JP2009180267A - 電磁クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気回路が長くなることによるアーマチュア吸引力の低下、および磁気飽和によるアーマチュア吸引力の低下を防止することができる電磁クラッチを提供する。
【解決手段】永久磁石9と磁性体10を環状に形成して一体的に結合し、ロータ6の環状溝13内に配置する。ロータ10の内側円筒状磁路部6Aと、永久磁石9および磁性体10との間に空間Sを形成する。磁性体10の内周面でフィールドコア側開口縁に、面取り部40を形成する。ロータ6の環状溝13に遊挿されるフィールコア45の内側円筒部45Aの先端に、延長部48を一体に延設し、この延長部48を前記空間Sに挿入する。
【選択図】 図1
【解決手段】永久磁石9と磁性体10を環状に形成して一体的に結合し、ロータ6の環状溝13内に配置する。ロータ10の内側円筒状磁路部6Aと、永久磁石9および磁性体10との間に空間Sを形成する。磁性体10の内周面でフィールドコア側開口縁に、面取り部40を形成する。ロータ6の環状溝13に遊挿されるフィールコア45の内側円筒部45Aの先端に、延長部48を一体に延設し、この延長部48を前記空間Sに挿入する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ウオーターポンプ用電磁クラッチ等に用いられる電磁クラッチに関するものである。
エンジン用冷却水を循環させるウォーターポンプ用電磁クラッチは、低温時には冷却水の循環を止めてエンジンを早く昇温させるために、動力伝達が遮断された状態(アーマチュア解放状態)に制御される。このように電磁クラッチを制御することにより、エンジンに対する負荷が低減されるため、低温時におけるエンジンからの排ガスの排出量を低減することができる。
また、ウォーターポンプ用電磁クラッチは、その殆どがアーマチュアとロータとが連結された状態(アーマチュア連結状態)で使用されるため、このアーマチュア連結状態で低消費電力であること、負荷トルクが2Nm〜10Nmに対応できることが機種選定の要件となる。
しかしながら、一般のカーエアコン用コンプレッサに装着される電磁クラッチは、40Nmの負荷にも対応可能に設計され、動力伝達時に励磁コイルに通電することにより20W〜40W程度の電力を消費する。また、カーエアコン用電磁クラッチは、励磁コイルに通電しているときがアーマチュア連結状態になる励磁作動型電磁クラッチであるため、コイルショートなどで励磁コイルに通電できないときには、ウォーターポンプを駆動することができない。
このようなことから、ウォーターポンプ用電磁クラッチとしては、永久磁石による磁気吸引力によりアーマチュアとロータを摩擦連結し、励磁コイルへの通電により励磁コイルの磁束と永久磁石の磁束とを相殺することにより、ロータからアーマチュアを解放する無励磁作動型電磁クラッチが最適である(例えば、特許文献1、2、3参照)。
前記特許文献1に記載されている無励磁作動型電磁クラッチは、回転軸に取付けられたロータと、前記回転軸にベアリングを介して回転自在に取付けられたハブと、このハブに取付けられたアーマチュアと、前記ロータに軸線方向に並設された永久磁石および励磁コイルとを備えている。ロータは、非磁性材からなるコンパウンドによって一体的に結合された外磁極部材および内磁極部材の2部材からなり、これら両部材のフランジ部間に形成した空間に永久磁石を介在させている。永久磁石の磁気回路は、磁束がロータの外磁極(外磁極部材の磁極面)からアーマチュアに迂回してロータの内磁極(内磁極部材の磁極面)に流れる磁気回路を形成している。
一方、励磁コイルに通電することにより、フィールドコア−内磁路部材−永久磁石−外磁路部材を経てフィールドコアを通る磁束によって磁気回路を形成している。なお、励磁コイルは、フィールドコアに収納されており、このフィールドコアは前記内磁路部材の円筒部に軸受を介して回転自在に支持されている。
このような構造からなる電磁クラッチにおいて、励磁コイルへの通電が断たれている無励磁状態では、永久磁石の磁気吸引力によりアーマチュアの摩擦面(極面)をロータの摩擦面(内外極面)に磁気吸着させることにより、ロータとアーマチュアとを摩擦結合させている。例えば、ウォーターポンプ用無励磁作動型電磁クラッチであれば、エンジンの動力がベルトを介してロータに伝達されるので、エンジンの駆動中はウォーターポンプも駆動している。このエンジンの駆動中において、ウォーターポンプの駆動を停止するときは、励磁コイルを通電励磁し、励磁コイルの磁束と永久磁石の磁束とを相殺する。これによりアーマチュアは、永久磁石による磁気吸引力から解放されるため、板ばねの弾性復帰力でロータから離間する。この結果、エンジンからウォーターポンプへの動力伝達が遮断され、ウォータポンプは停止する。
前記特許文献2に記載されている電磁クラッチは、固定ハウジングに軸受を介してロータを回転自在に配設している。このロータは、内周面に軸受の嵌合部が形成された内側円筒状磁路部(内側磁束路部)と、外周面にプーリ溝が形成された外側円筒状磁路部(外側磁束路部)と、これら両磁路部の一端を連結する円板状の磁路部(フランジ部)とからなり、これら磁路部間に形成された環状溝内に一対の環状磁性板に挟まれた永久磁石と、励磁コイルの一部を組込んでいる。
永久磁石は、外側円筒状磁路部および内側円筒状磁路部と適宜な隙間を保って対向し、一対の環状磁性板に挟持されている。一対の環状磁性板のうち永久磁石より環状溝の奥側に位置する一方の環状磁性板は、前記円板状磁路部の内面および外側円筒状磁路部の内周面と適宜な隙間を保って対向し、内側円筒状磁路部の外周面に固定されている。他方の環状磁性板は、内側円筒状磁路部および励磁コイルと適宜な隙間を保って対向し外側円筒状磁路部の内周面に固定されている。励磁コイルは、固定ハウジングに固定されている。
前記特許文献3の図5に記載されている動力伝達機構は、上述した特許文献2と同様に、一部材からなるロータの環状溝内に励磁コイルと、一対の磁性板によって挟持された永久磁石とを軸線方向に並設し、励磁コイルの非励磁時に永久磁石の磁気吸引力によってアーマチュアをロータの磁極面に磁気吸着させるようにしている。
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の電磁クラッチは、ロータを外磁極部材と内磁極部材の二部材によって形成しているので、ロータを構成する部品点数、加工、組立工数が多くなるという問題があった。また、外磁極部材と内磁極部材のフランジ部間に永久磁石を組込み、これら両磁極部材を軸線が一致するように非磁性材からなるコンパウンドによって一体的に結合させなければならないため、ロータの生産性が悪く電磁クラッチを安価に提供することができない。
上述した特許文献2に記載されている従来の電磁クラッチによれば、ロータを一部材で形成しているので、上述した特許文献1による問題は解消でき、ロータの生産性や強度を向上させることができる利点がある。
しかしながら、ロータの円板状磁路部と環状磁性板との間、および環状磁性板とフィールドコアとの間にそれぞれ適宜な隙間を設ける必要があるため、励磁コイルの磁気回路が長くなりアーマチュアの吸引力が低下するという問題があった。このため、励磁コイルの起磁力Uを大きくする必要があった。また、その起磁力Uは、コイルの巻数Nとコイルに流れる電流Iとの積(U=IN)、AT(アンペアターン)であり、コイルの巻数を多くして起磁力Uを大きくしようとすると、フィールドコアのコイルスペースも大きくしなければならず、コイルの巻き方により、フィールドコアの軸線方向または半径方向の寸法が大きくなり、電磁クラッチの大型化を招くことになる。
しかしながら、ロータの円板状磁路部と環状磁性板との間、および環状磁性板とフィールドコアとの間にそれぞれ適宜な隙間を設ける必要があるため、励磁コイルの磁気回路が長くなりアーマチュアの吸引力が低下するという問題があった。このため、励磁コイルの起磁力Uを大きくする必要があった。また、その起磁力Uは、コイルの巻数Nとコイルに流れる電流Iとの積(U=IN)、AT(アンペアターン)であり、コイルの巻数を多くして起磁力Uを大きくしようとすると、フィールドコアのコイルスペースも大きくしなければならず、コイルの巻き方により、フィールドコアの軸線方向または半径方向の寸法が大きくなり、電磁クラッチの大型化を招くことになる。
また、上述した特許文献2、3に記載されている電磁クラッチは、ロータの内側円筒状磁路部の内周面に軸受の外輪を圧入嵌合する構造であり、軸受の突当て部となる段差を形成している。そのため、内側円筒状磁路部の断面積は、他の磁路部の断面積より小さく、内側円筒状磁路部の軸受け突当て部近傍において励磁コイルの磁束の磁気飽和が起り易いという問題があった。このような磁気飽和が生じると、磁気回路中の透磁率が低下し、アーマチュアの磁気吸引力が低下するため好ましくない。
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、磁気回路が長いことによるアーマチュア吸引力の低下、および磁気飽和によるアーマチュア吸引力の低下を防止することができる電磁クラッチを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、同心円状の内側円筒状磁路部および外側円筒状磁路部と、これら両磁路部の一端を連結する円板状磁路部とによって形成された環状溝を有し、従動側機器のハウジングに軸受を介して回転自在に配設されたロータと、前記従動側機器の回転軸に取付けられ前記ロータの回転が伝達されるアーマチュアハブと、前記アーマチュアハブと前記ロータを接離可能に連結するアーマチュアと、前記ロータの環状溝内に設けられた磁性体および前記アーマチュアを磁気吸引し前記ロータの磁極面に磁気吸着させる永久磁石と、前記ハウジングに固定され前記ロータの環状溝内に前記磁性体と対向するように遊嵌状態で挿入されたフィールドコアと、前記フィールドコア内に遊挿され励磁時に前記永久磁石による磁気吸引力を相殺し、前記アーマチュアを前記永久磁石から解放させる励磁コイルとを備え、前記磁性体と前記永久磁石を環状に形成し、その内周面と前記ロータの内側円筒状磁路部との間に環状の空間を形成し、前記フィールドコアの内側円筒部の先端に、前記空間内に挿入される延長部を一体に延設したものである。
また、本発明は、上記発明において、前記磁性体の内周面でフィールドコア側の開口縁に、面取り部を形成したものである。
本発明においては、フィールドコアの内側円筒部の先端に延長部を一体に延設し、この延長部の断面積をロータの内側円筒状磁路部の断面積に加算したので、ロータの内側円筒状磁路部での磁気飽和が抑制され、アーマチュアに対する吸引力の低下を防止することができる。
また、本発明は、磁性体の内周面でフィールドコア側開口縁に面取り部を形成したので、フィールドコアの延長部と磁性体の内周面との間の磁気抵抗を大きくすることができ、磁束の漏洩(短絡)を抑制することができる。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る電磁クラッチの一実施の形態を示す無励磁状態における断面図、図2はロータの正面図、図3はアーマチュア組立体の正面図、図4はアーマチュアの正面図、図5は励磁状態における要部の断面図である。本実施の形態は、駆動側機器としてのエンジン(図示せず)の回転を従動側機器としてのウォーターポンプ2の回転軸3に伝達したり、その伝達を遮断したりする電磁クラッチ1に適用した例を示す。前記電磁クラッチ1は、ウォーターポンプ2のハウジング4に軸受5を介して回転自在に配設されたロータ6と、前記回転軸3に固定されたアーマチュア組立体7と、このアーマチュア組立体7に取付けられたダンパー機構8と、永久磁石9と、磁性体10および電磁コイル装置11等で概ね構成されている。
図1は本発明に係る電磁クラッチの一実施の形態を示す無励磁状態における断面図、図2はロータの正面図、図3はアーマチュア組立体の正面図、図4はアーマチュアの正面図、図5は励磁状態における要部の断面図である。本実施の形態は、駆動側機器としてのエンジン(図示せず)の回転を従動側機器としてのウォーターポンプ2の回転軸3に伝達したり、その伝達を遮断したりする電磁クラッチ1に適用した例を示す。前記電磁クラッチ1は、ウォーターポンプ2のハウジング4に軸受5を介して回転自在に配設されたロータ6と、前記回転軸3に固定されたアーマチュア組立体7と、このアーマチュア組立体7に取付けられたダンパー機構8と、永久磁石9と、磁性体10および電磁コイル装置11等で概ね構成されている。
前記ロータ6は、一般的に機械構造用炭素鋼(S12C)や熱間圧延鋼(SPHC)などの材料を熱間鍛造や冷間鍛造によって、一端側が開放する二重の円筒状に製作することにより、同心円状に形成された内側円筒状磁路部6Aおよび外側円筒状磁路部6Bと、これら両磁路部6A,6Bのアーマチュア側端を互いに連結する円板状磁路部6Cとを一体に有し、内側円筒状磁路部6Aが前記軸受5によって回転自在に軸支されている。このため、内側円筒状磁路部6Aの内周面6aには、軸受5の外輪が嵌合する環状の溝からなる段差部12が形成されている。外側円筒状磁路部6Bの外周面には、複数のV字状溝14が形成されており、これらのV字状溝14に駆動側機器としての自動車エンジンの動力が図示を省略したVベルトを介して伝達される。
また、ロータ6は、前記内側円筒状磁路部6A、外側円筒状磁路部6Bおよび円板状磁路部6Cとの間に形成されたハウジング4側に開放する環状溝13を有し、この環状溝13に前記永久磁石9、磁性体10が組み込まれ、また前記電磁コイル装置11が遊挿されている。
前記円板状磁路部6Cは、表面がアーマチュア18を磁気吸着する磁極面15aを形成しており、外周寄りには前記永久磁石9の磁束φ1 を円板状磁路部6Cからアーマチュア18に迂回させる複数個の貫通穴16が形成されている。これらの貫通穴16は、図2に示すように同心円状に形成された円弧状のスリットからなり、前記環状溝13にそれぞれ連通している。すなわち、本実施の形態における電磁クラッチ1は、同一円周上に形成された貫通穴16によるシングルフラックスタイプのクラッチである。
前記アーマチュア組立体7は、アーマチュアハブ20と、ストッパープレート21および前記アーマチュア18等で構成されている。アーマチュアハブ20は、前記回転軸3の端部にスプライン結合され、かつナット22によって固定されたボス部20Aと、このボス部20Aの外周に一体に突設された円板状のフランジ20Bとで構成されている。
前記ストッパープレート21は、図4に示すように三角形に形成されて前記アーマチュアハブ20のフランジ20Bに3個のリベット23によってかしめ固定されており、外周寄りには、各ダンパー機構8のトルク伝達ピン24とダンパーゴム28の一部が挿通される複数個の挿通孔25が周方向に等間隔おいて形成されている。
前記アーマチュア18は、外径がロータ6の外径と略等しく、内径がアーマチュアハブ20のフランジ20Bの外径より大きいリング状に形成されており、ストッパプレート21に前記ダンパー機構8を介して板厚方向に移動可能に配設されることにより、前記ロータ6とストッパープレート21との間に位置している。
また、アーマチュア18は、前述した通り電磁クラッチ1がシングルフラックスタイプのクラッチであるため、通常のダブルフラックス型のカーエアコン用クラッチに比べて内径寸法が大きくなっている。さらに、アーマチュア18の摩擦面18aは、磁気吸着されるロータ6の磁極面15aの内径よりも大きな内径を有している。そして、アーマチュア18の内周には、前記ダンパー機構8の取付部26(図4)が設けられている。この取付部26は、図4に示すようにアーマチュア18の内周に一体に突設された半円形の突起26Aと、この突起26Aに形成された段付き穴26Bとで構成されている。
前記ダンパー機構8は、前記ストッパプレート21の表面外周寄りに周方向に等間隔おいて複数個(例えば、3個)配設されており、ダンパーカバー27と、このダンパーカバー27に収納されたダンパーゴム28と、ダンパーカバー27およびダンパーゴム28を貫通する前記トルク伝達ピン24とでそれぞれ構成されている。
前記ダンパーカバー27は、カップ状に形成され、底板部27aがストッパープレート21の表面で前記挿通孔25の周縁部に溶接によって固定されている。ダンパーカバー27の底板部27aの中央には、トルク伝達ピン24が貫通する孔27bが形成されている。
前記ダンパーゴム28は、円筒状に形成されてダンパーカバー27の内周面に圧入嵌合によって固定されている。
前記トルク伝達ピン24は、基端部が前記ストッパープレート21の挿通孔25を貫通し、前記アーマチュア18の段付き穴26Bに挿通され、かつかしめ固定されている。
前記永久磁石9は、本実施の形態においては、図3に示すように四角柱状に形成されて表、裏面にN極とS極が着磁された複数個、例えば8個の永久磁石片9Aを、その磁極面31a、31b(図1)がロータ6の軸線方向において対向するように同一円周上に配列し、磁極面31a、31bを除く面を合成樹脂32によってモールドすることにより一体化した環状の磁石で構成されている。このような永久磁石9によれば、材料の歩留まりが良く経済的である。ただし、永久磁石9としては、これに限らず円板状に形成して軸線方向に着磁された1個の永久磁石であってもよい。そして、このような永久磁石9は、前記ロータ6の環状溝13内に前記磁性体10とともに収納され、円板状磁路部6Cの内面に当接されている。永久磁石9は、ロータ6の内側円筒状磁路部6Aの外径より大きな内径と、外側円筒状磁路部6Bの内径より小さい外径を有している。
前記磁性体10は、断面形状がL字型のリング状を呈するように形成されることにより、環状部10Aと、この環状部10Aの外周にアーマチュア18方向に一体に連設された円筒部10Bとで構成されている。また、磁性体10は、永久磁石9とともにロータ6の環状溝13内に嵌挿され、円筒部10Bがロータ6の外側円筒状磁路部6Bの内周面に固着されている。磁性体10の環状部10Aは、ロータ10の内側円筒状磁路部6Aの外径より大きく、永久磁石9の内径と略等しい内径を有している。このため、永久磁石9および磁性体10の内周面、9a、10aと内側円筒状磁路部6Aの外周面6bとの間には、適宜な空間Sが形成されている。さらに、磁性体10の内周面10aでフィールドコア45側の開口縁には、フィールドコア45の内側円筒部45Aとの間の距離を長くして磁気抵抗を大きくするために略45°の角度で面取りされた面取り部40が形成されている。
前記電磁コイル装置11は、励磁コイル44と、この励磁コイル44を収納する前記フィールドコア45等で構成されている。フィールドコア45は、前記ハウジング4に取付けた取付板46に固定され、前記ロータ6の環状溝13内に僅かな隙間を保って遊挿されている。また、フィールドコア45は、同心円状に形成された内側円筒部45Aおよび外側円筒部45Bと、これら両円筒部45A、45Bの永久磁石9側とは反対側端を連結する円板部45Cとを一体に有することにより、アーマチュア18側に開放する2重の円筒状に形成され、前記励磁コイル44を収納する収納凹部47を有している。さらに、前記内側円筒部45Aの先端には、延長部48がフィールドコア45の軸線方向に一体に延設されている。この延長部48は、フィールドコア45がロータ6の環状溝13内に遊嵌状態で組み込まれた状態において、前記空間S内に、永久磁石9の近傍にまで延在するように挿入されている。また、延長部48としては、永久磁石9の内部にまた達する長さを有するものであってもよい。一方、フィールドコア45の外側円筒部45Bは、延長部48が形成されていないため、内側円筒部45Aよりも短く、先端が磁性体10の環状部10Aと僅かな間隔を保って対向している。なお、励磁コイル44は、フィールドコア45の収納凹部47内に収納され、合成樹脂49によってモールドされている。
このような構造からなる電磁クラッチ1は、励磁コイル44ヘの通電が断たれている無励磁状態においては、図1に示すように永久磁石9の磁束φ1 によりアーマチュア18がロータ6の磁極面15aに磁気吸着され、エンジンの動力をロータ6およびアーマチュア組立体7を介してウォーターポンプ2の回転軸3に伝達している。この動力伝達状態において、アーマチュア18は、ストッパープレート21から離間しており、これによりトルク伝達ピン24がロータ6側に変位し、頭部24aによってダンパーゴム28を圧縮している。
この動力伝達状態において、電磁クラッチ1を解放することにより、動力伝達を遮断するときは、励磁コイル44に、永久磁石9の磁束φ1 とは反対方向の磁束φ2 が生じるように通電する。通電によって励磁コイル44を励磁すると、励磁コイル44の磁束φ2 は、図5に示すようにフィールドコア45の内側円筒部45A−ロータ6の内側円筒状磁路部6A−円板状磁路部6C−アーマチュア18−ロータ6の−円板状磁路部6C−外側円筒状磁路部6B−フィールドコア45の外側円筒部45Bを経て円板部45Cに至る。この磁束φ2 の方向は、永久磁石9による磁束φ1 の方向と反対方向であり、かつ永久磁石9の磁気吸引力と略同じ磁気吸引力となるように励磁コイル44を励磁すると、磁束φ1 と磁束φ2と が相殺される。このため、アーマチュア18は永久磁石9による磁気吸引力から解放され、ダンパーゴム28の弾性復帰力によりロータ6の磁極面15aから離間してストッパープレート27に当接し、電磁クラッチ1によるウォーターポンプ2への動力伝達が遮断される。図5はこの状態を示す。
ウォーターポンプ2への動力伝達を遮断した後、上記とは反対に電流の向きを変えて永久磁石9の磁束φ1 と同じ方向の磁束φ3 (図5)が発生するように励磁コイル44に通電すると、アーマチュア18はこれらの磁束φ1 、φ3 による磁気吸引力によってロータ6の磁極面15aに磁気吸着され、ロータ6の回転をウォーターポンプ2の回転軸3に伝達するようになる。すなわち、電磁クラッチ1が作動する。そして、アーマチュア18がロータ6の磁極面15aに磁気吸着された後は、励磁コイル44ヘの通電を断っても、アーマチュア18は永久磁石9の磁気吸引力によりロータ6に摩擦結合されているので、動力を回転軸3に伝達し続ける。
ここで、本発明による電磁クラッチ1は、フィールドコア45の内側円筒部45Aの先端に延長部48を一体に延設しているので、磁気飽和を低減することができる。
すなわち、上述した特許文献1〜3に記載されている従来装置のように単にフィールドコアと磁性体とを適宜間隔を保って対向させて配置し、本発明の延長部48に相当する部分を設けていない場合は、ロータ6の内側円筒状磁路部6Aの磁性体10およびフィールドコア45間に位置する部分における磁路断面積は、当該部分の断面積のみによって決定される。この部分は、内周面に軸受5のための段差部12が形成されている薄肉部分であるため磁路断面積が内側円筒状磁路部6Aの他の部分より小さく、このため内側円筒状磁路部5Aの軸受突き当て部12Aの近傍において、励磁コイル44の磁束φ2 (φ3 )の磁気飽和が生じ易く、磁気飽和が生じると磁気回路中の透磁率が低下し、アーマチュア18に対する磁気吸引力が低下する。
すなわち、上述した特許文献1〜3に記載されている従来装置のように単にフィールドコアと磁性体とを適宜間隔を保って対向させて配置し、本発明の延長部48に相当する部分を設けていない場合は、ロータ6の内側円筒状磁路部6Aの磁性体10およびフィールドコア45間に位置する部分における磁路断面積は、当該部分の断面積のみによって決定される。この部分は、内周面に軸受5のための段差部12が形成されている薄肉部分であるため磁路断面積が内側円筒状磁路部6Aの他の部分より小さく、このため内側円筒状磁路部5Aの軸受突き当て部12Aの近傍において、励磁コイル44の磁束φ2 (φ3 )の磁気飽和が生じ易く、磁気飽和が生じると磁気回路中の透磁率が低下し、アーマチュア18に対する磁気吸引力が低下する。
これに対して、本発明においては、フィールドコア45の内側円筒部45Aの先端に延長部48を一体に延設し、この延長部48を永久磁石9および磁性体10とロータ6の内側円筒状磁路部6Aとの間に形成されている空間Sに挿入しているので、フィールドコア45の内側円筒部45Aの磁路を長くすることができるとともに、内側円筒状磁路部6Aの軸受突き当て部12A近傍における磁路断面積をフィールコア45の延長部48の断面積を加算した値分だけ増加させることができる。したがって、従来装置に比べてロータ6の内側円筒状磁路部6Aでの磁気飽和が抑制され、アーマチュア18に対する磁気吸引力を増大させることができる。
また、磁性体10の内周面10aでフィールドコア45側開口縁に面取り部40を形成しているので、フィールドコア45の内側円筒部45Aの外周面と磁性体10の内周面10aとの間の距離が長くなって磁気抵抗が大きくなり、磁束の漏洩(短絡)を抑制することができる。したがって、アーマチュア18に対する磁気吸引力を一層増大させることができる。
1…電磁クラッチ、2…ウォーターポンプ、3…回転軸、4…ハウジング、6…ロータ、6A…内側円筒状磁路部、6B…外側円筒状磁路部、6C…円板状磁路部、7…アーマチュア組立体、8…ダンパー機構、9…永久磁石、10…磁性体、11…電磁コイル装置、13…環状溝、18…アーマチュア、20…アーマチュアハブ、21…ストッパープレート、40…面取り部、44…励磁コイル、45…フィールドコア、45A…内側円筒部、48…延長部、S…空間。
Claims (2)
- 同心円状の内側円筒状磁路部および外側円筒状磁路部と、これら両磁路部の一端を連結する円板状磁路部とによって形成された環状溝を有し、従動側機器のハウジングに軸受を介して回転自在に配設されたロータと、
前記従動側機器の回転軸に取付けられ前記ロータの回転が伝達されるアーマチュアハブと、
前記アーマチュアハブと前記ロータを接離可能に連結するアーマチュアと、
前記ロータの環状溝内に設けられた磁性体および前記アーマチュアを磁気吸引し前記ロータの磁極面に磁気吸着させる永久磁石と、
前記ハウジングに固定され前記ロータの環状溝内に前記磁性体と対向するように遊嵌状態で挿入されたフィールドコアと、
前記フィールドコア内に遊挿され励磁時に前記永久磁石による磁気吸引力を相殺し、前記アーマチュアを前記永久磁石から解放させる励磁コイルとを備え、
前記磁性体と前記永久磁石を環状に形成し、その内周面と前記ロータの内側円筒状磁路部との間に環状の空間を形成し、
前記フィールドコアの内側円筒部の先端に、前記空間内に挿入される延長部を一体に延設したことを特徴とする電磁クラッチ。 - 請求項1記載の電磁クラッチにおいて、
前記磁性体の内周面でフィールドコア側の開口縁に、面取り部を形成したことを特徴とする電磁クラッチ。
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