(第1参考例)
図1及び図2は、本発明の第1参考例に係るICP(誘導結合プラズマ)型のドライエッチング装置1を示す。
ドライエッチング装置1は、その内部が基板2にプラズマ処理を行う処理室を構成する減圧可能なチャンバ(真空容器)3を備える。チャンバ3の上端開口は石英等の誘電体からなる天板4により密閉状態で閉鎖されている。天板4上にはICPコイル5が配設されている。ICPコイル5にはマッチング回路6を介して、高周波電源7が電気的に接続されている。天板4と対向するチャンバ3内の底部側には、バイアス電圧が印加される下部電極としての機能及び基板2の保持台としての機能を有する基板サセプタ9が配設されている。
チャンバ3には、隣接するロードドック室10(図2参照)と連通する開閉可能な搬入出用のゲート3aが設けられている。また、チャンバ3に設けられたエッチングガス供給口3bには、エッチングガス供給源12が接続されている。エッチングガス供給源12はMFC(マスフローコントローラ)等を備え、エッチングガス供給口3bから所望の流量でエッチングガスを供給できる。さらに、チャンバ3に設けられた排気口3cには、真空ポンプ等を備える真空排気装置13が接続されている。
本参考例では、図3から図4Bに示す1個のトレイ15に4枚の基板2が収容され、トレイ15はゲート3aを通ってロードドック室10からチャンバ3内(処理室)に搬入される。図2を参照すると、水平方向の直進移動(矢印A参照)と水平面内での回転(矢印B参照)が可能な搬送アーム16が設けられている。また、チャンバ3内には、基板サセプタ9を貫通し、かつ駆動装置17で駆動されて昇降する昇降ピン18が設けられている。トレイ15の搬入時には、トレイ15を支持した搬送アーム16がゲート3aを通ってロードドック室10からチャンバ3内に進入する。この際、図1において二点鎖線で示すように昇降ピン18は上昇位置にあり、チャンバ3内に進入した搬送アーム16から昇降ピン18の上端にトレイ15が移載される。この状態では、トレイ15は基板サセプタ9の上方に間隔をあけて位置している。続いて、昇降ピン18が図1において実線で示す降下位置に降下し、それによってトレイ15と基板2が基板サセプタ9上に載置される。一方、プラズマ処理終了後のトレイ15の搬出時には、昇降ピン18が上昇位置まで上昇し、続いてロードドック室10からチャンバ3内に進入した搬送アーム16にトレイ15が移載される。
次に、図3から図4B及び図6Aから図6Dを参照して、トレイ15について説明する。トレイ15は薄板円板状のトレイ本体15aを備える。本参考例におけるトレイ本体15aの材料としては、例えばアルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y2O3)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)等のセラミクス材を含む誘電体材料を使用できる。アルマイトで被覆したアルミニウム、表面にセラミクスを溶射したアルミニウム、樹脂材料で被覆したアルミニウム等の金属であってもよい。Cl系プロセスの場合にはアルミナ、イットリア、炭化シリコン、窒化アルミニウム等、F系プロセスの場合には石英、水晶、イットリア、炭化シリコン、アルマイトを溶射したアルミニウム等を採用することが考えられる。
トレイ本体15aの下面15cには、導電層201が形成されている。本参考例では、トレイ本体15aの下面15cにトレイ本体15aを構成する材料とは異なる導電体材料で層を形成することで、導電層201を形成している。本参考例における導電層201の材料としては、アルミニウム、アルミニウム以外の金属、ポリシリコン、ITO(酸化インジウムスズ)等の少なくともトレイ本体15よりも高い導電性を有する材料を使用できる。
導電層201は、トレイ本体15a自体を構成する誘電体材料に不純物を添加し、トレイ本体15aの下面15c側の抵抗値を他の部分よりも低くすることでも形成できる。
トレイ本体15aの下面15cに形成された導電層201の表面には、研磨処理を施しており表面粗度を低下してさせている。
トレイ本体15aには、上面15bから下面15cまで厚み方向に貫通する4個の基板収容孔19A〜19Dが設けられている。基板収容孔19A〜19Dは、上面15b及び下面15cから見てトレイ本体15aの中心に対して等角度間隔で配置されている。図8Aから図8Cに最も明瞭に示すように、基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dの下面15c側には、基板収容孔19A〜19Dの中心に向けて突出する基板支持部21が設けられている。本参考例では、基板支持部21は孔壁15dの全周に設けられており、平面視で円環状である。個々の基板収容孔19A〜19Dに周方向に互いに間隔をあけて配置した複数の基板支持部21を設けてもよい。
個々の基板収容孔19A〜19Bにはそれぞれ1枚の基板2が収容される。図8Aに示すように、基板収容孔19A〜19Bに収容された基板2は、その下面2aの外周縁部分が基板支持部21の上面21aに支持される。また、前述のように基板収容孔19A〜19Dはトレイ本体15aを厚み方向に貫通するように形成されているので、トレイ本体15aの下面15c側から見ると、基板収容孔19A〜19Dにより基板2の下面2aが露出している。
トレイ本体15aには、外周縁を部分的に切り欠いた位置決め切欠15eが設けられている。図2に示すように、前述の搬入出用の搬送アーム16にトレイを載置する際に、位置決め切欠15eに搬送アーム16の位置決め突起16aが嵌め込まれる。位置決め切欠15e及び位置決め突起16aをロードドック室10内に設けられたセンサ22A,22Bで検出することにより、トレイ15の回転角度位置を検出できる。
次に、図1、図3、及び図5Aから図8Cを参照して、基板サセプタ9について説明する。まず、図1を参照すると、基板サセプタ9は、セラミクス等からなる誘電体板(誘電体部材)23、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等からなり、本参考例ではペデスタル電極として機能する金属板(支持部材)24、セラミクス等からなるスペーサ板25、セラミクス等からなるガイド筒体26、及び金属製のアースシールド27を備える。基板サセプタ9の最上部を構成する誘電体板23は、金属板24の上面に固定されている。また、金属板24はスペーサ板25上に固定されている。さらに、誘電体板23と金属板24の外周をガイド筒26が覆い、その外側とスペーサ板25の外周をアースシールド27が覆っている。
図3及び図5Aから図8Cを参照すると、誘電体板23は全体として薄い円板状であり、平面視での外形が円形である。誘電体板23の上端面は、トレイ15の下面15cを支持するトレイ支持面(トレイ支持部)28を構成する。また、それぞれトレイ15の基板収容孔19A〜19Dと対応する短円柱状の4個の基板載置部29A〜29Dがトレイ支持面28から上向きに突出している。
基板載置部29A〜29Dの上端面は、基板2の下面2aが載置される基板載置面31を構成する。また、基板載置部29A〜29Dには、基板載置面31の外周縁から上向きに突出し、その上端面が基板2の下面2aを支持する円環状突出部32が設けられている。また、基板載置面31の円環状突出部32で囲まれた部分には、基板載置面31よりも十分径が小さい円柱状突起33が、均一に分布するように複数個設けられている。円環状突出部32のみでなく円柱状突起33の上端面も基板2の下面2aを支持する。
図8Aから図8Cを参照すると、基板載置部29A〜29Dの外径R1は、基板支持部21の先端面21bで囲まれた円形開口36の径R2よりも小さく設定されている。従って、前述の搬入時にトレイ15が誘電体板23に向けて降下すると、個々の基板載置部29A〜29Dは対応する基板収容孔19A〜19Dにトレイ本体15aの下面15c側から進入し、トレイ15の下面15cは誘電体板23のトレイ支持面28上に載置される。また、トレイ本体15aの下面15cからの基板支持部21の上面21aの高さH1は、トレイ支持面28からの基板載置面31の高さH2さよりも低く設定している。従って、トレイ15の下面15cがトレイ支持面28上に載置された状態では、基板2は基板載置部29A〜29Dの上端の基板載置面31で押し上げられ、トレイ15の基板支持部21から浮き上がっている。換言すれば、基板収容孔19A〜19Dに基板2を収容しているトレイ15を誘電体板23のトレイ支持面28上に載置すると、基板収容孔19A〜19Dに収容された基板2の下面2aは、基板支持部21の上面21aから浮き上がって所定量だけ上方に離間し(基板支持部21に対して非接触)、基板載置面31によって支持される。基板載置面31によって支持された基板2の外周縁部は、トレイ15、具体的には基板収容孔19A〜19Dの孔壁15d及び基板載置部21の先端に対して間隔をあけて臨んでいる。
図1、図6、及び図8Aから図8Cを参照すると、誘電体板23の個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31付近には単極型の静電吸着用電極である基板吸着電極(第1の静電吸着用電極)40が内蔵されている。図6に最も明瞭に示すように、本参考例の基板吸着電極40は円形平板状である。基板吸着電極40は電気的に互いに絶縁されており、直流電源41と調整用の抵抗42等を備える共通の直流電圧印加機構43から静電吸着用の直流電圧が印加される。基板吸着電極は双極型の静電吸着電極でもよい。また、基板載置部29A〜29Dに共通して1個の静電吸着用電極を設けてもよい。
図1、図7、及び図8Aから図8Cを参照すると、誘電体板23のトレイ支持面28付近には単極型の静電吸着用電極であるトレイ吸着電極(第2の静電吸着用電極)202が内蔵されている。トレイ吸着用電極202はトレイ支持面28までの距離が、基板吸着用電極40から基板載置面31までの距離と実質的に同じになるように、誘電体板23内に配置されている。また、図7に最も明瞭に示すように、本参考例のトレイ吸着電極202は基板載置部29A〜29Dの部分を円形に打ち抜いた形状の円形平板状である。トレイ吸着用電極202は、後述する伝熱ガスの供給孔44に対応する箇所に小径の孔を形成し円形平板状であってもよい。トレイ吸着電極202には直流電圧印加機構203から静電吸着用の直流電圧が印加される。この直流電圧印加機構203の構成は前述した基板吸着電極40のための直流電圧印加機構43と同様の構成である(同一の要素には同一の符号を付している。)。
図3及び図5Aから図6Dを参照すると、個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31には、伝熱ガス(本参考例ではヘリウム)の供給孔44が設けられている。これらの供給孔44は共通の伝熱ガス供給機構45(図1に図示する)に接続されている。伝熱ガス供給機構45は、伝熱ガス源(本参考例ではヘリウムガス源)46、伝熱ガス源46から供給孔44に到る供給流路47、供給流路47の伝熱ガス源46側から順に設けられた流量計48、流量制御バルブ49、及び圧力計50を備える。また、伝熱ガス供給機構45は、供給流路47から分岐する排出流路51と、この排出流路51に設けられたカットオフバルブ52を備える。さらに、伝熱ガス供給機構45は、供給流路47の圧力計50よりも供給孔44側と排出流路51を接続するバイパス流路53を備える。個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31とその上に載置された基板2の下面2aとの間、詳細には基板2の下面2aと円環状突出部32で囲まれた閉鎖された空間に、伝熱ガス供給機構45によって伝熱ガスが供給される。伝熱ガスの供給時にはカットオフバルブ52は閉弁され、伝熱ガス供給源46から供給路47を経て供給孔44へ伝熱ガスが送られる。流量計48と圧力計50で検出される供給流路47の流量及び圧力に基づき、後述するコントローラ63が流量制御バルブ49を制御する。一方、伝熱ガスの排出時にはカットオフバルブ52が開弁され、基板2の下面2aと基板載置面31の間の伝熱ガスは、供給孔44、供給流路47、及び排出流路51を経て排気口54から排気される。
金属板24には、プラズマ発生用の高周波電圧であるバイアス電圧を印加する高周波印加機構56が電気的に接続されている。高周波印加機構56は、高周波電源57とマッチング用の可変容量コンデンサ58とを備える。
また、金属板24を冷却する冷却機構59が設けられている。冷却機構59は金属板24内に形成された冷媒流路60と、温調された冷媒を冷媒流路60中で循環させる冷媒循環装置61とを備える。
図1にのみ模式的に示すコントローラ63は、流量計48及び圧力計50を含む種々のセンサや操作入力に基づいて、高周波電源7、エッチングガス供給源12、搬送アーム16、真空排気装置13、駆動装置17、直流電圧印加機構43,203、伝熱ガス供給機構45、高周波電圧印加機構56、及び冷却機構59を含むドライエッチング装置1全体の動作を制御する。
次に、本参考例のドライエッチング装置1を使用したドライエッチング方法を説明する。
まず、トレイ1の基板収容孔19A〜19Dにそれぞれ基板2が収容される。トレイ1の基板支持部21aで支持された基板2は、トレイ本体15aの下面側から見ると基板収容孔19A〜19Dによりトレイ本体15aの下面15cから露出している。
次に、基板収容孔19A〜19Dにそれぞれ基板2が収容されたトレイ15が搬送アーム16で支持され、ロードドック室10からゲート3aを通ってチャンバ3内に搬入される。図1の二点鎖線で示すように、トレイ1は基板サセプタ9の上方に間隔をあけて配置される。
図8Aに示すように駆動装置17によって駆動された昇降ピン18が上昇し、搬送アーム16から昇降ピン18の上端にトレイ15が移載される。トレイ15の移載後、搬送アーム16はロードロック室10に待避し、ゲート3aが閉鎖される。
上端にトレイ15を支持した昇降ピン18は、図1において二点鎖線で示す上昇位置から基板サセプタ9に向けて降下する。図8B及び図8Cを参照すると、トレイ15は下面15cが基板サセプタ9の誘電体板23のトレイ支持面28まで降下し、トレイ15は誘電体板23のトレイ支持面28によって支持される。トレイ15がトレイ支持面28に向けて降下する際に、誘電体板23の基板載置部29A〜29Dがトレイ15の対応する基板収容孔19A〜19D内にトレイ15の下面15c側から進入する。トレイ15の下面15cがトレイ支持面28に近付くのに伴い、基板載置部29A〜29Dの先端の基板載置面31は基板収容孔19A〜19D内をトレイ15の上面15bに向かって進む。図8Cに示すように、トレイ15の下面15cが誘電体板23のトレイ支持面28に載置されると、個々の基板収容孔19A〜19D内の基板2は基板載置部29A〜29Dによって基板支持部21の上面21aから持ち上げられる。詳細には、基板2はその下面2aが基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に載置され、トレイ15の基板支持部21の上面21aに対して間隔をあけて上方に配置される。
このようにトレイ15の基板収容孔19A〜19D内に基板載置部29A〜29Dが進入することにより、基板2は基板載置面31に載置される。従って、トレイ15に収容された4枚の基板2は、いずれも高い位置決め精度で基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に載置される。
次に、誘電体板23に内蔵された基板吸着電極40に対して直流電圧印加機構43から直流電圧が印加され、個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に基板2が静電吸着される。基板2の下面2aはトレイ15を介することなく基板載置面31上に直接載置されている。従って、基板2は基板載置面31に対して高い密着度で保持される。また、誘電体板23に内蔵されたトレイ吸着電極202に対して直流電圧印加機構203から直流電圧が印加され、トレイ支持面28にトレイ15が静電吸着される。
その後、エッチングガス供給源12からチャンバ3内にエッチングガスが供給され、真空排気装置13によりチャンバ3内は所定圧力に維持される。続いて、高周波電源7からICPコイル5に高周波電圧を印加すると共に、高周波印加機構56により基板サセプタ9の金属板24にバイアス電圧を印加し、チャンバ3内にプラズマを発生させる。このプラズマにより基板2がエッチングされる。1枚のトレイ15で4枚の基板2を基板サセプタ9上に載置できるので、バッチ処理が可能である。
エッチング中は、冷媒循環装置61によって冷媒流路60中で冷媒を循環させて金属板24を冷却し、それによって誘電体板23及び誘電体板23の基板載置面31に保持された基板2を冷却する。前述のように、基板2はその下面2aがトレイ15を介することなく基板載置面31に直接載置され、高い密着度で保持されている。従って、円環状突出部32と基板2の下面2aで囲まれた伝熱ガスが充填されている空間の密閉度が高く、伝熱ガスを介した基板2と基板載置面31との間の熱伝導性が良好である。その結果、個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に保持された基板2を高い冷却効率で冷却できるので、高い高周波パワーを供給してドライエッチングの効率を向上できる。また、基板2の温度を高精度で制御できる。また、個々の基板2毎に基板載置部29A〜29Dの円環状突出部32と下面2aで囲まれた空間に伝熱ガスが充填される。換言すれば、伝熱ガスが充填される空間は個々の基板2毎に異なる。この点でも個々の基板2と誘電体板23の基板載置面31との熱伝導性が良好であり、高い冷却効率と高精度の温度制御を実現できる。
前述のように、基板2は個々の基板載置部29A〜29Dの基板載置面31に直接載置され、かつ静電吸着されるので、基板載置面31に対する密着度が高い。従って、基板2の上面の外周縁部分を誘電体板23に対して機械的に加圧するためのクランプリング等の部材は不要である。換言すれば、基板2の上面には、その中央部分だけでなく外周縁付近にもプラズマの状態が不安定化する原因となる部材が存在しない。従って、外周縁付近を含む基板2の表面の全領域で均一なドライエッチング処理を実現できる。
また、前述のように基板2を基板吸着電極40で基板載置面31に静電吸着するだけでなく、トレイ15をトレイ吸着電極202でトレイ支持面28に静電吸着している。また、トレイ15の下面15cに導電層201を設けることで、トレイ吸着用電極202によってトレイ支持面28にトレイ15を吸着する静電吸着力を強めている。このように、トレイ15の下面15cをトレイ支持面28に強い静電吸着力で吸着することにより、トレイ15とトレイ支持面28(誘電体板23)との間には良好な熱伝導性が確保されている。そして、前述のように誘電体板23は冷媒循環装置61によって冷却される金属板24によって冷却される。このようにトレイ15を直接的に冷却することで、トレイ15の温度上昇を防止している。特にトレイ15の下面の導電層201を研磨処理して表面粗度を低下させているので、トレイ15の下面とトレイ支持面28の密着度がより向上し、誘電体板23との熱伝導によってトレイ15はより高効率で冷却される。前述のように基板載置面31によって支持された基板2の外周縁部は、トレイ15、具体的には基板収容孔19A〜19Dの孔壁15d及び基板載置部21の先端に対して間隔をあけて臨んでいる。しかし、トレイ15を直接的に冷却しているので、基板2の外周縁付近の領域に対するトレイ15(基板収容孔19A〜19Dの孔壁15d及び孔壁15dから突出する基板支持部21)からの輻射熱を大幅に低減でき、この領域におけるレジスト焼けを防止して歩留まりを向上できる。
エッチング終了後、高周波電源7からICPコイル5への高周波電圧の印加と、高周波印加機構56から金属板24へのバイアス電圧の印加を停止する。続いて、真空排気装置13によりエッチングガスをチャンバ3内から排気する。また、直流電圧印加機構43から基板吸着電極40への直流電圧の印加を停止して基板2の静電吸着を解除する。さらに、直流電圧印加機構203からトレイ吸着電極202への直流電圧の印加を停止してトレイ15の静電吸着を解除する。
次に、駆動装置17により昇降ピン18を上昇させる。昇降ピン18が上昇すると、その上端でトレイ15の下面15cが押し上げられ誘電体板23のトレイ支持面28から浮き上がる。昇降ピン18と共にトイレ15がさらに上昇すると、図5Aに示すように、トレイ15の基板支持部21により基板2の下面2cが押し上げられ、基板2は基板載置部29A〜29Dの基板載置面31から浮き上がる。昇降ピン18は図1において二点鎖線で示す上昇位置に上昇する。トレイ15の下面には導電層201を形成しているので、直流電圧印加機構203からトレイ吸着電極202への直流電圧の印加を停止して静電吸着を解除するとトレイ15の下面が速やかに除電される。そのため、トレイ吸着電極202による静電吸着解除後も残留する分極した電荷の吸着力に起因してトレイ15がトレイ支持面28から剥がれなくなり、トレイ15の搬送トラブルが発生するのを防止できる。つまり、導電層201を設けることにより、残留吸着を防止している。このように残留吸着を防止しているので、昇降ピン18が上昇すると、確実にトレイ15がトレイ支持面28から離れて上昇する。
トレイ支持面28からトレイ15を上昇させることにより基板載置面31から基板2を持上げて搬出する際に、基板2の下面2aの外周縁部分がトレイ15の基板支持部21の上面21aに支持されて接触する。プラズマ処理中にトレイ15が冷却されていない場合、プラズマ処理によってトレイ15が加熱される為、搬出の際に、プラズマ処理時に加熱されたトレイ15とプラズマ処理時に冷却されている基板2との接触により、トレイ15からの熱伝導により基板2の温度(特に基板2の外周縁部分)が上昇する。この温度上昇は基板2の反り等の基板2の品質低下の原因となる。しかし、本参考例では、トレイ吸着用電極202でトレイ支持面28に支持されたトレイ15は効果的に冷却されているため、トレイ15の温度上昇が効果的に抑制されている。そのため、搬出の際のトレイ15から熱伝導に起因する基板2の温度上昇が抑制され、反り等の問題が生じない。
その後、ゲート3aを通ってロードドック室10からチャンバ3内に進入した搬送アーム16に、トレイ15が移載される。トレイ15は搬送アーム16によってロードドック室10へ搬出される。
本参考例では、前述のようにトレイ15の下面15cに導電層201を設けることで、トレイ吸着用電極202によってトレイ支持面28にトレイ15を吸着する静電吸着力を強め、誘電体板23との熱伝導によってトレイ15を効果的に冷却している。また、導電層201を設けることで、トレイ吸着電極202への直流電圧印加停止後の残留伽得着とそれに起因する搬送トラブルを防止している。つまり、導電層201を設けることにより、静電吸着時の吸着力を強めつつ、残留吸着を防止している。仮に導電層201を設けない場合、トレイ15を静電吸着保持するトレイ支持面28(トレイ吸着用電極202の上面)の吸着力が弱くなるので、誘電体板23との熱伝導によるトレイ15の冷却効果が弱くなる。また、導電層201を設けずに誘電体板23との熱伝導によるトレイ15の冷却能力を高めるためには、トレイ吸着用電極202に対する非常に高い電圧の印加が必要である。その場合、図18Bに概念的に示すように、誘電体であるトレイ15が静電分極して、トレイ吸着用電極202への電圧の印加を停止した後にも、トレイ支持面28と接触するトレイ15の下面に静電分極が残り、強い残留電荷によるトレイ15の下面とトレイ支持面28との間に強い残留吸着が生じる。この強い残留吸着によりトレイ15がトレイ支持面28から剥がれ難くいあるいは剥がれない等の搬送のトラブルが起こる恐れがある。これに対して、図18Aに概念的に示すように、導電体層201を設けた場合には、直流電圧印加機構203からの直流電圧の印加を停止すれば、導電体層201内での電荷の移動によりトレイ支持面28(トレイ吸着用電極202の上面)の吸着力は速やかに消滅する。
(第2参考例)
図9及び図10に示す本発明の第2参考例では、単一の静電吸着用電極204と単一の直流電圧印加機構205を備える。この静電吸着用電極204は、第1参考例における基板吸着電極40とトレイ吸着電極202を一体化して単一の電極としたものである。図10に最も明瞭に示すように、静電吸着用電極204は基板載置面31及びトレイ支持面28の付近に配置されるように凹凸を持たせ、静電吸着用電極204から基板載置面31までの距離と、静電吸着用電極204からトレイ支持面28までの距離が実質的に等しくなるように(例えば0.4mm)、基板載置面31とトレイ支持面28の近傍に静電吸着用電極204を配置している。直流電圧印加機構205から静電吸着電極204に直流電圧が印加されると、基板2とトレイ15が基板載置面31とトレイ支持面28にそれぞれ静電吸着される。直流電圧印加機構205から静電吸着用電極204への直流電圧の印加を停止すると、基板2とトレイ15の静電吸着が共に解除される。前述のように、静電吸着用電極204から基板載置面31及びトレイ支持面28までの距離を実質的に等しく設定したことにより、より安定してトレイ15をトレイ支持面28に静電吸着保持できる。
第2参考例のその他の構成及び作用は第1参考例と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の第1参考例(特に図8A〜図8C参照)では、基板吸着電極40の下側にトレイ吸着電極202を配置した2段構造としてそれぞれに直流電圧印加機構43,203を設けている。この2段構造で配置した基板吸着用電極40とトレイ吸着電極202を電気的に接続して一体化し、本参考例のような基板2とトレイ15と両方を吸着するための静電吸着用電極204とし、単一の直流電圧印加機構205から直流電圧を印加する簡素化された構成としてもよい。
本参考例のように基板2とトレイ15の静電吸着するための電極を一体構造とした場合、構造がシンプルになり、直流電圧印加機構が一つになるので低コスト化が可能である。しかし、基板2の静電吸着に必要な直流電圧(第1の直流電圧機構42の電圧)よりも、トレイ15の直流電圧に必要な直流電圧(第2の直流電圧印加機構203の電圧)が相対的に低い場合がある。例えば、LEDデバイスの製造におけるGaN層が形成されたサファイア基板や、サファイア単体の基板のドライエッチングの場合、第1の直流電圧印加機構42の電圧が1500〜2500V程度であるのに対して、第2の直流電圧印加機構203の電圧は600〜1200V程度でよい。このような場合、残留静電吸着力の発生をより効果的に抑制するために、電気的に互いに絶縁された別体とした基板吸着電極42とトレイ吸着電極202に対して、電圧をそれぞれ印加し、静電吸着力を相対的に異ならせるのが好ましい。基板吸着電極42とトレイ吸着電極202に異なる電圧が印加するためには、第1参考例のように2つの直流電圧印加機構43,203を設けて別電源としてもよいが、共通の電源からスプリッタ等を用いて基板吸着電極42とトレイ吸着電極202異なる電圧を印加してもよい。
(実施形態)
図11から図12Bに示す本発明の実施形態では、誘電体板23に高周波印加用電極206を内蔵し、この高周波印加用電極206に高周波印加機構56からバイアス電圧を印加している。
図13を併せて参照すると、本実施形態におけるトレイ15は、トレイ本体15aに対して着脱可能な4個の円環状の着脱部材211A〜211Dを備える。着脱部材211A〜211Dには、それぞれ基板収容孔19A〜19Dが形成されており、基板収容孔19A〜19Dの孔壁15dから突出する基板支持部21も着脱部材211A〜211Dに含まれている。トレイ15のうち基板収容孔19A〜19Dと基板支持部21を含む部分がプラズマの影響による消耗が著しい。本実施形態では、この部分を着脱部材211A〜211Dとしているので交換が可能であり、必要に応じて着脱部材211A〜211Dを交換することでトレイ本体15aは使用を継続できるので、トレイ15の使用寿命が延ばしコスト低減を図ることができる。着脱部材211A〜211Dを構成する材料としては、例えばトレイ本体15aと同一の材料を使用できる。
特に、LEDデバイスの製造におけるドライエッチングの場合、より生産性を向上するために、大面積のトレイ15を用いたバッチ処理が必要である。具体的には外径340mmサイズのトレイを用いて、直径4インチの基板2を6枚、直径6インチの基板2を3枚等のバッチ処理を行う。トレイ15のサイズを直径200mmから直径340mmとすることでトレイ15単体のコストがサイズ比率以上に高くなる。従って、バイアス電圧を必要な面積のみに印加して、トレイ15の消耗の箇所を着脱部材211A〜211Dの範囲に留め、トレイ本体15aの寿命を延ばすことで大きなコスト低減が可能となる。
本実施形態では、高周波印加電極206は個々の基板載置部29A〜29D(基板2)毎に設けられており、高周波印加電極206の面積は、バイアス電圧の印加面積が基板2とその周囲を含む必要領域のみとなるように設定する。また、着脱部材211A〜211Dの外径は、高周波印加電極206にバイアス電圧を印加した時に、基板2及びその外周を覆うシース電圧が発生する領域であるシース径よりも大きくなるように設定する。具体的には、図12Bを参照すると、基板吸着電極40の外径をDe、高周波印加電極の外径をDrf、シース径をDs、着脱部材211A〜211Dの外径をDmとすると、以下の不等式の関係が成立するように設定する。
特に、着脱部材211A〜211Bの外周縁は高周波印加用電極206の外周縁よりも外側に位置する。そのためトレイ15に印加されるバイアス電圧を、必要な領域、すなわち基板2を収容し基板収容孔19A〜19Dを含む領域に制限できる。言い換えれば、トレイ15のうちバイアス電圧を印加する必要ない外周縁を含む領域では、バイアス電圧を低減できる。その結果、プラズマの影響による消耗を抑制してトレイ15の使用寿命を延ばすことができる。
実施形態のその他の構成及び作用は第1参考例と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
実際にドライエッチングを実行して実施形態の着脱部材211A〜211D(以下211と表記する。)について検討した。具体的には、基板2としてサファイア基板にGaN層を形成した基板を使用した。また、実験に使用したドライエッチング装置では、トレイ吸着用電極202を設けず(トレイ15の静電吸着は行わない。)、金属板24に対して高周波印加機構56に対してバイアス電圧を印加した。実験に使用したドライエッチング装置のその他の点は、第1参考例のものと同一である。以下の表1に示す条件1,2について、6種類のトレイ15の材質についてドライエッチングを実行した。条件1はバイアス電力が大きくエッチング速度が速い場合、条件2はバイアス電力が小さい場合である。結果を表2に示す。表2において選択比は基板2(GaN基板)のエッチングレートに対するトレイ15の消耗レートの比率を示す(GaNエッチングレート/トレイ消耗レート)。
図14Aから図14Cを参照すると、基板2の外形とトレイ15の基板収容孔の隙間を小さく設定すると、シース電位がトレイ15の上面に形成され、トレイ底面に直接にイオンが入射しないので、局所的に削れは生じない。この場合には、トレイ15の上面の削れ量がトレイ15の寿命を決定する。トレイ15が薄くなると、基板2の周辺部の均一性が悪化し、トレイ15の強度も低下するので、基板2の上端面の高さよりトレイ15の上面が0.4〜0.6mm程度削れた時点がトレイ15の寿命である。従って、着脱部材211の形状としては、図14Aのように、基板収容孔19A〜19Dの孔壁15d付近のトレイ15の上面と基板支持部21の上面の両方を含んでいてもよいが、図14Bの示すように基板収容孔19A〜19Dの孔壁15d付近のトレイ15の上面のみを含むか、図14Cに示すようにトレイ15の上面全体を含むものでもよい。
N-Contact用のGaNエッチングの場合、GaNを1.0〜2.0um程度エッチングする。例えば、前述の条件1にて基板2(GaN)を1.0μmエッチングし、トレイ15の厚みの消耗限界を0.4mm、トレイ材質をSiCとした場合、実験結果より選択比3.9であるからトレイ15のバッチ処理回数寿命は、約1560回程度(400÷(1/3.9)である。また、基板2(GaN)を2.0μmエッチングする場合は同様の条件でトレイ15のバッチ処理回数寿命は780回程度となる。トレイ材質をトレイ消耗度合いが低いアルミナ、イットリアにすることで、更にトレイ寿命を延ばすことができ、着脱部材211としてアルミナやイットリアよりも消耗度が高いが比較的安価な石英等を使用することで、低コスト化を図ることができる。
本発明は、以上の参考例及び実施形態に限定されず、例えば以下に列挙するような種々の変形が可能である。
図15A及び図15Bは、誘電体板23の代案を示す。この代案では、基板載置面31に、供給孔44から放射状に延びる4つの直線状溝34と、円環状突出部32の内側に配置された円環状溝35を設けている。直線状溝34と円環状溝35は互いに連通している。これら直線状溝34と円環状溝35を設けることにより、供給孔44から噴出される伝熱ガスが基板2の下面2aと基板載置面31の間の空間内により均等に拡散する。その結果、基板2の冷却効率と温度制御の精度をさらに高めることができる。
図16及び図17は、トレイ15に関する種々の代案を示す。図16の例では、トレイ本体15aに、7個の基板収容孔19A〜19Gが形成されている。図17の例では、トレイ本体15aに矩形状の基板を収容するための9個の基板収容孔19A〜19Iが形成されている。これら図16及び図17に限定されず、トレイ15の基板収容孔の形状及び個数は、収容する基板の形状や個数に応じて種々設定することが可能である。例えば、トレイ本体15aに単一の基板収容孔を設け、1枚の基板をトレイ15に収容してもよい。また、基板サセプタ9の誘電体板23に設ける基板載置部の形状や個数も、基板収容孔の形状及び個数に応じて種々設定できる。
ICP型のドライエッチング処理装置を例に本発明を説明したが、平行平板型のRIE(リアクティブイオン)型のドライエッチング、プラズマCVD用プラズマ処理装置等の他のプラズマ処理装置にも本発明を適用できる。