JP2011088163A - 差厚板の製造方法及び圧延機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、周方向に半径の異なるワークロール2を備えた4段以上の多段圧延機により差厚板を製造するものであって、ワークロール2と接するバックアップロール4又はワークロール2と接する中間ロールを、ワークロール2からオフセンタ(オフセット)させることにより、ワークロール2の1周分に対応する差厚寸法を備えた差厚板を製造する。ワークロール2からオフセンタしているバックアップロール4が2本以上、又はワークロール2からオフセンタしている中間ロールが2本以上あってもよい。
【選択図】図3
Description
このような短ピッチの差厚板を製造する場合には、ワークロールの開閉を短時間に行う必要があるが、かかるワークロールの操作は難しく、必然的に圧延速度を遅くしないと大きな板厚差を持った差厚板の製造が困難である。
例えば、特許文献1の技術では、所定の位置からの長さをトラッキングし、圧下量を変更することにより長手方向の板厚を変更し差厚板を製造している。
特許文献2には、差厚板の寸法精度を向上することを目的として、圧延材を送りつつ部分的に圧延する方法が開示されている。
特許文献4には、バックアップロール又はワークロールに直径差を持たせた偏芯ロールで圧延する方法が開示されている。
特許文献1に開示された方法では、トラッキング精度の問題で長手方向の寸法の精度に欠け、さらに大きな差厚を製造するためにはロールギャップの昇降速度の応答性の向上が必要であるため、非常に高価な圧延設備となってしまうか、又は、生産性の低い低速での圧延を行うことになる。
一方、偏芯ロールを用いる製造方法では、板寸法はロール形状により決定されるため、高速圧延でも寸法精度が低下しないという長所がある。ところが、広幅・硬質材の差厚板を製造することを考えると、板厚の薄い部分(圧下量大の部位)で大きな荷重が発生する可能性が大きい。
図6に従来からある一般的な4段圧延機を示す。この4段圧延機10においては、一対のワークロール12,12により圧延材13が矢示X方向に移動する時に圧延がなされる。
図7(a)に示す如く、このような一対のワークロール12,12に、正弦関数で表現された周方向の半径差(ΔR1〜ΔR4)を与えても、図7(b)に示すような板厚偏差Δh2,Δh4(ΔR2がΔh2に対応、以下同様)しか生じない。板厚偏差Δh1(ΔR1=sinθに対応)及び板厚偏差Δh3(ΔR3=sin3θに対応)は略0である。
つまり、ワークロール12の周方向の半径差を強調して記載した図8を参照すると、ワークロール12の凸部が圧延材13に当接している時には、位相が180度異なる凹部がバックアップロール14に当接すると共に上方に移動して、凸部と凹部とでワークロール12の周方向の半径差を互いに打消しあっている。ワークロール12の凹部が圧延材13に当接している時には、位相が180度異なる凸部がバックアップロール14に当接すると共に、ワークロール12が下方に移動して、凸部と凹部とでワークロール12の周方向の半径差を互いに打消しあっている。
(1) 差厚板を圧延により製造する場合は、板厚の数十%の板厚差を付ける必要があり、このような大きな板厚差は、特許文献3のようなカム機構を用いたようなロール剛性の弱い圧延では実現不可能である。さらに、同様に、2段圧延機では大きな荷重変化のため、ロールたわみにより大圧下部での鋼板の平坦度が乱れる。このため、4段以上の圧延機が必要となる。
(3) 特許文献4(ワークロールの径方向に差を持たせる)の技術では、ワークロール1回転で「偶数個の山」又は「偶数個の谷」を有する板厚パターンでしか差厚板を製造できない。言い換えるならば、ワークロールの周長に沿って「奇数個の山」又は「奇数個の谷」を有する板厚パターンを形成することができない。加えて、1m程度の長さの圧延材に対し、ワークロールの径差で板厚差を付与しようとすると、ワークロール直径は700mm程度の大きなワークロール径となる。このように、ワークロール径が大きくなると圧延荷重も増大するとともに、圧延機自体も大型となるため非常にコストが増大する。
すなわち、本発明の差厚板の製造方法は、周方向に半径の異なるワークロールを備えた4段以上の多段圧延機により差厚板を製造する方法であって、前記ワークロールと接するバックアップロール又は前記ワークロールと接する中間ロールに対し、前記ワークロールをオフセンタさせることにより、前記ワークロールの1周分に対応する板長さ間で板厚が変化する差厚板を製造することを特徴とする。
さらに好ましくは、目標とする板厚偏差の分布Δh(θ)がan,bnをパラメータとする式(1)で与えられ、ワークロールの半径の周方向分布R(θ)がAn,Bnをパラメータとする式(2)で与えられ、前記オフセンタの量が式(3)で与えられるに際し、前記パラメータAn,Bnを、前記パラメータan,bnを基に式(1)〜式(4)から算出して、算出されたパラメータAn,Bnを備えた式(2)で表される半径の周方向分布R(θ)を有するワークロールを用いて、前記差厚板を製造するとよい。
また、上述した差厚板の製造方法を採用するに際し、最終圧延パスでの板厚偏差の分布Δh(θ)が目標値となるように、圧延機の出側及び/又は入側の張力を制御するとよい。
好ましくは、前記ワークロールからオフセンタしているバックアップロールが2本以上、又は前記ワークロールからオフセンタしている中間ロールが2本以上備えられているとよい。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る短ピッチ差厚板の製造方法が適用される圧延機の概要について説明する。
図1は、短ピッチの差厚板を製造する4段圧延機1の概略図である。この4段圧延機1においては、一対のワークロール2,2により、鋼材等の圧延材3が矢示X方向に移動する時に圧延される。なお、「短ピッチの差厚板」とは、ワークロール2の1周分に対応する板長さで板厚が変化する、言い替えるならば、長手方向数mの間に板厚が様々に変化する圧延材3のことである。
図3は、オフセンタさせたバックアップロール4とワークロール2の幾何学的関係を模式的に示した図である。なお、ワークロール2の半径分布をR(θ)とし、バックアップロール4の半径rは均一であるとする。
以上述べた差厚板の製造方法を用いて、ワークロール2の周方向半径分布R(θ)を設計した例を述べる。
a1= 1.000 b1=0.000
a2= 0.500 b2=0.000
a3= 0.333 b3=0.000
a4= 0.250 b4=0.000
となる。さらに、圧延機1での条件として、ワークロール2の直径=300mm、バックアップロール4の直径=800mm、オフセンタ量δを30.5mmとしている。4段圧延機1においては、図4に示すワークロール2,2を用い、下側のワークロール2の中心も上側のワークロール2の中心と同じ位置に設定し、上下でバランスをとるために下側のワークロール2も30.5mmだけ同じ方向にオフセンタさせた。
図4(b)には、求められたAn,Bnから得られたワークロール2の半径プロファイルが示されている。
図4(c)には、図4(b)のような半径プロファイルを備えたワークロール2で圧延を実施し、製造された圧延材3の長手方向の板厚分布が示されている。この図から明らかなように、長さ方向1000mm程度において板厚の偏差が1mm〜ー1mmの間で短ピッチで変化している。また、ワークロール2の偏心させることのみでは実現し得なかった奇数周期の板厚変化(「奇数個の山」又は「奇数個の谷」を有する板厚パターン)をオフセンタδを与えることで実現可能としている。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る短ピッチの差厚板の製造方法が適用される圧延機の概要について説明する。
この図に示されているように、本実施形態が第1実施形態と大きく異なる点は、ワークロール2が2つのバックアップロール4で支持されている点である。バックアップロール4間の水平距離はDとされており、一方のバックアップロール4は他方のバックアップロール4より下方にHだけ下がった位置に配備されている。他の構成は第1実施形態と略同様である。
まず、ワークロール2と接する2個のバックアップロール4のロール半径r1、r2であり、水平方向のロール間隔D、垂直方向のロール間隔Hの時、式(5)〜式(7)の関係が成り立つ。各変数は[数4]のところで説明したとおりである。
[第3実施形態]
第1実施形態及び第2実施形態で説明した差厚板の製造方法を採用するに際し、最終圧延パスでの板厚分布の偏差Δhが目標の偏差となるように、圧延機の出側及び/又は入側の張力を制御することは、非常に好ましい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る短ピッチの差厚板の製造方法について説明する。
このようにして得られた出側板厚変化Δhとロールギャップ変化ΔSとは、Δh=M/(M+Q)・ΔSと表現でき、この関係を考慮した上で、ワークロール2の半径分布の設計を行う。Δh=M/(M+Q)・ΔSにおけるMは、ミル定数であり、圧延機固有の剛性係数である。Qは塑性定数であり、圧延材と圧延条件が決まれば求まる値である。
予めR(θ)一定のワークロールで圧延を行い、ロールギャップを変更することにより得られる圧延荷重と出側板厚との関係から、塑性定数Qを実験的に求めることも可能である。
図12に、第1実施形態で説明した手法で設計したロール半径と、本実施形態で説明したミル伸びを考慮し設計したロール半径との比較を示す。ここでは、ミル定数M=500ton/mm、塑性定数Q=600ton/mmである。
[第5実施形態]
しかしながら、第4実施形態に係る短ピッチの差厚板の製造方法を用いて決定したワークロール2を使用しても、圧延材の硬さなどの変化により目標の板厚偏差が実現できない場会がある。
そこで、塑性係数Qの変化に起因する微妙な板厚変動を是正するため、圧延機1に対してはミル剛性制御を適用する。
つまり、目標とする板厚変動に対して、圧延材の長手方向の最小板厚が目標値となるようにロールギャップを減少させてゆく。このとき、設計荷重(設計したQ)と実際の圧延時のQが等しければ、目標板厚偏差が実現される。しかしながら、Qに誤差があれば目標板厚偏差は実現できない。そこで、圧延機1の出側で最小板厚と最大板厚の差である板厚偏差を測定し、この値が目標植に達しない場合は、チューニング率αを変更して目標値に制御することとする。詳しくは、 図14に示すフローチャートに基づき、チューニング率αを可変とする。
なお、図16は、さらにチューニング率αを上げた結果である。高いチューニング率αすなわちチューニング率αが限界を超えると不安定な制御となるため、チューニング率αのみで自由な板厚偏差を作ることが出来る訳ではない。ワークロール設計とチューニング率αの適切な選択との両者により、所望とする差厚板を圧延することが可能となる。
例えば、第2実施形態にて、ワークロール2はバックアップロール4に支えられることを開示したが、中間ロールに支えられる構成であっても何ら問題はない。
2 ワークロール
3 圧延材
4 バックアップロール
Claims (10)
- 周方向に半径の異なるワークロールを備えた4段以上の多段圧延機により差厚板を製造する方法であって、
前記ワークロールと接するバックアップロール又は前記ワークロールと接する中間ロールに対し、前記ワークロールをオフセンタさせることにより、前記ワークロールの1周分に対応する板長さ間で板厚が変化する差厚板を製造することを特徴とする差厚板の製造方法。 - 前記ワークロールからオフセンタしているバックアップロールが2本以上、又は前記ワークロールからオフセンタしている中間ロールが2本以上あることを特徴とする請求項1に記載の差厚板の製造方法。
- 目標とする板厚偏差の分布Δh(θ)がan,bnをパラメータとする式(1)で与えられ、ワークロールの半径の周方向分布R(θ)がAn,Bnをパラメータとする式(2)で与えられ、前記オフセンタの量が式(3)で与えられるに際し、
前記パラメータAn,Bnを、前記パラメータan,bnを基に式(1)〜式(4)から算出して、
算出されたパラメータAn,Bnを備えた式(2)で表される半径の周方向分布R(θ)を有するワークロールを用いて、前記差厚板を製造することを特徴とする請求項1に記載の差厚板の製造方法。
- 目標とする板厚偏差の分布Δh(θ)がan,bnをパラメータとする式(1)で与えられ、ワークロールの半径の周方向分布R(θ)がAn,Bnをパラメータとする式(2)で与えられ、オフセンタされた2本のバックアップロール又は中間ロールの間の水平距離Dが式(5)で与えられ、前記2本のバックアップロール又は中間ロールの間の垂直距離Hが式(6)で与えられるに際し、
前記パラメータAn,Bnを、前記パラメータan,bnを基に式(1),式(2),式(5)〜式(7)から算出して、
算出されたパラメータAn,Bnを備えた式(2)で表される半径の周方向分布R(θ)を有するワークロールを用いて、前記差厚板を製造することを特徴とする請求項2に記載の差厚板の製造方法。
- 前記多段圧延機のミル定数がM、塑性定数がQで与えられ、目標とする板厚偏差の分布Δh(θ)がan,bnをパラメータとする式(1)で与えられ、ワークロールの半径の周方向分布R(θ)がAn,Bnをパラメータとする式(2)で与えられ、前記オフセンタの量が式(3)で与えられるに際し、
前記パラメータAn,Bnを、前記パラメータan,bnを基に式(1)〜式(4)’から算出して、
算出されたパラメータAn,Bnを備えた式(2)で表される半径の周方向分布R(θ)を有するワークロールを用いて、前記差厚板を製造することを特徴とする請求項1に記載の差厚板の製造方法。
- 前記多段圧延機のミル定数がM、塑性定数がQで与えられ、目標とする板厚偏差の分布Δh(θ)がan,bnをパラメータとする式(1)で与えられ、ワークロールの半径の周方向分布R(θ)がAn,Bnをパラメータとする式(2)で与えられ、オフセンタされた2本のバックアップロール又は中間ロールの間の水平距離Dが式(5)で与えられ、前記2本のバックアップロール又は中間ロールの間の垂直距離Hが式(6)で与えられるに際し、
前記パラメータAn,Bnを、前記パラメータan,bnを基に式(1),式(2),式(5)〜式(7)’から算出して、
算出されたパラメータAn,Bnを備えた式(2)で表される半径の周方向分布R(θ)を有するワークロールを用いて、前記差厚板を製造することを特徴とする請求項2に記載の差厚板の製造方法。
- 請求項1〜6に記載された差厚板の製造方法を採用するに際し、前記多段圧延機をミル剛性制御を用いて制御し、差厚板の出側板厚偏差が目標板厚偏差となるように前記ミル剛性制御に用いるチューニング率αを選定することを特徴とする差厚板の製造方法。
- 請求項1〜6に記載された差厚板の製造方法を採用するに際し、最終圧延パスでの板厚偏差の分布Δh(θ)が目標値となるように、圧延機の出側及び/又は入側の張力を制御することを特徴とする差厚板の製造方法。
- 4段以上の圧延機であって、
周方向に半径の異なるワークロールと、
前記ワークロールの1周分に対応する板長さで板厚が変化する差厚板を製造すべく、ワークロールからオフセンタされたバックアップロール又は中間ロールと、
が備えられたことを特徴とする圧延機。 - 前記ワークロールからオフセンタしているバックアップロールが2本以上、又は前記ワークロールからオフセンタしている中間ロールが2本以上備えられていることを特徴とする請求項9に記載の圧延機。
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