以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のクラッチ機構20が適用された車両用空調装置の冷凍サイクル装置1の全体構成図である。
冷凍サイクル装置1は、コンプレッサ2、放熱器3、膨張弁4、および、蒸発器5を接続したものである。コンプレッサ2は、冷媒を吸入して圧縮する。放熱器3は、コンプレッサ2の吐出冷媒を放熱させる。膨張弁4は、放熱器3から流出される冷媒を減圧膨張させる。蒸発器5は、膨張弁4にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる。
コンプレッサ2は、車両のエンジンルームに設置されている。コンプレッサ2は、走行用駆動源としてのエンジン10からクラッチ機構20を介して与えられる回転駆動力によって圧縮機構を駆動させることにより、蒸発器5から冷媒を吸入して圧縮する。
なお、圧縮機構としては、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構、あるいは、外部からの制御信号によって吐出容量を調整可能に構成された可変容量型圧縮機構のいずれを採用してもよい。
本実施形態のクラッチ機構20は、コンプレッサ2に連結されたプーリ一体型のクラッチ機構である。クラッチ機構20は、エンジン側プーリ11からVベルト12を介して与えられるエンジン10の回転駆動力をコンプレッサ2に伝達する。エンジン側プーリ11は、エンジン10の回転駆動軸に連結されているものである。
クラッチ機構20は、プーリ30およびアーマチャ40を備える。プーリ30はエンジン10からのVベルト12を介して与えられる回転駆動力によって回転する駆動側回転体を構成する。アーマチャ40は、コンプレッサ2の回転軸2aに連結された従動側回転体を構成する。クラッチ機構20は、プーリ30とアーマチャ40との間を連結あるいは離すことで、エンジン10からコンプレッサ2への回転駆動力の伝達を断続するものである。
つまり、クラッチ機構20がプーリ30とアーマチャ40とを連結すると、エンジン10の回転駆動力がコンプレッサ2に伝達されて、冷凍サイクル装置1が作動する。一方、クラッチ機構20がプーリ30とアーマチャ40とを離すと、エンジン10の回転駆動力がコンプレッサ2に伝達されることはなく、冷凍サイクル装置1も作動しない。
次に、本実施形態のクラッチ機構20の詳細構成について図2、図3、図4を用いて説明する。
図2は、クラッチ機構20の軸線方向断面図である。この軸線方向断面図は、クラッチ機構20においてコンプレッサ2の回転軸2aの軸線を含んで、かつ軸線に沿う断面図である。図3は図2中III−III断面図である。図2では、プーリ30とアーマチャ40とを連結させた状態を図示している。
図2および図3に示すように、クラッチ機構20は、プーリ30、アーマチャ40とともに、ステータ50を備える。
まず、プーリ30は、外側円筒部31、内側円筒部32、および、端面部33を有している。
外側円筒部31は、回転軸2aの軸線(図2中一点鎖線)を中心線とする円筒状に形成されている。外側円筒部31の外周側には、Vベルト12が掛けられるV溝(具体的には、ポリV溝)が形成されている。
内側円筒部32は、外側円筒部31の内周側に配置されてコンプレッサ2の回転軸2aの軸線を軸線とする円筒状に形成されている。
内側円筒部32の内周側には、ボールベアリング34の外側レースが固定されている。ボールベアリング34は、コンプレッサ2の外殻を形成するハウジング2cに対して、コンプレッサ2の回転軸2aの軸線を中心線としてプーリ30を回転自在に固定するものである。そのため、ボールベアリング34の内側レースは、コンプレッサ2のハウジング2cにスナップリング100等の固定部材によって固定されている。ボールベアリング34の内側レースは、コンプレッサ2のハウジング2cに設けられたハウジングボス部2bに対して径方向外側に配置されている。ハウジングボス部2bは、コンプレッサ2の回転軸2aの軸線を中心線とする円筒状に形成されている。
本実施形態の外側円筒部31、および内側円筒部32は、いずれも磁性材(例えば、鉄)にて形成され、後述する吸引用磁気回路MCa(図5参照)を構成する。
端面部33は、外側円筒部31および内側円筒部32の軸線方向一端側同士を結ぶように回転軸垂直方向(径方向)に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成されている。
具体的には、端面部33は、磁性材(例えば、鉄)にて形成されるリング部材33c、33d、33eを備える。リング部材33c、33d、33eは、それぞれ、回転軸2aの軸線を中心とするリング状に形成されている。リング部材33c、33d、33eは、径方向にオフセットして配置されている。リング部材33cは、リング部材33dに対して径方向外側に配置されている。リング部材33dは、リング部材33eに対して径方向外側に配置されている。
リング部材33c、33dの間には、非磁性部33aが設けられている。非磁性部33aは、回転軸2aの軸線を中心とするリング状に形成されている。非磁性部33aは、円周方向に並べられている空隙部(エアギャップ)とブリッジ部とから構成されている。ブリッジ部は、磁性材(例えば、鉄)からなるもので、リング部材33cとリング部材33dとを接続するためのものである。
リング部材33d、33eの間には、非磁性部33bが設けられている。非磁性部33bは、回転軸2aの軸線を中心とするリング状に形成されている。非磁性部33bは、円周方向に並べられている空隙部とブリッジ部とから構成されている。ブリッジ部は、磁性材(例えば、鉄)からなるもので、リング部材33dとリング部材33eとを接続するためのものである。
本実施形態では、外側円筒部31、内側円筒部32、および端面部33は、一体に成形されているものである。このため、リング部材33eは、内側円筒部32に繋がっている。リング部材33cは、外側円筒部31に繋がっている。
端面部33の他端側の面は、プーリ30とアーマチャ40が連結された際に、アーマチャ40と接触する摩擦面を形成している。そこで、本実施形態では、端面部33の他端側に、端面部33の摩擦係数を増加させるための摩擦部材35を配置している。この摩擦部材35は、非磁性材で形成されており、具体的には、アルミナを樹脂で固めたものや、金属粉末(例えば、アルミニウム粉末)の焼結材を採用できる。
アーマチャ40は、回転軸2aに直交する方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する貫通穴が形成された円板状部材であって、後述するように、吸引用磁気回路MCaを構成する。本実施形態のアーマチャ40の回転中心は、回転軸2aの軸心に一致している。
具体的には、アーマチャ40は、磁性材(例えば、鉄)にて形成されるリング部材40b、40cを備える。リング部材40b、40cは、それぞれ、回転軸2aの軸線を中心とするリング状に形成されている。リング部材40bは、リング部材40cに対して径方向外側に配置されている。リング部材40b、40cの間には、非磁性部40aが設けられている。非磁性部40aは、円周方向に並べられている空隙部とブリッジ部とから構成されている。ブリッジ部は、磁性材(例えば、鉄)からなるもので、リング部材40bとリング部材40cとを接続するためのものである。本実施形態のアーマチャ40の非磁性部40aとプーリ30の非磁性部33a、33bとは径方向にオフセットして配置されている。
ここで、アーマチャ40の一端側の平面は、プーリ30の端面部33に対向している。このため、プーリ30とアーマチャ40が連結された際に、プーリ30と接触する摩擦面を形成している。アーマチャ40の他端側には、略円盤状のハブ42が配置されている。
ハブ42は、アーマチャ40とコンプレッサ2の回転軸2aとを連結する連結部材を構成している。具体的には、ハブ42は、回転軸2aの軸線方向に延びる円筒部42aと、この円筒部42aの他端側から回転軸に対する垂直方向に広がるフランジ部42bとを備えている。
ハブ42とアーマチャ40との間には、回転軸に対する垂直方向に広がる板バネ45が配置されている。板バネ45は、ハブ42のフランジ部42bに対してリベット41aによって固定されている。板バネ45は、アーマチャ40に対してリベット41bによって固定されている。
ここで、板バネ45は、ハブ42に対してプーリ30からアーマチャ40が離れる方向に弾性力を作用させている。この弾性力により、プーリ30とアーマチャ40が離された状態では、ハブ42に連結されたアーマチャ40とプーリ30の端面部33との間に予め定めた所定間隔の隙間S3(後述する図5参照)が形成される。
ハブ42は、その円筒部42aがコンプレッサ2の回転軸2aに対してボルト44によって締め付けられることによって固定されている。なお、ハブ42とコンプレッサ2の回転軸2aとの固定には、スプライン(セレーション)あるいはキー溝などの締結手段を用いてもよい。
このように、アーマチャ40、ハブ42、板バネ45、コンプレッサ2の回転軸2aが固定されている。そして、プーリ30とアーマチャ40が連結されると、プーリ30、アーマチャ40、ハブ42、板バネ45、コンプレッサ2の回転軸2aがその軸心を中心線として回転する。
また、ステータ50は、永久磁石51、電磁コイル53、カバー部材54、可動部材55、ステータハウジング56、およびヨーク57を備えるステータアッセンブリである。
永久磁石51は、コンプレッサ2の回転軸2aの軸線を中心とするリング状に形成されている。永久磁石51はその外周側がN極を構成し、永久磁石51の内周側がS極を構成している。永久磁石51は、後述するように、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbを発生させる。
なお、本実施形態の永久磁石51として、ネオジウム(ネオジム)やサマリウムコバルトを採用することができる。永久磁石51、電磁コイル53、カバー部材54、ステータハウジング56、およびヨーク57が接着剤により固定されて、リング状に形成されている構造体52を構成する。
電磁コイル53は、第1コイル部53aおよび第2のコイル部53bを備える。第1、第2のコイル部53a、53bは、直列に接続されている。第1コイル部53aは、コンプレッサ2の回転軸2aの軸線を中心とするリング状に形成されている。そして、第2のコイル部53bは、回転軸2aの軸線を中心とするリング状に形成されている。
第1コイル部53aは、永久磁石51に対して軸線方向他端側に配置されている。第2のコイル部53bは、永久磁石51に対して軸線方向一端側に配置されている。つまり、永久磁石51は、第1、第2のコイル部53a、53bの間に挟まれている。
本実施形態の第1、第2のコイル部53a、53bは、銅やアルミニウム等からなるコイル線が例えば樹脂成形されたスプールに複列・複層に巻きつけられていることにより構成されている。
可動部材55は、ヨーク57および電磁コイル53に対して回転軸2aの径方向外側に配置されている。可動部材55は、カバー部材54の筒部54aに対して径方向内側に配置されている。可動部材55は、ヨーク57に対してクリアランスを介して配置されている。可動部材55は、回転軸2aの軸心を中心とするリング状に形成されている。本実施形態の可動部材55は、磁性材(例えば、鉄)にて形成されている。
ここで、可動部材55の軸線方向の全長は、構造体52の軸線方向の全長よりも短く形成されている。これにより、可動部材55が、軸線方向他端側の位置(以下、第1の位置という)に位置する場合には、軸線方向一端側に空隙(エアギャップ)が形成される。空隙は、永久磁石51がプーリ30の端面部33の反対側に形成する非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗を増加させる。
逆に、可動部材55が、軸線方向一端側の位置(以下、第2の位置という)に位置する場合には、軸線方向他端側に空隙が形成される。空隙は、永久磁石51がプーリ30の端面部33側に形成する吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を増加させる。
このような可動部材55の軸線方向の移動によって、後述するように、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗、および非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗をそれぞれ変化させることができる。
図2および図3のカバー部材54は、円筒部54a、および側壁部54bを備える。円筒部54aは、回転軸2aの軸心を中心とする円筒状に形成されている。円筒部54aは、可動部材55の軸線方向の移動範囲(すなわち、変位範囲)を径方向外側から覆うように形成されている。つまり、円筒部54aは、第1のコイル部53a側と第2のコイル部53b側との間に亘って形成されている。
本実施形態では、円筒部54aと外側円筒部31との間には、隙間S2(図3参照)が形成されている。
側壁部54bは、円筒部54aの軸線方向多端側から径方向内側に広がるリング状に形成されている。つまり、側壁部54bは、可動部材55および第1のコイル部53aを回転軸2aの軸線方向他端側から覆うように形成されている。側壁部54bは、可動部材55の軸線方向他端側の移動を停止させる停止部を構成する。側壁部54bは、プーリ30の端面部33のうち軸線方向一端側との間に隙間を構成している。
本実施形態では、カバー部材54は、SUS304(ステンレス鋼)等の非磁性の金属材により一体に成形されたものである。具体的には、カバー部材54は、非磁性の金属板材に対して絞り加工(より具体的には、深絞り加工)を施して成形されたものである。
図4は、カバー部材54における寸法の説明を明確にするために、図2中B部分内のカバー部材54(つまり、カバー部材54の下半分)だけを示した図である。
図4に示すように、円筒部54aのうち軸線方向他端側の肉部の厚み寸法N1は、円筒部54aのうち軸線方向一端側の肉部の厚み寸法N2よりも小さくなっている。円筒部54aのうち軸線方向他端側の肉部の厚み寸法N1は、側壁部54bの肉部の厚み寸法N3よりも小さくなっている。
つまり、円筒部54aのうち軸線方向他端側が薄肉に構成されて、カバー部材54のうち、円筒部54aの軸線方向他端側以外の他の部分が厚肉に構成されている。
ここで、円筒部54aのうち軸線方向他端側の肉部の厚み寸法N1としては、0.2mm程度に設定されている。円筒部54aのうち軸線方向他端側は、可動部材55とプーリ30の外側円筒部31との間で吸引用磁気回路MCaの磁束を受け渡す受け渡し部分を構成する。すなわち、円筒部54aのうち軸線方向他端側は、可動部材55とプーリ30の外側円筒部31との間で吸引用磁気回路MCaの磁束が通過する領域を構成する。
本実施形態のカバー部材54は、ステータハウジング56に対してかしめ、巻締め、レーザ溶接、ビス等により固定されている。
さらに、ステータハウジング56は、図2に示すように、筒部56a、および壁部56bを備える。筒部56aは、永久磁石51および電磁コイル53に対して回転軸2aの径方向内側に配置されている。筒部56aは、回転軸2aの軸心を中心とする円筒状に形成されている。壁部56bは、筒部56aの一端側から回転軸2aの径方向外側に広がる円環状に形成されている。壁部56bは、可動部材55の軸線方向一端側への移動を停止する停止部を構成する。つまり、ステータハウジング56の壁部56b、およびカバー部材54の側壁部54bは、それぞれ、可動部材55の変位を規制する規制部を構成する。本実施形態の筒部56aおよび壁部56bは、磁性材(例えば、鉄)により一体に形成され、吸引用磁気回路MCaを構成する。
なお、ステータハウジング56の壁部56bには、電磁コイル53と制御装置6との間を接続する電線を貫通させる貫通穴56cが設けられている。
本実施形態のステータハウジング56は、コンプレッサ2のハウジング2cにスナップリング101等の固定手段によって固定されている。このことにより、構造体52がコンプレッサ2のハウジング2cに固定されることになる。そして、ステータハウジング56の筒部56aとプーリ30の内側円筒部32との間には隙間S1が設けられている。
ヨーク57は、第1、第2のコイル部53a、53bの間に配置されて回転軸2aの軸心を中心とするリング状に形成されている。ヨーク57は、永久磁石51に対して径方向外側に配置されている。ヨーク57のうち径方向外側の面(以下、外周面という)は、第1、第2のコイル部53a、53bよりも径方向外側に位置する。本実施形態のヨーク57の外周面は、軸線方向に亘って滑らかに形成されている。ヨーク57は、磁性材(例えば、鉄)により形成されたものである。
また、図1の制御装置6は、エアコンECU(電子制御装置)から出力される制御信号に基づいて、第1、第2のコイル部53a、53bへの通電を制御する。
次に、本実施形態のクラッチ機構20の作動について図5を参照して説明する。図5は、図2のB部の断面図を用いた説明図である。
まず、図5(a)に示すように、プーリ30とアーマチャ40が連結された状態では、可動部材55が、軸線方向他端側の第1位置に位置している。
この際、永久磁石51によって形成される吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が、可動部材55が軸線方向一端側の第2位置に位置している場合よりも減少して、吸引用磁気回路MCaによって生じる磁力が大きくなっている。
吸引用磁気回路MCaは、図5(a)の太実線に示すように、ヨーク57→可動部材55→カバー部材54の円筒部54aの軸線方向他端側→プーリ30の外側円筒部31→アーマチャ40→プーリ30の端面部33→アーマチャ40→プーリ30の内側円筒部32→ステータハウジング56の筒部56a→磁石51の順で磁束が通過する磁気回路である。
ここで、図5(a)の太実線に示す吸引用磁気回路MCaによって生じる磁力は、プーリ30とアーマチャ40とを連結させる吸引磁力として作用する。
本実施形態の吸引用磁気回路MCaでは、端面部33の非磁性部33a、33b、およびアーマチャ40の複数の非磁性部40aを避けて磁束が通過する。このため、プーリ30とアーマチャ40との間の境界を4回通過する。このため、上記吸引磁力として大きな力をプーリ30とアーマチャ40との間に作用させることができる。
また、可動部材55が、軸線方向他端側の第1の位置に位置している場合には、可動部材55とステータプレート56の壁部56bとの間に空隙(エアギャップ)が形成される。
この空隙は、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗をそれぞれ増加させ、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力を減少させる。非吸引用磁気回路MCbは、永久磁石51によって形成されて、かつ吸引用磁気回路MCaとは異なる磁気回路である。
非吸引用磁気回路MCbは、図5(a)の細破線に示すように、可動部材55、空隙、ステータプレート56、および永久磁石51の順に磁束が通過する磁気回路である。非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力は、プーリ30とアーマチャ40とを連結させる吸引力として機能しない。
さらに、可動部材55が、軸線方向他端側の第1の位置に位置している場合には、可動部材55が、軸線方向一端側の第2の位置に位置している場合に比べて、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加しているので、可動部材55は、軸線方向他端側の第1の位置側に維持される。
また、本実施形態では、板バネ45の弾性力が、可動部材55が軸線方向他端側の第1の位置に位置する場合の吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも小さくなるように設定されている。したがって、電磁コイル53に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチャ40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力がコンプレッサ2へ伝達される。
次に、制御装置6が電磁コイル53に対して第1方向への通電を開始する。このとき、図5(b)に示すように、第1のコイル53aには紙面裏から紙面表に電流が流れ、かつ第2のコイル53bには紙面裏から紙面表に電流が流れる。このため、第1のコイル53aが、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を減少させるとともに、第2のコイル53bが、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を増加させる。これにより、図5(b)の細実線で示す吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、図5(b)の太破線で示す非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなる。
これに伴い、可動部材55には、非吸引用磁気回路MCbから生じる磁力によって軸線方向一端側に移動させる駆動力が働く。このため、可動部材55が、ヨーク57の外周面に摺動しながら、軸線方向他端側の第1位置側から軸線方向一端側の第2位置側へ移動する。これに伴い、ステータハウジング56の壁部56bに可動部材55が衝突して第2の位置に可動部材55が停止する。その後、制御装置6が電磁コイル53に対する通電を終了する。
このような可動部材55の移動に伴って、可動部材55とステータプレート56の壁部56bとの間の空隙が無くなる。このため、プーリ30とアーマチャ40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗が減少して、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量が増加する。その結果、可動部材55は軸線方向一端側の第2位置に維持されることになる。
ここで、図5(c)に示すように、可動部材55が軸線方向一端側の第2位置に位置するときには、可動部材55とプーリ30の端面部33との間に空隙(エアギャップ)が形成される。この空隙によって、プーリ30とアーマチャ40が連結されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が増加するので、吸引用磁気回路MCaから生じる吸引磁力が減少する。その結果、板バネ45による反発力(すなわち、弾性力)の方が吸引用磁気回路MCaから生じる吸引磁力よりも大きくなり、プーリ30とアーマチャ40が離れる。すなわち、プーリ30とアーマチャ40との間が分離されて、エンジン10からの回転駆動力がコンプレッサ2へ伝達されなくなる。
次に、制御装置6が電磁コイル53に対して第2方向への通電を開始する。第2方向とは、上記第1方向とは逆の方向のことである。このため、図5(d)に示すように、第1のコイル部53aには紙面表から紙面裏に電流が流れ、かつ第2のコイル部53bには紙面表から紙面裏に電流が流れる。このため、第1のコイル部53aが、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を増加させるとともに、第2のコイル部53bが、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を減少させる。これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなる。
これに伴い、可動部材55には、吸引用磁気回路MCaから生じる磁力によって軸線方向他端側に移動させる駆動力が働く。このため、可動部材55が、ヨーク57の外周面に摺動しながら、軸線方向一端側の第2位置側から軸線方向他端側の第1位置側へ移動する。これに伴い、カバー部材54の側壁部54bに可動部材55が衝突して第1の位置に可動部材55が停止する。その後、制御装置6が電磁コイル53に対する通電を終了する。
このような可動部材55の移動に伴って、可動部材55とカバー部材54の側壁部54bとの間に空隙(エアギャップ)がなくなり、図5(a)の状態に戻る。このため、プーリ30とアーマチャ40が離れているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が減少して、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加する。その結果、吸引用磁気回路MCaの吸引磁力が板バネ45による反発力よりも大きくなり、プーリ30とアーマチャ40とが連結されることになる。すなわち、エンジン10からコンプレッサ2への回転駆動力の伝達が開始される。なお、本実施形態の制御装置6は、特許請求の範囲に記載の第1、第2の制御手段を構成している。
以上説明した本実施形態によれば、制御装置6が電磁コイル53に対して第1方向への通電を開始すると、第1のコイル53aの電磁力が吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を減少させるとともに、第2のコイル53bの電磁力が非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を増加させる。これにより、吸引用磁気回路MCaによって生じる磁力よりも、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなる。これに伴い、可動部材55には、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力によって軸線方向一端側に力が働く。このとき、可動部材55は、ヨーク57の外周面に摺動しながら、第1位置側から第2位置側へ移動する。
一方、制御装置6が電磁コイル53に対して第2方向への通電を開始すると、第1のコイル部53aの電磁力が吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を増加させるとともに、第2のコイル部53bの電磁力が非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を減少させる。これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなる。これに伴い、可動部材55には、吸引用磁気回路MCaによって生じる磁力によって軸線方向他端側に力が働く。このため、可動部材55がヨーク57の外周面に摺動しながら、第2位置側から第1位置側へ移動する。
このように制御装置6が電磁コイル53に通電を行うことにより、吸引用磁気回路MCa(或いは、非吸引用磁気回路MCb)から生じる磁力によって可動部材55がヨーク57に摺動しながら、クラッチ機構20がON−OFF時の移動工程を行う。
カバー部材54では、円筒部54aが可動部材55の移動範囲を径方向外側から覆うように形成されている。これに加えて、側壁部54bは可動部材55を軸線方向他端側から覆うように形成されている。このため、プーリ30の回転に関係なく、水、粉塵、鉄粉等の異物が可動部材55の移動範囲内に入ることを抑制することができる。可動部材55とヨーク57との間の摺動部に異物が混入することを未然に防ぐことができる。よって、可動部材55の確実な作動を維持することができる。
一方、特許文献1のクラッチ機構では、プーリの羽根によって発生する気流により、可動部材の移動範囲から粉塵等を排出することができるものの、鉄粉には永久磁石51の磁力が作用して鉄粉が永久磁石51に引き寄せられる。したがって、羽根から発生する気流では、可動部材の移動範囲内に鉄粉が入ることを防止できない。
これに対して、本実施形態では、カバー部材54は、可動部材55の移動範囲を径方向外側から覆うとともに、可動部材55を軸線方向他端側から覆うように形成されている。このため、鉄粉が可動部材55の移動範囲内に鉄分が入ることをカバー部材54によって防止することができる。
本実施形態のカバー部材54は、非磁性材により形成されている。このため、吸引用磁気回路MCaの磁束がカバー部材54の円筒部54aの軸線方向他端側の肉部を通過するものの、カバー部材54の円筒部54aの軸線方向他端側の肉部からステータハウジング56側に磁束が漏れることを防止することができる。
ここで、吸引用磁気回路MCaの磁束がカバー部材54を通してステータハウジング56側に漏れると、吸引用磁気回路MCaから生じる吸引磁力の低下を招く。
これに対して、本実施形態では、カバー部材54は、上述の如く、非磁性材により形成されている。このため、磁束の漏れ(磁気の漏洩)が原因で吸引用磁気回路MCaから生じる吸引磁力の低下を抑制することができる。これに伴い、エンジン10からコンプレッサ2に伝達される伝達トルクの低下を招くことを抑制することができる。
本実施形態では、カバー部材54の円筒部54aの軸線方向他端側は、上述の如く、吸引用磁気回路MCaにおいて、可動部材55およびプーリ30の外側円筒部31の間で磁束の通路を構成している。
ここで、円筒部54aの軸線方向他端側の肉部の厚み寸法N1は、円筒部54aの軸線方向一端側の肉部の厚み寸法N2よりも小さく、かつ円筒部54aの軸線方向他端側の肉部M3の厚み寸法N1は、側壁部54bの肉部の厚み寸法N3よりも小さい。したがって、円筒部54aの軸線方向他端側の肉部が構成する吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を下げることができる。このため、吸引用磁気回路MCaから発生する吸引磁力を大きくすることができる。
一方、吸引用磁気回路MCaから発生する吸引磁力が小さくなると、プーリ30とアーマチャ40とを連結する力が弱くなり、エンジン10からコンプレッサ2に伝達される伝達トルクの低下を招くことになる。
これに対して、本実施形態では、上述の如く、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を下げて、吸引用磁気回路MCaから発生する吸引磁力を大きくすることができるので、エンジン10からコンプレッサ2に伝達される伝達トルクの低下を未然に防止することができる。
これに加えて、本実施形態では、円筒部54aの軸線方向一他端側の肉部の厚み寸法N2は、円筒部54aの軸線方向他端側の肉部の厚み寸法N1により大きくなっている。このため、円筒部54aの軸線方向一他端側の肉部の剛性を高めることができる。
ここで、円筒部54aの剛性が低い場合には、円筒部54aが変形して円筒部54aがプーリ30の外側円筒部31や可動部材55などの他の部材と干渉する恐れがある。
これに対して、本実施形態では、上述の如く、円筒部54aの軸線方向一他端側の肉部の剛性を高めることができる。したがって、円筒部54aがプーリ30の外側円筒部31や可動部材55などの他の部材と干渉することを未然に防ぐことができる。
これに加えて、円筒部54aとプーリ30の外側円筒部31との間の隙間の寸法精度と円筒部54aと可動部材55との間の隙間の寸法精度とをそれぞれ出し易くすることができる。つまり、上記両方の隙間の寸法精度がそれぞれ所望の精度になるように実施することが容易になる。
本実施形態では、カバー部材54の側壁部54bが可動部材55を停止させる停止部を構成している。このため、側壁部54b以外に、可動部材55を停止させる機構を設ける場合に比べて、部品点数を減らすことができ、構成を簡素化することができる。
上記特許文献1では、可動部材を断面L字状に形成して可動部材を停止させるためのストッパ機構を構成したものが提案されている。
これに対して、本実施形態では、上述の如く、カバー部材54の側壁部54bが可動部材55の停止部を構成している。このため、可動部材55を上記断面L字状等の構成にする必要が無く、可動部材55の形状を、その断面が長方形の円筒状にすることができる。これにより、可動部材55の形状を簡素な形状にすることが可能である。したがって、可動部材55の製造が容易になる。これに加えて、本実施形態では、可動部材55にストッパ機構を構成する必要がないので、可動部材55の形状、寸法等の設計自由度を高めることができる。
本実施形態では、カバー部材54は、絞り加工により成形されたものである。このため、切削加工等に比べて歩留まりが向上し、また加工時間の短縮によるコスト低減を図ることができる。
なお、上記第1実施形態では、可動部材55は、ヨーク57の外周面に摺動して軸線方向に移動した例について説明したが、これに代えて、次のように構成してもよい。
すなわち、カバー部材54の内周面70を軸線方向に滑らかに構成する。つまり、カバー部材54の内周面70に対して可動部材55が摺動して移動するようにカバー部材54の筒部54aが構成されていることになる。これにより、可動部材55がカバー部材54の内周面70によってガイドされて可動部材55が軸線方向に移動することができる。
例えば、制御装置6が電磁コイル53に対して第1方向への通電したとき、非吸引用磁気回路MCbから生じる磁力によって軸線方向一端側に移動させる駆動力が可動部材55に働く。このため、可動部材55がカバー部材54の内周面70にガイドされて第1位置側から第2位置側へ移動する。
一方、制御装置6が電磁コイル53に対して第2方向への通電したとき、吸引用磁気回路MCaから生じる磁力によって軸線方向他端側に移動させる駆動力が可動部材55に働く。このため、可動部材55がカバー部材54の内周面70にガイドされて第2位置側から第1位置側へ移動する。
ここで、カバー部材54の内周面70(すなわち、可動部材55側の面)において、固体潤滑膜を表面処理により形成したものを用いてもよい。当該表面処理は、カバー部材54において、可動部材55との間の良好な摺動状態を確保し、かつ摩擦係数μの低減、ひいては可動部材55と内周面70との間の摩耗耐力を向上するための固体潤滑膜を形成するものである。
固体潤滑膜を形成するための表面処理に用いる表面処理材としては、例えば、モリブデン、フッ素、グラファイト等の固体潤滑効果がある材料を主成分としたものが望ましい。固体潤滑膜の膜厚寸法が10〜20μ程度であることが望ましい。
この場合、可動部材55には、可動部材55の硬度を大きくして可動部材55自体の摩耗を抑制するための熱処理(例えば、焼き入れ、焼き戻し)が施されていることが望ましい。
なお、カバー部材54の内周面70に固体潤滑膜を形成し、かつ可動部材55として熱処理したものを用いる場合に限らず、カバー部材54として熱処理したものを用いて、かつ可動部材55のうち外周面(すなわち、カバー部材54側面)に固体潤滑膜を形成してもよい。
以上により、カバー部材54は、可動部材55における第1、第2の位置の間の移動を良好にガイドするガイド部を構成することになる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、カバー部材54を非磁性材により構成し、かつカバー部材54のうち吸引用磁気回路MCaの磁束を受け渡す部分(磁束通路)の肉部の厚み寸法N1を、他の部分の肉部の厚み寸法N2、N3よりも小さくした例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、カバー部材54のうち吸引用磁気回路MCaの磁束を受け渡す部分を磁性材により構成する例について説明する。
図6に本実施形態のクラッチ構造20の部分断面を示す。図6は、図2中の上側部分に相当する図である。
本実施形態のクラッチ機構20において、カバー部材54以外の構成は、上記第1実施形態のクラッチ機構20と実質的に同様であるので、以下、カバー部材54以外の説明を省略する。
本実施形態のカバー部材54は、上記第1実施形態のカバー部材54と同様に、筒部54a、および壁部54bを備える形状を有し、かつカバー部材54を構成する材料が異なるものである。具体的には、本実施形態のカバー部材54は、非磁性部500、501、および磁性部502から構成されている。
非磁性部500は、筒部54aのうち軸線方向一端側を構成する。具体的には、非磁性部500は、ヨーク57、第2のコイル部53b、およびステータハウジング56の壁部56bに対して径方向外側に位置することになる。
非磁性部501は、壁部54bのうち径方向内側を構成する。具体的には、非磁性部501は、第1のコイル部53a、およびステータハウジング56の筒部56aに対して軸線方向他端側に位置することになる。
磁性部502は、筒部56aのうち軸線方向他端側と壁部56bのうち径方向外側とを構成する。具体的には、磁性部502は、第1のコイル部53aに対して径方向外側に位置する領域と、可動部材55の移動領域に対して軸線方向他端側に位置する領域とからなる断面L字状に形成されている。
以上説明した本実施形態では、可動部材55が軸線方向の第1の位置に位置するときに、磁性部502は、可動部材55とプーリ30の外側円筒部31との間で吸引用磁気回路MCaの磁束を受け渡す受け渡し部分を構成する。つまり、磁性部502は、可動部材55とプーリ30の外側円筒部31との間で吸引用磁気回路MCa(図6中の太実線参照)を構成する。このため、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を下げることができる。したがって、上記第1実施形態と同様に、吸引用磁気回路MCaから発生する吸引磁力を大きして、エンジン10からコンプレッサ2に伝達される伝達トルクの低下を防止することができる。
本実施形態では、カバー部材54のうち磁性部502以外の部分は、非磁性部500、501から構成されている。非磁性部500は、磁性部502からステータハウジング56の壁部56bに磁束が漏れることを抑制する。非磁性部501は、磁性部502からステータハウジング56の筒部56aに磁束が漏れることを抑制する。したがって、吸引用磁気回路MCaから発生する吸引磁力の低下を抑制することができる。これに伴い、エンジン10からコンプレッサ2に伝達される伝達トルクの低下を防止することができる。
本実施形態では、非磁性部500、501の材料として、SUS304(ステンレス鋼)等の非磁性の金属材が用いられている。磁性部502として、鉄等の金属の磁性材が用いられる。非磁性部500および磁性部502の接合には、摩擦圧接(回転摩擦圧接)が用いられる。非磁性部501および磁性部502の接合には、摩擦圧接が用いられる。このため、非磁性部500および磁性部502の間に、段差や隙間が生じることもなく、非磁性部501および磁性部502の間に、段差や隙間が生じることもない。したがって、カバー部材54の筒部56aの内周面70を軸線方向に亘って滑らかに形成することができる。
よって、可動部材55がカバー部材54の筒部56aの内周面70に対して軸線方向に摺動することができる。このことにより、カバー部材54は、可動部材55における第1、第2の位置の間の移動を良好にガイドするガイド部を構成することになる。
ここで、カバー部材54の内周面70には、上述した固体潤滑膜が表面処理により形成されている。一方、可動部材55には、可動部材55の硬度を大きくして可動部材55自体の摩耗を抑制するための熱処理(例えば、焼き入れ、焼き戻し)が施されている。このため、カバー部材54の内周面70と可動部材55との間の摺動状態を製品寿命に渡って良好に維持し、その作動性を維持することができる。
なお、上記第2実施形態では、カバー部材54の内周面70に固体潤滑膜を形成し、かつ可動部材55として熱処理したものを用い例について説明したが、これに限らず、カバー部材54として熱処理したものを用いて、かつ可動部材55のうち外周面(すなわち、カバー部材54の筒部54a側の面)に固体潤滑膜を形成してもよい。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、カバー部材54の筒部54aの内周面70を軸線方向に滑らかに形成して、カバー部材54により可動部材55の移動をガイドした例について説明したが、これに代えて、本第3実施形態では、可動部材55に溝部を設け、かつカバー部材54の筒部54aに凸部を設け、可動部材55はその溝部がカバー部材54の筒部54aの凸部にガイドされて軸線方向に移動する例について説明する。
図7(a)は、本実施形態の可動部材55およびカバー部材54の筒部54aを軸線方向他端側から視た部分拡大図である。図7(b)は、図7(a)中C部分の拡大図である。
カバー部材54の筒部54aには、可動部材55に向けて凸となる凸部60が複数列設けられている。複数列の凸部60は、それぞれ、筒部54aにおいて、第1、第2の位置の間(すなわち、軸線方向)に亘って延びるように形成されている。複数列の凸部60は、回転軸2aの軸線を中心とする円周方向に並べられている。
可動部材55の外周面には、複数列の凸部60が嵌る溝部61が複数列設けられている。複数列の溝部61は、それぞれ、軸線方向に亘って延びるように形成されている。つまり、可動部材55の外周面には、第1のコイル部53a側と第2のコイル部53b側との間に亘って延びる溝部61が複数列形成されていることになる。
このように構成される本実施形態では、カバー部材54の筒部54aの複数列の凸部60は、それぞれ、可動部材55の複数列の溝部61のうち対応する溝部61内に嵌合する。このため、吸引用磁気回路MCa(或いは、非吸引用磁気回路MCb)から生じる磁力が可動部材55に軸線方向に作用するときには、可動部材55は、複数列の溝部61がそれぞれカバー部材54の複数列の凸部60のうち対応する凸部60にガイトされて、軸線方向一端側(或いは、軸線方向他端側)に移動する。したがって、吸引用磁気回路MCa(或いは、非吸引用磁気回路MCb)から生じる磁力によって、可動部材55が第1の位置と第2の位置との間を円滑に移動することができる。
本実施形態では、上述の如く、カバー部材54の筒部54aの複数列の凸部60は、それぞれ、可動部材55の複数列の溝部61のうち対応する溝部61内に嵌合する。このため、カバー部材54の筒部54aに対して可動部材55が回転軸2aの軸心を中心とする円周方向に回転することを防ぐことができる。したがって、筒部54aと可動部材55との間で摩耗することを未然に防止することができる。
上記第3実施形態では、可動部材55に溝部を設け、かつカバー部材54の筒部54aに凸部を設け、可動部材55はその溝部がカバー部材54の筒部54aの凸部にガイドされて軸線方向に移動する例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、カバー部材54の筒部54a側に凸となる凸部を可動部材55に設ける。凸部は、可動部材55のうちカバー部材54の筒部54a側において第1の位置側と第2の位置側との間に亘って形成されている。
カバー部材54の筒部54aには、可動部材55の凸部が入る溝部が形成されている。溝部は、カバー部材54の筒部54aにおいて第1の位置側と第2の位置側との間に亘って形成されている。このため、可動部材55はその凸部がカバー部材54の筒部54aの溝部にガイドされて軸線方向に移動する。
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、円筒部54aのうち軸線方向他端側の肉部の厚み寸法N1を0.2mm程度の厚みに設定した例について説明したが、これに限らず、軸線方向他端側の肉部の厚み寸法N1としては、0.1mm〜1.0mmの範囲内であれば、0.2mm以外の寸法に設定してもよい。
上記第1実施形態では、プーリ30の非磁性部33a、33bとして、空隙部とブリッジ部とから構成されているものを用いた例について説明したが、プーリ30の非磁性部33a、33bとして、非磁性金属材によってリング状に形成されているものを用いてもよい。
上記第1実施形態では、アーマチャ40の非磁性部40aとして、空隙部とブリッジ部とから構成されているものを用いた例について説明したが、アーマチャ40の非磁性部40aとして、非磁性金属材によってリング状に形成されているものを用いてもよい。
上記第1〜第3の実施形態では、電磁コイル53への通電により可動部材55を回転軸2cの軸線方向に移動させるようにクラッチ機構20を構成した例について説明したが、これに限らず、クラッチ機構20において、電磁コイル53への通電により可動部材55を移動させる方向を回転軸2cの軸線方向以外の方向に設定してもよい。
上記第1〜第3の実施形態では、クラッチ機構20として、エンジン10から圧縮機2への回転駆動力の伝達を断続するクラッチ機構について説明したが、これに限らず、第1の機器から第2の機器への回転駆動力の伝達を断続するクラッチ機構ならば、どのようなクラッチ機構に本発明を適用してもよい。
上記第1〜第3の実施形態では、永久磁石51の外周側をN極とし、永久磁石51の内周側をS極とした例について説明したが、これに代えて、永久磁石51の外周側をS極とし、永久磁石51の内周側をN極としてもよい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。