JP2019194580A - シンチレータパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】膜厚均一性に優れ、輝度・鮮鋭度および支持体との密着強度に優れた蛍光体層を有するシンチレータパネルを提供すること。【解決手段】支持体上に、X線蛍光体とバインダー樹脂を含む蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、前記バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)が700,000〜2,000,000の範囲であるシンチレータパネル。【選択図】図1

Description

本発明は、シンチレータパネルに関する。
従来、フィルムを用いた放射線画像が広く用いられてきた。しかし、フィルムを用いた放射線画像はアナログ画像情報であるため、近年、コンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)や平板放射線検出器(flat panel detector;FPD)等のデジタル方式の放射線検出器が開発されており、医療用途や非破壊検査用途等の幅広い分野で放射線画像が利用されている。
FPDにおいては、放射線を可視光に変換するために、シンチレータパネルが使用される。シンチレータパネルは、支持体上に、酸硫化ガドリニウムやヨウ化セシウム等のX線蛍光体を有する蛍光体層を有し、照射された放射線に応じて、該蛍光体が可視光を発光して、その発光をTFTやCCDにより電気信号に変換することにより、放射線の情報をデジタル画像情報に変換する。放射線を効率良くデジタル画像情報に変換することにより、低線量での撮像が可能となるため、医療用途においては被験者等の被曝線量低減が、非破壊検査用途においては検査時間の短縮が可能となる。このため、輝度および鮮鋭度の向上が求められる。
シンチレータパネルの鮮鋭度を向上させる技術として、例えば、支持体と、支持体上に形成されたX線用蛍光体及び結合剤から成る蛍光体層とを有する増感紙において、蛍光体層中における上記結合剤/上記X線用蛍光体の重量比が前者/後者=1/25ないし1/9であり、蛍光体層中における上記X線用蛍光体の充填率が60ないし70%である増感紙(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、かかる技術においては、鮮鋭度を向上させると、蛍光体層と支持体との密着強度が低下するなど、鮮鋭度と支持体との密着強度の両立が困難である課題があった。
シンチレータパネルの輝度や鮮鋭度を向上させる別の技術として、例えば、支持体の片側にハロゲン化銀写真感光材料と放射線増感スクリーンからなる放射線画像形成用組体において、放射線増感スクリーンが蛍光体層の蛍光体に対する結合剤の重量比が0.1%以上3.0%以下であり、かつ蛍光体の充填率が65%以上であり、かつ蛍光体の平均粒子径が0.3μm以上7μm以下であり、かつ放射線画像の特性曲線のγが1.8以上2.3以下である放射線画像形成用組体(例えば、特許文献2参照)や、支持体上に、結合剤に分散された輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、結合剤の酸価と水酸基価の合計が8mgKOH/g以上である放射線画像変換パネル(例えば、特許文献3参照)が提案されている。しかしながら、かかる技術においてもなお、近年求められる高い輝度や鮮鋭度と、支持体との密着強度の両立は困難であった。また、蛍光体層の形成において、塗布スジやハジキなとの塗布不良や膜厚変動が生じやすく、膜厚均一性に課題があった。
これに対して、膜厚分布を均一にする方法として、輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、アクリル系レベリング剤を含有する輝尽性蛍光体層塗布液を塗布する方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、かかる技術においてもなお、膜厚均一性は不十分であり、さらに、輝度や鮮鋭度と、支持体との密着強度の両立も困難であった。
特開平3−196036号公報 特開平10−268481号公報 特開2002−296399号公報 特開2006−126028号公報
本発明は、膜厚均一性に優れ、輝度・鮮鋭度および支持体との密着強度に優れた蛍光体層を有するシンチレータパネルを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
支持体上に、X線蛍光体粉末とバインダー樹脂を含む蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、前記バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)が700,000〜2,000,000の範囲であるシンチレータパネル。
本発明のシンチレータパネルは、蛍光体層の膜厚均一性に優れ、輝度・鮮鋭度および支持体との密着強度に優れる。
本発明のシンチレータパネルを用いた放射線検出器の構成の一例を模式的に表した断面図である。 本発明のシンチレータパネルに好適に用いられる支持体の一例を模式的に表した断面図である。 本発明のシンチレータパネルに好適に用いられる支持体の別の一例を模式的に表した断面図である。 本発明のシンチレータパネルの一例を模式的に表した断面図である。 本発明のシンチレータパネルの別の一例を模式的に表した断面図である。
本発明のシンチレータパネルは、支持体上に、X線蛍光体を含有する蛍光体層を有する。以下、図面を用いて本発明のシンチレータパネルおよびそれを用いた放射線検出器の好ましい構成を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
図1は、本発明のシンチレータパネルを用いた放射線検出器の構成の一例を、模式的に表した断面図である。放射線検出器1は、シンチレータパネル2、高透明接着層6、フォトダイオード基板3および電源部9を有する。シンチレータパネル2は、支持体4上に蛍光体層5を有する。蛍光体層5は、照射された放射線エネルギーを吸収して、波長が300〜800nmの範囲の電磁波、すなわち、可視光を中心とする紫外〜赤外光に亘る光を発光する。
フォトダイオード基板3は、基板8上に、フォトダイオードとTFTとを有する画素が2次元状に配置された光電変換層および出力層7を有する。ただし、図示の都合上、図1の紙面における下方向が、前記説明における上方向となる。
シンチレータパネル2の出光面と、フォトダイオード基板3の光電変換層および出力層7とは、高透明接着層6を介して、一部または全面が接着される。光電変換層に到達した蛍光体の発光光は、光電変換層および出力層7において光電変換され、出力される。
本発明のシンチレータパネルを構成する支持体は、可視光領域における反射率が80%以上であることが好ましく、蛍光体層の発光光を、より効率よくフォトダイオード側に到達させることができる。支持体の可視光における反射率は、90%以上がより好ましい。本発明においては、可視光領域における反射率の指標として、一般的なX線蛍光体が発光する可視光の主ピークとなる波長550nmにおける反射率に着目する。すなわち、支持体の波長550nmにおける反射率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
ここで、支持体の反射率とは、硫酸バリウム白板の反射率を100%としたときの相対反射率を言う。支持体の反射率は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ(株)製「CM−2002」)のSCIモードにより測定することができる。
X線発生源から放射された放射線は、被写体を介した後、支持体を透過し、蛍光体層において可視光に変換されるため、支持体は、高い放射線透過性を有することが好ましい。支持体を構成する材質としては、例えば、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネートなどの高い放射線透過性を有する樹脂や、これらと炭素繊維を含む炭素繊維強化樹脂などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でも、反射率、強度および耐熱性の観点から、ポリエステルを主成分とすることが好ましい。ここで、本発明における「主成分」とは、50質量%以上の成分を意味する。ポリエステルを主成分とし、さらに屈折率の異なる材料を含む、白色ポリエステルがより好ましい。
ポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸との縮重合物である。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)などが挙げられる。
屈折率の異なる材料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ガドリニウム、酸硫化ガドリニウム、高屈折率ガラス等のセラミック粒子などの白色顔料が挙げられる。
支持体は、高い放射線透過性を有することが好ましいことから、化合物周期表の第6周期以上の元素を含まないことが好ましく、第5周期以上の元素を含まないことがより好ましい。特に、第4周期以下で構成される元素を成分とする支持体は、高い放射線透過性を有するため、好適である。なお、本発明において、高周期元素を含まないとは、支持体中の高周期元素含有量が0.1質量%未満であることを言う。
支持体の厚さは、シンチレータパネルの軽量化の観点から、2.0mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。一方、支持体の弾性力を向上させる観点から、支持体の厚さは、0.05mm以上が好ましい。本発明における支持体の厚さは、ミクロトームを用いて支持体断面を出した後に、走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、各10箇所観察し、平均厚みを測定することにより算出することができる。
支持体は、シンチレータパネルの軽量化と放射線透過性の観点から、体積比重が小さいことが好ましい。具体的には、支持体の体積比重は、1.2g/cm以下が好ましく、0.9g/cm以下がより好ましく、0.7g/cm以下がさらに好ましい。一方、支持体製造時における破れやシワの発生をより抑制し、ハンドリング性をより向上させる観点から、支持体の体積比重は、0.5g/cm以上が好ましい。
シンチレータパネルを構成する支持体は、空隙率が5%以下である表面層と、空隙率が40〜80%である内部層との積層構造を有することが好ましい。内部層を2層以上有してもよく、表面層と内部層の材質は、同じでも異なってもよい。内部層と表面層との積層構造を有することにより、画像の欠陥を抑制することができる。内部層の両面に表面層を有することが好ましい。表面層は、内部層の形態を保護し、支持体の強度を向上させる作用を有する。また、支持体を介した光拡散を抑制して鮮鋭性をより向上させる作用を有する。表面層の空隙率を5%以下とすることにより、支持体の強度を向上させ、シンチレータパネル製造工程におけるシワ・打痕などの発生を抑制し、ハンドリング性を向上させることができる。また、支持体上に蛍光体層や接着層を形成する場合、表面層から支持体内部への塗布液の浸透を抑制し、シンチレータパネルの製造安定性を向上させることができる。表面層の空隙率は2%以下がより好ましく、表面層は空隙を有しないことがさらに好ましい。一方、内部層は、多数の空隙を含むことにより、支持体の材質と空隙の屈折率差やそれらの界面により、反射率を向上させ、輝度をより向上させる作用を有する。すなわち、放射線から可視光に変換した発光光を、より効率的に検出器側に送ることができる。内部層の空隙率を40%以上とすることにより、輝度をより向上させることができる。内部層の空隙率は50%以上が好ましい。一方、内部層の空隙率を80%以下とすることにより、内部層の強度を向上させ、支持体製造時における破れやシワの発生を抑制し、ハンドリング性を向上させることができる。また、熱収縮に起因するシンチレータパネルの反りを抑制することができる。内部層の空隙率は70%以下がより好ましく、65%以下がさらに好ましい。
ここで、表面層および内部層の空隙率とは、表面層および内部層の任意の断面における空隙部分の面積割合(%)を言う。表面層および内部層の空隙率は、表面層および内部層の断面をミクロトームやイオンミリングを用いて研磨した後に、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、(株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、倍率2000倍の条件で40μm×60μmの領域を観察し、観察領域に認められる空隙部分の表面層および内部層の断面積に占める面積割合を算出することにより求めることができる。
支持体を構成する表面層は、樹脂を主成分とすることが好ましく、主成分である樹脂とは屈折率の異なる粉末を含有してもよい。主成分の樹脂としては、ポリエステルが好ましい。また、粉末には、シンチレータパネルの輝度をより向上させる観点から、発光光を吸収しない材料を選択することが好ましい。粉末としては、有機粉末や無機粉末などが挙げられる。内部層を保護して支持体の強度をより向上させる観点や、主成分である樹脂との屈折率差の観点から、無機粉末が好ましい。無機粉末としては、例えば、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ガドリニウム、酸硫化ガドリニウム、高屈折率ガラスなどの高屈折率材料からなる粉末;フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、酸化珪素などの低屈折率材料からなる粉末などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、酸化チタン粉末が高屈折率の観点から特に好ましい。
表面層に含まれる粉末の屈折率と、主成分である樹脂の屈折率との差(Δn)は、表面層の反射率をより向上させて支持体における光拡散をより抑制し、鮮鋭性をより向上させる観点から、0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましい。一方、樹脂および粉末の屈折率を適度に小さくして着色を抑制する観点から、屈折率差Δnは1.4以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。表面層に含まれる粉末と樹脂の屈折率は、ミクロトームやイオンミリングを用いて表面層の断面を出した後、SEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)等により粉末と樹脂のそれぞれの物質を同定し、該当する物質のバルクの屈折率から算出することができる。
なお、鮮鋭性は、MTF(Modulation Transfer Function;レンズ性能を評価する指標の一つで、空間周波数特性)と呼ばれる鮮鋭度を指標として評価することができる。MTFは、シンチレータパネルを具備する放射線検出器に、放射線を透過しない鉛板を置き、管電圧70kVpの放射線をシンチレータパネルの支持体側から照射して得られた画像を基に、エッジ法により測定することができる。
表面層に含まれる粉末の平均粒子径は、分散性を向上させる観点から、0.1μm以上が好ましい。一方、粉末の平均粒子径は、支持体における光拡散をより抑制し、鮮鋭性をより向上させる観点から、1.5μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
ここで、本発明における粉末の平均粒子径とは、表面層の断面をSEM観察した2次元画像から無作為に選択した100個の粒子の粒子径の数平均値を言う。ただし、粉末の粒子径とは、粉末の外縁と2点で交わる直線のうち、最長となるものの長さを言う。粉末の平均粒子径は、表面層の断面をミクロトームやイオンミリングを用いて研磨した後に、走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、倍率5000倍の条件で25μm×15μmの領域を観察し、観察領域に認められる粉末(粒子)から無作為に100個を選択して粒子径を測定し、その数平均値を算出することにより求めることができる。
表面層中の粉末の含有量は、支持体における光拡散をより抑制し、鮮鋭性をより向上させる観点から、主成分である樹脂の総量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。一方、粉末の含有量は、支持体の割れにくさなどのハンドリング性を向上させる観点から、主成分である樹脂の総量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
表面層の厚みは、内部層を保護し、支持体の強度をより向上させる観点から、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。一方、可視光やX線の透過率をより向上させ、シンチレータパネルの輝度をより向上させる観点から、表面層の厚みは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。なお、複数の表面層のうち、蛍光体層側の表面層の厚みTs、その反対面側の表面層の厚みTbは、同じでも異なってもよい。
ここで、表面層の厚みは、支持体の断面を、ミクロトームを用いて研磨した後に、走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、倍率2000倍(視野:40μm×60μm)で10箇所観察し、その平均値を算出することにより求めることができる。
支持体を構成する内部層は、空隙率が40〜80%であることが好ましい。内部層は、ポリエステルを主成分とすることが好ましく、表面層の主成分と類似の樹脂を選択することにより、表面層と内部層の密着力を向上させ、支持体の強度をより向上させることができる。また、線膨張性係数差による支持体の変形を抑制し、支持体の信頼性を向上させることができる。支持体の内部層における空隙の形状を保持するため、さらに有機樹脂を含む有機粒子を含有することが好ましい。
内部層の空隙の形状としては、球状、楕円状、多角形状などが挙げられる。例えば、支持体の主成分となる材質と、非相溶である有機樹脂界面の界面剥離により空隙を生じさせ、延伸・配向させることにより空隙を層状に形成させる場合、実質的に空隙の形状は楕円状が多数となる。内部層の厚み方向に対して垂直方向に延伸・配向されるため、空隙の形状は、内部層の厚み方向に長さが短く、延伸・配向方向に長さが長い形状となる。本発明において、空隙の短径をr1、空隙の長径をr2としたとき、シンチレータパネルの輝度をより向上させる観点から、r2のr1に対する比(r2/r1)は、2以上が好ましい。一方、内部層における支持体に対して平行方向への発光の拡散をより抑制して鮮鋭性をより向上させる観点から、比(r2/r1)は5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましい。また、反射率をより向上させて輝度をより向上させる観点から、空隙の短径r1は0.3μm以上が好ましい。一方、空隙の総数を増大させて反射率をより向上させ、輝度をより向上させる観点から、短径r1は3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.7μm以下がさらに好ましい。
内部層の任意の断面における空隙の個数は、1個/100μm以上が好ましく、界面反射により支持体の内部層内部に入り込んだ発光光をより効率よく取り出し、シンチレータパネルの輝度をより向上させることができる。また、取り出した光の拡散を抑制し、鮮鋭性をより向上させることができる。一方、内部層の任意の断面における空隙の個数は、50個/100μm以下が好ましく、発光光に対する光反射性をより向上させ、シンチレータパネルの輝度をより向上させることができる。
内部層に有機粒子を含有する場合、有機粒子は、内部層の主成分であるポリエステルに対して非相溶であり、分散性に優れることが好ましい。主成分に対して非相溶の有機粒子を含有することにより、溶融成型後の延伸工程において、主成分と有機粒子界面の界面剥離により空隙を生じさせる効果がある。有機粒子を構成する材質としては、例えば、ポリ−4−メチルペンテン−1、セルローストリアセテート、非晶性環状オレフィン、結晶性ポリオレフィン、これらの共重合体などの樹脂が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でも、ポリエステルとの臨界表面張力差が大きく、延伸・配向時に変形しくいことから、エチレンとビシクロアルケンの共重合体である非晶性環状オレフィンが好ましい。非晶性環状オレフィンとは、JIS K7121−1987に準じ、示差走査型熱量計を用いて測定したガラス転移温度が120℃以下で、結晶化および融解のピークが見られない環状オレフィンを言う。
有機粒子の形状としては、球状、楕円状、多角形状などが挙げられる。有機粒子界面において、内部層の主成分となる材質と、安定的かつ効率的に界面剥離を生じさせるためには、接触面積を抑えることが好ましいことから、球状が好ましい。なお、支持体製造時の延伸・配向工程の応力により支持体に対して平行方向に変形した楕円状となる場合がある。
有機粒子の平均粒子径は、空隙の短径r1を前述の所望の範囲に容易に調整する観点から、0.3μm以上が好ましい。一方、有機粒子の平均粒子径は、シンチレータパネルの輝度をより向上させる観点から、3.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。なお、有機粒子が延伸・配向工程の応力により楕円状となる場合、楕円の短径を平均粒子径とする。また、楕円の扁平率fは下記式により定義され、有機粒子の短径Daと長径Dbから算出される扁平率fは0〜0.5が好ましい。
f=(Db−Da)/Db
ここで、本発明における有機粒子の平均粒子径は、内部層の断面をSEM観察した2次元画像から無作為に選択した100個以上の粒子の粒子径の数平均値を言う。ただし、粒子の粒子径とは、粒子の外縁と2点で交わる直線のうち、最長となるものの長さを言う。有機粒子の平均粒子径は、内部層の断面をミクロトームやイオンミリングを用いて研磨した後に、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、(株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)により倍率2000倍の条件で40μm×60μmの領域5箇所を観察し、観察領域に認められる有機粒子から無作為に20個を選択して粒子径を測定し、その数平均値を算出することにより求めることができる。
内部層の任意の断面における有機粒子の個数は、5個/100μm以上が好ましく、界面反射により支持体の内部層内部に入り込んだ発光光をより効率よく取り出し、シンチレータパネルの輝度をより向上させることができる。また、取り出した光の拡散を抑制し、鮮明性をより向上させることができる。一方、支持体の破れにくさというハンドリング性の観点から、内部層の任意の断面における有機粒子の個数は、50個/100μm以下が好ましい。
ここで、本発明における有機粒子の個数は、内部層の断面をSEM観察し、倍率2000倍の条件で40μm×60μmの観察領域の2次元画像から、球状または楕円状である粒径0.3μmの有機粒子の個数を計数することにより算出することができる。
内部層中の有機粒子の含有量は、5〜30質量%が好ましい。内部層中の有機粒子の含有量が5質量%以上であると、反射率をより向上させ、輝度をより向上させることができる。有機粒子の含有量は15質量%以上がより好ましい。一方、有機粒子の含有量が30質量%以下であると、支持体の強度および有機粒子の内部層中における分散性を向上させることができる。有機粒子の含有量は25質量%以下がより好ましい。
内部層の厚みTcは、反射率をより向上させてシンチレータパネルの輝度をより向上させる観点から、70μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。一方、内部層の厚みTcは、内部層によるX線の吸収を抑制してシンチレータパネルの輝度をより向上させる観点から、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。本発明における内部層の厚さは、支持体の断面を、ミクロトームを用いて研磨した後に、走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、倍率250倍(視野:500μm×300μm)で10箇所観察し、その平均値を算出することにより求めることができる。
支持体の内部層の空隙は、溶融押出成型による支持体製造時に延伸・配向することにより、生産性よく安定的に形成することができる。内部層の空隙の個数や形状は、例えば、有機粒子の粒子径や充填個数、支持体製造時の延伸・配向条件などにより、所望の範囲に調整することができる。有機粒子の充填個数を増やすことによって内部層の空隙の個数を増やすことができる。また、支持体製造時の延伸倍率を増加させると空隙の長径r2/短径r1を大きくすることができる。
支持体は、蛍光体層側の表面に易接着層を有することが好ましく、蛍光体層と支持体との密着強度をより向上させることができる。
易接着層の材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。中でも、ポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。ガラス転移温度が10〜80℃のポリエステル樹脂がより好ましい。例えば、支持体としてPETを用いる場合には、PETと類似の構造であるテレフタル酸やイソフタル酸などの残基を有する芳香族ポリエステルが好ましい。芳香族ポリエステルとしては、重量平均分子量2,000〜30,000の飽和共重合ポリエステルが好ましく、さらに非結晶性溶剤可溶型の重量平均分子量2,000〜30,000の飽和共重合ポリエステルが好ましい。非結晶性溶剤可溶型の重量平均分子量2,000〜30,000の飽和共重合ポリエステルとしては、日本合成化学(株)製の“ニチゴーポリエスター”(登録商標)の非結晶性溶剤可溶型を好適に用いることができる。樹脂のガラス転移温度は、示差熱分析装置(例えば、差動型示差熱天秤TG8120;(株)リガク製)を用いて測定することができる。
易接着層には、主成分であるポリエステル樹脂と異なる屈折率を有する粉末を含有してもよい。粉末を含有することにより、支持体に対して平行方向への光拡散をより抑制することができる。ポリエステルと粉末の屈折率差Δnは0.2以上が好ましい。粉末として、易接着層の主成分である樹脂との屈折率差の観点から、無機粉末が好ましい。無機粉末としては、前述の表面層における無機粉末として例示したものが挙げられる。高屈折率の観点から酸化チタン粉末が特に好ましい。ここで、ポリエステル樹脂の屈折率は、ポリエステル樹脂を可溶な有機溶媒、例えばメチルエチルケトン等に溶解した溶液を塗布・乾燥して得られる樹脂膜について、屈折率計(アッベ屈折率計4T;(株)アタゴ社製、光源:ナトリウムD線、測定温度25℃)を用いて測定することができる。また、無機粉末の屈折率は、「無機化学ハンドブック」(技報堂)、「フィラー活用辞典」(大成社)、「セラミック工学ハンドブック」(日本セラミック協会)などに開示されている。
易接着層の厚みTadは、蛍光体層と支持体との密着強度をより向上させる観点から、0.03μm以上が好ましい。一方、易接着層の厚みは、鮮鋭度をより向上させる観点から、5.0μm以下が好ましい。
図2に、本発明のシンチレータパネルに好適に用いられる支持体の一例を模式的に表した断面図を示す。内部層11の両面に表面層10および表面層12を有し、さらに易接着層13を有する。
図3に、本発明のシンチレータパネルに好適に用いられる支持体の別の一例を模式的に表した断面図を示す。支持体積層体4Aは、支持体4に粘着層14および裏打ち支持体15を有し、裏打ち支持体15を有する面と反対側の面に易接着層13を有する。支持体積層体をシンチレータパネルに用いることにより、支持体のコシが強くなるため、ハンドリング時の折れを防止することができ、歩留まり向上に寄与することができる。
支持体積層体を構成する裏打ち支持体は、高い放射線透過性を有することが好ましい。裏打ち支持体を構成する材質としては、例えば、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネートなどの高い放射線透過性を有する樹脂や、これらと炭素繊維を含む炭素繊維強化樹脂などが挙げられる。
支持体積層体を構成する支持体と裏打ち支持体は、同じ材質からなることが好ましい。同じ材質から構成される支持体と裏打ち支持体を積層することにより支持体積層体のコシが強くなり、後述するシンチレータパネルの製造方法において、加熱による支持体積層体の変形を抑制することができるため、蛍光体層の膜厚均一性をより向上されることができる。支持体と裏打ち支持体の材質が異なる場合、熱収縮率差の小さい材質を選択することが好ましい。
粘着層を構成する粘着材としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、低温で接着できることから、アクリル系粘着材等をシート状に加工した光学粘着シート(Optically Clear Adhesive;OCA)が好ましい。
支持体積層体の厚みは、支持体の厚み同様にシンチレータパネルの軽量化の観点から、2.0mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。本発明における支持体積層体の厚さは、ミクロトーム等を用いて支持体積層体断面を出した後に、走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、各10箇所観察し、平均厚みを測定することにより算出することができる。
本発明のシンチレータパネルを構成する蛍光体層は、X線蛍光体とバインダー樹脂を含む。さらに、分散剤、可塑剤、架橋剤、表面処理剤、帯電防止剤、重合禁止剤、金属化合物粒子などを含んでもよい。
X線蛍光体は、放射線エネルギーを吸収して、可視光を中心とする紫外〜赤外光に亘る光を発光する物質である。X線蛍光体としては、例えば、CsI、CsBr、GdS(以下、「GOS」)、CaWO、LuS、YS、LaS等の粉末が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。発光効率をより向上させる観点から、X線蛍光体には賦活剤が添加されてなることが好ましく、賦活剤としては、例えば、Tl、Ce、Tb、Eu、Pr、Tmなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。発光効率および化学的安定性が高いことから、賦活剤としてテルビウムを添加した酸硫化ガドリニウム(GOS:Tb)の粉末が好ましい。
蛍光体層に含まれるX線蛍光体の平均粒子径は、0.5〜30μmが好ましい。X線蛍光体の平均粒子径が0.5μm以上であると、放射線から可視光への変換効率がより向上し、輝度をより向上させることができる。また、X線蛍光体の凝集を抑制することができる。X線蛍光体の平均粒子径は、3.0μm以上がより好ましく、4.0μm以上がさらに好ましい。一方、X線蛍光体の平均粒子径が30μm以下であると、蛍光体層表面の平滑性に優れ、画像への輝点の発生を抑制することができる。X線蛍光体の平均粒子径は、18.0μm以下がより好ましく、14.0μm以下がさらに好ましい。
ここで、本発明におけるX線蛍光体の平均粒子径とは、粒度の累積分布に対して50%となる粒子径を言い、粒度分布測定装置(例えば、MT3300;日機装(株)製)を用いて測定することができる。より具体的には、水を満たした試料室にX線蛍光体を投入し、300秒間超音波処理を行った後に粒度分布を測定し、累積分布に対して50%となる粒子径を平均粒子径とする。
図4および図5に、本発明のシンチレータパネルの一例の断面図を示す。図4に示すシンチレータパネルは、蛍光体層5を1層有する。図5に示すように、X線蛍光体の平均粒子径が異なる多層構成の蛍光体層とする場合、支持体側の下層蛍光体層に含まれるX線蛍光体の平均粒子径Dsbと、支持体と反対側の上層蛍光体層に含まれるX線蛍光体の平均粒子径Dstが、Dsb<Dstの関係を満たすことが好ましい。X線蛍光体の平均粒子径が小さい方が光拡散をより抑制することができ、平均粒子径が大きい方が輝度をより向上させることができる。Dsb<Dstの関係を満たすことにより、光拡散をより抑制しつつ、輝度をより向上させることができる。
X線蛍光体表面は、輝度をより向上させる観点から、金属化合物粒子で被覆されていることが好ましい。被覆率は5%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。金属化合物粒子が蛍光体の表面を完全に被覆(被覆率100%)していてもよい。X線蛍光体表面を金属化合物で被覆する方法としては、例えば、後述するシンチレータパネルの製造方法において、X線蛍光体と金属化合物粒子を含む蛍光体ペーストを用いて蛍光体層を形成する方法などが挙げられる。
金属化合物粒子によるX線蛍光体の被覆率は、蛍光体層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM;例えば、(株)日立製作所製「S2400」)により観察した2次元画像から、無作為に20個のX線蛍光体を選択し、それぞれについて周囲長を100分割し、蛍光体表面から500nm以内の範囲に金属化合物が存在する領域の割合(%)を求め、その数平均値から算出することができる。なお、シンチレータ層の断面を観察する際には、例えば、機械研磨法、ミクロトーム法、CP法、集束イオンビーム加工法などにより研磨することが好ましい。
金属化合物としては、アルミニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ニオブ化合物などが好ましい。より具体的には、例えば、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムの酸化物、硫化物、水酸化物等が挙げられる。塗布膜および硬化膜の屈折率を所望の範囲に調整する観点から、ジルコニア、チタニアが好ましい。
金属化合物粒子の具体例としては、例えば、“オプトレイク”(登録商標)TR−502、TR−504、TR−520等の酸化スズ−酸化チタン複合粒子;“オプトレイク”(登録商標)TR−503、TR−527、TR−528、TR−529、TR−513等の酸化ケイ素−酸化チタン複合粒子;“オプトレイク”(登録商標)TR−505等の酸化チタン粒子(以上、いずれも触媒化成工業(株)製);酸化ジルコニウム粒子((株)高純度化学研究所製);酸化スズ−酸化ジルコニウム複合粒子(触媒化成工業(株)製);酸化スズ粒子((株)高純度化学研究所製)などが挙げられる。
金属化合物粒子は、グラフト化されていることが好ましい。ここで、「金属化合物粒子がグラフト化されている」とは、粒子の表面に存在する水酸基等を介して、高分子化合物が金属化合物粒子表面に化学結合(グラフト)されている状態を言う。グラフト化された金属化合物粒子(グラフト化粒子)は、X線蛍光体を被覆することにより、一部X線蛍光体と化学結合されるため、金属化合物粒子の脱落・剥離が抑制され、被覆率を高めることができる。
GOS等に代表される酸硫化物系蛍光体は、表面にヒドロキシル基および/またはチオール基を有する。グラフト化された金属化合物粒子(グラフト化粒子)は、蛍光体表面のヒドロキシル基および/またはチオール基と化学結合することにより、蛍光体表面の被覆率を高めることができる。
金属化合物粒子をグラフト化する高分子化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、尿素樹脂、メラミン樹脂等の水溶性高分子化合物;ポリシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸等の非水溶性高分子化合物などが挙げられる。
金属化合物粒子のグラフト化は、例えば、金属化合物粒子、アルコキシシラン化合物、溶媒および酸触媒を混合することにより行うことができる。この場合、アルコキシシラン化合物を酸触媒により加水分解して得られるシラノール化合物を縮重合したポリシロキサンによって、金属化合物粒子がグラフト化されていると考えられる。
バインダー樹脂は、蛍光体層の膜強度を高め、蛍光体層形成時のX線蛍光体の分散により、膜厚均一性を向上させる作用を有する。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ブチルセルロール樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、アクリル樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、アクリル樹脂が好ましい。
本発明において、バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は700,000〜2,000,000の範囲である。バインダー樹脂の重量平均分子量Mwが700,000未満であると、塗膜に塗布スジ・ハジキが発生したり、膜厚均一性が低下することから、蛍光体層の外観および膜厚均一性が低下する。また、蛍光体層の強度が低下し、蛍光体層のカケや割れが発生しやすくなるため、輝度および支持体との密着強度が低下する。バインダー樹脂のMwは、800,000以上が好ましい。一方、バインダー樹脂のMwが2,000,000よりも大きい場合、蛍光体粉末の充填率が低くなるため、輝度・鮮鋭度および屈曲耐性が低下する。バインダー樹脂のMwは、1,800,000以下が好ましく、1,600,000以下がより好ましい。
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した分散度(Mw/Mn)は、1.5〜5.0が好ましい。バインダー樹脂の分散度が1.5以上であると、バインダー樹脂の製造歩留まりを向上させることができる。バインダー樹脂の分散度は、2.0以上がより好ましい。一方、バインダー樹脂の分散度が5.0以下であると、ゲル化の発生を抑制し、膜厚均一性をより向上させることができる。バインダー樹脂の分散度は、4.0以下がより好ましい。
ここで、バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)とは、GPC法により測定したポリスチレン換算値を言う。具体的には、ゲル浸透クロマトグラフGPC(GPC−22)/示差屈折率検出器RI(東ソー(株)製、RI−8020型)を用いて、単分散ポリスチレン(東ソー(株)製)を標準物質として測定することができる。
バインダー樹脂のガラス転移温度は、40〜120℃が好ましい。バインダー樹脂のガラス転移温度が40℃以上であると、高温高湿環境下におけるシンチレータパネルの変形を抑制することができる。バインダー樹脂のガラス転移温度は、70℃以上がより好ましい。一方、バインダー樹脂のガラス転移温度が120℃以下であると、着色を抑制して輝度をより向上させることができる。バインダー樹脂のガラス転移温度は100℃以下がより好ましい。
ここで、バインダー樹脂のガラス転移温度は、示差熱分析装置(例えば、差動型示差熱天秤TG8120;(株)リガク製)を用いて測定することができる。
バインダー樹脂の溶解パラメーター(SP値)δbは、16〜21(J/cm1/2が好ましい。バインダー樹脂の溶解パラメーターδbが16(J/cm1/2以上であると、有機溶媒に対する溶解性を向上させてペースト中における凝集物の発生を抑制し、膜厚均一性をより向上させることができる。一方、バインダー樹脂の溶解パラメーターδbが21(J/cm1/2以下であると、後述する蛍光体ペーストの塗布工程における支持体のうねりを抑制し、膜厚均一性をより向上させることができる。
ここで、バインダー樹脂のδbは、熱分解ガスクロマトグラフィー(熱脱離装置:TD−100(Markes(株)製、GC/MS装置:“7890A+5975C(Agilent(株)製)およびH−NMR(超電導FT−NMR(日本電子(株)製))によりバインダー樹脂を構成するモノマ構造と各モノマの重合比を特定した後、各モノマの重合体について、濁度滴定法によりδbを測定し、それぞれの測定値と重合比の積を合計することにより算出することができる。
バインダー樹脂としてアクリル樹脂を用いる場合、アクリルモノマーを主な重合成分とする重合体または共重合体が好ましい。アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロピルエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ジエチレングリコールモノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;アクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチル、アクリル酸2−(4−カルボキシフェノキシ)エチル、イタコン酸などの(メタ)アクリル酸類などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でもカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基および/またはエチレン性不飽和結合基を含むものが好ましく、後述する蛍光体ペースト中において、X線蛍光体の分散性をより向上させ、蛍光体層の膜厚均一性、支持体との密着強度をより向上させることができる。
これらのアクリルモノマーと、酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアミド、スチレンなどとの共重合体であってもよい。
アクリル樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2019194580
上記一般式(1)中、Ra1、およびRx1は、それぞれ独立に水素またはメチル基を表し、Ra2は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rx2は、水素の少なくとも一部がヒドロキシル基、カルボキシル基および/またはエポキシ基により置換された炭素数1〜20のアルキル基を表す。lおよびnは、いずれも1以上であり、それぞれの構造単位の比率を示す。ただし、l/nは1〜20である。l個のRa1およびRa2、n個のRx1およびRx2は、それぞれ同じでも異なってもよく、l個の繰り返し単位とn個の繰り返し単位はランダムでもブロックでもよい。Ra2の炭素数は1〜6が好ましく、Rx2の炭素数は1〜8がより好ましい。
前記一般式(1)において、l個の繰り返し単位は、アクリル樹脂の骨格を形成する。n個の繰り返し単位は、ヒドロキシル基、カルボキシル基および/またはエポキシ基が蛍光体層を形成する他の材料や支持体と相互作用することにより、蛍光体層の屈曲耐性や密着強度をより向上させる作用を有する。
前記一般式(1)において、各構造単位の構成モル比率l/nは、1〜20の範囲である。l/nを1以上とすることにより、高温高湿環境下におけるシンチレータパネルの変形を抑制することができる。l/nは3以上がより好ましい。一方、l/nを20以下とすることにより、支持体との密着強度をより向上させることができる。l/nは15以下がより好ましい。
蛍光体層中におけるX線蛍光体とバインダー樹脂の体積比率(X線蛍光体の体積:バインダー樹脂の体積)は、85:15〜97:3が好ましい。X線蛍光体の比率を85以上とすることにより、輝度および鮮鋭度をより向上させることができる。X線蛍光体の体積:バインダー樹脂の体積は、90:10以上がより好ましく、92:8以上がさらに好ましい。一方、X線蛍光体の比率を97以下とすることにより、蛍光体層の膜強度を高めて、蛍光体層のカケや割れを抑制し、屈曲耐性および支持体との密着強度をより向上させることができる。また、蛍光体層形成時のX線蛍光体の分散性を向上させ、膜厚均一性をより向上させることができる。
蛍光体層には、可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤を含むことにより、屈曲による蛍光体層の膜割れを抑制し、屈曲耐性を向上させることができる。可塑剤としては、例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリキシリル、リン酸トリクレジル、“DAIGUARD−1000”(商品名、大八化学工業(株)製)等のリン酸エステル系可塑剤;フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ウンデシル、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリスイソノニル、ピロメリット酸2−エチルヘキシルエステル等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)(D931(商品名、(株)ジェイプラス製))、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、“アデカサイザー”(登録商標)LV−808、PN−160、PN−170、PN−400、PN−446、PN−7160(商品名、(株)ADEKA製)などのアジピン酸エステル系可塑剤;エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジ(2−エチルヘキシル),4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、輝度・鮮鋭度、屈曲耐性をより向上させる観点から、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤が好ましく、経時変化が小さく保管安定性に優れることから、アジピン酸エステル系可塑剤がより好ましく、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)がさらに好ましい。
可塑剤の溶解パラメーターδpは、バインダー樹脂の溶解パラメーターδbとの差Δ(δb−δp)が4.0(J/cm1/2以下となることが好ましく、2.0(J/cm1/2以下がより好ましい。バインダー樹脂と可塑剤の溶解パラメーター差Δ(δb−δp)を4.0以下とすることにより、蛍光体層における各成分を均一に分散させ、ハンドリング時の割れを抑制することができる。
ここで、可塑剤のδpは、日本ゴム協会紙1977年第50巻第10号に開示されている。
可塑剤の凝固点Fpは、−35℃未満が好ましく、−50℃未満がより好ましく、−60℃未満がさらに好ましい。可塑剤の凝固点Fpが−35℃未満であると、高温−低温サイクルにおける劣化を抑制することができる。
ここで、可塑剤のFpは、示差走査熱量計(DSCQ100(TAInstruments(株)製))を用いて測定することができる。可塑剤を80℃において10分間保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、10分間保持し、10℃/分の速度で昇温したときの融解ピーク温度をFpとする。
蛍光体層には、さらに架橋剤を含んでもよい。架橋剤を含むことにより、X線蛍光体とバインダー樹脂との密着力を向上させ、支持体との密着強度をより向上させることができる。架橋剤は、バインダー樹脂の官能基と反応するものが好ましい。バインダー樹脂中にヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基および/またはエチレン性不飽和結合基等を有する場合、これらの基と架橋剤を反応させることにより、3次元架橋構造を形成し、支持体との密着強度をより向上させることができると推定している。
架橋剤による架橋反応は、熱重合反応が好ましい。架橋剤としては、例えば、ジイソシアネート化合物、ジカルボン酸化合物、ジオール化合物、ジアミン、アルコキシシラン化合物等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
蛍光体層には、さらに分散剤を含んでもよい。分散剤の分子量は、1000g/mol未満が好ましい。分散剤としては、カルボキシル基および/またはスルホン基を有するものが好ましい。特に、分子構造の末端にカルボキシル基を有する分散剤が好ましく、後述する蛍光体ペーストにおけるX線蛍光体の沈降を抑制してポットライフを長くすることができることから、蛍光体層の膜厚均一性をより向上させることができる。分子構造の末端にカルボキシル基を有する分散剤としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、オレイン酸等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、分子構造末端にカルボキシル基を有し、常温において液体であるリノレン酸、リノール酸、オレイン酸がより好ましい。
蛍光体層には、さらに重合禁止剤を含んでもよく、保存時の熱安定性を向上させることができる。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン、p,t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
蛍光体層厚みTは、X線の線質に応じて適宜設定することができ、50〜500μmが好ましい。蛍光体層を2層以上の積層構造とする場合、支持体側の蛍光体層厚みTdと、前記蛍光体層上に積層される上層蛍光体層厚みTtの関係は、Tt/(Td+Tt)が0.4〜0.9の範囲であることが好ましく、0.6〜0.9の範囲であることがより好ましい。
高透明接着層としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、アクリル系粘着材等をシート状に加工した光学粘着シート(OCA)を用いると、低温加工が可能となるため、好ましい。光学粘着シートとしては、例えば、“8146−1”、“8146−2”“8171−CL”(スリーエムジャパン社製)、“LUCIACS”(登録商標)CS9861US、CS9861UAS、CS9862UAS(日東電工(株)製)などが挙げられる。
本発明のシンチレータパネルの製造方法としては、例えば、支持体上に、X線蛍光体、バインダー樹脂および必要に応じてその他成分を含む蛍光体ペーストを塗布し、加熱することにより蛍光体層を形成する方法などが挙げられる。
蛍光体ペーストの塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどを用いた塗布方法などが挙げられる。本発明のシンチレータパネルは、蛍光体層が厚膜であること、蛍光体層の膜厚が均一であることから、ロールコーターやダイコーターを用いて塗布することが好ましい。ダイコーターの中でも、スリットダイコーターを用いた塗布方法は、蛍光体層厚みを吐出量により制御可能であり、積層構造の蛍光体層を高精度に塗り分けることができる。
スリットダイコーターを用いて塗布する場合、口金のマニホールド内の蛍光体ペースト滞留時間の均一化と、口金から吐出される蛍光体ペースト流速の安定化は、蛍光体層の外観および膜厚均一性をより向上させるために好ましい。例えば、押し出し圧力、マニホールドの形状、口金のスリット幅、蛍光体ペーストの粘度と表面張力を適宜調整することにより、口金からの吐出量を安定化することができる。蛍光体層の塗布方向に設定される口金のスリット幅W(μm)、蛍光体ペースト乾燥膜の膜厚T(μm)、蛍光体ペースト中の固形分体積分率V(体積%)を用いて下記式(2)で表される係数A(体積%)は50〜200が好ましい。係数Aが50以上であることにより、口金スリット部の摩耗・微細なキズの影響を受けにくく、塗布スジが抑制されるとともに、膜厚均一性がより向上する。係数Aはより好ましくは60以上であり、さらに好ましくは70以上である。係数Aが200以下であることにより、口金から蛍光体ペーストが垂れ出ることを抑制できるとともに、均一に押し出し圧力をかけることができるため、膜厚均一性がより向上する。係数Aはより好ましくは150以下であり、さらに好ましくは120以下である。
A=W×V/T ・・・式(2)。
蛍光体ペーストは、蛍光体層を形成する成分として先に説明した成分に加えて、有機溶媒を含んでも構わない。有機溶媒は、バインダー樹脂および必要に応じて含まれる可塑剤や分散剤などに対して、良溶媒であり、水素結合力が大きいことが好ましい。そのような有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テルピネオール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフラン、ジヒドロターピネオール、γ−ブチロラクトン、ジヒドロターピニルアセテート、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
有機溶媒の溶解パラメーターδsは、バインダー樹脂の溶解パラメーターδbとの差Δ(δb−δs)が−4.0〜1.0(J/cm1/2の範囲となることが好ましい。バインダー樹脂と有機溶剤の溶解パラメーター差Δ(δb−δs)が−4.0(J/cm1/2以上であると、蛍光体ペースト中のX線蛍光体およびバインダー樹脂の分散性を向上させることができる。Δ(δb−δs)は、−2.0(J/cm1/2以上がより好ましい。一方、バインダー樹脂と有機溶剤の溶解パラメーター差Δ(δb−δs)が1.0(J/cm1/2以下であると、蛍光体ペースト中のX線蛍光体およびバインダー樹脂の偏在による塗布スジの発生をより抑制し、膜厚均一性をより向上させることができる。Δ(δb−δs)は、0(J/cm1/2以下がより好ましい。
有機溶媒の表面張力は、20〜35mN/mが好ましい。有機溶媒の表面張力が20mN/m以上であると、スリットダイコートにおけるペースト垂れを抑制することができる。有機溶媒の表面張力は、25mN/m以上がより好ましい。一方、有機溶媒の表面張力が35mN/m以下であると、支持体表面において蛍光体ペーストが濡れ広がりやすく、膜厚均一性をより向上させることができる。
ここで、有機溶媒の溶解パラメーターδsおよび表面張力は、「溶剤ハンドブック」(講談社サイエンティフィク)や「Polymer Handbook」(Wiley−International)に開示されている。
蛍光体ペーストの25℃における粘度は、1〜100Pa・sが好ましい。スリットダイコーターを用いて塗布する場合には、2〜30Pa・sが好ましい。
蛍光体ペースト塗布膜を加熱乾燥することにより蛍光体層を形成することが好ましい。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、IR(赤外線)乾燥などが挙げられる。蛍光体ペースト塗布膜の乾燥時、蛍光体ペーストは加熱されて、蛍光体ペースト粘度が低減する。そのため、蛍光体ペースト中で相対的に高比重材料である蛍光体が沈降し、蛍光体層中の蛍光体充填密度を高めることができる。蛍光体ペースト塗布膜の加熱乾燥方法は、蛍光体ペースト塗布膜中の残存有機溶媒量を40%より多くする第一工程、蛍光体ペースト塗布膜中の残存有機溶媒量を5%未満にする第二工程を有することが好ましい。第一工程における加熱温度は35〜80℃が好ましく、加熱時間は10〜30分間が好ましい。第二工程における加熱温度は35〜120℃が好ましく、加熱時間は120〜800分間が好ましい。
本発明のシンチレータパネルを用いた放射線検出器の製造方法について、図1の構成を例に説明する。フォトダイオード基板3とシンチレータパネル2を、高透明接着層6を介して貼り合わせることが好ましい。高透明接着層6をシンチレータパネル2側に形成してもよいし、フォトダイオード基板3側に形成してもよい。以下に、前者の例についてより詳しく説明する。まず、前述の方法により形成した蛍光体層5表面に、高透明接着層6を形成する。例えば、高透明接着層6として光学粘着シートを用いる場合、離型フィルムを有する場合は一方の面の離型フィルムを剥離し、露出した光学粘着シートを蛍光体層5表面に貼り合わせることが好ましい。次いで、他方の離型フィルムを剥離し、フォトダイオード基板3に貼り合わせることにより、放射線検出器1を得ることができる。必要に応じて、加熱加圧してもよいが、シンチレータパネル2とフォトダイオード基板3の熱収縮や支持体4の変形、残存有機溶媒などの揮発成分による気泡発生などを抑制して歩留まりを向上させる観点から、加熱温度は120℃以下が好ましい。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
まず、各実施例および比較例において用いた材料を以下に示す。なお、各材料の特性は以下の方法により測定した。
(X線蛍光体の平均粒子径)
粒度分布測定装置(MT3300;日機装(株)製)の水を満たした試料室にX線蛍光体を投入し、300秒間超音波処理を行った後に粒度分布を測定し、累積分布に対して50%となる粒子径を平均粒子径とした。
(X線蛍光体の比重)
「蛍光体ハンドブック」(蛍光体同学会)記載の値を用いた。
(バインダー樹脂のガラス転移温度)
バインダー樹脂を約10mg秤量し、アルミニウム製パンおよびパンカバーを用いて、示差熱分析装置(差動型示差熱天秤TG8120;(株)リガク製)により、窒素雰囲気中20℃から10℃/分の速度で昇温したときのガラス転移温度を測定した。
(バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn))
バインダー樹脂2.5mgをテトラヒドロフラン5mLに溶解した樹脂溶液について、ゲル浸透クロマトグラフGPC(GPC−22)と示差屈折率検出器RI(東ソー(株)製、RI−8020型)を用いて、単分散ポリスチレン(東ソー(株)製)を標準物質としてMwおよびMnを測定した。GPCのカラムは、TSKgel GMHxl((東ソー(株)製)2本と、G2500Hxl(東ソー(株)製)1本とを連結したものを用い、テトラヒドロフラン溶媒を流速1.0mL/分で通した。
(バインダー樹脂のSP値)
熱分解ガスクロマトグラフィー(熱脱離装置;TD−100(Markes(株)製、GC/MS装置;“7890A;5975C(Agilent(株)製))を用いて、バインダー樹脂を500℃に昇温した後、キャピラリー分離カラムを介して質量分析を行い、バインダー樹脂を構成するモノマ構造を同定した。また、バインダー樹脂の重クロロホルム溶液について、H−NMR(超電動FT−NMR(日本電子(株)製))測定により、バインダー樹脂を構成するモノマの構成比率を算出した。
各モノマの重合体について、濁度滴定法によりδbを測定し、それぞれの測定値と重合比の積を合計することにより、バインダー樹脂のSP値を算出した。
(可塑剤のFp)
示差走査熱量計(DSCQ100(TAInstruments(株)製))を用いて、可塑剤を80℃において10分間保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、10分間保持し、10℃/分の速度で昇温したときの融解ピーク温度をFpとした。
(蛍光体ペーストの原料)
X線蛍光体粉末1:GdS:Tb((株)日亜化学製:平均粒子径10μm、比重7.3g/cm
X線蛍光体粉末2:GdS:Tb((株)日亜化学製;平均粒子径7μm、比重7.3g/cm
X線蛍光体粉末3:GdS:Tb((株)日亜化学製;平均粒子径4μm、比重7.3g/cm))
バインダー樹脂A1〜A10、B−1〜B−3:表1〜2に示すアクリル樹脂
ポリビニルブチラール樹脂:“エスレック”(登録商標)SV−05(積水化学工業(株)製:重量平均分子量11万、ガラス転移温度71℃、比重1.1g/cm
ポリエステル樹脂:“バイロン”(登録商標)630(東洋紡績(株)製:重量平均分子量2.3万、ガラス転移温度7℃、比重1.3g/cm
ポリウレタン樹脂:“ニッポラン”(登録商標)2304(東ソー(株)製:重量平均分子量2.5万、ガラス転移温度−23℃、比重1.2g/cm
可塑剤1:フタル酸ジブチル(凝固点−35℃、SP値19.1(J/cm1/2、比重1.05g/cm
可塑剤2:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(凝固点−50℃、SP値18.2(J/cm1/2、比重0.986g/cm
可塑剤3:アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(凝固点−70℃、SP値17.4(cal/cm1/2、比重0.927g/cm
金属化合物粒子:酸化ケイ素−酸化チタン複合粒子“オプトレイク”(登録商標)TR−527(触媒化成工業(株)製;平均粒子径15nm、屈折率2.50、酸化チタン粒子20質量%)
分散剤:オレイン酸(分子量282.5g/mol、比重0.985g/cm
有機溶媒1〜5:表3に示す有機溶媒。
Figure 2019194580
Figure 2019194580
Figure 2019194580
(グラフト化粒子の作製)
40gのメチルトリメトキシシラン、20gのフェニルトリメトキシシラン、20gのジメチルジメトキシシラン、20g(固形分)の金属化合物粒子:酸化ケイ素−酸化チタン複合粒子(“オプトレイク”(登録商標)TR−527(触媒化成工業(株)製;平均粒子径15nm、屈折率2.50、酸化チタン粒子20質量%)および230gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを反応容器に入れて撹拌しながら、1質量%リン酸水溶液30gを、反応温度が40℃を超えないように滴下した。滴下終了後、反応容器に蒸留装置を取り付け、得られた溶液をバス温105℃で2.5時間加熱撹拌して、加水分解により生成したメタノールを留去しつつ反応させた。その後、さらにバス温115℃で2時間加熱撹拌してから室温まで冷却し、グラフト化されている金属化合物粒子の溶液(グラフト化金属化合物粒子、固形分30質量%)を得た。
(蛍光体ペーストの作製)
表4〜6に示す各原料を、表4〜6に示す調合比率となるように混合し、遊星式撹拌脱泡装置(“マゼルスター”(登録商標)KK−400;倉敷紡績(株)製)を用いて200rpmで30分間撹拌脱泡して、蛍光体ペーストP−1〜P−16、P−21〜P−24を得た。グラフト化粒子を配合したP1〜13、15〜16、22〜24は、X線蛍光体表面をグラフト化粒子が被覆していた。
また、X線蛍光体粉末1 84.8gと、ポリエステル樹脂 2.9gとを、12.3gの有機溶媒5に添加し、プロペラミキサーによって分散させて、蛍光体ペーストP−25を調製した。
また、X線蛍光体粉末1 84.7gと、ポリウレタン樹脂 2.4gと、アクリル系レベリング剤(楠本化成(株)製:“ディスパロン”(登録商標)1980−50)0.85gとを、12.05gの有機溶媒5に添加し、プロペラミキサーによって分散させて、蛍光体ペーストP2−6を調製した。
ただし、前記方法により得られた蛍光体ペーストの粘度は、デジタル演算機能付きB型粘度計(ブルックフィールド製、DV−II+Pro)を用いて、温度25℃、回転数3rpmの条件で測定した。
(支持体1〜2の作製)
支持体の内部層を構成する成分として、共重合化されたポリエステル樹脂と、共重合化されたポリエステル樹脂とは非相溶である樹脂からなる有機粒子との混合物からなる内部層用マスターペレットを使用した。また、支持体の表面層を構成する成分として、共重合化されたポリエステル樹脂100質量部に、酸化チタン(平均粒子径0.3μm)を18質量部加えた表面層用マスターペレットを使用した。
これらのペレットをそれぞれ280℃に加熱された2台の押出機に供給し、ダイにより、シート状に成形した。さらに、このシートを表面温度20℃の冷却ドラムにより冷却固化した未延伸フィルムを、90℃に加熱しながら長手方向に2.9倍延伸し、25℃のロール群により冷却した。続いて、支持体の両端をクリップで保持しながらテンターに導き、120℃に加熱された雰囲気中、長手に垂直な方向(幅方向)に3.7倍延伸した。その後、テンター内において190℃で熱固定を行い、室温まで冷却して、二軸延伸されたロール状支持体として巻き取った。
接着層を構成する成分として、テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール(25/25/25/25mol%)からなる共重合ポリエステル樹脂からなる塗液(接着層1)、前記樹脂に酸化チタン粒子(平均粒子径0.24μm)を15質量%加えた塗液(接着層2)を、それぞれ作製した。前記方法により得られたロール状支持体に、マイクログラビア版・キスコートにより接着層用の塗液を塗布し、温度100℃の条件で乾燥することにより、接着層を形成した。接着層を形成したロール状支持体を500mm角に裁断し、以下の支持体1および2を得た。
支持体1:内部層(空隙率60%、厚み220μm、有機粒子数20個/100μm)の両面に表面層(空隙率0.1%、厚み10μm)を積層した構造を有し、表面層の片側に厚み3μmの接着層1を有する白色ポリエステル支持体。波長550nmにおける反射率97%。
支持体2:内部層(空隙率65%、厚み220μm、有機粒子数30個/100μm)の両面に表面層(空隙率0.1%、厚み10μm)を積層した構造を有し、表面層の片側に厚み4μmの接着層2を有する白色ポリエステル支持体。波長550nm反射率98%。
ただし、前記方法により得られた支持体の表面層および内部層の空隙率は、以下の方法により測定した。まず、得られた支持体の断面を、ミクロトームを用いて研磨して精密に断面を出した後に、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、表面層は倍率5000倍(視野:25μm×15μm)、内部層は倍率2000倍(視野:40μm×60μm)の条件で観察した。空隙と、それ以外の材料由来の部分とを2階調に画像変換し、観察領域に認められる空隙部分の表面層および内部層の断面積に占める面積割合を算出した。表面層、内部層で各10箇所の面積割合を算出し、その数平均値を算出した。
また、前記方法により得られた支持体の表面層および内部層の厚みは、得られた支持体の断面を、ミクロトームを用いて研磨して精密に断面を出した後に、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて、表面層は倍率2000倍(視野:40μm×60μm)で、内部層は倍率250倍(視野:500μm×300μm)で観察し、支持体面内の10箇所の厚みを算出し、その数平均値を算出した。
また、前記方法により得られた支持体の内部層に含まれる有機粒子の個数は、以下の方法により測定した。まず。得られた支持体の断面を、ミクロトームを用いて研磨して精密に断面を出した後に、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製電界放出形走査電子顕微鏡「S−4800」)を用いて倍率2000倍(視野:40μm×60μm)の条件で観察した。得られた画像中に含まれる、球状または楕円状である粒径0.2μm以上の有機粒子の個数を計数した。
次に、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
1.シンチレータパネルの輝度および鮮鋭性
各実施例および比較例により得られたシンチレータパネルを、高透明光学接着層(8171−CL(スリーエムジャパン社製))を介してフォトダイオード基板(FPD、PaxScan2520V(Varian社製))にセットして、放射線検出器を作製した。国際電気標準会議(IEC)で定める規格IEC62220−1において、デジタル画像システムの画質を評価する線質RQA5に準拠した管電圧70kVpの放射線を、シンチレータパネルの基板側から照射して、シンチレータパネルの輝度、鮮鋭度をFPDで検出した。輝度は、入射線量と画像のデジタル値のグラフの傾きから算出した。また、鮮鋭度はエッジ法により算出し、2cycles/mmの値を用いた。実施例1の輝度、鮮鋭度をそれぞれ100%として、相対比較を行った。輝度については、相対比較による輝度が100%を超えるものを良、105%以上のものを優良、100%未満のものを不良と評価した。鮮鋭性については、相対比較による鮮鋭度が100%を超えるものを良、105%以上のものを優良、100%未満のものを不良と評価した。
2.シンチレータパネルの画質
前記シンチレータパネルの輝度および鮮鋭度の評価結果から、総合的な画質評価として、輝度・鮮鋭性がともに優良であるものをA(Excellent)、輝度・鮮鋭度のいずれも不良でなく、いずれかが良であるものをB(Good)、輝度・鮮鋭度のいずれかが不良であるものをC(Poor)と評価した。
3.蛍光体層の支持体との密着強度
各実施例および比較例により得られたシンチレータパネルの蛍光体層に粘着力5N/25mmの粘着テープを貼りつけ、剥離角90°に保った状態でテープを剥離し、蛍光体層の欠けや割れ、支持体からの剥離の有無を観察した。この試験を50回繰り返し、蛍光体層に欠け・割れや剥離が認められない試験回数の最大値を密着強度とした。20回剥離後にも蛍光体層に欠け・割れや剥離が認められないものをA(Excellent)、20回剥離までに蛍光体層の剥離が認められないものをB(Good)、5回までに蛍光体層の剥離が認められるものをC(Poor)と評価した。
4.蛍光体層の屈曲耐性
各実施例および比較例により得られたシンチレータパネルを、50℃で1時間加熱した後、−20℃で1時間冷却し、常温に戻す温度サイクルにより処理した後、50mmロール径を有するロールに押し付けた状態で、蛍光体層面にブラックライトを照射して、蛍光体層の亀裂・欠け・割れの有無を観察した。このサイクル試験を50回繰り返し、蛍光体層に亀裂・欠け・割れが認められないサイクル数の最大値を密着強度とした。20サイクル後にも蛍光体層に亀裂・欠け・割れが認められないものをかったものをA(Excellent)、20サイクルまでに蛍光体層に亀裂・欠け・割れが認められないものをB(Good)、5サイクルまでに蛍光体層に亀裂・欠け・割れが認められるものをC(Poor)と評価した。
5.蛍光体層の膜強度
前記蛍光体層の支持体との密着強度および屈曲耐性の評価結果から、総合的な膜強度評価として、密着強度・屈曲耐性がともに優良であるものをA(Excellent)、密着強度・屈曲耐性のいずれも不良でなく、いずれかが良であるものをB(Good)、密着強度・屈曲耐性のいずれかが不良であるものをC(Poor)と評価した。
6.蛍光体層の塗布スジ・ハジキ
各実施例および比較例により得られたシンチレータパネルの蛍光体層を目視観察し、塗布スジやハジキの有無を観察した。
7.蛍光体層の膜厚均一性
各実施例および比較例により得られたシンチレータパネルの面内9点について、膜厚計(DIGIMATIC INDICATOR(“534−411−H−1”MITUTOYO(株)製))を用いて、シンチレータパネルの厚みを測定し、支持体厚みとの差から、各点における蛍光体層の膜厚を算出し、その数平均値を算出した。測定された各9点の蛍光体層の膜厚と数平均値との差分の絶対値が最も大きくなる値(膜厚差)を、蛍光体層の膜厚(数平均値)で除した値の百分率を、蛍光体層の膜厚変動として算出した。
蛍光体層の膜厚変動が15%以下であるものをA(Excellent)、蛍光体層の膜厚変動が15%を超えて25%以下であるものをB(Good)、蛍光体層の膜厚変動が25%を超えるものをC(Poor)と評価した。
8.蛍光体層の外観
前記蛍光体層の膜厚均一性および塗布スジ・ハジキの評価結果から、総合的な外観評価として、塗布スジ・ハジキが認められず、蛍光体層の膜厚変動が15%以下であるものをA(Excellent)、塗布スジ・ハジキが認められず、蛍光体層の膜厚変動が15%を超えて25%以下であるものをB(Good)、塗布スジやハジキが認められるか、蛍光体層の膜厚変動が25%を超えるものをC(Poor)と評価した。
9.総合評価
前記シンチレータパネルおよび蛍光体層の評価結果から、総合評価として、シンチレータパネルの画質特性、膜強度および外観の各評価のいずれもがA(Excellent)であるものをA(Excellent)、画質特性・膜強度・外観のいずれもC(Poor)でなく、いずれかがB(Good)であるものをB(Good)、画質特性・膜強度・外観のいずれかがC(Poor)であるものをC(Poor)と評価した。
(実施例1)
前記支持体1上に、前記方法により得られた蛍光体ペーストP−1を、スリットダイコート法によりスリット幅を360μm、乾燥後の蛍光体層厚みが200μmとなるように塗布し、熱風乾燥機を用いて、温度70℃で180分間加熱して蛍光体層を形成し、シンチレータパネルを得た。熱風乾燥機で乾燥30分後の有機溶媒残存量は50%であった。
(実施例2〜14、比較例1〜6)
蛍光体ペーストP−1にかえて表4〜6に記載の蛍光体ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータパネルを得た。
(実施例15)
前記支持体1上に、前記方法により得られた蛍光体ペーストP−15を、スリットダイコート法によりスリット幅を90μm、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布した。その後、蛍光体ペーストP−15塗布膜上に、前記方法により得られた蛍光体ペーストP−11を、スリットダイコート法によりスリット幅を300μm、乾燥後の厚みが150μmとなるように塗布し、熱風乾燥機を用いて、温度70℃で180分間加熱して2層構造の蛍光体層を形成し、シンチレータパネルを得た。熱風乾燥機で乾燥30分後の有機溶媒残存量は40%であった。
(実施例16)
支持体1にかえて支持体2を用いたこと以外は実施例15と同様にしてシンチレータパネルを得た。
(実施例17)
蛍光体ペーストP−15にかえて蛍光体ペーストP−16を用いたこと以外は実施例16と同様にしてシンチレータパネルを得た。
(実施例18)
支持体1を2枚準備し、1枚目の支持体1の易接着層を形成していない側の表面に、貼り合わせ装置HAL−650S(三共(株)製)を用いて光学粘着シート(8171−CL)を貼り付け後、光学粘着シート面と、もう1枚の支持体1の易接着層を形成していない側を貼り合わせることにより支持体積層体3を得た。支持体1にかえて支持体積層体3を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてシンチレータパネルを得た。
(実施例19)
支持体1と支持体2を準備し、支持体1の易接着層を形成していない側の表面に、貼り合わせ装置HAL−650S(三共(株)製)を用いて光学粘着シート(8171−CL)を貼り付け後、光学粘着シート面と、支持体2の易接着層を形成していない側を貼り合わせることにより支持体積層体4を得た。支持体1にかえて支持体積層体4を用い、支持体積層体4の支持体1側の面に蛍光体層を形成したこと以外は、実施例11と同様にしてシンチレータパネルを得た。
各実施例および比較例の構成と評価結果を表4〜6に示す。
Figure 2019194580
Figure 2019194580
Figure 2019194580
1 放射線検出器
2 シンチレータパネル
3 フォトダイオード基板
4 支持体
4A 支持体積層体
5 蛍光体層
6 高透明接着層
7 光電変換層および出力層
8 基板
9 電源部
10 表面層
11 内部層
12 表面層
13 易接着層
14 粘着層
15 裏打ち支持体

Claims (6)

  1. 支持体上に、X線蛍光体とバインダー樹脂を含む蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、前記バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)が700,000〜2,000,000の範囲であるシンチレータパネル。
  2. 前記蛍光体層中におけるX線蛍光体とバインダー樹脂の体積比(X線蛍光体:バインダー樹脂)が85:15〜97:3である請求項1記載のシンチレータパネル。
  3. 前記バインダー樹脂が、下記一般式(1)で表される構造を有するアクリル樹脂を含む請求項1または2記載のシンチレータパネル。
    Figure 2019194580
    (上記一般式(1)中、Ra1およびRx1は、それぞれ独立に水素またはメチル基を表し、Ra2は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rx2は、水素の少なくとも一部がヒドロキシル基、カルボキシル基および/またはエポキシ基により置換された炭素数1〜20のアルキル基を表す。lおよびnは、いずれも1以上の整数を表す。ただし、l/nは1〜20である。l個のRa1およびRa2、n個のRx1およびRx2は、それぞれ同じでも異なってもよい。)
  4. 前記蛍光体層中に、アジピン酸エステル系可塑剤を含む請求項1〜3のいずれか記載のシンチレータパネル。
  5. 前記蛍光体層中に、グラフト化粒子を含む請求項1〜4のいずれか記載のシンチレータパネル。
  6. 前記X線蛍光体が、表面にヒドロキシル基および/またはチオール基を有する請求項1〜5のいずれか記載のシンチレータパネル。
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