本発明の(A)成分はβグルカンである。βグルカンは多糖類の一種であり、1−2−β−D−グルコピラノース結合、1−3−β−D−グルコピラノース結合、1−4−β−D−グルコピラノース結合、1−6−β−D−グルコピラノース結合のうちの少なくとも2種類以上の結合を有するものであり、穀物由来のβグルカン、微生物類由来のβグルカン、担子菌類由来のβグルカン等が知られている。本発明の(A)成分としては、これらのβグルカンの1種または2種以上を使用することができる。
穀物由来のβグルカンとしては、例えば、米類、小麦類、トウモロコシ類、モロコシ類、ヒエ類、アワ類、キビ類、大麦類、オーツ麦類(カラス麦類)、ライ麦類等のイネ科直物から抽出されたβグルカンが挙げられる。これらの中でも、βグルカンの含有量が多い大麦類やオーツ麦類を使用することが好ましい。また、抽出には植物全体を原料にできるが、βグルカンの含有量の比較的高い種子を用いることが好ましい。種子としては、全体を粉砕したもの(全粒粉)をはじめ、穀類の精製工程で得られる糠、フスマ、麦芽、胚芽、胚乳部位のいずれを用いてもよく、好ましくは大麦類やオーツ麦類の全粒粉や穀粒を外周部より搗精(とうせい)した胚乳部分やその際発生する糠、米糠、小麦やトウモロコシ類のフスマや胚芽等であり、より好ましくは大麦類やオーツ麦類の全粒粉や穀粒を外周部より搗精した胚乳部分やその際発生する糠である。
上記の植物より抽出した穀物由来のβグルカンは、その抽出方法に特に制限はなく、抽出原料となるイネ科植物に抽出溶媒を添加して抽出すればよい。また、固液分離された場合の抽出液そのもの、あるいは、抽出液より公知の方法で抽出されたβグルカンを濃縮した液体や固体状のもの、あるいは、抽出液より公知の方法で精製し純度を上げた液体や固体状のもの等、いずれの製造方法で得たものでも、いずれの形態のものでも、いずれの純度のものでも使用可能である。具体的には、イネ科植物中のβグルカンは、水溶性高分子として水溶液として溶解させることができ、例えば、イネ科植物の穀類粉末に水、温水、熱水あるいは塩溶液、更には酸、アルカリ性の水溶液、有機溶媒等を用いて、対粉2〜100倍量の溶媒にて任意の時間、任意の温度で抽出することができる。更に抽出液を固液分離してβグルカンを得ることができる。これらの中でも、水、温水又は熱水で抽出されたβグルカンが好ましく、温度が4〜80℃の水で抽出されたβグルカンがより好ましい。なお、抽出時には抽出促進剤等を加えてもよい。
より具体的な抽出方法を説明する。大麦から高分子量のβグルカンを得る方法としては、例えば、多ろう質大麦を原料とし、水抽出により製造する方法(特公平4−11197号公報)、あるいは、大麦、オーツ麦を原料として、アルカリ抽出、中和、アルコール沈殿により、重量平均分子量10万〜100万のβグルカンを得る方法(特公平6−83652号公報)、搗精歩留まり82%以下の大麦糠類を原料として、80〜90℃の熱水にてβグルカンを抽出する方法(特開平11−225706号公報)等で得られたβグルカン、またこれらの製造方法で得られたβグルカンを更に公知の方法で低分子化βグルカンとしたもの。例えば低分子化の方法としては、公知である多糖類の加水分解反応のいずれもが利用可能である。例えば、水溶性多糖類は、酸存在下に加圧加熱により加水分解することが知られており、これを利用して低分子化することができる。また、酵素による加水分解反応を利用した低分子化も有効で、酵素としては、1,3−βグルカナーゼ等を用いることができる。更にまた、WO98/13056号公報、特開2002−97203号公報等の方法により、原料穀物から直接抽出して得たβグルカンも用いることができる。また、特開2002−105103号公報に記載の抽出促進剤等を使用してもよい。
次に微生物由来のβグルカンについて説明する。微生物類は、細胞自身がその細胞壁に多量のβグルカンを含有しているので、微生物類由来のβグルカンとしては、微生物類をそれぞれの増殖培地に接種し菌体を増殖させることで得られる培養細胞を破砕し、内容物を除去して得られた培養細胞壁残査を用いることができる。また、上記培養細胞壁残査より抽出されたβグルカンをそのまま、あるいは該抽出βグルカンを精製したもののいずれも用いることができる。また、微生物類を培養することによって菌体外に分泌生産されたβグルカンを利用することも可能であり、その場合は、培養終了後の培養液をそのまま、あるいは培養液から単離・精製されたβグルカンを用いることができる。これらのうち上記培養細胞または上記培養細胞壁残査より抽出されたβグルカンをそのまま、あるいは精製して用いることが好ましく、菌体外に分泌生産されたβグルカンを培養液とともに、あるいは培養液から精製したものを用いることがより好ましい。
上記βグルカンを得るのに適した微生物類は、従来食用に供せられている微生物類は安全性が高く適している。即ち、酵母菌、乳酸菌、納豆菌、酢酸菌、麹菌、クロレラやスピルリナ等の藻類、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属に属する微生物等である。これらは、環境中(例えば食品、土壌、室内等)より分離された当該微生物を用いることができる。また、単菌分離された保存株あるいは分離株、さらにはそれらを常法に従い変異操作を実施した変異株を用いることができる。変異操作の例としては、例えばUV照射、あるいはニトロソグアニジン、エチジウムブロマイド、メタンスルホン酸エチル、亜硝酸ナトリウム等による化学処理等が挙げられる。
上記酵母菌としては、例えば、サッカロマイセスセレビシエ(S.cerevisiae)、サッカロマイセスサケ(S.sake)、サッカロマイセスロゼイ(S.rosei)、その他、サッカロマイセスルキシ−(S.rouxii)、サッカロマイセスビスポラス(S.bisporus)、サッカロマイセスバイリ(S.baillii)、サッカロマイセスバヤナス(S.bayanus)、サッカロマイセスカペニシス(S.capenisis)などや、シゾサッカロマイセス(Syzosaccharomyces)属、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ(S.pombe)、トルロプシス(Torulopsis)属、例えば、トルロプシスエトケルシ(T.etchelsii)、トルロプシスベルサチルス(T.versatilis)、トルロプシスホルミ(T.holmii)や、ハンゼニアスポラ(Hanseniaspora)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、例えば、ハンゼヌラスブペリクローサ(H. subpelliculosa)、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、例えば、デバリオマイセスハンセニ(D.hansenii)、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)属 例えば、サッカロマイコプシスフィブリゲラ(S.fibuligera)、サッカロマイコデス(Saccharomycodes)属、ピヒア(Pichia)属、パキィソレン(Pachysolen)属等のビール、発泡酒、焼酎、日本酒、ワイン、ウイスキー等のアルコール醸造や製パン工程で使用されるサッカロマイセス(Saccharomyces)属に分類される酵母類;キャンディダユチリス(C.utilis)、キャンディダミレリ(C.milleri)、キャンディダトロピカリス(C.tropicalis)、キャンディダマルトーサ(C.maltosa)、キャンディダリポリティカ(C.lipolytica)等の微生物タンパク質生産に使用されるキャンディダ(Candida)属の酵母菌類;ロドトルラ属の酵母等が挙げられる。これらは単品で使用してもよく、2種類以上を共生させてもよい。
上記乳酸菌としては、例えば、桿菌のラクトバシラス(Lactobacillus)属やビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、球菌のロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属の乳酸菌が通常使用されるが、その他、エンテロコッカス(Enterococcus)属、バゴコッカス(Vagococcus)属、カルノバクテリウム(Carnobacterium)属、アエロコッカス(Aerococcus)属、テトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属の乳酸菌を利用することができる。具体的な乳酸菌株としては、例えば、ラクトバシルスブルガリス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバシルスヘルベティカス(L.helveticus)、ラクトバシルスアシドフィルス(L.acidophilus) 、ラクトバシルスラクティス(L.lactis)、ラクトバシルスカゼイ(L.casei)、ラクトバシルスブレビス(L.brevis)、ラクトバシルスプランタラム(L.plantarum)、ラクトバシルスサケ(L.sake)、ストレプトコッカスサーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカスラクティス(S.lactis)、ストレプトコッカスクレモリス(S.cremoris)、ビィフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium longum)、ビィフィドバクテリウムビィフィダム(B.bifidum) 、ビィフィドバクテリウムブレーベ(B.breve)、ビィフィドバクテリウムインファンティス(B.infantis)、ロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)、ロイコノストックメセンテロイデス(Ln.mesenteroides)、ロイコノストックオクノス(Ln.ocnos)、ペディオコッカスアシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカスセレビシエ(P.cerevisiae)、ペディオコッカスペントサセウス(P.pentosaceus)等の従来使用されている乳酸菌が挙げられる。これらは単品で使用してもよく、2種類以上を共生させてもよい。また、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌の培養とその他の乳酸菌の培養とを別々に行い、これらを混合してもよい。
上記アウレオバシジウム(Aureobasidium)属に属する微生物としては、当該微生物を培養することによって菌体外にβ結合を有するグルコース重合体を生産する菌株であるならばいずれでもよく、例えば、アウレオバシジウムプルランス(Aureobasidium pullulans)の菌株が挙げられ、具体的にはIFO4464、IFO4466、IFO6353、IFO7757、ATCC9348、ATCC3092、ATCC42023、ATCC433023、FERM BP-8391等を用いることができる。その他、環境中(例えば食品、土壌、室内等)により分離された当該微生物を用いることができる。また、単菌分離された保存株あるいは分離株、さらにはそれらを常法に従い変異操作を実施した変異株を用いることができる。変異操作の例としては、例えばUV照射、あるいはニトロソグアニジン、エチジウムブロマイド、メタンスルホン酸エチル、亜硝酸ナトリウム等による化学処理等が挙げられる。
その他、納豆菌であるバシルス(Bacillus)属の菌株、酢酸菌であるアセトバクター(Acetobactor)属の菌株、麹菌類であるアスペルギルス(Aspergillus)属やペニシリウム(Penicillium)属の菌株、クロレラやスピルリナ等の藻類、乾燥クロレラ粉末、プルランを菌体外に分泌生産することが知られているアウレオバシジウム(Aureobasidium)属の菌株、その他食品添加物として使用される増粘多糖類を生産することが知られているキサントモナス(Xanthomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、アゾトバクター(Azotobactor)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、エルウィナ(Erwinia)属、エンテロバクター(Enterobactor)属、スクレロティウム(Sclerotium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、マクロホモプシス(Macrophomopsis)属の菌株を用いることができる。
次に、担子菌類由来のβグルカンについて説明する。担子菌類は、子実体や菌糸が塊状に集合した菌核に多量のβグルカンを含有しているので、子実体や菌核を微粉砕した後に該微粉砕物から抽出された抽出物、あるいは抽出物からβグルカンを精製したもの等を用いることができる。また、担子菌類の胞子を発芽させ、菌糸体をそれぞれの増殖培地に接種し菌体を増殖させることで得られる培養細胞を破砕し内容物を除去して得られた培養細胞壁残査を用いることができる。また、上記培養細胞または上記培養細胞壁残査より抽出されたβグルカンをそのまま、あるいは該抽出βグルカンを精製したもののいずれも担子菌類由来のβグルカンとして用いることができる。更に、担子菌類を培養することによって菌体外に分泌生産されたβグルカンを利用することも可能であり、その場合は、培養終了後の培養液をそのまま、あるいは培養液から分離・精製されたβグルカンを担子菌由来のβグルカンとして用いることができる。
これらのうち、該培養細胞を破砕し内容物を除去して得られた培養細胞壁残査を用いるのが好ましく、さらに、上記培養細胞または上記培養細胞壁残査より抽出されたβグルカンをそのまま、あるいは精製して用いるのがさらに好ましく、さらに、菌体外に分泌生産されたβグルカンを培養液とともに、あるいは培養液から精製したものを用いるのが最も好ましい。
担子菌類としては栽培品種が最も好ましいが、商業生産に供せられていない担子菌類からのβグルカンも本発明に利用することができ、例えば、アガリクス・ブラゼイ、アミガサタケ、アミタケ、エゾハリタケ、エノキタケ、カンゾウタケ、キクラゲ、キヌガサタケ、クリタケ、サケツバタケ、ササクレヒトヨタケ、サンゴハリタケ、シイタケ、ショウロ、シロキクラゲ、シロタモギタケ、スギヒラタケ、タモギタケ、チョレイマイタケ、ツバヒラタケ、冬中夏草、ナメコ、ナラタケ、ナラタケモドキ、ニオウシメジ、ニカワウロコタケ、ニカワハリタケ、ヌメリスギタケ、ヌメリスギタケモドキ、ハツタケ、ヒラタケ、ブクリョウ、フクロタケ、ブナシメジ、ブナハリタケ、ホンシメジ、マイタケ、マスタケ、マツオウジ、マッシュルーム、マツタケ、マンネンタケ、ムキタケ、ムラサキシメジ、ヤマドリタケ、ヤマブシタケ、ヤナギマツタケ、ハナビラタケ、メシマコブ等が挙げられる。
上記の微生物類や担子菌類の培養細胞壁残査をβグルカンとして単離する方法としては、培養した微生物類や培養した菌糸体あるいは栽培した菌核や子実体に適当量の溶媒を加え、自己消化あるいは加水分解酵素の添加により細胞壁の一部を破壊し内容物を流去させて、残査成分を回収することで培養細胞壁残査をβグルカンとして単離する方法が挙げられる。また、フレンチプレスや超音波破砕機等の物理的力により微生物類や担子菌類の細胞にダメージを与え一部を破壊し、内容物を除去し、残査を回収することでβグルカンとして得る方法もある。
βグルカンの抽出方法は特に制限はなく、抽出原料となる微生物類または担子菌類に、抽出溶媒を添加し抽出すればよい。抽出溶媒は、水、塩溶液、酸水溶液、アルカリ水溶液、有機性溶媒等の1種または2種以上の混合溶媒等を用いることができる。また、細胞壁を分解する酵素を併用することで抽出効率を高めることができる。抽出物は、固液分離された場合の抽出液そのもの、あるいは抽出液より公知の方法で抽出されたβグルカンを濃縮した液体や固体状のもの、あるいは抽出液より公知の方法で精製し純度を上げた液体や固体状のもの等、いずれの製造方法で得たものでも、いずれの形態のものでも、いずれの純度のものでも使用可能である。もちろんβグルカン以外の抽出された成分が混合しているものを使用することも可能である。
さらに、βグルカンの微生物類または担子菌類からの抽出方法を説明する。本発明で用いられるβグルカンは、水溶性高分子として水等の溶媒に溶解させることができ、例えば担子菌である一般に市販されているキノコを乾燥させ、粉砕した粉末に、水、温水、熱水あるいは塩溶液、さらには酸、アルカリ性の水溶液、有機溶媒等を用いて、対粉末2〜100倍量の溶媒にて任意の時間、任意の温度で抽出することができる。さらに抽出液を固液分離してβグルカンを得ることができる。これらの中でも、水、温水または熱水で抽出されたβグルカンが好ましく、4〜90℃の水で抽出されたβグルカンがより好ましい。さらに抽出時に酵素溶液等の抽出促進剤等を加えてもよい。
なお、いずれの方法によって得られたβグルカンにおいても、各成分中のβグルカンの純度は、0.1〜100%となるが、1〜100%が好ましく10〜100%がより好ましく、高純度であればあるほどよい。
本発明に用いられるβグルカンは、1−2−β−D−グルコピラノース結合、1−3−β−D−グルコピラノース結合、1−4−β−D−グルコピラノース結合、1−6−β−D−グルコピラノース結合を少なくとも2種類以上有し、特に1−3−β−D−グルコピラノース結合および1−4−β−D−グルコピラノース結合よりなるβグルカン、1−3−β−D−グルコピラノース結合および1−6−β−D−グルコピラノース結合よりなるβグルカン、1−3−β−D−グルコピラノース結合、1−4−β−D−グルコピラノース結合および1−6−β−D−グルコピラノース結合よりなるβグルカンを含有することが好ましい。
本発明に用いられるβグルカンの重量平均分子量は1000〜460万が好ましく、シート状パック剤として良好な性能を得るためには2000〜50万がより好ましい。1000よりも小さいと流動性が増してシート上の薬剤の保持性に問題が生じる場合がある。逆に50万を超えると粘度が増大して作業性が悪くなる場合や、水溶性が不足して均一な含水層が得られない場合、メバロノラクトンとの相乗効果が得られない場合がある。目的とする分子量のβグルカンは、穀物類、微生物類、担子菌類から抽出操作により直接得てもよいし、公知の方法でβグルカンを低分子化して得てもよい。また、本発明に使用できるβグルカンは水溶性を有しており、1質量%水溶液の36℃における粘度は概ね0.5〜10000mPa・Sであり、好ましくは0.6〜8000mPa・Sであり、より好ましくは1.0〜5000mPa・Sである。0.5mPa・Sよりも小さいと流動性が増してシート上の薬剤の保持性に問題が生じる場合があり、逆に10000mPa・Sを超えると粘度が増大して取扱いが困難になる場合や、肌への密着性に問題が生じる場合がある。
本発明に使用される(B)成分はメバロノラクトンである。メバロノラクトンとは、自然界において極めて多くの生物のイソプレノイド関連物質生合成代謝に関与しているが、そのラクトン型がメバロノラクトンであり、メバロノラクトンは水溶液中ではメバロン酸として存在する。本明細書では、メバロノラクトンとメバロン酸は同義語として扱う。
メバロノラクトンの大量生産の方式としては例えば、微生物から生産する方法が知られており(特公平7−89938号公報、特公平7−89939号公報、特公平7−89940号公報、特公平7−51068号公報、特許第2763782号公報等参照)、この方法では、天然型であるR−メバロノラクトンが得られる。
また、化学合成によって得られたメバロノラクトンには2種の光学異性体、R−メバロノラクトン及びS−メバロのラクトンが存在するが、本発明では、これらのラセミ体をそのまま使用することができ、また、天然型のR−メバロノラクトンのみを分割して使用することもできる。もちろんS−メバロノラクトンのみを分割して使用することも可能であるが、本発明で用いられるメバロノラクトンは、生体への適合性や安全性の点から天然型のR−メバロノラクトンが好ましい。
次にβグルカンとメバロノラクトンが肌に与える効果について説明する。メバロノラクトンは皮膚内に浸透し、コレステロール合成機能を発揮して皮膚内の角質へ脂質補填を行う効果により、肌に弾力性(美肌効果)を与えるが、パック剤として使用した場合、使用直後に肌に潤いを与える効果はほとんどない。一方、βグルカンをパック剤として使用すると肌の表面に皮膜を形成し、肌の乾燥を防ぎ、肌に潤いを与える効果がある。これらはまったく違う効果であるが、これら2つの物質を併用すると極めて高い肌の潤い効果が得られる。具体的には、βグルカン単独で使用したときに得られる肌の潤い効果は、比較的短時間でその効果が喪失するが、βグルカンとメバロノラクトンを併用して使用すると、得られる肌の潤い効果が長時間持続する。なお、こうした効果は、パック剤のように過多の水分の存在下で薬剤を長時間密着させる用途において得られるものである。化粧クリームのように直接肌に塗る用途においては、水分が急速に蒸発してしまうためこうした効果は得られない。
上記の効果を得るためには、水の存在下でβグルカンとメバロノラクトンを任意の割合で混合してパック剤として使用すればよいが、より高い効果が得られることから(A)成分のβグルカンと(B)成分のメバロノラクトンを(A)/(B)=100/3〜100/30(質量比)の割合で配合することが好ましく、(A)/(B)=100/5〜100/20(質量比)がより好ましい。この配合割合に対して(B)成分の量が少ない場合は、肌の潤いが長時間持続する効果が減少する場合があり、(B)成分の配合量が多い場合は、肌の潤いが長時間持続する効果が減少する場合や、配合量に見合った効果が得られない場合がある。なお、βグルカンは純分100%のもの以外に水溶液等の100%品でない状態で得られる場合があるが、こうした場合は純分に換算して上記の配合を決めてやればよく、含有する水分については、下記に記載する水分の一部として考慮すればよい。
また、本発明のシート状パック剤の含水層には、(A)成分と(B)成分と共に水を含有することが必須となる。水を含有しないと本発明の効果が得られない。(A)成分、(B)成分および水の割合は任意の割合でよいが、より高い効果が得られることから、水1000質量部に対して、(A)成分と(B)成分の合計量が1〜30質量部であることが好ましく、3〜20質量部であることがより好ましく、3〜10質量部であることが更に好ましい。(A)成分と(B)成分の合計量が1質量部未満であると十分な美肌効果が得られない場合があり、(A)成分と(B)成分の合計量が30質量部より多いと肌の潤い効果が長時間持続しない場合がある。
更に、本発明のシート状パック剤を使用する場合は、顔等の肌に少なくとも1分以上密着させることが好ましく、5〜60分がより好ましい。密着させておく時間が長ければ長いほど、肌の潤い効果は高くなるが、60分より長く密着させても効果はほとんど変わらない。
本発明のシート状パック剤の含水層は、上記の通り(A)成分、(B)成分および水を含有するものであるが、含水層のシートパック上での形状を保持するため、あるいは含水層に厚みを持たせて含水層内の有効成分量を多くするために各種ゲル化剤を使用することが好ましい。ゲル化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガム等のカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、POE/POP共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体、合成ラテックス等が挙げられる。中でも、形状保持性が高いことから、アルギン酸ナトリウム、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体が好ましい。これらのゲル化剤は1種または2種以上を使用してもよい。
ゲル化剤の配合量は(A)成分および(B)成分の配合による含水層のゲル化の度合いを見て判断すればよいが、概ね含水層の水100質量部に対してゲル化剤(2種以上使用の場合はその合計量)を0.1〜20質量部使用することが好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
本発明のシート状パック剤は、公知のシート状の支持体に上記の含水層を塗布あるいは含浸させたものである。こうしたシート状の支持体としては、例えば、紙、不織布、布帛等を挙げることができる。また、更に高い効果が得られることから、含水層を塗布あるいは含浸させた不織布等の上に、伸縮性を有し且つ通気性がないシート基材を貼り付けて使用することが好ましい。本発明のシート状パック剤は上記の通り一定量の水を含有した状態で、ある程度長時間肌に密着させることで大きな効果が得られる。シート状パック剤に貼り付けられたシート基材が伸縮性を有すると、操作性が向上して容易に含水層を肌に密着させることができ、本発明の効果が十分に発揮される。また、通気性を有する素材であると、体温によりシート状パック剤から水分が蒸発して含水層の水分量が少なくなり、本発明の効果が十分に発揮されない場合があるため、シート基材は実質通気性がないことが好ましい。
こうしたシート基材としては、肌に密着させる程度の伸縮性、具体的には縦方向および横方向の伸度が30〜200%であればよく、更に実質通気性のない素材のものであればいずれも使用することができる。こうした素材としては、例えば、レーヨン、アセテート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、アクリル等の合成繊維や、ゴム、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリエステル等の発泡体等を使用することができる。中でも、伸縮性に優れ、実質通気性がなく、更に軽量で取り扱いが容易なポリウレタンの発泡体が好ましい。なお、不織布等のシート状の支持体を使用せずに、ゲル化させた含水層を直接シート基材に塗布してもよい。
本発明のシート状パック剤の含水層には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の生理活性成分、防腐剤、酸化防止剤、エタノール、pH調整剤等のその他の成分を配合することもできる。
生理活性成分としては、動植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分、生体高分子等が挙げられ、例えば、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、油溶性甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プラセンタエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ラフィノース、ムコ多糖類、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウム等のその塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜等を挙げられる。これらの生理活性成分を本発明のシート状パック剤の含水層に添加する場合は、含水層全量に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%添加すればよい。
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、オクタンジオール、アルキル(炭素数6〜12)グリセリンエーテル等が挙げられる。これらの防腐剤を本発明のシート状パック剤の含水層に添加する場合は、含水層全量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.3質量%添加すればよい。
本発明のシート状パック剤の使用方法は特に限定されず、美容効果を期待する箇所(肌)に直接パック剤を貼り付ければよいが、多くの人が最も効果を期待する顔に貼り付けることが好ましい。使用方法としては、例えば、シート状パック剤を顔に密着するように貼り、そのまま1〜60分程度密着させた後シート状パック剤を剥がせばよい。その後はそのまま放置しても、顔を水洗あるいは既存の洗浄剤で洗浄してもよく、肌の潤い効果は数日から1週間程度持続する。
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。
<試験1>
表1に記載された配合に従い、各成分を混合して含水層となる組成物を作成し、マスク型に裁断されたセルロース系の繊維からなる不織布に、該組成物を10g含浸させた。この不織布に、同様の形に裁断された伸縮性のある発泡ウレタンからなるシート基材を張り合わせ、10人の女性を被験者として不織布が顔側になるように40分間パックした。40分後にパックを取り外し、その後1時間及び3日経過した時点での感触を以下の基準(1〜3点)で判断し、10人の点数を平均したものを試験結果として表1に記した。なお、表中に記された配合量の単位はgである。
1 肌に潤いが感じられない(パック前と変わらない)
2 わずかだが潤いがあるように感じられる
3 明らかに潤いがあると感じる
βグルカンを使用すると、直後の潤い効果が得られることがわかる。一方、経時での効果はメバロノラクトンを使用しないと著しく劣るが、メバロノラクトンを使用すると効果が持続することが確認できる。また、実施例2や実施例3の結果と比較して実施例1の結果が良好なことから、メバロノラクトンの配合比によって潤いを与える効果に違いがでることがわかる。更に、実施例4より、水分量にも最適な割合があることがわかる。
<試験2>
実施例1と同様の配合で、シート基材を使用しない不織布のみのパックを製造し、試験1と同様の方法で試験を行い、シート基材の有無による効果の比較をした。また、40分間パックした後にパックの重量を測定し、蒸発した水分を重量減少率として算出した。結果は表2に記した。
シート基材を使用しないと、パック中に含水層内の水分が体温により蒸発すると考えられる。水分が蒸発すると含水層の組成(水分量の割合)が変わり、潤いを与える効果が減少すると推定される。