本発明の一実施形態に係る建設機械について図1を参照して説明する。図1は、一実施形態に係る建設機械であるクレーン車を示している。
図1に示されるように、クレーン車10は、走行車体11と、走行車体11の上に旋回可能に設けられた旋回体13とを備えている。
走行車体11は、移動のために複数の車輪11Aを有している。車輪11Aは、図示しない駆動機構によって駆動可能に構成されている。一部の車輪11Aは、図示しない操舵機構によって操舵可能に構成されている。また、走行車体11は、前後の両側に、クレーン作業時に走行車体11を地面に対して安定に支持するためのアウトリガ16を有している。
旋回体13は、旋回台13Aと、旋回台13Aに起伏可能に設けられたブーム14と、ブーム14を起伏させるためのブーム起伏装置12と、クレーン車10の運転とクレーン作業の操作のための運転室15とを備えている。
ブーム起伏装置12は、旋回台13Aとブーム14に連結されたブーム起伏シリンダ12Aを備えている。ブーム14には、主巻ワイヤロープ20Aを介して主フック17Aが支持される。
また、旋回体13は、ブーム14の長さを補うためにブーム14の先端部に回動可能に連結されるジブ30と、ジブ30を起伏させるジブ起伏機構18とを備えている。ジブ30は、長手軸に沿って延設されている。ジブ30は、使用時には、ブーム14の先端部に回動可能に連結される。また、ジブ30は、不使用時には、ブーム14の下面に沿って、ブーム14の下面と走行車体11の上面との間に格納される。言い換えれば、ジブ30は、下抱き状態でブーム14の下側に格納される。ジブ起伏機構18は、ジブ30と一体化されている構造体であり、ジブ30の不使用時には、ジブ30と共に格納される。ジブ30には、補巻ワイヤロープ20Bを介して補フック17Bが支持される。
ブーム14とジブ30の相互間には、ブーム14にジブ30を連結しておくジブ連結機構19が設けられている。ジブ連結機構19は、ジブ30が格納位置に配置されたときにブーム14にジブ30を連結し、ブーム14の伸長によってジブ30がブーム14の先端側に移動されたときにブーム14とジブ30の連結が外れるように構成されている。
たとえば、ジブ連結機構19は、ブーム14に固定されたジブ連結ピンと、ジブ30に固定されたジブ連結リングとを備えている。ジブ連結ピンは、ブーム14の長手軸に平行に、ブーム14の先端側に向かって延びている。ジブ30がブーム14に沿ってブーム14の先端側に格納位置から移動される際にジブ連結ピンがジブ連結リングから抜けることにより、ブーム14とジブ30の連結が外れる。反対に、ジブ30がブーム14に沿ってブーム14の基端側に移動されて格納位置に配置される際にジブ連結ピンがジブ連結リングに挿入されることによりブーム14にジブ30が連結される。格納時のジブ30の移動の際にジブ30を適切な位置へ案内する案内機構が設けられている。
運転室15には、走行車体11の自走のため、アクセル、ブレーキ、ステアリング等の複数の操作制御装置が設けられており、これらの操作装置での操作に基づいて制御装置によって、車輪11Aの駆動および操舵を制御装置が制御できるように構成されている。運転室15にはまた、クレーン作業のため、複数の操作レバーや操作ペダル等の操作制御装置が設けられており、これらの操作制御装置での操作に基づいて、旋回体13の旋回、ブーム14の起伏および伸縮、ジブ30の振り出し等を制御装置が制御できるように構成されている。
ここで、ブーム14とジブ30とジブ起伏機構18の詳細について、図2を参照して説明する。図2は、ブーム14とジブ30とジブ起伏機構18の斜視図である。図2には、ジブ30が最起立された状態におけるジブ起伏機構18が描かれている。
ブーム14は、伸縮式の多段ブーム21と、多段ブーム21の先端ブームの先端に固定されたブームヘッド22とを備えている。
ブームヘッド22は、主巻ワイヤロープ20Aが掛けられる主巻ガイドシーブ28Aと、補巻ワイヤロープ20Bが掛けられる補巻ガイドシーブ28Bと、主巻ワイヤロープ20Aが掛けられるブームトップシーブ29Aと、ジブ30の不使用時に補巻ワイヤロープ20Bが掛けられるルースタートップシーブ29Bとを有している。主フック17Aは、主巻ガイドシーブ28Aとブームトップシーブ29Aに掛けられた主巻ワイヤロープ20Aによって吊り下げられる。補フック17Bは、ジブ30の不使用時に、補巻ガイドシーブ28Bとルースタートップシーブ29Bに掛けられた補巻ワイヤロープ20Bによって吊り下げられる。
ブームヘッド22はまた、ブームリンク24を備えている。ブームリンク24は、一端部がブームヘッド22に設けられたシャフト23によって軸支されており、ブームヘッド22に回動可能に連結されている。また、ブームリンク24は、ジブ30の使用時に、他端部が連結ピン27によってテンションロッド41に回動可能に連結される。ブームヘッド22はさらに、ブームリンク24を受けるブームリンクストッパ26を備えている。
ジブ30は、長手軸に垂直な断面が箱形形状のジブ前方部分31と、二股に分かれたジブ後方部分32とから構成されている。ここにおいて、ジブ30がブームヘッド22に連結される側を後方、その反対側を前方としている。ジブ30の後方の端部を基端部、ジブ30の前方の端部を先端部と称する。
ジブ後方部分32の二股の部分は、主フック17Aが通過できる間隔を置いて延びている。ジブ後方部分32は、後端部に、ブームヘッド22に連結されるジブフート部32aを有している。ジブフート部32aは、ブームヘッド22のブームトップシーブシャフト25にジブフートピン32bにより着脱自在に連結されるように構成されている。たとえば、ジブフート部32aは、ブームトップシーブシャフト25に係合する凹部を有する二股状のフォーク部と、フォーク部の一対の端部に形成されたジブフートピン挿入穴とを有している。ジブフートピン挿入穴には、ジブフートピン32bが挿入され、ジブフートピン32bによって、ジブフート部32aからのブームトップシーブシャフト25の脱落が防止される。
ジブ前方部分31は、差し込み構造の2段式であり、外側の1段ジブ31aと、内側の2段ジブ31bとから構成されている。1段ジブ31aは、長手軸に垂直な断面が角丸四角形の筒状の構造体である。2段ジブ31bの先端部には、補巻ワイヤロープ20Bを掛けまわすジブトップシーブ33が設けられている。
ジブ起伏機構18は、ジブ30の長手軸に沿って移動可能たとえば摺動可能にジブ30に配設されたスライドブラケット34を備えている。詳しくは、スライドブラケット34は、1段ジブ31aの周囲に配設されている。
ジブ起伏機構18はまた、スライドブラケット34を移動させる2本のジブ起伏シリンダ35を備えている。2本のジブ起伏シリンダ35は、1段ジブ31aの左側面と右側面に長手軸に沿ってそれぞれ配設されている。各ジブ起伏シリンダ35は、一端部が1段ジブ31aの後端部に固定されており、他端部がスライドブラケット34に連結されている。好ましくは、各ジブ起伏シリンダ35は、シリンダチューブの端部が1段ジブ31aの後端部に固定されており、ピストンロッドの端部がスライドブラケット34に連結されている。
ジブ30はまた、2本のジブ起伏シリンダ35の中間部を保持する2つのシリンダ中間保持部36を備えている。各ジブ起伏シリンダ35は、ピストンロッドが出没する側のシリンダチューブの端部が各シリンダ中間保持部36によって保持されている。
ジブ起伏機構18はまた、ブームヘッド22とジブ30の間に張られる2本のテンションロッド41を備えている。各テンションロッド41は、一端部がスライドブラケット34に回動可能に連結されており、他端部がジブ30の使用時にブームヘッド22のブームリンク24に回動可能に連結される。
各テンションロッド41は、テンションロッド本体42とエクステンション43とを備えている。エクステンション43は、一端部がスライドブラケット34に軸支されており、スライドブラケット34に回動可能に連結されている。エクステンション43は、筒状をしており、テンションロッド本体42の一部が挿入可能となっている。つまり、テンションロッド41は、伸縮可能となっている。
ジブ起伏機構18はまた、テンションロッド41の長さを固定するテンションロッド長さ固定機構を備えている。テンションロッド長さ固定機構は、テンションロッド41の長さを固定するために、テンションロッド本体42とエクステンション43に挿脱されるテンションロッドセットピンを有している。テンションロッド長さ固定機構については、図6~図10を参照して後述する。
前述したように、ジブ30は、下抱き状態でブーム14の下側に格納される。格納状態では、テンションロッド41は、重力方向に関して、ジブ30よりも下側に位置する。このため、ジブ起伏機構18は、ジブ30の格納時に、2本のテンションロッド41をそれぞれ支持する2つのテンションロッド保持機構37を備えている。各テンションロッド保持機構37は、ジブ30に固定されている。
ここで、テンションロッド41の詳細について図3と図4を参照して説明する。図3と図4に示されるように、エクステンション43は、一端部にボス部43aを有している。ボス部43aが、スライドブラケット34に取り付けられたテンションロッド連結ピン47(図2参照)に嵌められることにより、エクステンション43は、スライドブラケット34に回動可能に連結されている。
テンションロッド本体42は、長尺のロッド部44と、ロッド部44の一端部に固定された挿入部45と、ロッド部44の他端部に固定された連結部46を備えている。
テンションロッド本体42の挿入部45は、エクステンション43の中に挿入可能に構成されている。つまり、テンションロッド本体42の挿入部45はエクステンション43の中を移動可能となっている。
テンションロッド41はまた、所定の長さに固定可能となっている。テンションロッド本体42の挿入部45とエクステンション43には、テンションロッドセットピンが挿入されるセットピン挿入穴45aとセットピン挿入穴43bがそれぞれ形成されている。セットピン挿入穴45aとセットピン挿入穴43bは、テンションロッド41が所定の長さになったときに整列する位置に形成されている。挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bが整列され、それらにテンションロッドセットピンが挿入されることにより、テンションロッド41は所定の長さに固定される。
テンションロッド本体42の連結部46は、ブームリンク24に連結可能に構成されている。ブームリンク24は、連結ピン27が挿入される連結ピン挿入穴を有している。また、テンションロッド本体42の連結部46は、連結ピン27が挿入される連結ピン挿入穴を有している。ブームリンク24の連結ピン挿入穴と連結部46の連結ピン挿入穴が整列され、それらに連結ピン27が挿入されることにより、テンションロッド41はブームリンク24に回動可能に連結される。
次に、ジブ30の振り出し作業とそれに続くジブ30の起伏動作について、図1と図3と図4を参照しながら簡単に説明する。図3と図4には、ジブ30の振り出し時におけるテンションロッドとブームリンクが描かれている。ここで、ジブ30の振り出し作業は、ジブ30を格納状態から起伏動作の開始状態に移るまでの動作を意味している。
ジブ30の振り出し作業では、まず、アウトリガ16によって、クレーン車10を地面に対して安定化させる。次に、ジブ30のジブフート部32aをブームヘッド22のブームトップシーブシャフト25に連結する。これにより、ジブ30はブームヘッド22に回動可能に連結される。
続いて、テンションロッド本体42をエクステンション43から引き出し、テンションロッド本体42の連結部46を、連結ピン27によって、ブームヘッド22のブームリンク24に連結する。これにより、テンションロッド41はブームリンク24に回動可能に連結される。テンションロッド保持機構37による保持を解除して、テンションロッド41を解放する。
次に、ブーム14を最起立させる。続いて、ブーム14を所定の長さだけ伸長させる。これにより、ジブ連結機構19によるブーム14に対するジブ30の連結が解除され、ジブ30が重力方向に垂れ下がる。言い換えれば、ジブ30はほぼ垂直な姿勢で支持される。その際、主フック17Aは、ジブ30のジブ後方部分32の二股の部分の間を通る。
この状態では、図3に示されるように、ブームリンク24は、ブームリンクストッパ26に当たっていて、ブームヘッド22に対して一定の姿勢に維持されている。
その後、図5に示されるように、ジブ起伏機構18に対する次の作業を地上の作業者がおこなえる程度までブーム14を倒伏させる。その間、テンションロッド41は伸縮可能であり、ブーム14に対するジブ30の角度は変化可能である。このため、ジブ30はほぼ垂直な姿勢で支持されている。
図5に示された状態では、図4に示されるように、ブームリンク24は、ブームリンクストッパ26から離れており、テンションロッド41は、挿入部45がエクステンション43の中に最大限に挿入されており、最縮小されている。この状態では、テンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bは整列している。テンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bにテンションロッドセットピンを挿入する。これにより、テンションロッド本体42とエクステンション43が連結されるため、テンションロッド41は、伸縮が規制され、一定の長さに固定される。
続いて、ブーム14を起立させていく。ブーム14が起立されていくにつれて、ジブ30は前方に振り出されていく。これにより、ジブ30の振り出し作業は完了する。振り出し作業完了時のジブ30は、続いておこなわれる起伏動作の開始状態にある。
起伏動作の開始状態にあるジブ30は、最倒伏状態にあり、図1に最も下側に描かれている。このとき、ジブ起伏シリンダ35は、最縮小の状態である。その後、ジブ起伏シリンダ35を伸長させるにつれて、ジブ30は起立されていく。最起立されたジブ30が図1に最も上側に描かれている。反対に、ジブ起伏シリンダ35を縮小させるにつれて、ジブ30は倒伏されていく。つまり、ジブ起伏シリンダ35を伸縮させることによってジブ30が起伏される。
以下、テンションロッド長さ固定機構の構造について、図6~図10を参照して説明する。図6~図9は、図5に示された状態でおこなわれるテンションロッドの長さ固定の一連の作業時おけるテンションロッド長さ固定機構を示している。また、図10は、ジブの使用状態にあるテンションロッド長さ固定機構を示している。
テンションロッド長さ固定機構は、前述したように、テンションロッド41に挿脱されるテンションロッドセットピン60を有している。テンションロッドセットピン60は、テンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bに挿入されるピン部61と、ピン部61の基端部から側方に延設された把持部62を有している。把持部62は、たとえば、ピン部61の中心軸に対して直交して延びている。把持部62はまた、好ましくは、作業者が把持部62を手に持ってテンションロッド41に対するテンションロッドセットピン60の挿脱をおこない易い形状に形作られている。
把持部62の先端部には、後述するクイックピン80が挿入されるピン挿入穴63が形成されている。把持部62にはまた、後述する突設ピン39(図11参照)が挿入されるピン挿入穴64が形成されている。
テンションロッド長さ固定機構はまた、把持部62と係合してテンションロッドセットピン60が抜けるのを防止するピン抜け防止部材70を有している。ピン抜け防止部材70は、テンションロッド41のエクステンション43に固定されている。ピン抜け防止部材70は、セットピン挿入穴43bの近くに設けられている。ピン抜け防止部材70は、エクステンション43から側方外側に向かって突設された突設部71と、突設部71の先端部から側方に延設された延設部72を有している。
ピン抜け防止部材70は、テンションロッド41に挿入されたテンションロッドセットピン60の把持部62が、エクステンション43と延設部72の間に位置している状態、たとえば、突設部71に接している状態において、ピン部61の中心軸に沿った把持部62の移動を延設部72が邪魔することによって、テンションロッドセットピン60の抜けを防止する。
テンションロッド長さ固定機構はさらに、テンションロッドセットピン60の把持部62とテンションロッド41のエクステンション43を固定する固定部材たとえばクイックピン80と、クイックピン80が挿入されるピン挿入穴86が形成されたピン受け部85を有している。ピン受け部85は、スライドブラケット34に軸支されている側のエクステンション43の端部の外側部分に固定されている。ピン挿入穴86は、ジブ30の先端部に向かって延出したピン受け部85の先端部に形成されている。
把持部62のピン挿入穴63とピン受け部85のピン挿入穴86は、テンションロッドセットピン60のピン部61が挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bに挿入された後にテンションロッドセットピン60が回転されて把持部62がピン抜け防止部材70に係合した状態において、整列するように形成されている。把持部62がピン抜け防止部材70に係合した状態は、把持部62がエクステンション43と延設部72の間に位置している状態であり、たとえば、把持部62が突設部71に接している状態である。
クイックピン80は、詳しくは、把持部62のピン挿入穴63とピン受け部85のピン挿入穴86に挿入されるピン部81と、ピン部81の基端部に設けられた頭部82と、クイックピン80が不所望に抜けることを防止する抜け防止リング83を有している。抜け防止リング83は、頭部82に連結されている。抜け防止リング83は、弾性変形し得るばね状の部品で構成されており、それ自体の復元力によって、ピン部81に当接するように付勢されている。
抜け防止リング83は、ピン部81が把持部62のピン挿入穴63とピン受け部85のピン挿入穴86に挿入された状態において、ピン挿入穴63が形成された把持部62の先端部とピン挿入穴86が形成されたピン受け部85の先端部の両方に係合する大きさを有している。ここで、抜け防止リング83が把持部62の先端部とピン受け部85の先端部の両方に係合するとは、把持部62の先端部とピン受け部85の先端部が共に抜け防止リング83の内側に位置していることをいう。
クイックピン80は、ピン部81が把持部62のピン挿入穴63とピン受け部85のピン挿入穴86に挿入された状態において、把持部62の先端部とピン受け部85の先端部の両方に係合した抜け防止リング83がピン部81の中心軸に沿ったクイックピン80の移動を邪魔することによって、クイックピン80が抜けるのを防止する。
テンションロッド長さ固定機構はまた、補巻ワイヤロープ20Bがクイックピン80と干渉することを防止するロープガイド90を有している。ロープガイド90は、たとえば、折り曲げられた棒状の部材で構成されており、一端部がピン受け部85の先端部に固定され、他端部がスライドブラケット34に軸支されている側のエクステンション43の端部の内側部分に固定されている。つまり、ロープガイド90は、エクステンション43の外側部分に固定されたピン受け部85とエクステンション43の内側部分との間にまたがって延びている。これにより、ロープガイド90は、把持部62とピン受け部85に取り付けられたクイックピン80に対する補巻ワイヤロープ20Bの内側からの干渉すなわち接触を妨害する。
ジブ30の使用状態においては、2本のテンションロッド41の間に補巻ワイヤロープ20Bが延びている。ロープガイド90は、補巻ワイヤロープ20Bがクイックピン80と干渉することを防止する。仮に、補巻ワイヤロープ20Bがクイックピン80と干渉した場合、補巻ワイヤロープ20Bが抜け防止リング83を跳ね上げ、これに起因して、クイックピン80が不所望に抜けてしまうおそれがある。しかし、実際には、ロープガイド90が設けられているため、補巻ワイヤロープ20Bがクイックピン80と干渉することはなく、前述したようにクイックピン80が不所望に抜けてしまうことはない。
次に、テンションロッド41の長さの固定作業の手順について説明する。
図5に示された状態では、前述したように、図4に示されるように、テンションロッド41は、挿入部45がエクステンション43の中に最大限に挿入されており、最縮小されている。この状態では、テンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bは整列している。
テンションロッド41の長さを固定するため、作業者は、まず、図6に示されるように、テンションロッドセットピン60を準備し、テンションロッドセットピン60のピン部61をエクステンション43のセットピン挿入穴43bに整列させる。
続いて、作業者は、図7に示されるように、エクステンション43のセットピン挿入穴43bとテンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45a(図4参照)に、テンションロッドセットピン60のピン部61を挿入する。これにより、テンションロッド本体42とエクステンション43が連結され、テンションロッド41の長さが一定に固定される。
テンションロッドセットピン60の挿入作業は、たとえば、作業者が、テンションロッドセットピン60の把持部62の先端部を手に持っておこなう。このため、通常のテンションロッドセットピンを使用する場合と比較して、作業者は、高い位置にあるテンションロッド41に対しても、把持部62の長さのぶんだけ低い位置でテンションロッド41の長さ固定の作業をおこなうことができる。たとえば、通常のテンションロッドセットピンを使用する場合には必要となる脚立や踏み台等を使用することなく、もしくは高さの高いものを使わずとも、テンションロッド41の長さ固定の作業をおこなうことができる。
また、クレーン車10が大型である場合、小型である場合と比べて、ブーム14やジブ30も大型である。そのため、テンションロッド41の長さ固定の作業時におけるテンションロッド41の長さ固定の作業の際におけるテンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bの位置も高い。テンションロッドセットピン60の使用は、クレーン車10が大型である場合に効果的である。
次に、作業者は、手に持った把持部62を操作して、ピン部61の中心軸の周りにテンションロッドセットピン60を回転させ、図8に示されるように、把持部62をピン抜け防止部材70に係合させる。この状態では、ピン部61の中心軸に沿ったテンションロッドセットピン60の移動が制限される。さらに、作業者は、把持部62に形成されたピン挿入穴63とピン受け部85に形成されたピン挿入穴86を整列させる。
続いて、作業者は、クイックピン80を準備し、クイックピン80のピン部81を把持部62のピン挿入穴63に整列させる。さらに、作業者は、付勢力に逆らって手で抜け防止リング83を跳ね上げ、クイックピン80のピン部81を把持部62のピン挿入穴63とピン受け部85のピン挿入穴86に挿入する。
挿入後、図9に示されるように、抜け防止リング83を、元の状態、すなわち、ピン部81に当接した状態に戻す。その結果、抜け防止リング83は、把持部62の先端部とピン受け部85の先端部の両方に係合する。すなわち、抜け防止リング83が、把持部62の先端部とピン受け部85の先端部の周囲に配置される。これにより、ピン部81の中心軸に沿ったクイックピン80の移動が制限され、クイックピン80が不所望に抜けることが防止される。
以上の作業によって、テンションロッド41の長さの固定作業は完了する。その後、ブーム14が起立され、ジブ30の使用状態に移行される。
ジブ30の使用状態においては、ジブ30とテンションロッド41の相対的位置関係は変化する。しかし、テンションロッドセットピン60の把持部62はエクステンション43に固定されているため、把持部62とエクステンション43の相対的位置関係は一体的に動くため、両者の相対的位置関係は変化しない。したがって、ジブ30の使用中に、把持部62に負荷がかからない。
また、ピン抜け防止部材70がエクステンション43のセットピン挿入穴43bの近くに設けられているため、把持部62が長いものであっても、把持部62の曲がりによってテンションロッドセットピン60が抜けることはない。
さらに、ジブ30の使用状態においては、図10に示されるように、2本のテンションロッド41の間に補巻ワイヤロープ20Bが延びている。ロープガイド90は、補巻ワイヤロープ20Bがクイックピン80と干渉することを防止する。これにより、補巻ワイヤロープ20Bがクイックピン80と干渉し、補巻ワイヤロープ20Bが抜け防止リング83を跳ね上げ、これに起因して、クイックピン80が不所望に抜けてしまうことが防止される。
テンションロッドセットピン60は、通常のテンションロッドセットピンと同様に、ジブ30がブーム14の下側に格納された際に、テンションロッド41をジブ30に固定するために利用されてもよい。以下、これについて、図11を参照して説明する。図11は、格納状態にあるジブ30とテンションロッド41の一部を示している。
テンションロッド41の連結部46には、ジブ30に向かって突出したプレート48が固定されている。また、ジブ30のジブ後方部分32には、プレート48に当接するストッパ38が設けられている。ストッパ38は、ジブ30の格納時にテンションロッド41がジブ30の先端部へ向けて移動される際に、プレート48に当接してテンションロッド41のそれ以上の移動を阻止する。
図示されてはいないが、プレート48とストッパ38には、テンションロッドセットピン60のピン部61が挿入されるピン挿入穴がそれぞれ形成されている。それらのピン挿入穴は、プレート48がストッパ38に当接した状態において互いに整列するように、プレート48とストッパ38にそれぞれ形成されている。
ストッパ38にはまた、ストッパ38から側方外側に向かって突設された突設ピン39が設けられている。また、前述したように、テンションロッドセットピン60の把持部62には、突設ピン39が挿入されるピン挿入穴64が形成されている。テンションロッドセットピン60のピン部61とピン挿入穴64の中心間距離は、ストッパ38のピン挿入穴と突設ピン39の中心間距離と等しく設計されている。
また、突設ピン39には、先端部に、クイックピン80のピン部81が挿入されるピン挿入穴が形成されている。このピン挿入穴は、突設ピン39を横切って、たとえば、突設ピン39の軸に直交して、突設ピン39を貫通している。
ジブ30がブーム14の下側に格納された状態においてテンションロッド41をジブ30に固定する際、作業者は、まず、テンションロッド41をジブ30の先端部へ向けて移動させ、ストッパ38にプレート48に当接させ、プレート48のピン挿入穴とストッパ38のピン挿入穴を整列させる。
次に、作業者は、テンションロッドセットピン60を準備し、テンションロッドセットピン60のピン部61をプレート48のピン挿入穴とストッパ38のピン挿入穴に整列させるとともに、テンションロッドセットピン60の把持部62に形成されたピン挿入穴64を突設ピン39に整列させる。
続いて、作業者は、テンションロッドセットピン60のピン部61をプレート48のピン挿入穴とストッパ38のピン挿入穴に挿入するとともに、把持部62のピン挿入穴64に突設ピン39を通す。これにより、テンションロッド41の連結部46がジブ30のジブ後方部分32に固定される。
次に、作業者は、クイックピン80を準備し、クイックピン80のピン部81を突設ピン39のピン挿入穴に整列させる。さらに、作業者は、抜け防止リング83を手で跳ね上げ、クイックピン80のピン部81を突設ピン39のピン挿入穴に挿入する。
挿入後、抜け防止リング83を、元の状態、すなわち、ピン部81に当接した状態に戻す。その結果、抜け防止リング83が突設ピン39の周囲に配置される。これにより、クイックピン80の移動が制限され、クイックピン80が不所望に抜けることが防止される。
以上の作業によって、ジブ30に対するテンションロッド41の固定作業は完了する。
本実施形態のジブ起伏機構18では、テンションロッド41の長さ固定作業を行う際に、ジブ先端部とテンションロッド長さ固定作業位置(セットピン挿入穴43b、セットピン挿入穴45a)との距離が長くなってしまうため、一度、補フック17Bを着地させて作業する必要がある。
補フック17Bを地上に着地させた場合、補フック17Bが汚れたり傷ついたり損傷したりするおそれがある。また、補フック17Bを着地させるには、繊細な作業が必要となるため、作業に時間がかかる。さらに、補巻ワイヤロープ20Bのセット作業の際に補巻ワイヤロープ20Bをつかむ必要があり、作業が煩雑になる。
これに対して、補フック17Bを空中に吊った状態でテンションロッド41の長さ固定の作業をおこなう場合には、補フック17Bが汚れたり傷ついたり損傷したりするおそれがなく、前述した繊細な作業や煩雑な作業が必要なく、作業性が向上する。
本発明をこのようなジブ起伏機構18に採用することで、低位置からでもテンションロッド41の長さ固定作業が可能となることから、補フック17Bを着地させることなく、空中に吊った状態での作業が可能になるため、前述した不具合を解決することが出来る。
また、これまで述べた効果は、上記実施形態の構造に限らず、さまざまな構造のジブ起伏機構においても本発明を採用することで発揮されるものである。
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。