JP2011074380A - 保護フィルム及び保護フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リビングラジカル重合によって得られた重量平均分子量20万〜200万及び分子量分布2.5未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満である。
【選択図】なし
Description
このような保護フィルムを、前記被着体に粘着剤層を介して貼付すると、視認不可能なレベルで僅かな残渣物が付着することが知られており、これは、アクリル系粘着剤を用いる場合、主剤である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中に存在する残留モノマーや低分子量成分に起因することが分かっている。
また、特許文献2には光学フィルムを液晶パネル等のガラス基板に貼着するための粘着剤層が設けられた粘着型光学フィルムであって、リワーク性と耐久性に優れるものとして、光学フィルムの一方の面に粘着剤層が積層され、かつ該粘着剤層が、重量平均分子量100万以上のアクリル系ポリマー、及びガラス転移温度−5℃以下、重量平均分子量800〜5万のアクリル系オリゴマーを含有し、かつ前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記アクリル系オリゴマーを1〜40重量部含有する組成物の架橋物により形成されていることを特徴とする粘着型光学フィルムが開示されている。しかしながら、この技術は、分子量が800〜5万であって、分子量分布が1〜2の狭いアクリル系オリゴマーをリビングラジカル重合により形成して、アクリル系ポリマー100重量部に対して1〜40重量部加えて粘着剤組成物を作製する技術であって、リワーク性や耐久性には優れているかも知れない。しかし、100万以上のアクリル系ポリマーはフリーラジカル重合によるものであるし、また、アクリル系オリゴマー成分の含有量が多く、この光学フィルムを保護フィルムとして使用した場合、被着体への残渣物の付着を十分に抑制することはできない。なお、前述の「リワーク性」とは被着体に貼付後一定期間(例えば、2週間)経過後に被着体から問題なく剥すことができる性能をいい、通常、粘着力の経時変化により評価される。これに対して、本発明の効果である「残渣物の付着」は、被着体から剥した際の被着体における付着物の量を評価するものである。通常のリワーク性を有する保護フィルムにあっても、被着体から剥した際に目視で明らかなレベルの付着物が残るものは稀であるが、目視できないレベルでは被着体に付着物が残るのが通常である。本発明では、この付着物の量を極めて少ないレベルに低減することを目的の一つとするものである。
一方、ラジカル重合においては、生長ラジカルの寿命が極めて短く、二分子停止反応といった重合停止機構があるため、従来リビング重合は不可能であると考えられていたが、近年、空気の存在下でも安定なラジカルが見出されて以来、リビングラジカル重合の研究が積極的に行われ各種の手法が開発されている。
例えばリビングラジカル重合開始剤として、有機テルル化合物を用い、ビニルモノマーを重合して、分子量の揃ったリビングラジカルポリマーを製造する技術が開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
粘着剤組成物の主剤として、リビングラジカル重合によって得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を選択し、該共重合体の重量平均分子量が20万〜200万の範囲にあって、分子量分布が2.5未満であり、かつ重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満である (メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含む組成物が、その目的に適合し得ることを見出した。
また、プラスチックフィルムの一方の面に、前記粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有し、かつ該粘着剤層の露出面側に離型フィルムが積層されてなる保護フィルムにより、前記目的を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
(1)リビングラジカル重合によって得られる重量平均分子量20万〜200万及び分子量分布2.5未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満であることを特徴とする保護フィルム、
(2)(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が2質量%以下である、上記(1)項に記載の保護フィルム、
(3)(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を室温にて低級アルコール若しくは炭素数5〜10の脂肪族炭化水素と接触させて形成された沈殿物を固液分離し、低級アルコール若しくは炭素数5〜10の脂肪族炭化水素で洗浄後、該沈殿物を用いて、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が0.1質量%以下である粘着剤組成物を作製し、粘着剤層を形成してなる、上記(2)項に記載の保護フィルム、
(4)(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)が、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)と、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b)とを、質量比80:20〜99.9:0.1の割合で含むものである、上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の保護フィルム、
(5)さらに、粘着剤組成物が架橋剤(B)を含む、上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の保護フィルム、
(6)プラスチックフィルムの一方の面に粘着剤層を有し、かつ該粘着剤層の露出面側に離型フィルムが積層されてなる、上記(1)〜(5)項のいずれかに記載の保護フィルム、
(7)プラスチックフィルムが厚さ10〜250μmであって、粘着剤層とは反対側の面に帯電防止性能及び/又は防汚性能を有するコーティング層が設けられてなり、かつ離型フィルムの厚さが10〜100μmである、上記(6)項に記載の保護フィルム、及び
(8)リビングラジカル重合により、重量平均分子量20万〜200万、分子量分布2.5未満、及び重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満となる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を製造し、該共重合体を粘着剤組成物に含有させ、プラスチックフィルム上に該粘着剤組成物を塗布することを特徴とする保護フィルムの製造方法、
を提供するものである。
本発明の保護フィルムは、リビングラジカル重合によって得られる重量平均分子量20万〜200万及び分子量分布2.5未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満であることを特徴とする。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、本発明の保護フィルムにおける粘着剤層を形成する粘着剤組成物において、主剤として含まれる成分であって、以下に示す性状を有する。なお、前記「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を指す。他の類似用語も同様である。
(性状)
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、重量平均分子量Mwが20万〜200万の範囲にあって、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比)が2.5未満であることを要する。前記重量平均分子量が20万未満であると、必然的に重量平均分子量5万以下の成分量が増えて、被着体への残渣物の付着を防止することができない。一方200万を超えると粘度増加により塗工面の平滑性が悪化する。また、このような粘度増加を抑えるには大量の溶媒が必要であり、コスト的観点あるいは環境対策上も好ましくない。少ない残渣物、接着耐久性及び塗工適性などを考慮すると、この重量平均分子量は30万〜150万のものが好ましく、40万〜120万のものがより好ましい。
また、分子量分布(Mw/Mn比)が2.5以上であると、後述の当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の低分子量成分の低減を行うことが困難になり、本発明の目的が達せられない場合がある。好ましい分子量分布(Mw/Mn比)は2以下である。特に好ましくは1.2〜1.8である。
さらに、当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)においては、その中に含まれる重量平均分子量Mw5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満であることを要する。この低分子量成分の割合が5質量%以上であると、このような共重合体を含有する粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する保護フィルムを、被着体に該粘着剤層を介して貼付した場合、該被着体への残渣物の付着を十分に低いレベルに抑制できない場合がある。
したがって、重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合は2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。
なお、上記重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)(以下、非官能性単量体単位(a)と称することがある。)と、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b)(以下、官能性単量体単位(b)と称することがある。)とを、質量比80:20〜99.9:0.1の割合で含むものが好ましい。前記官能性単量体単位(b)における反応性官能基は、後述の架橋剤によって架橋される架橋点となる官能基であり、該官能性単量体単位(b)の含有量が、前記非官能性単量体単位(a)との合計量に基づき、0.1質量%未満では、当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は架橋が不充分となり、粘着剤組成物は粘着力や耐久接着性の劣るものとなり、一方20質量%を超えると、粘着剤の製造時にゲル化を起こしやすくなり、さらに、架橋剤添加後のポットライフが短くなりすぎて作業性の問題が生じる恐れがある。また、凝集力が高くなりすぎ粘着力が低下して被着体に対する密着性が悪くなる恐れもある。
官能性単量体単位(b)のより好ましい含有量は、非官能性単量体単位(a)との合計量に基づき、0.5〜10質量%であり、さらに好ましくは1〜8質量%である。
この場合、共重合体中の架橋点となる4−ヒドロキシブチルアクリレート単位や2−ヒドロキシエチルアクリレート単位の含有量は、0.5〜10質量%程度が好ましい。
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、リビングラジカル重合により重合されてなるものである。リビングラジカル重合はフリーラジカル重合と比較して活性点での反応が非常に緩やかであるという特徴を有する。すなわち、フリーラジカル重合では、活性点での反応が非常に早いために反応性の高い単量体から重合し、その後、反応性の低い単量体が重合するものと考えられている。一方、リビングラジカル重合では、活性点での反応が緩やかであるため、単量体の反応性の影響を受けずに均等に重合が進行し、得られるいずれの共重合体もより均等な組成になるものと考えられる。そのため、リビングラジカル重合で得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)はフリーラジカル重合によるものに比べて非官能性単量体単位(a)のみからなる(メタ)アクリル酸エステル系単独重合体の発生割合が圧倒的に少ないものになると考えられる。このため、リビングラジカル重合によって得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、分子量の低いものであっても後述の架橋剤(B)により架橋される可能性が非常に高くなる。その結果、リビングラジカル重合により得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を主剤とする粘着剤層は、被着体への残渣物の付着を非常に低いレベルに抑えることができるものと考えられる。
リビングラジカル重合法としては、従来公知の方法、例えば重合制御剤として、原子移動ラジカル重合剤を用いる原子移動ラジカル重合法(ATRP重合法)、可逆付加−開裂連鎖移動剤を用いる可逆付加−開裂連鎖移動による重合法(RAFT重合法)、重合開始剤として有機テルル化合物を用いる重合法などを採用することができる。これらのリビングラジカル重合法の中で、有機テルル化合物を重合開始剤として用いる方法が、分子量の制御性及び水系においても重合が可能であることなどから好ましい。以下に、有機テルル化合物を重合開始剤として用いる方法を示す。
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、例えば下記一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤(以下、有機テルル化合物Iと称することがある。)を用いて、単量体の混合物を重合させることにより製造することができる。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基が良い。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等、置換アリール基としては置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等、芳香族へテロ環基としてはピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。上記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−COR5で示されるカルボニル含有基(R5=炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。好ましいアリール基としては、フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。また、これら置換基は、1個又は2個置換しているのが良く、パラ位若しくはオルト位が好ましい。
炭素数1〜8のアルキル基としては、上記R1で示したアルキル基と同様のものを挙げることができる。
R4で示される各基は、具体的には次の通りである。
アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基としては上記R1で示した基と同様のものを挙げることができる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、−COOR6(R6=H、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基)で示される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
有機テルル化合物としては、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン[1−(1−メチルテラニル−エチル)−4−トリフルオロメチルベンゼン]、1−(1−メチルテラニル−エチル)−3,5−ビス−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチル−2−メチルテラニル−プロパナール、3−メチル−3−メチルテラニル−2−ブタノン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート]、2−(n−ブチルテラニル)−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート]、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(フェニルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−フェニルテラニル−プロピル)ベンゼン等を挙げることができる。
これらの一般式(1)で表される有機テルル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アゾ系重合開始剤を使用する場合、重合開始剤として用いた式(1)の有機テルル化合物1molに対して好ましくは0.01〜100mol、より好ましくは0.1〜100mol、さらに好ましくは0.1〜5molの割合で使用されることが望ましい。
不活性ガスで置換した容器で、前述した単量体の混合物と一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤及び所望によりアゾ系重合開始剤を混合する。この時、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。特に好ましくは、窒素が良い。
単量体と一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤の使用量としては、得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)(以下、リビングラジカル共重合体(A)と称することがある。)の分子量あるいは分子量分布により適宜調節すればよい。好ましい使用量としては、概ね各単量体の分子量に仕込み割合を乗じて得た値の総和を目的とする共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)で割った値(使用量の単位はモル数)であり、場合によりその値の0.3〜3倍程度の量を使用する。
反応終了後、常法により使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去したり、沈殿ろ過、再沈殿したり、あるいはカラム分離等をして目的のリビングラジカル共重合体(A)を必要に応じて精製する。反応処理については、目的物に支障がなければどのような処理方法でも行うことができる。
例えば、 当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)において、その中に含まれる重量平均分子量Mw5万以下の低分子量成分の割合を0.1質量%以下とするには、下記の分別法を採用することができる。
(成分(A)の分別法)
成分(A)の分別法の具体的方法としては、まず、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、もしくはペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数5〜10の脂肪族炭化水素、好ましくはメタノールもしくはヘキサン100質量部中に、成分(A)を、固形分として1〜30質量部程度の割合で加え、室温でかきまぜて沈殿を形成させる。次いで、この沈殿物をデカンテーションなどの方法で固液分離したのち、前記低級アルコールもしくは炭素数5〜10の脂肪族炭化水素で洗浄後、粘着剤組成物に、主剤として含有させる。この分別法により、成分(A)中の重量平均分子量Mw5万以下の低分子量成分の割合を0.1質量%以下とすることができる。
本発明で用いる一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤は、優れた分子量制御及び分子量分布制御を非常に温和な条件下で行うことができる。
本発明で得られるリビングラジカル共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の分子量は、反応時間、一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤(有機テルル化合物)の量により調整可能である。具体的には、分子量を増加させるためには、単量体に対する有機テルル化合物の配合割合を低減し、重合時間を増加させればよい。しかし、これでは分子量の大きい共重合体(A)を得るには長時間を要することになる。そこで、重合時間の低減を図るには、重合温度を高くしたり、前記アゾ系重合開始剤を添加することにより達成することができる。しかしながら、重合温度が高すぎたり、アゾ系重合開始剤の添加量が多すぎると、共重合体(A)の分子量分布を増大させることとなるので、それとの調整が必要である。
このようにして、重量平均分子量が20万〜200万であって、分子量分布(Mw/Mn比)が2.5未満であり、かつ重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を容易に得ることができる。
本発明の粘着剤組成物においては、架橋剤を含有させることができる。
架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
ここで、ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート)などを挙げることができる。
本発明においては、この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)100質量部に対し、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部の範囲で選定される。
本発明で用いる粘着剤組成物の調製方法に特に制限はなく、例えば溶媒中に、前述した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)、及び必要に応じて用いられる架橋剤、さらには各種添加剤、例えば硬化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光拡散剤、光安定剤、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤などを加え、撹拌混合することにより、当該粘着剤組成物を調製することができる。
前記溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この粘着剤組成物の固形分濃度としては、該組成物が塗工に適した粘度であればよく、特に制限はない。
本発明の保護フィルムは、前述した粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有するものであって、例えばプラスチックフィルムの一方の面に、前記粘着剤層を有し、かつ該粘着剤層の露出面側に離型フィルムが積層されてなる構成の積層フィルムが好ましい。
本発明の保護フィルムにおいて、基材として用いられるプラスチックフィルムとしては特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等を挙げることができる。なお、保護フィルムを光学用途で使用する場合には、被着体に貼付した状態で検品作業を行ったり、需要者の好みにより保護フィルムを貼付した状態のままその上から視認するような使用がされることもあるので、プラスチックフィルムとしては透明プラスチックフィルムであることが好ましい。
これらのプラスチックフィルムの厚さは特に制限はなく、適宜選定されるが、通常10〜250μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、このプラスチックフィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、片面又は両面にプライマー処理を施したものも用いることができる。
本発明の保護フィルムにおいて、前記プラスチックフィルムの一方の面に設けられる粘着剤層は、前述した本発明の粘着剤組成物を、プラスチックフィルムに直接塗布・乾燥して設け、さらにその上に離型フィルムを積層してもよいし、離型フィルムの離型処理面に塗布・乾燥して粘着剤層を形成し、この離型フィルム付き粘着剤層をプラスチックフィルムの一方の面に貼着させてもよい。
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
粘着剤層の厚さは、通常2〜30μm程度、好ましくは5〜25μmである。
前記の離型フィルムとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチック製フィルムに、シリコーン樹脂などの離型剤を塗布したものなどが挙げられる。プラスチック製フィルムとしては、上記プラスチックフィルムで挙げたものを適宜使用することができる。この離型フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常10〜100μm程度である。
本発明の保護フィルムは、粘着剤層の露出面側に、通常離型フィルムが積層されてなるものであるが、保護フィルムの用途によっては、離型フィルムを積層することなく、被着体に保護フィルムを粘着剤層を介して貼合してもよい。
本発明の保護フィルムにおいては、プラスチックフィルムの粘着剤層とは反対側の面に、帯電防止性能及び/又は防汚性能を有するコーティング層を設けることができる。
帯電防止性能を有するコーティング層は、例えば熱可塑性樹脂マトリックス中に、導電性材料が分散してなる塗工液を塗布・乾燥することにより形成することができる。
一方、防汚性能を有するコーティング層は、一般にフッ素系樹脂を含む塗工液を塗布・乾燥することにより形成することができる。
前記各種塗工液の塗布方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いることができる。
このようにして形成された導電性能を有するコーティング層の厚さは、通常0.05〜1μm程度、好ましくは0.3〜0.7μmであり、防汚性能を有するコーティング層の厚さは、通常1〜10nm程度、好ましくは3〜8nmである。
<粘着力>
保護フィルムは、被着体に貼付している間は剥がれることなく十分に密着され、不要になった際は容易に剥せることが求められる。光学用途で用いられることを考慮して、本発明においては、ポリメチルメタクリレート板(以下、「PMMA板」と称する場合がある)を被着体として測定する。
測定は、25mm幅×100mm長の保護フィルムの粘着剤層をPMMA板に圧着し、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置したのち、同環境下で、剥離速度300mm/分、剥離角度180°で剥すことにより行う。
粘着力としては、30〜1000mN/25mmであることが好ましく、60〜500mN/25mmであることがさらに好ましい。30mN/25mm未満であると意図せずに剥がれてしまう場合があり、1000mN/25mmを超えると残渣物の付着が増加する場合がある。
<ゲル分率>
本発明の保護フィルムにおける粘着剤層のゲル分率は、粘着剤層の厚さや架橋剤量によって粘着力制御の観点から、好ましい範囲が異なり、例えば、厚さ0.5〜10μmの範囲においては、ゲル分率は、通常40〜100%であり、50〜90%の範囲であることが好ましく、厚さ10〜30μmの範囲においては、ゲル分率は90〜100%の範囲にあることが好ましい。
なお、上記ゲル分率の測定方法については、後で詳述する。
<全光線透過率>
本発明の保護フィルムを光学用途に適用する場合、保護フィルムを被着体に貼付した状態で検品作業を行ったり、需要者の好みに応じて保護フィルムを被着体に貼付したまま使用することも考えられることから、光学的特性に優れた保護フィルムであることが求められる。具体的には、光の透過性を示す全光線透過率が高いことが求められる。保護フィルムの全光線透過率としては、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361−1:1997に準拠して測定した値である。
<濡れ性>
本発明の保護フィルムを光学用途に適用する場合、エア等を巻き込むことなく被着体に貼付できることが求められる。エア等の巻き込みが生じ難い保護フィルムであるか否かの判断において、濡れ性の評価が有効である。濡れ性の評価は、偏光板等の最表面に設けられる防眩層上に保護フィルムの粘着剤層が接するように配置し、保護フィルムの自重で粘着剤層全体の密着が終了するまでの時間を測定することにより行う。30秒以内に前記密着が完了する場合は、濡れ性に優れた保護フィルムといえる。
<残留パーティクル試験>
本発明の保護フィルムを、粘着剤層を介して被着体に貼付した場合に付着する残渣物の量は、被着体としてシリコンウエハを選択し、レーザー表面検査装置を用いて(詳細は後述の通りである)、その表面に付着した残渣物の量を確認することにより判断することができる。なお、被着体としてシリコンウエハを選択するのは、残渣物の付着する量を数値的に測定することが容易であるためである。残留パーティクルが200(個/4インチウェハ)以下であれば、各種被着体への残渣物の非常に少ない粘着剤層であると言える。
上記のリビングラジカル重合、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)、粘着剤組成物、プラスチックフィルム、粘着剤組成物の塗布方法などについては、前述した本発明の保護フィルムの説明において示した通りである。
なお、各例で得られたアクリレート共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、並びに重量平均分子量5万以下及び10万以下の低分子量成分の含有量を、下記の方法により求めた。
<GPC法>
測定装置:東ソー社製の高速GPC装置「HLC−8120GPC」に、高速カラム「TSK gurd column HXL−H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結して測定した。
カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分、検出器:示差屈折率計
(1)PMMAに対する粘着力
保護フィルムから、25mm幅、100mm長のサンプルを切り出し、離型フィルムを剥して、PMMA板[三菱レイヨン社製、「アクリライトL001」]に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧する。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置したのち、同環境下で、引張試験機[オリエンテック社製、「テンシロン」]を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定する。
(2)ゲル分率
粘着剤厚20μmを80mm×80mmのサイズにサンプリングして、ポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み粘着剤のみの重さを精密天秤にて秤量した。この時の重さをM1とする。ソックスレー(抽出器)を用いて酢酸エチル溶剤に粘着剤を浸漬させ、還流を行い16時間処理した。その後粘着剤をとり出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下、24時間で風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤のみの重さを精密天秤にて秤量した。この時の重さをM2とする。ゲル分率は、(M2/M1)×100で表される(%)。
(3)全光線透過率
日本電色工業社製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、JIS K 7361−1:1997に準拠して、全光線透過率を測定した。
(4)濡れ性
表面粗さ(Ra)0.3μmのシリカ微粒子含有アクリル系樹脂からなる防眩層を最表面に有する偏光板[住友化学社製]上に、保護フィルムの粘着剤層が接するように配置し、該保護フィルムが濡れ広がるのに必要な時間を測定し、濡れ性を評価した。30秒以内が合格である。
(5)残留パーティクル試験
実施例あるいは比較例において得られた保護フィルムをクリーンルーム内にて、室温下で、4インチシリコンウエハの鏡面に5kg(49N)ゴムローラーを1往復させることにより貼り付け、60分間放置した後、剥離を行った。このときウエハ上の粒径0.27μm以上の残留異物の数をレーザー表面検査装置[日立電子エンジニアリング社製]により測定した。
金属テルル[Aldrich社製、製品名「Tellurium(−40mesh)」]6.38g(50mmol)をテトラハイドロフラン(THF)50mlに懸濁させ、これにn−ブチルリチウム[Aldrich社製、1.6mol/Lヘキサン溶液]34.4ml(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物のエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート8.98g(収率59.5%)を得た。
実施例1
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
単量体としてブチルアクリレート[BA、東京化成社製]と2−エチルヘキシルアクリレート[2EHA、東京化成社製]と4−ヒドロキシブチルアクリレート[4HBA、東京化成社製]とを、質量比75:20:5の割合で用い、以下に示すリビングラジカル重合により、BA/2EHA/4HBAのランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造した。この共重合体の性状を第2表に示す。
<リビングラジカル重合>
アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート68.5μL、ブチルアクリレート(同上)107g、2−エチルヘキシルアクリレート(同上)28.5g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(同上)7.1g及び2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)[AIBN;Aldrich社製]4.6mgを60℃で20時間反応させた。
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、酢酸エチル500mlに溶解した後、そのポリマー溶液を活性アルミナ[和光純薬工業社製]で作製したカラムに通した。ポリマー溶液の粘度が5000mPa・s(25℃)となるようにトルエンを添加した。得られたポリマーの固形分は30.0質量%であった。
またGPCにより、重量平均分子量48.5万、分子量分布1.88であった。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造したランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分)と、架橋剤としてイソシアヌレート型HDI[日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」、NCO含量:21.3質量%、固形分100%]4.0質量部を、溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度28質量%、23℃における粘度が3Pa・sの粘着剤組成物を調製した。なお、上記粘度はB型粘度計を用いて測定した。
(3)保護フィルムの作製
厚さ38μmの離型フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET381031」]の離型処理面に、上記(2)で得た粘着剤組成物を、ナイフ式塗工機により、乾燥厚さが20μmになるように塗布したのち、90℃にて1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。
次いで、基材フィルムとして、厚さ38μmの帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製、商品名「PET38SLD52」]の一方の面に、上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層を貼合して、保護フィルムを作製し、この保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
単量体として、第1表に示す種類と使用割合のものを用い、エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート及びAIBNの添加量、並びに重合時間を調整する以外は実施例1と同様にしてリビングラジカル重合により、各種の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造した。各共重合体の性状を第2表に示す。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造した各(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部と、第1表に示す種類と量の各架橋剤を溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、第1表に示す固形分濃度と粘度を有する各種の粘着剤組成物を調製した。
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で得られた各種の粘着剤組成物を用い、粘着剤層の厚さを第2表に示す値にした以外は、実施例1と同様にして各種の保護フィルムを作製した。各保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。
(1)実施例4で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)(BA/4HBA質量比=99/1)の分別
実施例4で得られたBA/4HBA質量比=99/1の共重合体の溶液40質量部(固形分7.2質量部)をメタノール100質量部中に加え、室温でかきまぜて、沈殿を形成させた。次いで、この沈殿物を、デカンテーションにより分離したのち、メタノール50質量部で洗浄した。その後、デカンテーションでメタノールを取り除き、沈殿物をトルエン40質量部に溶解させ、固形分含有量が15質量%の共重合体(A)の溶液を調製した。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で調製した溶液に、その固形分100質量部に対し、架橋剤としてイソシアヌレート型HDI「コロネートHX」(前出)1.0質量部を添加して溶解させ、23℃における粘度が3Pa・sの粘着剤組成物を調製した。
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で得られた粘着剤組成物を用い、粘着剤層の厚さを第2表に示す値にした以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。この保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。
実施例12
前記帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製、商品名「PET38SLD52」]の一方の面に、実施例1の「(2)粘着剤組成物の調製」の工程で得られた粘着剤組成物を、ナイフ塗工機により、乾燥厚さが20μmになるように塗布したのち、90℃にて1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。
次いで、前記離型フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET381031」]をその離型処理面が前記粘着剤層と接するように積層することにより、離型フィルムで粘着剤層が保護された保護フィルムを得た。そして、該保護フィルムの諸特性は実施例1の保護フィルムと同一になることを確認した。
(1)フリーラジカル重合による(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造
単量体としてブチルアクリレート(同上)と2−エチルヘキシルアクリレート(同上)と4−ヒドロキシブチルアクリレート(同上)とを、質量比75:20:5の割合で用い、以下に示すフリーラジカル重合により、BA/2EHA/4HBAの(メタ)アクリル酸エステル共重合体を製造した。この共重合体の性状を第2表に示す。
<フリーラジカル重合>
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、酢酸エチル90質量部、2−エチルヘキシルアクリレート20質量部、ブチルアクリレート75質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート5質量部、重合開始剤2,2'−アゾビス(イソブチルニトリル)(AIBN)0.2質量部を仕込み、撹拌しながら酢酸エチルの還流温度で7時間反応させた。反応終了後、トルエン95質量部を添加して室温まで冷却した。粘度3,000mPa・s、固形分30質量%である(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得た。
以下、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、さらに保護フィルムを作製した。この保護フィルムの諸特性を第2表に示す。
コロネートHX;日本ポリウレタン工業社製、商品名、イソシアヌレート型HDI、NCO含量:23.1質量%、固形分:100%
タケネートD−110N;三井化学社製、商品名、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンの3:1付加物、NCO含量:11.8質量%、固形分:75質量%
BA;ブチルアクリレート[東京化成社製]
HEA;2−ヒドロキシエチルアクリレート[東京化成社製]
4HBA;4−ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成社製]
2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート[東京化成社製]
CHA;シクロヘキシルアクリレート[東京化成社製]
MA;メチルアクリレート[東京化成社製]
Claims (8)
- リビングラジカル重合によって得られた重量平均分子量20万〜200万及び分子量分布2.5未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満であることを特徴とする保護フィルム。
- (メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が2質量%以下である、請求項1に記載の保護フィルム。
- (メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を室温にて低級アルコール若しくは炭素数5〜10の脂肪族炭化水素と接触させて形成された沈殿物を固液分離し、低級アルコール若しくは炭素数5〜10の脂肪族炭化水素で洗浄後、該沈殿物を用いて、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が0.1質量%以下である粘着剤組成物を作製し、粘着剤層を形成してなる、請求項2に記載の保護フィルム。
- (メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)が、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)と、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b)とを、質量比80:20〜99.9:0.1の割合で含むものである、請求項1〜3のいずれかに記載の保護フィルム。
- さらに、粘着剤組成物が架橋剤(B)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の保護フィルム。
- プラスチックフィルムの一方の面に粘着剤層を有し、かつ該粘着剤層の露出面側に離型フィルムが積層されてなる、請求項1〜5のいずれかに記載の保護フィルム。
- プラスチックフィルムが厚さ10〜250μmであって、粘着剤層とは反対側の面に帯電防止性能及び/又は防汚性能を有するコーティング層が設けられてなり、かつ離型フィルムの厚さが10〜100μmである、請求項6に記載の保護フィルム。
- リビングラジカル重合により、重量平均分子量20万〜200万、分子量分布2.5未満、及び重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満となる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を製造し、該共重合体を粘着剤組成物に含有させ、プラスチックフィルム上に該粘着剤組成物を塗布することを特徴とする保護フィルムの製造方法。
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