(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係るICP(誘導結合プラズマ)型のドライエッチング装置1を示す。
ドライエッチング装置1は、その内部が基板2にドライエッチング(プラズマ処理)を行うエッチング室(処理室)を構成する減圧可能なチャンバ(真空容器)3を備える。チャンバ3の上端開口は石英等の誘電体からなる天板4により密閉状態で閉鎖されている。天板4上にはICPコイル5が配設されている。ICPコイル5にはマッチング回路6を介して、高周波電源7が電気的に接続されている。天板4と対向するチャンバ3内の底部側には、バイアス電圧が印加される下部電極としての機能及び基板2の保持台としての機能を有する基板サセプタ9が配設されている。チャンバ3には、隣接して設けられた搬送室を兼ねるロードドック室10(図2参照)と連通する開閉可能な搬入出用のゲート3aが設けられている。後に詳述するように、複数枚(本実施形態では4枚)の基板2を収容したトレイ15が、ゲート3aを通ってチャンバ3とロードロック室10との間で搬入出される。また、チャンバ3に設けられたエッチングガス供給口3bには、エッチングガス供給源12が接続されている。エッチングガス供給源12はMFC(マスフローコントローラ)等を備え、エッチングガス供給口3bから所望の流量でエッチングガスを供給できる。さらに、チャンバ3に設けられた排気口3cには、真空ポンプ等を備える真空排気装置13が接続されている。さらにまた、チャンバ3内には、基板サセプタ9を貫通し、かつ駆動装置17で駆動されて昇降する昇降ピン18が設けられている。
図2を参照すると、ロードロック室10には、ロードロック室10自体へのトレイ15の搬入出及びチャンバ3へのトレイ15の搬入出のために、水平方向の直進移動と水平面内での回転が可能な周知のダブルアーム型の搬送アーム(真空搬送アーム)16が収容されている。また、ロードロック室10は、真空引き及び大気開放のための機構(図示せず)を備える。ロードロック室10のチャンバ3とは反対側のゲート10aの外側には、アラインメント台71が配置されている。アラインメント台71の両側には、ドライエッチング前後の基板2を収容したトレイ15をそれぞれ格納するためのカセット72A,72Bが配置されている。アラインメント台71とカセット72A,72Bとの間のトレイ15の受け渡しのために、搬送アーム(大気搬送アーム)73が設けられている。
ロードロック室10からチャンバ3内へのトレイ15の搬入時には、図1において二点鎖線で示すように昇降ピン18は上昇位置にあり、ゲート3aからチャンバ3内に進入した搬送アーム16から昇降ピン18の上端に基板2を収容したトレイ15が移載される。この状態では、トレイ15は基板サセプタ9の上方に間隔をあけて位置している。続いて、昇降ピン18が図1において実線で示す降下位置に降下し、それによってトレイ15と基板2が基板サセプタ9上に載置される。この載置時には、基板2はトレイ15を介することなく直接的に基板サセプタ9上に載置される(基板2はトレイ15に対し非接触の状態となる)。一方、プラズマ処理終了後のチャンバ3からロードロック室10へのトレイ15の搬出時には、昇降ピン18が上昇位置まで上昇し、続いてロードドック室10からゲート3aを介してチャンバ3内に進入した搬送アーム16にトレイ15が移載される。
以下、図3Aから図4Cを参照して、基板2とトレイ15について概説する。
基板2は図3Aに示すように凸状に反ったものでも、図3Bに示すように反りを有しない平坦なものでもよい。図3Aに示す凸状の反りを有する基板2としては、例えば、LEDを製造するための、GaN、SiC、サファイア等の材料からなる基板に、GaNをエピタキシャル成長させてマスクとしてフォトレジストを形成した基板がある。300μm〜600μm程度の薄いサファイア基板に5〜10μm程度の厚みのGaNを、MOCVD等を用いて600℃〜1000℃の温度で成膜すると、サファイア基板と成膜の材料の線膨張係数差により成膜側が凸となる反りが生じる。この基板の場合の反り量δは3inch(76.2mm程度)の基板の場合で100μm程度である。本実施形態のドライエッチング装置1により、このようなGaN/サファイア基板に対して例えばコンタクト形成のためのGaN加工を施すことができる。基板2の反りは非軸対称であっても軸対称であってもよい。図3Bに示す反りのない平坦な基板2としては、例えばLEDを製造するための、マスクとしてフォトレジストを形成したサファイア基板がある。本実施形態のドライエッチング装置1により、このようなサファイア基板にLEDの高輝度化のための凹凸加工を施すことができる。ただし、本実施形態のドライエッチング装置1による加工対象となる基板2の材質はこれらに限定されない。
図4Aから図4Cを参照すると、トレイ15には基板2を収容するための厚み方向に貫通する基板収容孔19A〜19Iが形成されている。また、個々の基板収容孔19A〜19Iには収容された基板2を保持するための基板支持部21が設けられている。図4Aのトレイ15は円板状の基板2を収容するための4個の基板収容孔19A〜19Dを備える。一方、図4Bのトレイ15は円板状の基板2を収容するための7個の基板収容孔19A〜19Gを備える。例えば、トレイ15の直径が200mmである場合、図4Aに示すように直径3inchの基板2を収容するための4個の基板収容孔19A〜19Dをトレイ15に設けることができる。また、この場合、図4Bに示すように、直径2inch(50.8mm)の基板2を収容するための7個の基板収容孔19A〜19Gをトレイ15に設けることができる。トレイ15に収容される基板2は円板状のものに限定されず、矩形板状を含む他の形状であってもよい。例えば、図4Cのトレイ15には、矩形状の基板2を収容するための9個の基板収容孔19A〜19Iが設けられている。本実施形態では、基板2は円板状であり、トレイ15は図4Aに示すように円板状の基板2を収容するための4個の基板収容孔19A〜19Dを備える。
以下、図5から図8Cを参照して、本実施形態におけるトレイ15について詳細に説明する。
トレイ15は薄板円板状のトレイ本体15aを備える。トレイ15の材質としては、例えばアルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y2O3)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)等のセラミクス材や、アルマイトで被覆したアルミニウム、表面にセラミクスを溶射したアルミニウム、樹脂材料で被覆したアルミニウム等の金属がある。Cl系プロセスの場合にはアルミナ、イットリア、炭化シリコン、窒化アルミニウム等、F系プロセスの場合には石英、水晶、イットリア、炭化シリコン、アルマイトを溶射したアルミニウム等を採用することが考えられる。
図5から図6Bに示すように、トレイ本体15aには、上面15bから下面15cまで厚み方向に貫通する4個の平面視で円形の基板収容孔19A〜19Dが設けられている。これらの基板収容孔19A〜19Dは、上面15b及び下面15cから見てトレイ本体15aの中心に対して等角度間隔で配置されている。また、トレイ本体15aには搬送アーム16(図2参照)が備える位置決め突起(図示せず)と係合する位置決め切欠15eが形成されている。
個々の基板収容孔19A〜19Dには基板支持部21が設けられている。図7Aから図7Cに最も明瞭に示すように、基板支持部21は基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dのトレイ15の下面15c側から突出する環状部74を備える。基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dは傾斜した壁面である。具体的には、孔壁15dは基板収容孔19A〜19Dの中心に向けて水平方向に対して傾斜角度α(例えば75°)を有している(図7B参照)。図7Aに最も明瞭に示すように、環状部74は孔壁15dの全周に設けられた幅狭の円環状である。また、環状部74の孔壁15dからの突出量は全周にわたって一定である。さらに、環状部74の上面74aは水平方向に延びる平坦面で、下面74bは先端面74c(基板収容孔19A〜19Dの中心)に向けて斜め上向きに傾斜した傾斜面である。
基板支持部21は複数個(本実施形態では3個)の突起(基板接触部)76A,76B,76Cを備える。突起76A〜76Cは環状部74の上面74aに設けられている。図7Aに示すように、突起76A〜76Cは平面視で基板収容孔19A〜19Dの中心に対して等角度間隔(120°間隔)で配置されている。また、突起76A〜76Cは平面視で基板収容孔19A〜19Dの径方向に延びている。さらに、突起76A〜76Cは環状部74の幅全体に延在している。具体的には、突起76A〜76Cは、環状部74の上面74aと基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dの接続位置から、環状部74の上面74aと先端面74cの接続位置まで延在している。
図7Cに最も明瞭に示すように、突起76A〜76Cは環状部74の上面74aから鉛直方向上向きに突出している。また、突起76A〜76Cは延在方向と直交する方向の断面が水平方向に細長い長方形状である。突起76A〜76Cの環状部74の上面74aからの突出量は延在方向全体で一定であり、突起76A〜76Cの上面76aは水平方向に延び平坦面である。突起76A〜76Cの寸法は、例えば幅が1mm〜2mm程度で、上面76aからの突出量が0.2mm〜0.5mmである。
基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2は、基板支持部21により支持される。詳細には、図7B、図8A、及び図8Bに示すように、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2の外周縁部の下面2aが突起76A〜76Cの上面76a上に載置され、それによって基板2が支持される。基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2は、角度間隔を隔てて配置された3個の突起76A〜76Cの上面76aのみで基板支持部21(トレイ15)と接触する。基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2の外周縁部の下面2aのうち突起76A〜76Cから外れた部分は、環状部74の上面74aに対して間隔を隔てて上方に位置し、基板支持部21(トレイ15)に対して非接触である。つまり、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2の外周縁部の下面2aは、周方向に間隔を隔てた3箇所で突起76A〜76Cの上面76aに接触することにより、反りを有する否か(図3A及び図3B参照)にかかわらず、点接触的な態様(3点支持)で基板支持部21に支持される。突起76A〜76Cと同様の突起を4個以上設けてもよい。
基板2を基板収容孔19A〜19Dに収容する際には、トレイ15の上面15b側から基板2を基板収容孔19A〜19Dに入れる。この際、基板2の外周縁部(より具体的には下面2aと端面2bの接続部分のエッジ)が、水平方向に対して傾斜角度αを有する孔壁15dで案内される。この孔壁15dでの案内により、基板2は平面視での位置が位置合わせされ(図6A参照)、かつ水平な姿勢で基板収容孔19A〜19Dに収容される。その結果、基板2の外周縁部の下面2aの3箇所が確実に突起76A〜76Cの上面76aに載置される。
次に、図1、図5、及び図9Aから図10Cを参照して、基板サセプタ9について説明する。まず、図1を参照すると、基板サセプタ9は、セラミクス等からなる誘電体板(誘電体部材)23、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等からなり、本実施形態ではペデスタル電極として機能する金属板(支持部材)24、セラミクス等からなるスペーサ板25、セラミクス等からなるガイド筒体26、及び金属製のアースシールド27を備える。基板サセプタ9の最上部を構成する誘電体板23は、金属板24の上面に固定されている。また、金属板24はスペーサ板25上に固定されている。さらに、誘電体板23と金属板24の外周をガイド筒26が覆い、その外側とスペーサ板25の外周をアースシールド27が覆っている。
図5、及び図9Aから図10Cを参照すると、誘電体板23は全体として薄い円板状であり、平面視での外形が円形である。誘電体板23の上端面は、トレイ15の下面15cを支持するトレイ支持面(トレイ支持部)28を構成する。また、それぞれトレイ15の基板収容孔19A〜19Dと対応する短円柱状の4個の基板載置部29A〜29Dがトレイ支持面28から上向きに突出している。誘電体23は単体の部材であっても、厚み方向に分割された複数の部材からなる分割構造でもよい。
基板載置部29A〜29Dの上端面は、基板2の下面2aが載置される基板載置面31を構成する。また、基板載置部29A〜29Dには、基板載置面31の外周縁から上向きに突出し、その上端面が基板2の下面2aを支持する円環状突出部32が設けられている。また、基板載置面31の円環状突出部32で囲まれた部分には、基板載置面31よりも十分径が小さい円柱状突起33が、均一に分布するように複数個設けられている。円環状突出部32のみでなく円柱状突起33の上端面も基板2の下面2aを支持する。
図8Aから図8Cを参照すると、基板載置部29A〜29Dの外径R1は、基板支持部21の環状部74の先端面74cで囲まれた円形開口36の径R2よりも小さく設定されている。従って、前述の搬入時にトレイ15が誘電体板23に向けて降下すると、個々の基板載置部29A〜29Dは対応する基板収容孔19A〜19Dにトレイ本体15aの下面15c側から進入し、トレイ15の下面15cは誘電体板23のトレイ支持面28上に載置される。また、トレイ本体15aの下面15cからの基板支持部21の上端(突起76A〜76Cの上面76a)までの高さH1は、トレイ支持面28からの基板載置面31までの高さH2よりも低く設定している。従って、トレイ15の下面15cがトレイ支持面28上に載置された状態では、基板2は基板載置部29A〜29Dの上端の基板載置面31で押し上げられ、トレイ15の基板支持部21(突起76A〜76C)から浮き上がっている。換言すれば、基板収容孔19A〜19Dに基板2を収容しているトレイ15を誘電体板23のトレイ支持面28上に載置すると、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2の下面2aは、基板支持部21の突起76A〜76Cの上面76aから浮き上がって所定量だけ上方に離間し(突起76A〜76Cに対して非接触となる。)、基板載置面31によって支持される。基板載置面31によって支持された基板2の外周縁部は、トレイ15、具体的には基板収容孔19A〜19Dの孔壁15d及び環状部74の上面74aに対して間隔をあけて臨んでいる。
図1及び図10Aから図10Cを参照すると、誘電体板23の個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31付近には単極型の静電吸着用電極40が内蔵されている。本実施形態では、これらの静電吸着用電極40は平板状である。静電吸着用電極40は電気的に互いに絶縁されており、直流電源41と調整用の抵抗42等を備える共通の直流電圧印加機構43から静電吸着用の直流電圧が印加される。静電吸着用電極は双極型でもよい。また、基板載置部29A〜29Dに共通して1個の静電吸着用電極を設けてもよい。
図5、図9A、図9B、及び図10Aから図10Cを参照すると、個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31には、伝熱ガス(本実施形態ではヘリウム)の供給孔44が設けられている。これらの供給孔44は共通の伝熱ガス供給機構45(図1に図示する)に接続されている。伝熱ガス供給機構45は、伝熱ガス源(本実施形態ではヘリウムガス源)46、伝熱ガス源46から供給孔44に到る供給流路47、供給流路47の伝熱ガス源46側から順に設けられた流量計48、流量制御バルブ49、及び圧力計50を備える。また、伝熱ガス供給機構45は、供給流路47から分岐する排出流路51と、この排出流路51に設けられたカットオフバルブ52を備える。さらに、伝熱ガス供給機構45は、供給流路47の圧力計50よりも供給孔44側と排出流路51を接続するバイパス流路53を備える。個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31とその上に載置された基板2の下面2aとの間、詳細には基板2の下面2aと円環状突出部32で囲まれた閉鎖された空間に、伝熱ガス供給機構45によって伝熱ガスが供給される。伝熱ガスの供給時にはカットオフバルブ52は閉弁され、伝熱ガス供給源46から供給路47を経て供給孔44へ伝熱ガスが送られる。流量計48と圧力計50で検出される供給流路47の流量及び圧力に基づき、後述するコントローラ63が流量制御バルブ49を制御する。一方、伝熱ガスの排出時にはカットオフバルブ52が開弁され、基板2の下面2aと基板載置面31の間の伝熱ガスは、供給孔44、供給流路47、及び排出流路51を経て排気口54から排気される。
金属板24には、プラズマ発生用の高周波電圧であるバイアス電圧を印加する高周波印加機構56が電気的に接続されている。高周波印加機構56は、高周波電源57とマッチング用の可変容量コンデンサ58とを備える。
また、金属板24を冷却する冷却機構59が設けられている。冷却機構59は金属板24内に形成された冷媒流路60と、温調された冷媒を冷媒流路60中で循環させる冷媒循環装置61とを備える。
図1に示すコントローラ63は、流量計48及び圧力計50を含む種々のセンサや操作入力に基づいて、高周波電源7、エッチングガス供給源12、搬送アーム16,73、真空排気装置13、駆動装置17、直流電圧印加機構43、伝熱ガス供給機構45、高周波電圧印加機構56、及び冷却機構59を含むドライエッチング装置1全体の動作を制御する。
次に、本実施形態のドライエッチング装置1の動作を説明する。
まず、トレイ15の基板収容孔19A〜19Dにそれぞれ基板2が収容される。トレイ15の基板支持部21で支持された基板2は、トレイ本体15aの下面側から見ると基板収容孔19A〜19Dによりトレイ本体15aの下面15cから露出している。また、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2は、外周縁部の下面2aがトレイ15の基板支持部21の3個の突起76A〜76Cの上面76aによって点接触的な態様で支持される。基板2を収容したトレイ15はカセット72Aに収納されている。
次に、搬送アーム73が4枚の基板2を収容したトレイ15をカセット72Aから取り出してアラインメント台71に載せる。アラインメント台71はトレイ15のアライメント調整を実行する。一方、ロードロック室10は大気開放される。
続いて、搬送アーム73がゲート10aを介してトレイ15をアラインメント台71からロードロック室10内に搬入する。トレイ15が搬入された後、ロードロック室10が真空引きされる。
次に、搬送アーム16がゲート3aを介してトレイ15をロードロック室10から真空排気装置13で減圧済みのチャンバ3内に搬入する。図1の二点鎖線で示すように、トレイ1は基板サセプタ9の上方に間隔をあけて配置される。
図10Aに示すように駆動装置17によって駆動された昇降ピン18が上昇し、搬送アーム16から昇降ピン18の上端にトレイ15が移載される。トレイ15の移載後、搬送アーム16はロードロック室10に戻り、ゲート3aが閉鎖される。
上端にトレイ15を支持した昇降ピン18は、図1において二点鎖線で示す上昇位置から基板サセプタ9に向けて降下する。図8B、図8C、図10B、及び図10Cを参照すると、トレイ15は下面15cが基板サセプタ9の誘電体板23のトレイ支持面28まで降下し、トレイ15は誘電体板23のトレイ支持面28によって支持される。トレイ15がトレイ支持面28に向けて降下する際に、誘電体板23の基板載置部29A〜29Dがトレイ15の対応する基板収容孔19A〜19D内にトレイ15の下面15c側から進入する。トレイ15の下面15cがトレイ支持面28に近付くのに伴い、基板載置部29A〜29Dの先端の基板載置面31は基板収容孔19A〜19D内をトレイ15の上面15bに向かって進む。図8C及び図10Cに示すように、トレイ15の下面15cが誘電体板23のトレイ支持面28に載置されると、個々の基板収容孔19A〜19D内の基板2は基板載置部29A〜29Dによって基板支持部21の突起76A〜76Cの上面76aから持ち上げられる。詳細には、基板2はその下面2aが基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に載置され、トレイ15の基板支持部21の突起76A〜76Cの上面76aに対して間隔を隔てて上方に配置される。
このようにトレイ15の基板収容孔19A〜19D内に基板載置部29A〜29Dが進入することにより、基板2は基板載置面31に載置される。従って、トレイ15に収容された4枚の基板2は、いずれも高い位置決め精度で基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に載置される。
続いて、高周波電源7からICPコイル5に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる(着火)。
次に、誘電体板23に内蔵された静電吸着用電極40に対して直流電圧印加機構43から直流電圧が印加され、個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に基板2が静電吸着される。基板2の下面2aはトレイ15を介することなく基板載置面31上に直接載置されている。従って、基板2は基板載置面31に対して高い密着度で保持される。
さらに、個々の基板載置部29A〜29Dの円環状突出部32と基板2の下面2aで囲まれた空間に、供給孔44を通って伝熱ガス供給装置45から伝熱ガスが供給され、この空間に伝熱ガスが充填される。
その後、エッチングガス供給源12からチャンバ3内にエッチングガスが供給され、真空排気装置13によりチャンバ3内は所定圧力に維持される。また、高周波電源7からICPコイル5に印加する高周波電圧を上昇すると共に、高周波印加機構56により基板サセプタ9の金属板24にバイアス電圧を印加し、プラズマにより基板2をエッチングする。1枚のトレイ15で4枚の基板2を基板サセプタ9上に載置できるので、バッチ処理が可能である。
エッチング中は、冷媒循環装置61によって冷媒流路60中で冷媒を循環させて金属板24を冷却し、それによって誘電体板23及び誘電体板23の基板載置面31に保持された基板2を冷却する。前述のように、基板2はその下面2aがトレイ15を介することなく基板載置面31に直接載置され、高い密着度で保持されている。従って、円環状突出部32と基板2の下面2aで囲まれた伝熱ガスが充填されている空間の密閉度が高く、伝熱ガスを介した基板2と基板載置面31との間の熱伝導性が良好である。その結果、個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に保持された基板2を高い冷却効率で冷却できるので、高い高周波パワーを供給してドライエッチングの効率を向上できる。また、基板2の温度を高精度で制御できる。また、個々の基板2毎に基板載置部29A〜29Dの円環状突出部32と下面2aで囲まれた空間に伝熱ガスが充填される。換言すれば、伝熱ガスが充填される空間は個々の基板2毎に異なる。この点でも個々の基板2と誘電体板23の基板載置面31との熱伝導性が良好であり、高い冷却効率と高精度の温度制御を実現できる。
誘電体板23は冷却循環装置61で冷却される金属板24との熱伝導により冷却される。しかし、誘電体板23のトレイ支持面28と、その上に載置されたトレイ15の下面15cは、表面粗度が比較的大きく、いずれも6μm〜10μm程度の凹凸を有する(図14Aから図14Cに誇張して示す。)。このように表面粗度の比較的大きい2つの面(トレイ支持面28と下面15c)が微視的に視ると点接触的な態様で接触するため、トレイ15と誘電体板23との間の熱伝導性は、静電吸着と伝熱ガスの供給を行っている基板2と誘電体板23との間の熱伝導性と比較すると大幅に低い。従って、トレイ15の冷却効率は基板2の冷却効率よりも低く、トレイ15はプラズマからの熱吸収により基板2よりも大幅に高温となる。例えば、基板2の温度を50℃〜100℃程度に制御した場合でも、エッチング処理中のトレイ15の温度は250℃以上程度まで上昇する。
エッチング終了後、高周波電源7からICPコイル5への高周波電圧の印加と、高周波印加機構56から金属板24へのバイアス電圧の印加を停止する。続いて、真空排気装置13によりエッチングガスをチャンバ3内から排気する。また、伝熱ガス供給機構45により基板載置面31と基板2の下面2aから伝熱ガスを排気する。さらに、直流電圧印加機構43から静電吸着用電極40への直流電圧の印加を停止して基板2の静電吸着を解除する。また、昇降ピン18の突き上げ動作によりトレイ15と基板2を除電する。
除電後、昇降ピン18が上昇し、その上端でトレイ15の下面15cが押し上げられ誘電体板23のトレイ支持面28から浮き上がる。昇降ピン18と共にトレイ15がさらに上昇すると、図8B及び図10Bに示すように、トレイ15の基板支持部21の突起76A〜76Cにより基板2の下面2aが押し上げられ、基板2は基板載置部29A〜29Dの基板載置面31から浮き上がる。つまり、トレイ15が上昇することで、基板載置部29A〜29Dからトレイ15の基板収容孔19A〜19Dへ基板2が受け渡される。昇降ピン18は図1において二点鎖線で示す上昇位置に上昇する。
その後、ゲート3aを通ってロードドック室10からチャンバ3内に進入した搬送アーム16に、トレイ15が移載される。トレイ15は搬送アーム16によってチャンバ3からロードドック室10へ搬出される。
トレイ15を搬入した後にロードロック室10を大気開放する(ロードロック室10内を真空環境から大気環境に切り換える。)。その後、搬送アーム16がゲート10aを介してトレイ15をロードロック室10からアラインメント台71へ搬出する。最後に、搬送アーム73がアラインメント台71のトレイ15をカセット72Bに収納する。
前述のようにドライエッチング終了後のトレイ15は基板2と比較して大幅に高温となっている。また、トレイ15を搬入後にロードロック室10を大気開放して大気環境とすると、真空環境と比較してトレイ15と基板2との間の熱伝導効率は大幅に高くなる。しかし、トレイ15の基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2は、基板支持部21に対して面接触的な態様で支持されるのではなく、3個の突起76A〜76Cによって点接触的な態様で基板支持部21に支持される。つまり、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2とトレイ15の基板支持部21との接触面積が小さので、トレイ15から基板2への熱伝導が抑制される。従って、ドライエッチング後にチャンバ3からトレイ15を搬入したロードロック室10を大気開放したときの、トレイ15からの熱伝導による基板2(特に外周縁部)の温度上昇を低減できる。
このように本実施形態のドライエッチング装置1は、ドライエッチング後におけるトレイ15からの熱伝導に起因する基板2の温度上昇を低減できるので、放熱や熱伝導等によるトレイ15の冷却の放熱のためにドライエッチング後もトレイ15をチャンバ3内で待機させる時間(待機時間)を設ける必要がなく、スループットを向上できる。
また、トレイ15の基板支持部21に突起76A〜76Cを設け、これらの突起76A〜76Cをトレイ15の下面15cに点接触的な態様で接触させるだけの比較的簡易な構成で、ドライエッチング後におけるトレイ15からの熱伝導に起因する基板2の温度上昇低減を実現できる。そのため、トレイ15を冷却するためにチャンバ3外の真空中にドライエッチング後のトレイ15を冷却するための冷却室を設ける必要もない。この点で、装置の簡素化とコスト減を実現できる。
トレイ15を繰り返して基板2のドライエッチングに使用すると、トレイ15自体がエッチングされることによる削れが、図8Cにおいて二点鎖線で示すように進行する。基板2の端面2bとトレイ15の孔壁15bの隙間の寸法大きい場合、特に、図8Cにおいて符号Aで示す基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dと環状部74の上面74aの接続部分での削れの進行が著しい。しかし、本実施形態では、削れの進行が著しい部分Aで基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2をトレイ15に支持しているのではなく、突起76A〜76Cの上面76aで基板2をトレイ15に支持している。従って、トレイ15自体の削れの進行が基板2の支持精度に対して及ぼす影響が小さく、トレイ15の使用寿命が長い。
(第2実施形態)
図11から図15Cに示す本発明の第2実施形態では、基板2の下面2aを点接触的な態様でトレイ15に支持するための突起76A〜76Cを設ける代わりに、トレイ15の下面15cにポリイミドテープ91を貼り付けている。ポリイミドテープ91の貼り付けは、真空貼付と熱圧着のいずれか一方又は両方の手法により行うことができる。ポリイミドテープ91はポリイミド製のテープ基材(伝熱材層)92と、このテープ基材92の一方の面に形成された接着材層93を備える。熱圧着する場合は、接着材層93がなくても良く、これにより長期間使用する場合のポリイミドテープ91が熱圧着されているトレイ15の下面15cのエッジから接着材層が剥れる等の問題が生じない。トレイ15の下面15cとテープ基材92との間に接着材層93が介在している。真空貼付による貼り付けの場合、ポリイミドテープ91とトレイ15の下面15cとの間に気泡等が存在せず、両者の密着度が高い。そのため、トレイ15とポリイミドテープ91との間の熱伝導性が良好である。図12において、二点鎖線で示すように、ポリイミドテープ91は、誘電体板23の基板載置部29A〜29C及び昇降ピン18の突出位置に開口が形成された円板状である。
ポリイミドは耐熱性、絶縁性、柔軟性、耐プラズマ性、及び耐Cl性が良好である点でテープ基材92の材質として適している。これらの性質が良好である他の樹脂材料をテープ基材92の材質として採用してもよい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))も、耐熱性、絶縁性等の特性がテープ基材92の材質として適している。また、ポリイミドテープ91等の樹脂テープの真空貼付に代えて、前述の性質を有する樹脂材料の層を溶射等によってトレイ15の下面15cに直接的形成してもよい。テープ基材92の厚みは20μm〜50μm程度である。
図13Bに最も明瞭に示すように、基板支持部21は突起76A〜76C(図7C参照)を備えていない。図13A、図14A、及び図14Bに最も明瞭に示すように、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2は、外周縁部の下面2aが環状部74の上面74aに載置されることで支持される。
ロードロック室10からチャンバ3内に搬入された基板2を収容したトレイ15は、図15Aに示すように昇降ピン18の上端で支持され、昇降ピン18の降下に伴って基板サセプタ9に向けて降下する。図14B、図14C、図15B、及び図15Cを参照すると、トレイ15はポリイミドテープ91を貼り付けた下面15cが誘電体板23のトレイ支持面28に載るまで降下し、トレイ15はポリイミドテープ91を介してトレイ支持面28によって支持される。この状態では、基板2はトレイ15の基板支持部21の環状部74の上面74aより所定量離間して、基板載置部29A〜29Cの基板載置面31上に受け渡され支持される。
直流電圧印加機構43から静電吸着用電極40に対する直流電圧の印加により基板2を基板載置面31に静電吸着する。プラズマを発生させ、基板サセプタ9の金属板24にバイアス電圧を印加すると、基板サセプタ9の誘電体板23のトレイ支持面28により下面15cを支持されているトレイ15上にマイナスのシース電位が生じ、絶縁性を有するポリイミドテープ91(ポリイミド製のテープ基材92)内の電位が分極し、その結果トレイ15は誘電体板23のトレイ支持面28に自己静電吸着する。この自己静電吸着によりトレイ15の下面15cがトレイ支持面28に押し付けられる。
図14Aから図14Cに誇張して示すように、誘電体板23のトレイ支持面28は表面粗度が比較的大きく、6μm〜10μm程度の凹凸を有する。しかし、トレイ15の下面15cにはトレイ15を構成するアルミナ等の材料と比較して大幅に柔軟性が高いポリイミドテープ91が真空貼付されている。そのため、自己静電吸着によって押し付けられたトレイ15の下面15cは、ポリイミドテープ91(特にテープ基材92)が変形することで凹凸を有するトレイ支持面28に対して密着する。つまり、ポリイミドテープ91が介在することで、トレイ15の下面15cはトレイ支持面28に対して点接触的な態様で接触するのではなく、トレイ支持面28に対する接触面積が大きく、かつ密着度も高い。そのため、トレイ15と誘電体板23との間の熱伝導性が良好である。また、前述のようにポリイミドテープ91は真空貼付しているのでトレイ15との間の熱伝導性も良好である。このようにトレイ15とポリイミドテープ91の熱伝導性と、ポリイミドテープ91と誘電体板23(トレイ支持面28)の熱伝導性がいずれも良好である。その結果、ドライエッチング中にプラズマからトレイ15が吸収した熱は、ポリイミドテープ91を介して誘電体板23(冷却循環装置61で冷却される金属板24との熱伝導により冷却されている。)に良好な熱伝導効率で伝わり、トレイ15が効果的に冷却される。例えば、基板2の温度を50℃〜100℃程度に制御した場合、効果的な冷却によりエッチング終了時のトレイ15の温度上昇は150℃〜200℃程度に低減される。仮にポリイミドテープ91を介さずにトレイ15を誘電体板23に載置させたとすると、エッチング処理中のトレイ15の温度は250℃以上程度まで上昇する。
エッチング終了後、トレイ15はロードロック室10に搬送され、さらにロードロック室10が大気開放される。この大気開放により、トレイ15と基板2との間の熱伝導効率は大幅に高くなる。しかし、ドライエッチング中のトレイ15自体の温度上昇が抑制されているので、大気開放後のトレイ15からの熱伝導による基板2(特に外周縁部)の温度上昇を低減できる。
このように本実施形態のドライエッチング装置1は、ドライエッチング後におけるトレイ15からの熱伝導に起因する基板2の温度上昇を低減できるので、放熱や熱伝導等によるトレイ15の冷却のためにドライエッチング後のトレイ15の待機時間を設ける必要がなく、スループットを向上できる。
また、トレイ15の下面15cにポリイミドテープ91を真空貼付するだけの比較簡易な構成でドライエッチング後におけるトレイ15からの熱伝導に起因する基板2の温度上昇低減を実現でき、トレイ15を冷却するためにチャンバ3外の真空中にドライエッチング後のトレイ15を冷却するための冷却室を設ける必要もない。この点で、装置の簡素化とコスト減を実現できる。
1枚のトレイ15を繰り返してエッチング処理に使用した場合、そのトレイ15についてエッチング処理による温度上昇及び温度低下のサイクルが繰り返される。しかし、本実施形態では、トレイ15自体が冷却されるため、1枚のトレイ15を繰り返してエッチングに使用した場合でも温度の上昇と低下のサイクルにより生じる温度差(絶対値)を小さくできる。その結果、トレイ15を長期間してエッング処理を繰り返した場合でも、温度昇降のサイクルが繰り返されることによるトレイ15の撓みや損傷が発生しにくい。また、トレイ15自体が冷却されるので、エッチングされることによりトレイ15の削れの進行を抑制できる。これらの点で、トレイ15の使用寿命を延ばす効果がある。
第2実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
(第3実施形態)
図16から図20Cに示す本発明の第3実施形態では、第1実施形態の点接触的な態様でのトレイ15への基板2の支持(突起76A〜76C)と、第2実施形態のポリイミドテープ91の両方を採用している。
図18Bに最も明瞭に示すように、基板支持部21には、基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dのトレイ15の下面15c側から突出する環状部74(孔壁15dの全周に設けられている。)の上面74aに等角度間隔で突起76A〜76Cが設けられている。これらの突起76A〜76Cは、環状部74の幅全体に延在し、上面76aは水平方向に延びる平坦面である。基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2は、外周縁部の下面2aが突起76A〜76Cの上面76a上に載置されることで、点接触的な態様(3点支持)で基板2を支持する基板支持部21に支持される。
また、ポリイミド製のテープ基材(伝熱材層)92と、このテープ基材92の一方の面に形成された接着材層93を備えるポリイミドテープ91をトレイ15の下面15cに真空貼付や熱圧着により貼り付けている。
ロードロック室10からチャンバ3内に搬入された基板2を収容したトレイ15は、図20Aに示すように昇降ピン18の上端で支持され、昇降ピン18の降下に伴って基板サセプタ9に向けて降下する。図19B、図19C、図20B、及び図20Cを参照すると、トレイ15はポリイミドテープ91を貼り付けた下面15cが基板サセプタ9の誘電体板23のトレイ支持面28まで降下し、トレイ15はポリイミドテープ91を介してトレイ支持面28によって支持される。この状態では、基板2はトレイ15の基板支持部21の環状部74の上面76aの突起76A〜76Cより所定量離間して、基板載置部29A〜29Cの基板載置面31上に受け渡され支持される。
直流電圧印加機構43から静電吸着用電極40に対する直流電圧の印加により基板2を基板載置面31に静電吸着する。プラズマを発生させ、基板サセプタ9の金属板24にバイアス電圧を印加すると、基板サセプタ9の誘電体板23のトレイ支持面28により下面15cを支持されているトレイ15上にマイナスのシース電位が生じ、絶縁性を有するポリイミドテープ91(ポリイミド製のテープ基材92)内の電位が分極し、その結果トレイ15は誘電体板23のトレイ支持面28に自己静電吸着する。この自己吸着によりトレイ15の下面15cがトレイ支持面28に押し付けられる。
図19Aから図19Cに誇張して示すように、誘電体板23のトレイ支持面28は表面粗度が比較的大きく、6μm〜10μm程度の凹凸を有する。しかし、自己静電吸着によって押し付けられたトレイ15の下面15cは、高い柔軟性を有するポリイミドテープ91(特にテープ基材92)が変形することで凹凸を有するトレイ支持面28に対して密着する。そのため、トレイ15と誘電体板23との間の熱伝導性が良好である。また、ポリイミドテープ91は真空貼付しているのでトレイ15との間の熱伝導性が良好である。このようにトレイ15とポリイミドテープ91の熱伝導性と、ポリイミドテープ91と誘電体板23(トレイ支持面28)の熱伝導性がいずれも良好であるため、ドライエッチング中にプラズマからトレイ15が吸収した熱は、ポリイミドテープ91を介して誘電体板23に良好な熱伝導効率で伝わる。その結果、ドライエッチング中のトレイ15が効果的に冷却される。例えば、基板2の温度を50℃〜100℃程度に制御した場合、効果的な冷却によりエッチング処理中のトレイ15の温度上昇は150℃〜200℃程度に低減される。仮にポリイミドテープ91を介さずにトレイ15を誘電体板23に載置させたとすると、エッチング処理中のトレイ15の温度は250℃以上程度まで上昇する。
エッチング終了後、トレイ15はロードロック室10に搬送され、さらにロードロック室10が大気開放される。この大気開放により、トレイ15と基板2との間の熱伝導効率は大幅に高くなる。しかし、以下の2点の相乗効果により、大気開放後のトレイ15からの熱伝導による基板2(特に外周縁部)の温度上昇を低減できる。
まず、トレイ15の基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2は、基板支持部21に対して面接触的な態様で支持されるのではなく、3個の突起76A〜76Bによって点接触的な態様で基板支持部21に支持される。つまり、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2とトレイ15の基板支持部21との接触面積が小さので、大気開放後のトレイ15から基板2への熱伝導が抑制される。
また、ポリイミドテープ91を下面15cに貼り付けたことにより、ドライエッチング中にトレイ15の効果的に冷却してトレイ15自体の温度上昇が抑制されているので、大気開放後のトレイ15からの熱伝導による基板2(特に外周縁部)の温度上昇を低減できる。
さらに、トレイ15自体を冷却するので、温度昇降のサイクルが繰り返しによるトレイ15の撓みや損傷が発生しにくく、トレイ15のエッチングによる削れの進行も抑制できるので、トレイ15の使用寿命を延ばす効果がある。
第3実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図21及び図22は、伝熱材層としてのポリイミドテープに関する代案を示す。図21の例では、トレイ15の下面にはポリイミドテープを貼り付けていないが、誘電体板23のトレイ支持面28にポリイミドテープ191を真空貼付や熱圧着により貼り付けている。この場合、ポリイミドテープを貼り付けない分だけトレイ15の単価が安くなり、特に多数枚のトレイ15を使用する場合にコスト減の効果が期待できる。図22の例では、トレイ15の下面と誘電体板23のトレイ支持面28の両方に真空貼付や熱圧着によりポリイミドテープ91,191を貼り付けている。この場合、トレイ15の下面とトレイ支持面28との間の密着性が向上するので、トレイ15と誘電体板23との熱伝導性のさらなる向上によるトレイ15のより効果的な冷却が期待できる。一方、第2実施形態のように、トレイ15の下面にのみポリイミドテープ91を貼り付けた場合、すなわちトレイ支持面28にはポリイミドテープ191を貼り付けない場合には、メンテナンスが容易となるという効果がある。以下この点について説明する、図21及び図22のような誘電体板23側に貼り付けたポリイミドテープ191は、プラズマに曝露される期間が長くいため、トレイ15の下面がトレイ支持面28に密着して載置される部分の端部側等から侵入する僅かなプラズマによっても剥れや劣化等が起る。このポリイミドテープ191の剥がれや劣化等は、トレイ15と基板支持面28の密着性の悪化や、パーティクル発生等の問題が生じる。これを防ぐために、誘電体板23の定期的なメンテナンスを行い、誘電体板23のトレイ支持面28に貼り付けたポリイミドテープ191の貼り替えが必要になり、このメンテナンスに伴う設備停止が必要となる。また、トレイ支持面28に貼り付けたポリイミドテープ191の貼り替えは、煩雑な作業を必要とする。第2実施形態のように、トレイ15の下面にのみポリイミドテープ91を貼り付けた場合には、煩雑な作業である誘電体板23側のポリイミドテープを貼り替える必要がなく、メンテナンスの頻度が減る。
図23Aから図26Cは、トレイ15の基板支持部21に採用し得る種々の構造を示す。これらの構造は、第1実施形態のようにトレイ15の下面15cにポリイミドテープ91を貼り付けない場合、及び第3実施形態のようにトレイ15の下面15cにポリイミドテープ91を貼り付ける場合のいずれであっても採用できる。
図23Aから図23Cに示す例では、環状部74の上面74aに突起76A〜76Cを設けているが、これらの突起76A〜76Cの幅を第1及び第3実施形態よりも大きく設定している。
図24Aから図24Cに示す例では、孔壁15dから突出する突起76A〜76Cを等角度間隔で設けている。具体的には、個々の突起76A〜76Cはトレイ15の上面15bと孔壁15dの接続位置から孔壁15dと環状部74の上面74aの接続位置まで延びている。また、突起76A〜76Cの上面76aは孔壁15dに沿って延びる平坦面であり、孔壁15dと同様に水平方向に対して傾斜している。
トレイ15の上面15b側から基板2を基板収容孔19A〜19Dに入れると、基板2の外周縁部(より具体的には下面2aと端面2bの接続部分のエッジ)が、突起76A〜76Cの上面76aで案内されて降下する。従って、基板2を基板収容孔19A〜19Dに入れる際に、基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dは基板2のエッジに接触しない。そして、図24Bに示すように、下面2aと端面2bの接続部分のエッジが突起76A〜76Cの下端側(環状部74の上面74aに近い位置)の上面76aで支持される。そのため、基板2は反りを有するか否かにかかわらず、外周縁部の3箇所が突起76A〜76Cによって点接触的な態様(3点支持)で基板支持部21に支持される。
図25Aから図25Cに示す例では、孔壁15dと環状部74の上面74aの両方にわたって延びる突起76A〜76Cを等角度間隔で設けている。具体的には、個々の突起76A〜76Cは、孔壁15dから突出する上側部分76bと、この上側部分76bと連続して環状部74の環状部74の上面74aから突出する下側部分76cとを備える。突起76A〜76Cの上側部分76bの上面76aは孔壁15dに沿って傾斜した平坦面であり、下側部分76cの上面76aは水平方向に延びる平坦面である。
トレイ15の上面15b側から基板2を基板収容孔19A〜19Dに入れると、基板2の外周縁部(より具体的には下面2aと端面2bの接続部分のエッジ)が、突起76A〜76Cの上側部分76bの上面76aで案内されて降下する。従って、基板2を基板収容孔19A〜19Dに入れる際に、基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dは基板2のエッジに接触しない。そして、図25Bに示すように、基板2の外周縁部の下面2aが突起76A〜76Cの下側部分76cの上面76aで支持される。そのため、基板2は反りを有するか否かにかかわらず、外周縁部の3箇所が突起76A〜76Cによって点接触的な態様(3点支持)で基板支持部21に支持される。
図26Aから図26Cに示す例では、環状部74の上面74aが基板接触部として機能する。環状部74の上面74aは基板収容孔19A〜19Cの中心に向けて孔壁15dよりも小さい傾斜角度βで水平方向に対して傾斜している。傾斜角度βは傾斜角度αよりも十分小さく、かつ45°未満に設定される。例えば、孔壁15dの傾斜角度αが75°である場合、環状部74の上面74aの傾斜角度βは8°程度に設定される。
トレイ15の上面15b側から基板2を基板収容孔19A〜19Dに入れると、基板2の外周縁部(より具体的には下面2aと端面2bの接続部分のエッジ)が、基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dで案内されて降下する。そして、図26Bに示すように、基板2のエッジが環状部74の上面74aに接触し、それによって基板2が支持される。そのため、基板2が非軸対称の反りを有する場合には、基板2の外周縁部が点接触的な態様(複数点支持)で基板支持部21に支持される。一方、基板2が軸対称の反りを有する場合、又は基板2が反りを有しない場合には、外周縁部の全周(エッジの全周)が基板支持部21に支持される。基板2が線接触的な態様で基板支持部21に支持される場合でも、面接触的な態様での支持と比較すると、基板2とトレイ15の接触面積は小さい。従って、この場合でも、ドライエッチング後にチャンバ3からトレイ15を搬入したロードロック室10を大気開放したときの、トレイ15から基板2への熱伝導を抑制して基板2(特に外周縁部)の温度上昇を低減できる。
図27A及び図27Bは、誘電体板23の代案を示す。この代案は、第1から第3実施形態のいずれにも適用できる。基板載置面31に、供給孔44から放射状に延びる4つの直線状溝34と、円環状突出部32の内側に配置された円環状溝35を設けている。直線状溝34と円環状溝35は互いに連通している。これら直線状溝34と円環状溝35を設けることにより、供給孔44から噴出される伝熱ガスが基板2の下面2aと基板載置面31の間の空間内に均等に拡散する。その結果、基板2の冷却効率と温度制御の精度をさらに高めることができる。
(実験例)
本発明による基板の温度上昇低減効果を確認するための実験を行った。具体的には、従来のトレイと本発明にかかるトレイ15を使用してドライエッチング処理を実行し、ドライエッチング処理中、エッチング後にロードロック室10に搬出してロードロック室を大気開放する前、及びロードロック室10を大気開放後のそれぞれについて基板2やトレイ15の温度を測定した。さらに詳細には、従来例に相当する3つの比較例1〜3と本発明の実施形態に相当する2つの実験例1,2について温度測定を実行した。
比較例1〜3では第2実施形態のトレイ15(図12〜図13B)の下面15cからポリイミドテープ91をなくしたものを使用した。すなわち、比較例1〜3は、環状部74の上面74aで基板2の外周縁部の下面2aを面接触的な態様で支持し、かつポリイミドテープ91を設けることによるトレイ15自体の冷却も実行しない例である。比較例1では、エッチング処理の修理後、時間をあけずにトレイ15をチャンバ3からロードロック室10に搬出する(待機時間は0分)。一方、比較例2,3では、エッチング処理の終了後、予め定められた待機時間(比較例2では2分、比較例3では5分)が経過した後、トレイ15をチャンバ3から搬出する。待機時間の間、チャンバ3内は真空雰囲気であり大気による熱伝導は生じないため、トレイ15は誘電体板23のトレイ支持面28との伝熱(トレイ15は、トレイ支持面28にポリイミドテープ91を介さずに直接接触して載置される)によって冷却される。
実験例1では第1実施形態のトレイ15(図6Aから図7C)を使用した。すなわち、実験例1は、トレイ15が基板2を点接触的な態様又は線接触的な態様で支持するが、トレイ15とトレイ支持面28との間にポリイミドテープ91を設けることによるトレイ自体の冷却は実行しない例である。一方、実験例2では第2実施形態のトレイ15(図12から図13B)を使用した。すなわち、実験例2は、トレイ15とトレイ支持面28との間にポリイミドテープ91を設けることによるトレイ自体の冷却を実行するが、トレイ15は基板2の外周縁部を面接触的な態様で支持する(点接触的な態様や線接触的な態様で基板2を支持しない)例である。実験例1,2では、いずれもエッチング処理の終了後、時間をあけずにトレイ15をチャンバ3からロードロック室10に搬出し、比較例2,3のような待機時間は設けない(待機時間は0分)。
以下の条件については、比較例1〜3及び実験例1,2について共通である。基板2は2inchのサファイア基板(厚さが520μm程度)を使用した。トレイ15は図4Bに示すように7枚の基板2を収容するものを使用した。主なエッチング条件は以下の通りであった。エッチングガスはCl2ガスを使用し供給量は50sccmとした。チャンバ3内の圧力は1.0Pa、ICPコイル5に供給する高周波電力と基板サセプタ9に供給するバイアス電力はそれぞれ400Wと300Wとした。静電吸着用電極40に印加する直流電圧は1000Vとした。基板2と基板載置面31の間の空間への伝熱ガス(He)の充填圧力は1200Paとした。天板4、チャンバ3の側壁、及び誘電体板23の温度はそれぞれ100℃、100℃、及び15℃とした。
比較例1〜3及び実験例1,2の実験結果を、以下の表1〜5に示す。
比較例1(表1)については、エッチング処理中、基板2は中央部と外周縁部の両方が76℃に維持されるが、トレイ15の温度は254℃以上となる。そして、ロードロック室10の大気開放前の基板2は中央部が76℃で外周縁部が93℃であるのに対し、ロードロック室10を大気開放すると中央部が93℃で外周縁部が130℃であり、トレイ15からの熱伝導によって基板2の温度が大幅に上昇している。特に、基板2の外周縁部の温度は、ロードロック室10の大気開放前後で約40℃上昇している。
比較例2(表2)については、エッチング処理中の基板2とトレイ15の温度は比較例1と同一である。ロードロック室10の大気開放前の基板2は中央部が76℃で外周縁部が93℃であるのに対し、ロードロック室10を大気開放すると中央部が82℃で外周縁部が120℃であり、トレイ15からの熱伝導によって基板2の温度上昇は僅かに低減されている。これはチャンバ3内での2分間の待機時間中にトレイ15の温度が若干低下したことに起因する。しかし、ロードロック室10を大気開放した時の基板2の温度は中央部と外周縁部の両方でいずれも依然として高温であり、基板2は十分に冷却されていない。
比較例3(表3)については、エッチング処理中の基板2とトレイ15の温度は比較例1と同一である。ロードロック室10の大気開放前の基板2は中央部が76℃で外周縁部が93℃であるのに対し、ロードロック室10を大気開放すると中央部が82℃で外周縁部が98℃であり、トレイ15からの熱伝導による基板2の外周縁部の温度上昇は比較例1,3との比較では効果的に低減されている。これはチャンバ3内での待機時間を比較例2(2分)の2倍以上である5分に設定し、その間にトレイ15の温度が低下したことに起因する。しかし、この比較例3のようにエッチング処理後のチャンバ3内での待機時間を長く設定すると、スループットが低下する。また、ロードロック室10の大気開放時の基板2の外周縁部の温度は98℃であり、基板2の中央部の温度が82℃であるのに対してやや高温である。
実験例1(表4)についても、エッチング処理中の基板2とトレイ15の温度は比較例1と同一である。ロードドック室10の大気開放前の基板2の温度は、中央部では比較例1〜3と同一の76℃であるが、外周縁部では76℃であり比較例1〜3(93℃)よりも低い。また、ロードロック室10を大気開放後の基板2の温度は、中央部では82℃で外周縁部では87℃であり、ロードロック室10の大気開放前後の基板2の温度上昇は、中央部では6℃で、外周縁部では11℃である。比較例1,2の場合、ロードロック室10の大気開放前後の基板2の外周縁部の温度上昇はそれぞれ37℃と27℃であり、実験例1ではロードロック室10の大気開放前後の基板2の外周縁部の温度上昇が効果的に低減されている。また、5分間もの待機時間を設けた比較例3と比較すると、ロードロック室10の大気開放後の基板2の外周縁部の温度は、比較例3では98℃であるのに対して実験例1では87℃である。これらの点から、突起76A〜76Cによる点接触的な態様でトレイ15に基板2を支持することによって、待機時間を設けていないにもかかわらず、基板2の外周縁部の温度上昇が効果的に低減されることが確認できる。
実験例2(表5)については、エッチング処理中、基板2は中央部と外周縁部の両方が比較例1〜3の場合と同じ76℃に維持される。しかし、エッチング処理中のトレイ15の温度は、比較例1〜3では254℃以上となるに対して、実験例2では154℃以下となっている。この点で基板15の下面15cにポリイミドテープ91を真空貼付けたことによりエッチング処理中のトレイ15が効果的に冷却されていることが確認できる。また、ロードロック室10の大気開放前の基板2の温度は、中央部では76℃で外周縁部では82℃である。これに対し、ロードロック室10の大気開放後の基板2の温度は、中央部では82℃で外周縁部では87℃である。ロードロック室10の大気開放前後の基板2の温度上昇は、中央部では6℃で外周縁部では5℃であり、比較例1(27℃)や比較例2(37℃)と比較して大幅に低減されている。また、5分もの大気時間を設けた比較例3を比較すると、ロードロック室10の大気開放後の基板2の外周縁部の温度は、比較例3では98℃であるのに対して実験例2では87℃である。これらの点から、ポリイミドテープ91を真空貼付することでエッチング処理中のトレイ15の温度を低減することで、待機時間を設けていないにもかかわらず、基板2の外周縁部の温度上昇が効果的に低減されることが確認できる。
ICP型のドライエッチング処理装置を例に本発明を説明したが、平行平板型のRIE(リアクティブイオン)型のドライエッチング、プラズマCVD用プラズマ処理装置等の他のプラズマ処理装置にも本発明を適用できる。