aからロックピン19を抜く。これより、ジブホルダ15が回動可能となる。そして、ジブホルダ駆動シリンダ18を伸長することにより、ジブホルダ15が第1の位置(図4中の破線で示す位置)から第2の位置(図4中の実線で示す位置)へ回動する。ジブホルダ15の回動により、ジブ8が格納状態の位置から下抱き状態の位置へジブホルダ15と一体に回動する。この際、ジブ支持用ブラケット16の近傍では、ジブ8が格納状態の位置から下抱き状態の位置へ連結ピン16aを中心として回動する。
図8に示すように、ジブ8のベースジブ42には、格納状態でジブ側テンションロッド9A,9Bを固定するテンションロッド格納手段61が設けられている。テンションロッド格納手段61は、ジブ8の下抱き状態で下側に位置する面(張出し方向の前方に位置する面)に配置されている。図16(A)(B)は、テンションロッド格納手段61を示す図である。図16(A)(B)では、図中の矢印A4の方向がジブ8の下抱き状態での上側に対応している。図16(A)(B)に示すように、テンションロッド格納手段61は、第1のローラ61aと、第2のローラ61bとを備える。ジブ8の下抱き状態では、ジブ側テンションロッド9A,9B、を伸張し、ブーム側テンションロッド7A,7Bに連結する(図1C参照)。この際、図16(A)に示すように、第1のローラ61aと第2のローラ61bとの間でジブ側テンションロッド9A,9Bが案内される。また、第2のローラ61bは、ジブ側テンションロッド9A,9Bの自重を支持する第1の位置に配置されている。そして、下抱き状態からジブ8を張出す際には、図16(B)に示すように、ジブ側テンションロッド9A,9Bと干渉しない第2の位置まで第2のローラ61bが移動する。なお、テンションロッド格納手段61では、第1のローラ61aの代わりに、スライド板を用いてもよい。
図17は、ジブ8の先端部の構成を示す図である。図17では、図中の上側がジブ8の張出し時での前方側(下抱き状態での下側)に対応している。図17に示すように、ジブ8の第2のジブ44の先端部には、第4のシーブユニット63が設けられている。第4のシーブユニット63には、ブームヘッド12の第3のシーブユニット27からジブ8側に延設された第2のワイヤロープW2(図1F参照)が、掛け回される。第2のワイヤロープW2の先端には、サブフック10B(図1F参照)が吊り下げられる。また、第4のシーブユニット63の先端側には、第2のワイヤロープW2を受けるロープ受け64が設けられている。また、第4のシーブユニット63のジブ8の張出し方向の前方側には、第2のワイヤロープW2の第4のシーブユニット63から抜けることを防止するロープ抜止め65が取り付けられている。
図1Fに示すようなジブ8の垂下状態では、前述のようにジブ8がブーム4に対して運転室5と反対側に傾いて配置される。図18は、垂下状態での第4のシーブユニット63の近傍の構成を示す図である。図18に示すように、ジブ8が傾いた状態で第4のシーブユニット63に第2のワイヤロープW2を掛け回す際には、まず軸中心よりジブ8が傾いている方向と反対側にロープ受け64を配置する。そして、ジブ8を押さえながら第2のワイヤロープW2をジブ8に押付け、第2のワイヤロープW2をロープ受け64に引っ掛ける。そして、ジブ8を所定位置まで移動させた後に、ロープ抜止め65を取り付ける。ロープ抜止め65を取り付ける際に第2のワイヤロープW2はロープ受け64に引っ掛けられているため、両手が空いた状態でロープ抜止め65を取り付けることが可能となっている。
図8に示すように、ブームヘッド12の上端部には1対のブーム側テンションロッド7A,7Bが連結されている。ブーム側テンションロッド7A,7Bは互いに独立して回動可能で、球面軸受け67を介してブームヘッド12に枢支されている。前述のように、ブーム側テンションロッド7A,7Bは、テンションロッドストッパ35A,35Bによりテンションロッドストッパ35A,35Bよりもブームヘッド12側への回動が規制されている。また、ジブ8が張出される前の状態では、ブーム側テンションロッド7A,7Bは、テンションロッドストッパ35A,35B上に配置されている。ここで、第1のテンションロッドストッパ35Aのブームヘッド12の幅方向の寸法b1は、第2のテンションロッドストッパ35Bのブームヘッド12の幅方向の寸法b2より大きくなっている。このような構成にすることにより、ブーム側テンションロッド7A,7Bの中でブームヘッド12の運転室5側の側面に連結される第1のブーム側テンションロッド7Aは、第1のテンションロッドストッパ35A上に配置された状態で、ブームヘッド12の幅方向に移動可能となっている。一方、ブームヘッド12の運転室5と反対側の側面に取り付けられる第2のブーム側テンションロッド7Bは、第2のテンションロッドストッパ35B上でブームヘッド12の幅方向に移動できない状態となっている。
ブーム側テンションロッド7A,7Bの先端部には、ジブ側テンションロッド9A,9Bが着脱可能に連結されている。図19は、ブーム4に対するジブ8の最小オフセット角での第1のブーム側テンションロッド7Aと第1のジブ側テンションロッド9Aとの連結状態を示す図である。図19に示すように、第1のブーム側テンションロッド7Aとブームヘッド12との連結部には、第1のストッパ69aが設けられている。また、第1のブーム側テンションロッド7Aと第1のジブ側テンションロッド9Aとの連結部には、第2のスットパ69bが設けられている。第1及び第2のストッパ69a,69bにより、第1のブーム側テンションロッド7Aと第1のジブ側テンションロッド9Aとの折れ(図19中の破線で示す。)が防止される。同様のことが、第2のブーム側テンションロッド7Bと第2のジブ側テンションロッド9Bとの連結についてもいえる。
図17に示すように、ジブ8の第1のジブ43の先端部には、ジブ側テンションロッドA,45Bの先端がそれぞれ連結されるテンションロッド用伸縮継手70A,70Bが設けられている。テンションロッド用伸縮継手70A,70Bは、ジブ8の張出し方向の前方側に位置する部分に配置されている。なお、以下の説明では、第1のジブ側テンションロッド9Aが連結されるテンションロッド用伸縮継手70Aについてのみ説明するが、第2のジブ側テンションロッド9Bが連結されるテンションロッド用伸縮継手70Bについてもテンションロッド用伸縮継手70Aと同様の構成である。テンションロッド用伸縮継手70Aは、筒状部71を備える。筒状部71の一端は、第1のジブ43に連結ピン71aを介して枢支されている。筒状部71の他端側には、固定部材72が設けられている。このような構成にすることにより、筒状部71の第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向への移動が規制されている。また、筒状部71には、貫通孔73a,73bが第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向に間隔を空けて設けられている。ここで、貫通孔73a,73bの中で、第1のジブ側テンションロッド9Aの側に位置する方を第1の貫通孔73aとし、第1のジブ側テンションロッド9Aと反対側に位置する方を第2の貫通孔73bとする。
筒状部71の内部には、伸縮竿75が設けられている。伸縮竿75の一端には、第1のジブ側テンションロッド9Aの先端が溶着固定されている。伸縮竿75は、筒状部71に対して第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向に摺動可能な状態で、筒状部71に連結されている。伸縮竿75には、長孔76が第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向に沿って設けられている。第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向について長孔76の寸法は、筒状部71の第1の貫通孔73aと第2の貫通孔73bとの間の間隔と略同一となっている。筒状部71の第1の貫通孔73a及び伸縮竿75の長孔76には、規制ピン77が挿通されている。また、筒状部71の第2の貫通孔73b及び伸縮竿75の長孔76には、ロックピン78が挿通されている。
図20(A)(B)は、第1のジブ側テンションロッド9Aの伸縮動作を説明する図である。図20(A)に示すように、第1のジブ側テンションロッド9Aが最も収縮した状態では、第2の貫通孔73b及び長孔76にロックピン78が挿通されている。図1Fに示すような状態で第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向の長さをロックする際には、第2の貫通孔73b及び長孔76にロックピン78が挿通することにより行われる。ロックピン78により、伸縮竿75の筒状部71に対する第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向への摺動が規制される。このため、第1のジブ側テンションロッド9Aが最も収縮した状態が維持される。第2の貫通孔73b及び長孔76からロックピン78を抜くと、図20(B)に示すように、伸縮竿75が筒状部71に対して第1のジブ側テンションロッド9Aの軸方向へ摺動可能となる。これにより、第1のジブ側テンションロッド9Aが伸長する。第1のジブ側テンションロッド9Aが最も伸長した状態では、伸縮竿75の長孔76のジブ8側の端部が規制ピン77に突き当たっている。これにより、伸縮竿75ブーム4側への移動が規制される。
図21は、図1Dに示す状態でのブーム4及びジブ8を示す図である。図21では、図中の矢印A5の方向が運転室5の位置する側である。前述したように、振出し開始状態までは、ジブ8はブーム4に対して運転室5と反対側に傾いて配置されている。このため、図1Dに示す状態では、図21に示すように、ジブ側テンションロッド9A,9Bがブーム4に対して運転室5と反対側に傾いている。この状態から、ジブ8の張り出しを行うと、運転室5側に配置される第1のジブ側テンションロッド9Aがメインフック10Aと接触する。このため、図1Dの状態から図1Fに示す垂下状態までの回動の際に、第1のジブ側テンションロッド9Aはブームヘッド12のテンションロッドガイド36によって案内される。図22には、図1Dの状態から図1Fの状態までの第1のブーム側テンションロッド7A及び第1のジブ側テンションロッド9Aの移動を示す図である。テンションロッドガイド36により、第1のジブ側テンションロッド9Aは第1の位置(図22中の破線で示す位置)から第2の位置(図22中の実線で示す位置)へ運転室5側に開かれる。また、第1のブーム側テンションロッド7Aは、第1のテンションロッドストッパ35A上に配置された状態で、ブームヘッド12の幅方向に移動可能となっている。このため、第1のジブ側テンションロッド9Aが運転室5側に開くことにより、第1のブーム側テンションロッド7Aは第1の位置(図22中の破線で示す位置)から第2の位置(図22中の実線で示す位置)へ運転室5側に開かれる。
図23は、ジブ8が張出される際のブーム側テンションロッド7A,7B及びジブ側テンションロッド9A,9Bの軌跡を示す図である。図23中で、位置B1が図1Dの張出す直前の状態での位置を、位置B2が図1Fの垂下状態から図1Gに示す振出し開始状態までの間での位置を、位置B3が図1Hに示す振出し状態においてジブ8のブームに対するオフセット角が60°の際の位置を示している。前述のように、図1Fに示す垂下状態でジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さがロックされるため、位置B1と位置B2との間の区間では、ジブ側テンションロッド9A,9Bは軸方向に伸縮可能である。このため、位置B1と位置B2との間の区間では、ジブ側テンションロッド9A,9Bに自重のみが掛かり、張力は掛かっていない。一方、図1Hに示す振出し状態(位置B2より位置B3側の区間)では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さがロック
され、ジブ起伏シリンダ53の起伏によりジブ8が振出される。このため、位置B2より位置B3側の区間では、ジブ側テンションロッド9A,9Bに張力が掛かった状態となる。
次に、本実施形態のジブ張出し装置2の作用について説明する。図1Aに示すように、非使用時の格納状態では、ジブ張出し装置2のジブ8は、先端をブーム4の基端側に、基端をブーム4の先端側に向けた状態で、ブーム4の一側面に沿って配置されている。この際、ジブホルダ15の連結ピン15bは、ホルダ用ブラケット57の連結ピン挿入穴57aに挿入されている。また、ジブ支持用ブラケット16の連結ピン16aがブラケット連結手段58の連結ピン挿入穴58aに挿入されている。連結ピン16aのフートピン挿通孔16bには、フートピン48が挿通されている。これにより、フートピン48が抜止めとして作用し、ジブ支持用ブラケット16からのブラケット連結手段58の抜けが防止される。この際、一端がブームヘッド12に連結されるブーム側テンションロッド7A,7Bは、ジブ側テンションロッド9A,9Bと連結されていない。ブーム側テンションロッド7A,7Bは、テンションロッドストッパ35A,35B(図9参照)上に配置されている。また、ジブ側テンションロッド9A,9Bは、テンションロッド格納手段61(図16(A)(B)参照)により固定されている。
ジブ8を使用する際には、まず、第1のワイヤロープW1を第1のシーブユニット25、第2のシーブユニット26に掛け回し、メインフック10Aを第1のワイヤロープW1で支持する。この際、メインフック10Aは、ブームヘッド12の近傍に配置されている。
そして、ジブ8を格納状態から図1Bに示す下抱き状態へ移動する。ジブ8の移動の際には、ジブ8は基端部がブームヘッド12と干渉しない位置に配置されている。ジブホルダ15のロックピン挿通孔15c及びジブホルダ支持部材17のロックピン挿通孔17aからロックピン19を抜くことにより、ジブホルダ15が第1の位置(図4中の破線で示す位置)から第2の位置(図4中の実線で示す位置)へ回動可能となる。ジブホルダ15の回動により、ジブ8が格納状態の位置から下抱き状態の位置へジブホルダ15と一体に回動する。この際、ジブ支持用ブラケット16の近傍では、ジブ8が格納状態の位置から下抱き状態の位置へ連結ピン16aを中心として回動する。
ジブ8を下抱き状態まで移動すると、リンク駆動シリンダ22を駆動することにより、ブーム4に取り付けられるリンク21を第1の位置(図7中の破線で示す位置)から第2の位置(図7中の実線で示す位置)へ移動する。
そして、図1Cに示すように、ジブ8を伸長する。ジブ8の伸長は、ジブ起伏シリンダ53(図13,図14参照)によって第1のジブ43を長手方向に移動することにより行われる。この際、ジブ8は、基端部がブームヘッド12と干渉するまで伸長される。ジブ8が伸長することにより、第2の位置に配置されるリンク21にジブ8のガイド部材51(図8参照)が乗り上げる。リンク21に乗り上げたガイド部材51は、ストッパ21a及びリンク21により留められた状態となる。
そして、ブームヘッド12のシーブシャフト31の連結手段32A,32Bにジブ8のフォーク47A,47Bを連結する。この際、フォーク47A,47Bのフートピン挿通孔47aにフートピン48が挿通されている。これにより、連結手段32A,32Bからのフォーク47A,47Bの抜けが防止される。なお、フォーク47A,47Bのいずれか一方のフートピン挿通孔47aには、ジブ支持用ブラケット16の連結ピン16aのフートピン挿通孔16bから抜かれたフートピン48が挿通される。
また、図1Cに示すように、下抱き状態において、ブーム側テンションロッド7A,7Bとジブ側テンションロッド9A,9Bとを連結する。ブーム側テンションロッド7A,7Bとジブ側テンションロッド9A,9Bを連結する際には、まず、ジブ側テンションロッド9A,9Bをテンションロッド格納手段61から引き出す。この際、第2のローラ61bは図16(A)に示す第1の位置に配置され、第1のローラ61aと第2のローラ61bとの間でジブ側テンションロッド9A,9Bが案内される。また、第2のローラ61bにより、ジブ側テンションロッド9A,9Bの自重が支持される。そして、ブーム側テンションロッド7A,7Bとジブ側テンションロッド9A,9Bとを、相互回動可能に連結する。ブーム側テンションロッド7A,7Bとジブ側テンションロッド9A,9Bとの連結が完了すると、テンションロッド格納手段61の第2のローラ61bを、ジブ側テンションロッド9A,9Bと干渉しない第2の位置(図16(B)参照)に移動する。
以上のように、ジブ張出し装置2では、ジブ8の基端部がブームヘッド12と干渉しない位置に配置された状態で、ジブ8が格納状態から下抱き状態へ移動する。すなわち、ジブ8の基端がブームヘッド12のシーブシャフト31の連結手段(支持部)32A,32Bよりブーム4の基端側に配置される状態で、ジブ8が格納状態から下抱き状態へ移動する。そして、ジブ8を伸長することによりジブ8をブームヘッド12の連結手段32A,32Bに連結する。ジブ張出し装置2では、ジブ8を格納状態から下抱き状態に移動する際に、ジブ8のブームヘッド12との干渉を防止するために、ブーム4を伸長させる必要はない。このため、ブームヘッド12の位置が変化せず、ブームヘッド12の第2のシーブユニット26に第1のワイヤロープW1を介して支持されるメインフック10Aの位置も変化しない。したがって、ジブ8を下抱き状態から張出す前に、メインフック10Aをジブ8と干渉しない位置に配置する作業が不要となる。すなわち、ジブ8の格納状態から下抱き状態への移動の前にメインフック10Aを張出し時にジブ8と干渉しない位置に配置することにより、以後メインフック10Aを再配置する必要がなくなる。また、ジブ8の移動時にブーム4が伸長されないため、ブーム4を伸長する空間を確保する必要もなくなる。
また、ブーム4を起状し、ジブ8の垂下状態からジブ8を前方に張出す際に、従来例のようにブーム4の伸縮を利用してブーム4とジブ8との連結を解除する必要がない。このため、メインフック10Aが上下動作を行うことがなく、メインフック10Aがジブ8の空間部46を通過する際に、メインフック10Aとジブ8との干渉が防止される。
また、下抱き状態では、図11(A)に示すように、ジブ8とブーム起伏シリンダとの干渉、及び、ジブ8と運転室5との干渉を防止するために、ジブ8はブーム4に対して運転室5と反対側に所定の角度α傾いて配置されている。図12(A)に示すように、第1の連結手段32Aには、カム部33を設けられている。カム部33を設けることにより、下抱き状態では第1の連結手段32Aと第1のフォーク47Aの底部47bとの間に隙間49が形成される。隙間49により、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部が遊びを有する。これにより、ジブ8をブーム4に対して傾けて配置可能となる。
下抱き状態からジブ8を前方に張出す際には、図1Dに示すように、ブーム起伏シリンダによりブーム4を例えば最も起状した位置まで起状する。そして、ジブ起伏シリンダ53によりジブ8を収縮する。ジブ8が収縮することにより、ジブホルダ15の連結ピン15bがホルダ用ブラケット57の連結ピン挿入穴57aから抜ける。また、ジブ支持用ブラケット16の連結ピン16aが、ブラケット連結手段58の連結ピン挿入穴58aから抜ける。この際、ジブ8はブームヘッド12の連結手段(支持部)32A,32Bを中心に、張出し方向の前方へ回動しようとする自重モーメントが作用する。しかし、ジブ8のガイド部材51が、ストッパ21a及びリンク21により留められているため、自重モーメントはリンク21によって支持される。このため、ジブ8は下抱き状態で維持される。
そして、リンク駆動シリンダ22により、ブーム4に取り付けられるリンク21を第2の位置(図7中の実線で示す位置)から第1の位置(図7中の破線で示す位置)へ移動する。リンク21が移動することにより、ジブ8のガイド部材51がリンク21と干渉しない状態となる。これにより、ジブ8は自重モーメントにより支持部であるブームヘッド12の連結手段32A,32Bを中心に、張出し方向の前方へ回動する。この際、ジブ8は、適切な回動速度で回動を行うように、リンク21により制御されている。そして、最終的に図1Eに示すようなジブ8が鉛直方向に垂れ下がった垂下状態まで、ジブ8は回動する。この際、ジブ8の二股部41の間の空間部46をメインフック10Aが通過する。
従来は、自重モーメントの支持及びジブの回動速度の制御は、例えば特開平5−116888号公報に示す方法により行われていた。図24に示すように、このジブ張出し装置2´では、下抱き状態においてサブフック10B´を支持する第2のワイヤロープW2´をジブ8´の先端部まで引張り出す。そして、サブフック10B´とブーム4´の基端部に設けられる掛止部80´との間に安全ロープW3´が張られる。そして、ブーム起伏シリンダによりブーム4´を起状し、ジブ8を前方に張出す。この際、第2のワイヤロープW2´及び安全ロープW3´により、自重モーメントの支持及びジブ8´の回動速度の制御が行われる。一方、本実施形態のジブ張出し装置2では、自重モーメントの支持及びジブ8の回動速度の制御がリンク21により行われる。このため、安全ロープW3´を張る作業が省かれる。
また、前述のように振出し開始状態までは、ジブ8はブーム4に対して傾いて配置される。このため、図1Dに示す状態では、図21に示すように、ジブ側テンションロッド9A,9Bがブーム4に対して運転室5と反対側に傾いている。この状態から、ジブ8の張り出しを行うと、運転室5側に配置される第1のジブ側テンションロッド9Aがメインフック10Aと接触する。このため、図1Dの状態から図1Fに示す垂下状態までの回動の際に、第1のジブ側テンションロッド9Aはブームヘッド12のテンションロッドガイド36によって案内される。テンションロッドガイド36により、第1のジブ側テンションロッド9Aは第1の位置(図22中の破線で示す位置)から第2の位置(図22中の実線で示す位置)へ運転室5側に開かれる。また、第1のブーム側テンションロッド7Aは、第1のテンションロッドストッパ35A上に配置された状態で、ブームヘッド12の幅方向に移動可能となっている。このため、第1のジブ側テンションロッド9Aが運転室5側に開くことにより、第1のブーム側テンションロッド7Aは第1の位置(図22中の破線で示す位置)から第2の位置(図22中の実線で示す位置)へ運転室5側に開かれる。これにより、第1のジブ側テンションロッド9Aとメインフック10Aとの接触が防止される。なお、この際、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向に伸縮可能であるため、ジブ側テンションロッド9A,9Bには、自重のみが掛かり、張力は掛かっていない(図23の位置B1と位置B2の間の区間)。
そして、図1Fに示すように、ブーム起伏シリンダによりブーム4を伏状させ、垂下状態を維持した状態でジブ8の先端部を地上から手の届く位置に配置する。この状態で、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さを最も収縮した状態でロックする。ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さのロックは、ジブ側テンションロッド9A,9Bの先端が連結されるテンションロッド用伸縮継手70A,70Bの第2の貫通孔73b及び長孔76にロックピン78が挿通することにより行われる。ロックピン78により、伸縮竿75の筒状部71に対するジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向への摺動が規制される。これにより、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さを最も収縮した状態でロックされる。ここで、テンションロッド用伸縮継手70A,70Bは、ジブ8の先端部に設けられるため、作業者が地上から手の届く範囲で、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さをロックすることが可能となる。
また、この状態で、第2のワイヤロープW2をジブ8の先端まで引き出し、第2のワイヤロープW2の先端にサブフック10Bを吊り下げる。図1Fに示す垂下状態では、前述のようにジブ8がブーム4に対して運転室5と反対側に傾いて配置される。図18に示すように、ジブ8が傾いた状態で第4のシーブユニット63に第2のワイヤロープW2を掛け回す際には、まず軸中心よりジブ8が傾いている方向と反対側にロープ受け64を配置する。そして、ジブ8を押さえながら第2のワイヤロープW2をジブ8に押付け、第2のワイヤロープW2をロープ受け64に引っ掛ける。そして、ジブ8を所定位置まで移動させた後に、ロープ抜止め65を取り付ける。ロープ抜止め65を取り付ける際に第2のワイヤロープW2はロープ受け64に引っ掛けられているため、両手が空いた状態でロープ抜止め65を取り付けることが可能となっている。
そして、図1Gに示すように、ブーム4を再び起状することにより、ジブ8が垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態に配置される。そして、図1Hに示すように、振出し開始状態からジブ8を伸縮することにより、ジブ8が張出し方向の前方に振出される。
また、本実施形態のジブ張出し装置2では、図1Fの垂下状態でジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さが最も収縮した状態でロックされる。このため、ブームを再び起状することにより、ジブ8が垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態に配置される。そして、振出し開始状態からジブ起伏シリンダ53を伸長することにより、ジブ8が伸長し、ジブ8が張出し方向の前方に振出される。ジブ8の振出し状態では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さが最も収縮した状態でロックされている。ジブ8が垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態から振出しが開始されるため、ジブ8を伸縮するジブ起伏シリンダ53のストロークを短くすることが可能となる。これにより、ジブ起伏シリンダ53の軽量化及び振出し時間の短縮が図られる。
また、ジブ8の振出し状態では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さがロックされている。このため、ジブ側テンションロッド9A,9Bの張力により、ジブ8がブーム4側に引き寄せられる。ジブ8が引き寄せられ、ジブ8が回転することにより、図12(B)に示すように、ブームヘッド12の第1の連結手段32Aの第1の連結手段32Aとジブ8の第1のフォーク47Aの底部47bとの間の隙間49が、カム部33により埋められる。このため、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部の遊びがなくなる。これにより、ジブ8がブーム4に対して傾いていない状態に固定され、振出し状態での作業の安全性が確保される。
以上により、ジブ8の張出し作業が完了する。なお、ジブ8を格納する際には、上述の手順と逆の手順を行う。すなわち、まず、ジブ起伏シリンダ53を収縮することにより、図1Gに示すような振出し開始状態にジブ8を配置する。そして、ブーム起伏シリンダによりブーム4を伏状させ、図1Fに示すような垂下状態にジブ8を配置する。この状態で、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さのロックを解除する。また、この状態で、第2のワイヤロープW2の先端からサブフック10Bを取り外す。
そして、図1Eに示すように、ジブ8の垂下状態を維持したまま、ブーム起伏シリンダによりブーム4を例えば最も起状した位置まで起状する。そして、ブーム4の先端部との連結部を中心に、図1Dに示すような下抱き状態までジブ8を回動する。そして、図1Cに示すように、ブーム起伏シリンダによりブーム4を略水平になる位置まで伏状する。
そして、図1Bに示すように、ブーム4の先端部からジブ8を取り外す。また、ブーム側テンションロッド7A,7Bからジブ側テンションロッド9A,9Bを取り外す。そして、ジブ8を収縮させ、下抱き状態から図1Aに示す格納状態にジブ8を移動する。
そこで、上記構成のジブ張出し装置2では、以下の効果を奏する。すなわち、ジブ張出し装置2では、ジブ8の基端部がブームヘッド12と干渉しない位置に配置された状態で、ジブ8が格納状態から下抱き状態へ移動する。すなわち、ジブ8の基端がブームヘッド12のシーブシャフト31の連結手段(支持部)32A,32Bよりブーム4の基端側に配置される状態で、ジブ8が格納状態から下抱き状態へ移動する。そして、ジブ8を伸長することによりジブ8をブームヘッド12の連結手段32A,32Bに連結する。ジブ張出し装置2では、ジブ8を格納状態から下抱き状態に移動する際に、ジブ8のブームヘッド12との干渉を防止するために、ブーム4を伸長させる必要はない。このため、ブームヘッド12の位置が変化せず、ブームヘッド12の第2のシーブユニット26に第1のワイヤロープW1を介して支持されるメインフック10Aの位置も変化しない。したがって、ジブ8を下抱き状態から張出す前に、メインフック10Aをジブ8と干渉しない位置に配置する作業が不要となる。すなわち、ジブ8の格納状態から下抱き状態への移動の前にメインフック10Aを張出し時にジブ8と干渉しない位置に配置することにより、以後メインフック10Aを再配置する必要がなくなる。また、ジブ8の移動時にブーム4が伸長されないため、ブーム4を伸長する空間を確保する必要もなくなる。これにより、ジブ8の格納状態から下抱き状態への移動作業、及び、ジブ8の下抱き状態からの張出し作業の作業性を向上させることができる。
また、ジブ張出し装置2では、ブーム4を起状し、ジブ8の垂下状態からジブ8を前方に張出す際に、従来例のようにブーム4の伸縮を利用してブーム4とジブ8との連結を解除する必要がない。このため、メインフック10Aが上下動作を行うことがなく、メインフック10Aがジブ8の空間部46を通過する際に、メインフック10Aとジブ8との干渉を防止することができる。
また、ジブ張出し装置2では、垂下状態でジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さが最も収縮した状態でロックされる。このため、ブームを再び起状することにより、ジブ8が垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態に配置される。そして、振出し開始状態からジブ起伏シリンダ53を伸長することにより、ジブ8が伸長し、ジブ8が張出し方向の前方に振出される。ジブ8の振出し状態では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さが最も収縮した状態でロックされている。ジブ8が垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態から振出しが開始されるため、ジブ8を伸縮するジブ起伏シリンダ53のストロークを短くすることが可能となる。これにより、ジブ起伏シリンダ53の軽量化及び振出し時間の短縮が図ることができ、ジブ8の振出し作業性を向上させることができる。
また、ジブ張出し装置2では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの先端が連結されるテンションロッド用伸縮継手70A,70Bが、ジブ8の先端部に設けられている。このため、ジブ8の垂下状態で作業者が地上から手の届く範囲までブーム4を伏状することにより、地上からジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さをロックすることが可能となる。これにより、ジブ8の下抱き状態からの張出し作業の作業性を向上させることができる。
また、ジブ張出し装置2では、ブームヘッド12の第1の連結手段32Aに、カム部33を設けられている。カム部33を設けることにより、振出し開始状態までは第1の連結手段32Aとジブ8の第1のフォーク47Aの底部47bとの間に隙間49が形成される。隙間49により、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部が遊びを有する。これにより、ジブ8をブーム4に対して運転室5と反対側に傾けて配置可能となる。ジブ8を傾けて配置することにより、ジブ8とブーム起伏シリンダとの干渉、及び、ジブ8と運転室5との干渉が防止される。一方、ジブ8の振出し状態では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さがロックされている。このため、ジブ側テンションロッド9A,9Bの張力により、ジブ8がブーム4側に引き寄せられる。ジブ8が引き寄せられ、ジブ8が回転することにより、ブームヘッド12の第1の連結手段32Aの第1の連結手段32Aとジブ8の第1のフォーク47Aの底部47bとの間の隙間49が、カム部33により埋められる。このため、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部の遊びがなくなる。これにより、ジブ8がブーム4に対して傾いていない状態に固定され、振出し状態での作業の安全性が確保される。従来のジブ張出し装置では、下抱き状態と振出し状態とでフートピン48の差し込む位置を変えることにより、第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部の遊びを調整していた。しかし、ジブ張出し装置2では、第1の連結手段32Aのカム部33により第1のフォーク47Aと第1の連結手段32Aとの連結部の遊びが調整されるため、フートピン48を差し替える作業が不要となる。これにより、ジブ8の下抱き状態からの張出し作業の作業性を向上させることができる。
さらに、ジブ張出し装置2は、第1の位置と第2の位置との間で移動するリンク21を備える。下抱き状態から垂下状態へジブ8が回動する直前の状態では、ジブ8はブームヘッド12の連結手段(支持部)32A,32Bを中心に、張出し方向の前方へ回動しようとする自重モーメントが作用する。しかし、ジブ8のガイド部材51が、第2の位置に配置されるリンク21上に留められているため、自重モーメントはリンク21によって支持される。そして、リンク駆動シリンダ22により、ブーム4に取り付けられるリンク21を第2の位置から第1の位置へ移動する。リンク21が移動することにより、ジブ8のガイド部材51がリンク21と干渉しない状態となる。これにより、ジブ8は自重モーメントにより支持部であるブームヘッド12の連結手段32A,32Bを中心に、張出し方向の前方へ回動する。この際、ジブ8は、適切な回動速度で回動を行うように、リンク21により制御されている。以上のように、ジブ張出し装置2では、自重モーメントの支持及びジブ8の回動速度の制御がリンク21により行われる。このため、従来のように安全ロープを張る作業が省かれる。これにより、ジブ8の下抱き状態からの張出し作業の作業性を向上させることができる。
(変形例)
上述の実施形態では、垂下状態でジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さを最も収縮した状態でロックし、ブーム4を起状することにより、ジブ8を垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態に配置する。そして、振出し開始状態の位置から振出しが開始される。しかし、本実施形態では、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さが固定された状態で、ジブ8を伸長することによりジブ8が振出される構成であればよい。例えば、垂下状態において、ジブ側テンションロッド9A,9Bの軸方向の長さが最も伸長した状態になるまで、ジブ8を伸長する。そして、この状態からジブ8をさらに伸長することによりジブ8の振出しを開始する。この際、ジブ側テンションロッド9A,9Bは、軸方向の長さが最も伸長した状態で固定されている。ただし、この場合、垂下状態でジブ8を伸長する必要があり、また、垂下状態からジブ8を振出すため、ジブ起伏シリンダ53のストロークが長くなる。このため、ジブ起伏シリンダ53が重量化してしまう。また、垂下状態からジブ8を振出すため、振出し時間が長くなる。これにより、ジブ8の作業性が低下する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
以下、本発明の付記を記載する。
(付記項1)
シリンダにより長手方向に伸縮するジブがブームの先端部の支持部に着脱自在に装着され、
前記ジブは、前記ブームの側面に沿わせて格納され格納状態と、前記格納状態から前記ブームの下面側に前記ジブが配置される下抱き状態とに移動可能に支持され、
前記格納状態では、前記ジブは、基端を前記ブームの先端側に、先端を前記ブームの基端側にそれぞれ向け、基端が前記ブームの先端部の前記支持部より前記ブームの基端側に配置される状態で保持され、
前記ジブを張出す際には、前記ジブの基端が前記ブームの先端部の前記支持部より前記ブームの基端側に配置される状態で、前記ジブを前記下抱き状態に移し替え、
前記下抱き状態で、前記ジブを伸長させ、前記ジブの基端部を前記ブームの先端部の前記支持部に連結するとともに、一端が前記ブームの先端部に連結されるブーム側テンションロッドと一端が前記ジブの先端部に連結される長さが可変のジブ側テンションロッドとを相対回動可能に連結し、
前記ブームと前記ジブとが連結され、かつ、前記ブーム側テンションロッドと前記ジブ側テンションロッドとが連結された状態で、前記ブームを起状させ、かつ、前記ジブを収縮させることにより、前記ジブが前記ブームの先端部の前記支持部を中心に回動し、前記ジブが鉛直方向に垂れ下がった垂下状態となり、
前記垂下状態を維持したまま前記ブームを伏状することにより、前記ジブを下方向に移動させ、前記ジブの前記ジブ側テンションロッドとの連結部で前記ジブ側テンションロッドの軸方向の長さを最も収縮した状態でロックし、
前記ジブ側テンションロッドの軸方向の長さをロックした状態で前記ブームを起状させることにより、前記垂下状態より前記ジブが張出し方向の前方側に位置する振出し開始状態となり、
前記振出し開始状態から前記ジブを伸長することにより、前記ジブが張出し方向の前方側に振出されることを特徴とするジブ付きクレーンのジブ張出し装置。
(付記項1の発明の作用効果)
このジブ張出し装置では、垂下状態でジブ側テンションロッドの軸方向の長さが最も収縮した状態でロックされる。このため、ブームを再び起状することにより、ジブが垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態に配置される。そして、振出し開始状態からジブを伸長することにより、ジブが張出し方向の前方に振出される。ジブの振出し状態では、ジブ側テンションロッドの軸方向の長さが最も収縮した状態でロックされている。ジブが垂下状態より張出し方向の前方に位置する振出し開始状態から振出しが開始されるため、ジブを伸縮するジブ起伏シリンダのストロークを短くすることが可能となる。これにより、ジブ起伏シリンダの軽量化及び振出し時間の短縮が図ることができ、ジブの作業性を向上させることができる。
また、このジブ張出し装置では、ジブの先端部のジブ側テンションロッドとの連結部で、ジブ側テンションロッドの軸方向の長さがロックされる。このため、ジブの垂下状態で作業者が地上から手の届く範囲までブームを伏状することにより、地上からジブ側テンションロッドの軸方向の長さをロックすることが可能となる。これにより、ジブの下抱き状態からの張出し作業の作業性を向上させることができる。