JP2011073921A - 針状酸化錫微粉末およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 導電性が高く、白色の針状酸化錫微粉末であって、この針状導電性酸化錫微粉末を用い、少量の添加であっても表面抵抗率が低く、薄い白色の塗膜を形成できる針状導電性粉末を提供する。
【解決手段】 短軸平均粒子径が20〜200nmで、アスペクト比が3以上であり、かつセリウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有することを特徴とする針状酸化錫微粉末であって、好ましくは、粉体体積抵抗値が、1×10Ω・cm以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、優れた導電性を有する針状酸化錫微粉末およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、導電性塗料または導電性樹脂のフィラーとして、種々の用途分野において適用され、高付加価値化を図り得る優れた高機能性材料に関する。
導電性フィラー材料は、プラスチックス、ゴム、繊維などの導電性付与剤或いは帯電防止剤として、更には電子写真複写紙、静電記録紙などの記録材料の支持体用導電性付与剤等に利用される。
現在、導電性材料としては、界面活性剤、イオン導電材などのいわゆるイオン伝導型のタイプと、カーボンや酸化物系導電性粉末などのいわゆる電子伝導型のタイプが多く使用されている。
特に、電子伝導型のタイプのものは、イオン伝導型のものに比べ、湿度や温度に対する導電性の安定性が高いため、近年例えば、塗料、インク、プラスチックス、繊維など種々の分野での素材や製品の帯電防止用導電性付与剤として、環境に依存しない材料として非常に有効に使用されている。
上記電子伝導型のタイプの例としては、カーボン系材料、インジウム−スズ系(ITO)粉末、アンチモン−スズ系(ATO)粉末、SnO、アルミ−亜鉛系(AZO)酸化物などの酸化物系やこれらの組成物を表面に被覆した材料が知られている。
一般に、導電性粉末を含む導電性付与剤を塗布して使用する場合には、導電性粉末は、ゴム、プラスチックス、紙等に充填されるか、或いは結合剤を含む溶液中に分散して塗布液とされ、この塗布液が、種々のフィルム、シート、支持体、さらには筐体などの被処理体上に塗布して用いられる。その場合、良好な導電性を得るには、少なくとも隣接する粉末同志が密に接触するように導電性粉末の含有量を多くしなければならない。球状等の粉末を用いる場合には、多量の導電性粉末の混入を必要とする。ここで、針状或いは繊維状の導電性粉末は、単位面積当たり或いは単位容積当たりで、少量の導電性粉末でも導電路を有効に形成することが可能となり、有利である。そこで、針状性を有する各種粉末が開発されている。
まず、繊維状導電性酸化アンチモン・スズとして、種々のものが提案されている。例えば、導電性酸化第二錫繊維を製造するために、しゅう酸錫を非常にゆっくりと昇温焼成したり(特許文献1)、銅を溶媒として酸化アンチモン・スズを蒸発させ、低温部に導入させ析出させたり(特許文献2)、錫化合物で紡糸液を作成し、紡糸する(特許文献3)等の方法で製造されることが知られているが、これらの方法で得られた物は、いずれも短軸が約0.5μmと太い、或いは、工業的生産性が極めて低い等の問題があった。
さらには、繊維状の形態を有する粉末に上記導電材を被覆することも知られている(特許文献4、5)。しかしながら、これらの材料は基材の上にコーティングするため、粒子の系が大きくなり、樹脂コンパウンド化して薄膜等にして使用する用途、いわゆる軽薄短小が求められる用途には使用できない、また、塗料として使用するとき、塗膜にムラが出て使用できない、という問題がある。
また、繊維状のITO粉末も知られているが(特許文献6、7、8、9)、高価なために使用できる用途が限定されてしまう、という問題がある。
そこで、短軸平均粒子径が0.005〜0.05μmであり、長軸平均粒子径が0.1〜3μmであり、かつアスペクト比が5以上であって、ケイ素成分を含有させることによる、針状導電性酸化錫微粉末または針状導電性アンチモン含有酸化錫微粉末が、提案されている(特許文献10、11)。しかしながら、これらの粒子は、小さ過ぎるため、比表面積が大きくなり、フィラーとして使用する場合に、柔軟性が損なわれ樹脂強度が劣化する等の問題がある。
特開昭56−120519号公報 特開昭62−158199号公報 特開平5−117906号公報 特開平11−241271号公報 国際公開第2005/008685号 特開平6−293515号公報 特開平6−293517号公報 特開平7−232920号公報 特開平10−17325号公報 特開平8−23112号公報 特開平8−217445号公報
そこで、発明者らは、鋭意研究した結果、針状導電性粉末を作製するときに、酸化錫にセリウムを添加することにより、導電性が高く、白色の針状酸化錫微粉末であって、この針状導電性酸化錫微粉末を用い、少量の添加であっても表面抵抗率が低く、薄い白色の塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した針状酸化錫微粉末とその製造方法に関する。
(1)短軸平均粒子径が20〜200nmで、アスペクト比が3以上であり、かつセリウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有することを特徴とする、針状酸化錫微粉末。
(2)粉体体積抵抗値が、1×10Ω・cm以下である、上記(1)記載の針状酸化錫微粉末。
(3)フッ素を質量基準で10%以下含有する、上記(1)または(2)記載の針状酸化錫微粉末。
(4)アンチモンを質量基準で10%以下含有する、上記(1)または(2)記載の針状酸化錫粉末
(5)針状酸化錫微粉末を質量基準で20%含有する厚さ10μmのポリエチレン樹脂シートにしたとき、ポリエチレン樹脂シートの体積抵抗値が1010Ω・cm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか記載の針状酸化錫微粉末。
(6)錫成分、セリウム成分およびアルカリ金属のハロゲン化物を含む被焼成処理物を、アルカリ金属のハロゲン化物の融点より高い温度、かつ1200℃以下で焼成し、次いで得られた焼成物の可溶性塩類を除去する、セリウムを含有する針状酸化錫微粉末の製造方法。
本発明(1)によれば、導電性を付与し得る針状で白色の酸化錫微粉末を提供することができ、本発明(2)によれば、導電性が高い針状の白色酸化錫微粉末を提供することができる。この針状酸化錫微粉末を用いて、白色で薄く、表面抵抗率の低い塗膜を形成することができる。また、本発明(6)によれば、本発明(1)の針状酸化錫微粉末を容易に製造することができる。
実施例1で得られた針状酸化錫微粉末の透過型電子顕微鏡写真である。
以下本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量基準の%である。
〔針状酸化錫微粉末〕
本発明の針状酸化錫微粉末は、短軸平均粒子径が20〜200nmで、アスペクト比が3以上であり、かつセリウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有することを特徴とする。この針状酸化錫微粉末は、酸化第二錫を主成分とし、酸化第二錫に酸素欠陥が存在するとき、針状酸化アンチモン錫微粉末に導電性が付与される。
ここで、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた質量平均粒子径である(n=50)。短軸平均粒子径が20nm以上であると、良好な導電性、および良好な水への分散性、白色性を示し、200nm以下であると針状酸化錫微粉末を含有する塗膜の平滑性を高める。また、本発明において、微粉末とは、短軸平均粒子径が200nm以下のものをいう。
アスペクト比が3以上であると、針状酸化錫微粉末を用いる塗膜に良好な導電性を付与する。ここで、アスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長軸平均粒子径/短軸平均粒子径)を計算して求める(n=50)。本発明において、「針状」とは、本発明の物性値で定義される針状のものの他、繊維状、柱状、棒状等の類似形状のものを含む。なお、針状酸化錫微粉末の長軸平均粒子径は、25nm〜10μmであることが、良好な導電性付与の観点から好ましく、25nm〜4μmが、より好ましい。また、針状酸化物微粉末の比表面積は、1〜100m/gが好ましく、5〜50m/gがより好ましい。
セリウムが、錫に対して質量基準で0.1%以上であると、短軸平均粒子径が20〜200nmで、アスペクト比が3以上の透明性の針状粉末を得ることができ、10%以下であると良好な導電性が得られる。針状酸化錫微粉末中のセリウムと錫の質量定量分析は、ICP法で行う。
針状酸化錫微粉末は、フッ素を、質量基準で10%以下含有することが好ましく、1〜5%含有することがより好ましい。フッ素の存在により、酸化第二錫中の酸素欠陥が安定し、針状酸化錫微粉末の導電性を安定させることができる。針状酸化錫微粉末中のフッ素が10%より多いと、酸化第二錫にドープされない遊離のフッ素もしくはフッ化物が増加し、針状酸化錫微粉末の間の通電パスを妨げるので、導電性が低下する。針状酸化錫微粉末中のフッ素の質量定量分析は、セリウム、錫と同様に行う。なお、フッ素が0%であっても、第一錫イオン等による酸化第二錫の還元などにより、針状酸化錫微粉末に高い導電性を付与することができる。
また、針状酸化錫微粉末は、アンチモンを、質量基準で10%以下含有することが好ましく、1〜5%含有することがより好ましい。アンチモンの存在により、酸化第二錫中の酸素欠陥が安定し、針状酸化錫微粉末の導電性を安定させることができる。針状酸化錫微粉末中のアンチモンが10%より多いと、酸化第二錫にドープされない遊離のアンチモンもしくはアンチモン化合物が増加し、針状酸化錫微粉末の間の通電パスを妨げるので、導電性が低下する。針状酸化錫微粉末中のアンチモンの質量定量分析は、セリウム、錫と同様に行う。なお、アンチモンが0%であっても、第一錫イオン等による酸化第二錫の還元などにより、針状酸化錫微粉末に高い導電性を付与することができる。
針状酸化錫微粉末の粉体体積抵抗値が、1×10Ω・cm以下であると、針状酸化錫微粉末を使用する塗膜が、帯電防止効果を発揮する表面抵抗10Ω/□を得るために必要な、塗膜への針状酸化錫微粉末の混入量を抑制することができ、塗膜の全光透過率等の物性を維持することが可能となり、好ましく、1×10Ω・cm以下が、より好ましい。ここで、粉体体積抵抗値とは、試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kgf/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値をデジタルマルチメーターによって測定し、これより粉体体積抵抗値を算出する。
針状酸化錫微粉末を質量基準で20%含有する厚さ10μmの塗膜にしたとき、ポリエチレン樹脂シートの体積抵抗値が1010Ω/□であると、針状酸化錫微粉末を透明導電膜として使用するために、好ましい。このとき、塗膜は、針状酸化錫微粉末を質量基準で19〜21%含有すればよく、塗膜の残部は、後述するバインダー樹脂である。また、膜厚は、9.5〜10.4μmの範囲で測定する。ここで、塗膜の体積抵抗値は、三菱化学アナリテック製ハイレスタUP(4端子法)で測定する。
本発明の針状酸化錫微粉末は、粉末の色調が、Lab表色系におけるL値が70以上であるものが、好ましい。ここで、針状酸化錫微粉末のL値は、例えば、スガ試験機社製装置(SM−7-IS−2B)を用いて測定する。なお、本発明の針状酸化物微粉末は、白色顔料として用いられる酸化チタンのような強い光触媒活性がないので、樹脂に添加して塗膜等に使用しても塗膜中の樹脂の分解を促進する心配がない。
針状酸化錫微粉末は、全質量の70%以上が、短軸平均粒子径が20〜200nmであり、アスペクト比が3以上であり、かつセリウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有することが好ましい。
〔製造方法〕
本発明の針状酸化錫微粉末の製造方法は、
錫成分、セリウム成分およびアルカリ金属のハロゲン化物を含む被焼成処理物を、アルカリ金属のハロゲン化物の融点より高い温度、かつ1200℃以下で焼成し、次いで得られた焼成物の可溶性塩類を除去することを特徴とする。
被焼成処理物を製造するための前駆物質を、まず生成させる。前駆物質は、錫成分およびセリウム成分を含む。錫成分としては、錫の水酸化物および/またはその脱水物であることが、好ましい。
ここで用いられる錫成分の原料向けの錫化合物としては、塩化錫などのハロゲン化錫、酸化錫、水酸化錫或いは、錫の硫酸塩、硝酸錫などの錫の無機酸塩(第一錫塩、第二錫塩)などが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。第一錫塩としては、フッ化第一錫、塩化第一錫、ホウフッ化第一錫、硫酸第一錫、酸化第一錫、硝酸第一錫、ピロリン酸錫、スルファミン酸錫、亜錫酸塩等の無機系の塩、アルカノールスルホン酸第一錫、スルホコハク酸第一錫、脂肪族カルボン酸第一錫等の有機系の塩が挙げられる。第二錫塩としては上記第一錫塩のそれぞれの第二錫塩が挙げられるが、気体であるもの、難溶性のもの等があるので、液体である塩化第二錫を用いるのが一般的であり、中でも塩化第二錫の塩酸水溶液を用いるのが、工業的にも望ましい。錫水酸化物は、塩化錫の塩酸水溶液をアルカリ中に滴下することで得られる。また、錫成分は、加水分解によっても得られる。この加水分解の方法は、当業者に公知の方法でよい。
セリウム成分の原料向けのセリウム化合物としては、三塩化セリウム、水酸化セリウム、酸化セリウム、炭酸セリウム等の無機塩のほか、有機セリウム等も使用でき、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。中でも、炭酸セリウムは、アルカリに溶解するので、工業的に好ましい。具体的には、セリウム成分は、炭酸セリウムをアルカリ水溶液に溶解させ、その後中和反応することによって含有される。
また、前駆物質は、セリウム成分を含有する錫の水酸化物および/またはその脱水物であることが、より好ましく、セリウム成分と錫を混合状態とすることにより、均一な針状微粒子を得ることができる。この方法は、各化合物の溶液を用いる種々の方法で行い得る。例えば、(a)70〜90℃の熱水中に、錫化合物の塩酸水溶液と、セリウム化合物のアルカリ水溶液とを、それぞれ並行して、ほぼpH7を保持するように添加しながら中和し、セリウム成分と錫が混合した水酸化物を共沈させる方法、(b)セリウム化合物のアルカリ水溶液中に、錫化合物の塩酸水溶液を添加して、中和することにより混合した水酸化物を共沈させる方法、(c)錫化合物中の塩酸水溶液中に、セリウム化合物のアルカリ水溶液を添加して中和し、混合した水酸化物を共沈させる方法、等の方法が挙げられる。このような方法の中でも特に上記(a)の方法が工業的には望ましく、この場合、中和反応液のpHを5〜10に保持するように行うのが好ましい。
また、前駆物質は、錫の水酸化物および/またはその脱水物、ならびにセリウム成分で構成することができ、錫の水酸化物および/またはその脱水物、ならびにセリウムの水酸化物および/またはその脱水物で構成することもできる。この場合も、当業者に公知の方法で、前駆物質を作製すればよい。
被焼成処理物中のセリウムを、好ましくは、錫に対して質量基準で0.1〜10%、より好ましくは0.3〜5%、特に好ましくは0.5〜3%添加する。0.1%より少ないと針状性が得られず、10%より多く添加しても添加効果の増大が少なく、酸化セリウムが遊離してしまうので好ましくない。また、経済的に有利でない。
セリウム化合物は、より良好な針状性を得るためにはある程度多量に添加することが望ましいが、焼成後の生成物にセリウム化合物が多量に残存すると、導電性に悪影響を及ぼし望ましくないので、可溶性であるセリウム化合物を除去処理し、不必要な量のセリウム化合物を除くことが、好ましい。
セリウム化合物のアルカリ水溶液に使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩やアンモニア等が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。
上記中和反応は水中、熱水中或いはアルコール中で行うことができ、熱水中で行うのが好ましい。ここで、アルコールとしては、エタノール、メタノール等が挙げられる。
次に、得られた前駆物質に、通常の洗浄、乾燥、粉砕等の処理を施した後、アルカリ金属のハロゲン化物と混合して被焼成処理物を生成する。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、種々のものを使用し得るが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等を挙げることができる。これらは単独で或いは混合して用いてもよい。
アルカリ金属のハロゲン化物の使用量としては、前駆物質の錫の質量基準で好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、特に好ましくは75〜160%である。10%より低いと良好な針状粒子が得られず、また160%より多いと、添加の効果は現れず、後工程で余剰分を洗浄することになるため、経済的でない。
前駆物質とアルカリ金属のハロゲン化物との混合は、種々の方法によって行なうことができ、例えば、上記処理をした前駆物質とアルカリ金属のハロゲン化物とをヘンシェルミキサー等の混合攪拌機で行なうことができる。更に、この混合後、乾式粉砕機で粉砕を行うと、酸化錫微粉末の針状性の点で、好ましい。
なお、このとき、酸化錫微粉末の性状を調節する目的で、種々の調節剤を添加することができる。例えば、針状微粉末の針状性を調節する目的で、カリウム塩等を添加することもできる。
焼成は、アルカリ金属のハロゲン化物の融点以上、かつ1200℃以下で、好ましくは、800〜1200℃で行なう。焼成温度がアルカリ金属のハロゲン化物の融点以下であると、粒子の針状性が低くなり、1200℃を超えると粒成長が促進され、短軸径が太くなり、酸化錫微粉末、およびこれを用いた塗膜の平滑性が損なわれる。アルカリ金属のハロゲン化物の融点としては、NaClの800℃、KClの776℃、LiClの606℃等が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。
焼成は、水蒸気またはアルコール蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス等が挙げられる。アルコール蒸気としては、エタノール蒸気、メタノール蒸気等が挙げられる。
不活性ガス雰囲気中に、水蒸気またはアルコール蒸気を導入する方法は限定されない。熱処理炉の不活性ガス雰囲気中に水蒸気またはアルコール蒸気を導入してもよく、また、前駆物質をスラリーのままで、またはその乾燥を適度にして湿った状態にしてもよい。あるいは、不活性ガスを、水またはアルコールに通じて、バブリングさせてもよい。
水蒸気またはアルコール蒸気の蒸気圧は、飽和蒸気圧の30%以上であると、酸化錫微粉末が還元され、導電性が高くなる点で好ましい。この蒸気圧を保って熱処理するには密閉型の熱処理炉を用いるのが好ましい。
また、不活性ガス雰囲気から酸素を排除して加熱することが好ましい。従来、酸素を含む不活性ガス化で熱処理する方法が知られているが、酸素が含まれていると、安定して低抵抗粉末が得られず、また導電性が不均一である。酸素は、不活性ガスに対して、1%以下が好ましい。
焼成時間は、特に制限はないが、30分〜5時間が適当である。
次に、上記焼成生成物を、水、酸またはアルカリの水性媒液で処理して可溶性塩類を除去する。ここで用いる酸としては種々のものを使用し得るが、例えば、無機酸や有機酸等が挙げられ、中でも塩酸、硫酸、フッ化水素酸等の無機酸が好ましい。ここで、水またはNaOH、KOH等のアルカリの水溶液で除去される可溶性塩類は、上記セリウム化合物等が挙げられ、酸の水溶液で除去される可溶性塩類は、Na、K等が挙げられる。
上記のようにして可溶性塩類を除去して得た処理物は、必要に応じて、例えば、遠心沈降処理や種々の分級手段で針状性の不充分なものを除去した後、通常の濾過、洗浄、乾燥、仕上げ粉砕等を行なう。
以上によって、短軸平均粒子径が20〜200nmであり、アスペクト比が3以上であり、かつセリウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有する針状導電性酸化錫微粉末を得ることができる。
また、被焼成処理物をさらに第一錫イオンによって還元すると、導電性向上の観点から好ましい。第一錫イオンによって還元する方法の例としては、被焼成処理物を第一錫イオン含有水溶液中にて混合し、水洗、乾燥する方法がある。また、焼成処理物を第一錫イオン含有水溶液中で混合して、ペースト状にし、スラリーのままあるいは乾燥したものを、水蒸気またはアルコール蒸気を含有する非酸化性雰囲気にて加熱する方法がある。
また、被焼成処理物は、フッ素処理されていることが好ましい。このフッ素処理は、湿式により、被焼成処理物にフッ素源を含有させることが、より好ましい。
フッ素源としては、フッ化アンモニウム、ケイフッ化アンモニウム、フッ化水素酸アンモニウム、フッ化スズ、フッ化スズ酸、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化ホウ素、フッ化臭素等を用いることができ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。
具体的には、セリウムを含有する錫の水酸化物の原料の一部に、錫を含有するフッ素源を用いる方法、セリウムを含有する錫の水酸化物を生成するとき、フッ素源を含有させておく方法等が挙げられる。
また、焼成物の可溶性塩類を除去した後、更にフッ素処理することも好ましい。このフッ素処理は、上記被焼成処理物のフッ素処理と同様に行うことができる。
また、フッ素は、焼成後の針状導電性酸化錫微粉末をフッ素処理することによっても、導入することができる。フッ素処理としては、針状酸化錫微粉末を、フッ素源を含む水溶液等で湿式処理する方法等が挙げられる。
フッ素処理は、これらの湿式処理の後、熱処理する方法が、より好ましい。この熱処理の温度は、300〜550℃であると、フッ素を十分に拡散することができる点から好ましい。さらに、熱処理の際に、窒素ガスや、水素もしくは水蒸気を含んだ不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)を流すことで、更にフッ素処理の反応が進行し、好ましい。
フッ素のドープ量は、フッ素源の添加量、熱処理温度および熱処理時間等を調整して制御することができるので、粉体体積抵抗値を所望の範囲に低下させた導電性酸化スズ粉末を製造することができる。なお、このフッ素処理は、上記第一錫イオンによる還元と組み合わせると、導電性向上の観点から、より好ましい。
他方、被焼成処理物にアンチモンを含有させるときには、被焼成処理物を製造するための前駆物質を、まず生成させる。前駆物質は、錫成分、セリウム成分およびアンチモン成分を含む。錫成分としては、錫の水酸化物および/またはその脱水物であることが、好ましい。また、アンチモン成分としては、水酸化物および/またはその脱水物であることが、好ましい。ここで用いられる錫成分の原料向けの錫化合物については、上記のとおりである。
用いられるアンチモン成分の原料向けのアンチモン化合物としては、塩化錫などのハロゲン化アンチモン、酸化アンチモン、水酸化アンチモン或いは、アンチモンの硫酸塩、硝酸錫など無機酸塩などが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上混合して用いてもよい。好ましくは、塩化アンチモンの塩酸水溶液を用いる。
また、前駆物質は、セリウム成分を含有するアンチモン−錫の水酸化物および/またはその脱水物であることが、より好ましく、セリウム成分とアンチモン−錫を混合状態とすることにより、均一な針状微粒子を得ることができる。この方法は、各化合物の溶液を用いる種々の方法で行い得る。例えば、(a)70〜90℃の熱水中に、アンチモン化合物と錫化合物の塩酸水溶液と、セリウム化合物のアルカリ水溶液とを、それぞれ並行して、ほぼpH7を保持するように添加しながら中和し、セリウム成分を含有するアンチモン−錫水酸化物を共沈させる方法、(b)セリウム化合物のアルカリ水溶液中に、アンチモン−錫化合物の塩酸水溶液を添加して、中和することにより混合した水酸化物を共沈させる方法、(c)アンチモン−錫化合物中の塩酸水溶液中に、セリウム化合物のアルカリ水溶液を添加して中和し、混合した水酸化物を共沈させる方法、等の方法が挙げられる。このような方法の中でも特に上記(a)の方法がばらつきの少ないため工業的には望ましく、この場合、中和反応液のpHを5〜10に保持するように行うのが好ましい。また、錫成分とアンチモン成分は、塩化錫と塩化アンチモンの混合溶液等を加水分解することによっても得られる。この加水分解の方法は、当業者に公知の方法でよい。
また、前駆物質は、アンチモン−錫の水酸化物および/またはその脱水物、ならびにセリウム成分で構成することができ、錫の水酸化物および/またはその脱水物と、アンチモンの水酸化物および/またはその脱水物、ならびにセリウム成分、或いは錫の水酸化物および/またはその脱水物と、アンチモンの水酸化物および/またはその脱水物ならびにセリウムの水酸化物および/またはその脱水物で構成することもできる。この場合も、当業者に公知の方法で、前駆物質を作製すればよい。
被焼成処理物中のアンチモンを、好ましくは、錫に対して質量基準で0.1〜10%、より好ましくは0.3〜5%、特に好ましくは0.5〜3%添加する。0.1%より少ないと導電性が得られず、また、アルカリ雰囲気下における導電性針状酸化アンチモン錫微粉末の導電性の低下を抑制することができない。一方、10%より多いと針状粒子が得られず、球状粒子となってしまう。
本発明の針状酸化錫微粉末は、水性媒体に分散させて、水性分散体として使用することができる。ここで、水性媒体には、水のほかに、分散剤や水と可溶する液体を含んでもよい。
上記水性分散体の固形分濃度は、質量基準で0.1〜50%、好ましくは1〜40%、より好ましくは5〜30%で、水性分散体のpHは4〜12、好ましくは5〜10である。ここで、固形分には、針状酸化錫微粉末、分散剤が含まれる。
本発明の針状酸化錫微粉末は、導電性塗料或いは磁性塗料向けの導電性塗布組成物として利用することができる。この場合には、針状酸化錫微粉末を、バインダー樹脂と水もしくは溶媒とを含むバインダーに混合し、塗布組成物とする。ここで、バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、塩ビ−酢ビ樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル−スチレン共重合体、繊維素樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、セラック、ロジン誘導体、ゴム誘導体等の天然系樹脂等が挙げられる。
針状酸化錫微粉末のバインダーへの配合量は、バインダー樹脂100質量部に対して1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
導電性塗料の場合には、該塗料を紙や高分子フィルム等の絶縁性基体に塗布することにより、該基体上に軽くて透明性や表面平滑性、さらには密着性に優れた導電性塗膜を形成させ、種々の静電防止塗膜、静電記録紙、電子写真複写紙等とすることができる。
なお、本発明の針状酸化錫微粉末を、水性系塗料向け導電性塗布組成物に適用する場合には、針状酸化錫微粉末、もしくは針状酸化錫微粉末の製造工程で生成する可溶性塩類を除去処理した後の処理物から、水性分散体を調製することができる。該水性分散体を塗料化に供すると、塗料化時の分散エネルギーや、針状酸化錫微粉末製造工程における脱水、乾燥エネルギーの軽減を図る上で、好ましい。水性分散体の固形分の配合量は、結合用樹脂100質量部に対して、3〜200質量部、好ましくは、10〜100質量部である。ここで、結合用樹脂としては、上記バインダー樹脂と同じものを使用することができる。
このようにして得られた導電性組成物は、従来の球状の導電性粉末を配合した導電性組成物に比べて、バインダー樹脂または結合用樹脂に対してより少ない配合量で高い導電性が得られると共に、透明性も優れており、経済的にも有利である。
このように少ない配合量で針状酸化錫微粉末を使用できることから、バインダー樹脂または結合用樹脂の接着強度低下を起こすことなく、透明で導電性の塗膜を形成可能な塗布組成物として利用することができる。
また高濃度の針状酸化錫微粉末を含む導電性塗料に塗布組成物を使用したときには、薄い塗膜であっても所望の導電性が得られる。
本発明の塗布組成物を塗布して、塗膜を形成する基板としては、電気・電子機器をはじめとして様々な分野において広く用いられている、各種の合成樹脂、ガラス、セラミックス等を挙げることができ、これらはシート状、フィルム状、板状等の任意の形状であり得る。合成樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびフェノール樹脂等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
本発明の塗布組成物の基板への塗布または印刷は、常法により、例えば、ロールコート、スピンコート、スクリーン印刷、アプリケーター等の手法で行うことができる。その後、塗布組成物を、必要により加熱して水または溶媒を蒸発させ、塗膜を乾燥させて硬化させる。このとき、加熱または紫外線等を照射してもよい。
本発明の塗布組成物で形成された塗膜の厚さは、表面抵抗値、白色度の観点から、0.05〜50μmであると好ましく、0.1〜10μmであるとより好ましい。
また、本発明の針状導電性酸化錫微粉末は、プラスチックス、ゴム、繊維等に導電性付与材または基体として配合し、導電性プラスチックス、導電性塗料、磁性塗料、導電性ゴム、導電性繊維等の導電性樹脂組成物として利用することができる。
導電性プラスチックスとして利用する場合には、成形用樹脂として、いわゆる汎用プラスチックス、エンジニアリングプラスチックスの種々のものを使用し得るが、汎用プラスチックスとしては、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ユリア・メラミン樹脂が挙げられる。エンジニアリングプラスチック的汎用プラスチックスとしては、例えば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂が挙げられる。エンジニアリングプラスチックスとしては、例えば、エポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、フッ素樹脂等が挙げられる。また、スーパーエンジニアリングプラスチックスとしては、例えば、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ビスマレイミドトリアジン、ポリアミノビスマレイミド、オレフィンビニルアルコール共重合体、ポリオキシベンジレン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、針状導電性酸化錫微粉末は、これらの成形用樹脂に配合される。
導電性ゴムとして利用する場合には、成形用樹脂として、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエタンポリマー、エチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の従来から知られているものに、針状導電性酸化錫微粉末を配合する。
導電性繊維として利用する場合には、成形用樹脂として、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂等の可錘性の繊維に、針状導電性酸化錫微粉末を配合する。
針状導電性酸化錫微粉末の上記成形用樹脂への配合量は、成形用樹脂100質量部に対して、3〜200質量部、好ましくは10〜100質量部である。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
塩化第二錫5水塩50gを、3N塩酸水溶液50mlに溶解した溶液を、水酸化ナトリウム50gを溶解した90℃のイオン交換水1l中に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を濾過し、その後、濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物100質量部に対して、5質量部の酸化セリウム粉末と50質量部の割合の塩化ナトリウム粉末を加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中、昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする針状導電性酸化錫微粉末を得た。
〔実施例2〕
塩化第二錫5水塩50gと三塩化セリウム1.8gを50mlに溶解した溶液を、水酸化ナトリウム50gを溶解した90℃のイオン交換水1lに滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物100質量部に対して、50質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中、昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする針状導電性酸化錫微粉末を得た。
〔実施例3〕
塩化第二錫5水塩50gと三塩化セリウム1.8gを3N塩酸水溶液50mlに溶解した溶液と、水酸化ナトリウム50gをイオン交換水100gに溶解した溶液を、90℃のイオン交換水1lにpHが5から8の範囲になるように同時に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を、濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物100質量部に対して、50質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中、昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
得られた焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする針状導電性酸化錫微粉末を得た。
〔実施例4〕
実施例3で得られた針状導電性酸化錫微粉末10gを、フッ化第一錫を1g溶解したイオン交換水20g中に分散し、ろ過、乾燥して、フッ化第一錫処理した針状導電性酸化錫微粉末を得た。
〔実施例5〕
実施例3で得られた針状導電性酸化錫微粉末10gを、フッ化第一錫1gを溶解したイオン交換水10gと混合して、ペースト状にした。これを石英ボートに入れ、この石英ボートを石英管状炉に置き、昇温前にあらかじめ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3(l/min)で30分流し、酸素を排除した後、その窒素ガスを流したまま、昇温速度10℃/分で昇温し、500℃にて1時間熱処理して、フッ素処理した針状導電性酸化錫微粉末を得た。
〔実施例6〕
塩化第二錫5水塩50gと三塩化アンチモン0.05gを、3N塩酸水溶液50mlに溶解した溶液を、水酸化ナトリウム50gを溶解した90℃のイオン交換水1l中に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を濾過し、その後、濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物100質量部に対して、5質量部の酸化セリウム粉末と50質量部の割合の塩化ナトリウム粉末を加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする針状導電性酸化アンチモン・スズ微粉末を得た。
〔実施例7〕
塩化第二錫5水塩50gと三塩化アンチモン0.22gを50mlに溶解した溶液を、水酸化ナトリウム50gと炭酸セリウム1.8gを溶解した90℃のイオン交換水1lに滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物100質量部に対して、50質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し、可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする針状導電性酸化アンチモン・スズ微粉末を得た。
〔実施例8〕
塩化第二錫5水塩50gと三塩化アンチモン0.9gを3N塩酸水溶液50mlに溶解した溶液と、水酸化ナトリウム50gと炭酸セリウム1.8gをイオン交換水100gに溶解した溶液を、90℃のイオン交換水1lにpHが5から8の範囲になるように同時に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を、濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物100質量部に対して、50質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
得られた焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする針状導電性酸化アンチモン・スズ微粉末を得た。
〔実施例9〕
塩化第二錫5水塩50gと三塩化アンチモン4.5gと三塩化セリウム2.4gを3N塩酸水溶液50mlに溶解した溶液と、水酸化ナトリウム50gをイオン交換水100gに溶解した溶液を、90℃のイオン交換水1lにpHが5から8の範囲になるように同時に滴下し、沈殿物を生成した。該沈殿物を、濾過し、その後濾液の比導電率が10(mS/m)以下になるまで水洗し、ケーキを作製した。
作製したケーキを110℃で12時間乾燥した後、この乾燥物100質量部に対して、50質量部の塩化ナトリウムを加え、両者を均一に混合粉砕した。この混合物を電気炉に入れ、大気中で昇温速度10℃/分で昇温し、900℃にて3時間焼成した。
得られた焼成生成物を、80℃のイオン交換水で洗浄し可溶性塩類を除去した後、乾燥、粉砕を行って、目的とする針状導電性酸化アンチモン・スズ微粉末を得た。
〔実施例10〜13、参考例1〕
表1に示す条件で、実施例5と同様にして、フッ素処理した針状導電性酸化錫微粉末を得た。
実施例1で得られた針状導電性酸化錫微粉末の透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。
〔比較例1〕
表2に示すように、塩化ナトリウムを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、導電性酸化錫粉末を得た。
〔比較例2〕
表2に示すように、セリウムを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、導電性酸化錫粉末を得た。
比較例1、比較例2で得られた導電性酸化錫粉末はどちらも粒状であり、針状は得られなかった。
〔試験例1〕
前記各実施例1〜17、参考例1および比較例1〜3で得られた各導電性微粉末について、(1)透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して短軸径の重量平均粒子径を求め、またそれに基づいてアスペクト比を算出した。表3に、短軸径の重量平均粒子径(「短軸径」と記載)、およびアスペクト比を示す。図1に、実施例1で得られた針状酸化錫微粉末の透過型電子顕微鏡写真を示す。
さらに、(2)各試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kg/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値を横河北辰電機会社製デジタルマルチメータ(型番:Model 2502A)で測定し、粉体体積抵抗値を算出した。これらの結果を表3に示す。なお、表3において、例えば「5.0E+06」は、「5.0×1006」を表す。粉末のL値は、スガ試験機社製装置(SM−7-IS−2B)を用いて測定した。
〔試験例2〕
実施例1〜17、参考例1および比較例1〜3で得られた導電性微粉末各20gを、水180gに分散した。分散液の作製には、ビーズミルを使用した。
次に、上記水分散液を、樹脂固形分濃度60wt%であるDIC社製水溶性塗料(製品名:ハイドランAP−40)50gに攪拌し、混合して塗布組成物を調製した。
これらの塗布組成物をバーコーターNo.3を用いてポリエステルフィルムに塗膜厚:6.87(μm)、塗工量:6.87×10−4(ml/cm)となるように塗布し、80℃で30分間自然乾燥して試験シートを作成した。なお、塗膜厚10μmのシートも同様に作製することができる。
これらの試験シートの体積抵抗値(Ω・cm)を、三菱化学アナリテック製ハイレスタUP(4端子法)を用いて測定した。これらの結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例1〜13の全てにおいて、短軸平均粒子径が50〜100nmでアスペクト比が5〜15の針状粉末であり、粉体体積抵抗値は10〜500000Ω・cmと低く、L値も70〜82と白色であった。これらを用いた塗膜の体積抵抗値も5×10〜1×10Ω・cmと低かった。一方、塩化ナトリウムを使用しなかった比較例1、Ceを含有しなかった比較例2では、いずれも粒状粉末となり、L値も65、75と十分な白色度ではなく、これらを用いた塗膜の体積抵抗値は、1×1012Ω・cm以上と、測定器の測定可能範囲外であった。なお、Ceが12質量%の参考例1では、棒状粉末と粒状粉末であった。
以上のように、本発明の針状酸化錫微粉末は、導電性が高く、白色であり、この針状導電性酸化錫微粉末を用い、少量の添加であっても表面抵抗率が低く、薄い白色の塗膜を形成することができた。

Claims (6)

  1. 短軸平均粒子径が20〜200nmで、アスペクト比が3以上であり、かつセリウムを錫に対して質量基準で0.1〜10%含有することを特徴とする、針状酸化錫微粉末。
  2. 粉体体積抵抗値が、1×10Ω・cm以下である、請求項1記載の針状酸化錫微粉末。
  3. フッ素を質量基準で10%以下含有する、請求項1または2記載の針状酸化錫微粉末。
  4. アンチモンを質量基準で10%以下含有する、請求項1または2記載の針状酸化錫粉末
  5. 針状酸化錫微粉末を質量基準で20%含有する厚さ10μmのポリエチレン樹脂シートにしたとき、ポリエチレン樹脂シートの体積抵抗値が1010Ω・cm以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載の針状酸化錫微粉末。
  6. 錫成分、セリウム成分およびアルカリ金属のハロゲン化物を含む被焼成処理物を、アルカリ金属のハロゲン化物の融点より高い温度、かつ1200℃以下で焼成し、次いで得られた焼成物の可溶性塩類を除去する、セリウムを含有する針状酸化錫微粉末の製造方法。
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