本発明の実施形態に係るジブ起伏機構を備えたクレーン車10について図1~図26を参照して説明する。まず、クレーン車10について図1~図6を参照して説明する。図1~図6に示されるように、クレーン車10は、走行車体11と、走行車体11の上に旋回可能に設けられた旋回体13とを備えている。旋回体13は、旋回台13Aと、旋回台13Aに起伏可能に支持されたブーム14と、クレーン車10の運転とクレーン作業の操作のための運転室15とを備えている。また、ブーム14と旋回台13Aとの間には、ブーム14を起伏させるためのブーム起伏装置12が設けられている。ブーム起伏装置12は、ブーム14と旋回台13Aに連結されたブーム起伏シリンダ12Aを備えている。ブーム14には、ワイヤロープを介して主フック17Aが支持されている。ブーム14にはまた、後述するジブ30の不使用時において、補巻ワイヤロープを介して補フック17Bが支持されている。最倒伏時のブーム14の上面は、運転室15のアイポイントよりも下方に位置する。ここで、アイポイントは、標準的な背格好の作業者が運転室15の運転席に座ったときの目の高さ位置を意味している。走行車体11の前側と後側には、それぞれアウトリガ16が設けられている。
また、旋回体13は、ブーム14の長さを補うジブ30と、ジブ30を起伏させるジブ起伏機構18とを備えている。ジブ30は、長手軸に沿って延設されている。ジブ30は、使用時には、ブーム14に連結される。また、ジブ30は、不使用時には、ブーム14の下面に沿って、ブーム14の下面と走行車体11の上面との間に格納される。言い換えれば、ジブ30は、下抱き状態でブーム14の下側に格納される。ジブ起伏機構18は、ジブ30と一体化されている構造体であり、ジブ30の不使用時には、ジブ30と共に格納される。
ブーム14とジブ30の相互間には、ブーム14にジブ30を連結しておくジブ連結機19が設けられている。ジブ連結機19は、ジブ30が格納位置に配置されたときにブーム14にジブ30を連結し、ブーム14の伸長によってジブ30がブーム14の先端側に移動されたときにブーム14とジブ30の連結が外れるように構成されている。
たとえば、ジブ連結機19は、ブーム14に固定されたジブ連結ピンと、ジブ30に固定されたジブ連結リングとを備えている。ジブ連結ピンは、ブーム14の長手軸に平行に、ブーム14の先端側に向かって延びている。ジブ30がブーム14に沿ってブーム14の基端側に移動されて格納位置に配置される際にジブ連結ピンがジブ連結リングに挿入されることによりブーム14にジブ30が連結される。反対に、ジブ30がブーム14に沿ってブーム14の先端側に格納位置から移動される際にジブ連結ピンがジブ連結リングから抜けることにより、ブーム14とジブ30の連結が外れる。
ここで、ジブ起伏機構18について図7~図26を参照して説明する。図7に示されるように、ブーム14は、伸縮式の多段ブーム21と、多段ブーム21の先端ブームの先端に固定されたブームヘッド22とを備えている。ブームヘッド22は、ブームリンク24を備えている。ブームリンク24は、一端部がブームヘッド22のガイドシーブシャフト23によって軸支されており、ブームヘッド22に回動可能に連結されている。詳しくは、図21に示されるように、ブームリンク24は、一端部にボス部24aを有している。ボス部24aがガイドシーブシャフト23に嵌められることにより、ブームリンク24はブームヘッド22に回動可能に支持される。また、ブームリンク24は、ボス部24aの反対側の端部に、ブームリンク24とテンションロッド41を連結するための連結ピン27(図24~図26参照)が挿入される連結ピン挿入穴24bを有している。
図7と図9に示されるように、ジブ30は、長手軸に垂直な断面が箱形形状のジブ前方部分31と、二股に分かれたジブ後方部分32とから構成されている。ここにおいて、ジブ30がブームヘッド22に連結される側を後方、その反対側を前方としている。ジブ30の後方の端部を基端部、ジブ30の前方の端部を先端部と称する。また、以下の説明において、ジブ30の上面と下面は、ジブ30が水平に振り出された状態を基準にしている。
ジブ後方部分32の二股の部分は、主フック17Aが通過できる間隔を有している。ジブ後方部分32は、後端部に、ブームヘッド22に連結されるジブフート部32aを有している。ジブフート部32aは、ブームヘッド22のブームトップシーブシャフト25にジブフートピンにより着脱自在に連結されるように構成されている。たとえば、ジブフート部32aは、ブームトップシーブシャフト25に係合する凹部を有する二股状のフォーク部と、フォーク部の一対の端部に形成されたジブフートピン挿入穴とを有している。ジブフートピン挿入穴には、ジブフートピンが挿入され、ジブフートピンによって、ジブフート部32aからのブームトップシーブシャフト25の脱落が防止される。
ジブ前方部分31は、差し込み構造の2段式であり、外側の1段ジブ31aと、内側の2段ジブ31bとから構成されている。1段ジブ31aは、図17に示されるように、長手軸に垂直な断面が角丸四角形の筒状の構造体である。図8と図13と図14に示されるように、2段ジブ31bの先端部には、補巻ワイヤロープを掛けまわすジブトップシーブ33が設けられている。1段ジブ31aと2段ジブ31bは、連結部38を介して連結されている。
図7~図12に示されるように、ジブ起伏機構18は、ジブ30に対して長手軸に沿って摺動可能に配設されたスライドブラケット34を備えている。詳しくは、スライドブラケット34は、1段ジブ31aの周囲に配設されている。
ジブ起伏機構18はまた、スライドブラケット34を移動させるジブ起伏シリンダ構造体を備えている。ジブ起伏シリンダ構造体は、1段ジブ31aの左側面と右側面に長手軸に沿ってそれぞれ配設された2本のジブ起伏シリンダ35を備えている。各ジブ起伏シリンダ35は、一端部が1段ジブ31aの後端部に固定されており、他端部がスライドブラケット34に連結されている。好ましくは、各ジブ起伏シリンダ35は、シリンダチューブの端部が1段ジブ31aの後端部に固定されており、ピストンロッドの端部がスライドブラケット34に連結されている。各ジブ起伏シリンダ35は、ジブ前方部分31の1段ジブ31aの側面に配置されている。各ジブ起伏シリンダ35は、図10~図12に示されるように、ジブ前方部分31の1段ジブ31aの上面と下面の間に配置されている。
図7~図8に示されるように、ジブ30はまた、2本のジブ起伏シリンダ35の中間部を保持する2つのシリンダ中間保持部36を備えている。各ジブ起伏シリンダ35は、ピストンロッドが出没する側のシリンダチューブの端部が各シリンダ中間保持部36によって保持されている。
ジブ起伏シリンダ35の中間部がシリンダ中間保持部36によって保持されることによって、ジブ起伏シリンダ35が両端部と中間部の3個所で支持されるため、ジブ起伏シリンダ35の見かけ上の座屈強度が向上される。また、ジブ起伏シリンダ35の実質的な座屈強度を相対的に低下させた設計として、ジブ起伏シリンダ35の軽量化を図ることも可能である。
図7~図8、図22~図26に示されるように、ジブ起伏機構18はまた、テンションロッド構造体を備えている。テンションロッド構造体は、並列に設けられた2本のテンションロッド41を備えている。各テンションロッド41は、一端部がスライドブラケット34に回動可能に連結されており、他端部が使用時にブームヘッド22のブームリンク24に回動可能に連結される。
各テンションロッド41は、テンションロッド本体42とエクステンション43とを備えている。エクステンション43は、一端部がスライドブラケット34に軸支されており、スライドブラケット34に回動可能に連結されている。詳しくは、図22~図26に示されるように、エクステンション43は、一端部にボス部43aを有している。ボス部43aが、スライドブラケット34のテンションロッド連結ピン61(図15参照)に嵌められることにより、エクステンション43は、スライドブラケット34に回動可能に連結される。
エクステンション43は、筒状をしており、テンションロッド本体42の一部が挿入可能となっている。詳しくは、図22~図26に示されるように、テンションロッド本体42は、長尺のロッド部44と、ロッド部44の一端部に固定された挿入部45と、ロッド部44の他端部に固定された連結部46を備えている。
テンションロッド本体42の挿入部45は、エクステンション43の中に挿入可能に構成されている。つまり、テンションロッド本体42の挿入部45はエクステンション43の中を移動可能となっている。言い換えれば、テンションロッド41は、伸縮可能となっている。
テンションロッド41はまた、所定の長さに固定可能となっている。このため、テンションロッド本体42の挿入部45とエクステンション43には、テンションロッドセットピン47(図26参照)を挿入するためのセットピン挿入穴45aとセットピン挿入穴43bがそれぞれ形成されている。セットピン挿入穴45aとセットピン挿入穴43bは、テンションロッド41が所定の長さになったときに整列する位置に形成されている。挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bが整列され、それらにテンションロッドセットピン47が挿入されることにより、テンションロッド41は所定の長さに維持される。
テンションロッド本体42の連結部46は、ブームリンク24に連結可能に構成されている。前述したように、ブームリンク24は、連結ピン27(図24~図26参照)が挿入される連結ピン挿入穴24bを有している。また、テンションロッド本体42の連結部46は、連結ピン27が挿入される連結ピン挿入穴46aを有している。ブームリンク24の連結ピン挿入穴24bと連結部46の連結ピン挿入穴46aが整列され、それらに連結ピン27が挿入されることにより、テンションロッド41はブームリンク24に回動可能に連結される。
図15~図18に示されるように、スライドブラケット34は、1段ジブ31aの上面に面する前上ブラケット51と、1段ジブ31aの下面に面する前下ブラケット52と、前上ブラケット51と前下ブラケット52を接続している一対の横ブラケット53とを備えている。スライドブラケット34はまた、1段ジブ31aの上面に面する後上ブラケット54を備えている。後上ブラケット54は、前上ブラケット51に支持されている。
前上ブラケット51は、2本のテンションロッド連結ピン61と、2本のジブ起伏シリンダ連結ピン62(図示省略、図7参照)とを備えている。前述したように2本のテンションロッド41(図示省略、図7参照)は、それぞれ、2本のテンションロッド連結ピン61に連結され、前述したように2本のジブ起伏シリンダ35は、それぞれ、2本のジブ起伏シリンダ連結ピン62に連結されている。
前上ブラケット51は、1段ジブ31aの丸角部に面する部分に、1段ジブ31aに接する摺動部材である前上スライド板55を備えている。前下ブラケット52は、1段ジブ31aの丸角部に面する部分に、1段ジブ31aに接する摺動部材である前下スライド板56を備えている。前下ブラケット52は、ブラケット接続ピン58によって軸支されており、揺動可能に支持されている。後上ブラケット54は、1段ジブ31aの丸角部に面する部分に、1段ジブ31aに接する摺動部材である後上スライド板57を備えている。後上ブラケット54は、ブラケット接続ピン59によって軸支されており、揺動可能に支持されている。
図15に示されるように、スライドブラケット34は、ジブ起伏シリンダ35の最長ストロークを規制する一対のストッパ60を前端面に備えている。また、図14に示されるように、1段ジブ31aと2段ジブ31bの間の連結部38は、ストッパ60を受けるストッパ受け39を備えている。
左右のジブ起伏シリンダ35の伸長側ストロークエンド直前で、スライドブラケット34のストッパ60とストッパ受け39が接触することにより、1段ジブ31aおよびスライドブラケット34に対するジブ起伏シリンダ35の接続部の左右の製造誤差や左右のジブ起伏シリンダ35の全長誤差に影響されることなく、左右のジブ起伏シリンダ35の最大ストロークが均等にでき、ジブ最起立の位置にスライドブラケット34の位置決めができる。
ここでは、スライドブラケット34の位置決めするひとつの手法として、ストッパ60とストッパ受け39を用いる例を説明したが、これに代えて、ジブ起伏シリンダ35にストロークセンサーを設け、ストロークセンサーの検出信号を用いて左右のジブ起伏シリンダ35のストロークを均等化することにより、ジブ最起立の位置にスライドブラケット34を位置決めする構成としてもよい。
また、左右のジブ起伏シリンダ35の駆動回路において、左右のジブ起伏シリンダ35は、カウンタバランシングバルブまたはホールディングバルブと各ジブ起伏シリンダ35との間において、バイパス回路によって連結されている。これにより、左右のジブ起伏シリンダ35の負荷保持側を連通することにより、左右同圧となり、同時伸縮が可能となり、ジブ30を安定して起伏させることができる。
前述したように、ジブ30は、下抱き状態でブーム14の下側に格納される。格納状態では、テンションロッド41は、重力方向に関して、ジブ30よりも下側に位置する。このため、図7に示されるように、ジブ起伏機構18は、ジブ30の格納時に、2本のテンションロッド41をそれぞれ支持する2つのテンションロッド保持機構37を備えている。各テンションロッド保持機構37は、ジブ30に固定されている。
図19~図20に示されるように、テンションロッド保持機構37は、ジブ30に固定されたベース部71と、揺動可能にベース部71に支持された揺動シャフト73と、揺動シャフト73に回転可能に支持されたローラ74とを備えている。ベース部71は、テンションロッド41を受ける凹部を有している。揺動シャフト73は、一端部がピン72によって軸支されており、ベース部71に対して揺動可能である。また、揺動シャフト73は、他端部から突出するように付勢されているピンを内蔵している。揺動シャフト73には、ピンを軸方向に移動させるためのノブ75が設けられている。ノブ75は、揺動シャフト73に形成された長穴を通って揺動シャフト73内のピンに固定されている。
また、テンションロッド保持機構37は、テンションロッド41の保持時に揺動シャフト73を保持する格納時保持部76と、テンションロッド41の解放時に揺動シャフト73を保持する解放時保持部77とを備えている。格納時保持部76と解放時保持部77は共に、揺動シャフト73に内蔵されているピンと係合する貫通穴を有している。
ジブ30を格納する準備段階において、図19に示されるように、テンションロッド41がベース部71の凹部に受けられ、揺動シャフト73が格納時保持部76に係合される。これにより、テンションロッド41は、ベース部71とローラ74の間に保持される。ジブ30を使用する準備段階において、後述するように、テンションロッド41をブームリンク24と接続するために、テンションロッド41を引き出す操作が行われる。その際、ローラ74は、重力方向に関して、テンションロッド41の下側に位置する。これにより、テンションロッド41の引き出し操作に必要は力がローラ74によって軽減される。
ジブ30を使用する準備段階として、テンションロッド41は、図19に示される状態から、ノブ75の操作によって揺動シャフト73と格納時保持部76の係合が解除され、ジブ30の振り出しの邪魔にならないように、揺動シャフト73が約270度回転されるとともに、ノブ75の操作によって揺動シャフト73が解放時保持部77に係合される。
また、ジブ30を使用する準備段階とジブ30を格納する準備段階において、ジブ30は、ブームヘッド22と連結された状態でブーム14の伸縮により、格納位置から移動される。この移動の際にジブ30を案内するため、図7に示されるように、多段ブーム21の基端ブームの先端部にブーム側格納ガイド81が設けられ、また、ジブ30にジブ格納ガイド82が設けられている。ブーム側格納ガイド81とジブ格納ガイド82は、ジブ30の移動の際に、ジブ30を適切な位置へ案内する働きをする。
次に、ジブ30の振り出し作業について図1~図6、図23~図26を参照して説明する。図1~図6には、ジブ30の振り出し作業における一連の工程が描かれている。図23~図26には、ジブ30の振り出し作業時におけるテンションロッドとブームリンクが描かれている。ここで、ジブ30の振り出し作業は、ジブ30を格納状態から起伏動作の開始状態までに移し換える作業を意味している。
図1に示されるように、ジブ30がブーム14の下面に沿って格納されている状態では、ジブ30のジブフート部32aはブームヘッド22のブームトップシーブシャフト25に係合している。
テンションロッド41は、図23に示されるように、挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bは整列していない。これにより、テンションロッドセットピン47が誤って挿入されることが防止される。
そのため、図27に示されるように、テンションロッド41の連結部46には、ジブ30に向かって突出したプレート48が設けられており、また、ジブ30のジブフート部32aには、プレート48に当接するストッパ49が設けられている。ストッパ49は、断面U字状であり、ジブ30の格納時に、テンションロッド41がジブ30の先端部へ向けて移動される際に、プレート48はストッパ49の隙間に進入する。ストッパ49は、挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bが整列する前にプレート48に当接して、テンションロッド41のそれ以上の移動を阻止する。
また、プレート48とストッパ49には、テンションロッドセットピン47(図26参照)を挿入するためのセットピン挿入穴がそれぞれ形成されている。それらのセットピン挿入穴は、プレート48とストッパ49が当接したときに整列するように形成されている。プレート48とストッパ49が当接して整列したそれらのセットピン挿入穴にテンションロッドセットピン47が挿入されることにより、格納時におけるジブ30とテンションロッド41の相互間の位置決めがなされ、図23に示されるように、挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bが整列されていない状態に維持される。
ブームリンク24は、図24に示されるように、ブームヘッド22に設けられたブームリンクストッパ26に当たっていて、ブームヘッド22に対して一定の姿勢に維持されている。
ジブ30の振り出し作業では、まず、図1に示されるように、アウトリガ16によって、クレーン車10を地面に対して安定化させる。次に、ジブフート部32aのジブフートピン挿入穴にジブフートピンを挿入するとともに抜け止めの処理を施す。これにより、ジブ30はブームヘッド22に回動可能に連結される。
続いて、テンションロッド本体42をエクステンション43から引き出し、図24に示されるように、テンションロッド本体42の連結部46の連結ピン挿入穴46aをブームヘッド22のブームリンク24の連結ピン挿入穴24bに整列させ、それらに連結ピン27を挿入するとともに抜け止めの処理を施す。これにより、テンションロッド41はブームリンク24に回動可能に連結される。テンションロッド保持機構37による保持を解除して、テンションロッド41を解放する。
次に、図2に示されるように、ブーム14を最起立させる。続いて、ブーム14を所定の長さたとえば0.5m伸長させる。これにより、ジブ連結機19によるブーム14に対するジブ30の連結が解除され、図3に示されるように、ジブ30が重力方向に垂れ下がる。言い換えれば、ジブ30はほぼ垂直な姿勢で支持される。その際、主フック17Aは、ジブ30のジブ後方部分32の二股の部分の間を通る。
この状態では、図25に示されるように、ブームリンク24は、ブームリンクストッパ26に当たっていて、ブームヘッド22に対して図24の状態と同じ姿勢に維持されている。また、テンションロッド41は、ジブ30が重力方向に垂れ下がるのに伴ってテンションロッド本体42がエクステンション43の中に入り、図24の状態よりも短くなっている。
その後、図4に示されるように、ブーム14をある程度の角度に(たとえば水平方向に対する仰角が40°程度になるまで)倒伏させた後、ブーム14を最縮小させる。続いて、補巻ワイヤロープを繰り出して補フック17Bを地面の近くまで下ろす。さらに、図5に示されるように、ジブ起伏機構18に対する次の作業を地上の作業者がおこなえる程度までブーム14を倒伏させる。その際、補フック17Bは地面に着地される。その後、補巻ワイヤロープをジブトップシーブ33(図8と図13と図14を参照)に取り付ける。図3の状態から図5の状態まで変化している際は、テンションロッド41は伸縮可能であり、ブーム14に対するジブ30の角度は変化可能である。このため、図4と図5の状態においても、図3の状態と同様、ジブ30はほぼ垂直な姿勢で支持されている。
図5に示された状態では、図26に示されるように、ブームリンク24は、ブームリンクストッパ26から離れており、テンションロッド41は、挿入部45がエクステンション43の中に最大限に挿入されており、最縮小されている。この状態では、テンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bは整列されている。テンションロッド本体42の挿入部45のセットピン挿入穴45aとエクステンション43のセットピン挿入穴43bにテンションロッドセットピン47を挿入するとともに抜け止めの処理を施す。これにより、テンションロッド本体42とエクステンション43が連結されるため、テンションロッド41は、伸縮が規制され、一定の長さに維持される。
続いて、ブーム14を起立させていく。ブーム14が起立されていくにつれて、ジブ30は前方に振り出されていく。言い換えれば、ブーム14に対して前方にジブ30が起立されていく。最終的には、図6に示されるように、ブーム14を最起立させる。これにより、ジブ30の振り出し作業は完了する。振り出し作業完了時のジブ30は、続いておこなわれる起伏動作の開始状態にある。
起伏動作の開始状態にあるジブ30は、最倒伏状態にあり、図6にジブ30Aとして最も下側に描かれている。このとき、ジブ起伏シリンダ35は、最縮小の状態であり、図10に描かれている。その後、ジブ起伏シリンダ35を伸長させるにつれて、ジブ30は起立されていく。ジブ起伏シリンダ35が中間的に伸長された状態が図11に描かれており、これに対応して起立されたジブ30が図6にジブ30Bとして中間に描かれている。また、ジブ起伏シリンダ35が最伸長された状態が図12に描かれており、これに対応して最起立されたジブ30が図6にジブ30Cとして最も上側に描かれている。反対に、ジブ起伏シリンダ35を縮小させるにつれて、ジブ30は倒伏されていく。つまり、ジブ起伏シリンダ35を伸縮させることによってジブ30が起伏される。
特許文献1に開示されるジブ起伏機構を含む従来の通常のジブ起伏機構によるクレーン車におけるジブの振り出し作業は、通常、次のようにしておこなわれる。
まず、ジブの基端部をブームの先端部に回動可能に連結する。次に、ブームを起立させた後、ブームの先端部への連結部分以外でのジブとブームの連結を解除する。これにより、ジブはブームの先端部から垂れ下がる。
続いて、ブームを倒伏させた後、ジブの先端部に、補巻ワイヤロープに結ばれた補フックを取り付ける。その後、補巻ワイヤロープを巻き上げる。これにより、ジブの先端部が補巻ワイヤロープと補フックによって引っ張られるため、ジブは基端部を中心として回動される。その結果、ジブがブームの先端部の前方に振り出される。その状態では、ジブとブームはほぼ直線的に整列する。
次に、ジブがほぼ水平姿勢となるまで、ブームを倒伏させる。続いて、ジブ起伏シリンダのピストンロッドの端部とブームの先端部上部にテンションロッドを取り付ける。特許文献1に開示されるジブ起伏機構では、ジブ起伏シリンダのピストンロッドの端部に連結されたテンションロッドの先側ロッドと、ブームの先端部上部に連結されたテンションロッドの基側ロッドとを連結する。
このジブの振り出し作業では、少なくとも、ジブとブームの連結、補フックの取り付け、テンションロッドの取り付けの3回の車外での作業が必要である。
これに対して、本実施形態に係るジブ起伏機構18によるジブの振り出し作業では、先の説明から分かるように、車外での作業は、ブームヘッド22に対するジブ30の連結およびテンションロッド41とブームリンク24の連結、テンションロッド本体42とエクステンション43の連結の2回で済む。したがって、ジブの振り出し作業が容易におこなえる。
また、特許文献1に開示されるジブ起伏機構を含む従来の通常のジブ起伏機構によるジブの振り出し作業において、テンションロッドの取り付けは、ジブの振り出しの結果ほぼ直線的に整列されたブームとジブをほぼ水平な姿勢にした状態でおこなわれる。このため、テンションロッドの取り付けをおこなうには、ブームとジブをほぼ水平な姿勢に配置するに十分な空間つまり空き地が必要である。これに対して、本実施形態に係るジブ起伏機構18によるジブ30の振り出し作業では、先の説明から分かるように、テンションロッド41の長さ固定作業は、図5に示されるように、ジブ30をほぼ垂直な姿勢にした状態でおこなわれる。このため、テンションロッド41の長さ固定作業のために、ブーム14の前方に広い空間つまり空き地を必要としない。さらに、ジブ30の振り出しは、ブーム14を最起立させた状態でおこなわれる。つまり、ジブ30の振り出しは、走行車体11の上空でおこなわれる。このため、ジブ30の振り出しにおいても、ブーム14の前方に広い空間つまり空き地を必要としない。
本実施形態に係るジブ起伏機構18においては、ジブ起伏シリンダ35は、ジブ30の1段ジブ31aの側面に配設されており、さらに、図10~図12に示されるように、1段ジブ31aの上面と下面の間に配置されている。このため、ジブ30の格納時におけるジブ30とジブ起伏機構18とブーム14を含めた構造体の高さ寸法が小さい。これにより、ブーム14を大きく倒伏させることができ、運転室15からの側方前部の視界が良好となる。
ジブの振り出しの際にジブの基部の二股の部分の間を主フックが通過するタイプであって、ジブの上面にジブ起伏シリンダを備えているジブ起伏機構においては、ジブの振り出し作業の際にジブ起伏シリンダと補フックや補巻ワイヤロープとの干渉が懸念される。これに対して、本実施形態に係るジブ起伏機構18においては、ジブ起伏シリンダ35がジブ30の側面に配設されているので、ジブ起伏シリンダ35と補フック17Bや補巻ワイヤロープとの干渉の心配がない。このため、ジブ起伏シリンダ35のシリンダロッドを保護する必要がない。
作業時も含めて、ジブ起伏シリンダ35と補巻きワイヤロープの干渉を考慮しなくてよいため、補巻きワイヤロープのガイドローラが不要であり、補巻きワイヤロープをジブトップシーブ33に直接掛けれるので、補巻きワイヤロープの痛みが少ない。
本実施形態に係るジブ起伏機構18においては、テンションロッド41の張力が、ジブ30だけにかかるのではなく、ジブ起伏シリンダ35やスライドブラケット34にも分散される。たとえば、図14に示されるように、テンションロッド41の張力F1は、ジブ30の長手軸に平行な力成分F1aと、ジブ30の上面に垂直な力成分F1bとに分けられる。力成分F1aは、ジブ30を圧縮させる力成分であり、ジブ起伏シリンダ35を介してジブ30に伝達される。また、力成分F1bは、ジブ30を湾曲させる力成分であり、スライドブラケット34を介してジブ30に伝達される。このように、テンションロッド41の張力F1は、ジブ30に直接かかるのではなく、ジブ起伏シリンダ35やスライドブラケット34にも分散されるため、そのぶんジブ30が受ける負荷が軽減され、ジブ30自体の軽量化を図ることができる。
特許文献1に開示されるジブ起伏機構においては、ストロークの長いジブ起伏シリンダを使用する場合、それに応じて、長いブラケットと、ブラケットの補強が必要となる。これは、重量化を招く。これに対して、本実施形態に係るジブ起伏機構18においては、ジブ30の1段ジブ31aがスライドブラケット34のガイドレールとして使用されている。このため、補強を必要とすることなく、ストロークの長いジブ起伏シリンダ35を使用することが可能である。
ジブ起伏シリンダをジブの内部に配設する構成とは異なり、本実施形態に係るジブ起伏機構18においては、ジブ起伏シリンダ35がジブ30の側面に配設されているので、ジブ30は中空の内部空間を有する。このため、たとえば、ジブ30を複数段ジブに構成して長尺ジブにするとともに、複数段ジブの伸縮装置たとえばジブ伸縮シリンダを複数段ジブの内部空間に収納することが可能となる。
本実施形態に係るジブ起伏機構18において、図14に示されるように、スライドブラケット34がジブ起伏シリンダ35による推力F2を受けたとき、図18に示されるように、1段ジブ31aを下面から支持する前下ブラケット52は、スライドブラケット34の上部に設けられた前上ブラケット51に比べて、大きい反力F3を受ける。前下ブラケット52が1段ジブ31aに片当たりすると、大きな集中負荷が生じる。しかし、前下ブラケット52は、揺動可能に支持されているため、1段ジブ31aに片当たりすることなく、均等に反力F3を受けることができる。これにより、1段ジブ31aとスライドブラケット34に集中負荷が生じることを避けることができる。
また、前上ブラケット51の後方に位置する後上ブラケット54は、前上ブラケット51に比べて、大きい反力F4を受ける。やはり、後上ブラケット54が1段ジブ31aに片当たりすると、大きな集中負荷が生じる。しかし、前下ブラケット52と同様に、後上ブラケット54は、揺動可能に支持されているため、1段ジブ31aに片当たりすることなく、均等に反力F4を受けることができる。これにより、1段ジブ31aとスライドブラケット34に集中負荷が生じることを避けることができる。
また、スライドブラケット34のジブ長手軸に沿った長さが小さくなるほど、ストロークが同一のジブ起伏シリンダ35に対して、スライドブラケット34の摺動範囲すなわちジブ30の起伏範囲は大きくできる。その反面、スライドブラケット34の前下ブラケット52が受ける反力F3も大きくなり、大きな集中負荷が発生しやすくなる。しかし、前下ブラケット52は、揺動可能に支持されているため、均等に反力F3を受けるようになり、大きな集中負荷の発生を避けつつ、ジブ30の起伏範囲を大きくすることができる。
運転室のアイポイントがブームの上面よりも上方に位置するクレーン車においては、ブームを最大限倒伏させることが望ましい。本実施形態に係るジブ起伏機構18を備えたクレーン車10においては、前述したように、ジブ30の格納時におけるジブ30とジブ起伏機構18とブーム14を含めた構造体の高さ寸法が小さいため、ブーム14を大きく倒伏させることができ、運転室15からの側方前部の視界が良好となる。
実施形態の説明では、本実施形態のジブ起伏機構18が、不使用時にジブ30を下抱き状態で格納するクレーン車に適用された例について説明したが、本実施形態のジブ起伏機構18は、不使用時にジブ30をいったん下抱き状態にして格納した後に横抱き状態にして格納するクレーン車に適用されてもよい。
実施形態の説明では、テンションロッド41が伸縮可能であるとともに所定の長さに固定可能である例について説明したが、本実施形態のジブ起伏機構18は、これに限らず、伸縮不能なテンションロッドを有していてもよい。その場合、伸縮不能なテンションロッドのブーム14の軸に沿った移動は、ジブ起伏シリンダ35によっておこなわれる。
詳しくは、図1に示された状態から、伸縮不能なテンションロッドをブームリンク24に回動可能に連結する際は、ジブ起伏シリンダ35を縮小させて伸縮不能なテンションロッドの全体を移動させることにより、伸縮不能なテンションロッドの連結ピン挿入穴をブームリンク24の連結ピン挿入穴24bに整列させる。
また、ジブ30が振り出し作業は、ジブ連結機19によるブーム14に対するジブ30の連結が解除された図3に示される状態から、ジブ起伏シリンダ35を伸長させることによりおこなわれる。詳しくは、ジブ起伏シリンダ35を伸長させるにつれて、ジブ30は、図3に示される状態から、ブーム14の前方に振り出されていく。振り出し作業の完了時のジブ30は、続いておこなわれる起伏動作の開始状態にある。起伏動作の開始状態では、ジブ30は、図6にジブ30Aとして描かれている最倒伏状態にある。
その後、ジブ起伏シリンダ35を伸長させるにつれて、ジブ30は、図6にジブ30Bとして描かれている中間状態を経て、図6にジブ30Cとして描かれている最起立状態まで起立されていく。反対に、ジブ起伏シリンダ35を縮小させるにつれて、ジブ30は倒伏されていく。
実施形態の説明では、クレーン車に適用された例について説明したが、本実施形態のジブ起伏機構18は、これに限らず、固定のクレーンに適用されてもよい。つまり、本実施形態のジブ起伏機構18は、ジブを有するクレーンに広く適用されてよい。
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。