JP2011073360A - 蓄光成形体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蓄光材を含む成形体からなる蓄光体21と、表面層11とを備え、表面層11の内部または一方の面上の少なくともどちらかに光を集光するレンズを配したことを特徴とする蓄光成形体である。前記レンズは、直径が表面層11の厚みの10〜300%である透明球状体、または、表面層11の一方の面上に設けられた複数の半球状の凸部13であることが好ましい。
【選択図】図2
Description
具体的には、以下に示すような成形体及びその製造方法が示されている。
熱硬化性樹脂からなる、FRP(繊維強化プラスチック)補強層、隠蔽層、蓄光配合層、透明層を順次成形して積層する繊維強化プラスチック、及びその製造方法(特許文献1)。
表面保護層、硝子球を保持する保持層、硝子球、焦点形成層、鏡面反射層からなる封入レンズ型再帰反射シートの構成において、硝子球を保持する保護層に蓄光材を用いるもの(特許文献2)。
蓄光性を有する樹脂層から構成される支持体上に、微小球レンズの半球面を金属蒸着膜で覆い、その被覆部を支持体に埋没支持させた領域と、微小球レンズが配されていない領域とを設けたレンズ機能性再帰反射シート(特許文献3)。
(1)蓄光材を含む成形体からなる蓄光体と、表面層とを備え、前記表面層の内部または一方の面上の少なくともどちらかに光を集光するレンズを配したことを特徴とする蓄光成形体。
(2)前記レンズが、ガラスまたは樹脂よりなる透明球状体であり、この透明球状体の直径が前記表面層の厚みの10〜300%であることを特徴とする(1)に記載の蓄光成形体。
(3)前記レンズが、表面層の一方の面上に設けられた複数の半球状の凸部であることを特徴とする(1)に記載の蓄光成形体。
(4)前記蓄光体を形成する蓄光体用樹脂の屈折率と、前記表面層を形成する表面層用樹脂の屈折率との差が、0.03以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の蓄光成形体。
(5)硬化剤を配合した熱硬化性樹脂を、平板またはフィルムよりなる加工基材と、表面に半球状の凹部が複数形成された転写型との間に配して硬化させ、前記凹部の反転形状の凸部を複数有する樹脂シートを形成し、この樹脂シートに蓄光材を含む成形体からなる蓄光体を積層させて、蓄光材を含む成形体からなる蓄光体と、表面層とを備え、前記表面層の内部または一方の面上の少なくともどちらかに光を集光する凸部からなるレンズを配した蓄光成形体を得ることを特徴とする蓄光成形体の製造方法。
(6)ガラスまたは樹脂よりなる透明球状体と、硬化剤とを配合した熱硬化性樹脂を硬化させてシート状物とし、このシート状物に蓄光材を含む成形体からなる蓄光体を積層させて、蓄光材を含む成形体からなる蓄光体と、表面層とを備え、前記表面層の内部または一方の面上の少なくともどちらかに光を集光する透明球状体のレンズを配した蓄光成形体を得ることを特徴とする蓄光成形体の製造方法。
また、本発明の蓄光成形体の製造方法によれば、光を集光するレンズを、表面層と一体に成形することにより、照射される光が弱い場合でも、高い発光輝度を示す蓄光成形体を、安価で容易に製造することができる。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
図1は、本発明の第1の実施形態の蓄光成形体M1の一例を示す概略断面図である。
本実施形態の蓄光成形体M1は、蓄光体21上に、透明球状体12を含む表面層11が積層された構造となっている。
蓄光体用樹脂としては、蓄光材を配合した成形体の製造に用いられるものを使用することができ、熱硬化性樹脂が好ましく、例えば、透明又は半透明の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジアクリルフタレート樹脂、シリコン樹脂等が挙げられ、1種または2種以上を併用して使用することができる。
ここで、本明細書において、「透明」とは、可視光線透過性が70%以上であることを意味する。また、「半透明」とは、可視光透過性が5%以上70%未満であることを意味する。樹脂膜厚により可視光線透過性は変化するため、目的の樹脂膜厚において前記条件を満たすものを指す。
硫黄系の蓄光顔料としては、例えば、硫化カルシウム/ビスマス系(CaS/Bi)、硫化カルシウム・ストロンチウム/ビスマス系((Ca,Sr)S/Bi)、硫化亜鉛/銅系(ZnS/Cu)、硫化亜鉛・カドミウム/銅系((Zn,Cd)S/Cu)が挙げられる。
酸化物系の蓄光顔料としては、例えば、アルミナ、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化セリウム等の金属酸化物と、Eu(ユウロピウム)、Dy(ディスプロシウム)、Lu(ルテチウム)、Tb(テルビニウム)等の希土類元素との混合物を焼成してなるものが挙げられる。
蓄光顔料としては、環境面に加え、蓄光輝度及び蓄光時間等の蓄光性能に優れている点から、酸化物系が好ましい。
蓄光材の平均粒径は、1μm〜1000μmが好ましく、10μm〜500μmがより好ましい。蓄光材の平均粒径が1μm以上であれば、充分な燐光輝度が得られやすい。また、蓄光材の平均粒径が1000μm以下であれば、蓄光材を蓄光体用樹脂に分散、混合する際に、蓄光材が破損する等の取り扱い上の問題が生じることを抑制しやすい。ここで、蓄光材の平均粒径とは、各々の蓄光材の最長径の数平均を意味する。
有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、その他のパーオキサイド類の使用が可能であり、1種または2種以上を併用して使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、商品名「パーロイルTCP」、「パーブチルE」、「パーメックN」(以上、日油社製)等が挙げられる。
充填剤の配合量は、上述した蓄光体用樹脂に対する蓄光材の好ましい配合量の上限値から、実際に配合する蓄光材の量を差し引いた減量体積分に相当する量が好ましい。例えば、蓄光体用樹脂に配合する蓄光材を250質量部とする場合、50質量部の蓄光材が有する体積と同等の体積を有する充填剤量を配合することが好ましい。
このように、蓄光体用樹脂の比率を低下させすぎないように充填剤を配合することにより、硬化収縮によって成形品に変形や割れが生じることを抑制しやすくなる。
表面層樹脂組成物に含まれる表面層用樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましく、上述した蓄光体樹脂組成物に含まれる蓄光体用樹脂である熱硬化性樹脂と同様のものが挙げられる。
本発明においては、表面層用樹脂と蓄光体用樹脂は、同様のものを用いることができるが、蓄光体用樹脂と表面層用樹脂の屈折率の差を0.03以上とすることが好ましい。この様に屈折率の異なる樹脂を用いることにより、形成される蓄光体21と表面層11との屈折率の差も0.03以上とすることができ、この屈折率の差により蓄光成形体M1に照射される光を蓄光体21に集光させるレンズ機能を発現させることができる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「蓄光体用樹脂の屈折率」とは蓄光体の形成に用いられる蓄光体用樹脂の完全硬化後の屈折率(nD)を意味し、同様に、「表面層用樹脂の屈折率」とは表面層の形成に用いられる表面層用樹脂の完全硬化後の屈折率(nD)を意味する。
表面層用樹脂の屈折率は、1.48〜1.60とすることが好ましく、1.51〜1.57とすることがより好ましい。
このような範囲の屈折率であって、かつ、蓄光体用樹脂の屈折率と表面層用樹脂の屈折率の差が0.03以上となるように、蓄光体用樹脂および表面層用樹脂を選択することにより、蓄光成形体M1に照射される光を、効率よく集光して、蓄光体21に照射される光量を高めることができる。
また、蓄光体用樹脂と表面層用樹脂の屈折率の高低は、前述した例に限定されるものではなく、その屈折率の差が0.03以上とされていれば、蓄光体用樹脂の屈折率の方が高く、すなわち、前述した各樹脂の屈折率の値の範囲が逆となっていてもよい。
表面層樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、上述した蓄光体樹脂組成物に含まれる硬化剤と同様のものが挙げられ、その配合量も上記表面層樹脂組成物と同様に設定することが好ましい。
透明球状体12である透明樹脂よりなる球状体の樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
透明球状体12の直径は、表面層11の厚みの10〜300%とすることが好ましく、50〜200%とすることがさらに好ましい。透明球状体12の直径が、表面層11の厚さの300%の場合には、透明球状体12の3分の2が表面層11から外面に飛び出す。このように透明球状体12を表面層11の外面に露出させる事により、良好な集光性のレンズ機能が発現する。透明球状体12の直径が、表面層11の厚さの300%を超えてしまうと、表面層11に固着しにくくなる虞がある。200%とすると透明球状体12の半分が表面層11より外面に飛び出し略半球状の凸レンズとなり、良好なレンズ機能が発現するため好ましい。
透明球状体12の直径を、上記のような範囲とすることにより、蓄光成形体M1に照射された光を集光して、蓄光体に照射される光量を、周囲環境よりも高くすることができる。
透明球状体12の直径が、表面層11の厚さよりも大きい場合には、透明球状体12の一部が表面層11に埋没されていない状態となる。このような場合、透明球状体12は、表面層11の一方の側の面上に露出して設けられていてもよく、また、表面層11の両側の面に露出して設けられていてもよい。
表面層11における透明球状体12の配置については、平面的に密に配列されていてもよく、ランダムに配列されていてもよい。
まず、ベースとなる板やフィルム上へ、未硬化の表面層樹脂組成物を塗布する。
ベースとなる板やフィルムとしては、表面が滑らかな平板状のものが好ましい。また、ベースとなる板やフィルムの表面には、成形物の剥離を容易にするために離型剤を用いることが好ましい。離型剤としては、特に制限されるものではなく、油脂を主成分とするワックス等、従来公知のものを用いることができる。
ベースとなる板やフィルム上へ、未硬化の表面層樹脂組成物を塗工する方法としては、所定の厚さで均一に塗工できる方法であれば特に制限されるものではなく、ナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、スプレーコーター、刷毛塗り、ディップコート、流し込みなど従来公知の塗工方法が挙げられる。
表面層樹脂組成物を加熱、硬化させる際の加熱温度としては、40〜140℃とすることが好ましく、50〜80℃とすることがより好ましい。
表面層樹脂組成物を加熱、硬化する際の加熱時間は、使用する樹脂や硬化剤の種類や配合量、または硬化促進剤等の添加剤の配合量などによっても変化するが、例えば、60 〜70℃において40〜60分間加熱することにより、表面層樹脂組成物を硬化させることができる。
なお、表面層樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合には、加熱を行わずに室温にて硬化反応を行うことも可能である。また、表面層用樹脂としてシリコン樹脂を使用する場合においても、シリコン樹脂は空気中の水分と反応して硬化するので、加熱を行わずに室温にて硬化反応を行うことも可能である。
方法(1):樹脂シート11の上に囲い枠を設けて、この枠内に未硬化の蓄光体樹脂組成物を注型したものを、加熱などにより硬化させた後、当該囲い枠を除去する方法。
方法(2):予め蓄光体樹脂組成物を加熱などにより硬化させて成形した蓄光体21と、樹脂シート11を、接着剤や粘着剤等により固定する方法。ここで、蓄光層樹脂組成物を硬化させる方法としては、上述した表面層樹脂組成物を硬化させる方法と同様の方法が挙げられる。
上記方法(2)の場合、予め蓄光体21を成形する方法としては、例えば、金属製やシリコン樹脂製、熱硬化性樹脂製などの型に蓄光体樹脂組成物を注型したものを、加熱などにより硬化させる方法や、上記樹脂シート11と同様に、ベースとなる板やフィルム上に蓄光体樹脂組成物を塗工して、加熱などにより硬化させる方法等が挙げられる。上記方法(2)において、樹脂シート11と蓄光体21を固定する接着剤や粘着剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の接着剤や粘着剤を使用することができる。接着剤や粘着剤を使用する場合、その膜厚が厚くなると、蓄光成形体M1の光透過特性、集光特性に影響を与えるため、接着剤や粘着剤の膜厚は薄くする方が好ましく、例えば、100μm以下とすることが好ましい。また、樹脂シート11および蓄光体21の周辺に近い領域のみに接着剤や粘着剤を設けて固定する場合、蓄光成形体M1の光透過特性、集光特性に対する接着剤や粘着剤の影響が及ばないようにすることができるので好ましい。なお、蓄光体21と表面層11とを固定する方法は、蓄光体21への光の遮蔽が無い方法であれば、従来公知の方法を用いることができる。
蓄光体21の一方の面上に隠蔽層を形成する方法は、例えば、塗布やコーター等により形成する方法、所望の色を転写できる転写フィルムを用いて転写する方法等が挙げられる。
本実施形態の蓄光成形体は、通常蓄光成形体に用いられる層や材料を含む構成とすることも可能である。また、裏面にレンズ層を配置し光が反対面からあたる構成としてもよい。
また、本実施形態の蓄光成形体の製造方法によれば、光を集光するレンズを表面層に含有させたので、弱い光を照射された場合にも、高い燐光輝度を示す蓄光成形体を、安価で容易に製造することができる。
第2の実施形態の蓄光成形体およびその製造方法について詳細に説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態の蓄光成形体M2の一例を示す概略断面図である。
以下、上記第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の蓄光成形体M2は、表面に半球状の凸部13を複数個有する表面層11が、蓄光体21上に積層された構造となっている。
表面層11および凸部13は、表面層用樹脂と硬化剤とを含む表面層樹脂組成物を硬化させることにより得られ、表面層樹脂組成物としては、上記第1の実施形態の表面層樹脂組成物の構成より透明球状体12を除いた以外は、その他の構成および配合は同一である。表面層11と凸部13は、一体化して形成されている。表面層11の厚さ(凸部3を含まない)は、上記第1の実施形態と同様の厚さとすることが好ましい。
表面層用樹脂の屈折率は、1.48〜1.60とすることが好ましく、1.51〜1.57とすることがより好ましい。
このような範囲の屈折率であって、かつ、蓄光体用樹脂の屈折率と表面層用樹脂の屈折率の差が0.03以上となるように、蓄光体用樹脂および表面層用樹脂を選択することにより、凸部13は光を集光するレンズとして機能し、蓄光成形体M2に照射される光を、効率よく集光して、蓄光体21に照射される光量を高めることができる。
また、蓄光体用樹脂と表面層用樹脂の屈折率の高低は、前述した例に限定されるものではなく、その屈折率の差が0.03以上とされていれば、蓄光体用樹脂の屈折率の方が高く、すなわち、前述した各樹脂の屈折率の値の範囲が逆となっていてもよい。
表面層樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、上述した蓄光体樹脂組成物に含まれる硬化剤と同様のものが挙げられ、その配合量も上記表面層樹脂組成物と同様に設定することが好ましい。
表面層樹脂組成物11aを加熱、硬化させる際の加熱温度としては、40〜140℃とすることが好ましく、50〜80℃とすることがより好ましい。
表面層樹脂組成物11aを加熱、硬化する際の加熱時間は、使用する樹脂や硬化剤の種類や配合量、または硬化促進剤等の添加剤の配合量などによっても変化するが、例えば、60〜70℃において40〜60分間加熱することにより、表面層樹脂組成物を硬化させることができる。
なお、表面層樹脂組成物11aが硬化促進剤を含有する場合には、加熱を行わずに室温にて硬化反応を行うことも可能である。また、表面層用樹脂としてシリコン樹脂を使用する場合においても、シリコン樹脂は空気中の水分と反応して硬化するので、加熱を行わずに室温にて硬化反応を行うことも可能である。
図6に示す製造方法では、樹脂シートN1の製造工程として、まず、表面に所望の凸部13の反転形状の凹部が複数個形成された転写型53の上に、未硬化の表面層樹脂組成物11aを載置し、さらにこの上に加工基材であるフィルム54を載せて、ローラー55によりフィルム54を押し当てて、表面層樹脂組成物11aを押し広げる(図6(a))。ついで、シート状に押し広げられた表面層樹脂組成物11aを、転写型53とフィルム54とで挟まれた状態のまま、加熱などにより硬化する(図6(b))。硬化後のシート状物より転写型53およびフィルム54を剥離することにより、表面に複数の凸部13が形成された表面層11(樹脂シートN1)を製造する(図6(c)、(d))。次に、得られた樹脂シートN1の凸部13が形成されていない面に、蓄光体21を積層させる。
フィルム54の厚さは、表面層樹脂組成物11a表面を均一に延伸するために25〜200μm程度であることが好ましい。フィルム54の厚さが25μm未満の場合は、ローラー55による表面層樹脂組成物11aの延伸時にフィルム54がしわになりやすく、また、フィルム54の取り扱いが難しくなる場合がある。フィルム54の厚さが200μmを超える場合には、フィルム54の剛性が高く、延伸時にローラー54による載苛部分に加わる力が分散される為、延伸速度を下げる必要が生じ、延伸に時間がかかる場合がある。
フィルム54を押圧する方法は、表面層樹脂組成物11aを転写型53及びフィルム54全体に亘って均一に延伸できればよく、上記ローラーを使用する方法に制限されるものではない。
転写型50は基材51の一方の面に複数の凹部52が形成されている。凹部52の形状は、所望の凸部13の反転形状となっており、すなわち、半球状である。凹部52の開口部の径は0.4〜3.0mmであることが好ましく、0.6〜1.6mmであることがより好ましい。また、凹部52の最深部の深さは0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがより好ましい。
凹部52の配列については、図4に示すように密に整列配置されるものに制限されるものではなく、所望の凸部13の配列に応じて、適宜、所定のピッチで複数並べて配置されていてもよく、ランダムに配置されていてもよい。また、平面部を少なくするために、開口部の径および深さの異なる大と小の凹部が組み合わされていてもよい。
転写型53の基材51の素材としては、耐熱性を有し、かつ表面層樹脂組成物11aに不溶であれば特に制限はなく、ステンレス等の金属や、上記フィルム54で挙げた材料等を使用することができる。また、転写型53の表面には、硬化により成形された樹脂シート11の剥離を容易にするために離型剤を用いることが好ましい。離型剤としては、上記第1の実施形態で挙げたものと同じものが挙げられる。
図6(a)に示す方法では、フィルム54を押し当てながら表面層樹脂組成物11aを押し広げていくことにより、表面層樹脂組成物11aに含まれている気泡、および、表面層樹脂組成物11aと転写型53の凹部との間の気泡を除くことができる。これにより、硬化時のピンホール等の発生を低減することができる。
特に、図6(a)に示すように、転写型53およびフィルム54の一方の端部から、表面層樹脂組成物11aを一方向に押し広げていく方法が、簡便かつ高効率に気泡の除去が行えるために好ましい。表面層樹脂組成物11aを押し広げる方法は、転写型53の中央部に表面層樹脂組成物11aを載置し、該樹脂組成物の中央部から放射状に複数回にわたって押し広げる方法であってもよい。
表面層11の厚みは、特に制限されるものではないが、0.1〜3.0mmが好ましく、0.2〜2.0mmがより好ましい。表面層11の厚みが0.1mm未満であると、硬化が進みにくく、強度が低く型から剥離するときに破損となる可能性がある。また、表面層11の厚みが2.0mmを超えると、透明度が不足し蓄光層の輝度が発現しなくなる可能性がある。
凸部13の直径は、表面層11の厚みに対して、10〜600%であることが好ましく、50〜400%であることがより好ましい。このような範囲の厚みとすることにより、凸部13の集光レンズ機能が高めることができる。
硬化後に、転写型53およびフィルム54を剥離した樹脂シートN1の、凸部13が形成されていない面に蓄光体21を積層させる方法としては、上記第1の実施形態と同じ方法が挙げられ、図6(e)に示すように接着剤や粘着剤等(粘接着剤31)により固定して積層してもよいし、樹脂シートN1の凸部13が形成されていない面上に囲い枠を設けて、この枠内に蓄光体樹脂組成物を注型して、加熱などにより硬化させて当該囲い枠を除去することにより積層してもよい。
このようにして樹脂シートN1と蓄光体21を積層した後、この積層体を所望の形状に裁断することにより、成形構造体M2(粘接着材31を用いる場合には、成形構造体M4)を得ることができる。
焦点調整層41は、焦点調整層用樹脂と硬化剤とを含んでなる焦点形成層樹脂組成物を加熱硬化することにより形成される。焦点形成層樹脂組成物に含有される焦点調整層用樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましく、上記表面層樹脂組成物11aに含有される表面層用樹脂である熱硬化性樹脂と同じものが挙げられる。焦点調整層樹脂組成物に含有される硬化剤とその配合量としては、上記表面層樹脂組成物11aに含有される硬化剤とその配合量と同じものが挙げられる。
焦点調整層41の厚さは、0〜2mmが好ましく、0〜1.0mmがより好ましい。また、焦点調整層41の屈折率は、1.45〜1.57とすることが好ましく、1.48 〜1.54とすることがより好ましい。このような厚さおよび屈折率の焦点調整層41を備える構成とすることにより、凸部13により集光された光を、より効果的に蓄光体21へと照射させることができる。
なお、蓄光成形体M5において、凸部13が最表面になるように積層することも可能である。
また、本実施形態の蓄光成形体の製造方法によれば、光を集光するレンズである凸部13を表面層11と一体形成することができるので、弱い光を照射された場合にも、高い燐光輝度を示す蓄光成形体を、安価で容易に製造することができる。
以下の実施例における樹脂の屈折率(完全硬化後)は、ERMA社製、ユニバーサルアッベ屈折率計ER−7MWを用い、D線照射により、25℃にて測定した。
[表面層樹脂組成物(A−1)の調製]
アクリル樹脂(三菱レイヨン社製、商品名:アクリシラップ、屈折率1.48)100g、硬化剤(日油社製、商品名:パーロイルTCP)2gを混合し、さらに、ガラス球体(ポッターズ・バロティーニ社製、粒径0.2mm)100gを配合し、真空攪拌機で十分に脱気、攪拌して表面層樹脂組成物(A−1)を調製した。
[蓄光体樹脂組成物(B−1)の調製]
不飽和ポリエステル樹脂(ディー・エイチ・マテリアル社製、商品名:TP−100、屈折率1.59)500g、硬化剤(日油社製、商品名:パーロイルTCP)10gを混合し、さらに、蓄光材(根本特殊化学社製、商品名:ルミノーバ)500gを配合し、真空攪拌機で十分に脱気、攪拌して蓄光体樹脂組成物(B−1)を調製した。
表面に離型剤(巴工業社製、商品名:フレコート)を塗布したステンレス板(日新製鋼社製、磨きステンレス板、300mm×300mm×2T(mm))の表面に、調製した表面層樹脂組成物(A−1)を厚さ0.3mmとなるようにドクターナイフにより塗布し、80℃の恒温槽中にて60分間、加熱・硬化させて、ガラス球体を含有した表面層を形成した。
次に、この表面層の周囲に、10mm角、長さ100mmのステンレス棒を用い4辺に囲い枠を設け、この囲い枠内に調製した蓄光体樹脂組成物(B−1)を注型し、ドクターナイフで表面を平滑に仕上げて、80℃の恒温槽中にて60分間、加熱・硬化させた。この硬化物よりステンレス板を剥離し、次いで、囲い枠である4本のステンレス棒を除去することにより、蓄光成形体を得た。
[表面層樹脂組成物(A−2)の調製]
アクリル樹脂(三菱レイヨン社製、商品名:アクリシラップ、屈折率1.48)100g、硬化剤(日油社製、商品名:パーロイルTCP)2gを混合して表面層樹脂組成物(A−2)を調製した。
[蓄光成形体の作製]
図6に示す製造方法により実施例2の蓄光成形体を作製した。
ステンレス板(日新製鋼社製、磨きステンレス板、300mm×300mm×2T(mm))の表面に、直径2mmのボールエンドミルを用いてNCマシン(Numerical Control Machine)で、図8に示すように、深さ0.2 mm、直径1.2mmの半球状の凹部を多数形成した。このステンレス板の凹部が形成された面に離型剤(巴工業社製、商品名:フレコート)を塗布し、転写型53を作製した。
転写型53の凹部が形成された面上に、表面層樹脂組成物11aとして調整した表面層樹脂組成物(A−2)を塊状に載置し、図6(a)に示すように、その上にフィルム54であるPETフィルム(ユニチカ社製、厚さ50μm)を重ねて、フィルム54上でローラー55を周囲に向かって押し当てて、転写型53の凹部と表面層樹脂組成物11aとの間の空気を、余分な表面層樹脂組成物11aと共に転写型53の外に押出しながら、表面層樹脂組成物11aの凸部を含まない膜厚が0.3mmとなるように延伸した。これらを、80℃の恒温槽中にて60分間、加熱・硬化した後、図6(b)および(c)に示すように、硬化物より転写型53およびフィルム54を剥離して、表面層11の一方の面に複数の半球状の凸部13(高さ0.2mm、直径1.2mm)が形成された樹脂シートを得た。この表面層11の裏面(凸部13が形成されていない側の面)と、予め上記蓄光体樹脂組成物(B−1)を注型して80℃、60分間、加熱・硬化することにより成形した蓄光層21(縦200mm、横200mm)を積層することにより、蓄光成形体を得た。この積層に際しては、表面層11(樹脂シート)を蓄光体21のサイズに合わせて切断し、積層面の各辺に接着剤31(東亞合成社製、商品名:アロンアルファ(登録商標))を設けることにより、固定した。得られた蓄光成形体の、表面層11の凸部13を含まない厚さは0.5mm、蓄光体の厚さは10.5mmであった。この蓄光成形体の部分拡大写真を図9に示す。
[表面層樹脂組成物(A−3)の調製]
不飽和ポリエステル樹脂(ディー・エイチ・マテリアル社製、商品名:サンドーマ3717、屈折率1.59)100gに、硬化剤(日油社製、商品名:パーロイルTCP)2gを添加し、充分に攪拌混合して表面層樹脂組成物(A−3)を調製した。
[蓄光体樹脂組成物(B−2)の調製]
不飽和ポリエステル樹脂(ディー・エイチ・マテリアル社製、商品名:サンドーマ3725、屈折率1.48)100gに、蓄光材(根本特殊化学社製、商品名:ルミノーバ)200gを配合し、さらに、硬化剤(日油社製、商品名:パーロイルTCP)2gを添加し充分に混合して蓄光体樹脂組成物(B−2)を調製した。
[焦点調整層樹脂組成物(C−1)の調製]
不飽和ポリエステル樹脂(ディー・エイチ・マテリアル社製、商品名:サンドーマ3725、屈折率1.48)100gに、硬化剤(日油社製、商品名:パーロイルTCP)2gを添加し充分に混合して焦点調整層樹脂組成物(C−1)を調製した。
[白色層樹脂組成物(D−1)の調製]
白色不飽和ポリエステル樹脂(東京インキ社製、商品名:PCG−0C326−W)20gに、硬化剤(日油社製、商品名:パーメックN)0.2gを配合し、充分攪拌して白色層樹脂組成物(D−1)を調製した。
図7に示すような製造方法により実施例3の蓄光成形体を作製した。
表面に離型剤(巴工業社製、商品名:フレコート)を塗布したステンレス板(日新製鋼社製、磨きステンレス板、300mm×400mm×2T(mm))を加工基材56とし、この加工基材56上に、表面層樹脂組成物11bとして調製した表面層樹脂組成物(A−3)を塗布した(図7(a))。
PETフィルム(ユニチカ社製、厚さ500μm)の表面に、ボールエンドミルを用いて、深さ0.2mm、直径1.2mmの球状の一部形状である凹部が最小形状となるように、約18500箇所切削を行い、200mm角に加工を行って、転写型57を作製した。
この転写型57を、加工基材56上に塗布した表面層樹脂組成物11bの上に載置し、転写型57の上からローラー55により表面層樹脂組成物11bを端部から反対側の端部に向かって押し付けて、表面層樹脂組成物11bの凸部を含まない厚さが0.3mmとなるように延伸した(図7(b))。これらを、60℃に加温した空気槽にて40分間、加熱・硬化し、冷却後、成形された表面層11より転写型57を剥離した(図7(c))。次いで、表面層11の凸部13(最小形状:高さ0.2mm、直径1.2mm)が形成された面上に調製した焦点調整樹脂組成物(C−1)を厚さ0.3mmで塗布し、これらを60℃に加温した空気槽にて40分間、加熱・硬化することにより、焦点調整層41を形成した(図7(d))。この焦点調整層41の4辺に、10mm角、長さ50mmの角棒4本を設置して囲い枠とし、この囲い枠内に調整した蓄光体樹脂組成物(B−2)を流し込み、70℃に加温した空気槽にて60分間、加熱・硬化して蓄光体21を成形した(図7(e))。さらに、この蓄光体21の表面に調製した白色層樹脂組成物(D−1)を刷毛で塗布して、70℃の空気槽にて60分間、加熱・硬化させて白色層(隠蔽層)を形成した。室温に冷却後、硬化物を基材56より剥離し、囲い枠である4本の角棒を除去し、蓄光体21が形成されていない部分の表面層11を除去して、実施例3の蓄光成形体を得た。得られた蓄光成形体の、表面層11の凸部13を含まない厚さは0.3mm、蓄光体の厚さは10mm、焦点調整層の最厚部の厚さは0.3mmであった。
実施例1において、表面層にガラス球体を含有させないこと以外は、実施例1と同様にして蓄光成形体を作製した。
(比較例2)
実施例2において、表面層の一方の面に半球状の凸部を設けないこと以外は、実施例2と同様にして蓄光成形体を作製した。
(比較例3)
実施例3において、表面層の一方の面に半球状の凸部を設けないこと以外は、実施例3と同様にして蓄光成形体を作製した。
したがって、本発明の蓄光成形体によれば、蓄光体に照射される光の照度を周囲環境よりも高めることができるため、蓄光成形体の発光時の輝度を高めることが可能となる。また、本発明に係る蓄光成形体を蓄光誘導標識等に適用した場合には、暗所における蓄光誘導標識等の視認性を高めることが可能となる。
Claims (6)
- 蓄光材を含む成形体からなる蓄光体と、表面層とを備え、前記表面層の内部または一方の面上の少なくともどちらかに光を集光するレンズを配したことを特徴とする蓄光成形体。
- 前記レンズが、ガラスまたは樹脂よりなる透明球状体であり、この透明球状体の直径が前記表面層の厚みの10〜300%であることを特徴とする請求項1に記載の蓄光成形体。
- 前記レンズが、表面層の一方の面上に設けられた複数の半球状の凸部であることを特徴とする請求項1に記載の蓄光成形体。
- 前記蓄光体を形成する蓄光体用樹脂の屈折率と、前記表面層を形成する表面層用樹脂の屈折率との差が、0.03以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄光成形体。
- 硬化剤を配合した熱硬化性樹脂を、平板またはフィルムよりなる加工基材と、表面に半球状の凹部が複数形成された転写型との間に配して硬化させ、前記凹部の反転形状の凸部を複数有する樹脂シートを形成し、この樹脂シートに蓄光材を含む成形体からなる蓄光体を積層させて、蓄光材を含む成形体からなる蓄光体と、表面層とを備え、前記表面層の内部または一方の面上の少なくともどちらかに光を集光する凸部からなるレンズを配した蓄光成形体を得ることを特徴とする蓄光成形体の製造方法。
- ガラスまたは樹脂よりなる透明球状体と、硬化剤とを配合した熱硬化性樹脂を硬化させてシート状物とし、このシート状物に蓄光材を含む成形体からなる蓄光体を積層させて、蓄光材を含む成形体からなる蓄光体と、表面層とを備え、前記表面層の内部または一方の面上の少なくともどちらかに光を集光する透明球状体のレンズを配した蓄光成形体を得ることを特徴とする蓄光成形体の製造方法。
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