JP2011077383A - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム箔より素子部を作製し、素子部の陰極部を、重合性モノマーと酸化剤溶液に交互に含浸することを複数回繰り返し、陰極部に第1の固体電解質層3を形成する。素子部をナフタレンスルホン酸水溶液に10分間含浸して、第1の固体電解質層3の表面にナフタレンスルホン酸をドープする。その後、ナフタレンスルホン酸をドープした素子部を水洗する。水洗工程を経た素子部を電解重合溶液に含浸し、第2の導電性高分子層を電解重合する。この際、第1の固体電解質層3には、脱ドープしにくいナフタレンスルホン酸をドープしているために、第1の導電性高分子層に給電が充分に行われるため、電解重合が第1の導電性高分子層表面で均一に行われる。
【選択図】図1
Description
特に、分子量200以上と、分子量が大きい芳香族スルホン酸を、第1の導電性高分子層にドープした場合には、芳香族スルホン酸が脱ドープしにくく、第1の導電性高分子層の電気伝導度を高いまま維持することができる。
図1は、本実施例における固体電解コンデンサの断面図を示したものである。陽極体1は、板状の弁金属、すなわち弁作用がある金属である。金属は、厚さ100〜800μm程度のアルミニウムが望ましいが、金属の種類や厚さは適宜変更が可能である。例えば、アルミニウムの他にも、タンタル、ニオブ及びチタン等の弁作用がある金属を用いることができる。
本実施例の固体電解コンデンサの製造方法は、次のような各工程を有する。
(1)陽極体よりコンデンサ素子を作製するコンデンサ素子作製工程。
(2)コンデンサ素子の陰極部に第1の固体電解質層を形成する化学重合工程。
(3)第1の固体電解質層に分子量200以上の芳香族スルホン酸をドープする芳香族スルホン酸ドープ工程。
(4)芳香族スルホン酸をドープしたコンデンサ素子を水洗する水洗工程。
(5)水洗工程を経たコンデンサ素子を電解重合用水溶液に浸漬し、電解重合により第2の導電性高分子層を形成する電解重合工程。
(6)固体電解コンデンサの上に、グラファイト(Gr)層と銀ペースト層からなる陰極層を形成する陰極層形成工程。
(7)端子部及び外装を形成する端子及び外装形成工程。
以下、各工程を具体的に説明する。
コンデンサ素子作製工程では、アルミニウム箔を5mm×5mmに切り出して陽極体とし、陰極部の大きさが3mm×5mmとなるように、レジスト部材により陽極部と陰極部により分離した後、陰極部をエッチングにより拡面処理を施してエッチング層を形成し、さらに印加電流3Vで陽極酸化処理を施して誘電体酸化皮膜層を形成し、コンデンサ素子とした。このコンデンサ素子の作製手段は、固体電解コンデンサにおける公知技術と同様でよい。
化学重合工程では、コンデンサ素子の陰極部を、重合性モノマーと酸化剤溶液に交互に浸漬することを複数回繰り返し、陰極部の誘電体酸化皮膜層の上に化学重合による第1の導電性高分子層を形成した。この第1の導電性高分子層を形成するために、重合性モノマー溶液として、EDOT/エタノール溶液を、酸化剤としてp−トルエンスホン酸/エタノール溶液を使用することができる。
芳香族スルホン酸ドープ工程では、コンデンサ素子を分子量200以上の芳香族スルホン酸の水溶液に所定時間浸漬する。芳香族スルホン酸の濃度は、1.5〜6.0wtの範囲が好ましいが、その範囲外でも静電容量(Cap)、容量出現率及び等価直列抵抗(ESR)の値を改善できる範囲であればよい。ここで使用する芳香族スルホン酸としては、分子量が200以上のもので、ナフタレンスルホン酸(分子量=208)、ブチルナフタレンスルホン酸(分子量264)、ナフタレンジスルホン酸(分子量=288)、ナフタレントリスルホン酸(分子量=368)、アントラキノンスルホン酸(分子量=288)、アントラキノンジスルホン酸(分子量=368)等が挙げられる。ナフタレンスルホン酸のような分子量が200以上の芳香族スルホン酸は、分子量が大きいため、第1の導電性高分子層をドープした後に脱ドープしにくい。従って芳香族スルホン酸がドープされた第1の導電性高分子層は、電気伝導度を高くすることができるとともに、第1の導電性高分子層の電気伝導度が高い状態を維持することができる。
このような芳香族スルホン酸の中でも、ナフタレンスルホン酸が、安価で、取り扱いが容易であるために、好適である。
コンデンサ素子を水洗する水洗工程では、芳香族スルホン酸の残渣を除去するために、コンデンサ素子を水洗する。芳香族スルホン酸の残渣の量が多いとLCを上昇させる要因となる。なお、この水洗方法については、公知の手段を用いることができる。
電解重合工程では、水洗工程を経たコンデンサ素子の陰極部を電解重合溶液に浸漬し、第2の導電性高分子層を電解重合する。すなわち、第1の導電性高分子層の表面に、電解重合により第2の導電性高分子層を形成する。この際、第1の導電性高分子層を電極として供給電極から給電を行う。この第1の導電性高分子層には、脱ドープしにくい分子量200以上の芳香族スルホン酸をドープしているために、第1の導電性高分子層の電気伝導度は高く、第1の導電性高分子層の全域に給電が充分に行われるため、電解重合が第1の導電性高分子層表面で均一に行われる。このため、多孔質体となっているエッチング層、酸化皮膜の空隙が、第2の導電性高分子によって充填されるように、第2の導電性高分子層を形成することができる。
陰極層形成工程では、電解重合工程を経たコンデンサ素子の陰極部(第2の導電性高分子層)の上に、陰極層を形成する。この工程では、カーボングラファイトペースト及び銀ペーストを、塗布、乾燥させて、陰極層を形成する。このカーボングラファイト層と銀ペースト層の形成手段は、固体電解コンデンサにおける公知技術と同様でよい。
端子及び外装形成工程では、陰極層形成工程で形成した陰極層に、陰極リードを接続すると共に、コンデンサ素子全体をエポキシ樹脂などのモールド樹脂でモールドして、固体電解コンデンサを形成する。この端子及び外装の形成手段は、固体電解コンデンサにおける公知技術と同様でよい。
[1.測定項目]
得られた固体電解コンデンサについて、静電容量(Cap)と、前記コンデンサ素子と同サイズの誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔について、アジピン酸アンモニウム溶液中で120[Hz]におけるCoを測定し、容量出現率(C/Co)を算出した。
第1の特性比較では、実施例1,3として、前記化学重合工程を経たコンデンサ素子の陰極部に対して、1.5wt%又は6.0wt%の濃度のナフタレンスルホン酸水溶液に10分間浸漬した。
実施例2,4として、前記化学重合工程を経て、第1の導電性高分子層であるPEDOT層を形成したコンデンサ素子の陰極部を、1.5wt%又は6.0wt%の濃度のナフタレンスルホン酸水溶液に10分間浸漬し、ナフタレンスルホン酸をPEDOT層にドープした。その後、ナフタレンスルホン酸の残渣を除去するためにコンデンサ素子を水洗した。
比較例として、前記化学重合工程を経て、第1の導電性高分子層であるPEDOT層を形成したコンデンサ素子の陰極部に対して、ナフタレンスルホン酸のドープを行わない例とした。
(1)比較例と実施例1〜4
比較例と実施例1〜4の比較では、ナフタレンスルホン酸をドープした実施例は、ナフタレンスルホン酸のドープを行わない比較例と比較して、静電容量(Cap)、容量出現率が大きくなることが判る。また、実施例は比較例と比較して等価直列抵抗(ESR)が大きく低減している。これは、電解重合によるピロール層が均一に形成しているためである。
(2)実施例1と実施例3
実施例1と実施例3の比較では、ドープするナフタレンスルホン酸水溶液の濃度が高くなるほど、等価直列抵抗(ESR)の低減効果が大きいとが判る。これは、ドーピングが充分になされ、PEDOT層の電気伝導度がより低くなり、電解重合によるピロール層がより均一に形成されているためである。
(3)実施例3と実施例4
実施例3と実施例4の比較では、ドープするナフタレンスルホン酸水溶液の濃度が高くなると漏れ電流(LC)の値が増大するが、ナフタレンスルホン酸をドープした後に水洗を行うことで、実施例1,2と同程度の漏れ電流(LC)の値に抑制することができるということが判る。
2 …誘電体酸化皮膜層
3 …第1の固体電解質層
4 …第2の固体電解質層
5 …供給電極
Claims (5)
- 弁金属からなる陽極体の表面にエッチングにより拡面処理したエッチング層と、
エッチング層の表面に形成された誘電体酸化皮膜層と、
誘電体酸化皮膜層の上に化学重合により形成された第1の固体電解質層と、
第1の固体電解質層の上に電解重合により形成された第2の固体電解質層とを備えた固体電解コンデンサにおいて、
第1の固体電解質層に、分子量200以上の芳香族スルホン酸をドーパントとして付与したことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 前記第2の固体電解質層がポリピロールであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- 弁金属からなる陽極体の表面にエッチング層を形成し、エッチング層の上に誘電体酸化皮膜層を形成するコンデンサ素子作製工程と、
前記コンデンサ素子の陰極部に化学重合による第1の固体電解質層を形成する化学重合工程と、
前記コンデンサ素子を分子量200以上の芳香族スルホン酸溶液に浸漬することで、第1の固体電解質層に芳香族スルホン酸をドープする芳香族スルホン酸ドープ工程と、
前記芳香族スルホン酸をドープした第1の固体電解質層の上に、電解重合による第2の固体電解質層を形成する電解重合工程とを備えることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記芳香族スルホン酸ドープ工程の後に、芳香族スルホン酸をドープしたコンデンサ素子を水洗する水洗工程を備えることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記芳香族スルホン酸の濃度が1.5wt%〜6.0wt%であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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