JP2011080579A - クラッチ機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制する。
【解決手段】駆動側回転体を構成するプーリ30と従動側回転体を構成するアーマチュア40とを連結させる際には、第1、第2永久磁石51a、51bがプーリ30とアーマチュア40とを連結させる吸引磁力を発生させる吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を減少させる位置に可動部材52を変位させる。一方、プーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を増加させるとともに、吸引磁力に寄与しない非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗を減少させる位置に可動部材52を変位させる。これにより、プーリ30とアーマチュア40との連結状態および切り離した状態を誤動作なく維持できる。
【選択図】図4

Description

本発明は、動力の伝達を断続するクラッチ機構に関する。
従来、駆動側回転体から従動側回転体への回転駆動力の伝達の断続を、電磁石への通電の断続によって行う電磁式クラッチ機構が知られている。この種の電磁式クラッチ機構では、一般的に、電磁石に通電することで、駆動側回転体と従動側回転体とを連結させて回転駆動力を伝達するとともに、電磁石を非通電とすることで、駆動側回転体と従動側回転体とを切り離して回転駆動力の伝達を遮断している。
しかしながら、この種の電磁式クラッチ機構では、駆動側回転体と従動側回転体とを連結させて回転駆動力を伝達する際に、常時、電磁石に通電しなければならないため、動力伝達時の消費電力(エネルギ消費)が大きいという問題があった。
これに対して、特許文献1には、永久磁石を用いることで駆動側回転体と従動側回転体とを連結させる時あるいは駆動側回転体と従動側回転体とを切り離す時以外には、電磁石への通電を不要として消費電力の低減を狙った、いわゆる自己保持型のクラッチ機構が提案されている。
具体的には、特許文献1の自己保持型のクラッチ機構では、駆動側回転体を構成するロータおよび従動側回転体を構成するアーマチュアを備え、ロータの内側に永久磁石を配置している。さらに、ロータとアーマチュアとを切り離した際には、永久磁石がアーマチュアを引きつける磁力(吸引力)に対抗する反発力を発生させる板バネによって、ロータとアーマチュアとの間に予め定めた所定距離の空隙(エアギャップ)を形成している。
このエアギャップは、永久磁石が吸引力を発生させる磁気回路の磁気抵抗になっており、ロータとアーマチュアとの間に所定距離以上のエアギャップが形成されている場合は、永久磁石の吸引力が板バネの反発力よりも小さくなり、ロータとアーマチュアとを切り離した状態が維持される。
そして、ロータとアーマチュアとを連結させる際には、永久磁石の吸引力を補助するように電磁石に電磁力を発生させて、永久磁石と電磁石との双方の合計吸引力を板バネの反発力よりも大きくする。これによりロータとアーマチュアが連結すると、エアギャップがなくなり磁気抵抗が低減するので、電磁石を非通電状態としても永久磁石の吸引力のみでロータとアーマチュアとを連結させた状態が維持される。
一方、連結しているロータとアーマチュアとを切り離す際には、永久磁石の磁力を打ち消すように電磁石に電磁力を発生させて、永久磁石による吸引力を板バネの反発力よりも小さくする。これによりロータとアーマチュアが切り離れると、再びエアギャップによる磁気抵抗が増大するので、電磁石を非通電状態としてもロータとアーマチュアとを切り離した状態が維持される。
特公平2−2007号公報
しかしながら、特許文献1の自己保持型のクラッチ機構では、駆動側回転体(ロータ)と従動側回転体(アーマチュア)との間のエアギャップによる磁気抵抗によって、駆動側回転体と従動側回転体とを切り離した状態を維持している。そのため、所定距離以上のエアギャップを確保できなくなると、電磁石によって永久磁石の吸引力を補助しなくても駆動側回転体と従動側回転体が連結されてしまう。
しかも、一旦、駆動側回転体と従動側回転体が連結されてしまうと、永久磁石の吸引力によって連結状態が維持されてしまうので、不必要な動力伝達がなされてしまうというクラッチ機構の誤動作の問題が生じる。
例えば、特許文献1の自己保持型のクラッチ機構を、エンジンから車両用空調装置に適用される冷凍サイクルの圧縮機への動力伝達の断続に適用した場合、エンジンおよび車両そのものの振動によって、エアギャップが縮小してしまうおそれがある。そして、エアギャップが縮小して、エンジン側の駆動側回転体と圧縮機側の従動側回転体が連結されてしまうと、エンジンから圧縮機へ不必要な動力伝達がなされてしまう。
上記点に鑑み、本発明は、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、駆動源(10)からの回転駆動力によって回転する駆動側回転体(30)と、駆動側回転体(30)に連結されることによって回転駆動力が伝達される従動側回転体(40)と、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを連結させる吸引磁力を発生させる永久磁石(51a、51b)と、磁性材で形成されているとともに、変位することによって永久磁石(51a、51b)が吸引磁力を発生させる吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を増減させる可動部材(52)と、可動部材(52)を変位させる可動部材変位手段(53、54)とを備え、
吸引用磁気回路(MCa)は、駆動側回転体(30)および従動側回転体(40)の双方の少なくとも一部を含んで構成され、
駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを連結させる際には、可動部材変位手段(53、54)が、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を減少させる位置に、可動部材(52)を変位させ、
駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを切り離す際には、可動部材変位手段(53、54)が、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)が連結されているときよりも、吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を増加させるとともに、吸引用磁気回路(MCa)とは異なる非吸引用磁気回路(MCb)の磁気抵抗を減少させる位置に、可動部材(52)を変位させるクラッチ機構を特徴とする。
これによれば、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを連結させる際には、可動部材変位手段(53、54)が、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)が切り離されているときよりも吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を減少させる位置に、可動部材(52)を変位させるので、吸引用磁気回路(MCa)の磁束量を増加させることができる。
従って、吸引磁力を増加させて、永久磁石(51a、51b)の吸引磁力によって、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを連結させることができる。さらに、吸引用磁気回路(MCa)の磁束量が増加することによって、可動部材(52)の位置を、吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を減少させる位置に保持することができる。つまり、エネルギ消費を要することなく、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)との連結状態を維持できる。
一方、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを切り離す際には、可動部材変位手段(53、54)が、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)が連結されているときよりも吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を増加させる位置に、可動部材(52)を変位させるので、吸引磁力を減少させることができる。これにより、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを切り離すことができる。
また、この際、可動部材変位手段(53、54)が、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)が連結されているときよりも非吸引用磁気回路(MCb)の磁気抵抗を減少させる位置に、可動部材(52)を変位させるので、非吸引用磁気回路(MCb)の磁束量を増加させることができる。
そして、非吸引用磁気回路(MCb)の磁束量が増加することによって、可動部材(52)の位置を、非吸引用磁気回路(MCb)の磁気抵抗を減少させる位置に保持することができる。つまり、エネルギ消費を要することなく、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを切り離した状態を維持できる。
さらに、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを切り離した状態では、可動部材(52)が非吸引用磁気回路(MCb)の磁気抵抗を減少させる位置に保持されるので、振動などによる外力によって、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)との相対距離が近づいたとしても、吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗はある程度までしか減少しない。
従って、永久磁石(51a、51b)の吸引磁力が、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを連結させることのできる程度まで増加してしまうことがない。その結果、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のクラッチ機構において、可動部材変位手段は、電力を供給されることによって電磁力を発生させる電磁石(53、54)で構成されており、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを連結させる際には、電磁石(53、54)は、吸引磁力を増加させるように電磁力を発生させ、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを切り離す際には、電磁石(53、54)は、前記吸引磁力を減少させるように電磁力を発生させることを特徴とする。
これによれば、可動部材変位手段を電磁石(53、54)で構成しているので、吸引用磁気回路(MCa)を通過する磁束量が増加するように、電磁石(53、54)に電磁力を発生させることで、容易に、吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を減少させる位置に、可動部材(52)を変位させることができる。
また、吸引用磁気回路(MCa)を通過する磁束量が減少するように、電磁石(53、54)に電磁力を発生させることで、容易に、吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を増加させるとともに、非吸引用磁気回路(MCb)の磁気抵抗を減少させる位置に、可動部材(52)を変位させることができる。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のクラッチ機構において、駆動側回転体(30)は、磁性材で形成されて回転軸方向に伸びる円筒状の内側円筒部(32)を有し、吸引用磁気回路(MCa)は、内側円筒部(32)の少なくとも一部を含んで構成され、永久磁石(51b)および可動部材変位手段(54)は、内側円筒部(32)の外周側に配置され、さらに、可動部材(52)は、永久磁石(51b)および前記可動部材変位手段(54)よりも外周側に配置されていることを特徴とする。
これによれば、内側円筒部(32)の外周側に永久磁石(51b)および可動部材変位手段(54)が配置され、永久磁石(51b)および可動部材変位手段(54)の外周側に可動部材(52)が配置されるので、内側円筒部(32)および可動部材(52)によって吸引用磁気回路(MCa)を構成することができる。従って、クラッチ装置全体としての小型化を図ることができる。
さらに、請求項4に記載の発明のように、駆動側回転体(30)は、回転軸方向に伸びる円筒状の外側円筒部(31)を有し、外側円筒部(31)は、非磁性材で形成されているとともに、可動部材(52)の外周側に配置されていてもよい。
さらに、請求項5に記載の発明のように、駆動側回転体(30)は、内側円筒部(32)および外側円筒部(31)の回転軸方向一端側同士を連結する端面部(33)を有し、端面部(33)には、その表裏を貫通するスリット穴(33a、33b)が形成されており、可動部材(52)は、スリット穴(33a、33b)の外周側に配置されていてもよい。
これにより、確実に内側円筒部(32)および可動部材(52)によって吸引用磁気回路(MCa)を構成することができる。
請求項6に記載の発明では、請求項1または2に記載のクラッチ機構において、駆動側回転体(30)は、磁性材で形成されて回転軸方向に伸びる円筒状の外側円筒部(31)、および、磁性材で形成されて回転軸方向に伸びる円筒状の内側円筒部(32)を有し、吸引用磁気回路(MCa)は、外側円筒部(31)および内側円筒部(32)のうち、少なくとも一方の一部を含んで構成され、永久磁石(51a、51b)、可動部材(52)および可動部材変位手段(53、54)は、外側円筒部(31)の内周側、かつ、内側円筒部(32)の外周側に配置されていることを特徴とする。
これによれば、駆動側回転体(30)の内部に、永久磁石(51a、51b)、可動部材(52)、および、可動部材変位手段(53、54)を配置することができ、クラッチ装置全体としての小型化を図ることができる。
さらに、具体的に、請求項7に記載の発明のように、請求項3ないし6のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、従動側回転体(40)は、内側円筒部(32)の回転軸方向一端側に配置されており、永久磁石(51a、51b)の磁極は、回転軸に垂直な方向に向いており、可動部材(52)の変位方向は、回転軸方向に一致しており、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを連結させる際には、可動部材変位手段(53、54)は、回転軸方向一端側に可動部材(52)を変位させ、駆動側回転体(30)と従動側回転体(40)とを切り離す際には、可動部材変位手段(53、54)は、回転軸方向他端側に可動部材(52)を変位させるようになっていてもよい。
これにより、極めて容易に、請求項1ないし6のいずれかに記載されたクラッチ機構を実現できる。
さらに、具体的に、請求項8に記載の発明のように、請求項3ないし7のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、可動部材(52)は、回転軸方向に伸びる円筒状に形成されていてもよい。
また、請求項9に記載の発明のように、請求項3ないし8のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、電磁石(53、54)は、回転軸の周りに円環状に配置されていてもよい。
また、請求項10に記載の発明のように、請求項3ないし9のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、永久磁石(51a、51b)は、回転軸の周りに円環状に配置されていてもよい。
請求項11に記載の発明では、請求項3ないし10のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、可動部材(52)には、回転軸方向に垂直な厚み寸法を、可動部材(52)の両端側に向かって徐々に縮小させるテーパ部(52c)が設けられていることを特徴とする。これによれば、可動部材(52)が変位する際の摺動抵抗を低減できるとともに、可動部材(52)の軽量化を図ることができるので、可動部材(52)を変位させる際に必要なエネルギ消費をより一層低減できる。
請求項12に記載の発明では、請求項1ないし11のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、可動部材(52)の表面には、可動部材(52)が変位する際の摺動抵抗を低減する表面処理が施されていることを特徴とする。これによれば、可動部材(52)が変位する際の摺動抵抗を低減できるので、可動部材(52)を変位させる際に必要なエネルギ消費をより一層低減できる。
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし12のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、可動部材(52)の変位に伴う可動部材(52)の摩耗を抑制する摩耗抑制部材(60a〜60f)を備えることを特徴とする。これによれば、可動部材(52)の摩耗を抑制することができる。
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし13のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、可動部材(52)の可動範囲を規制する可動範囲規制手段(52b、57a)を備えることを特徴とする。
これにより、可動部材(52)が、駆動側回転体(30)に接触してしまうこと、および、駆動側回転体(30)とともに回転してしまうことを防止できる。なお、本請求項における可動範囲とは、可動部材(52)の変位方向における可動範囲のみを意味するものではなく、駆動側回転体(30)の回転方向における可動範囲等を含む意味である。
さらに、請求項15に記載の発明では、請求項14に記載のクラッチ機構において、可動範囲規制手段は、可動部材(52)が変位した際に可動部材(52)に当接する当接部(57a)を有し、可動部材(52)と当接部(57a)との間には、可動部材(52)と当接部(57a)が当接する際の衝撃を緩和する緩衝部材が配置されていることを特徴とする。これによれば、可動部材(52)と当接部(57a)が当接する際の衝撃緩和および衝突音低減を図ることができる。
また、請求項16に記載の発明のように、請求項1ないし15のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、前記可動部材変位手段は、電力を供給されることによって電磁力を発生させる複数の電磁石(53、54)で構成されていてもよい。
さらに、請求項17に記載の発明のように、請求項2および16に記載のクラッチ機構の電磁石(53、54)として、非磁性材にて形成された円筒状のボビン(61、62)に巻き線が巻き付けられることによって形成されたものが採用されていてもよい。これにより、ボビン(61、62)に直接かつ容易に巻き線を巻き付けることができるので、電磁石(53、54)を製造する際の作業性を向上させることができる。
請求項18に記載の発明では、請求項1ないし17のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、磁性材で形成されるとともに、永久磁石(51b、52b)に接触するように配置されたヨーク部材(63)を備えることを特徴とする。
これによれば、永久磁石(51b、52b)の使用量(容積)の適切化を図ることができ、クラッチ機構全体としての製造コスト低減を図ることができる。さらに、ヨーク部材(53)を備えているので、不必要な磁気抵抗を発生させることなく、効率的な磁気回路形成を図ることができる。さらに、請求項19に記載の発明のように、請求項18に記載のクラッチ機構において、ヨーク部材(63)は、永久磁石(51b、52b)に固定されていることが望ましい。
また、請求項20に記載の発明のように、請求項1ないし19のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、永久磁石(51a、51b)は、複数設けられていてもよい。例えば、請求項10のように永久磁石(51a、51b)が回転軸の周りに円環状に配置されている場合は、軸方向に複数の永久磁石(51a、51b)を配置してもよいし、径方向に配置してもよいし、さらに、径方向に配置してもよい。
請求項21に記載の発明では、請求項4ないし6のいずれか1つに記載のクラッチ機構において、外側円筒部(31)の内周側には、外側円筒部(31)の内部側から外部側へ流れる気流を生じさせる羽根(31a)が設けられていることを特徴とする。これによれば、駆動側回転体(30)の外側円筒部(31)の内部に異物が侵入してしまうことを抑制できる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
第1実施形態のクラッチ機構が適用される冷凍サイクル装置の全体構成図である。 第1実施形態のクラッチ機構の軸方向断面図である。 図2のB−B断面図である。 (a)は、第1実施形態のアーマチュアとプーリが連結された状態を説明するための説明図であり、(b)は、連結された状態のアーマチュアとプーリとを切り離す際の説明図であり、(c)は、アーマチュアとプーリが切り離された状態を説明するための説明図であり、(d)は、切り離された状態のアーマチュアとプーリを連結させる際の説明図である。 第2実施形態における図4に対応する説明図である。 (a)は、比較例のアーマチュアとプーリが連結された状態の磁気回路を説明するための説明図であり、(b)は、アーマチュアとプーリが切り離された状態の磁気回路を説明するための説明図である。 第2実施形態の変形例を説明する説明図である。 第3実施形態における図4に対応する説明図である。 第4実施形態における図4に対応する説明図である。 第4実施形態の変形例を説明する説明図である。 第4実施形態の別の変形例を説明する説明図である。 第4実施形態の別の変形例を説明する説明図である。 第5実施形態における図2のC部に対応する断面図である。 第5実施形態の変形例における図2のC部に対応する断面図である。 第6実施形態における図2のC部に対応する断面図である。 第6実施形態における図3に対応するB−B断面図である。 第6実施形態の変形例における図2のC部に対応する断面図である。 第6実施形態の変形例における図3に対応するB−B断面図である。 第7実施形態および第7実施形態の変形例における図2のC部に対応する断面図である。 第8実施形態における図2のC部に対応する断面図である。 ステータプレート、第1、第2ボビンの分解斜視図である。 第8実施形態の変形例の第1ボビンの外観斜視図である。 第8実施形態の変形例における図2のC部に対応する断面図である。 第9実施形態における図3に対応するB−B断面図である。 図24のD−D断面図である。 第10実施形態のプーリの軸方向拡大断面図である。 第11実施形態のクラッチ機構の軸方向断面図である。 図27のB−B断面図である。 第11実施形態における図4に対応する説明図である。 第12実施形態における図27のC部に対応する断面図である。 第13実施形態における図27のC部に対応する断面図である。 第13実施形態の変形例を説明する説明図である。 第13実施形態の別の変形例を説明する説明図である。 第13実施形態の別の変形例を説明する説明図である。 第13実施形態の別の変形例を説明する説明図である。 第14実施形態における図29に対応する説明図である。
(第1実施形態)
図1〜4により、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態のクラッチ機構20が適用された車両用空調装置の冷凍サイクル装置1の全体構成図である。冷凍サイクル装置1は、冷媒を吸入して圧縮する圧縮機2、圧縮機2吐出冷媒を放熱させる放熱器3、放熱器3流出冷媒を減圧膨張させる膨張弁4、および、膨張弁4にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器5を環状に接続したものである。
圧縮機2は、車両走行用駆動力を出力する駆動源であるエンジン10から回転駆動力を得て、圧縮機構を回転駆動させることで冷媒を吸入して圧縮する。なお、圧縮機構としては、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構、あるいは、外部からの制御信号によって吐出容量を調整可能に構成された可変容量型圧縮機構のいずれを採用してもよい。
さらに、エンジン10の回転駆動力は、エンジン10の回転駆動軸に連結されたエンジン側プーリ11、圧縮機2に連結されたプーリ一体型のクラッチ機構20、および、エンジン側プーリ11およびクラッチ機構20の外周に掛けられたVベルト12を介して、圧縮機2へ伝達される。
クラッチ機構20は、エンジン10からの回転駆動力によって回転する駆動側回転体を構成するプーリ30と、圧縮機2の回転軸2aに連結された従動側回転体を構成するアーマチュア40とを有し、このプーリ30とアーマチュア40とを連結あるいは切り離すことで、エンジン10から圧縮機2への回転駆動力の伝達を断続するものである。
つまり、クラッチ機構20がプーリ30とアーマチュア40とを連結すると、エンジン10の回転駆動力が圧縮機2に伝達されて、冷凍サイクル装置1が作動する。一方、クラッチ機構20がプーリ30とアーマチュア40とを切り離すと、エンジン10の回転駆動力が圧縮機2に伝達されることはなく、冷凍サイクル装置1も作動しない。なお、クラッチ機構20は、冷凍サイクル装置1の各種構成機器の作動を制御する空調制御装置6から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
クラッチ機構20の詳細構成については、図2、3を用いて説明する。なお、図2は、クラッチ機構20の軸方向断面図であり、図3は、図2のB−B断面図である。また、図2では、プーリ30とアーマチュア40とを連結させた状態を図示している。さらに、以下の各実施形態の図面では、図2と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
図2、3に示すように、クラッチ機構20は、駆動側回転体を構成するプーリ30、従動側回転体を構成するアーマチュア40、および、プーリ30とアーマチュア40とを連結させる吸引磁力を発生させる永久磁石51a、51b等を有するステータ50を備えている。
まず、プーリ30は、圧縮機2の回転軸2aに対して同軸上に配置された円筒状の外側円筒部31、この外側円筒部31の内周側に配置されるとともに圧縮機2の回転軸2aに対して同軸上に配置された円筒状の内側円筒部32、並びに、外側円筒部31および内側円筒部32の回転軸方向一端側同士を結ぶように回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成された端面部33を有している。
つまり、プーリ30は二重円筒構造で構成され、その軸方向断面形状は、図2に示すように、回転軸に対して線対称に位置付けられる2つのコの字形状となり、外側円筒部31の内周面、内側円筒部32の外周面および端面部33の内側面によって、中空円柱状空間が形成される。また、図2のB−B断面における軸方向垂直断面形状は、図3に示すように二重円形状になる。
外側円筒部31、内側円筒部32、および、端面部33は、いずれも磁性材(例えば、鉄)にて一体的に形成され、後述する吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbの一部を構成する。外側円筒部31の外周側には、Vベルト12が掛けられるV溝(具体的には、ポリV溝)が形成されている。内側円筒部32の内周側には、ボールベアリング34の外側レースが固定されている。
ボールベアリング34は、圧縮機2の外殻を形成するハウジングに対して、プーリ30を回転自在に固定するものである。そのため、ボールベアリング34の内側レースは、圧縮機2のハウジングに設けられたハウジングボス部2bに固定されている。なお、ハウジングボス部2bは、圧縮機2の回転軸2aに対して同軸上に延びる円筒状に形成されている。
端面部33には、軸方向から見たときに径方向に2列に並んだ円弧状の複数のスリット穴33a、33bが形成されている。このスリット穴33a、33bは、端面部33の表裏を貫通している。また、端面部33の外側面は、プーリ30とアーマチュア40が連結された際に、アーマチュア40と接触する摩擦面を形成している。
そこで、本実施形態では、端面部33の表面の一部に、端面部33の摩擦係数を増加させるための摩擦部材35を配置している。この摩擦部材35は、非磁性材で形成されており、具体的には、アルミナを樹脂で固めたものや、金属粉末(例えば、アルミニウム粉末)の焼結材を採用できる。
次に、アーマチュア40は、磁性材(例えば、鉄)にて形成され、吸引用磁気回路MCaの一部を構成する。より具体的には、アーマチュア40は、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する貫通穴が形成された円板状部材である。このアーマチュア40の回転中心は、回転軸に対して同軸上に配置されている。
アーマチュア40には、プーリ30の端面部33と同様に、軸方向から見たときに円弧状の複数のスリット穴40aが形成されている。このスリット穴40aは、端面部33の径方向内側のスリット穴33aと端面部33の径方向外側のスリット穴33bとの間に位置付けられている。すなわち、アーマチュア40のスリット穴40aは、端面部33の径方向内側のスリット穴33aの外周側であって、かつ、端面部33の径方向外側のスリット穴33bの内周側に位置付けられている。
また、アーマチュア40の一端側の平面は、プーリ30の端面部33に対向しており、プーリ30とアーマチュア40が連結された際に、プーリ30と接触する摩擦面を形成している。さらに、アーマチュア40の他端側の平面には、リベット41によって略円盤状のアウターハブ42が連結されている。
アウターハブ42は、後述するインナーハブ43とともに、アーマチュア40と圧縮機2の回転軸2aとを連結する連結部材を構成している。アウターハブ42とインナーハブ43は、それぞれ回転軸方向に延びる円筒部42a、43aを有しており、アウターハブ42の円筒部42aの内周面およびインナーハブ43の円筒部43aの外周面には、弾性部材である円筒状のゴム45が加硫接着されている。このゴム45の材質としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム)等を採用できる。
さらに、インナーハブ43は、圧縮機2の回転軸2aに設けられたネジ穴にボルト44によって締め付けられることによって固定されている。なお、インナーハブ43と圧縮機2の回転軸2aとの固定には、スプライン(セレーション)あるいはキー溝などの締結手段を用いてもよい。
これにより、アーマチュア40、アウターハブ42、ゴム45、インナーハブ43、圧縮機2の回転軸2aが連結され、プーリ30とアーマチュア40が連結されると、アーマチュア40、アウターハブ42、ゴム45、インナーハブ43、圧縮機2の回転軸2aがプーリ30とともに回転する。
また、ゴム45は、アウターハブ42に対してプーリ30から離れる方向に弾性力を作用させている。この弾性力により、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態では、アウターハブ42に連結されたアーマチュア40の一端側の平面とプーリ30の端面部33の外側面との間に予め定めた所定間隔の隙間δ(後述する図4参照)が形成される。
次に、ステータ50は、吸引磁力を発生させる複数の永久磁石51a、51b、変位することによって永久磁石51a、51bが吸引磁力を発生させる吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を増減させる可動部材52、可動部材52を変位させる可動部材変位手段としての第1、第2電磁石53、54、および、永久磁石51a、51bおよび第1、第2電磁石53、54の固定部材としてのステータプレート56を有して構成される。
本実施形態では、複数の永久磁石として、第1永久磁石51aおよび第2永久磁石51bの2つが採用されている。第1、第2永久磁石51a、51bは、それぞれ円筒状に形成されて、第1永久磁石51aの内周側に第2永久磁石51bが圧縮機2の回転軸2aに対して同軸上に配置されている。換言すると、本実施形態の第1、第2永久磁石51a、51bは、圧縮機2の回転軸2aの周りに円環状に配置されている。
さらに、第1、第2永久磁石51a、51bの磁極は回転軸に垂直な方向に向いており、対向する円筒面の磁極が同一の極性となっている。具体的には、第1永久磁石51aの磁極は外周側がS極であり、内周側がN極になっており、第2永久磁石51bの磁極は外周側がN極であり、内周側がS極になっている(後述する図4参照)。さらに、第1、第2永久磁石51a、51bとして、ネオジウム(ネオジム)やサマリウムコバルトを採用することができる。
また、第1電磁石53は、2つの第1コイル部53a、第2コイル部53bに分割されており、第1永久磁石51aの軸方向両側に、第1永久磁石51aを挟み込むように配置されている。なお、第1コイル部53aおよび第2コイル部53bは、同一の巻き線を2つに分割したものなので、一方に通電することで、他方にも同時に通電することができる。
より具体的には、第1コイル部53aは、第1永久磁石51aに対して、プーリ30の端面部33側に配置され、第2コイル部53bは、第1永久磁石51aに対して、プーリ30の端面部33の反対側(後述するステータプレート56側)に配置される。従って、本実施形態の第1電磁石53は、圧縮機2の回転軸2aの周りに円環状に配置されている。
そして、第1コイル部53a、第1永久磁石51aおよび第2コイル部53bは、接着剤等で互いに一体的に固定されて、円筒状の第1構造体55aを形成している。もちろん、第1コイル部53a、第1永久磁石51aおよび第2コイル部53bを樹脂でモールディングすることによって一体的に固定してもよい。
第2電磁石54の基本的構成は、第1電磁石53と同様である。従って、第2電磁石54は、2つの第3コイル部54a、第4コイル部54bに分割されている。さらに、第3コイル部54aおよび第4コイル部54bは、第2永久磁石51bの軸方向両側に、第2永久磁石51bを挟み込むように配置されている。
より具体的には、第3コイル部54aは、第2永久磁石51bに対して、プーリ30の端面部33側に配置され、第4コイル部54bは、第2永久磁石51bに対して、プーリ30の端面部33の反対側に配置されている。そして、第2永久磁石51bおよび第2電磁石54は、第1永久磁石51aおよび第1電磁石53と同様に、円筒状の第2構造体55bを構成している。
可動部材52は、磁性材(例えば、鉄)にて形成され、圧縮機2の回転軸2aに対して同軸上に延びる円筒状部材である。そして、可動部材52は、第1構造体55aの内周側であって、かつ、第2構造体55bの外周側に、回転軸方向に同軸上に変位可能に配置されている。従って、可動部材52の変位方向は、圧縮機2の回転軸2a方向に一致する。
さらに、可動部材52は、軸方向から見たときに、端面部33の径方向内側のスリット穴33aと径方向外側のスリット穴33bとの間に位置付けられている。また、可動部材52の外周面および内周面には、可動部材52の変位による摩耗の低減、および、可動部材52の変位時の摺動抵抗を低減するための表面処理が施されている。この表面処理としては、具体的に、クロムメッキ、亜鉛メッキ等の金属メッキ処理、苛性被膜処理を採用できる。
また、可動部材52の回転軸方向の全長は、第1構造体55aの回転軸方向の全長および第2構造体55bの回転軸方向の全長よりも短く形成されている。これにより、可動部材52が、プーリ30の端面部33側に移動すると、第1、第2永久磁石51a、51bがプーリ30の端面部33の反対側に形成する磁気回路の磁気抵抗を増加させる空隙(エアギャップ)が形成される。
逆に、可動部材52が、プーリ30の端面部33の反対側に移動すると、第1、第2永久磁石51a、51bがプーリ30の端面部33側に形成する磁気回路の磁気抵抗を増加させる空隙(エアギャップ)が形成される。
ステータプレート56は、第1構造体55aおよび第2構造体55bが接着等の接合手段によって固定される固定部材であるとともに、磁性材(例えば、鉄)にて形成され、非吸引用磁気回路MCbの一部を構成する。より具体的には、ステータプレート56は、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する貫通穴が形成された円板状部材である。
さらに、ステータプレート56は、圧縮機2のハウジングにスナップリング等の固定手段によって固定されている。また、ステータプレート56を軸方向から見た際の外周形状は、プーリ30の中空円柱状空間の開口側の外周形状と同等の外径を有する円形状になっている。
そして、このステータプレート56が、プーリ30の中空円柱状空間の開口側を閉塞するように配置されることによって、第1、第2構造体55a、55bおよび可動部材52が、プーリ30の中空円柱状空間の内部に位置付けられる。すなわち、第1、第2永久磁石51a、51b、可動部材52、および、第1、第2電磁石53、54が、プーリ30の外側円筒部31の内周側、かつ、内側円筒部32の外周側に配置される。
この際、第1構造体55aの外周側とプーリ30の外側円筒部31の内周側との間には隙間δ1が設けられ、第2構造体55bの内周側と内側円筒部32の外周側との間には隙間δ2が設けられ、第1、第2構造体55a、55bのうち、プーリ30の端面部33側の端部と端面部33との間には隙間δ3が設けられている。これにより、プーリ30が回転しても、第1、第2構造体55a、55bに接触してしまうことを防止できる。
さらに、ステータプレート56には、図2、3に示すように、複数の略円柱状のピン57(本実施形態では、3つ)が圧入やかしめ等の固定手段によって固定されている。この複数のピン57は、非磁性材(例えば、アルミニウム)で形成されている。さらに、複数のピン57の頂部側(プーリ30の端面部33側)には、ステータプレート56に固定される根本側よりも外径が拡大した拡径部57aが形成されている。
一方、可動部材52には、ピン57が収容されるピン用穴部52aが設けられており、ピン用穴部52aのステータプレート56側の端部には、拡径部57aよりも径の小さい係止穴52bが形成されている。これにより、可動部材52がプーリ30の端面部33へ変位しても、拡径部57aと係止穴52bが当接することによって、可動部材52の可動範囲が規制される。
その結果、可動部材52がプーリ30の端面部33へ変位しても、可動部材52と端面部33との間には隙間δ4が設けられ、プーリ30が回転しても、可動部材52に接触することを防止でき、可動部材52が回転軸周りに回転してしまうことを防止できる。つまり、本実施形態のピン57の拡径部57aおよびピン用穴部52aの係止穴52bは、可動範囲規制手段を構成し、ピン57の拡径部57aは当接部としての機能を果たす。
また、拡径部57aおよび係止穴52bのいずれか一方のうち、可動部材52がプーリ30の端面部33へ変位した際に、拡径部57aが係止穴52bに当接する部位には、ゴム等の弾性部材や樹脂等の図示しない緩衝部材が接合されている。これにより、拡径部57aと係止穴52bとの間に緩衝部材が配置されて、拡径部57aと係止穴52bが当接する際の衝撃の緩和および衝突音(作動音)の低減を図ることができる。
次に、図4に基づいて、上記構成における本実施形態のクラッチ機構20の作動を説明する。なお、図4は、図2のC部の断面図を用いた説明図であり、より詳細には、図4(a)は、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態を説明するための説明図であり、図4(b)は、連結された状態のプーリ30とアーマチュア40とを切り離す際の説明図であり、図4(c)は、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態を説明するための説明図であり、図4(d)は、切り離された状態のプーリ30とアーマチュア40を連結させる際の説明図である。また、図4では、図示の明確化のため、可動部材52以外の断面ハッチングを省略している。
まず、図4(a)に示すように、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態では、可動部材52が、プーリ30の端面部33側(回転軸方向一端側)に移動している。この際、本実施形態では、前述の如く、プーリ30の端面部33のスリット穴33a、33bおよびアーマチュア40のスリット穴40aが形成されているので、図4(a)の太実線に示す磁気回路の磁気抵抗が減少して、この磁気回路によって生じる磁力が増加する。
すなわち、第1永久磁石51aによって形成される可動部材52、端面部33、アーマチュア40、外側円筒部31の順で磁束が通過する磁気回路、および、第2永久磁石51bによって形成される可動部材52、端面部33、アーマチュア40、内側円筒部32の順で磁束が通過する磁気回路の磁気抵抗が、可動部材52がステータプレート56側に移動しているときよりも減少して、これらの磁気回路によって生じる磁力が増加する。
さらに、図4(a)の太実線に示す磁気回路によって生じる磁力は、プーリ30とアーマチュア40とを連結させる吸引磁力となっている。従って、図4(a)の太実線に示す磁気回路は、本実施形態における吸引用磁気回路MCaである。また、可動部材52が、プーリ30の端面部33側に移動している際には、可動部材52とステータプレート56との間に空隙(エアギャップ)が形成される。
この空隙は、図4(a)の細破線に示すような、第1永久磁石51aによって形成される可動部材52、ステータプレート56、外側円筒部31の順に磁束が通過する磁気回路、および、第2永久磁石51bによって形成される可動部材52、ステータプレート56、内側円筒部32の順に磁束が通過する磁気回路の磁気抵抗を増加させ、これらの磁気回路によって生じる磁力を減少させる。
なお、図4(a)の細破線に示す磁気回路によって生じる磁力は、プーリ30とアーマチュア40とを連結させる吸引力として機能しない。従って、図4(a)の細破線に示す磁気回路は、本実施形態における吸引用磁気回路MCaとは異なる非吸引用磁気回路MCbである。
さらに、可動部材52が、プーリ30の端面部33側に移動している際には、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、プーリ30の端面部33側に維持される。
また、本実施形態では、ゴム45がプーリ30とアーマチュア40と離す方向に作用させる弾性力(反発力)が、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動している際の吸引磁力よりも小さくなるように設定されている。従って、第1、第2電磁石53、54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
次に、連結された状態のプーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、車両用空調装置の空調制御装置6が、図4(b)に示すように、第1、第2電磁石53、54に対して電力を供給する。より具体的には、第1、第2電磁石53、54が、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を減少させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を増加させる電磁力を発生させる。
これにより、図4(b)の細実線で示す吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、図4(b)の太破線で示す非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなり、可動部材52が、ステータプレート56側(回転軸方向他端側)へ移動する。この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗が減少して、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量がさらに増加する。その結果、可動部材52の位置はステータプレート56側に維持される。
また、可動部材52がステータプレート56側に移動すると、可動部材52とプーリ30の端面部33との間に空隙(エアギャップ)が形成される。この空隙によって、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が増加するので、吸引磁力が減少する。その結果、ゴム45による反発力が吸引磁力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が切り離される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達されなくなる。
次に、図4(c)に示すように、可動部材52がステータプレート56側に移動している際には、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動しているときよりも非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。
さらに、可動部材52がステータプレート56側に移動している際の吸引磁力は、ゴム45による反発力よりも小さいので、第1、第2電磁石53、54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、切り離された状態のプーリ30とアーマチュア40とを連結する際には、空調制御装置6が、図4(d)に示すように、第1、第2電磁石53、54に対して電力を供給する。より具体的には、第1、第2電磁石53、54が、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を増加させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を減少させる電磁力を発生させる。
これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなり、可動部材52が、プーリ30の端面部33側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が減少して、吸引用磁気回路MCaの磁束量がさらに増加する。その結果、吸引磁力がゴム45による反発力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が連結される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
本実施形態のクラッチ機構20は、上記の如く作動するので、以下のような優れた効果を得ることができる。
まず、プーリ30とアーマチュア40とを連結させる際には、可動部材変位手段を構成する第1、第2電磁石53、54が、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を増加させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を減少させる電磁力を発生させるので、可動部材52を、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を減少させる位置に、容易に変位させることができる。
これにより、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加して、吸引磁力がゴム45の弾性力(反発力)を上回るので、プーリ30とアーマチュア40とを連結させることができる。さらに、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加することによって、可動部材52の位置を、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を減少させる位置に保持することができる。
つまり、第1、第2電磁石53、54が、一度、可動部材52の位置を、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を減少させる位置に変位させると、可動部材52の位置を保持するためのエネルギ消費(電力消費)を要することなく、プーリ30とアーマチュア40との連結状態を維持できる。
次に、プーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、第1、第2電磁石53、54が、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束を減少させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束を増加させる電磁力を発生するので、可動部材52を、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を増加させる位置に、容易に変位させることができる。
これにより、吸引用磁気回路MCaの磁束量が減少して、ゴム45の弾性力(反発力)が吸引磁力を上回るので、プーリ30とアーマチュア40とを切り離すことができる。
さらに、この際、第1、第2電磁石53、54が、可動部材52を、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を増加させる位置に変位させるとともに、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗を減少させる位置に変位させるので、非吸引用磁気回路(MCb)の磁束量を増加させることができる。従って、可動部材52の位置を、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗を減少させる位置に保持することができる。
つまり、第1、第2電磁石53、54が、一度、可動部材52の位置を、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗を減少させる位置に変位させると、可動部材52の位置を保持するためのエネルギ消費(電力消費)を要することなく、プーリ30とアーマチュア40とを切り離した状態を維持できる。
そして、プーリ30とアーマチュア40とを切り離した状態では、可動部材52が非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗を減少させる位置に保持されるので、振動などによる外力によって、プーリ30とアーマチュア40との相対距離が近づいたとしても、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗はある程度までしか減少しない。
従って、第1、第2永久磁石51a、51bによる吸引磁力が、ゴム45の弾性力(反発力)を上回って、プーリ30とアーマチュア40とを連結させることができる程度まで増加してしまうことがない。その結果、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、第1、第2構造体55a、55bおよび可動部材52が、プーリ30の中空円柱状空間の内部に位置付けられているので、クラッチ機構20全体としての小型化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、プーリ30の端面部33のスリット穴33a、33bおよびアーマチュア40のスリット穴40aが形成されているので、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束を迂回させることができる。その結果、プーリ30側からアーマチュア40側へ通過する磁束、および、アーマチュア40側からプーリ30側へ通過する磁束量を増加させて、吸引磁力を増加させることができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、可動部材変位手段として、第1、第2電磁石53、54の2つの電磁石を採用した例を説明したが、本実施形態では、第1実施形態に対して、第1電磁石53を廃止して、第1電磁石53と同等の形状の非磁性材(例えば、アルミニウム)で形成されたリング部材58を採用して、第1構造体55aを構成している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図5に基づいて、本実施形態のクラッチ機構20の作動を説明する。なお、図5(a)〜(d)は、それぞれ第1実施形態の図4(a)〜(d)に対応する説明図である。また、図5では、図示の明確化のため、リング部材58の断面を網状ハッチングで表している。
まず、図5(a)に示すように、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態では、第1実施形態と同様に、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動している。従って、可動部材52がステータプレート56側に移動しているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加して、可動部材52の位置がプーリ30の端面部33側に維持される。
さらに、吸引磁力がゴム45の弾性力(反発力)を上回っているので、第2電磁石54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
次に、連結された状態のプーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、図5(b)に示すように、空調制御装置6が、第2電磁石54に対して、第1実施形態と同様に電力を供給する。これにより、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなり、可動部材52が、ステータプレート56側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加するので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。さらに、吸引用磁気回路MCaよって生じる吸引磁力が減少して、ゴム45による反発力が吸引磁力を上回るので、プーリ30とアーマチュア40が切り離される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達されなくなる。
次に、図5(c)に示すように、可動部材52がステータプレート56側に移動している際には、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動しているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。
さらに、可動部材52がステータプレート56側に移動している際の吸引磁力は、ゴム45による反発力よりも小さくなっているので、第2電磁石54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、切り離された状態のプーリ30とアーマチュア40とを連結する際には、図5(d)に示すように、空調制御装置6が、第2電磁石54に対して、第1実施形態と同様に電力を供給する。これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなり、可動部材52が、プーリ30の端面部33側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加する。その結果、吸引磁力がゴム45による反発力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が連結される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
本実施形態のように、可動部材変位手段を1つの電磁石(第2電磁石53)で構成しても、第1実施形態と全く同様に作動させることができる。従って、第1実施形態と同様に、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができる。もちろん、第1実施形態に対して、第2電磁石54を廃止して、第2電磁石54と同等の形状の非磁性材で形成されたリング部材58を用いて、第2構造体55bを構成してもよい。
なお、本実施形態では、非磁性材のリング部材58を採用して、第1構造体55aを構成しているが、リング部材58として磁性材で形成された部材を採用することは望ましくない。その理由は、図6に示すように、本実施形態において、磁性材を第1永久磁石51aの軸方向両側に配置してしまうと、磁気回路の短絡が生じてしまうからである。
このような磁気回路の短絡は、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を減少させてしまい、第1永久磁石51aの磁束の有効な活用を妨げる。なお、図6(a)、(b)は、それぞれリング部材58として磁性材で形成された部材を採用した比較例における図5(a)、(c)に対応する図面である。
従って、第1電磁石53を廃止した際に、非磁性材のリング部材58を採用して第1構造体55aを構成できない場合は、リング部材58が配置される部位を空隙としておくことが望ましい。
ところで、本実施形態では、第1電磁石53を廃止した例を説明したが、第1実施形態で説明したように、第1電磁石53は、それぞれ第1、第2コイル部53a、53bに分割されている。そこで、この第1、第2コイル部53a、53bのうち、いずれかを廃止して、本実施形態と同様の非磁性材のリング部材58を採用してもよい。
さらに、リング部材58を配置できない場合、あるいはリング部材58が配置される部位を空隙とすることができる場合は、リング部材58が配置される部位を空隙としてもよい。このことは、第2電磁石53を廃止する場合も同様である。
例えば、図7(a)に示すように、第1実施形態に対して、第1コイル部53aを廃止してもよい。また、図7(b)に示すように、第1実施形態に対して、第2コイル部53bを廃止して、リング部材58を採用してもよい。また、図7(c)に示すように、第1実施形態に対して、第3コイル部54aを廃止してもよい。また、図7(d)に示すように、第1実施形態に対して、第4コイル部54bを廃止して、リング部材58を採用してもよい。
さらに、図7(e)に示すように、第1実施形態に対して、第1コイル部53aおよび第4コイル部54bを廃止して、リング部材58を採用してもよい。また、図7(f)に示すように、第1実施形態に対して、第2コイル部53bおよび第3コイル部54aを廃止して、リング部材58を採用してもよい。
図7(a)〜(f)のように構成しても、第1実施形態と全く同様に作動させることができ、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができる。なお、図7(a)〜(f)は、それぞれ図5(a)に対応する図面であり、図示の明確化のために、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbを省略している。
(第3実施形態)
第1実施形態では、永久磁石として、第1、第2永久磁石51a、51bの2つの永久磁石を採用した例を説明したが、本実施形態では、第1実施形態に対して、第1永久磁石51aを廃止して、第1永久磁石51aと同等の形状の非磁性材(例えば、アルミニウム)で形成されたリング部材59を用いて、第1構造体55aを構成している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図8に基づいて、本実施形態のクラッチ機構20の作動を説明する。なお、図8(a)〜(d)は、それぞれ第1実施形態の図4(a)〜(d)に対応する説明図である。また、図8では、図示の明確化のため、リング部材59の断面を網状ハッチングで表している。
まず、図8(a)に示すように、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態では、第1実施形態と同様に、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動している。従って、可動部材52がステータプレート56側に移動しているときよりも、第2永久磁石51bのみによって形成される吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加して、可動部材52の位置は、プーリ30の端面部33側に維持される。
さらに、吸引磁力がゴム45の弾性力(反発力)を上回っているので、第1、第2電磁石53、54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
次に、連結された状態のプーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、図8(b)に示すように、空調制御装置6が、第1、第2電磁石53、54に対して、第1実施形態と同様に電力を供給する。これにより、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなり、可動部材52が、ステータプレート56側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加するので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。さらに、吸引用磁気回路MCaよって生じる吸引磁力が減少して、ゴム45による反発力が吸引磁力を上回るので、プーリ30とアーマチュア40が切り離される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達されなくなる。
次に、図8(c)に示すように、可動部材52がステータプレート56側に移動している際には、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動しているときよりも、第2永久磁石51bのみによって形成される非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。
さらに、可動部材52がステータプレート56側に移動している際の吸引磁力は、ゴム45による反発力よりも小さいので、第1、第2電磁石53、54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、切り離された状態のプーリ30とアーマチュア40とを連結する際には、空調制御装置6が、図8(d)に示すように、第1、第2電磁石53、54に対して、第1実施形態と同様に電力を供給する。これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなり、可動部材52が、プーリ30の端面部33側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加する。その結果、吸引磁力がゴム45による反発力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が連結される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
本実施形態のように、永久磁石を1つ(第2永久磁石51b)だけ用いても、第1実施形態と全く同様に作動させることができる。従って、第1実施形態と同様に、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができる。もちろん、第1実施形態に対して、第2電磁石54を廃止して、第2電磁石54と同等の形状の非磁性材で形成されたリング部材を用いて、第2構造体55bを構成してもよい。さらに、第2実施形態と同様にリング部材59が配置される部位を空隙としてもよい。
(第4実施形態)
第1実施形態では、それぞれ第1、第2永久磁石51a、51bおよび第1、第2電磁石53、54によって構成された第1、第2構造体55a、55bを採用した例を説明したが、本実施形態では、第1実施形態に対して、第1構造体55a全体を廃止している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、図9に基づいて、本実施形態のクラッチ機構20の作動を説明する。なお、図9(a)〜(d)は、それぞれ第1実施形態の図4(a)〜(d)に対応する説明図である。
まず、図9(a)に示すように、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態では、第1実施形態と同様に、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動している。従って、可動部材52がステータプレート56側に移動しているときよりも、第2永久磁石51bのみによって形成される吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加して、可動部材52の位置がプーリ30の端面部33側に維持される。
さらに、吸引磁力がゴム45の弾性力(反発力)を上回るので、第2電磁石54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
次に、連結された状態のプーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、図9(b)に示すように、空調制御装置6が、第2電磁石54に対して、第1実施形態と同様に電力を供給する。これにより、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなり、可動部材52が、ステータプレート56側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加するので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。さらに、吸引用磁気回路MCaよって生じる吸引磁力が減少して、ゴム45による反発力が吸引磁力を上回るので、プーリ30とアーマチュア40が切り離される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達されなくなる。
次に、図9(c)に示すように、可動部材52が、ステータプレート56側に移動している際には、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動しているときよりも、第2永久磁石51bのみによって形成される非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。
さらに、可動部材52がステータプレート56側に移動している際の吸引磁力は、ゴム45による反発力よりも小さいので、第2電磁石54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、切り離された状態のプーリ30とアーマチュア40とを連結する際には、図9(d)に示すように、空調制御装置6が、第2電磁石54に対して、第1実施形態と同様に電力を供給する。これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなり、可動部材52が、プーリ30の端面部33側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加する。その結果、吸引磁力がゴム45による反発力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が連結される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
本実施形態のように、第1構造体55a全体を廃止しても、第1実施形態と全く同様に作動させることができる。また、第1構造体55aが配置されていた部位に非磁性材を配置してもよい。もちろん、第2構造体55b全体を廃止してもよい。
ところで、本実施形態では、第1構造体55a全体を廃止した例を説明したが、第1実施形態で説明したように、第1構造体55aは、第1永久磁石51aおよび第1電磁石53(第1、第2コイル部53a、53b)によって構成されている。そこで、第1構造体55aから、第1永久磁石51a、第1、第2コイル部53a、53bのうち、いずれかを廃止して、非磁性材で形成されたリング部材を採用してもよいし、空隙としてもよい。
例えば、図10(a)に示すように、第1実施形態に対して、第1永久磁石51aおよび第1コイル部53aを廃止してもよい。また、図10(b)に示すように、第1実施形態に対して、第1永久磁石51aおよび第2コイル部53bを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図10(c)に示すように、第1実施形態に対して、第1永久磁石51aおよび第3コイル部54aを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図10(d)に示すように、第1実施形態に対して、第1永久磁石51aおよび第4コイル部54bを廃止して、リング部材を採用してもよい。
さらに、例えば、図11(a)に示すように、第1実施形態に対して、第2永久磁石51bおよび第1コイル部53aを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図11(b)に示すように、第1実施形態に対して、第2永久磁石51bおよび第2コイル部53bを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図11(c)に示すように、第1実施形態に対して、第2永久磁石51bおよび第3コイル部54aを廃止してもよい。また、図11(d)に示すように、第1実施形態に対して、第2永久磁石51bおよび第4コイル部54bを廃止して、リング部材を採用してもよい。
さらに、例えば、図12(a)に示すように、第1実施形態に対して、第1永久磁石51a、第1コイル部53aおよび第4コイル部54bを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図12(b)に示すように、第1実施形態に対して、第1永久磁石51a、第2コイル部53bおよび第3コイル部54aを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図12(c)に示すように、第1実施形態に対して、第1永久磁石51a、第3コイル部54aおよび第4コイル部54bを廃止して、リング部材を採用してもよい。
さらに、例えば、図12(d)に示すように、第1実施形態に対して、第2永久磁石51b、第1コイル部53aおよび第4コイル部54bを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図12(e)に示すように、第1実施形態に対して、第2永久磁石51b、第2コイル部53bおよび第3コイル部54aを廃止して、リング部材を採用してもよい。また、図12(f)に示すように、第1実施形態に対して、第2永久磁石51b、第1コイル部53aおよび第2コイル部53bを廃止して、リング部材を採用してもよい。
すなわち、図10(a)〜(d)、図11(a)〜(d)、図12(a)〜(f)のように構成しても、第1実施形態と全く同様に作動させることができる。従って、第1実施形態と同様に、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができる。
なお、図10(a)〜(d)、図11(a)〜(d)、図12(a)〜(f)は、それぞれ図9(a)に対応する図面であり、図示の明確化のために、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbを省略するとともに、非磁性材で形成されたリング部材の断面を網状ハッチングで表している。
(第5実施形態)
上述の各実施形態では、円筒状部材で構成された可動部材52を採用した例を説明したが、本実施形態では、図13に示すように、可動部材52の断面形状を変更している。なお、図13は、本実施形態における図2のC部の断面図に対応する図面である。また、図13では、図示の明確化のため、可動部材52以外の断面ハッチングを省略している。
つまり、上述の各実施形態では、可動部材52の軸方向断面が、矩形状となっているものを採用しているが、本実施形態では、図13に示すように、矩形状の角部にテーパ部52cが設けられたものを採用している。
このテーパ部52cは、可動部材52の変位方向に垂直な径方向の厚み寸法を軸方向両端側、すなわち、可動部材52の軸方向に垂直な厚み寸法を、その両端側に向かって徐々に縮小させるもので、可動部材52の全周に設けられている。より具体的には、本実施形態では、軸方向断面におけるテーパ部52cの形状が直線に形成されている。
もちろん、図14に示すように、軸方向断面におけるテーパ部52cの形状を径方向外周側あるいは内周側に向かって凸状の曲線として、軸方向断面が樽型となるように形成してもよい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
これによれば、可動部材52と第1、第2構造体55a、55bとの接触面積を低減させて、可動部材52と第1、第2構造体55a、55bとの接触抵抗を低減できる。従って、可動部材52が変位する際の摺動抵抗を低減できる。さらに、可動部材52の軽量化を図ることができる。その結果、可動部材52を変位させる際に必要な第1、第2電磁石53、54への供給電力を低減することができる。
(第6実施形態)
上述の各実施形態では、可動部材52の変位に伴う、可動部材52および第1、第2永久磁石51a、51bの摩耗を低減するために、可動部材52の表面に表面処理を施した例を説明したが、本実施形態では、さらに可動部材52に対して別部材として設けられた摩耗抑制部材を追加した例を説明する。
ここで、可動部材52および第1、第2永久磁石51a、51bの磨耗が進行すると、可動部材52と第1、第2永久磁石51a、51bとの隙間が広がり、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbを適切に形成することができなくなってしまう。このため、プーリ30とアーマチュア40との連結状態あるいはプーリ30とアーマチュア40とを切り離した状態を維持できなくなる等の問題が生じる。
そこで、本実施形態では、図15、16に示すように、第1永久磁石51aの内周側に円筒状の第1摩耗抑制部材60aを配置するとともに、第2永久磁石51bの外周側に円筒状の第2摩耗抑制部材60bを配置している。なお、図15は、本実施形態における図2のC部の断面図に対応する図面であり、図16は、本実施形態における図3に対応するB−B断面図である。また、図15では、図示の明確化のため、可動部材52以外の断面ハッチングを省略している。
第1、第2摩耗抑制部材60a、60bは、接着等の接合手段によって、それぞれ第1、第2永久磁石51a、51bに接合されている。また、第1、第2摩耗抑制部材60a、60bとしては、焼き入れ、メッキ等によって表面硬化させた磁性材(例えば、鉄)を採用できる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
これにより、可動部材52の変位に伴う、可動部材52および第1、第2永久磁石51a、51bの摩耗を抑制することができる。さらに、磁性材で形成された第1、第2摩耗抑制部材60a、60bがヨーク部材として機能するので、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbを効率的に形成することができる。さらに、第1、第2永久磁石51a、51bの使用量(容積)の低減を図ることができ、クラッチ機構20全体としての製造コスト低減を図ることもできる。
なお、本実施形態では、磁性材で形成された第1、第2摩耗抑制部材60a、60bを、第1、第2永久磁石51a、51bと可動部材52との間に配置した例を説明したが、図17に示すように、第1電磁石53の内周側に円筒状の第3、第4摩耗抑制部材60c、60dを配置するとともに、第2電磁石54の外周側に円筒状の第5、第6摩耗抑制部材60e、60fを配置してもよい。
この場合は、第3〜第6摩耗抑制部材60c〜60fとして、非磁性材(例えば、アルミニウム)を採用できる。これにより、可動部材52の変位に伴う、可動部材52および第1、第2永久磁石51a、51bの摩耗を抑制することができるとともに、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbの短絡を防止できる。
さらに、この場合は、可動部材52がいずれの位置に変位した場合であっても、回転軸垂直方向から見たときに、可動部材52と第3〜第6摩耗抑制部材60c〜60fが重合(オーバーラップ)していることが望ましい。これにより、可動部材52が変位する際に、第3〜第6摩耗抑制部材60c〜60fに引っかかってしまうことを防止できる。
また、第1〜第6摩耗抑制部材60a〜60fは、円筒状に限定されることなく、図18に示すように、回転軸の周方向に複数(例えば、4つ)に分割されていてもよい。また、第1摩耗抑制部材60aおよび第5、第6摩耗抑制部材60e、60fを組み合わせて採用してもよいし、第2摩耗抑制部材60bおよび第3、第4摩耗抑制部材60c、60dを組み合わせて採用してもよい。
(第7実施形態)
上述の各実施形態では、ピン57の拡径部57aおよびピン用穴部52aの係止穴52bによって可動範囲規制手段を構成した例を説明したが、本実施形態では、図19(a)に示すように、可動部材52に肉厚部52dを設けることによって、可動範囲規制手段を構成している。
なお、図19(a)は、本実施形態における図2のC部の断面図に対応する図面であり、図19(b)〜(d)は、本実施形態の変形例を示す図面である。また、図19では、図示の明確化のため、可動部材52以外の断面ハッチングを省略している。
具体的には、本実施形態の可動部材52は、回転軸方向両端側に中央側よりも回転軸径方向の厚みを増加させた肉厚部52dを有している。つまり、本実施形態の可動部材52は、図19(a)に示すように、軸方向断面がH型に形成されている。さらに、本実施形態では、第1永久磁石51aの内径を第1電磁石53の内径よりも小さくし、第2永久磁石51bの外径を第2電磁石54の外径をよりも大きく形成している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
これにより、可動部材52が変位した際に、可動部材52の肉厚部52dと第1、第2永久磁石51a、51bが当接することによって、可動部材52の回転軸方向の可動範囲が規制される。つまり、本実施形態では、肉厚部52dおよび第1、第2永久磁石51a、51bによって可動範囲規制手段が構成され、第1、第2永久磁石51a、51bが当接部としての機能を果たす。
また、可動部材52が変位した際に、可動部材52の拡径部52dと第1、第2永久磁石51a、51bが当接する部位には、ゴム等の弾性部材や樹脂等で形成された図示しない緩衝部材が配置されている。これにより、拡径部57aと係止穴52bが当接する際の衝撃緩和および作動音低減を図ることができる。
さらに、本実施形態の変形例として、図19(b)に示すように、可動部材52の回転軸方向中央部に両端部よりも回転軸径方向の厚みを増加させた肉厚部52eを設けて、軸方向断面が略十字型に形成したもの採用することもできる。この場合は、第1永久磁石51aの内径を第1電磁石53の内径よりも大きくし、第2永久磁石51bの外径を第2電磁石54の外径をよりも小さく形成する。
また、可動部材52の肉厚部52eと第1、第2電磁石53、54が当接する部位に、緩衝部材が配置されている。これにより、肉厚部52eおよび第1、第2永久磁石51a、51bによって可動範囲規制手段が構成され、第1、第2電磁石53、54が当接部としての機能を果たし、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、図19(c)に示す変形例では、本実施形態の軸方向断面がH型に形成された可動部材52、および、第6実施形態で説明した第1、第2摩耗抑制部材60a、60bによって可動範囲規制手段および当接部を構成している。また、可動部材52の肉厚部52dと第1、第2摩耗抑制部材60a、60bが当接する部位に、緩衝部材が配置されている。
さらに、図19(d)に示す変形例では、図19(b)に示す変形例の軸方向断面が十字型に形成された可動部材52と、および、第6実施形態で説明した第3〜第6摩耗抑制部材60c〜60fによって可動範囲規制手段および当接部を構成している。また、可動部材52の肉厚部52eと第3〜第6摩耗抑制部材60c〜60fが当接する部位に、緩衝部材が配置されている。
さらに、可動部材52が変位した際に、ステータプレート56に当接させることで、可動部材52の軸方向の可動範囲を規制してもよい。
(第8実施形態)
上述の実施形態では、第1、第2構造体55a、55bを、それぞれ、第1コイル部53a、第1永久磁石51aおよび第2コイル部53bを接着剤で一体的に固定し、第2コイル部54a、第2永久磁石51bおよび第2コイル部54bを接着剤で一体的に固定した例を説明したが、本実施形態では、図20、図21に示すように、第1、第2ボビン61、62を用いて、第1、第2構造体55a、55bを構成した例を説明する。
なお、図20は、本実施形態における図2のC部の断面図に対応する図面であり、図21は、ステータプレート56、第1、第2ボビン61、62の分解斜視図である。また、図20では、図示の明確化のため、可動部材52および第1、第2ボビン61、62以外の断面ハッチングを省略している。
第1ボビン61は、非磁性材(例えば、アルミニウム)にて形成された円筒状部材であり、その外周側に第1永久磁石51aが嵌め込まれ、さらに、第1、第2コイル部53a、53bの巻き線が巻き付けられることによって、第1構造体55aを構成するものである。もちろん、第1ボビン61を樹脂にて形成してもよい。
第2ボビン62の基本的構成は第1ボビン61と同様である。第2ボビン61は、第1ボビン61の内周側に配置され、その外周側に第2永久磁石51bが嵌め込まれ、さらに、第3、第4コイル部54a、54bの巻き線が巻き付けられることによって、第2構造体55bを構成するものである。
さらに、第1、第2ボビン61、62のステータプレート56側端部は、接着、摩擦圧着、溶接、圧入等の接合手段によって、ステータプレート56に形成された凹穴に接合されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1、第2ボビン61、62に直接かつ容易に第1〜第4コイル部53a〜54bの巻き線を巻き付けることができるので、ステータ50を製造する際の作業性を向上できる。
また、本実施形態では、第1、第2ボビン61、62をステータプレート56に接合することによって固定しているが、第1、第2ボビン61、62をステータプレート56に対して機械的に係合することによって固定してもよい。
例えば、図22の外観斜視図に示すように、第1ボビン61のステータプレート56側端部に係止用爪部61aを設け、図23の断面図に示すように、係止用爪部61aをステータプレート56の係止用穴部56dに差し込んだ状態で折り曲げることによって固定してもよい。第2ボビン62についても同様である。
なお、本実施形態の第1、第2ボビン61、62を、第2〜第5実施形態に適用すれば、一部の永久磁石および一部のコイル部の廃止、非磁性材で形成されたリング部材の配置、および、空隙の形成が容易になる。
(第9実施形態)
上述の実施形態では、ステータプレート56の固定されたピン57、および、可動部材52に設けられたピン用穴部52aによって、可動部材52がステータプレート56に対して回転軸周りに回転してしまうことを防止しているが、本実施形態では、図24、25に示すように、第2永久磁石51bに形成された凸部51c、および、可動部材52に設けられた凸部用穴部52fによって可動部材52が回転してしまうことを防止している。
なお、図24は、本実施形態における図3に対応するB−B断面図である。また、図25は、図24のD−D断面図である。より具体的には、本実施形態の第2永久磁石51bのアーマチュア40側端部には、径方向外周側(可動部材52側)へ向かって突出する凸部51cが形成されており、可動部材52の内周側には、凸部51cが嵌挿される凸部用穴部52fが形成されている。
また、凸部用穴部52fは、可動部材52のうちアーマチュア40側の端部から、回転軸方向に延びて、ステータプレート56側の端部へ至る途中迄形成されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。従って、可動部材52が変位すると、可動部材52の凸部用穴部52fのステータプレート56側と凸部51cが当接して、可動部材52の可動範囲を規制することもできる。
本実施形態では、ピン57を廃止して、第2永久磁石51bの凸部51cおよび可動部材52の凸部用穴部52fによって、簡素な構成で可動部材52が回転してしまうことを防止できるとともに、可動範囲規制手段を構成できる。
(第10実施形態)
第1実施形態の図2で説明したように、上述の各実施形態では、プーリ30の中空円柱状空間とステータ50との間に、隙間δ1、δ2が形成されるため、この隙間δ1、δ2へ異物が侵入してしまうことが懸念される。このような異物の侵入は、可動部材52の変位を妨げて、クラッチ機構の作動不良を招く点で問題となる。
そこで、本実施形態では、図26に示すように、プーリ30の外側円筒部31の内側に中空円柱状空間からステータプレート側に向かって流れる気流を生じさせる複数の羽根31aを設けている。換言すると、外側円筒部31の内部側から外部側へ流れる気流を生じさせる複数の羽根31aを設けている。
なお、図26は、本実施形態のプーリ30の軸方向拡大断面図である。この羽根31aは、プーリ30と一体的に構成してもよいし、樹脂等で別部材として形成したものをプーリ30の外側円筒部31の内側に接着等の接合手段で接合してもよい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態によれば、プーリ30の回転に伴って、中空円柱状空間の内部からステータプレート側に向かって流れる気流を生じさせることができ、隙間δ1、δ2から中空円柱状空間内部に異物が侵入することを抑制できる。また、ステータ50のうち、第1、第2構造体55a、55bおよび可動部材52をケースに収容して、異物噛み込みによる可動部材52の変位不良を防止してもよい。
(第11実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図27、28に示すように、プーリ30およびステータ50の構成を変更した例を説明する。なお、図27は、本実施形態のクラッチ機構20の軸方向断面図であり、図28は、図27のB−B断面図である。
具体的には、本実施形態のプーリ30の外側円筒部31は、非磁性材(例えば、ステンレス)で形成されている。さらに、外側円筒部31は、第1実施形態と同様の磁性材にて一体的に形成された内側円筒部32および端面部33に対して、接着、圧入等によって接合されている。
従って、本実施形態のプーリ30は、第1実施形態と同様の形状の二重円筒構造に構成されているものの、本実施形態の外側円筒部31は、非磁性材で形成されているので、第1実施形態とは異なり、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbの一部を構成していない。
次に、本実施形態のステータ50は、第1実施形態と同様に、永久磁石51b、可動部材52、可動部材変位手段としての電磁石54、および、ステータプレート56を有して構成される。
なお、この永久磁石51bおよび電磁石54は、可動部材52の内周側に配置されているという点で、第1実施形態の第2永久磁石51bおよび第2電磁石54に対応する構成である。従って、本実施形態では、「第2」という用語を廃止して、単に永久磁石51bおよび電磁石54と表現して、第1実施形態の第2永久磁石51bおよび第2電磁石54と同一の符号を用いて表す。
また、本実施形態では、永久磁石51bを1つのみ採用しているので、第1実施形態の第2永久磁石51bよりも径方向の厚みが厚く形成されている。このことは、電磁石54についても同様である。そして、電磁石54の第3コイル部54a、永久磁石51b、および、第4コイル部54bは、第1実施形態と同様に、一体的に固定されて、円筒状の構造体55bを形成している。
可動部材52の基本的構成は、第1実施形態と同様である。なお、第1実施形態では、可動部材52は、軸方向から見たときに、プーリ30の端面部33の径方向内側のスリット穴33aと径方向外側のスリット穴33bとの間に位置付けられていたが、本実施形態では、端面部33の径方向内側のスリット穴33aおよび径方向外側のスリット穴33bの双方の外側に位置付けられている。
従って、本実施形態では、図27に示すように、永久磁石51bおよび電磁石54からなる構造体55bは内側円筒部32の外周側に配置され、可動部材52は構造体55bよりも外周側に配置される。さらに、非磁性材で形成された外側円筒部31は可動部材52の外周側に配置される。
また、本実施形態の可動部材52のステータプレート56側端部には、径外周側に広がる円板状の鍔部52gが形成されており、この鍔部52gに、ピン57の拡径部57aよりも径の小さい複数の係止穴52bが形成されている。これにより、可動部材52がプーリ30の端面部33へ変位しても、拡径部57aと係止穴52bが当接することによって、可動部材52の可動範囲が規制される。
その結果、可動部材52がプーリ30の端面部33へ変位しても、可動部材52と端面部33との間には隙間δ4が設けられ、プーリ30が回転しても、可動部材52に接触することを防止でき、可動部材52が回転軸周りに回転してしまうことを防止できる。つまり、本実施形態のピン57の拡径部57aおよび鍔部52gの係止穴52bは、可動範囲規制手段を構成し、ピン57の拡径部57aが当接部としての機能を果たす。
また、拡径部57aと係止穴52bとの間であって、可動部材52がプーリ30の端面部33へ変位した際に、拡径部57aが係止穴52bに当接する部位には、第1実施形態と同様にゴム等の弾性部材や樹脂等で形成された図示しない緩衝部材が接合されている。
次に、図29に基づいて、上記構成における本実施形態のクラッチ機構20の作動を説明する。なお、図29は、図27のC部の断面図を用いた説明図であり、図29(a)〜(d)は、それぞれ第1実施形態の図29(a)〜(d)に対応する説明図である。なお、図29では、図示の明確化のため、可動部材52以外の断面ハッチングを省略している。
まず、図29(a)に示すように、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態では、可動部材52が、プーリ30の端面部33側に移動している。この際、本実施形態では、前述の如く、可動部材52がプーリ30の端面部33のスリット穴33a、33bよりも外周側に配置されているので、図29(a)の太実線に示す磁気回路の磁気抵抗が減少して、この磁気回路によって生じる磁力が増加する。
すなわち、永久磁石51bによって形成される可動部材52、端面部33、アーマチュア40、内側円筒部32の順で磁束が通過する磁気回路の磁気抵抗が、可動部材52がステータプレート56側に移動しているときよりも減少して、これらの磁気回路によって生じる磁力が増加する。
さらに、図29(a)の太実線に示す磁気回路によって生じる磁力は、プーリ30とアーマチュア40とを連結させる吸引磁力となっている。従って、図29(a)の太実線に示す磁気回路は、本実施形態における吸引用磁気回路MCaである。また、可動部材52が、プーリ30の端面部33側に移動している際には、可動部材52とステータプレート56との間に空隙(エアギャップ)が形成される。
この空隙は、図29(a)の細破線に示すような、永久磁石51bによって形成される可動部材52、ステータプレート56、内側円筒部32の順に磁束が通過する磁気回路の磁気抵抗を増加させ、これらの磁気回路によって生じる磁力を減少させる。
なお、図29(a)の細破線に示す磁気回路によって生じる磁力は、プーリ30とアーマチュア40とを連結させる吸引力として機能しない。従って、図29(a)の細破線に示す磁気回路は、本実施形態における吸引用磁気回路MCaとは異なる非吸引用磁気回路MCbである。
さらに、可動部材52が、プーリ30の端面部33側に移動している際には、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、プーリ30の端面部33側に維持される。
また、本実施形態では、ゴム45がプーリ30とアーマチュア40と離す方向に作用させる弾性力(反発力)が、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動している際の吸引磁力よりも小さくなるように設定されている。従って、第1、第2電磁石53、54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
次に、連結された状態のプーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、車両用空調装置の空調制御装置6が、図29(b)に示すように、電磁石54に対して電力を供給する。より具体的には、電磁石54が、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を減少させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を増加させる電磁力を発生するように電力を供給する。
これにより、図29(b)の細実線で示す吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、図29(b)の太破線で示す非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなり、可動部材52が、ステータプレート56側へ移動する。この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗が減少して、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量がさらに増加する。その結果、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。
また、可動部材52がステータプレート56側に移動すると、可動部材52とプーリ30の端面部33との間に空隙(エアギャップ)が形成される。この空隙によって、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が増加するので、吸引磁力が減少する。その結果、ゴム45による反発力が吸引磁力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が切り離される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達されなくなる。
次に、図29(c)に示すように、可動部材52がステータプレート56側に移動している際には、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動しているときよりも非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。
さらに、可動部材52がステータプレート56側に移動している際の吸引磁力は、ゴム45による反発力よりも小さいので、電磁石54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、切り離された状態のプーリ30とアーマチュア40とを連結する際には、空調制御装置6が、図29(d)に示すように、電磁石54に対して電力を供給する。より具体的には、電磁石54が、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を増加させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を減少させる電磁力を発生するように通電する。
これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなり、可動部材52が、プーリ30の端面部33側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が減少して、吸引用磁気回路MCaの磁束量がさらに増加する。その結果、吸引磁力がゴム45による反発力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が連結される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
本実施形態のクラッチ機構20は、上記の如く作動するので、第1実施形態と全く同様に、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができるとともに、クラッチ機構20全体としての小型化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、可動部材52がプーリ30の端面部33のスリット穴33a、33bよりも外周側に配置されているので、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束を迂回させることができる。その結果、プーリ30側からアーマチュア40側へ通過する磁束およびアーマチュア40側からプーリ30側へ通過する磁束量を増加させて、吸引磁力を増加させることができる。また、本実施形態のクラッチ機構20に対しても、第5〜第9実施形態の構成を適用することができる。
(第12実施形態)
第11実施形態では、ピン57の拡径部57aおよび鍔部52gの係止穴52bによって可動範囲規制手段を構成した例を説明したが、本実施形態では、図30に示すように、ステータプレート56にストッパ56aを設けることによって、可動範囲規制手段を構成している。
なお、図30は、本実施形態における図27のC部の断面図に対応する図面であり、図示の明確化のため、可動部材52およびストッパ56a以外の断面ハッチングを省略している。
具体的には、ストッパ56aは、非磁性材(例えば、ステンレス)で形成された円筒状部材であり、ステータプレート56の外周部に接着、圧入等の接合手段で接合されている。さらに、ストッパ56aは、径方向内側に全周に亘って突出する段差部56cを有している。その他の構成は、第11実施形態と同様である。
これにより、可動部材52が変位した際に、可動部材52の鍔部52gとストッパ56aの段差部56cが当接することによって、可動部材52の可動範囲が規制される。つまり、本実施形態では、鍔部52gおよび段差部56cによって可動範囲規制手段が構成され、段差部56cが当接部としての機能を果たす。その結果、プーリ30が回転しても、可動部材52に接触することを防止できる。
また、可動部材52が変位した際に、鍔部52gと段差部56cが当接する部位には、ゴム等の弾性部材や樹脂等の図示しない緩衝部材が配置されている。これにより、拡径部57aと係止穴52bが当接する際の衝撃緩和および作動音低減を図ることができる。
(第13実施形態)
第11実施形態では、永久磁石51bの径方向の厚みを第1実施形態の第2永久磁石51bよりも径方向の厚みよりも大きくしている。従って、永久磁石51bの容積が、プーリ30とアーマチュア40とを連結するために必要な吸引磁力を発生させるために必要な容積以上になっていることがある。
そこで、本実施形態では、図31に示すように、第11実施形態に対して、永久磁石51bの径方向の厚みを縮小して、永久磁石51bの容積をプーリ30とアーマチュア40とを連結するために必要な吸引磁力を発生させるために適切な容積に減少させている。さらに、永久磁石51bの容積を減少させた部位に、円筒形状の磁性材(例えば、鉄)で形成されたヨーク部材63を永久磁石51bに接触するように配置している。
その他の構成は、第11実施形態と同様である。これによれば、永久磁石51bの使用量(容積)の低減を図ることができ、クラッチ機構20全体としての製造コスト低減を図ることができる。さらに、永久磁石51bの容積を減少させた部位に、磁気抵抗を発生させることなく、効率的な磁気回路形成を図ることができる。
なお、本実施形態では、永久磁石51bの外周側にヨーク部材63を配置しているが、もちろん永久磁石51bの内周側にヨーク部材63を配置してもよい。また、本実施形態では、永久磁石51bとヨーク部材63とを接着等の接合手段によって固定することによって、永久磁石51bとヨーク部材63との位置ずれを防止しているが、永久磁石51bとヨーク部材63との固定はこれに限定されない。
例えば、図32に示すように、永久磁石51bとヨーク部材63との双方に跨るように、軸方向に伸びる座繰り穴63aを設け、この穴にピン63bを嵌め込んで固定してもよい。なお、図32(a)は、永久磁石51bおよびヨーク部材63を軸方向から見た図であり、図32(b)は、(a)のE−E断面図である。また、図32(c)に示すように、永久磁石51bが周方向に複数に分割されている場合は、それぞれの永久磁石51bとヨーク部材63とを同様にピン63bにて固定してもよい。
また、図33に示すように、永久磁石51bとヨーク部材63との双方に跨るように、径方向に伸びるピン穴63c設け、この穴にピン63dを嵌め込んで固定してもよい。なお、図33(a)〜(c)は、図32(a)〜(c)に対応する図面である。図33(c)に示すように、永久磁石51bが周方向に複数に分割されている場合は、それぞれの永久磁石51bとヨーク部材63とを同様にピン63dにて固定してもよい。
また、図34に示すように、永久磁石51bに外周方向に突出する突起部63eを設け、さらに、ヨーク部材63に突起部63eが嵌め込まれる嵌挿穴63fを設けて固定してもよい。なお、図34(a)〜(c)は、図32(a)〜(c)に対応する図面である。図34(c)に示すように、永久磁石51bが周方向に複数に分割されている場合は、それぞれの永久磁石51bとヨーク部材63とを同様に突起部63eと嵌挿穴63にて固定してもよい。
また、図35に示すように、永久磁石51bおよびヨーク部材63のそれぞれにキー溝63g、63hを形成し、このキー溝63g、63hにキー63iを嵌め込んで固定してもよい。図35(a)〜(c)は、図32(a)〜(c)に対応する図面である。図35(c)に示すように、永久磁石51bが周方向に複数に分割されている場合は、それぞれの永久磁石51bとヨーク部材63とを同様にキー溝63g、63hとキー63iにて固定してもよい。
(第14実施形態)
第11実施形態では、可動部材変位手段として、2つの第3、第4コイル部54a、54bを有する電磁石54を採用した例を説明したが、本実施形態では、第11実施形態に対して、第3コイル部54aを廃止して空隙としたものである。その他の構成は、第11実施形態と同様である。
次に、図36に基づいて、本実施形態のクラッチ機構20の作動を説明する。なお、図36(a)〜(d)は、それぞれ第11実施形態の図29(a)〜(d)に対応する説明図である。
まず、図36(a)に示すように、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態では、第11実施形態と同様に、可動部材52が、プーリ30の端面部33側に移動している。従って、可動部材52がステータプレート56側に移動しているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加して、可動部材52の位置は、プーリ30の端面部33側に維持される。
さらに、吸引磁力がゴム45の弾性力(反発力)を上回っているので、電磁石54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
次に、連結された状態のプーリ30とアーマチュア40とを切り離す際には、図36(b)に示すように、空調制御装置6が、電磁石54に対して、第11実施形態と同様に電力を供給する。これにより、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなり、可動部材52が、ステータプレート56側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加するので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。さらに、吸引用磁気回路MCaよって生じる吸引磁力が減少して、ゴム45による反発力が吸引磁力を上回るので、プーリ30とアーマチュア40が切り離される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達されなくなる。
次に、図36(c)に示すように、可動部材52が、ステータプレート56側に移動している際には、可動部材52がプーリ30の端面部33側に移動しているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加しているので、可動部材52の位置は、ステータプレート56側に維持される。
さらに、可動部材52がステータプレート56側に移動している際の吸引磁力は、ゴム45による反発力よりも小さくなっているので、電磁石54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチュア40が切り離された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、切り離された状態のプーリ30とアーマチュア40とを連結する際には、図36(d)に示すように、空調制御装置6が、電磁石54に対して、第11実施形態と同様に電力を供給する。これにより、永久磁石51bによる非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束と、電磁石54による非吸引用磁気回路MCbを逆向きに通過する磁束が打ち消しあって、非吸引用磁気回路MCbによって発生する磁力がなくなる。
この状態では、非吸引用磁気回路MCbによって磁力は発生しないものの、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束は磁気飽和を起こしている。そのため、吸引用磁気回路MCaによって発生する吸引磁力が、非吸引用磁気回路MCbによって発生する磁力よりも大きくなる。その結果、可動部材52が、プーリ30の端面部33側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチュア40が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加して、吸引磁力がゴム45による反発力を上回り、プーリ30とアーマチュア40が連結される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
本実施形態のように、可動部材変位手段を1つのコイル部54bで構成しても、第11実施形態と同様に作動させることができる。従って、動力伝達時のエネルギ消費を抑制可能に構成されたクラッチ機構の誤動作を抑制することができる。もちろん、第11実施形態に対して、第4コイル部54bを廃止してもよい。本実施形態において、第3コイル部54aを廃止して空隙とした部位に、非磁性材で形成されたリング部材を配置してもよい。
また、本実施形態のクラッチ機構20に対しても、第5〜第9、第12、13実施形態の構成を適用することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
上述の各実施形態では、可動部材変位手段を電磁石53、54によって構成した例を説明したが、可動部材変位手段はこれに限定されない。例えば、可動部材52を強制的に回転軸方向に変位させるアクチュエータ等を採用して、圧縮機2のハウジングやステータプレート56に取り付けてもよい
上述の各実施形態では、同一の巻き線を2つに分割することによって、例えば、第1電磁石53を第1コイル部53aおよび第2コイル部53bに分割しているが、第1コイル部53a、第2コイル部53bをそれぞれ別の電磁石として構成してもよい。もちろん、第2電磁石54についても同様である。
上述の各実施形態では、永久磁石51a、51bの材質としてネオジウム(ネオジム)やサマリウムコバルトを採用した例を説明したが、永久磁石51a、51bの材質は、このような希土類磁石に限定されない。もちろん、フェライト、アルニコ等を採用してもよい。
上述の各実施形態では、プーリ30とアーマチュア40が切り離されると、ゴム45の弾性力により、アーマチュア40の一端側の平面とプーリ30の端面部33の外側面との間に予め定めた所定間隔の隙間δを形成するようにしているが、もちろん板バネの弾性力を用いて所定間隔の隙間δを形成するようにしてもよい。
上述の各実施形態では、クラッチ機構20をエンジン10から圧縮機2への動力伝達の断続に適用した例を説明したが、本発明のクラッチ機構20の適用はこれに限定されない。エンジンあるいは電動モータ等の駆動源と回転駆動力によって作動する発電機との動力伝達の断続等に幅広く適用可能である。
また、第11〜第14実施形態では、永久磁石51bおよび電磁石54からなる構造体55bを磁性材で形成された内側円筒部32の外周側に配置し、可動部材52を構造体55bよりも外周側に配置し、さらに、非磁性材で形成された外側円筒部31を可動部材52の外周側に配置した例を説明したが、内側円筒部32を非磁性材で形成し、外側円筒部31および端面部33を磁性材で形成してもよい。
具体的には、この場合のプーリ30は、第1実施形態と同様の形状の二重円筒構造に構成されるものの、内側円筒部32が非磁性材で形成されるので、第1実施形態とは異なり、内側円筒部32は、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbの一部を構成しない。さらに、可動部材52を、軸方向から見たときに、端面部33の径方向内側のスリット穴33aおよび径方向外側のスリット穴33bの双方の内側に位置付ければよい。
つまり、可動部材52を非磁性材で形成された内側円筒部32の外周側に配置し、永久磁石51bおよび電磁石54からなる構造体55bを可動部材52の外周側に配置し、さらに、磁性材で形成された外側円筒部31を構造体55bの外周側に配置すればよい。
換言すると、駆動側回転体30は、磁性材で形成されて回転軸方向に伸びる円筒状の外側円筒部31を有し、吸引用磁気回路MCaは、外側円筒部31の少なくとも一部を含んで構成され、永久磁石51bおよび可動部材変位手段54は、外側円筒部31の内周側に配置され、さらに、可動部材52は、永久磁石51bおよび可動部材変位手段54よりも内周側に配置されていればよい。
さらに、駆動側回転体30は、回転軸方向に伸びる円筒状の内側円筒部32を有し、内側円筒部32は、非磁性材で形成されているとともに、可動部材52の内周側に配置されていればよい。
さらに、駆動側回転体30は、内側円筒部32および外側円筒部31の回転軸方向一端側同士を連結する端面部33を有し、端面部33には、その表裏を貫通するスリット穴33a、33bが形成されており、可動部材52は、スリット穴33a、33bの内周側に配置されていればよい。
10 エンジン
30 プーリ
31 外側円筒部
31a 羽根
32 内側円筒部
33 端面部
33a、33b スリット穴
40 アーマチュア
51a、51b 第1、第2永久磁石
52 可動部材
52b 係止穴
52c テーパ部
53、54 第1、第2電磁石
57a 拡径部
60a〜60f 第1〜第6摩耗抑制部材
61、62 第1、第2ボビン
63 ヨーク部材
MCa 吸引用磁気回路
MCb 非吸引用磁気回路

Claims (21)

  1. 駆動源(10)からの回転駆動力によって回転する駆動側回転体(30)と、
    前記駆動側回転体(30)に連結されることによって前記回転駆動力が伝達される従動側回転体(40)と、
    前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)とを連結させる吸引磁力を発生させる永久磁石(51a、51b)と、
    磁性材で形成されているとともに、変位することによって前記永久磁石(51a、51b)が前記吸引磁力を発生させる吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を増減させる可動部材(52)と、
    前記可動部材(52)を変位させる可動部材変位手段(53、54)とを備え、
    前記吸引用磁気回路(MCa)は、前記駆動側回転体(30)および前記従動側回転体(40)の双方の少なくとも一部を含んで構成され、
    前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)とを連結させる際には、前記可動部材変位手段(53、54)が、前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)が切り離されているときよりも、前記吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を減少させる位置に、前記可動部材(52)を変位させ、
    前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)とを切り離す際には、前記可動部材変位手段(53、54)が、前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)が連結されているときよりも、前記吸引用磁気回路(MCa)の磁気抵抗を増加させるとともに、前記吸引用磁気回路(MCa)とは異なる非吸引用磁気回路(MCb)の磁気抵抗を減少させる位置に、前記可動部材(52)を変位させることを特徴とするクラッチ機構。
  2. 前記可動部材変位手段は、電力を供給されることによって電磁力を発生させる電磁石(53、54)で構成されており、
    前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)とを連結させる際には、前記電磁石(53、54)は、前記吸引磁力を増加させるように電磁力を発生させ、
    前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)とを切り離す際には、前記電磁石(53、54)は、前記吸引磁力を減少させるように電磁力を発生させることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ機構。
  3. 前記駆動側回転体(30)は、磁性材で形成されて回転軸方向に伸びる円筒状の内側円筒部(32)を有し、
    前記吸引用磁気回路(MCa)は、前記内側円筒部(32)の少なくとも一部を含んで構成され、
    前記永久磁石(51b)および前記可動部材変位手段(54)は、前記内側円筒部(32)の外周側に配置され、
    さらに、前記可動部材(52)は、前記永久磁石(51b)および前記可動部材変位手段(54)よりも外周側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチ機構。
  4. 前記駆動側回転体(30)は、前記回転軸方向に伸びる円筒状の外側円筒部(31)を有し、
    前記外側円筒部(31)は、非磁性材で形成されているとともに、前記可動部材(52)の外周側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のクラッチ機構。
  5. 前記駆動側回転体(30)は、前記内側円筒部(32)および前記外側円筒部(31)の前記回転軸方向一端側同士を連結する端面部(33)を有し、
    前記端面部(33)には、その表裏を貫通するスリット穴(33a、33b)が形成されており、
    前記可動部材(52)は、前記スリット穴(33a、33b)の外周側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のクラッチ機構。
  6. 前記駆動側回転体(30)は、磁性材で形成されて回転軸方向に伸びる円筒状の外側円筒部(31)、および、磁性材で形成されて前記回転軸方向に伸びる円筒状の内側円筒部(32)を有し、
    前記吸引用磁気回路(MCa)は、前記外側円筒部(31)および前記内側円筒部(32)のうち、少なくとも一方の一部を含んで構成され、
    前記永久磁石(51a、51b)、前記可動部材(52)および前記可動部材変位手段(53、54)は、前記外側円筒部(31)の内周側、かつ、前記内側円筒部(32)の外周側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチ機構。
  7. 前記従動側回転体(40)は、前記内側円筒部(32)の前記回転軸方向一端側に配置されており、
    前記永久磁石(51a、51b)の磁極は、前記回転軸に垂直な方向に向いており、
    前記可動部材(52)の変位方向は、前記回転軸方向に一致しており、
    前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)とを連結させる際には、前記可動部材変位手段(53、54)は、前記回転軸方向一端側に前記可動部材(52)を変位させ、
    前記駆動側回転体(30)と前記従動側回転体(40)とを切り離す際には、前記可動部材変位手段(53、54)は、前記回転軸方向他端側に前記可動部材(52)を変位させることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  8. 前記可動部材(52)は、前記回転軸方向に伸びる円筒状に形成されていることを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  9. 前記電磁石(53、54)は、前記回転軸の周りに円環状に配置されていることを特徴とする請求項3ないし8のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  10. 前記永久磁石(51a、51b)は、前記回転軸の周りに円環状に配置されていることを特徴とする請求項3ないし9のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  11. 前記可動部材(52)には、前記回転軸方向に垂直な厚み寸法を、前記可動部材(52)の両端側に向かって徐々に縮小させるテーパ部(52c)が設けられていることを特徴とする請求項3ないし10のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  12. 前記可動部材(52)の表面には、前記可動部材(52)が変位する際の摺動抵抗を低減する表面処理が施されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  13. 前記可動部材(52)の変位に伴う前記可動部材(52)の摩耗を抑制する摩耗抑制部材(60a〜60f)を備えることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  14. 前記可動部材(52)の可動範囲を規制する可動範囲規制手段(52b、57a)を備えることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  15. さらに、可動範囲規制手段は、前記可動部材(52)が変位した際に前記可動部材(52)に当接する当接部(57a)を有し、
    前記可動部材(52)と前記当接部(57a)との間には、前記可動部材(52)と前記当接部(57a)が当接する際の衝撃を緩和する緩衝部材が配置されていることを特徴とする請求項14に記載のクラッチ機構。
  16. 前記可動部材変位手段は、電力を供給されることによって電磁力を発生させる複数の電磁石(53、54)で構成されていることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  17. 前記電磁石(53、54)は、非磁性材にて形成された円筒状のボビン(61、62)に巻き線が巻き付けられることによって形成されたものであることを特徴とする請求項2および16に記載のクラッチ機構。
  18. 磁性材で形成されるとともに、前記永久磁石(51b、52b)に接触するように配置されたヨーク部材(63)を備えることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  19. 前記ヨーク部材(63)は、前記永久磁石(51b、52b)に固定されていることを特徴とする請求項18に記載のクラッチ機構。
  20. 前記永久磁石(51a、51b)は、複数設けられていることを特徴とする請求項1ないし19のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
  21. 前記外側円筒部(31)の内周側には、前記外側円筒部(31)の内部側から外部側へ流れる気流を生じさせる羽根(31a)が設けられていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1つに記載のクラッチ機構。
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