JP2011086464A - リチウム二次電池用負極活物質、それを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用負極活物質、それを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】チタンを含むものにおいて電池容量をより高める。
【解決手段】リチウム二次電池10は、リチウムを吸蔵・放出可能な正極活物質12を含む正極シート13と、負極活物質17を含む負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解液20とを備えている。ここでは、負極活物質17は、スピネル型構造を有し、一般式LiM0.5Ti1.54(MはFe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上の元素)で表され、リチウムイオンを吸蔵・放出するリチウムチタン複合酸化物が含まれている。この負極活物質17は、一般式[Li1/21/2][Li1/2Ti3/2]O4で表される構造を有し、リチウムイオン伝導トンネルを形成する立方密充填酸素配列中の4配位位置とこの4配位位置に隣接する6配位位置とをMが移動することによりリチウムイオンを吸蔵・放出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム二次電池用負極活物質、それを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法に関する。
従来、リチウム二次電池用の負極活物質として、スピネル型構造を有するリチウムチタン複合酸化物(Li4/3Ti5/34)が知られている。スピネル型チタン酸リチウムは、充放電時の体積変化が小さくサイクル特性に優れる。しかし、理論容量が175mAh/gと比較的小さく、リチウムチタン複合酸化物を負極活物質として利用するものの改良についていくつか報告されている。
例えば、特許文献1には、スピネル型のリチウムチタン複合酸化物(Li4/3Ti5/34)に、K2Oを0.01〜0.4重量%、P25を0.01〜1.0重量%の割合で含有させることにより放電特性を高めたものが提案されている。また、特許文献2には、スピネル型のリチウムチタン複合酸化物(Li4/3Ti5/34)にMgなどのアルカリ土類金属やアルカリ金属、更にはアルミニウム、ホウ素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素及び硫黄等を添加することにより負荷特性を高めたものが提案されている。また、特許文献3には、スピネル型のリチウムチタン複合酸化物(Li4/3Ti5/34)のリチウムの一部をマグネシウムで置換させたLi4-xMgxTi512(0.05≦x≦0.9)とすることにより負荷特性を高めたものが提案されている。
特開2002−274849号公報 特開2004−235144号公報 特開2006−40557号公報
しかしながら、上述の特許文献1〜3のリチウム二次電池用負極活物質では、スピネル型のリチウムチタン複合酸化物(Li4/3Ti5/34)に様々な元素を添加したり置換することにより電池特性を向上してはいるがそれでもまだ十分ではなく、例えば、電池容量をより高めることが望まれていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、チタンを含むものにおいて電池容量をより高めることができるリチウム二次電池用負極活物質、それを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、一般式LiM0.5Ti1.54で表されるリチウムチタン複合酸化物のMとして2価となる所定の遷移金属を添加すると電池容量をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、非水系のリチウム二次電池に用いられる負極活物質であって、スピネル型構造を有し、一般式LiM0.5Ti1.54(MはFe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上の元素)で表され、リチウムイオンを吸蔵・放出するリチウムチタン複合酸化物を含むものである。
本発明のリチウム二次電池は、リチウムを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む正極と、上述したリチウム二次電池用負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものである。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、非水系のリチウム二次電池に用いられる負極活物質の製造方法であって、一般式LiM0.5Ti1.54(MはFe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上の元素)の組成で表されるリチウムチタン複合酸化物となるようにチタン金属を原料として各元素を配合する配合工程と、前記配合した原料を焼成する焼成工程と、を含むものである。
本発明は、電池容量をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。一般に、スピネル型構造を持つLi[Li1/3Ti5/3]O4(Li4/3Ti5/34)は、完全にリチウムイオンを挿入させた状態でLi2[Li1/3Ti5/3]O4となりそれ以上リチウムイオンを挿入させることができない。そのため、Li4/3Ti5/34の充放電容量は理論的に175mAh/gに制限され、これ以上の充放電容量とすることができない。実際にはLi4/3Ti5/34を負極活物質として用いた場合には160mAh/g程度の充放電容量に制限されると考えられる。一方、スピネル型構造をもつリチウムチタン複合酸化物の立方密充填酸素配列中の4配位位置に異種金属イオンが存在する場合、リチウムイオン伝導トンネル内のリチウムイオンの移動を阻害してしまうことがあり、リチウムイオンの吸蔵・放出が困難となることがある。ここで、スピネル型構造を持つLiM0.5Ti1.54のMとしてFe,Co,Ni,Mn及びZnを用いた場合は、リチウムイオンの吸蔵に伴い、4配位位置に存在するMが、この4配位位置と隣接する6配位位置に移動するものと推察される。これによりLi4/3Ti5/34の理論容量175mAh/gを超える高容量負極となるものと考えられる。このスピネル型LiM0.5Ti1.54(Fe,Co,Ni,Mn及びZn)の高容量化の原因は十分明らかになっていないが、Mの移動によりリチウムイオンの吸蔵をLi4/3Ti5/34よりも多くすることができるためであると考えられる。
本発明のリチウム二次電池10の一例を示す模式図である。 実施例1〜4の負極活物質のX線回折測定結果。 実施例1の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果。 実施例2の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果。 実施例3の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果。 実施例4の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果 比較例1の負極活物質及び還元状態の電極のX線回折測定結果。 実施例1〜4の二極式評価セルの充放電測定結果。 実施例1〜4の二極式評価セルの充放電サイクル試験結果。 比較例1の負極活物質を用いた二極式評価セルの充放電試験結果。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、非水系のリチウム二次電池に用いられる負極活物質であって、スピネル型構造を有し、一般式LiM0.5Ti1.54(MはFe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上の元素)で表され、リチウムイオンを吸蔵・放出するリチウムチタン複合酸化物を含むものである。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質において、リチウムチタン複合酸化物は、一般式[Li1/21/2][Li1/2Ti3/2]O4で表される構造を有しているものとしてもよい。このリチウムチタン複合酸化物は、リチウムとチタンとが1:3の比率で規則的に配列するものとすることができ、例えば、Li4/3Ti5/34(Li[Li1/3Ti5/3]O4)の一部に他の元素を添加・置換したものなどとは構造が異なるものと考えられる。また、本発明のリチウム二次電池用負極活物質において、リチウムチタン複合酸化物は、リチウムイオン伝導トンネルを形成する立方密充填酸素配列中の4配位位置と、この4配位位置に隣接する6配位位置とを元素Mが移動することによりリチウムイオンを吸蔵・放出するものとしてもよい。この立方密充填酸素配列中の4配位位置と6配位位置との元素Mの移動は、例えばX線回折測定により確認することができる。例えば、負極活物質の還元(充電)及び酸化(放電)を行ったときの電極のX線回折を測定する。このとき、リチウムチタン複合酸化物は、2θでの26°近傍、30°近傍、36°近傍及び43°近傍のX線回折ピークのパターンが変化するものとしてもよい。このピーク変化は、立方密充填酸素配列中の4配位位置と6配位位置との間で元素Mが移動していることを示すと考えられる。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質において、元素Mは、Fe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上であるが、2価の遷移金属元素としてもよく、このうちFeがより好ましい。元素MがFeでは、スピネル型構造の4配位位置と6配位位置との可逆的な移動が優れていると推察される。これは、FeイオンがMn,Co及びZnよりも酸化物イオンとの結合が弱いために結晶構造内の移動が効果的に起こりやすいためであると推察される。また、一般式LiM0.5Ti1.54の元素Mは、上述したいずれか1種としてもよいし、上述したいずれか1以上を組み合わせるものとしてもよい。なお、本発明のリチウム二次電池用負極活物質には、一般式LiM0.5Ti1.54の一部に上記元素M以外の元素が添加されるものとしてもよい。また、一般式LiM0.5Ti1.54の上記元素M以外の元素が置換されているものとしてもよい。このとき、一般式LiMnTi2-n4とすると、元素Mは、0.40≦n≦0.60の範囲で含まれているのが好ましい。また、本発明のリチウム二次電池用負極活物質には、一般式LiM0.5Ti1.54とは異なる物質が含まれるものとしてもよい。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質において、リチウムチタン複合酸化物は、チタン金属を原料として製造されていることが好ましい。こうすれば、充電容量と放電容量との可逆率をより良好なものとすることができる。また、サイクル特性をより高めることができる。リチウムチタン複合酸化物は、チタン金属を原料として製造すると、チタン金属が酸化すると共に、元素Mが十分還元され、スピネル型構造のMイオンの4配位・6配位位置の移動がより円滑になるため好ましい。
次に、本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法について説明する。この製造方法は、非水系のリチウム二次電池に用いられる負極活物質の製造方法である。本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、一般式LiM0.5Ti1.54(Mは上述の元素)の組成で表されるリチウムチタン複合酸化物となるようにチタン金属を原料として各元素を配合する配合工程と、配合した原料を焼成する焼成工程と、を含む。
配合工程では、チタン金属粉末を用いることが反応性を考慮すると好ましい。また、このとき、元素Mの原料としては、酸化物であることが好ましいが、チタン金属により還元されて2価となりやすいものを用いることがより好ましい。例えば、元素MがFeであるときには、FeOやFe23、Fe34などが挙げられるが、Fe23がより好ましい。また、元素MがCoであるときにはCoOやCo34などが挙げられるが、Co34がより好ましい。
焼成工程では、900℃以上の焼成温度で、配合した原料を焼成し、スピネル型構造を有するリチウムチタン複合酸化物を作製することが好ましい。また、焼成温度は、より好ましくは1000℃以上である。こうすれば、配合工程で混合したチタン金属と元素Mの原料とを十分に反応させることができる。この焼成温度は、製造時の消費エネルギーの観点から、1200℃以下であることが好ましい。この焼成工程では、10時間以上で焼成することが好ましく、16時間以上で焼成することがより好ましい。焼成時間は、製造時の消費エネルギーの観点から、24時間以下であることがより好ましい。また、焼成工程では、配合した原料を不活性ガス雰囲気で焼成することがより好ましい。こうすれば、元素Mの原料が酸化物であるときなどに、元素Mが例えば2価に還元されやすいなど、好ましい。また、この焼成工程では、上記配合した原料を成形したのち焼成することが好ましい。こうすれば、配合工程で混合した原料を十分に反応させることができる。
続いて、本発明のリチウム二次電池について説明する。本発明のリチウム二次電池は、リチウムを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む正極と、上述したリチウム二次電池用負極活物質を含む負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。
本発明のリチウム二次電池用負極は、例えば上述した本発明のリチウム二次電池用負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本発明のリチウム二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、Li(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)、Li(1-x)Mn24などのリチウムマンガン複合酸化物、Li(1-x)CoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li(1-x)NiO2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物、V25などの遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。また、正極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ負極で例示したものを用いることができる。正極の集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、負極で例示したいずれかとすることができる。
本発明のリチウム二次電池のイオン伝導媒体としては、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
本発明のリチウム二次電池に含まれている支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩の濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
また、液状のイオン伝導媒体の代わりに、固体のイオン伝導性ポリマーをイオン伝導媒体として用いることもできる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーと支持塩とで構成されるポリマーゲルを用いることができる。更に、イオン伝導性ポリマーと非水系電解液とを組み合わせて用いることもできる。また、イオン伝導媒体としては、イオン伝導性ポリマーのほか、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
本発明のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明のリチウム二次電池10の一例を示す模式図である。このリチウム二次電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。このリチウム二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。ここでは、負極活物質17は、スピネル型構造を有し、一般式LiM0.5Ti1.54(MはFe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上の元素)で表され、リチウムイオンを吸蔵・放出するリチウムチタン複合酸化物を含むものである。また、負極活物質17は、一般式[Li1/21/2][Li1/2Ti3/2]O4で表される構造を有し、リチウムイオン伝導トンネルを形成する立方密充填酸素配列中の4配位位置とこの4配位位置に隣接する6配位位置とをMが移動することによりリチウムイオンを吸蔵・放出するリチウムチタン複合酸化物を含んでいる。また、負極活物質17は、チタン金属を原料として製造されているリチウムチタン複合酸化物を含んでいる。
以上詳述した本発明のリチウム二次電池用負極活物質、それを用いたリチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極活物質の製造方法では、電池容量をより高めることができる。また、サイクル特性をより高めることができる。この理由としては、スピネル型構造を持つLiM0.5Ti1.54のMとしてFe,Co,Ni,Mn及びZnを用いた場合は、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴い、Mが4配位位置と6配位位置とを移動することができる。このため、より多くのリチウムイオンの吸蔵・放出を行うことができると推察される。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明のリチウム二次電池用負極活物質を具体的に作製した例を実施例として説明する。
[実施例1]
Ti金属粉末を用いたLiM0.5Ti1.54(M=Fe)を合成した。このLiFe0.5Ti1.54の合成には、Li2CO3、Ti金属粉末及びMの原料としてFe23を出発原料として用いた。これら出発原料を上記組成となるように配合した。この配合した原料を乳鉢で混合し、混合した粉末を直径2cm、厚さ5mm程度のペレットに加圧成型した。成形したペレットをアルゴン雰囲気下1000℃で16時間焼成することにより合成したLiM0.5Ti1.54を実施例1の負極活物質とした。
[実施例2〜3]
Ti金属粉末を用いたLiM0.5Ti1.54(M=Mn)を合成しこれを実施例2の負極活物質とした。実施例2は、Mの原料をMnO2とした以外は実施例1と同様の工程を経て、得られたLiMn0.5Ti1.54とした。また、Ti金属粉末を用いたLiM0.5Ti1.54(M=Co)を合成しこれを実施例3の負極活物質とした。実施例3は、Mの原料をCo34とした以外は実施例1と同様の工程を経て、得られたLiCo0.5Ti1.54とした。
[実施例4]
Ti金属粉末を用いないLiM0.5Ti1.54(M=Zn)を合成しこれを実施例4の負極活物質とした。実施例4は、リチウム原料をLiOH・H2Oとし、チタン原料をTiO2(ルチル型)とし、Mの原料をZnOとした以外は実施例1と同様の工程を経て、得られたLiZn0.5Ti1.54とした。
[実施例5〜7]
Ti金属粉末を用いないLiM0.5Ti1.54(M=Fe,Mn及びCo)を合成しそれぞれを実施例5〜7の負極活物質とした。実施例5は、リチウム原料をLiOH・H2Oとし、チタン原料をTiO2(ルチル型)とし、Mの原料をFeOとした以外は実施例1と同様の工程を経て得られたLiFe0.5Ti1.54とした。実施例6は、リチウム原料をLiOH・H2Oとし、チタン原料をTiO2(ルチル型)とし、Mの原料をMnOとした以外は実施例2と同様の工程を経て得られたLiMn0.5Ti1.54とした。実施例7は、リチウム原料をLiOH・H2Oとし、チタン原料をTiO2(ルチル型)とし、Mの原料をCoOとした以外は実施例3と同様の工程を経て得られたLiCo0.5Ti1.54とした。
[比較例1]
Ti金属粉末を用いないLiM0.5Ti1.54(M=Mg)を合成し比較例1の負極活物質とした。比較例1は、リチウム原料をLiOH・H2Oとし、チタン原料をTiO2(ルチル型)とし、Mの原料をMg(OH)2とした以外は実施例1と同様の工程を経て得られたLiMg0.5Ti1.54とした。
(X線回折測定)
実施例1〜4及び比較例1の粉末X線回折測定を行った。X線回折測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用したX線回折装置(RINT2200、リガク社製)を用いて行った。X線回折測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定して測定を行った。また、X線回折測定は、3°/minの走査速度で10°から100°(2θ)の角度範囲の条件で行った。
(電極の作製)
上記手法で作製した実施例1〜7,比較例1の負極活物質を85重量%、導電材としてカーボンブラックを5重量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10重量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm2の面積に打ち抜いて、実施例1〜7,比較例1の円盤状の電極を準備した。
(二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で30:70の割合で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記実施例1〜7,比較例1の電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東燃タピルス)を挟んで実施例1〜7,比較例1の二極式評価セルを作製した。
(充放電試験)
作製した二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、0.1C(0.3mA)で0Vまで還元(充電)したのち、0.1C(0.3mA)で3.0Vまで酸化(放電)させた。この充放電操作の1回目の還元容量をQ1red、酸化容量をQ1oxiとし、初期充放電時の可逆率(%)をRrev=[Q1oxi/Q1red×100]と定義した。また、この充放電操作を30回繰り返したときの30回目の還元容量をQ30redとし、Q1redに対するQ30redの割合である容量維持率Rcyc(%)=[Q30red/Q1red×100]を用いて充放電サイクル挙動を評価した。
(還元(充電)及び再酸化(放電)状態の電極のX線回折測定)
実施例1〜4及び比較例1の二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1C(0.3mA)で0Vまで還元(充電)した。その後、アルゴン雰囲気中のグローブボックスでセルを解体して還元状態の電極を取り出し、ポリエチレン袋に密閉した。そのようにして作製した密閉電極をX線回折装置に設置し、還元状態の電極のX線回折測定を行った。また、上記二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1C(0.3mA)で0Vまで還元(充電)したあと、3.0Vまで再酸化(放電)し、同様の方法でX線回折測定を行った。
(結果と考察)
図2は、実施例1〜4の負極活物質のX線回折測定結果である。図3は、実施例1の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果である。図4は、実施例2の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果である。図5は、実施例3の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果である。図6は、実施例4の負極活物質、還元及び再酸化状態の電極のX線回折測定結果である。図7は、比較例1の負極活物質及び還元状態の電極のX線回折測定結果である。図8は、実施例1〜4の二極式評価セルの充放電測定結果である。図9は、実施例1〜4の二極式評価セルの充放電サイクル試験結果である。図10は、比較例1の負極活物質を用いた二極式評価セルの充放電試験結果である。また、実施例1〜7及び比較例1の初期充電容量Q1red(mAh/g)、繰返充電容量Q30red、可逆率Rrev(%)、容量維持率Rcyc(%)をまとめて表1に示す。
Figure 2011086464
図7に示すように、比較例1のLiMg0.5Ti1.54では、立方晶を仮定したときの(220)ピークが明確に現れており、(111)ピーク強度に比べ(311)ピーク強度が比較的高いことから、スピネル型構造の4配位位置にMgイオンが存在していると推察された。一方、LiMg0.5Ti1.54を活物質として用いた電極の0V還元状態でのX線回折結果では、LiMg0.5Ti1.54粉末の回折結果と同じ位置に回折ピークが現れており、その強度比が全く変化していない。即ち、4配位位置のMgイオンは0V還元状態でも全く変化していないことがわかった。このときのLiMg0.5Ti1.54の充放電測定結果は、図10に示すようにほとんど充放電容量を示さず、スピネル型構造の4配位位置にMgイオンが存在する場合には、結晶構造内のリチウムイオン伝導トンネルをリチウムイオンが移動することができないと推察された。
図2に示すように、実施例1〜4のLiM0.5Ti1.54(M=Fe,Mn,Co及びZn)では、立方晶を仮定したときの(220)ピークが明確に現れており、(111)ピーク強度に比べ(311)ピーク強度が非常に高く、(311)ピークが最大ピーク強度であった。このことから、実施例1〜4も比較例1と同様に、Mイオン(M=Fe,Mn,Co及びZn)はスピネル型構造の4配位位置に存在していると推察された。一方、図3〜6に示すように、実施例1〜4の電極の0V還元状態及び3V再酸化状態でのX線回折結果では、全ての試料で、2θでの26°近傍、30°近傍、36°近傍及び43°近傍のX線回折ピークのパターンが変化した。即ち、Mイオン(M=Fe,Mn,Co及びZn)は、スピネル型構造の4配位位置に存在していたが6配位位置に移動していると推察された。その後、3V再酸化状態では、各々の負極活物質試料の粉末X線回折測定結果に戻っていることから、0V還元によって4配位位置から6配位位置に移動したMイオンは、3V再酸化過程により可逆的に4配位位置に戻ることがわかった。また、充放電容量について考察すると、一般に、Li4/3Ti5/34を活物質として用いた場合には、結晶構造内でのリチウムイオンの挿入位置の制限により充放電容量は160mAh/g程度に制限される。これに対し、このような実施例1〜4によれば、図8に示すように、250mAh/gもの高容量が得られることがわかった。なお、Li4/3Ti5/34の構造は、より詳しくは一般式Li[Li1/3Ti5/3]O4で表されるが、本発明のLiM0.5Ti1.54(M=Fe,Mn,Co及びZn)の構造は、これと異なり、一般式[Li1/21/2][Li1/2Ti3/2]O4で表されるものであると推察された。
また、表1に示すように、負極活物質の作製時において、原料にTi金属粉末を用いた実施例1〜3では、Ti金属粉末を用いずに合成した実施例5〜7に比べ、可逆率Rrev(%)、容量維持率Rcyc(%)共に優れることがわかった。したがって、Ti金属粉末を用いた合成手法が好ましく、スピネル型構造のMイオンの4配位・6配位位置の移動がより円滑になることがわかった。この理由は、負極活物質の作製時に、Ti金属が酸化すると共に、Mの原料であるMOx(x>1)中のMが十分還元されたためであると推察された。また、図9に示すように、LiM0.5Ti1.54(M=Fe,Mn,Co及びZn)のうち、LiFe0.5Ti1.54が最も充放電サイクル特性に優れていることがわかった。この理由は、スピネル型構造の4配位位置と6配位位置との可逆的な移動において、LiFe0.5Ti1.54中のFeイオンが最も優れているためであると推察された。これについては、FeイオンがMn,Co及びZnよりも酸化物イオンとの結合が弱いために結晶構造内の移動が効果的に起こりやすいためであると推察された。なお、Mイオンとしては、NiもFeやCoと同様の傾向を示すと推察された。
10 リチウム二次電池、11 集電体、12 正極活物質、13 正極シート、14 集電体、17 負極活物質、18 負極シート、19 セパレータ、20 非水電解液、22 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子。

Claims (7)

  1. 非水系のリチウム二次電池に用いられる負極活物質であって、
    スピネル型構造を有し、一般式LiM0.5Ti1.54(MはFe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上の元素)で表され、リチウムイオンを吸蔵・放出するリチウムチタン複合酸化物を含む、
    リチウム二次電池用負極活物質。
  2. 前記リチウムチタン複合酸化物は、一般式[Li1/21/2][Li1/2Ti3/2]O4で表される構造を有し、リチウムイオン伝導トンネルを形成する立方密充填酸素配列中の4配位位置と該4配位位置に隣接する6配位位置とを前記Mが移動することによりリチウムイオンを吸蔵・放出する、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  3. 前記リチウムチタン複合酸化物は、前記MがFeである、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  4. 前記リチウムチタン複合酸化物は、チタン金属を原料として製造されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  5. リチウムを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む正極と、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含む負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えたリチウム二次電池。
  6. 非水系のリチウム二次電池に用いられる負極活物質の製造方法であって、
    一般式LiM0.5Ti1.54(MはFe,Co,Ni,Mn及びZnのうちいずれか1以上の元素)の組成で表されるリチウムチタン複合酸化物となるようにチタン金属を原料として各元素を配合する配合工程と、
    前記配合した原料を焼成する焼成工程と、を含む、
    リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
  7. 前記焼成工程では、900℃以上の焼成温度で前記配合した原料を焼成し、スピネル型構造を有する前記リチウムチタン複合酸化物を作製する、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
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