実施形態について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る建設機械であるクレーン車を示している。
図1に示されるように、クレーン車10は、走行車体12と、走行車体12の上に旋回可能に設けられた旋回体18とを備えている。
走行車体12は、移動のために複数の車輪14を有している。車輪14は、図示しない駆動機構によって駆動可能に構成されている。一部の車輪14は、図示しない操舵機構によって操舵可能に構成されている。また、走行車体12は、前後の両側に、クレーン作業時に走行車体12を地面に対して安定に支持するためのアウトリガ16を有している。
旋回体18は、旋回台20と、旋回台20に起伏可能に支持された伸縮ブーム24と、クレーン車10の運転とクレーン作業の操作のための運転室22とを備えている。また、伸縮ブーム24と旋回台20との間には、伸縮ブーム24を起伏させるためのブーム起伏装置26が設けられている。ブーム起伏装置26は、伸縮ブーム24と旋回台20に連結されたブーム起伏シリンダ(図示せず)を備えている。
クレーン車10は、いわゆるスラントタイプのクレーン車であり、伸縮ブーム24は俯角にまで倒伏可能である。すなわち、伸縮ブーム24は、水平方向に対して下向きの角度にまで倒伏可能である。伸縮ブーム24は、ブーム格納状態においては、最俯角に倒伏されている。
伸縮ブーム24の先端部にはブームヘッド44が設けられている。ブームヘッド44は、ブームリンク64を備えている。ブームリンク64は、一端部がブームヘッド44に軸支されており、ブームヘッド44に回動可能に連結されている。
また、旋回体18は、伸縮ブーム24の長さを補うジブ30と、ジブ30を張り出すジブ張出し装置32とを備えている。ジブ30は、使用時には、伸縮ブーム24に連結される。また、ジブ30は、不使用時には、いわゆる下抱き状態で、すなわち伸縮ブーム24の下側に格納される。ジブ張出し装置32は、ジブ30と一体化されている構造体であり、ジブ30の不使用時には、ジブ30と共に格納される。
旋回体18はまた、主フック62Aと補フック62Bを備えている。主フック62Aと補フック62Bは、それぞれ、共に図示しない主巻ワイヤロープと補巻ワイヤロープによってブームヘッド44に支持されている。
伸縮ブーム24とジブ30の相互間には、伸縮ブーム24にジブ30を連結しておくジブ連結機構34が設けられている。ジブ連結機構34は、ジブ30が格納位置に配置されたときに伸縮ブーム24にジブ30を連結し、伸縮ブーム24の伸長によってジブ30が伸縮ブーム24の先端側に移動されたときに伸縮ブーム24とジブ30の連結が外れるように構成されている。
運転室22には、走行車体12の自走のため、アクセル、ブレーキ、ステアリング等の複数の制御装置が設けられており、これらの制御装置によって、車輪14の駆動および操舵を制御できるように構成されている。運転室22にはまた、クレーン作業のため、複数の操作レバーや操作ペダル等の制御装置が設けられており、これらの制御装置によって、旋回体18の旋回、伸縮ブーム24の起伏および伸縮、ジブ30の張出し等を制御できるように構成されている。
次に、図2を参照しつつ、ジブ30とジブ張出し装置32の構造について説明する。図2は、ジブ30の後方斜めから見たジブ30とジブ張出し装置32の斜視図である。
ジブ30は、ジブ後方部70と、ジブ前方部76とから構成されている。ここにおいて、ジブ30がブームヘッド44に連結される側をジブ30の後方、その反対側をジブ30の前方とする。ジブ30の後方の端部を基端部、ジブ30の前方の端部を先端部と称する。また、上下は、図1に示された状態を基準にして規定するものとする。さらに、左右は、ジブ30の後方から前方へ向かう方向を基準にして規定するものとする。
ジブ後方部70は、ジブ前方部76の基端部から後方に二股に延びた一対のジブ基端部72を有している。一対のジブ基端部72は、主フック62Aが通過できる間隔を置いて延びている。各ジブ基端部72は、後端部に、ブームヘッド44に連結されるジブフート部74を有している。ジブフート部74は、ブームヘッド44のブームトップシーブシャフト52(図26~図28参照)にジブフートピン75によって着脱自在に連結されるように構成されている。
たとえば、ジブフート部74は、ブームトップシーブシャフト52に係合する凹部を有する二股状のフォーク部74aと、フォーク部74aの一対の端部のそれぞれに形成されたジブフートピン挿入穴74bとを有している(図15~図17参照)。二股状のフォーク部74aのジブフートピン挿入穴74bにジブフートピン75が挿入され、ジブフートピン75の抜け止め処理が施されることによって、ジブ30がブームトップシーブシャフト52を軸としてブームヘッド44に回動可能に連結される。
ジブ前方部76は、ジブ後方部70から延出しているベースジブ78と、ベースジブ78の先端部に設けられた先端ジブ84とを有している。先端ジブ84は、ベースジブ78に対して、前後方向に移動可能となっている。
ジブ張出し装置32は、ジブ30に対して長手軸に沿って移動可能に配設されたスライドブラケット80を備えている。スライドブラケット80は、ベースジブ78の周囲に配設されている。
ジブ張出し装置32はまた、スライドブラケット80を移動させる2本のジブ起伏シリンダ(図示せず)を備えている。2本のジブ起伏シリンダは、ベースジブ78の左側面と右側面に長手軸に沿ってそれぞれ配設されている。各ジブ起伏シリンダは、一端部がベースジブ78の後端部に固定されており、他端部がスライドブラケット80に連結されている。
ジブ張出し装置32はまた、並列に設けられた2本のテンションロッド90を備えている。各テンションロッド90は、一端部がスライドブラケット80に回動可能に連結されており、他端部がジブ30の使用時にブームヘッド44のブームリンク64(図1参照)に回動可能に連結される。
各テンションロッド90は、テンションロッド本体92とエクステンション94とを備えている。エクステンション94は、スライドブラケット80に回動可能に連結されている。
エクステンション94は、筒状をしており、テンションロッド本体92の一部が挿入可能となっている。言い換えれば、テンションロッド90は、伸縮可能となっている。
テンションロッド90はまた、所定の長さに固定可能となっている。このため、たとえば、テンションロッド本体92とエクステンション94には、テンションロッドセットピンを挿入するためのセットピン挿入穴がそれぞれ形成されている。テンションロッド本体92のセットピン挿入穴とエクステンション94のセットピン挿入穴が整列され、それらにテンションロッドセットピンが挿入されることにより、テンションロッド90は所定の長さに固定される。
テンションロッド本体92は、ブームリンク64(図1参照)に連結可能に構成されている。テンションロッド本体92の端部には、ブームリンク64と連結される連結部96が設けられている。連結部96には、連結ピン挿入穴96aが形成されている。また、ブームリンク64の端部には、テンションロッド90と連結される連結部66(図18および図21参照)が設けられている。連結部66には、連結ピン挿入穴66aが形成されている(たとえば図18参照)。ブームリンク64の連結部96の連結ピン挿入穴66aとテンションロッド90の連結部96の連結ピン挿入穴96aが整列され、それらに連結ピン98(図27参照)が挿入されることにより、テンションロッド90はブームリンク64と回動可能に連結される。
ジブ張出し装置32は、ジブ30の不使用時に、2本のテンションロッド90をそれぞれ保持する2つのテンションロッド保持装置100を備えている。各テンションロッド保持装置100は、ジブ30に取り付けられている。
各テンションロッド保持装置100は、テンションロッド90の左右方向と上方向への移動を制限する移動制限部材110と、テンションロッド90の下側を支持する下側支持機構150とを備えている。
図1には、走行車体12の前端を示す線L1が描かれている。伸縮ブーム24が走行車体の前方に向かって延びており、ジブ30を使用するためにジブ30がブームヘッド44に回動可能に連結されたジブ使用準備状態において、下側支持機構150は、走行車体12の前端よりも走行車体12の前方側に位置する。下側支持機構150は、さらに、ジブ30のジブフート部74よりもジブ30の前方側に位置している。一方、移動制限部材110は、走行車体12の前端よりも走行車体12の後方側に位置する。たとえば、移動制限部材110は、格納されたテンションロッド90の中央に位置する。
以下、図3~図5を参照しつつ、移動制限部材110の構造について説明する。図3は、ジブ30の後方側から見た移動制限部材110の斜視図である。図4は、ジブ30の後方側から見た移動制限部材110の正面図である。図5は、ジブ30の側方外側から見た移動制限部材110の側面図である。
移動制限部材110は、ジブ30に固定された固定部材120と、テンションロッド90(詳しくはテンションロッド本体92)に係合する係合部材130とを備えている。係合部材130は、取り付けピン140によって、固定部材120に取り付けられている。
係合部材130は、テンションロッド90の左右方向と上方向の移動を制限する半円状の凹部132を有している。凹部132は、テンションロッド90(詳しくはテンションロッド本体92)の径よりもいくらか大きい径を有している。
このため、係合部材130の凹部132に係合したテンションロッド90は、左右方向の移動が完全に制限されるのではなく、制限される範囲内において左右方向に移動可能である。また、係合部材130の凹部132の下方は開放しているので、係合部材130の凹部132に係合したテンションロッド90は、ジブ格納状態において許容される範囲内で上下方向に移動可能であるが、上方向の移動は係合部材130によって制限される。
固定部材120は、下方斜め外側に延びる一対のガイド部122を有している。一対のガイド部122は、テンションロッド90を格納する際に、下方から近づくテンションロッド90を係合部材130の凹部132に案内する働きをする。
次に、図6~図10を参照しつつ、下側支持機構150の構造について説明する。図6は、ジブ30の後方側から見た下側支持機構150の分解斜視図である。図7は、ジブ30の後方側から見た下側支持機構150の正面図である。図8は、ジブ30の前方側から見た下側支持機構150の正面図である。
下側支持機構150は、ジブ30に固定された固定部160と、固定部160に対して揺動可能に支持された揺動部200とを備えている。
固定部160は、固定板170と固定板180とを備えている。固定板170と固定板180は共にジブ30に固定されており、ジブ30の軸方向に間隔を置いて実質平行に配置されている。
固定板170は、揺動部200の下方への揺動を制限するストッパ部172と、揺動部200の上方内側への揺動を制限するストッパ部174とを有している。
固定板180は、テンションロッド90の保持時に揺動部200を保持位置に固定するための保持時固定穴182と、テンションロッド90の解放時に揺動部200を解放位置に固定するための解放時固定穴184とを有している。
固定部160はまた、揺動部200を揺動可能に支持するため、固定板170と固定板180に取り付けられる揺動軸ピン190を備えている。揺動軸ピン190は、固定板170と固定板180とを貫通するように取り付けられ、抜け止めの処理が施される。
揺動部200は、揺動板210と揺動板220とを備えている。揺動部200はまた、テンションロッド90を下側で受ける受け部230と、固定部160に対する揺動部200の揺動をロックするロック機構240とを備えている。
揺動板210と揺動板220は、受け部230とロック機構240を介して、間隔を置いて実質平行に互いに固定されている。ジブ30の軸方向に関して、揺動板210と揺動板220を含む構造体の寸法は、固定板170と固定板180の隙間に入る寸法に設計されている。
揺動板210と揺動板220は、実質同じ形状をしており、L字形状に似た形状をしている。揺動板210は、90度に近い角度で互いに異なる方向に延びている長アーム部212と短アーム部214とを有している。同様に、揺動板220は、90度に近い角度で互いに異なる方向に延びている長アーム部222と短アーム部224とを有している。
短アーム部214と短アーム部224の端部には、それぞれ、固定部160の揺動軸ピン190が通る貫通孔216と貫通孔226が形成されている。揺動板210と揺動板220が、固定部160の固定板170と固定板180の隙間に配置され、揺動軸ピン190が貫通孔216と貫通孔226を貫通して固定板170と固定板180に取り付けられることによって、揺動部200が揺動可能に固定部160に支持される。
受け部230は、揺動板210と揺動板220に固定されたシャフト232と、シャフト232によって支持された受け部材234とを備えている。
シャフト232は、揺動板210の長アーム部212の端部と揺動板220の長アーム部222の端部との間に固定されている。シャフト232は、テンションロッド90の保持時に、左右方向の外側から内側に向かって延出するように、揺動板210と揺動板220に固定されている。シャフト232は、受け部材234を支持する働きのほか、ロック機構240と協働して、揺動板210と揺動板220の間隔を決める働きもしている。
受け部材234は、円筒形状をしており、回転可能にシャフト232に支持されている。受け部材234は、ジブ格納状態において、テンションロッド90を下側で受ける働き、または下方から支える働きをする。したがって、受け部材234は、テンションロッド90の下方への移動を制限する。しかしながら、受け部材234は、テンションロッド90の左右方への移動は制限しない。受け部材234は、たとえば弾性体で構成されている。回転可能に支持された受け部材234は、テンションロッド90の引き出しと押し入れの際に必要となる力を軽減する。
ロック機構240は、揺動板210と揺動板220に固定されている。ロック機構240は、受け部230のシャフト232と同様、副次的に、揺動板210と揺動板220の間隔を決める働きをしている。
ロック機構240は、主として、固定部160に対する揺動部200の揺動を禁止して、揺動部200を一定位置に固定すなわちロックする働きをするとともに、揺動部200の固定すなわちロックを解除して、固定部160に対する揺動部200の揺動を許可する働きをする。
続いて、図9~図10を参照しつつ、ロック機構240の構造について説明する。図9は、ロック解除状態におけるロック機構240の部分的な縦断面図である。図10は、ロック状態におけるロック機構240の部分的な縦断面図である。
ロック機構240は、シリンダガイド242と、ロックピン244と、スプリング246と、リング248とを備えている。
シリンダガイド242は、揺動板210と揺動板220を貫通し、揺動板210と揺動板220に固定されている。シリンダガイド242は、揺動板210の側には突出しているが、揺動板220の側には突出していない。シリンダガイド242は、突出した側の端部を除いて、円筒形状をしている。突出した側の端部には、貫通孔242aが形成されている。貫通孔242aの径は、シリンダガイド242の内径よりも小さい。
ロックピン244は、2段の円柱体であり、大径円柱部244aと小径円柱部244bとを有している。大径円柱部244aは、シリンダガイド242の内部に収容されており、小径円柱部244bは、貫通孔242aを通ってシリンダガイド242の外部へ突出している。ロックピン244に応じて、固定板180の保持時固定穴182と解放時固定穴184は、ロックピン244の大径円柱部244aが貫通し得る径、たとえば、大径円柱部244aよりもわずかに大きい径を有している。
スプリング246は、ロックピン244の小径円柱部244bの周囲に配置されている。スプリング246は、その復元力によって、ロックピン244の大径円柱部244aをシリンダガイド242の突出した側の端部から遠ざけるように、ロックピン244を付勢している。
リング248は、シリンダガイド242の外部へ突出している小径円柱部244bの端部に設けられている。リング248は、スプリング246の復元力に逆らって、ロックピン244を引っ張るための取っ手として機能する。
図9に示されるように、ロックピン244が引っ張られた状態では、ロックピン244の大径円柱部244aは、シリンダガイド242の内部に引き込まれており、固定板180の保持時固定穴182から外れている。この状態では、揺動部200は揺動可能である。つまり、揺動部200はロックが解除されている。固定板180の解放時固定穴184に関しても同様である。
図10に示されるように、ロックピン244が引っ張られておらず、ロックピン244の大径円柱部244aが固定板180の保持時固定穴182に整列した状態では、ロックピン244はスプリング246によって付勢されている。このため、大径円柱部244aが保持時固定穴182に侵入し、保持時固定穴182を貫通する。この状態では、揺動部200は揺動不能である。つまり、揺動部200はロックされている。固定板180の解放時固定穴184に関しても同様である。
次に、図11~図14を参照しつつ、下側支持機構150によって、テンションロッド90を保持状態から解放する手順について説明する。図11は、揺動部200が保持位置に固定されている状態における下側支持機構150の斜視図である。図12は、図11の状態に続いて、ロックピン244が引っ張られた状態における下側支持機構150の斜視図である。図13は、図12の状態に続いて、揺動部200が上方外側へ揺動された状態における下側支持機構150の斜視図である。図14は、図13の状態に続いて、揺動部200が解放位置に固定されている状態における下側支持機構150の斜視図である。
図11に示されるように、揺動部200が保持位置に固定されている状態においては、受け部230の受け部材234がテンションロッド90を下方から支えている。言い換えれば、受け部材234によって、テンションロッド90の下方への移動が制限されている。したがって、テンションロッド90は、移動制限部材110によって、左右方向と上方向への移動が制限されており、かつ、受け部230によって、テンションロッド90の下方への移動が制限されている。つまり、テンションロッド90は、移動制限部材110と受け部230すなわちテンションロッド保持装置100によって保持されている。
この状態において、テンションロッド90の少なくとも左右方向の移動は完全に禁止されているわけではなく、移動制限部材110によって許容される範囲内において、テンションロッド90は左右方向に移動可能である。
図9および図12に示されるように、図10および図11の状態に続いて、ロックピン244が引っ張られた状態においては、前述したように、シリンダガイド242の内部に引き込まれており、固定板180の保持時固定穴182から外れており、揺動部200は揺動可能である。その後、テンションロッド90の保持を解放するため、揺動部200は上方外側へ揺動される。
図13に示されるように、図12の状態に続く揺動部200の上方外側への揺動は、ロック機構240のシリンダガイド242が固定板170のストッパ部174に当たることによって停止される。この状態では、ロックピン244の大径円柱部244aは、大まかに固定板180の解放時固定穴184に整列している。これは、続くロック操作を容易にする。
続いて、図14に示されるように、ロックピン244の引っ張りを解除するとともに、揺動部200を小刻みに揺動させてロックピン244の大径円柱部244aを固定板180の解放時固定穴184に整列させる。大径円柱部244aが解放時固定穴184に整列すると、ロックピン244がスプリング246によって付勢されているため、大径円柱部244aは保持時固定穴182に侵入し、保持時固定穴182を貫通する。これにより、揺動部200は、解放位置にロックされる。
逆に、下側支持機構150によって、テンションロッド90を解放状態から保持する手順は、上述した手順を逆におこなうことによっておこなわれる。
その際、揺動部200の下方内側への揺動は、ロック機構240のシリンダガイド242が固定板170のストッパ部172に当たることによって停止される。この状態では、ロックピン244の大径円柱部244aは、大まかに固定板180の保持時固定穴182に整列している。これは、続くロック操作を容易にする。
ここで、図15~図17を参照しつつ、ジブ30のジブフート部74とテンションロッド90の連結部96の詳細構造と、両者間の連結と連結解除について説明する。図15~図17は、ジブ30の側方外側から見たジブフート部74とテンションロッド90の斜視図である。図15は、テンションロッド90がジブフート部74に連結されている状態を示している。図16は、図15の状態から連結ピン270が外された状態を示している。図17は、テンションロッド90が引き出された状態を示している。
テンションロッド90の連結部96には、ジブ30に向かって突出したプレート250が設けられている。また、ジブ30のジブ基端部72またはジブフート部74には、プレート250に当接するストッパ260が設けられている。図15~図17は、右側のジブ基端部72を示しており、ストッパ260はジブフート部74に設けられているが、左側のジブ基端部72においては、ストッパ260はジブ基端部72に設けられている(図19と図20と図22参照)。
ストッパ260は、断面U字状をしている。ジブ30の格納時、テンションロッド90は、図17の状態から図16の状態へと、ジブ30の前方へ移動される。その際、プレート250はストッパ260の隙間に進入する。ストッパ260は、テンションロッド90が所定の長さ押し込まれた時点で、プレート250に当接してテンションロッド90のそれ以上の移動を阻止する。
プレート250とストッパ260には、連結ピン270を挿入するためのピン挿入穴252とピン挿入穴262がそれぞれ形成されている。ピン挿入穴252とピン挿入穴262は、プレート250とストッパ260が当接したときに整列するように形成されている。図15に示されるように、プレート250とストッパ260が当接して整列したピン挿入穴252とピン挿入穴262に連結ピン270が挿入されることによって、テンションロッド90はジブフート部74に連結される。
ここで、ジブ30の張出しについて簡単に説明する。ここで、ジブ30の張出しは、ジブ30を格納状態から起伏動作の開始状態に移るまでの動作を意味している。
まず、ジブ30のジブフート部74をブームヘッド44のブームトップシーブシャフト52に係合させ、ジブフートピン75によってジブフート部74をブームヘッド44(図1参照)に回動可能に連結する。
次に、テンションロッド本体92をエクステンション94から引き出し、テンションロッド本体92をブームヘッド44のブームリンク64(図1参照)に回動可能に連結する。さらに、テンションロッド保持装置100による保持を解除して、テンションロッド90を解放する。
続いて、伸縮ブーム24(図1参照)を最起立させた後、伸縮ブーム24を所定の長さだけ伸長させて、ジブ連結機構34による伸縮ブーム24に対するジブ30の連結を解除する。その結果、ジブ30はブームヘッド44から垂れ下がる。
その後、地上の作業者が次の作業をおこなえる程度まで伸縮ブーム24を倒伏させた後、テンションロッド90の長さを固定する。
続いて、伸縮ブーム24を起立させていく。伸縮ブーム24が起立されていくにつれて、ジブ30は前方に張り出されていく。これにより、ジブ30の張出しが完了する。張出し完了時のジブ30は、その後におこなわれるジブ30の起伏動作の開始状態にある。
次に、主に図18~図28を参照しつつ、適宜、他の図も参照しつつ、ジブ30の張出しにおいて、初期の作業にあたる、格納状態にあるテンションロッド90を引き出してブームリンク64に連結するまでの一連の作業について説明する。
図18と図19は、ジブ30のジブフート部74がブームヘッド44のブームトップシーブシャフト52に係合された状態を示している。図20は、図18と図19の状態に続いて、ジブフート部74に対するテンションロッド90の連結が解除された状態を示している。図21と図22は、テンションロッド90がブームヘッド44のブームリンク64に連結された状態を示している。これらの図において、図18と図21は、ジブ30の側方外側から見たジブ30と張り出すジブ張出し装置32とブームヘッド44の側面図であり、図19と図20と図22は、ジブ30の下方側から見たジブ30と張り出すジブ張出し装置32とブームヘッド44の平面図である。
図23は、図18に示されたA-A線に沿ったジブ30の断面図である。図24は、図18に示されたB-B線に沿ったジブ30の断面図である。図25は、図21に示されたC-C線に沿ったジブ30の断面図である。
図26は、図19に示されたジブフート部74周辺部とブームヘッド44を詳細に示した図であり、ジブフート部74がブームヘッド44に連結された状態を示している。図27は、ジブフート部74周辺部とブームヘッド44を詳細に示した図であり、図26の状態に続いて、テンションロッド90がブームリンク64に連結された状態を示している。図28は、図22に示されたジブフート部74周辺部とブームヘッド44を詳細に示した図であり、下側支持機構150の揺動部200が解放位置にロックされた状態を示している。
前述したように、ジブ30の張出しにおいては、図18と図19に示されるように、まず、ジブ30のジブフート部74がブームヘッド44のブームトップシーブシャフト52に係合される。この段階では、テンションロッド90は、図15に示されるように、ジブフート部74に連結されている。
また、図23に示されるように、テンションロッド90は、移動制限部材110に係合しており、テンションロッド90の左右方向と上方向の移動が制限されている。
また、図24に示されるように、テンションロッド90は、下側支持機構150の受け部230の受け部材234によって支えられている。また、受け部材234によって、テンションロッド90の下方向への移動が制限されている。さらに、下側支持機構150は、ジブ基端部72の内側に延出していないため、主フック62A等との干渉が起こりにくい。
また、図19に示されるように、テンションロッド90の中心軸線は、ブームリンク64の連結部66に対して外側に外れている。この状態では、ジブフート部74のジブフートピン挿入穴74bは、テンションロッド90に邪魔されることなく、下方から見えている。このため、図18に示されるように、ジブフートピン75をジブフートピン挿入穴74bに下方から挿入することが可能である。
その後、ジブフートピン75がジブフートピン挿入穴74bに下方から挿入され、抜け止め処理が施される。これによって、ジブフート部74がブームトップシーブシャフト52に回動可能に連結される。ジブフート部74がブームトップシーブシャフト52に連結された状態が図26に詳細に示されている。
その後、図16に示されるように、連結ピン270が取り除かれ、ジブフート部74に対するテンションロッド90の連結が解除される。さらに、図17に示されるように、テンションロッド90が、少なくとも、連結部96のプレート250がストッパ260から抜けるまで引き出される。その後、図20に示されるように、テンションロッド90の中心軸線が、ブームリンク64の連結部66に合わせられる。
テンションロッド90が引き出された状態では、前述したように、移動制限部材110は、テンションロッド90の左右方向へのある程度の移動を許容し、また下側支持機構150は、テンションロッド90の左右方向へのある程度の移動を制限しないため、テンションロッド90は、図24に模式的に示されるように、許容される範囲内において、左右方向に移動可能である。したがって、テンションロッド90の中心軸線をブームリンク64の連結部66に合わせる作業は容易におこなえる。
続いて、テンションロッド90がさらに引き出され、図21と図22に示されるように、テンションロッド本体92の連結部96の連結ピン挿入穴96aが、ブームリンク64の連結部66の連結ピン挿入穴66aに合わせられる。続いて、連結ピン挿入穴96aと連結ピン挿入穴66aに連結ピン98が挿入され、連結ピン98の抜け止め処理が施される。これにより、テンションロッド90がブームリンク64に回動可能に連結される。テンションロッド90がブームリンク64に連結された状態が図27に詳細に示されている。
その後、図11~図14を参照しつつ説明された手順にしたがって、テンションロッド90の保持が解除される。下側支持機構150の揺動部200は、保持位置から解放位置に移動され、ロックされる。揺動部200が解放位置にロックされた状態のジブ30の断面が図25に示されている。また、揺動部200が解放位置にロックされた状態が図28に詳細に示されている。この状態では、図24に示される保持状態に比べて、揺動部200が外側に待避されているため、主フック62A等との干渉がさらに起こりにくい。
以上は、ジブ30の張出しにおいて、テンションロッド90を引き出してブームリンク64に連結するまでの一連の作業であるが、ジブ30の格納において、ブームリンク64との連結を解除してテンションロッド90を格納するまでの一連の作業は、上記の手順を逆におこなうことによっておこなわれる。
以上に説明したように、本実施形態においては、テンションロッド保持装置100の下側支持機構150が、ジブ使用準備状態において、すなわち、伸縮ブーム24が走行車体の前方に向かって延びており、ジブ30を使用するためにジブ30がブームヘッド44に回動可能に連結された状態において、走行車体12の前端よりも走行車体12の前方側に位置する。
このため、伸縮ブーム24が俯角に伏せられた格納状態においても、下側支持機構150の周辺にはフリーな空間が広がっており、下側支持機構150にアクセス(接近)可能であり、下側支持機構150に対して作業をおこなうことが可能である。つまり、下側支持機構150の保持および解放の作業を容易におこなうことが可能である。テンションロッド保持装置100において、作業を必要とする要素は下側支持機構150だけである。つまり、テンションロッド保持装置100の作業を容易におこなうことが可能である。
一般には、テンションロッド保持装置は、テンションロッドの中間部、たとえば移動制限部材110が設けられた位置に設けられる。ブームが俯角に伏せられた格納状態では、テンションロッド保持装置と走行車体との間の隙間が極めて狭いため、そのままでテンションロッド保持装置の保持および解放の作業をおこなうことは難しい。テンションロッド保持装置の作業用の空間を確保するために、いったんブームを起こすなどの作業が必要となる。
しかし、本実施形態においては、伸縮ブーム24が俯角に伏せられた格納状態においても、下側支持機構150の周辺にはフリーな空間が広がっており、下側支持機構150にアクセス(接近)可能であるため、テンションロッド保持装置の作業用の空間を確保するための作業をおこなうことなく、テンションロッド保持装置100の作業をおこなうことができる。
実施形態では、テンションロッド保持装置100が移動制限部材110と下側支持機構150とを備えており、ジブ使用準備状態において、下側支持機構150が、走行車体12の前端よりも走行車体12の前方側に位置する例について説明したが、これに限らない。たとえば、移動制限部材110もまた、下側支持機構150と同じ位置に設けられもよい。
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。