JP2004333668A - 蓄光部材及び蓄光部材を備えた標示具 - Google Patents
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Abstract
【課題】輝度が高く残光時間が長い蓄光部材、及び当該蓄光部材を備えた標示具を提供する。
【解決手段】透明樹脂11内に粒状の蓄光体10が混合状態で備えられた蓄光部材1であって、前記蓄光体10は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体10が全蓄光体10に対し80体積%〜100体積%占有し、蓄光部材1全体に対し全蓄光体10が60体積%〜95体積%を占有する蓄光部材1とする。また、当該蓄光部材1にレンズ体2を備え標示具とする。
【選択図】 図1
【解決手段】透明樹脂11内に粒状の蓄光体10が混合状態で備えられた蓄光部材1であって、前記蓄光体10は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体10が全蓄光体10に対し80体積%〜100体積%占有し、蓄光部材1全体に対し全蓄光体10が60体積%〜95体積%を占有する蓄光部材1とする。また、当該蓄光部材1にレンズ体2を備え標示具とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、太陽などの自然光や照明などの人工光を蓄え、夜間などに自然発光する蓄光体を備えた蓄光部材及び当該蓄光部材を備えた標示具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、光が照射されるとその光をエネルギーとして蓄え、その蓄えたエネルギーを徐々に光として放射する蓄光体を備えた製品が広く使用されるに至っている。例えば、微粉末の蓄光体を顔料として分散させた塗料が文字盤や針に塗布された時計や、粉末の蓄光体を樹脂中に分散させ、当該樹脂を成型して得られる釣り用の浮きやアクセサリーなどが実用化されている。
【0003】
また、自動車の運転手や歩行者などに、夜間の道路と歩道の境界や歩道と側溝の境界などを視認させるための蓄光部材や当該蓄光部材を備えた標示具が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
登録実用新案第3032931号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2003−73547号公報
【0006】
【特許文献3】
特開平11−288233号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、蓄光体が分散された従来の塗料やプラスチック成型品は、輝度や残光時間などの発光性能が悪く、時計や釣り用の浮きなどとしては許容できる範囲の性能ではあるものの、例えば日没後から夜明け前までの長時間、遠方から道路と歩道との境界などを視認させる必要のある道路用の標示具などとしては発光性能が不十分であり、実用化されていないのが現状である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは従来用いられている蓄光体が粉末や粒径の小さい蓄光体であることに着目し、蓄光体の粒径が大きくなるにつれて輝度や残光時間などの発光性能が向上することを見出した。更に、当該粒径の大きな蓄光体の配置状態を工夫することで、輝度や残光時間が向上し、道路用の標示具などにも十分に適用できうることを見出すに至り本願発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる蓄光部材は、透明樹脂内に粒状の蓄光体が混合状態で備えられた蓄光部材であって、前記蓄光体は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し80体積%〜100体積%占有し、蓄光部材全体に対し全蓄光体が60体積%〜95体積%を占有していることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成を採用することにより、外部から蓄光部材に入射した光は直接蓄光体に照射されるばかりでなく、蓄光体表面で反射を繰り返し粒径の大きな蓄光体が作る間隙を通り、他の蓄光体の陰に隠れている蓄光体にも照射されることとなる。従って、蓄光部材全体として多くの光を蓄えることができる。
【0011】
一方、夜間など外部から光が入射しない状態においては、前述のように蓄光部材内の多くの蓄光体が蓄光しているため多くの蓄光体が発光する。そして、蓄光部材外部から臨める蓄光体の発光を外部から視認できるばかりでなく、いわゆる他の蓄光体の陰に位置する蓄光体の発光も他の蓄光体表面で反射を繰り返し蓄光体の間隙を通過して蓄光部材外部に放射される。従って、従来の蓄光部材に比べて高い輝度を得ることができる。
【0012】
更に、蓄光体個々の輝度が経時的に低下した場合であっても、個々の蓄光体の発光が重畳されて、蓄光部材全体としては一定水準以上の輝度を維持することができるため、蓄光部材全体としての残光時間を長くすることが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかる蓄光部材は、透明樹脂内に粒状の蓄光体が混合状態で備えられた蓄光部材であって、前記蓄光体は、710μm以上、1600μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し20体積%〜40体積%占有し、蓄光部材全体に対し全蓄光体が60体積%〜95体積%を占有していることを特徴とするものである。
【0014】
上記構成を採用することにより、粒径の大きな蓄光体の間隙に粒径が中程度の蓄光体が配置され、蓄光部材全体として良好な蓄光体の配置状態を得ることができる。つまり、蓄光部材を外部から見た場合、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋める状態となるため、外部からより多くの蓄光体を臨むことができることとなり、蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0015】
また、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋めるといえども、粒径の小さい蓄光体を配置する場合に比べると蓄光体同士の間隙は大きい。従って、蓄光体表面の反射などにより外部から照射される光が陰の部分に存在する蓄光体にも十分に到達することができ、逆に、陰の部分に存在する蓄光体の発光を外部に放射することもできるため蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0016】
また、蓄光部材全体の輝度が高くなるため蓄光部材全体として残光時間もより長くすることが可能となる。
【0017】
また、本願発明にかかる蓄光部材は、前記蓄光部材を構成する透明樹脂としてシリコン樹脂を採用するのが好ましい。
【0018】
当該シリコン樹脂は、外部から蓄光部材に照射される光が蓄光体に到達する障害となりにくく、また、蓄光体自体の発光を外部に放射する場合の障害になりにくい。
【0019】
また、蓄光部材としての柔軟性を確保できるとともに蓄光体や他の部材との接着性も良好である。また、耐候性が高く変色しにくいため長期間蓄光部材としての能力を維持することが可能となる。
【0020】
さらに、本願発明にかかる蓄光部材は、前記蓄光部材の表面に吸盤状の凹部が設けられてなるものでも良い。
【0021】
当該構成を採用することにより、別途吸盤を設けることなく蓄光部材自体が吸盤効果を有することになり、蓄光部材を一定の条件を備えた場所、例えばガラス面などの鏡面部分に対して取り付け取り外しが任意に可能となる。
【0022】
また、本発明にかかる蓄光部材は、粒状の蓄光体と、当該蓄光体が封入される収容室を有する透明の保護部材とを備えてなる蓄光部材であって、前記蓄光体は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し80体積%〜100体積%占有し、前記収容室の体積に対して全蓄光体が60体積%〜98体積%を占有した状態で保護部材の収容室に封入されてなることを特徴とするものである。
【0023】
上記構成を採用することにより、外部から蓄光部材に入射した光は直接蓄光体に照射されるばかりでなく、蓄光体表面で反射を繰り返し粒径の大きな蓄光体が作る間隙を通り、他の蓄光体の陰に隠れている蓄光体にも照射されることとなる。従って、蓄光部材全体として多くの光を蓄えることができる。
【0024】
一方、夜間など外部から光が入射しない状態においては、前述のように蓄光部材内の多くの蓄光体が蓄光しているため多くの蓄光体が発光する。そして、蓄光部材外部から臨める蓄光体の発光を外部から視認できるばかりでなく、いわゆる他の蓄光体の陰に位置する蓄光体の発光も他の蓄光体表面で反射を繰り返し蓄光体の間隙を通過して蓄光部材外部に放射される。従って、従来の蓄光部材に比べて高い輝度を得ることができる。
【0025】
更に、蓄光体個々の輝度が経時的に低下した場合であっても、個々の蓄光体の発光が重畳されて、蓄光部材全体としては一定水準以上の輝度を維持することができるため、蓄光部材全体としての残光時間を長くすることが可能となる。
【0026】
更に、当該構成では蓄光体同士は樹脂で固定されていないため、外部からの振動により蓄光体が収容室の中で回転や移動することができる。従って、蓄光体が保護部材内部に封入された状態であっても、外部からの光が照射される部分を変化させることができる。また、蓄光体相互の摺擦により劣化した蓄光体の表面が削り落とされて新しい表面を表出させることも可能となる。
【0027】
また、本発明にかかる蓄光部材は、粒状の蓄光体と、当該蓄光体が封入される収容室を有する透明の保護部材とを備えてなる蓄光部材であって、前記蓄光体は、710μm以上、1600μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し20体積%〜40体積%占有し、収容室の体積に対して全蓄光体が60体積%〜98体積%を占有した状態で保護部材の収容室に封入されてなることを特徴とするものである。
【0028】
上記構成を採用することにより、粒径の大きな蓄光体の間隙に粒径が中程度の蓄光体が配置され、蓄光部材全体として良好な蓄光体の配置状態を得ることができる。つまり、蓄光部材を外部から見た場合、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋める状態となるため、外部からより多くの蓄光体を臨むことができることとなり、蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0029】
また、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋めるといえども、従来のような粒径の小さい蓄光体を配置する場合に比べると蓄光体同士の間隙は大きい。従って、蓄光体表面の反射などにより外部から照射される光が陰の部分に存在する蓄光体にも十分に到達することができ、逆に、陰の部分に存在する蓄光体の発光を外部に放射することもできるため蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0030】
また、蓄光部材全体の輝度が高くなるため蓄光部材全体として残光時間もより長くすることが可能となる。
【0031】
更に、当該構成では蓄光体同士は樹脂で固定されていないため、外部からの振動により蓄光体が収容室の中で回転や移動することができる。従って、蓄光体が保護部材内部に封入された状態であっても、外部からの光が照射される部分を変化させることができる。また、蓄光体相互の摺擦により劣化した蓄光体の表面が削り落とされて新しい表面を表出させることも可能となる。
【0032】
また、本発明に係る蓄光部材を備えた標示具は、上記蓄光部材を備え、当該蓄光部材に外部から照射される光を導入し、かつ、蓄光部材からの光を外部に放射しうるレンズ効果を有するレンズ体を備えてなることを特徴とするものである。
【0033】
上記構成を採用することにより、広い範囲や多様な角度からレンズ体に照射される光を蓄光体に導入することができるため、より多くの光を蓄光体で蓄えることが可能となる。
【0034】
さらに、蓄光体の発光がレンズ体を通過して広い範囲に光を放射させることができるため、広い範囲で当該標示具を視認することができる。さらに、蓄光部材の輝度が高いため、レンズ体で蓄光部材からの光を発散させたとしても、十分に遠方から当該標示具を視認することができる。
【0035】
また、本発明に係る蓄光部材を備えた標示具は、レンズ体の表面に磨りガラス状の凹凸が設けられてなることを特徴とするものである。
【0036】
上記構成を採用することにより、レンズ体に照射された蓄光体の発光はレンズ体表面で乱反射し、あたかもレンズ体自体が発光しているように視認させることが可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施形態を説明する。
【0038】
図1〜図3はこの発明の一実施形態に係る蓄光部材(1)を備えた標示具の概略を示す図面である。
【0039】
図1に示すAは標示具であり、図中の(1)は蓄光部材、(2)はレンズ体である。
【0040】
蓄光部材(1)は光をエネルギーとして蓄え、当該蓄えたエネルギーを徐々に光として放射することのできる蓄光体(10)と、当該蓄光体(10)を所定の配置状態で維持し空気中の水分などで蓄光体(10)が劣化するのを防止しうる透明樹脂(11)で構成されている。
【0041】
前記蓄光体(10)の材質はアルミン酸塩からなる蓄光性機能セラミックである。また、当該蓄光体(10)は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し80体積%〜100体積%占有するものである。
【0042】
蓄光体(10)の粒径が100μm未満の蓄光体(10)は、多段階の破砕によってクラックや傷が多数発生し所望の輝度や残光時間が得られないため、100μm未満の蓄光体(10)を多く含み、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し80体積%〜100体積%占有しない場合は蓄光部材(1)全体として必要な発光性能を得ることができない。
【0043】
一方、粒径が3000μmより大きい蓄光体(10)が多く含まれる場合は、当該蓄光体(10)同士の間隙が大きくなりすぎて蓄光部材(1)全体の輝度が低下する。また、3000μm以下の粒径の蓄光体(10)と比べても、輝度や残光時間に人間の感覚的な面での優位性が認められず、蓄光部材(1)全体としての輝度の向上に寄与することもない。
【0044】
また、上記範囲の粒径の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し80体積%未満であれば、蓄光部材(1)全体として所望する輝度や残光時間が得られない。また、理想的には100体積%とするのが良いが、蓄光体(10)は個々の形状に統一性がなく、異形状であるため、分級には限度があると思われる。
【0045】
なお、蓄光体(10)の粒径は200μm〜2000μmの範囲が好ましく、さらに300μm〜1500μmの範囲が好適である
また、蓄光体(10)は、710μm以上、1600μm以下の粒径の比較的粒径の大きな蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の比較的粒径が中程度の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し20体積%〜40体積%占有するものでも良い。
【0046】
粒径が1600μmより大きな蓄光体(10)が多く含まれている場合、蓄光体(10)同士の間隙が大きくなりすぎ、当該間隙に配置される粒径が中程度の蓄光体(10)により好適な蓄光体(10)の配置状態を確保することができなくなる場合がある。また、粒径が710μm未満になるともはや粒径の大きな蓄光体(10)ではなくなる。
【0047】
なお、粒径の大きな蓄光体(10)の粒径としては850μm〜1500μmの範囲が好ましく、さらに900μm〜1300μmの範囲が好適である。
【0048】
一方、粒径が450μm未満の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対して多く含まれている場合、粒径の大きな蓄光体(10)の間隙を他の蓄光体(10)で充填しづらくなり好適な蓄光体(10)の配置状態を確保することができなくなる場合がある。また、粒径が中程度の蓄光体(10)の粒径が710μm以上であればもはや粒径が中程度の蓄光体(10)ではない。
【0049】
なお、粒径が中程度の蓄光体(10)しては500μm〜650μmの範囲が好ましく、さらに550μm〜600μmの範囲が好適である。
【0050】
蓄光部材(1)を構成する透明樹脂(11)としては、蓄光体(10)を一定の配置状態に維持することができ、蓄光部材(1)外部からの光が蓄光体(10)に照射されるのを妨げることなく、また、蓄光体(10)自体の発光を妨げることなく蓄光部材(1)外部に放射しうるものであればよい。具体的には透明のシリコン樹脂が好適である。
【0051】
蓄光部材(1)は、蓄光体(10)と透明樹脂(11)が混合状態となさて一定の形状を有しかつ柔軟性を有するものである。また、蓄光部材(1)全体に対して蓄光体(10)は60体積%〜95体積%を占めるものとなされている。前記蓄光体(10)の占有率が60体積%未満の場合、蓄光体(10)相互の間隔が広くなりすぎて、蓄光体(10)全体としての輝度を得ることができない。また、95体積%より多ければ、蓄光体(10)を一定に配置するための樹脂が極端に少なくなり、蓄光部材(1)としての形状を維持することが困難となる。
【0052】
本実施形態の場合、蓄光部材(1)の形状は、直径約30mm、厚さ約6mmの円盤形状をしており、厚さ方向の一方の面はレンズ体(2)と接合されている。蓄光部材(1)の厚さ方向の他の面は外周に沿って円筒状の舌片が立設され、中央部が窪んだ凹部(13)を有する吸盤状となされている。
【0053】
なお、蓄光部材(1)の形状は特に限定されるものではないが、蓄光体(10)が多方向に少なくとも複数個ある程度並んで配置されるもの、つまり蓄光体が塊状に配置されるものが好ましい。従って、蓄光部材(1)の厚さは2mm以上が好ましく、さらに3mm以上の厚さの蓄光部材(1)が好適である。
【0054】
レンズ体(2)は略半球状の上部と当該半球状の上部から一体に延設される円柱部で構成されている。当該レンズ体(2)は、その形状によりレンズ効果を有するものであり、多方向からレンズ体(2)に照射される光を蓄光体(10)に導く役割を果たすものである。また、蓄光体(10)の光が当該レンズ体(2)を通過して外部に照射されることにより、当該蓄光体(10)の光を多方向、広範囲で視認することが可能となる。
【0055】
また、保護部材の表面は磨りガラス状に凹凸が刻まれている。これは蓄光体(10)の光が当該磨りガラス状の凹凸で散乱して、あたかもレンズ体(2)が光っているように見えるという効果を得るためである。これは特に、蓄光部材(1)が地中に埋設され、レンズ体(2)の半球状部分のみが露出している道路用標示具として用いられた場合、当該標示具Aの視認性の向上に寄与するものである。
【0056】
また、レンズ体(2)の材質は硬質のガラスである。当該レンズ体(2)は比較的軟質のシリコン樹脂で固められた蓄光部材(1)を衝撃などから保護する役割をも担うものである。
【0057】
レンズ体(2)と蓄光部材(1)は、蓄光部材(1)を構成するシリコン樹脂(11)の接着力によって貼着され一体となされている。本実施形態の場合、レンズ体(2)はガラス製でありシリコン樹脂(11)との親和性が高いため、ガラス製のレンズ体(2)とシリコン樹脂(11)で構成された蓄光部材(1)は最適な組み合わせの一つと考えられる。また、当該組み合わせを採用すれば、レンズ体(2)の熱膨張や熱収縮に対し蓄光部材(1)が柔軟に追随し、貼着部分の剥離を回避することが可能となる。
【0058】
次に、本実施形態に係る標示具Aの製造方法の一例について説明する。
【0059】
蓄光体(10)は、アルカリ土類金属のアルミン酸塩からなる蓄光体(10)を用いた。使用する蓄光体(10)は、ふるいによる分級で以下の2種類を準備した。粒径の大きな蓄光体(10)としては12メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過した蓄光体(10)のうち、25メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過せずに残存した蓄光体(10)を用いた。当該作業により最大約1600μmの粒径、最小約710μmの粒径の蓄光体(10)を得ることができる。
【0060】
粒径が中程度の蓄光体(10)としては25メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過した蓄光体(10)のうち、40メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過せずに残存した蓄光体(10)を用いた。当該作業により最大約710μmの粒径、最小約450μmの粒径の蓄光体(10)を得ることができる。
【0061】
レンズ体(2)は、球状のガラス玉を加工して得られるものであり、ガラス玉の半球部分を維持しつつ他の部分を円柱状に加工することで得られる。また、底部にある平面部分を除く外面は全てショットブラスト(サンドブラスト)により磨りガラス状の凹凸を設けている。
【0062】
次に、レンズ体(2)の半球部を下にし平面部分を上に向けてレンズ体(2)を固定載置する。そして、レンズ体(2)の円柱の平面部分から約10mm上方に突出するように、円柱部分の外周を囲むようにして銅製のテープを巻き付ける。
【0063】
レンズ体(2)の平面部分を底とし、円柱部分に巻き付けたテープの突出している部分を周壁とした形成された器に、粒径の大きな蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して80体積%、粒径が中程度の蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して20体積%となるように調整された蓄光体(10)を投入する。
【0064】
次に、前記器状の部分に溶融状態のシリコン樹脂(11)を、蓄光部材(1)全体に対し蓄光体(10)が80体積%となるように流し込む。溶融状態のシリコン樹脂(11)は、蓄光体(10)の間隙に浸透し、レンズ体(2)にまで到達する。
【0065】
当該状態で、シリコン樹脂(11)を自然に硬化させる。ただし、硬化といえども力を加えるとある程度変形し、力を加えるのを止めると元の形状に戻る程度である。
【0066】
シリコン樹脂(11)が硬化する段階において、シリコン樹脂(11)はその表面張力により銅製のテープに接触している樹脂の上縁部分が舌状に立ち上がり、当該テープに沿って円筒状に立ち上がった状態となる。そして、シリコン樹脂(11)を自然に硬化させることで、円筒状の舌片(12)もそのまま硬化し、蓄光部材(1)の表面に底部が窪んだ凹部(13)が形成され吸盤形状となされる。
【0067】
最後にレンズ体(2)に巻き付けられた銅製のテープを取り外し、本実施形態に係る標示具Aを得る。
【0068】
次に、本実施形態に係る標示具の使用方法について説明する。
【0069】
まず、道路のアスファルトなどに穴をあけ、当該穴に内側が反射用の鏡面状態となされた有底の筒状金属体(30)を埋設する。
【0070】
次に、蓄光部材(1)が下側となる配置で前記筒状金属体(30)に標示具Aを金属体(30)と同軸になるように挿入する。そして金属体(30)の底部に蓄光部材(1)の吸盤形状となされた部分を押しつける。当該蓄光部材(1)の底部は吸盤効果を有するため筒状金属体30の底部に標示具Aを固定することができる。この吸盤硬化により、当該標示具Aを施工する道路が傾斜していたとしても、筒状金属体30に対し標示具Aを所定の位置で維持することができる。
【0071】
標示具Aは道路中に埋設された金属体に挿入固定された状態で、レンズ体(2)の半球部分が道路面から突出するものとなされている。
【0072】
そして、金属体30と標示具Aの間に接着剤(31)を流し込み、当該接着剤が硬化した状態で施工は完了する。
【0073】
このように、蓄光部材(1)の外部に反射用の鏡面部を有する部材を設けると、標示具A外部から照射された光が鏡面部に反射して蓄光体(10)全体に光が照射されるとともに、蓄光体(10)の発光が鏡面部に反射して効率よく標示具A外部に放射させることができる。
【0074】
以上の様に施工された標示具Aは次の作用効果を発揮する。すなわち、太陽光など道路に対して比較的角度の大きい方向から照射される光ばかりでなく、車のヘッドライトからの光の様には道路と平行に近い角度で照射される光も道路から突出したレンズ体(2)の半球状部分のレンズ効果によって蓄光部材(1)に導入され、蓄光体(10)によって蓄光される。そして、夜間になると蓄光体(10)からの発光が蓄光体(10)表面や筒状金属体に反射されてレンズ体(2)に照射され、レンズ体(2)のレンズ効果及び保護部材表面の凹凸により乱反射しつつ標示具外部に放射される。当該標示具を見る者は、あたかも光る半球が道路面から突出しているように視認でき、車道と歩道の境界などを判別することが可能となる。しかも、蓄光部材(1)全体の輝度が高いため、磨りガラス状の表面を有するレンズ体(2)を通過した光であっても十分遠方で視認することができ、明け方に近い時間でも当該光を視認することができる。
【0075】
次に、本発明にかかる別の実施形態を説明する。
【0076】
図4、図5はこの発明の他の実施形態に係る蓄光体(10)を備えた標示具Bの概略を示す図面である。
【0077】
標示具Bは、蓄光体(10)を内部に備えた蓄光部材(1)と、当該蓄光部材(1)と一体となされたレンズ体(2)で構成されている。
【0078】
前記蓄光部材(1)は蓄光体(10)を収容することのできる収容室(40)を備えた保護部材(4)と、蓄光体(10)と、収容室(40)を封鎖することのできる蓋体(41)で構成されている。
【0079】
前記蓄光体(10)は、ケイ酸系の蓄光性機能セラミックである。本実施形態で使用しうる蓄光体(10)の粒径は、前記実施形態で説明した粒径と同様である。
【0080】
蓄光体(10)は、蓋体(41)で封鎖された状態の収容室(40)の体積に対して全蓄光体(10)が60体積%〜98体積%を占有するように調整される。収容室(40)の体積に対して全蓄光体(10)が60体積%未満になると、蓄光部材(1)全体としての所望の輝度を得ることができない。
【0081】
保護部材(4)の内部には保護部材(4)の裏面に向いて開口した薄い直方体の収容室(40)が備えられており、この収容室(40)は、開口部の全面を覆う蓋体(41)で封鎖されるものとなされている。
【0082】
レンズ体(2)は保護部材(4)と一体となっており、全体として中央部近傍が最も膨出するように短辺方向にアーチを描いた形状となされている。また、長辺方向の両端部も曲面となされ、全体としてレンズ効果を有するものとなされている。
【0083】
当該保護部材(4)及びレンズ体(2)及び蓋体(41)はいずれもポリカーボネート樹脂を成型したものである。ポリカーボネート樹脂は透明度が高いため、標示具B外部から照射される光を蓄光体(10)に効率よく到達させることができ、蓄光体(10)の発光を外部に効率よく外部に放射させることができる。また、ポリカーボネート樹脂は強靱であるため、直接車のタイヤが通過するような道路の部分にも用いることができるため好ましい。
【0084】
また、保護部材(4)の短辺部の中央近傍にはそれぞれ貫通孔が穿設されている。これは標示具Bを施工する場合に、当該貫通孔にアンカーボルトや鋲などを挿入して当該標示具Bを固定する際に利用するものである。
【0085】
次に、本実施形態に係る標示具の製造方法の一例について説明する。
【0086】
使用する蓄光体(10)は、ふるいによる分級で粒径の大きな蓄光体(10)の群と粒径が中程度の蓄光体(10)の群の2種類を準備した。なお、上記2つの粒径の蓄光体の分級方法は前記実施形態と同様である。
【0087】
保護部材(4)及びレンズ体(2)はポリカーボネート樹脂を射出成型により一体に成型する。また、蓋体(41)もポリカーボネート樹脂を射出成型により成型する。
【0088】
次に、保護部材(4)を収容室(40)の開口部が上に向くように載置する。そして、前記収容室(40)に粒径の大きな蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して80体積%、粒径が中程度の蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して20体積%となるように調整された蓄光体(10)を投入する。
【0089】
次に蓋体(41)で収容室(40)の開口部全体を覆い、超音波により蓋体(41)と保護部材(4)本体を溶着する。以上で蓄光体(10)を保護部材(4)内に封入することができ、蓄光部材(1)を備えた標示具Bが完成する。
【0090】
次に、本実施形態に係る標示具の使用方法について説明する。
【0091】
まず、道路上に鏡面を有する金属板を当該鏡面を上に向けて載置する(図示省略)。次に、標示具Bを前記金属板に重ねるように載置する。前記金属板には保護部材(4)に設けられている貫通孔と対応する位置に孔が設けられている。次に、保護部材(4)の短辺部の中央近傍にある貫通孔を利用して鋲を道路に打ち込み、当該標示具Bを道路上に固定し施工は完了する。
【0092】
このように、標示具の下部に反射用の金属板を設けると、効率よく標示具外部からの光を蓄光体(10)に照射できるとともに、蓄光体(10)の発光が効率よく標示具外部に放射することができる。
【0093】
以上の様に施工された標示具は次の作用効果を発揮する。すなわち、本実施形態に係る標示具Bもレンズの効果を発揮しうるため、前記実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0094】
しかも、本実施形態に係る標示具Bはほとんどがポリカーボネート樹脂で構成されているため軽量かつ強靱である。従って大型化も容易である。
【0095】
さらに、蓄光体(10)は保護部材(4)の収容室(40)内部で回転や移動が可能であるため、道路の振動などにより蓄光体(10)の位置や向きが微妙に変化し、また、相互に摺擦しあうことで、蓄光体(10)自体の劣化を抑制することが可能となる。
【0096】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるわけではない。例えば、蓄光体(10)を所定の配置で保持するための樹脂はエポキシ樹脂などを例示することができる。また、蓄光体(10)を封入するための保護部材(4)の材質は透明アクリルやPETなどを用いることができる。
【0097】
また、蓄光部材(1)や当該蓄光部材(1)を備えた標示具の適用箇所も道路に限定されるわけではなく、建家内の廊下や階段などにも適用でき、装飾様に適用してもかまわない。
【0098】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、従来の微細な粒径の蓄光体を樹脂中に分散させた蓄光部材を備えた蓄光部材に比べて高い輝度を得ることができ、実用に耐えうる長時間一定の水準を下回ることなく輝度を維持することが可能となる。
【0099】
請求項2の発明によれば、蓄光体が配置される空間全体を蓄光体で効率よく埋めることができ、さらに高い輝度と長い残光時間を得ることが可能となる。
【0100】
請求項3の発明によれば、蓄光体に必要な光の透過性が良く、柔軟でレンズ体などとの親和性も良いため商品価値の高い蓄光部材とすることができる。
【0101】
請求項4の発明によれば、蓄光部材自体が吸盤効果を備えるため、別途吸盤を設ける必要がない。従って製造コストを抑えた商品価値の高い蓄光部材とすることができる。
【0102】
請求項5または請求項6の発明によれば、上記請求項1、請求項2に係る発明の効果に加えて、蓄光体が個々に回転や移動することができるので、蓄光部材の設置箇所に発生する振動などによって蓄光体が動き、劣化した蓄光体とそうでない蓄光体の入れ替えや劣化した蓄光体の面とそうでない面の入れ替えなどが可能となる。また、蓄光体同士の摺擦により、劣化した表面を削り落として劣化していない面を表面に現出させることも可能となる。
【0103】
請求項7の発明によれば、レンズ効果により広範囲の光を蓄光部材に導入することができ、蓄光部材からの発光をより広範囲に放射することが可能な標示具を得ることができる。
【0104】
請求項8の発明によれば、表面に設けられた磨りガラス状の凹凸により蓄光部材からの光が乱反射を起こし、あたかもレンズ体が光っている様な標示具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同実施形態の断面図である。
【図3】同実施形態の施工状態を示す断面図である。
【図4】他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】同実施形態の断面図である。
【符号の説明】
1…蓄光部材
2…レンズ体
4…保護部材
10…蓄光体
11…透明樹脂
13…凹部
40…収容室
41…蓋体
【発明の属する技術分野】
この発明は、太陽などの自然光や照明などの人工光を蓄え、夜間などに自然発光する蓄光体を備えた蓄光部材及び当該蓄光部材を備えた標示具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、光が照射されるとその光をエネルギーとして蓄え、その蓄えたエネルギーを徐々に光として放射する蓄光体を備えた製品が広く使用されるに至っている。例えば、微粉末の蓄光体を顔料として分散させた塗料が文字盤や針に塗布された時計や、粉末の蓄光体を樹脂中に分散させ、当該樹脂を成型して得られる釣り用の浮きやアクセサリーなどが実用化されている。
【0003】
また、自動車の運転手や歩行者などに、夜間の道路と歩道の境界や歩道と側溝の境界などを視認させるための蓄光部材や当該蓄光部材を備えた標示具が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
登録実用新案第3032931号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2003−73547号公報
【0006】
【特許文献3】
特開平11−288233号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、蓄光体が分散された従来の塗料やプラスチック成型品は、輝度や残光時間などの発光性能が悪く、時計や釣り用の浮きなどとしては許容できる範囲の性能ではあるものの、例えば日没後から夜明け前までの長時間、遠方から道路と歩道との境界などを視認させる必要のある道路用の標示具などとしては発光性能が不十分であり、実用化されていないのが現状である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは従来用いられている蓄光体が粉末や粒径の小さい蓄光体であることに着目し、蓄光体の粒径が大きくなるにつれて輝度や残光時間などの発光性能が向上することを見出した。更に、当該粒径の大きな蓄光体の配置状態を工夫することで、輝度や残光時間が向上し、道路用の標示具などにも十分に適用できうることを見出すに至り本願発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる蓄光部材は、透明樹脂内に粒状の蓄光体が混合状態で備えられた蓄光部材であって、前記蓄光体は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し80体積%〜100体積%占有し、蓄光部材全体に対し全蓄光体が60体積%〜95体積%を占有していることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成を採用することにより、外部から蓄光部材に入射した光は直接蓄光体に照射されるばかりでなく、蓄光体表面で反射を繰り返し粒径の大きな蓄光体が作る間隙を通り、他の蓄光体の陰に隠れている蓄光体にも照射されることとなる。従って、蓄光部材全体として多くの光を蓄えることができる。
【0011】
一方、夜間など外部から光が入射しない状態においては、前述のように蓄光部材内の多くの蓄光体が蓄光しているため多くの蓄光体が発光する。そして、蓄光部材外部から臨める蓄光体の発光を外部から視認できるばかりでなく、いわゆる他の蓄光体の陰に位置する蓄光体の発光も他の蓄光体表面で反射を繰り返し蓄光体の間隙を通過して蓄光部材外部に放射される。従って、従来の蓄光部材に比べて高い輝度を得ることができる。
【0012】
更に、蓄光体個々の輝度が経時的に低下した場合であっても、個々の蓄光体の発光が重畳されて、蓄光部材全体としては一定水準以上の輝度を維持することができるため、蓄光部材全体としての残光時間を長くすることが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかる蓄光部材は、透明樹脂内に粒状の蓄光体が混合状態で備えられた蓄光部材であって、前記蓄光体は、710μm以上、1600μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し20体積%〜40体積%占有し、蓄光部材全体に対し全蓄光体が60体積%〜95体積%を占有していることを特徴とするものである。
【0014】
上記構成を採用することにより、粒径の大きな蓄光体の間隙に粒径が中程度の蓄光体が配置され、蓄光部材全体として良好な蓄光体の配置状態を得ることができる。つまり、蓄光部材を外部から見た場合、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋める状態となるため、外部からより多くの蓄光体を臨むことができることとなり、蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0015】
また、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋めるといえども、粒径の小さい蓄光体を配置する場合に比べると蓄光体同士の間隙は大きい。従って、蓄光体表面の反射などにより外部から照射される光が陰の部分に存在する蓄光体にも十分に到達することができ、逆に、陰の部分に存在する蓄光体の発光を外部に放射することもできるため蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0016】
また、蓄光部材全体の輝度が高くなるため蓄光部材全体として残光時間もより長くすることが可能となる。
【0017】
また、本願発明にかかる蓄光部材は、前記蓄光部材を構成する透明樹脂としてシリコン樹脂を採用するのが好ましい。
【0018】
当該シリコン樹脂は、外部から蓄光部材に照射される光が蓄光体に到達する障害となりにくく、また、蓄光体自体の発光を外部に放射する場合の障害になりにくい。
【0019】
また、蓄光部材としての柔軟性を確保できるとともに蓄光体や他の部材との接着性も良好である。また、耐候性が高く変色しにくいため長期間蓄光部材としての能力を維持することが可能となる。
【0020】
さらに、本願発明にかかる蓄光部材は、前記蓄光部材の表面に吸盤状の凹部が設けられてなるものでも良い。
【0021】
当該構成を採用することにより、別途吸盤を設けることなく蓄光部材自体が吸盤効果を有することになり、蓄光部材を一定の条件を備えた場所、例えばガラス面などの鏡面部分に対して取り付け取り外しが任意に可能となる。
【0022】
また、本発明にかかる蓄光部材は、粒状の蓄光体と、当該蓄光体が封入される収容室を有する透明の保護部材とを備えてなる蓄光部材であって、前記蓄光体は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し80体積%〜100体積%占有し、前記収容室の体積に対して全蓄光体が60体積%〜98体積%を占有した状態で保護部材の収容室に封入されてなることを特徴とするものである。
【0023】
上記構成を採用することにより、外部から蓄光部材に入射した光は直接蓄光体に照射されるばかりでなく、蓄光体表面で反射を繰り返し粒径の大きな蓄光体が作る間隙を通り、他の蓄光体の陰に隠れている蓄光体にも照射されることとなる。従って、蓄光部材全体として多くの光を蓄えることができる。
【0024】
一方、夜間など外部から光が入射しない状態においては、前述のように蓄光部材内の多くの蓄光体が蓄光しているため多くの蓄光体が発光する。そして、蓄光部材外部から臨める蓄光体の発光を外部から視認できるばかりでなく、いわゆる他の蓄光体の陰に位置する蓄光体の発光も他の蓄光体表面で反射を繰り返し蓄光体の間隙を通過して蓄光部材外部に放射される。従って、従来の蓄光部材に比べて高い輝度を得ることができる。
【0025】
更に、蓄光体個々の輝度が経時的に低下した場合であっても、個々の蓄光体の発光が重畳されて、蓄光部材全体としては一定水準以上の輝度を維持することができるため、蓄光部材全体としての残光時間を長くすることが可能となる。
【0026】
更に、当該構成では蓄光体同士は樹脂で固定されていないため、外部からの振動により蓄光体が収容室の中で回転や移動することができる。従って、蓄光体が保護部材内部に封入された状態であっても、外部からの光が照射される部分を変化させることができる。また、蓄光体相互の摺擦により劣化した蓄光体の表面が削り落とされて新しい表面を表出させることも可能となる。
【0027】
また、本発明にかかる蓄光部材は、粒状の蓄光体と、当該蓄光体が封入される収容室を有する透明の保護部材とを備えてなる蓄光部材であって、前記蓄光体は、710μm以上、1600μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し20体積%〜40体積%占有し、収容室の体積に対して全蓄光体が60体積%〜98体積%を占有した状態で保護部材の収容室に封入されてなることを特徴とするものである。
【0028】
上記構成を採用することにより、粒径の大きな蓄光体の間隙に粒径が中程度の蓄光体が配置され、蓄光部材全体として良好な蓄光体の配置状態を得ることができる。つまり、蓄光部材を外部から見た場合、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋める状態となるため、外部からより多くの蓄光体を臨むことができることとなり、蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0029】
また、粒径の大きな蓄光体の間隙を粒径が中程度の蓄光体が埋めるといえども、従来のような粒径の小さい蓄光体を配置する場合に比べると蓄光体同士の間隙は大きい。従って、蓄光体表面の反射などにより外部から照射される光が陰の部分に存在する蓄光体にも十分に到達することができ、逆に、陰の部分に存在する蓄光体の発光を外部に放射することもできるため蓄光部材全体として高い輝度を得ることができる。
【0030】
また、蓄光部材全体の輝度が高くなるため蓄光部材全体として残光時間もより長くすることが可能となる。
【0031】
更に、当該構成では蓄光体同士は樹脂で固定されていないため、外部からの振動により蓄光体が収容室の中で回転や移動することができる。従って、蓄光体が保護部材内部に封入された状態であっても、外部からの光が照射される部分を変化させることができる。また、蓄光体相互の摺擦により劣化した蓄光体の表面が削り落とされて新しい表面を表出させることも可能となる。
【0032】
また、本発明に係る蓄光部材を備えた標示具は、上記蓄光部材を備え、当該蓄光部材に外部から照射される光を導入し、かつ、蓄光部材からの光を外部に放射しうるレンズ効果を有するレンズ体を備えてなることを特徴とするものである。
【0033】
上記構成を採用することにより、広い範囲や多様な角度からレンズ体に照射される光を蓄光体に導入することができるため、より多くの光を蓄光体で蓄えることが可能となる。
【0034】
さらに、蓄光体の発光がレンズ体を通過して広い範囲に光を放射させることができるため、広い範囲で当該標示具を視認することができる。さらに、蓄光部材の輝度が高いため、レンズ体で蓄光部材からの光を発散させたとしても、十分に遠方から当該標示具を視認することができる。
【0035】
また、本発明に係る蓄光部材を備えた標示具は、レンズ体の表面に磨りガラス状の凹凸が設けられてなることを特徴とするものである。
【0036】
上記構成を採用することにより、レンズ体に照射された蓄光体の発光はレンズ体表面で乱反射し、あたかもレンズ体自体が発光しているように視認させることが可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施形態を説明する。
【0038】
図1〜図3はこの発明の一実施形態に係る蓄光部材(1)を備えた標示具の概略を示す図面である。
【0039】
図1に示すAは標示具であり、図中の(1)は蓄光部材、(2)はレンズ体である。
【0040】
蓄光部材(1)は光をエネルギーとして蓄え、当該蓄えたエネルギーを徐々に光として放射することのできる蓄光体(10)と、当該蓄光体(10)を所定の配置状態で維持し空気中の水分などで蓄光体(10)が劣化するのを防止しうる透明樹脂(11)で構成されている。
【0041】
前記蓄光体(10)の材質はアルミン酸塩からなる蓄光性機能セラミックである。また、当該蓄光体(10)は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し80体積%〜100体積%占有するものである。
【0042】
蓄光体(10)の粒径が100μm未満の蓄光体(10)は、多段階の破砕によってクラックや傷が多数発生し所望の輝度や残光時間が得られないため、100μm未満の蓄光体(10)を多く含み、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し80体積%〜100体積%占有しない場合は蓄光部材(1)全体として必要な発光性能を得ることができない。
【0043】
一方、粒径が3000μmより大きい蓄光体(10)が多く含まれる場合は、当該蓄光体(10)同士の間隙が大きくなりすぎて蓄光部材(1)全体の輝度が低下する。また、3000μm以下の粒径の蓄光体(10)と比べても、輝度や残光時間に人間の感覚的な面での優位性が認められず、蓄光部材(1)全体としての輝度の向上に寄与することもない。
【0044】
また、上記範囲の粒径の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し80体積%未満であれば、蓄光部材(1)全体として所望する輝度や残光時間が得られない。また、理想的には100体積%とするのが良いが、蓄光体(10)は個々の形状に統一性がなく、異形状であるため、分級には限度があると思われる。
【0045】
なお、蓄光体(10)の粒径は200μm〜2000μmの範囲が好ましく、さらに300μm〜1500μmの範囲が好適である
また、蓄光体(10)は、710μm以上、1600μm以下の粒径の比較的粒径の大きな蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の比較的粒径が中程度の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対し20体積%〜40体積%占有するものでも良い。
【0046】
粒径が1600μmより大きな蓄光体(10)が多く含まれている場合、蓄光体(10)同士の間隙が大きくなりすぎ、当該間隙に配置される粒径が中程度の蓄光体(10)により好適な蓄光体(10)の配置状態を確保することができなくなる場合がある。また、粒径が710μm未満になるともはや粒径の大きな蓄光体(10)ではなくなる。
【0047】
なお、粒径の大きな蓄光体(10)の粒径としては850μm〜1500μmの範囲が好ましく、さらに900μm〜1300μmの範囲が好適である。
【0048】
一方、粒径が450μm未満の蓄光体(10)が全蓄光体(10)に対して多く含まれている場合、粒径の大きな蓄光体(10)の間隙を他の蓄光体(10)で充填しづらくなり好適な蓄光体(10)の配置状態を確保することができなくなる場合がある。また、粒径が中程度の蓄光体(10)の粒径が710μm以上であればもはや粒径が中程度の蓄光体(10)ではない。
【0049】
なお、粒径が中程度の蓄光体(10)しては500μm〜650μmの範囲が好ましく、さらに550μm〜600μmの範囲が好適である。
【0050】
蓄光部材(1)を構成する透明樹脂(11)としては、蓄光体(10)を一定の配置状態に維持することができ、蓄光部材(1)外部からの光が蓄光体(10)に照射されるのを妨げることなく、また、蓄光体(10)自体の発光を妨げることなく蓄光部材(1)外部に放射しうるものであればよい。具体的には透明のシリコン樹脂が好適である。
【0051】
蓄光部材(1)は、蓄光体(10)と透明樹脂(11)が混合状態となさて一定の形状を有しかつ柔軟性を有するものである。また、蓄光部材(1)全体に対して蓄光体(10)は60体積%〜95体積%を占めるものとなされている。前記蓄光体(10)の占有率が60体積%未満の場合、蓄光体(10)相互の間隔が広くなりすぎて、蓄光体(10)全体としての輝度を得ることができない。また、95体積%より多ければ、蓄光体(10)を一定に配置するための樹脂が極端に少なくなり、蓄光部材(1)としての形状を維持することが困難となる。
【0052】
本実施形態の場合、蓄光部材(1)の形状は、直径約30mm、厚さ約6mmの円盤形状をしており、厚さ方向の一方の面はレンズ体(2)と接合されている。蓄光部材(1)の厚さ方向の他の面は外周に沿って円筒状の舌片が立設され、中央部が窪んだ凹部(13)を有する吸盤状となされている。
【0053】
なお、蓄光部材(1)の形状は特に限定されるものではないが、蓄光体(10)が多方向に少なくとも複数個ある程度並んで配置されるもの、つまり蓄光体が塊状に配置されるものが好ましい。従って、蓄光部材(1)の厚さは2mm以上が好ましく、さらに3mm以上の厚さの蓄光部材(1)が好適である。
【0054】
レンズ体(2)は略半球状の上部と当該半球状の上部から一体に延設される円柱部で構成されている。当該レンズ体(2)は、その形状によりレンズ効果を有するものであり、多方向からレンズ体(2)に照射される光を蓄光体(10)に導く役割を果たすものである。また、蓄光体(10)の光が当該レンズ体(2)を通過して外部に照射されることにより、当該蓄光体(10)の光を多方向、広範囲で視認することが可能となる。
【0055】
また、保護部材の表面は磨りガラス状に凹凸が刻まれている。これは蓄光体(10)の光が当該磨りガラス状の凹凸で散乱して、あたかもレンズ体(2)が光っているように見えるという効果を得るためである。これは特に、蓄光部材(1)が地中に埋設され、レンズ体(2)の半球状部分のみが露出している道路用標示具として用いられた場合、当該標示具Aの視認性の向上に寄与するものである。
【0056】
また、レンズ体(2)の材質は硬質のガラスである。当該レンズ体(2)は比較的軟質のシリコン樹脂で固められた蓄光部材(1)を衝撃などから保護する役割をも担うものである。
【0057】
レンズ体(2)と蓄光部材(1)は、蓄光部材(1)を構成するシリコン樹脂(11)の接着力によって貼着され一体となされている。本実施形態の場合、レンズ体(2)はガラス製でありシリコン樹脂(11)との親和性が高いため、ガラス製のレンズ体(2)とシリコン樹脂(11)で構成された蓄光部材(1)は最適な組み合わせの一つと考えられる。また、当該組み合わせを採用すれば、レンズ体(2)の熱膨張や熱収縮に対し蓄光部材(1)が柔軟に追随し、貼着部分の剥離を回避することが可能となる。
【0058】
次に、本実施形態に係る標示具Aの製造方法の一例について説明する。
【0059】
蓄光体(10)は、アルカリ土類金属のアルミン酸塩からなる蓄光体(10)を用いた。使用する蓄光体(10)は、ふるいによる分級で以下の2種類を準備した。粒径の大きな蓄光体(10)としては12メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過した蓄光体(10)のうち、25メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過せずに残存した蓄光体(10)を用いた。当該作業により最大約1600μmの粒径、最小約710μmの粒径の蓄光体(10)を得ることができる。
【0060】
粒径が中程度の蓄光体(10)としては25メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過した蓄光体(10)のうち、40メッシュのふるいで分級し、当該メッシュを通過せずに残存した蓄光体(10)を用いた。当該作業により最大約710μmの粒径、最小約450μmの粒径の蓄光体(10)を得ることができる。
【0061】
レンズ体(2)は、球状のガラス玉を加工して得られるものであり、ガラス玉の半球部分を維持しつつ他の部分を円柱状に加工することで得られる。また、底部にある平面部分を除く外面は全てショットブラスト(サンドブラスト)により磨りガラス状の凹凸を設けている。
【0062】
次に、レンズ体(2)の半球部を下にし平面部分を上に向けてレンズ体(2)を固定載置する。そして、レンズ体(2)の円柱の平面部分から約10mm上方に突出するように、円柱部分の外周を囲むようにして銅製のテープを巻き付ける。
【0063】
レンズ体(2)の平面部分を底とし、円柱部分に巻き付けたテープの突出している部分を周壁とした形成された器に、粒径の大きな蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して80体積%、粒径が中程度の蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して20体積%となるように調整された蓄光体(10)を投入する。
【0064】
次に、前記器状の部分に溶融状態のシリコン樹脂(11)を、蓄光部材(1)全体に対し蓄光体(10)が80体積%となるように流し込む。溶融状態のシリコン樹脂(11)は、蓄光体(10)の間隙に浸透し、レンズ体(2)にまで到達する。
【0065】
当該状態で、シリコン樹脂(11)を自然に硬化させる。ただし、硬化といえども力を加えるとある程度変形し、力を加えるのを止めると元の形状に戻る程度である。
【0066】
シリコン樹脂(11)が硬化する段階において、シリコン樹脂(11)はその表面張力により銅製のテープに接触している樹脂の上縁部分が舌状に立ち上がり、当該テープに沿って円筒状に立ち上がった状態となる。そして、シリコン樹脂(11)を自然に硬化させることで、円筒状の舌片(12)もそのまま硬化し、蓄光部材(1)の表面に底部が窪んだ凹部(13)が形成され吸盤形状となされる。
【0067】
最後にレンズ体(2)に巻き付けられた銅製のテープを取り外し、本実施形態に係る標示具Aを得る。
【0068】
次に、本実施形態に係る標示具の使用方法について説明する。
【0069】
まず、道路のアスファルトなどに穴をあけ、当該穴に内側が反射用の鏡面状態となされた有底の筒状金属体(30)を埋設する。
【0070】
次に、蓄光部材(1)が下側となる配置で前記筒状金属体(30)に標示具Aを金属体(30)と同軸になるように挿入する。そして金属体(30)の底部に蓄光部材(1)の吸盤形状となされた部分を押しつける。当該蓄光部材(1)の底部は吸盤効果を有するため筒状金属体30の底部に標示具Aを固定することができる。この吸盤硬化により、当該標示具Aを施工する道路が傾斜していたとしても、筒状金属体30に対し標示具Aを所定の位置で維持することができる。
【0071】
標示具Aは道路中に埋設された金属体に挿入固定された状態で、レンズ体(2)の半球部分が道路面から突出するものとなされている。
【0072】
そして、金属体30と標示具Aの間に接着剤(31)を流し込み、当該接着剤が硬化した状態で施工は完了する。
【0073】
このように、蓄光部材(1)の外部に反射用の鏡面部を有する部材を設けると、標示具A外部から照射された光が鏡面部に反射して蓄光体(10)全体に光が照射されるとともに、蓄光体(10)の発光が鏡面部に反射して効率よく標示具A外部に放射させることができる。
【0074】
以上の様に施工された標示具Aは次の作用効果を発揮する。すなわち、太陽光など道路に対して比較的角度の大きい方向から照射される光ばかりでなく、車のヘッドライトからの光の様には道路と平行に近い角度で照射される光も道路から突出したレンズ体(2)の半球状部分のレンズ効果によって蓄光部材(1)に導入され、蓄光体(10)によって蓄光される。そして、夜間になると蓄光体(10)からの発光が蓄光体(10)表面や筒状金属体に反射されてレンズ体(2)に照射され、レンズ体(2)のレンズ効果及び保護部材表面の凹凸により乱反射しつつ標示具外部に放射される。当該標示具を見る者は、あたかも光る半球が道路面から突出しているように視認でき、車道と歩道の境界などを判別することが可能となる。しかも、蓄光部材(1)全体の輝度が高いため、磨りガラス状の表面を有するレンズ体(2)を通過した光であっても十分遠方で視認することができ、明け方に近い時間でも当該光を視認することができる。
【0075】
次に、本発明にかかる別の実施形態を説明する。
【0076】
図4、図5はこの発明の他の実施形態に係る蓄光体(10)を備えた標示具Bの概略を示す図面である。
【0077】
標示具Bは、蓄光体(10)を内部に備えた蓄光部材(1)と、当該蓄光部材(1)と一体となされたレンズ体(2)で構成されている。
【0078】
前記蓄光部材(1)は蓄光体(10)を収容することのできる収容室(40)を備えた保護部材(4)と、蓄光体(10)と、収容室(40)を封鎖することのできる蓋体(41)で構成されている。
【0079】
前記蓄光体(10)は、ケイ酸系の蓄光性機能セラミックである。本実施形態で使用しうる蓄光体(10)の粒径は、前記実施形態で説明した粒径と同様である。
【0080】
蓄光体(10)は、蓋体(41)で封鎖された状態の収容室(40)の体積に対して全蓄光体(10)が60体積%〜98体積%を占有するように調整される。収容室(40)の体積に対して全蓄光体(10)が60体積%未満になると、蓄光部材(1)全体としての所望の輝度を得ることができない。
【0081】
保護部材(4)の内部には保護部材(4)の裏面に向いて開口した薄い直方体の収容室(40)が備えられており、この収容室(40)は、開口部の全面を覆う蓋体(41)で封鎖されるものとなされている。
【0082】
レンズ体(2)は保護部材(4)と一体となっており、全体として中央部近傍が最も膨出するように短辺方向にアーチを描いた形状となされている。また、長辺方向の両端部も曲面となされ、全体としてレンズ効果を有するものとなされている。
【0083】
当該保護部材(4)及びレンズ体(2)及び蓋体(41)はいずれもポリカーボネート樹脂を成型したものである。ポリカーボネート樹脂は透明度が高いため、標示具B外部から照射される光を蓄光体(10)に効率よく到達させることができ、蓄光体(10)の発光を外部に効率よく外部に放射させることができる。また、ポリカーボネート樹脂は強靱であるため、直接車のタイヤが通過するような道路の部分にも用いることができるため好ましい。
【0084】
また、保護部材(4)の短辺部の中央近傍にはそれぞれ貫通孔が穿設されている。これは標示具Bを施工する場合に、当該貫通孔にアンカーボルトや鋲などを挿入して当該標示具Bを固定する際に利用するものである。
【0085】
次に、本実施形態に係る標示具の製造方法の一例について説明する。
【0086】
使用する蓄光体(10)は、ふるいによる分級で粒径の大きな蓄光体(10)の群と粒径が中程度の蓄光体(10)の群の2種類を準備した。なお、上記2つの粒径の蓄光体の分級方法は前記実施形態と同様である。
【0087】
保護部材(4)及びレンズ体(2)はポリカーボネート樹脂を射出成型により一体に成型する。また、蓋体(41)もポリカーボネート樹脂を射出成型により成型する。
【0088】
次に、保護部材(4)を収容室(40)の開口部が上に向くように載置する。そして、前記収容室(40)に粒径の大きな蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して80体積%、粒径が中程度の蓄光体(10)を全蓄光体(10)に対して20体積%となるように調整された蓄光体(10)を投入する。
【0089】
次に蓋体(41)で収容室(40)の開口部全体を覆い、超音波により蓋体(41)と保護部材(4)本体を溶着する。以上で蓄光体(10)を保護部材(4)内に封入することができ、蓄光部材(1)を備えた標示具Bが完成する。
【0090】
次に、本実施形態に係る標示具の使用方法について説明する。
【0091】
まず、道路上に鏡面を有する金属板を当該鏡面を上に向けて載置する(図示省略)。次に、標示具Bを前記金属板に重ねるように載置する。前記金属板には保護部材(4)に設けられている貫通孔と対応する位置に孔が設けられている。次に、保護部材(4)の短辺部の中央近傍にある貫通孔を利用して鋲を道路に打ち込み、当該標示具Bを道路上に固定し施工は完了する。
【0092】
このように、標示具の下部に反射用の金属板を設けると、効率よく標示具外部からの光を蓄光体(10)に照射できるとともに、蓄光体(10)の発光が効率よく標示具外部に放射することができる。
【0093】
以上の様に施工された標示具は次の作用効果を発揮する。すなわち、本実施形態に係る標示具Bもレンズの効果を発揮しうるため、前記実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0094】
しかも、本実施形態に係る標示具Bはほとんどがポリカーボネート樹脂で構成されているため軽量かつ強靱である。従って大型化も容易である。
【0095】
さらに、蓄光体(10)は保護部材(4)の収容室(40)内部で回転や移動が可能であるため、道路の振動などにより蓄光体(10)の位置や向きが微妙に変化し、また、相互に摺擦しあうことで、蓄光体(10)自体の劣化を抑制することが可能となる。
【0096】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるわけではない。例えば、蓄光体(10)を所定の配置で保持するための樹脂はエポキシ樹脂などを例示することができる。また、蓄光体(10)を封入するための保護部材(4)の材質は透明アクリルやPETなどを用いることができる。
【0097】
また、蓄光部材(1)や当該蓄光部材(1)を備えた標示具の適用箇所も道路に限定されるわけではなく、建家内の廊下や階段などにも適用でき、装飾様に適用してもかまわない。
【0098】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、従来の微細な粒径の蓄光体を樹脂中に分散させた蓄光部材を備えた蓄光部材に比べて高い輝度を得ることができ、実用に耐えうる長時間一定の水準を下回ることなく輝度を維持することが可能となる。
【0099】
請求項2の発明によれば、蓄光体が配置される空間全体を蓄光体で効率よく埋めることができ、さらに高い輝度と長い残光時間を得ることが可能となる。
【0100】
請求項3の発明によれば、蓄光体に必要な光の透過性が良く、柔軟でレンズ体などとの親和性も良いため商品価値の高い蓄光部材とすることができる。
【0101】
請求項4の発明によれば、蓄光部材自体が吸盤効果を備えるため、別途吸盤を設ける必要がない。従って製造コストを抑えた商品価値の高い蓄光部材とすることができる。
【0102】
請求項5または請求項6の発明によれば、上記請求項1、請求項2に係る発明の効果に加えて、蓄光体が個々に回転や移動することができるので、蓄光部材の設置箇所に発生する振動などによって蓄光体が動き、劣化した蓄光体とそうでない蓄光体の入れ替えや劣化した蓄光体の面とそうでない面の入れ替えなどが可能となる。また、蓄光体同士の摺擦により、劣化した表面を削り落として劣化していない面を表面に現出させることも可能となる。
【0103】
請求項7の発明によれば、レンズ効果により広範囲の光を蓄光部材に導入することができ、蓄光部材からの発光をより広範囲に放射することが可能な標示具を得ることができる。
【0104】
請求項8の発明によれば、表面に設けられた磨りガラス状の凹凸により蓄光部材からの光が乱反射を起こし、あたかもレンズ体が光っている様な標示具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同実施形態の断面図である。
【図3】同実施形態の施工状態を示す断面図である。
【図4】他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】同実施形態の断面図である。
【符号の説明】
1…蓄光部材
2…レンズ体
4…保護部材
10…蓄光体
11…透明樹脂
13…凹部
40…収容室
41…蓋体
Claims (8)
- 透明樹脂内に粒状の蓄光体が混合状態で備えられた蓄光部材であって、
前記蓄光体は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し80体積%〜100体積%占有し、
蓄光部材全体に対し全蓄光体が60体積%〜95体積%を占有していることを特徴とする蓄光部材。 - 透明樹脂内に粒状の蓄光体が混合状態で備えられた蓄光部材であって、
前記蓄光体は、710μm以上、1600μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し20体積%〜40体積%占有し、
蓄光部材全体に対し全蓄光体が60体積%〜95体積%を占有していることを特徴とする蓄光部材。 - 前記蓄光部材を構成する透明樹脂がシリコン樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄光部材。
- 前記蓄光部材の表面に吸盤状の凹部が設けられてなる請求項3に記載の蓄光部材。
- 粒状の蓄光体と、
当該蓄光体が封入される収容室を有する透明の保護部材とを備えてなる蓄光部材であって、
前記蓄光体は、100μm以上、3000μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し80体積%〜100体積%占有し、
前記収容室の体積に対して全蓄光体が60体積%〜98体積%を占有した状態で保護部材の収容室に封入されてなることを特徴とする蓄光部材。 - 粒状の蓄光体と、
当該蓄光体が封入される収容室を有する透明の保護部材とを備えてなる蓄光部材であって、
前記蓄光体は、710μm以上、1600μm以下の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し60体積%〜80体積%占有し、450μm以上、710μm未満の粒径の蓄光体が全蓄光体に対し20体積%〜40体積%占有し、
収容室の体積に対して全蓄光体が60体積%〜98体積%を占有した状態で保護部材の収容室に封入されてなることを特徴とする蓄光部材。 - 請求項1〜請求項6にかかる蓄光部材を備え、
前記蓄光部材に外部から照射される光を導入し、かつ、蓄光部材からの光を外部に放射しうるレンズ効果を有するレンズ体を備えてなる蓄光部材を備えた標示具。 - レンズ体の表面に磨りガラス状の凹凸が設けられてなることを特徴とする請求項7に記載された蓄光部材を備えた標示具。
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